horrorU〜二重連鎖〜
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#82 [輪廻]
『ねぇ…3人共大丈夫なの?』
重い沈黙の中、気の強い女同級生が皆を見回しながら言う。
その質問に誰も答える事はなく、ほとんどがうつむいたまま沈黙を続ける。
だが少しして、石の上に腰かけていた響歌がスッと立ち上がり幹事の方へと歩み寄る。
『…村井ちゃん?』
目の前に立った真顔の響歌を、幹事はおどおどした態度で見下ろす。
:12/03/01 13:54 :iPhone :pWG6U8iw
#83 [輪廻]
響歌は幹事の顔を穴の空くほどしばらく見つめた後、一言放った。
『あなた…誰?』
その響歌の一言に、うつむいていた同級生皆が一斉に2人の方を見た。
『だ、誰って…』
明らかに動揺を見せる幹事の顔から響歌は一時も視線を外さなかった。
:12/03/01 13:55 :iPhone :pWG6U8iw
#84 [輪廻]
『私…旅館にいた時、一人一人の顔見て、この人はこの人だなって懐かしみながら思い出していったの。
でも、どうしてもあなたの顔だけは思い出せなかった。もちろん名前も』
『…………』
幹事はあちこち目を泳がせながら黙りこける。
響歌は視線を外し同級生らの方に向けると、幹事の方を指さして聞いた。
『皆はこの人の事覚えてる? こんな人同級生にいた?』
質問された同級生らは顔を見合わせつつ、徐々に幹事の方に歩み寄って行き、その顔を食い入るように見る。
:12/03/01 14:13 :iPhone :pWG6U8iw
#85 [輪廻]
『ん〜』
その中で、男同級生の一人が眉をしかめる。
そして少し見つめた後に彼も言った。
『言われてみれば……お前誰だっけ?』
『…………』
沈黙を続ける幹事。
:12/03/03 08:38 :iPhone :.AGkMq/.
#86 [輪廻]
ーこの幹事が誰なのか?
それだけで、現場は異様な空気に包まれた。
皆が幹事から遠巻きに離れていく中、響歌は何かを疑うような目つきで彼の顔を見る。
『同窓会の案内が届いた時から変だとは思ってた…。
だって、その案内に幹事の名前が書かれてなかったから。
普通は苗字くらい書いてあるものでしょ』
『…………』
『もう一度聞きます。あなたは誰? 私達の同級生じゃないですよね? 明らかに私達より年上だし』
『…………フ』
下を向いて黙り続けていた幹事は、ここでやっと口を開いたと思うと、力なくほくそ笑んだ。
:12/03/03 08:39 :iPhone :.AGkMq/.
#87 [輪廻]
『…何がおかしいんですか?』
真剣な表情で響歌が尋ねる。
幹事は下を向いたまま口元をひきつるようにして不気味な笑みを浮かべると、ついには声に出して高らかに笑い出した。
『くっ…ふふ……あっはっはっはっはっ!!』
突然の笑い声に、目の前にいた響歌は驚いて、思わずその場から後ずさりする。
『ちょっと…アンタ誰なの?』
響歌に代わり気の強い女同級生が、狂ったように笑っている幹事に近づきながら聞く。
:12/03/03 13:41 :iPhone :V518DNM2
#88 [輪廻]
『……やっぱり……』
幹事はそうポツリと小さくつぶやいた後、同級生らの方を見ると
『やっぱりアンタらと同級生ってのは無理があったか…』
と、観念したように言った。
『は…? じゃあ誰なの?』
女同級生がイライラした様子で聞くと、幹事は大きなため息を一つついてから、話し始めた。
:12/03/05 08:28 :iPhone :pOsPdp4A
#89 [輪廻]
『俺、今デスネットってところでバイトしててさぁ…この同窓会に参加するように言われたんだよね。まあ正確には、幹事をやれって事なんだけど』
『……!!』
言葉の一部を聞いた響歌がピクリと反応する。
『俺、もちろん最初は断わったんだよ? 俺、今年で丁度30だし無理があるって。でもデスネットの奴が……』
幹事がここまで言った時、墓の向こうから七瀬が叫び声をあげながら蓮と共にこちらに向かってきた。
『誰か!!』
『ナナ! 蓮!』
無事に戻ってきた二人を見て、響歌が嬉しそうな顔で近づく。
:12/03/05 08:29 :iPhone :pOsPdp4A
#90 [輪廻]
だが七瀬と蓮の様子がおかしい事に気づくと、その嬉しそうな表情はすぐに引っ込んだ。
『おい、田中はどうしたんだよ!?』
男同級生が墓の奥の方の暗闇を見渡しながら二人に聞く。
『………あの…』
『いい七瀬、俺が話す』
七瀬の言葉を遮り、蓮が皆の方を見て事情を話し始めた。
:12/03/05 08:45 :iPhone :pOsPdp4A
#91 [輪廻]
『安井ちゃんから聞いてると思うけど、安井ちゃんと二人で墓の中歩いてたら木の影に誰かいてさ。
声かけようと思って近づいたら、いきなり飛び出してきたんだよ…。
で、よく見たらそいつなんか刃物みたいなの持ってて…さすがの俺もびっくりしたんだけど、女が隣にいるのにビビってる訳にもいかなくて、そいつの刃物持ってる手をなんとか掴んで安井ちゃんを逃がしたの』
そう言うと皆は、地面にしゃがみ込んで身体を震わせている安井を見る。
『本当危なかったんだね…』
安井を見つめる女同級生が小さくポツリとつぶやく。
:12/03/06 08:44 :iPhone :EKy4GumM
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