クソガキジジイと少年」
最新 最初 全
#483 [ザセツポンジュ]
━━季節は冬になった。
寒い寒い
冬になった。
ジョウはまだストラップを渡せずにいた。
生徒会役員が集まる生徒会室にエノシタさんはいつもいた。
用事以外何にも話せないジョウがいた。
それとは逆にかわいくなったエノシタさんとも、他の女子ともわけへだてなく楽しそうに話しているトミーがいた。
:06/09/12 00:30 :W41S :x4l6J1Kg
#484 [ザセツポンジュ]
ジョウは、いつもいつもエノシタさんだけを見ていたのだ。
だけれども、やっと気付いた。
自分の大好きな人の大好きな人は
イヤでも分かってしまうものなのだ。
(エノシタさん…いつもいつもトミーを見てる。ボクはエノシタさんをいつもいつも見てるから、よく分かってしまうよ。)
:06/09/12 00:34 :W41S :x4l6J1Kg
#485 [ザセツポンジュ]
「おーぃ。ジョウジロウちゃん。何考えてんだ帰るぞ。」
ボケーっと夕焼けを見つめ、心を切なくさせていたジョウジロウちゃん。
心をしめつけられるような、泣きたくなるような、もどかしい気持ちが全身をかけめぐっていた。
「ん?うん…そうだね。」
トミーは、遠い目をしたジョウを少し見ていた。
「…どの辺を見てるんだ。」
「ボクの心の中を見ているんだよ。トミー。」
:06/09/12 05:01 :W41S :x4l6J1Kg
#486 [ザセツポンジュ]
ジョウは白く淡いため息をついた。
そして少しくしゃくしゃになってしまって、渡せないまんまのストラップはポケットの中で冬眠している。
「……ジョウ。」
トミーは眉をひそめてジョウの顔を覗き込んだ。
「ん?」
「気持ち悪いぞ。詩人にでもなりたいのか。」
「……。それもいいね」
:06/09/12 05:09 :W41S :x4l6J1Kg
#487 [ザセツポンジュ]
ジョウは特に言い返す力もなく、カバンを背負った。
「トミー。おうちへ帰ろうか。ボクは早く帰りたいよ。」
「お前変だぞ。変態だ。早く帰りたいのにも関わらず、1時間も夕日を眺めたお前は異常だ。ワガママだな。俺は待ってたんだぞ。」
「ごめんごめん。」
:06/09/12 05:13 :W41S :x4l6J1Kg
#488 [ザセツポンジュ]
トミーは前を歩いた。
日が暮れて、薄暗い道を二人は1列になって歩いていた。
「なぁ。」
「うん。」
最初に口を開いたのはトミーだった。
「具合悪いのか?ジョウジロウちゃん」
体操服を蹴りながら、ぶっきらぼうに前を歩くトミー。
ジョウは少し小走りしてトミーの横に並んだ。
「健康だよボクは。」
「そっか。ならいいんだよ。」
:06/09/12 05:22 :W41S :x4l6J1Kg
#489 [ザセツポンジュ]
トミーはもう何にも言わず、体操服を蹴りながら、ぎこちない鼻歌を歌って歩いた。
ジョウは複雑な気持ちを重たいカバンの中に詰め込んで歩いた。
「ジョウ。また明日な。」
「うん。バイバイ、トミー。」
:06/09/12 05:28 :W41S :x4l6J1Kg
#490 [ザセツポンジュ]
コトッッ━━。
コトッッ━━。
コトッッ━━。
翌朝、ジョウはいつもより早く目が覚めた。
(じぃちゃん、こんな朝からどこ行くんだろう…。ぅぅ…寒い…。)
ジョウは布団にくるまった。
今日はいつもより冷えているらしい。
ジョウの部屋のテレビがそう言っている。
:06/09/12 05:35 :W41S :x4l6J1Kg
#491 [ザセツポンジュ]
ジョウはバサっと起き上がり支度を始めた。
こんな早くから支度をしたって、トミーが迎えに来るにはまだまだ時間がある。
ジョウは顔を洗い、制服を来てマフラーを巻き、重たいカバンを背負い、支度をすまして家を出た。
(トミー。今日は先に行くよ。)
ジョウは、隣のトミーの家を少し見つめて歩き出した。
白い息。
冷たい風。
赤い鼻先。
ジョウだけが知っている気持ち。
今日は一段と冷えているからだろうか。
歯をくいしばって
涙が込み上がってこないように
ジョウは歩いた。
:06/09/12 05:47 :W41S :x4l6J1Kg
#492 [ザセツポンジュ]
「あんた。おばちゃんに会いたいからってこんな早い時間に来て、一体何をしでかすつもりなのよ。スケベね。」
用務員のおばちゃんが教師用の玄関を掃き掃除しながら、一番のりしたジョウをお出迎えしてくれた。
「おはようおばちゃん。朝から言ってくれるじゃない。疲れるよボク。」
ジョウはおばちゃんに愛想笑いをして
生徒用の玄関の扉を引いた。
「ん!?」
:06/09/12 05:59 :W41S :x4l6J1Kg
★コメント★
←次 | 前→
トピック
C-BoX E194.194