horrorU〜二重連鎖〜
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#62 [輪廻]
 
 
『は、はいっ!』

裏返りそうな声で答え、男の指さす方へ近づく。


『ここ…でいいんですよね?』

『ああ。早くしろ』

狂也は左手に持っていたシャベルを右手に持ち変え、腰をかがめながら足元の地面を掘り始めた。


それを男は両腕を組みながら黙って見下ろす。

⏰:12/02/20 00:27 📱:iPhone 🆔:6fxgN5ZU


#63 [輪廻]
  
とっとと終わらせようと力いっぱいにシャベルを地面に突き刺し、掘り続ける狂也。


所々で男の『さっさとしろ』という心の声が聞こえてくるようだった。


そんなプレッシャーを肌に感じつつ掘り続ける。


数十分後ー

やっと人一人が入れそうな深い穴ができた頃、狂也の土を掘る姿を黙って見ていた男がついに行動に出る。


死体の入ったビニール袋を軽々と片手で持ち上げると、今掘ってできた穴の中に投げ入れた。


そして狂也の方を見る。

暗くてよくわからなかったが、その男は不気味に微笑んでいるように見えた。

⏰:12/02/20 12:17 📱:iPhone 🆔:m1BlL9s6


#64 [輪廻]
 
 
一方の狂也は、どんな表情をしていいのかわからず、足元の穴に落ちたビニール袋を呆然と見つめる。


『じゃあ最後の仕事だ』

どこか楽しげな口調で言った男の方に目をやる。


『またこの穴を塞げばいいんですよね?』

彼の言いたい事を悟り、先に切り出した狂也。

すると男は、ますます不気味な笑みを浮かべ

『わかってるじゃんか。でも、もう一つあるんだな』

と、意味深な発言をした。

⏰:12/02/20 12:18 📱:iPhone 🆔:m1BlL9s6


#65 [輪廻]
 
 
『え…』

一体この穴を塞ぐ他に何があるのだろうと首を傾げつつ男を見つめる。


暗闇に目が慣れてきたのか、今なら男の表情がハッキリと見える。


彼は『お楽しみはこれからだ』と言わんばかりの笑みを狂也に向けていた。


『一体…どんな事をするんですか?』

『まあそれは後でいいから。とりあえず先に穴を埋めてくれよ』

最初と比べてやけに口数が多くなってきた男に安心感と不安感を同時に抱きながらも、死体入りのビニール袋が入った穴を先ほど出した土を使って埋めた。

⏰:12/02/20 12:18 📱:iPhone 🆔:m1BlL9s6


#66 [輪廻]
 
 
こういった力仕事は経験がない為、埋め終わった時には息切れ寸前であった。


持っていたシャベルを地面に投げ捨て、その場に尻もちをつくようにしてへたり込む。


『お疲れさん』

男は、疲れきった狂也を面白がっているような口調で言いながら肩をポンと叩いた。


『それで…次は何をしたら…いいんですか?』

今度は力を使う作業でない事を祈りながら問う。

するとその祈りが通じたのか、男は狂也の捨てたシャベルを拾いあげて言った。


『今度は楽だから安心しな』

その言葉を聞いてホッと安心のため息をついた狂也だったが、次の男の一言でそれは束の間の一安心だった事になる。


『君とは共犯者って事になったけど、もしもの時もあるからさ…君も今ここで死んでくれないか?』

そう言って重いシャベルを上に振り上げたと思うと、それを狂也めがけて思い切り振り下ろしたー

⏰:12/02/20 12:20 📱:iPhone 🆔:m1BlL9s6


#67 [輪廻]
 
 
叫び声をあげる間もない、まさに一瞬の出来事。

だがシャベルを振り下ろすスピードは狂也にとってはそれほど早く感じなかった為、素早くそれをかわす事ができた。


予想外な男の行動に驚いている暇もなく、狂也は地面につけた肘の力を使って立ち上がり、男に背を向けその場から一目散に来た道へ向かって走り、逃げ出した。

走っている間、後ろから追ってくる気配はあったが、それは走り続ける内に徐々に消えていったー


男は50代くらいの小太りの男。

少し走れば疲れが出てくるのは当然だろうと思い、足を止めて後ろを振り返る。

⏰:12/02/20 22:03 📱:iPhone 🆔:w9S590UQ


#68 [輪廻]
 
 
そこには真っ暗闇が広がっているだけで、男の姿も気配もない。


安心したと同時に脚全体に疲労が来て、その場に再びへたり込む。


が、自分の命が狙われているのにこんな所で休んではいられないと思った狂也は、座り込んで10秒も経たない内に膝を抑えながらゆっくり立ち上がった。


そしてふらふらとしながらも歩き出し、男の車が停まっている駐車場を目指した。

⏰:12/02/20 22:04 📱:iPhone 🆔:w9S590UQ


#69 [輪廻]
 

 
途中から取り出した携帯電話のわずかなライトを頼りに進むと先ほどの駐車場が見え、その片隅に男の黒いワゴン車が停まっていた。


免許は持っていない為に運転はできないが、車内に何かないか探す事にした。


幸いな事に車の助手席側のドアには鍵はかかっておらず、狂也はその車内の探索を始める。


早くしなければあの男が来てしまうー

そんなプレッシャーと戦いながら携帯電話のライトを使って車内を照らす。

⏰:12/02/21 13:26 📱:iPhone 🆔:8biSCrPU


#70 [輪廻]
 
 
今まで見られなかった後部座席を主に調べていると、土木や建設関係に使われるような材料が無造作に置かれている。


それで、あの男はそういった職業なのだろうと納得した。


そんな様々な材料の中、携帯電話のライトに反射して、チェーンソーの刃が見えた。


男に襲われた場合の武器に最適かもしれないー

一瞬そう思ったが、これは立派な刃物。

自分は殺人者にはなりたくないというのもあり、チェーンソーを手にするのはやめる事にした。

別の方向にライトを照らそうとした時、チェーンソーの刃の一部に何か見えたような気がして、そこにライトを当て直す。

⏰:12/02/21 13:28 📱:iPhone 🆔:8biSCrPU


#71 [輪廻]
 
 
その刃先には薄黒い血のようなものに混じって、何かがこびりついていた。


『うっ…』

それを見て思わず声を出し、口元を手で抑えつつ、こびりついたものに顔とライトを近づける。


『(うわ…これ…)』

それは、何かの肉片のようなものだった。

それが血と一緒にこびりついているという事はー

背筋が一瞬にして凍りついた。


人は、予想外の事が起こったり、予想外の結論に至った時、一瞬思考が停止するー

まさにその通りの事が起きた。

⏰:12/02/22 18:54 📱:iPhone 🆔:V9qdvDAI


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