クソガキジジイと少年」
最新 最初 🆕
#1 [ザセツポンジュ]
オレ、木田トミオ14歳。
で、オレのじぃちゃん。
木田シゲル62歳。

『トミー。トミーやぁい。おーいトミー。』
朝からこんな大声を出すオレんちのじぃちゃん。

とうとうボケたんだ。
…その方がいい。このままボケて、老人ホームへ

人事移動だ。

⏰:06/06/12 01:03 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#2 [ザゼツポンジュ]
格言係からついに降格する時がきたのだ。

よし。今日はいい日だ。
『うるせー。なんだじじい。』
じじいは玄関で水槽を覗き込んでいた。

『お前じゃないんだよ。わしゃこのタートルに話し掛けてるんだ!!っつの。』

『じゃーオレの名前をこんな汚い亀に付けんじゃねぇよ!!』

チッと舌打ちをかましやがった。

⏰:06/06/12 01:08 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#3 [ザゼツポンジュ]
『お前はトミオ。こいつはトミー。お前は日本人。こいつは外国人だ。そしてお前はトミオというちょっとダサい名前に色をつけただけのニックネームだろ。だけどなこいつは…』

『うるせぇな!!なげぇよ!!わかったょ。悪かったよ!!』

⏰:06/06/12 01:11 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#4 [ザゼツポンジュ]
ウチのじぃちゃんは、もっともらしいことを一日一個は言ってくる。

人間はこうあるべきだとか、そんなことはしてはいけないんだとか。

悪いがオレはチャラチャラ生きたい。
女に囲まれ、ワーワーキャーキャー言われていたいのだ。
例え40になろうとも50になろうとも。

⏰:06/06/12 01:14 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#5 [ザゼツポンジュ]
自惚れているわけでは決してないのだが、

オレはモテている。
…そして童貞じゃない。
まさにオレは最強なのだ。
かわいい女が好きだ。
はやりものが大好きだ。
あくまでもランキングにこだわりいち早くトレンドのものを身につけて、さっそうと歩いていたいのだ。

⏰:06/06/12 01:17 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#6 [ザゼツポンジュ]
しかし、じぃちゃんの話を聞いていると、ついつい汚染されそうになる。

オレは型にはまりたくはないのだ。
時には右に曲がり、ちょっと原っぱで一休みし、苺をひとつぶ…そんなのでいいじゃないか。
一本の道をひたすらまっすぐ…なんて、そんな虫のわきそうな事は断じてしたくないのである。

⏰:06/06/12 01:20 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#7 [ザゼツポンジュ]
ひとつ言っておくがウチのじぃちゃんは、しっかりしているワケではないのだ。
変だ。変人だ。
口をすっぱくしていつも言う事がある。
『万引きはしてはいけない。とくに宇野店ではしてはいけない。
ただ、お墓のお供えものならば、盗って食べてもなんら問題はない。そんなに菓子が食いたいんならお墓にいきなさい。なぜなら、誰も食べられないからだ。ただのあまりものだありゃ。わかるか!!?宇野店のババアは人情もある。それに計算もしなくてはならないのだ。人が困る事はしてはいけないんだよ、トミオ』

⏰:06/06/12 01:25 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#8 [ザゼツポンジュ]
宇野店とは、店の番をしだして半世紀以上たつという、90歳をこえたシワクチャのおばぁちゃんがベンチに座っている小学校の裏の駄菓子屋の事だ。
じぃちゃんよりももっと年老いたばあちゃんが、駄菓子を毎日計算している。
オレ達にとっちゃ、万引きの練習場だった。
            でも、じぃちゃんがそう言うからオレは手を引いた。
それと、ウチの隣にもう一人、変なじいさんが住んでいる…

⏰:06/06/12 01:31 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#9 [ザゼツポンジュ]
『ジョウジロウ、ワシはみーちゃんが好きなんだが、みーちゃんには彼氏がいるんだ。ロックな奴らしい。要は変人だ。ワシは苦しいよ。』

ボクの名前は鈴木ジョウジロウ、14歳。
そして女好きのボクのじぃちゃんの名前は、鈴木ひとし62歳。
『じゃあじーちゃんもロックになればいいじゃない!!?』
じぃちゃんがプチ失恋をする度に、ボクはプチ慰めと称し一言で慰めた。

⏰:06/06/12 01:46 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#10 [ザゼツポンジュ]
ボクんちにお父さんはいない。
結構ちっちゃい時どっか行って今だ帰ってきていない。
もう絶対帰ってこないのは、ボクも14歳にもなれば察しがつくのだけれど。
ばーちゃんはとっくの昔に死んだんだけど、じーちゃんの、このデレデレした態度がばあちゃんを苦しめていたのではないかと、ボクは今でも疑問に思う。
じーちゃんはこの世のメスというメスが大好きだ。
ボクはじーちゃんっこでじーちゃんは好きだ。

