horrorU〜二重連鎖〜
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#11 [輪廻]
プロローグ2
新年を向かえ、中学の新年会も含めた同窓会を行う為、会場へ向かう村井響歌達。
その道中、同級生の運転する車内で響歌と友達の桐谷蓮、井本七瀬は、同乗している同級生から高収入アルバイトをしている事を聞かされた。
蓮がどんな会社かを尋ねると、同級生から衝撃的な答えが返ってくる―
それは“デスネット”という会社だと。
響歌、蓮、七瀬の3人はその場で一瞬にして凍りついた。
同級生は『どうかしたの?』と何度も聞いてきたが、3人は何も返す言葉がなかった。
:11/12/23 22:37 :Android :FnnF8gLw
#12 [輪廻]
それからは無言のまま、出発から約1時後、同窓会の会場へと到着する。
駐車場に停めた数台の車から同級生がガヤガヤと降りはじめ、響歌ら3人も重い足取りで降りた。
『わお! こんな豪華な旅館で同窓会? テンションあがるわぁ!』
外観を見渡しながら同級生の一人が騒ぐ。
皆の目の前には、最近新しくできたと思われる大きな旅館があった。
少しして、今回この同窓会を企画した大柄な幹事が皆の前頭に立つ。
『はいはい、ではでは! 早速中に入りましょう!』
やけにテンションが高い幹事の一声に、一同も盛大に盛り上がった。
:11/12/24 09:15 :Android :xjHyypq6
#13 [輪廻]
一方、響歌と蓮は旅館の外観を見ながら黙りとする。
『2人共、どうかした?』
隣にいる七瀬が、そんな2人の顔を交互に見ながら聞く。
『あ、いや…なんでもねえよ』
『うん…気にしないで』
『……そう?』
首を傾げつつ、再び幹事の方に向きなおす七瀬。
『では中へ!』
そして皆はぞろぞろと旅館の中へ入っていくー
:11/12/24 09:17 :Android :xjHyypq6
#14 [輪廻]
デスネットの事を聞いて内心不安や胸騒ぎはあったが、旅館で同級生と昔の話をしたり、豪勢な食事をしたりで、その事は次第に忘れていく3人だった。
時間も深夜0時を過ぎ、皆は話疲れたのか誰も口を開かなくなっていた。
そんな周りを見た幹事は、いきなり立ち上がって
『なあ皆! これから肝試しでもしないかい?』
と提案した。
同級生らは、一斉に幹事の方を見る。
:11/12/24 09:19 :Android :xjHyypq6
#15 [輪廻]
しばしの沈黙の後…
『肝試しか…そういえば中学の修学旅行でやったよな』
同級生の一人が懐かしそうに上の方を見上げて呟いた。
『じゃあやりましょう! この近くに最近起きた通り魔殺人事件の現場があるらしいから、そこで!』
その幹事の言葉に、今度は歓声があがる事はなく、部屋の中は再びシーンと静まり返る。
『あれ? 殺人現場はさすがにマズかった?』
同級生らの何か言いたげな雰囲気を悟ったかのように幹事は苦笑いしながら言った。
:11/12/24 09:21 :Android :xjHyypq6
#16 [輪廻]
『肝試しっていったら普通は墓地とかじゃない? この辺にあるかわからないけど』
そんな中、気が強そうな女の同級生が真顔で返す。
彼女のその言葉に一同は『そうだそうだ』と幹事に訴えかけるように連呼する。
『わかったわかった! ちょっと調べてみるから待ってて!』
数十人の大ブーイングに圧倒された幹事は、なだめるように言って鞄から携帯電話を取りだし、何やらカチカチといじりはじめた。
『ほんとに肝試しなんてやるのかな…』
静まり返った部屋で響歌が小声で蓮と七瀬に言う。
:11/12/25 11:10 :Android :35VMJZ/I
#17 [輪廻]
すると、蓮が応える前に七瀬が
『この同窓会が終わったら、またこうして皆で集まる機会はなくなるかもしれないし、今のうちの思い出作りにはいいんじゃない?』
と笑顔で応えた。
そんな七瀬を見て、響歌も自然と笑みがこぼれる。
『そうだよね。肝試しなんて中学の修学旅行以来だしね』
