恋愛保存.

『恋愛保存の話って知ってる??』

悲しそうな君の横顔が今でも忘れられないよ。

佐倉柚希(ｻｸﾗﾕｽﾞｷ)22歳。

５年付き合った彼氏と別れて、久しぶりのフリーを楽しんでいた。
前の彼は７つ年上だった。

５年も付き合ったら、そりゃあ結婚を考えたこともあったけど…
煮え切らない彼に愛想をつかせて私から別れを切り出した。

ちゃんと好きだったのに、気持ちって儚いもんだね。

そんなこんなで出版社で働きながら毎日のように遊び歩いてばかりいた。
～♪

『アキからメールだ。』

アキとは中学で知り合ってからの大切な親友だ。
彼と別れてからしょっちゅう遊びに誘ってくれる。

アキ『今日飲みいかない-??○○社の若い子達と♪』
柚希『マジで!!行く!!』

即レスするあたしって…(笑)

でもさ、新しい恋もしたいし、こういう出逢いの場って大事にするべきだよね。
ま、正当化してるだけですが…

とにかく、今日は一度家に帰ってお洒落したいから定時であがれるように仕事頑張らなきゃ!!

こういう時のあたしの集中力はハンパない。

いつもなら残業コースの仕事量を、あっという間にこなし定時でタイムカードを切る。

さすがあたし★

『お??佐倉もうあがり??今日早くね??』

帰り支度をしていると、先輩の佐々奏(ｻｻｶﾅﾃﾞ)が話しかけてきた。

奏は、年は24歳。
色白で暗めの茶髪にゆるめのパーマ。
鼻が高くてパッチリ二重。
いわゆるイケメンだ。

柚希『はいっ!!今日これから飲み会なんです★』

奏『また飲みかよ!!たまには俺と飯行こうぜ-』

柚希『だって新しい出逢いが欲しいんですもん。ご飯、今度行きましょ♪もち先輩のおごりで♪』

奏『こないだ別れたばっかなら焦ることねぇのに。つかお前おごりってなぁ～…』

柚希『あ!!待ち合わせ遅れちゃう!!佐々さん、また明日!!』

奏『あ、ちょっ、変な男に引っかかんなよ-!!』

パタパタと小走りで会社を後にしながら、佐々さんって優しいな、と少しニヤケてしまった。

佐々さんってかっこいいしモテそうなのに全く彼女の噂を聞かない。

『勿体ないのにな-。』

アキと待ち合わせの場所に行く途中、そんなことを考えてた。

アキ『ユズ-!!お疲れ-♪』

柚希『アキ!!お疲れ-♪今日のカッコ可愛いね★』

アキは細くて身長158センチ。ロングの髪でゆるふわパーマ、ピンクのワンピが凄く似合う。

守ってあげたいって、こういう子のことを言うんだろうな。

アキ『ありがと★ユズも可愛いじゃん♪そのブラウス似合う-★』

今日のあたしはリボンタイのブラウスにミリタリーのショーパン。古着MIXというのかな??髪もショートボブで、アキとは正反対のボーイッシュ。

アキ『もう集まってるみたいだし、行こっ♪』

柚希『うん♪良い人に逢えるといいな-★』

アキ『ん～と、この店の前で待ち合わせなんだけど…』

『アキちゃん!!』

ふいに後ろからアキを呼ぶ声が聞こえた。

つられて振り返ると、２人のスーツ姿の男性が立っていた。

アキ『雅志さん!!お疲れ様です☆』

アキに声をかけた人が、今回の合コンを企画した鈴木雅志(スズキマサシ)さん。

年は25歳で、ガッチリした体つき、短めの髪をワックスでセットして、細くて切れ長の目が笑うとくしゃっとなって可愛い。

雅志『お疲れ-。ごめんな-急に呼んで。そっちの可愛い子が柚希ちゃん??』

柚希『はじめまして佐倉柚希です。可愛いだなんて…(笑)』

ナチュラルに可愛いなんて言われたから、少し照れてしまった。

雅志『よろしくな-。とりあえず店入ろっか。』

促されるまま、店に入ろうとした時、もう１人と目があった。

『…どうも。』

軽く会釈をされ、私も小さくペコリとした。

一瞬で思った。
…やばい。タイプだ。

黒髪にワックスでくしゅっと遊びを入れ、黒縁メガネが凄く似合う。
奥二重でキラキラした瞳に、笑うと見える八重歯が可愛い。
色黒で細身の身長は170センチ位だろうか。

雅志『じゃ-自己紹介しますか。藤から順番に-』

陸哉『藤陸哉(ﾌｼﾞﾘｸﾔ)23歳です。よろしくっす☆』

陸哉さんっていうんだ…
彼女いないから今日来たんだよね??
好きな人とかいるのかな…

陸哉さんのことばかり気になって、みんなの話なんか頭に入って来なかった。

雅志『柚希ちゃんって今彼氏いないの??』

ふいに聞かれて我に返った。

柚希『こないだ別れまして。早く次の恋がしたいんですよ-』

雅志『前の奴とはどれくらい付き合ったの??』

柚希『５年ですね-。』

雅志『５年ってえらい長かったな。そういえば藤も前の子と５年付き合ったんだっけ??』

陸哉『ちょ、鈴木さん!!俺のことはいいっすよ(汗)』

雅志『今でも引きずってるもんな(笑)お前も一途っちゅ-かバカだな-(笑)』

陸哉『いやいやいやいや!!引きずってるとかこの場で言ったらNGでしょ(汗)勘弁してくださいよ-(泣)』

雅志さんと陸斗さんのやり取りでアキは笑っているけど、私は心の底から笑えなかった。

そっか…元カノさんのことまだ好きなんだ…。

心の底から楽しめないまま、飲み会はお開きになった。

全員連絡先を交換したので、陸哉さんの連絡先もゲットできた。

雅志『じゃ-、また飲もうな-♪』

雅志さんはごきげんな様子で先に帰っていった。

アキ『楽しかったね-!!じゃ、あたしもタクシー捕まえて帰るわ♪ユズは歩き??』

柚希『うん♪いつもみたく歩いて帰るよ☆アキ泊まってく??』

アキ『明日も早いから今日は帰るよ(泣)また近いうちにねっ☆おやすみ♪』

ユズキ『そっか-。気をつけてね。おやすみ♪』
そう言ってアキも帰っていった。

そう言ってアキも帰っていった。

あたしの家は駅から歩いて10分位のアパート。
就職してから１人暮らしを始めた。

残ったのは陸哉さんと私の２人…

き…気まずい…

柚希『じゃ、あたしも帰ります。今日はありがとうございました。お疲れ様です。』

陸哉『あれ??佐倉さん、タクシーは??』

柚希『家まで歩いて10分位なんで歩きます☆』

陸哉『危なくない??家ってどっち??』

柚希『西口の方ですけど…大丈夫ですよ-(笑)』

陸哉『西口??じゃあ俺んちと同じ方向だから途中まで送るよ。』

柚希『えっ。いいですよ(汗)慣れてるんで(笑)』
陸哉『危ないから。いいから。行こっか。』

そう言って陸哉さんは歩き始めた。