ただ、完全に一つ言えるのはじーちゃんのようには決してなりたくない。

⏰:06/06/12 01:51 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#11 [ザゼツポンジュ]
『まさこの散歩、今日誰が当番だ!!?』
まさことは、3年前から飼いだしたウチんちの犬。
名前はじーちゃんが決めた。もちろんじーちゃんが拾ってきた。
その当時、一目惚れした女の子の名前だ。
『ぁ、ボクだ。じーちゃんも一緒に行くか!!?』

⏰:06/06/12 01:55 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#12 [ザゼツポンジュ]
『いや、いい。ワシは童貞とは歩きたくない。悪いなジョウジロウ。いつ何時もレディーを誉め、優しくするのだよ。まさこを頼んだ。ぉぃ、一言めは今日もかわいいなと言ってから連れ出すんだ。デートだと思え。わかったな!!?よし、行け。』

確かにボクは14歳、童貞だ。
だかしかし、まさこはオスだ。

⏰:06/06/12 01:59 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#13 [ザゼツポンジュ]
ボクもお母さんもこの事実については、墓場まで持って行くつもりだ。
まさこがオスだと知れば、じーちゃんは綱をちょんぎってしまうかもしれない。
隣に住んでいる、じーちゃんの同級生のきーさんと言う人と大の仲良しだ。
ボクはきーさんの孫のトミーと同級生。昔からよく遊んでる

⏰:06/06/12 02:04 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#14 [ザゼツポンジュ]
木田シゲル、鈴木ひとし。共に62歳。
きーさんとすーさん。
同級生であり仲良しだ。
そしてうっとうしいことに家が隣である。

だがすーさん宅を2年前、新築に改装をしたため、きーさんは少しヤキモチを妬いているのだ。
そして今だちょっと根に持っていることがある。

⏰:06/06/12 02:08 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#15 [ザゼツポンジュ]
すーさんは2年前のエイプリルフール4月1日、
きーさんに、こんな話を淋しそうにしたのだ。
『ワシには金もない。そして最近風呂で数を数えるといつも4つ目でつまづいてしまう…なんとも不吉なんだ。だからこの家を壊してワシはさくらんぼホームというかわいい名前の、シワクチャばぁさんが、わんさかのたうちまわる老人ホームへと……なぁ、きーさん。またいつの日かイタズラを一緒に考えられる日が来たならば…なぁきーさん。だまっていてごめんよ…』
『すーさん…すーさん』

⏰:06/06/12 02:14 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#16 [ザゼツポンジュ]
きーさんは涙した。
エイプリルフールだという事に気付かないまま

涙した。

すーさんは姿をくらました。
そしてすぐすーさんちは取り壊されていった。
隣の家がガシャンガシャンと音がする度
きーさんは胸を痛め
涙した。
2階のきーさんの部屋で、当時12歳の孫のトミオとあとかたもなくなったすーさんの家を見ながら、きーさんは半世紀分の思い出をトミオに語った…

⏰:06/06/12 02:19 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#17 [ザゼツポンジュ]
どっちがくしゃみを早く出せるかティッシュを細く丸めて鼻をつつき、競争した話。
わざと遠くへ行き、知らない道をさまよい、カンだけを頼りに家へ帰るという無駄な冒険をしていた話。
すーさんが好きだった女達の数のほんの少しだけではあるが50人分の話。
きーさんとすーさんが二人で川原で遊んでいるところを写真で撮られ、
“ここでは遊ばない”という注意事項のモデルにされていた話

⏰:06/06/12 02:26 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#18 [ザゼツポンジュ]
そんなこんなで5時間もしゃべり続けているうちに、またもや
涙した。
『なぁジジイ。すーさん帰ってくるんだぜ。』
すーさんとの思い出話は3分の1も聞き入れてはいないが、トミーは平然として、一言、言い放った。
『どこにだ、なぜだ。』
問い掛けたその時

⏰:06/06/12 02:35 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#19 [ザゼツポンジュ]
『トミー!!あそぼー!!』

(は!!すーさんの孫だ。ジョウジロウだ。どうしたんだ、なぜだ!!……すーさんカムバックなのか!!?そうなのか!!?いやちがう…お別れを言いにきたのだ、そうだ。)
『やぁ、きーさん生きていたのかい!!?』
ジョウは曇り一つ浮かべない晴れ晴れとした表情できーさんの目の前に現われた。
『ジョウジロウちゃん…ワシは辛くてたまらんよ。』
また、そしてまたきーさんはみっともなく
涙した。

⏰:06/06/12 02:40 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#20 [ザゼツポンジュ]
『そんなにボクんちが新しくなるのが嫌なのかい??』

『はて?ジョウジロウちゃん。ワシはボケたのかもしれんな。耳かきを持ってこないか今すぐ』

トミーもジョウもニンマリ笑った。
『すーさんはエイプリルフールにウソをついたんだよハハハハハ。』

⏰:06/06/12 02:44 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#21 [ザゼツポンジュ]
きーさんはついに気付いた。流した涙が実に無駄だったということを。
『ワシは女が好きなんじゃ!!ばーさんに内緒で、かわいこちゃんと接吻してしまった日付なら忘れもしない!!だがな!!60にもなったジジイから聞いた話の日付けまで覚えてられると思うか!!エイプリルフールにウソをつく奴ぁ、本日から刑務所行きじゃ!!
お前達!!そんな事で笑っているヒマがあるんなら二つ上のねーちゃんの乳でも揉んできてみろ!!わかったか!!』