『でしょ? 楽しもうね!』
2人は顔を見合せて小さく笑い合った。
:11/12/25 11:12 :Android :35VMJZ/I
#18 [輪廻]
『俺はほったらかしかよ…』
笑い合う2人の横で蓮はボソッと呟く。
『あっ! そうだ!』
と…突然、響歌が何かを思い出したように笑いを止めて言った。
『どしたの? 村井』
『なに? 響歌…いきなり』
蓮と七瀬は響歌を見つめ、響歌の方も蓮と七瀬の顔を交互に見る。
3人の間でしばしの沈黙が続いた後…
『あ…や、やっぱりなんでもないや! 忘れて!』
『え…何? 気になるんだけど』
『つか村井、顔赤くね? 酒あんま飲んでなかったよな?』
同窓会の待ち合わせ場所である中学校に蓮と七瀬が来た時、2人が手を繋いでいた事と、普段は誰にでも苗字で呼ぶ蓮が七瀬の事を下の名前で呼んでいた時から、胸騒ぎがしていた響歌。
その胸騒ぎを収める為に今の2人の関係を単刀直入に聞こうとしたが、真っ直ぐに響歌を見つめる2人に圧倒され、途端に聞く勇気が出なくなっていた。
:11/12/25 11:14 :Android :35VMJZ/I
#19 [輪廻]
そんな時、蓮の方も何かを思い出したように小声で言ってきた。
『…そうだ。2人共、ちょっと廊下出れる?』
『…え? いいけど…なんで?』
首を傾げながら聞き返す響歌。
『忘れたのかよ。車の中で安井ちゃんが言ってただろ。デスネットでバイトしてるって…』
それを聞いて響歌と七瀬は揃って『あっ!』と口にした。
:11/12/25 11:16 :Android :35VMJZ/I
#20 [輪廻]
『シっ! とにかく…俺が最初に出ていくから、2人は5分くらいしたらトイレ行ってくるとか言って部屋から出ろ』
『わ、わかった…』
響歌と七瀬が小さく頷くと、蓮はスッと立ち上がり
『ちょっとトイレ行ってくるわ』
と、携帯電話の画面を見ている幹事に向かってそう言い、部屋の障子を開けてそそくさと廊下へ出て行った。
やましい事をしている訳ではないのに、なぜか緊張感が2人を襲う。
早くも5分を過ぎ、響歌と七瀬がゆっくり立ち上がって
『えっと、私達もト……』
と響歌が言いかけた時…
『あったぁ!!』
突然の幹事の大声によって、響歌の声は見事にかき消された。
:11/12/25 11:19 :Android :Gj0icVzI
#21 [輪廻]
『ちょっと! いきなり大声出さないでよ!』
先ほどの気の強そうな女同級生が思わず立ち上がって言う。
幹事は、女同級生を見上げて後頭部を爪でぽりぽりと掻きながら
『いやぁ…ごめんごめん。それより、この旅館の裏にある林を少し歩いた先に墓地があるって!』
と嬉しそうに言う中…
『ナナ…今のうちに出よ』
響歌が七瀬に耳打ちし、幹事らが騒いでいる時に2人はどさくさにまぎれて、その部屋を出た。
:11/12/26 11:49 :Android :m1XbORJ.
#22 [輪廻]
広めの廊下へ出て辺りを見回すと少し離れた所に、ポケットに手を突っ込んで壁に背をついている蓮がいた。
『蓮!』
七瀬が手を振りながら小さい声で呼ぶと、蓮は2人に気がつき、傍に駆け寄ってくる。
『遅かったな』
『ごめん、ちょっとあって。ね? 響歌』
『うん。ちょっとびっくりしちゃった…』
『ふうん…まあいいや。それより、安井ちゃんが言ってた事だけど…』
蓮は早速本題を切り出す。
:11/12/26 11:51 :Android :m1XbORJ.
#23 [輪廻]
『確かに、デスネットでアルバイトしてるって言ってたよね…』
『うん、言ってた言ってた』
『変だよな…。だって、デスネットって元々俺らの中学の時の副担が復讐の為に始めたサイトの事なんじゃねえの?』
『たまたま同じ名前の会社だったって事は…?』
『そんな名前の会社聞いた事ねえよ。七瀬…お前は聞いた事ある?』
『ううん、あたしもないな』
3人はそう話した後、難しい顔をしてじっと考え込む。
:11/12/26 11:52 :Android :m1XbORJ.
