偽コイビト

そいつは同じクラスの高橋駿だった

女子に人気があり
いつも教室に来る度に

キャーキャー言われている

なんで？こいつが
ここに？

［危ね―だろ］

［すいません…。］

［ん？お前は確か…同じクラスの小野寺？］

［あ、うん…］

［てか、どうやったら階段から落ちるんだよ］

そんなこと言われても……

［サッカーボールが顔にあたって……］

［あーさっきの連中か…］

本当に最悪だよ。
本を返しに行くだけで

なんでこんな目に合わなきゃいけないの

［えっと…助けてくれたんですよね？…ありがとうございます。］

［じゃあさ…なにかお礼して？］

［えっ？］

［お礼…］

なにか奢れってこと？

［じゃあ、お昼でも奢りますよ］

［いや…そうじゃなくて］

［えっ？］

駿は真っ直ぐ
わたしを見つめた

なになに？

［……。］

［その……なにをすればいいですか？］

［そうだな…］

駿は、しばらく考え

［例えば…俺の彼女になるとか？(笑)］

はははははははは？

いまなんて言った？

［お前さ、俺の彼女になれ］

なれ
彼女
俺の

俺の彼女になれ？！

［いやいや無理］

［は？なんで？］

［だって、わたし
あんたと話すの初めてだし…好きじゃないし！］

［お前バカ？］

［は？］

［彼女って言っても偽物ってことだろ？］

［えっ？］

待って話しが、全く
見えないよ

［俺がさ…いつも女子から囲まれての、お前も知ってんだろ？］

［うん…まぁ］

［正直言ってさ…俺ウンザリなんだよ…だからさ、彼女ができれば諦めてくれると思うんだよね。］

［いや…あまり関係ないと思いますが］

あんたが女子に人気あろうが
わたしには関係のないことだし

［無理です。あなたの彼女になったら…女子の嫉妬を買うことになりますから］

冗談じゃない

［その時は俺が守るから］

［……。］

そういう問題じゃないよ
関係のない、わたしを巻き込まないでください－

［彼女にならないらここでキスするから］

［ははははぁ？］

マジなにを言ってんの？
頭おかしいよ絶対

［で？なるの？ならないの？］

そう言って近づいてくる

チクショ－こんな奴に
わたしのファーストキスを奪われてたまるか！

［…な…る…］

彼女のフリをすれば
いいだけでしょう？

ファーストキスを奪われるぐらいなら

安いものよ！

［じゃあ…今日からよろしく！彼女さん］

そう言って駿はニコッと微笑んだ

こうしてわたしは、
こいつの偽彼女になった

［はぁ－］

［どうしたの？］

お昼休み

わたしは、あんなことを言ってしまった
自分に今さら後悔している

大きなため息をついた
わたしに夏美は驚いている

［なにかあったでしょ？］

［いや…なんでもっ］

［ジッ－］

［うっ……］

夏美は(私に説明しなさい)っという顔で
わたしを見つめる

夏美なら
いいよね？