ゴツン。

きーさんのゲンコツは痛いのだ。

⏰:06/06/12 02:50 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#22 [ザゼツポンジュ]
きーさんの孫はトミー。
すーさんの孫はジョー。

きーさんは何かと格言好きだ。すーさんは何かと流されやすく、影響されやすい。60過ぎてもミーハーだ。旬な女の要チェックはかかさない。
一方孫達はこの二人のジジイに振り回される毎日を送っており、ドリルどころではない。
そして普通の14歳ではいられなくなるのだ。

⏰:06/06/12 02:55 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#23 [ザゼツポンジュ]
クソガキジジイ二人とマセ気味少年二人の。
そしていきつけのこじゃれたカフェで、物語は色を濃くする。
少年のようなじーさんと、少し大人びた中学2年生。
プラマイはゼロだ。

え?私は誰かって!!?
後で分かりますよ。

⏰:06/06/12 02:59 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#24 [ザゼツポンジュ]
ここ1年くらい前にオープンしたカフェ。
最初に見つけたのはすーさんだ。かわいい女の子を探索中、カフェの前で小黒板にメニューを書いている小さくて真っ白のかわいいかわいい女の子を見つけたのだ。
そしてすーさんはその子を見つけたその日から、きーさんを連れてこのカフェへ通うようになった。
もうすぐ一年になる。

⏰:06/06/12 03:03 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#25 [ザゼツポンジュ]
『小夜子ストロベリーをふたつ』
きーさんは、ここの小夜子ストロベリーが大好物だ。
コップいっぱいにただでさえ甘い苺を潰し砂糖をたっぷり過ぎるほど混ぜた、糖尿病なら即死亡の甘い甘いデザート。
すーさんは無理矢理この甘い小夜子ストロベリーに付き合わされている。
『甘いなぁ。ワシはこんなにも甘い恋心を抱いた事が一体何度あっただろうか…』
きーさんは毎回必ずこのセリフを吐くのだ。

⏰:06/06/12 03:08 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#26 [我輩は匿名である]
おもろい

⏰:06/06/12 03:11 📱:D702i 🆔:XtEPLd5I


#27 [ザゼツポンジュ]
基本的にはアメリカンテイストだが、ガチャガチャしているわけではなく建物は木材の優しい感じで出来ていてカントリー風だ。証明はオレンジの小さな証明がいくつもやんわりと包む。
60年代の懐かしい洋楽が流れ時間をゆっくり刻む魔法をスピーカーからふきかけている。

オープン朝の7時ピッタリにつけば、きーさんとすーさんは貸し切り状態で小一時間ゆっくりすることができた。

⏰:06/06/12 03:32 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#28 [ザゼツポンジュ]
席は10席弱で、カウンターもあり、広いわけではないが決してこじんまりとしているわけでもない、ちょうどいい広さで、このカフェには道路に面した窓際の席一つだけになぜか“七夕”と刻まれいた。
きーさんとすーさんはこの七夕の席に必ず座った。
すーさんは行き交う女子中学生を犯罪者並みにジロジロ観察し、きーさんはゆっくり甘い小夜子を口に運び、時折雑談を楽しむという老人らしくない朝を共にしていた。

⏰:06/06/12 03:40 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#29 [ザゼツポンジュ]
そしてこの席には、黄色いノートが置かれてある。
夕方には密集する若いギャル達がこのノートにプリクラを貼りまくっていた。
きーさん達はこのノートを開いた事はない。
かたや窓の外に夢中になり、かたや甘い苺に身を委ね、ノートの存在なんぞ気にも止めていなかったのだ。

⏰:06/06/12 03:45 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#30 [ザゼツポンジュ]
このカフェの名前は
AREA CAFE
#7791
(エリアカフェ ナンバーナナナナキュウイチ)きーさん達は
『略して、ななくいー』
別に対した略にもなってはいないが数字しか読めないためか、こう呼んだ。

この7791カフェは必ず朝は変なジジイ二人で貸し切りになる。

⏰:06/06/12 03:53 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#31 [ザゼツポンジュ]
『トミオ。お前はどんな女がいいんだ。』
きーさんはすーさんとの作戦会議に使う糸電話を制作していた。
『オレー?やっぱ見た目のいい奴がいいよな。オレクラスになるとな。』
トミーは宿題の数学の問題集を解いていた。
『トミオは、下の下クラスに降格した。たった今。』トミーはシャープペンシルを置いた。そしてハサミに持ちかえコップとコップの間にピンと張ったタコ糸をチョキンと切った。
『なぜだ。なぜそんなに下のクラスなんだ。』
ゴツン。
きーさんのゲンコツは痛い。

