砂糖が甘い理由
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#317 [花◆AV8KevAYKk]
紗弥の私服姿は,いつも制服を見ているせいか,ヒールを履いているせいか,一段と大人びて見えた。
ダメージデニムを履き熟し,黒いスカルのタンクトップにゴールドの大きなネックレスを纏って,髪型はいつも通り真っ直ぐなロング。
カツカツと靴を鳴らし俺に向かって歩いてきた。

[丁度だね]

そう言って紗弥に見とれている俺を抜かしてさっさと行ってしまった。

[まっ待てよ…]
いかん!つい紗弥に見とれて遅れをとった。
畜生…
紗弥より早く来るつもりだっのに。

⏰:06/08/19 23:39 📱:F700iS 🆔:y3RjzfcM


#318 [花◆AV8KevAYKk]
紗弥は俺に振返り,小さくため息をついた。

[あたしさ,絶対待ち合わせには待ち合わせ時間のI分前には来るの。

だから達也が遅れたわけじゃないから気にしないで。ごめんね]

え?紗弥ってエスパー?
[えッ…ああ。
わかっちゃった???]

俺はキャップをかぶり直したりして,照れを隠した。

[達也はわかりやすい]

紗弥は一言呟くとまたカツカツといつもの早歩きで,歩き出した。

⏰:06/08/19 23:43 📱:F700iS 🆔:y3RjzfcM


#319 [花◆AV8KevAYKk]
でもいくら足が長くて早歩きでも,やっぱり女の子。
俺はすぐ紗弥の横に並んだ。ちょっと優越感♪こんないい女連れて歩いてるんだ。

[何ニヤニヤしてんの?]

[なッ…なんでもないっす!]
やべー。焦った!
だけど何だかこんな会話も嬉しい。

[あっそ。…あ!]

紗弥は何かを思い出したのか,役場からきた道を少し戻った。

[紗弥???忘れ物かよ!?]

⏰:06/08/19 23:50 📱:F700iS 🆔:y3RjzfcM


#320 [花◆AV8KevAYKk]
[違う!あ…そう!]

どっちだよ!?汗
紗弥は小走りで今曲がったばかりの角を戻った。

何だかいい匂いがする。甘い…けど紗弥の香水とは全く違う。
俺も紗弥を追い掛けて角を曲がると,紗弥が立っていた。

小さなケーキ屋の前で。

[裕也はここのケーキが大好きなんだ。
毎回買ってくんだ。

達也が変な顔してるから,忘れちゃってたじゃん!]

紗弥はケーキ屋を指差して笑った。

⏰:06/08/19 23:56 📱:F700iS 🆔:y3RjzfcM


#321 [花◆AV8KevAYKk]
げっ。
俺ってば人のお見舞い行くのに手ぶらだったよ…
昨日服とか買ってる場合じゃなかった。

そう思って暗い顔をしてたら紗弥が俺の手を掴んで店に入った。

甘いバターの匂いが立ち込めた。

[B人で一緒に食べよ!
裕也はショートケーキと焼きプリンと…
あたしもショートケーキ。
達也は???]

紗弥はさっさと店員に注文をしてケーキを選んだ。俺は何だか呆然。
ケーキなんか久しぶりに食べるし,特に好きなケーキなんかない。

[あ…俺は紗弥と一緒でいいよ]

⏰:06/08/20 00:02 📱:F700iS 🆔:hUwWG9uI


#322 [花◆AV8KevAYKk]
そう言った俺を見て,紗弥は一瞬不快そうな顔をしたが

[お姉さん,やっぱりショートケーキはBつね!
それから,ケーキスティックA本,そのままさぃ]

紗弥は嬉しそうにレジに向かって歩いてく。

[あ!紗弥,俺が出す]
そうだよ。
せめて金くらい出さなきゃ。何のためにきてんだかわかんねーし。

でも紗弥は,小さく首を横にふって,俺に向かってピースサインを出して,店員のお姉さんに

[じゃあAで割ってください]
と言った。

⏰:06/08/20 00:07 📱:F700iS 🆔:hUwWG9uI


#323 [花◆AV8KevAYKk]
もうその場の雰囲気は紗弥のペース。
俺は口出しできないまま,店員のお姉さんに言われたとおりの金額を払って,俺はケーキの箱。紗弥は棒みたいなケーキ?を手に持って店を出た。

さっききたところの角を曲がると,紗弥は包みを半分まであけたケーキスティックを俺に差し出した。

[はい!
これちょ〜ウマイよ]

お金のことや俺の不安を気にさせないように,気をつかってくれているのがよくわかった。
だから俺も何も言わずに紗弥の行為に甘えた。

[うん。ちょ〜ウマい!]
そのケーキスティックはドライフルーツやクルミが入っていてほんとにおいしかった。

⏰:06/08/20 00:22 📱:F700iS 🆔:hUwWG9uI


#324 [花◆AV8KevAYKk]
同時に紗弥らしいな,って思った。

[あたしも裕也も甘いもの大好きだからさ〜]

紗弥は嬉しそうに俺を見て話した。
最近,紗弥は「あの目」をしない。

[そうなんだ。
俺も結構好きだよ]

[まじで?以外〜
なんで好きなの???]

紗弥はいつも理由を気にしてなんでなんでと俺に聞くことがあった。
携帯の機能にまでも,なんで?と聞いていた。

⏰:06/08/20 00:26 📱:F700iS 🆔:hUwWG9uI


#325 [花◆AV8KevAYKk]
[またなんでかよ〜!
理由なんかないよ]

…しまった。
案の定,紗弥を見ると不機嫌そうに目を細めて俺を見た。

[出たよ。
達也はいつもそればっかり!]

[う…
じゃあなんで紗弥は甘いのが好きなんだよ?]

俺は紗弥に今までこんな風に聞き返したことはなかったけど,理不尽だったので意地悪そうに紗弥に聞き返した。

⏰:06/08/20 00:29 📱:F700iS 🆔:hUwWG9uI


#326 [花◆AV8KevAYKk]
[え!?あたし?え〜と…]

[やっぱり紗弥だって…]

[うるさい!
裕也が好きだから好きになったんだよ]

紗弥はすごい理由をつけて,一気にケーキを口に放り込んだ。

[理由になってねーよ]

こんな感じでしばらく俺達は笑いあったまま歩いた。
でも,紗弥が何にでも理由を求めるのにもきっと何かわけがあるんだとも心の隅で考えたんだ。

それほど紗弥の「なんで」は異常だった。

⏰:06/08/20 00:34 📱:F700iS 🆔:hUwWG9uI


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