horrorU〜二重連鎖〜
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#92 [輪廻]
 
 
『それで…田中はどうしたんだよ!?』

男同級生が言うと、再び皆は蓮に視線を戻す。


『田中は…』

それ以上は言えない事態でも起きたのか、蓮はそこで口をつぐんだ。


『桐谷…?』

『…蓮。ここからはあたしが話す…』

今度は蓮に代わって七瀬が口を開いた。

⏰:12/03/06 08:46 📱:iPhone 🆔:EKy4GumM


#93 [輪廻]
 
 
『あたし蓮が心配で追いかけて、男の人ともみ合ってる蓮を見て、夢中で二人に飛びかかったの。
あたしの体当たりで男の人が倒れて…そしたらその人があたしの顔見て…「お前だ」って言ったの。
小さい声だったけどちゃんとそう聞こえた…』

『“お前だ”…? ナナはその人知ってるの?』

響歌が首を傾げながら聞く。


『ううん、知らないよ。顔はよく見えなかったけど…声にも聞き覚えなんてないし』

『じゃあ…“お前だ”ってどういう事…?』

『あたしの方が聞きたいよ!』

『それで…どうしたの? 田中君は?』

『あ、うん…それで男の人が地面に落ちた何かを拾って立ち上がって、あたしに襲いかかってこようとしたんだけど…そこに田中君が現れて男の人の前に立ちはだかったの。そしたら………』

そこで七瀬は両手で顔を覆い、地面にしゃがみ込んだ。

⏰:12/03/06 09:15 📱:iPhone 🆔:EKy4GumM


#94 [輪廻]
 
 
『もしかして…ナナを庇って…?』

事態を察した響歌がポツリと言うと、七瀬の隣にいた蓮がコクリと頷いた。


『田中が…? 嘘…だろ…桐谷…』

田中の最も親しい友達であろう男同級生が今にも放心状態になりそうな顔で途切れ途切れにそう言いながら蓮に近づく。


『悪い…俺、男が七瀬に襲いかかろうとして、止めようとしたんだけど、いきなり田中が現れたから思わず…』

蓮はその同級生の顔を見つめながら申し訳なさそうに言う。

⏰:12/03/07 12:16 📱:iPhone 🆔:vqFNM0dE


#95 [輪廻]
 
 
同級生は蓮の前に立つと

『お…お前のせいじゃないよ…はは…うん…気にすんな…』

半笑いでそう言い、焦点の合っていない目で蓮を見ながら肩をポンと一回叩いた。


そんな中、女同級生の一人が大きな声をあげる。

『とにかく警察呼ばないと! あと救急車も!!』

その声をきっかけに現場は騒然となる。

⏰:12/03/07 12:17 📱:iPhone 🆔:vqFNM0dE


#96 [輪廻]
 
 
ある者は慌てふためき、ある者は警察に電話する為かポケットから携帯電話などを取り出す。


『警察は俺が呼ぶからお前は救急車呼べ!』

『わ、わかった…!』

警察を呼ぶと言った男同級生がダイヤルを押そうとした時だった。


『ま、待って! やめてくれ!!』

誰かの叫ぶような声がし、一同はその声のした方を一斉に見る。

⏰:12/03/09 11:48 📱:iPhone 🆔:Bv.Lz60E


#97 [輪廻]
 
 
そこには、この同窓会の正体不明の幹事が冷や汗をかいた状態で棒立ちしていた。


『は? アンタこんな時に何言って……』

『頼む! 警察だけは…!!』

気の強い女同級生の言葉を遮り、幹事は携帯電話を握る男同級生に手を合わせて言う。

幹事の動揺が、離れた場所にいてもひしひしと伝わってくるようだった。


『なんでアンタがそんな事言うんすか? 俺らの同級生が知らない奴に殺られたかもしれないんすよ』

『そうだよ! 重森、早く警察呼べよ』

『わかってる!』

幹事の願いも届かぬまま、同級生の重森は110番のダイヤルを押したー

⏰:12/03/09 11:50 📱:iPhone 🆔:Bv.Lz60E


#98 [輪廻]
 
 
20分後ー

男同級生の通報により、警察と救急隊が到着した。

七瀬と蓮が警察と共に墓の奥の挌闘があった場所を調べた所、そこに同級生の田中の姿はなかったという。

二人は『この場所で間違いない』と何度も訴えたが、血痕など痕跡が何ひとつ見つからなかった為、この通報はただの若者集団によるイタズラだと決めつけられてしまった。


ー警察や救急車が去り、現場には静寂が訪れる。


『意味わかんねえ…俺らがイタズラで通報したって? ふざけんなよ
…?』

通報した同級生の重森は、誰に言うわけでもなく、ただ地面に向かってつぶやいた。

⏰:12/03/09 12:35 📱:iPhone 🆔:Bv.Lz60E


#99 [輪廻]
 
 
『と、とにかく…寒くなってきたし旅館に戻らない?』

女同級生の一人が身体を震わせて尋ねると、一部の人がぞろぞろと歩き出した。


『ナナ…蓮…行こう』

石に座りうつむく七瀬と蓮に声をかける響歌。


『なんで…』

七瀬がものすごく小さな声でポツリと言った。

響歌が何と言ったのか聞き返す間もなく、すぐ響歌の方を見上げる。

その瞳には涙が溢れていた。

⏰:12/03/09 12:36 📱:iPhone 🆔:Bv.Lz60E


#100 [輪廻]
 
 
『なんで…信じてくれないの…? 警察は…』

涙声で響歌の目を真っ直ぐ見据えて尋ねる。


『それは…』

それはと前置きしたのはいいものの、なんと答えてあげればいいのかわからなかった。


すると、七瀬の隣に座る蓮が助け舟を出した。


『それは…俺たちにも少し問題があったと思う。だって、こんな真夜中に大勢の若者が墓にいるんだぜ? だからイタズラだと思われても仕方ない部分もあったと思うんだよな…』

『そ…そう、蓮の言う通りだと思う』

響歌が蓮の言葉に賛同した所で、七瀬は少し精神が安定したのか、上を向いて大きな息を吐いた。

⏰:12/03/09 12:37 📱:iPhone 🆔:Bv.Lz60E


#101 [輪廻]
 
 
『じゃ、俺達も戻るか。皆行っちまったし』

『そうだね』

蓮が、座っていた石から立ち上がり、七瀬もそれに続いて立ち上がる。


『…………』

そんな二人を、響歌は黙って見つめる。


『ん? どうかした? 村井』

『…え? いや、なんでもないよ。それよりさ…』

『……? なに? 響歌』

ポカーンとした顔で響歌を見る二人。

響歌は、二人が帰ってくる前に聞かされた幹事の告白の事を説明した。

⏰:12/03/10 10:37 📱:iPhone 🆔:klZv3ZOY


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