⏰:06/06/12 04:02 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#32 [ザゼツポンジュ]
『まず、お前は今、一所懸命数学と戦っている。そこがダメだ。パラパラ漫画で数学ができないことを挽回する度胸がないということだ。あらーん、やだーん。トミオくんのパラパラ漫画何ておもしろいんでしょー。先生好きよーこうゆーのー。合格くらい言わせてみろ。あの女はすーさんいわく年下好きだ。すーさんが言うんだから間違いはないぞ。』        きーさんは、また糸電話を作り直す準備に取り掛かった。

⏰:06/06/12 04:07 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#33 [ザゼツポンジュ]
『ジジイ。質問と答えと全然関係ねぇじゃんかよ。』とりあえずトミーはシャーペンを置いた。
『おぉ。間違えた。種目を間違えたようなもんだ。とみお、よく聞け。女は顔ではない。セックスも大切だが気が合うかどうかだ。ぺっぴんの上にはべっぴんがいる。お前は嫌でも街を歩く。そうすればまし今可愛い彼女を連れていたとしてもだ。そいつよりもかわいい人をお前は見てしまうだろう。』

⏰:06/06/12 04:14 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#34 [ザゼツポンジュ]
きーさんはメジャーを使い隣のすーさんの部屋まで何センチか計っている。そしてきーさんは再び女に対しての持論を話しだした
『見かけを求めるなんざ、くだらないことだ。かわいい女とセックスをした。そして性病になった。そんなオチだ。ちょっとした女がかわいいかわいいとちやほやされてみろ。ただのサセ子。もしくは自分を鏡で見て酔い痴れるだけのクズに過ぎない。』

⏰:06/06/12 04:21 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#35 [ザゼツポンジュ]
『努力をして何かを掴み取ろうとしている女を見極めろ。そこいらの女とは違うぞ。そんな女がいいぞ。でないとお前すーさんみたいなロクでもないジジイになるぞ。それでもいいのか!!?え!!?』
トミーは指先でシャーペンを回し珍しくきーさんの話を聞いていた。
『でもオレすーさんの観察力見習いたいよ。』
『頼むがワシより先に死んでくれ。トミオちゃんはカスだ。いいかお前考え直せ。よく聞けよ。』

⏰:06/06/12 04:26 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#36 [ザゼツポンジュ]
『顔だけちょっといい奴なんていっくらでもいるんだ。だがホントに自分を理解してくれて、お前もそれと同じくらい相手を理解しようとし、どっちかがかたよっていてもダメでっていうな、そんな貴重な恋愛をしてほしいんだよ。すーさんみたいにデレデレキャバクラに金を落としているようじゃいかんぞ。』

⏰:06/06/12 04:30 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#37 [ザゼツポンジュ]
『ワシだってそりゃあピチピチのおねぇちゃんは好きだ。だがしかし現実62にもなったジジイに本気になるか!!?ただの軽いひとときの遊びと割り切っている。すーさんみたいにワシは馬鹿ではないのだ。勉強ばかりができる子がいいのではないぞ。奴らは人間を数字で見ているからな。敵だ。かといって鏡ばかりを見ているような女もダメだ。』

⏰:06/06/12 04:34 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#38 [ザゼツポンジュ]
『そんな女は気持ちが悪い。ワシはどうも苦手だ。勉強はガツガツできなくていい。最低限できればいい。優しい気持ちをいつも持ち、悔しさでも努力に変えるしまえるチカラがある、そんな子がワシはタイプです。……ワシの好き嫌いはどうでもいいが、トミオちゃん、どーだ。』
トミーは問題集に向かっていた。
『とりあえず話がなっげーんだよ。』
『お、パラパラ漫画を書く気になったのか!!』
『今女の話してたんじゃねーのかよ、ぼけ!!』

⏰:06/06/12 04:41 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#39 [ザゼツポンジュ]
糸電話とは、二つの紙コップの間に糸をピンと張ればいいだけの事である。
『よーし、すーさんとのトランシーバー完成。おーい、すーさん生きてるかー。』
窓から顔を出しきーさんは隣のすーさんを呼んだ。
が、すでにすーさんは、つったっていたのだ。
『ロクデナシのモテない死にかけジジイで何が悪い、きーさん。』
別にそこまでは言ってないが心のなかで思っているのは確かだろう。
『ふぉっふぉっふぉっ。プライバシーのかけらもないのうこの街は。』

⏰:06/06/12 04:46 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#40 [ザゼツポンジュ]
━━━夕方電話が鳴った。
電話をとったのは木田家の悪党、シゲル62歳。
通称きーさん。
『はーい、もしもし。』
『あ、あの。』
若い女だった。
(こないだすーさんと行ったキャバクラのねーちゃんか!!?)
『あ、もしかしてキララちゃーん?』
ちょっと体をくねらしたきーさん。この間チラシの裏に書いた、家の電話番号をキャバ嬢に渡した。
『…いえ、ちがいます。』テンションは急降下。不機嫌は絶好調。勝手にキャバクラの女だと思った自分が恥ずかしくてたまらない。そんな木田シゲル62歳。

⏰:06/06/12 04:57 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#41 [ザゼツポンジュ]
『誰だ!!こんな時間に!!名を名乗らんか!!』
夕方の6時半です
『すいません、えのしたと申しますが、ジョウジロウくんいらっしゃいますでしょうか!!?』
『はぁ!!?ウチは木……』 
はっっ!!!!ピンっっ!!
きーさんのテンションは急上昇。頭の回転のレベルは上がった。