#24 [輪廻]
『…あっ!』
数分後、突然あげた響歌の声に蓮と七瀬は驚いて、一瞬体をビクッとさせる。
『響歌、どうしたの?』
『あの男…』
『…え? あの男って?』
七瀬が聞き返すと、蓮はすぐに誰の事かわかったように眉をしかめながら言った…
『あの警官なりすまし野郎の事か?』
『…うん。あの人言ってたの…“ゲームはまだ終わらない”って』
『あのオッサンがそんな事を? そういえばここ最近は俺達の前に姿を現してないよな』
『あの人、何を考えてるのかわからない。
私を殺そうと思えばいつでも殺せるはずなのに…襲ってこようともしないんだよ』
難しい顔をしながら、うつむき加減で言う。
:11/12/26 11:54 :Android :m1XbORJ.
#25 [輪廻]
『どっちにしろ奴が犯罪者な事には変わりないんだし、そんな奴の気持ちをわかってやる必要なんてねえよ…』
『そうなんだけどさ…何を考えてるのかわからないからこそ、次に何をしてくるかわからないじゃん』
『まあ、次何かしようとしてきたら俺が止めるけどね』
自信満々に言う蓮に、響歌は気付かれないようにクスッと小さく笑う。
『とりあえず、後で安井ちゃんにデスネットの事詳しく聞いてみるわ』
蓮がそう言って3人顔を見合せていると、後ろの部屋の障子がスッと開き、そこから幹事がひょっこり顔を覗かせた。
:11/12/26 11:57 :Android :m1XbORJ.
#26 [輪廻]
『話し声が聞こえると思ったら…3人で何やってるの〜?』
ニコニコ顔でそう尋ねながら3人の方に歩いていく。
『いや、なんでもねえよ。それより墓地は見つかった?』
『ああ、バッチリ! それで、今から行くか行かないか多数決をとってるんだけど、皆はどっちがいい?』
『俺はいいけど、村井と七瀬はどうする?』
そう言いながら2人の方に目をやる蓮。
『あたしもいいよ。響歌は?』
『え…あ、うん…いいよ』
一瞬ためらう響歌だったが、どの道行く事になりそうだったので、首を縦に振って頷いた。
:11/12/27 15:10 :Android :Vqta6GbI
#27 [輪廻]
『よし! これで行きたい人が11人で、行きたくない人が8人! よって、肝試し決行!』
『行きたくない人そんなにいるんだ』
七瀬が驚いたように言う。
『そりゃ、墓地に行って霊を連れて帰っちゃうって事もあるからな』
『帰ったら塩撒けばいいだけなのにね』
蓮と七瀬の和やかそうな会話を、興奮気味の幹事が遮る。
『さあさあ! じゃあ3人共、中に入って! 肝試しの計画を立てるから!』
幹事の無駄に大きな声が廊下中に響き渡った後、3人は彼の後に続いて再び部屋の中に入った。
:11/12/27 15:12 :Android :G/gAzf86
#28 [輪廻]
『…じゃあ皆さん! これから墓地に行きます! さっき話した通り、2〜3人組で墓地の中をぐるっと一周して戻ってくるという事で!』
こうして、一同は荷物を持って墓地へと向かった。
旅館の裏にある林道から入り、10分ほど歩いた所に、墓地はあった。
『はい、じゃあここで2〜3人組を作ってください!』
到着するなり幹事に言われ、皆はしぶしぶ行動する。
『俺は安井ちゃんと組むわ』
蓮は響歌と七瀬にそう言ってから、大人数の中、安井を探しにいく。
:11/12/27 15:14 :Android :FgjiK2UE
#29 [輪廻]
『じゃあ響歌、あたしと一緒に行こうよ。男なんかいなくても、あたし達だけで大丈夫だよね?』
『…そうだね』
少しして、それぞれ組む人同士が固まり、決まったのを確認してから幹事がニヤニヤしながら言った
『はい! では…誰からいきます?』
誰も名乗り出ず、しばらくシーンと静まり返った後、一人が手を挙げる。
『じゃあ俺達からで』
皆がその声の方に目をやった先には、蓮と安井がいた。
『おお、桐谷! 君達から行っちゃう? 度胸あるね!』
『いや…さっさと終わらせて帰りたいだけ』
涼しい顔でさらっと言う蓮に、一同は『おお!』と小さな歓声をあげる。
:11/12/27 15:16 :Android :fxxBpVP2
#30 [輪廻]
『安井ちゃん、行こ』
『桐谷くんって男らしいんだね。変わってないなあ!』
『いや、男だし』
蓮と安井はそんな会話をしながら、墓地の中へと入っていった。
残された皆はそれぞれ、その場にしゃがみ込んだり、携帯電話をいじったり、雑談をし始める。
『あたし達も座ろっか』
響歌と七瀬は、近くに置かれている大きな石の上に腰を下ろした。
:11/12/27 15:17 :Android :uM9k8Kw.