⏰:06/06/12 05:01 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#42 [ザゼツポンジュ]
『木ー…のうからジョウジロウは行方不明でしてね。』
『…あの、今日学校で見ましたが。』
『ちょっとしたジョークです。お嬢さん、ウチのジョウジロウに何かご用でも!!?今はちょっと犬の散歩へ行っているのだけれどもね、ちなみに犬の名前はまさこと行って、すーさん……すーさ…数三年前くらいに好きだった女の名前でさて』

⏰:06/06/12 05:11 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#43 [ザゼツポンジュ]
『???ぃや、いないならいいんです』
『よくないわ!!!!えのしたさんジョウジロウに用事ならメルアドを教えなさい。メールするように伝えておくから。』
『は、はい。じゃあ言います。ディー、イー…』
『やや!!?イージー!!?』
『ディー、イー…』
『ジー、ジー!!?誰がシジイじゃ
『…デー』
『でー?あ、デーね、デー…っと。で!!?』
メルアドを聞き出すのに20分もついやした。マセていても62である。

⏰:06/06/12 05:25 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#44 [ザゼツポンジュ]
『そいで、えのしたさん、ジョウジロウが好きなのかい!!?』
『い、いや、あの、いえ、や、ち』
『ぅぁーー、いーんだよ、みなまで言うんでない。検討を祈っているよ。アディオス!!!!』
ガチャン。

さも自分が14、5の少年かのように急いで二階へ駆け上がった木田シゲル62歳。

⏰:06/06/12 05:30 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#45 [ザゼツポンジュ]
『すーーさん!!すーさん。いいネタだーーーっと。おーっといけない。』
シー。何のために、糸電話を作ったんだきーさん。
ひょっこり顔をだしたすーさんに、口パクで糸電話使用を要求。
ウインクのできないすーさんは両目をつぶり、OKサイン

⏰:06/06/12 05:33 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#46 [ザゼツポンジュ]
窓をある程度閉め、ピンと糸を張り、きーさんは紙コップを口にあてる。すーさんは耳にあてる。
『今さっき、えのしたと言う女から電話がかかってきた。』
『どこの店の女だ!!?』
すーさんは、耳にあてたまましゃべっている。
『そしておたくのジョウジロウへの用事だが、間違えてウチへかけてきた。』
『なにを!!?中にの分際でキャバクラデビューとは、なんったる事だウチの孫は!!!!』
まだ耳にあてっぱなしだ。
このじいさんら二人は糸電話のしくみを把握できてはいない。
『ジョウジロウが童貞を捨てるチャンスだがそうさせられん。もっとこの状況をハプニングと化してサプライズにするんだすーさん。』

⏰:06/06/12 05:41 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#47 [ザゼツポンジュ]
『絶っっっ対だめだ!!あのジョウジロウがなぜ、おねーちゃんからアプローチを受けるんだ!!二重だからか!!は!!もしや、ジョウジロウの奴、営業されかけているんでは…いかんいかん。中2で借金は背負わせられん、ダメだダメだ。ぃゃ…キャバクラのねーちゃんとは言えど、ひとりの女だ。若い男が好きな女もいるだろう。ジョウジロウの奴め…いつの間に酒なんぞくらうようになったんだ。』
混乱しまくるすーさんを誰も止められない。

⏰:06/06/12 05:47 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#48 [ザゼツポンジュ]
『じーちゃんどうしたの?』
ジョウが犬の散歩から帰ってくるやいなや、わけのわからぬ独り言をしゃべっている祖父が心配になる。
『わ、わっっ!!ジョウジロウ!!どこまでできそけないなんだ!!この童貞野郎!!じーちゃんを脅かして何が楽しいんじゃ。下に迎えが来るところだったぞ、そこそこいい車で死神が、馬鹿たれ!!脅かすんじゃない!!』すーさんは糸電話どころではなくなり驚きついでに階段を降り、隣の木田家へと10歩ほど歩いた。

⏰:06/06/12 05:53 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#49 [ザゼツポンジュ]
『おじゃまします。』
小さく挨拶をし、きーさんさんの部屋、2階へと上がる。
『それでワシの考えた作戦はな、すーさんよ…』
『きーさん!!』
『ぎゃっっ!!』
きーさんは窓の向こうにすーさんの姿があると思い、紙コップからボイスを送っていたのである。
『すす、すーさん!!そのときすーさんは!!!!デ、デ、デデデ、デデデデン!!霊体離脱してウチを尋ねてきたーー!!』
きーさんはあわてふためく。なんと言っても62だ。反応もにぶくなれば理解するのにも時間がかかる。

⏰:06/06/12 06:01 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#50 [ザゼツポンジュ]
『きーさん、きーさん。おじゃましますはちゃんと言ったよ。小さい声で言ってしまったのはワシが悪かった。で、どこの店の女なんだ。ジョウジロウにホの字女は。』
『……まぁ一服しようじゃないか友よ。すーさん。あんた人話をまるで聞いてないようだがワシの方に原因があるかもわからない。耳かきを持ってこないか、ココへ。』
これでも、糸でんわをしたがるジジイ二人である。

⏰:06/06/12 06:08 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#51 [ザゼツポンジュ]
作戦会議のため、#7791カフェに行こうとしたが夕方にもなれば若者がわんさかくる。すーさんは若ければ何でもいいのだがきーさんは目の周りが真っ黒な女は嫌いだ。
すーさんは短いスカートを拝みたいのだが、きーさんはその隙間から見えるシミ付きの小便くさそうなパンツに吐き気すら覚える。

したがって、本日の作戦会議は
おでん屋『隊長』

ジジイは二人は15分散歩がてら海へ向かって歩き隊長を目指す。
『ジジイ二人がおでん屋なんて、ありきたりな展開だなすーさん』

⏰:06/06/12 06:14 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#52 [ザゼツポンジュ]
きーさんは自分が62だと言うことからできるだけ逃げたい。
『キャバクラ行く金もないしなぁ…』
すーさんはとにもかくにも、おねーちゃん、おねーちゃんで頭がもぉいっぱいいっぱいだ。
到着し、芋焼酎をひっかけながら作戦会議は始まった。

⏰:06/06/12 06:17 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#53 [ザゼツポンジュ]
『きーさん、すーさん。久しぶりだじょ。』
おでん屋隊長の店主、さとし。36歳。人妻と不倫中。ロクデナシ。顔は、ベビースターラーメンの表紙に似ている。
『さとしちゃんは、じょーじょー、口癖がうっとうしいじょ!!ワシもすーさんも帰ったらさとしちゃんの悪口で3時間は持つぜ。』
さとしは“酔うと赤ちゃん口調になる気色の悪い36歳”でこの街じゃ有名だ。そして誰も飲んでいいと言ってもないのに勝手に酒をくらいだすとんでもない奴なのだ。

⏰:06/06/12 06:22 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#54 [ザゼツポンジュ]
『なぁ、きーさん。早く説明してくれよ。ワシはどこのオナゴか気になって仕方がないよ。場合によっちゃいったん、ジョウジロウの首を絞めに帰る覚悟までできてるんだ。早く言ってくれよ。』
きーさんは芋焼酎を一口、ちくわをひとかじり、
『すーさん。さくらんぼホームへ行った方がいいんではないのかね。苦労してきた女達がいて価値があるぞ。キャバクラの女より、もっと立派だ。』

⏰:06/06/12 06:26 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#55 [ザゼツポンジュ]
すーさんは猫舌のため、冷めるまでおでんは食べられない。
『早く言えよ、ワシのこの胸の苦しみがきーさんにわからないのかい…』
『すーさん、えのしたさんは中学生だ。』
『ちゅ、中ーー学生が飲み屋で働いていいのかね、だめだきーさん。摘発しよう。今日の作戦は摘発の仕方だな。』
『…摘発なら電話一本だ、すーさん。とにかくキャバクラから離れてくれ。えのしたさんは、キャバ嬢ではない。ただの中学生の女子なんだよ。』

⏰:06/06/12 06:32 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#56 [ザゼツポンジュ]
きーさんは、これまでの事情をいちからすみまで説明した。そしてやっとすーさんから理解を得た。
糸電話の障害について、責めもしないこの二人は実にナイスガイだ。
きーさんの、勝手な推理はこうだ。
推定、中3女子えのしたさんは、ひとつ後輩のジョウジロウの二重まぶたに恋をする。だがなにをどう間違えたのか隣の家へかけてきてしまったのだ。そして、きっと告白するつもりが、きーさんの手によってハプニングが途中注入されてさまう…と、まぁこういう話だ。

⏰:06/06/12 06:41 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#57 [りな]
ぉもしろぃ
ゥチきーさん派(´`)

⏰:06/06/12 22:24 📱:P901i 🆔:97ucB5bw


#58 [Й]
コレ面白すぎだよ(ノ;)ノ
更新_ガンバってネ

⏰:06/06/12 23:26 📱:SH900i 🆔:.NJ.O/Vg


#59 [ザゼツポンジュ]
ぁ、ありがとぉござぃます、あせった!!すぃません…


きーさんは、えのしたさんのメルアドまでゲットしている。

20分もかけて、だ。

とりあえずメールをしれーっと送ることにした。
さとしちゃんの手を少しばかり借りてメールの送信に辿り着いた。


えのしたさん。ジョウです★電話くれたみたいなんだけどぉ、まさこの散歩させられててー。超ダルカタヨ。えのしたさん何してんの!!?メールちょうだいね☆彡

⏰:06/06/13 01:11 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#60 [ザゼツポンジュ]
誰の携帯からかって!!?
他でもない、木田家の悪党が最近購入した老人用の携帯電話だ。

ピルピルピル
えのしたさんからの返信はほんの数分でやってきた。

あの、いきなりなんだけど、ジョウくんてトミーと仲いいんだよね!!?