#31 [輪廻]
『きゃああああっ!!』
遠くから安井の悲鳴が聞こえたのは、2人が墓地へ入って5分ほど経過した頃だった。
その場にしゃがみ込んでいる同級生らは、その悲鳴を聞いて思わず立ち上がる。
『え、なになに!? もしかして幽霊でも出てきたのかな?』
女同級生がテンション上がり気味に、墓地の奥の暗闇を見ながら言い…
『2人共〜! 何かあったの〜!?』
幹事も、ものすごい大声で暗闇に向かって叫ぶように言う。
しばらくして、奥からばたばたと走ってくる足音が聞こえ、血相を変えた安井が現れた。
:11/12/28 11:30 :Android :wxhLVm72
#32 [輪廻]
『安井、どうしたの? 桐谷は?』
男同級生が、体を震わせている安井に向かって尋ねる。
『い…いきなり…ナイフ持った男の人が…あ、現れて…』
安井は震わせた声でそう言うと、その場にいた皆の体が固まった。
『そ、それで桐谷…は?』
恐る恐る聞き返す幹事も、みっともないほど動揺している様子だった。
響歌と七瀬は同時に大きく息をのんで、安井の言葉を不安げな顔で聞く。
:11/12/28 11:31 :Android :akMYcjjE
#33 [輪廻]
すると安井は放心状態になりそうなのを抑えつつ、ゆっくり話し始める。
『あ、歩いてたら桐谷が…木の根元に誰かいるって言って…近づいたら…そこからナイフを持った人がいきなり飛び出してきて…』
『か、顔は見たの?』
『いや…顔は暗くて見えなかったけど…ナイフの刃は見えた…』
『それで桐谷は!?』
『わからない…。ただ、私に“お前は早く逃げろ”って…』
それを聞いた七瀬は『キリ!』と大声をあげると、誰も止める間もなく、一人で墓の奥へと走っていった。
:11/12/28 11:33 :Android :A8mKg7FU
#34 [輪廻]
『…ナナ!』
響歌の声も、すでに届かない…。
しばらくの沈黙の後、男同級生が幹事の目の前に行き、胸ぐらをグッと掴むと、下から幹事を睨みながら
『おい! もし桐谷に何かあったら、こんなくだらねぇ肝試しを提案したテメェの責任だかんな!』
と言って手を放すと、彼も墓の中へと走って行った。
『田中まで行っちゃった…どうすんの?』
『こ、こんな時は普通警察に電話じゃないの?』
『3人共、大丈夫かなぁ…』
次第に、皆がガヤガヤと騒ぎ始める。
:11/12/28 11:35 :Android :XXELG/RQ
#35 [輪廻]
幹事は責任を感じているのか、すっかり口を開かなくなり、その場に呆然と立ち尽くしていた。
響歌は、地面にしゃがみ込んで身体を震わせている安井の隣にしゃがみ、声をかける。
『ちょっと…いいかな?』
『…………』
安井はゆっくり響歌に視線を向けると、無言で小さく頷いた。
『襲ってきた人…顔少しでも見えたりしてない?』
『…………』
響歌の質問に、彼女は何度も首を横に振る。
すっかり怯えきった彼女にそれ以上何も言う事ができず、響歌は再び立ち上がった。
『皆…無事でいて…』
プロローグ【完】
:11/12/28 11:38 :Android :IKxaRu/6
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