きーさんとすーさんは顔を見合わせた。
『よい、きーさん。えのしたさんはお宅のトミオちゃんが好きなんじゃないのかね!!?』
『……あぁ。ジョウジロウに仲を取り持ってもらおうって言うコンタンなのか!!?この女とんでもない性悪だな。ロクデナシだ。こらしめてやらないかん。』
『そーだな、させこださせこ。よーしよし。』
そして二人の老人は、熱く燃え上がりいたずらを考えに考えぬいた。

⏰:06/06/13 01:22 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#61 [ザゼツポンジュ]
メールのやりとりはこうだ。
きーさん(ジョウ)
『仲良いよー。どうしたの!!?』

えのした
『トミーって彼女いるのかな!!?』

きーさん(ジョウ)
『いやぁわかんないな、今は。でもだいたいいつもいるけど。』                   えのした
『そうだよね…わかったありがとう☆彡』

きーさん(ジョウ)
『ちょっと待ってよ、トミーが好きなら協力するよ!!えのしたさん頑張ろおよ!!大丈夫だよ!!』

えのした
『えっっ(*_*)じゃあ…お願いしようかな…』

きーさん(ジョウ)
『うん、うん、うんその方がいいよ。あとはまかせてね。おやすみ。またメールするよ』

⏰:06/06/13 01:34 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#62 [ザゼツポンジュ]
さとしはすでによっぱらっていた。
『ボク、いい気分でちゅーフフフ。やーん。』
もう夜の九時半をまわっていた。
『きーさん、さとしちゃんがこんなうちに家へ帰ろう。最悪ツケになるが今日は食い逃げだ。』
そっからの行動は速い。
小便に行きたかったきーさんも、我慢し、店の外へ出て、男の特権立ちションを暗やみの中でかますのだ。

⏰:06/06/13 01:42 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#63 [ザゼツポンジュ]
『すーさん、明日えのしたさんが、どんないでたちなのか、ちょいと朝偵察に行こう。』
ホロ酔いのジジイ二人はいい気分でヨタヨタ歩き帰っていた。
『おぉ、いーねぇ。女子中学生をたくさん見れるのか』
『しかし、なんたることだ、えのしため。すーさん、ジョウジロウにはくれぐれも、しーだぞ。』
『ぅぁーん、わかってるわかってる。きーさん風呂は入ってから寝ろよ。明日若い女のところへ行くんだ。わかったな。』
『了解なまこん』

⏰:06/06/13 01:51 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#64 [ザゼツポンジュ]
了解なまこんとは、きーさんが14歳の時に思いついたセリフだが、半世紀たった今でもはやる気配がまるでない。だがきーさんは流行語を生み出したんだと今だに思い、今だに言い続けているのだ。
『すーさん、この稲を刈った後のたんぼの匂いというのは実にいいな。秋がやってきたのだよ。』
九月も中旬に入り、きーさん達が暮らす田舎町は稲刈りシーズンだった。
きーさんは季節を肌で感じ楽しむなかなか古風な人なのである。
すーさんは、女さえいれば春だろうが夏だろうが氷河期に入ろうがどーだっていい。

⏰:06/06/13 01:55 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#65 [ザゼツポンジュ]
きーさんは家へ帰るなり、トミーの部屋へと向かった。
トミーの部屋のドアノブをクルっとまわし顔半分だけお邪魔した。
『トミオ入っていいか…』トミーはパラパラ漫画をつくっていた。
『入る前に聞け、なんだクソジジイ』
きーさんは座りとりあえずたばこに火をつけた。
『灰皿を出さないか!!ゲストがこうして来ているんだぞ』
『何様なんだよ!!用事を言え!!』
町内会でもらったきーさん用の灰皿をしぶしぶ出してあげたトミー。

⏰:06/06/13 02:02 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#66 [ザゼツポンジュ]
『えのしたって女知ってるか?』
トミーはそくざにこう答えた。
『ブスだ。』
『ほぅ。3文字で片付けたな。えのしたさんは処女か!!?』
『処女じゃないとしたら近親相姦としか考えられない。』 
『お前は物凄いことを口にする14歳だな。ところでそのえのしたさんがなんっっでもするから付き合ってくれと言われたら、トミオよどうする。』
『オレに触らず金だけくれるっつーんなら考えてやってもいいぜ。つーかお前なんであんなブス知ってんだよ』

⏰:06/06/13 02:08 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#67 [ザゼツポンジュ]
『お!!?……最近なスーパーで、うっかり小銭をばらまいてしまった時拾ってくれたんだよ。名札にえのしたと書いていた。』
きーさんは平気でウソをつく大物ゲストだ。
『は!!?じーちゃんはそんな事であのブスを気に入ったのか!!?』
きーさんは蚊取線香の匂いが大好きだ。夏も終わりそうだが夏の名残を惜しむようにそっと火を付けた。
『トミオ、えのしたさんは中3か!!?』
『ああ。』
きーさんは心の中でッッッシャ!!と叫んだ自分の推理が当たったのだ。

⏰:06/06/13 02:14 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#68 [ザゼツポンジュ]
『ワシは、えのしたさんを知らなかった。はたまたえのしたさんもワシの事は知らない。トミオの事は知っている。だがワシは名札なんぞつけてはいないのだ。ワシがトミオのじーちゃんである事は、えのしたさんは知らないワケだ。それでも親切に小銭を拾ってくれたのだ。いい子ではないか。』
『…まぁな。』
……架空の話だがな。
『で、トミオはえのしたさんと話した事があるのか!!?』
シャーペンを回しながらトミーは考えた。

⏰:06/06/13 02:22 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#69 [ザゼツポンジュ]
『……新学期早々の話なんだけど、理科の教室で、あのブスがノート置き忘れてたんだよ。たまたまオレ、えのしたさんと同じ席だったんだ。で、届けに行ったんだよ3年のクラスまで。オレさぁ、そこでミスを犯したんだ。3年に榎下(エノモト)さんてゆうかわいい子がいるんだけど、ブスな榎下(エノシタ)さんと、かわいい榎下(エノモト)さん漢字が一緒だから、オレえのもとさんの方だと思ったんだよ。』

⏰:06/06/13 02:28 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#70 [ザゼツポンジュ]
『それで、気分ウキウキでノート渡しに行ったらさ、かわいいえのもとさんに、ぁ、これ、えのしたさんのよ。あたしが渡しとくねぇなんて言われちゃてさ、発展なしだよ。親切したのに損したよ。しかもオレそのノートの最後のページに相合傘書いてオレ、オマエなんて書いちゃっててさぁ。』
きーさんは孫を二度見した。
『…お前気持ち悪がられているんじゃないのか…そんなこそくな手が現代的にはマルなのか!!?』
『まぁとりあえず、相合傘書いたくらいで話したことは一度もないよ。』

⏰:06/06/13 02:35 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#71 [ザゼツポンジュ]
トミオの話を聞き納得した。
(エノモトさんという奴はトミオがノートの忘れものを渡しに来てくれたとエノシタさんに伝えた。そうしてエノシタさんはだいぶたってノートを使い終わろうとした時、最後のページにトミオからの勘違いメッセージに気付いて恋をしてしまった…馬鹿な女だ。)

⏰:06/06/13 02:44 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#72 [ザゼツポンジュ]
きーさんはすーさんと糸電話をしようと思ったのだが、やめた。すーさんが伊勢崎ブルースを歌う声が聞こえて来る。長風呂中だろう。
『♪テレッテ、テレレレッテレンッッ、あっは〜ん…テレッテ、テレレレッテレン!!うふーん…あなたしぃってるぅ…てれって…』

やっっかましい!!

⏰:06/06/13 02:45 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#73 [ザゼツポンジュ]
━━朝6時15分。じーさんは早起きなのだ。
『実にいい朝だなきーさん。大雨だ。』
15歩程度しか歩かないにもかかわらず、嫌味にもすーさんはカッパを装着し、きーさん宅へ現われたのだ。一見準備のいいように見えるが雨に濡れたくないというすーさんのせいいっぱいの反抗である。

⏰:06/06/13 03:16 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#74 [ザゼツポンジュ]
『…すーさん、大雨だからと言ってやめにしようというのはワシはあまり好きではないのだよ。嫌な事があったらすぐ様諦めるようなのは好きじゃない。わかるか!!?すーさんは可愛いモロタイプの女が、たまたまおしっこを漏らしたからと言ってあきらめるのか!!?』
『…むしろ大歓迎だ。』

⏰:06/06/13 03:21 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#75 [ザゼツポンジュ]
『まぁすーさんの変な趣味はどうでもいいし朝からはキツイものがあるが、なぁ、考えてみろ。雨の方が身も隠れる。晴天の場合ワシらのシャツすら透けてしまうくらい丸見え、いや、まる見せになる可能性だってあるんだ。この雨に感謝しよう。望遠鏡を持って出掛けようじゃないか、すーさん』
すーさんは肩を落としため息をつき半分泣きかけた。

⏰:06/06/13 03:26 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#76 [ザゼツポンジュ]
雨がこの町一嫌いなのだ。理由はすーさんが若かった頃のある日ドシャブリで道すらわからなくなる始末だった。その日すーさんは大好きな鞠(まり)ちゃんと言う子に男女交際を申し込もうと、とある喫茶店で待ち合わせをしていた。
すーさんはずぶぬれになり、好きな女のために必死をこいて喫茶店へ行ったのだ。
が、鞠ちゃんはすーさんの姿にどん引きし、以来口も聞いてくれないようになったのだ。
という、理由があり雨の日がとにかく嫌いなのだ

大雨の日

⏰:06/06/13 03:33 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#77 [ザゼツポンジュ]
に、外へ出るなんて人権問題だと思っているすーさんだが、きーさんが言うのならいかしかたがない。

ジョウもトミーも眠っている。エノシタさんの登校ルートがわからない。
きーさんはエノシタさんにメールを送った。

─おっぱいよぉ(^O^)エノシタさんトミーには、それとなく昨日話してみたよ★エノシタさんの事はちゃんと女として見ているようだ。ところで今日は雨だねボクは雨に濡れるのが嫌いなんだ。学校から家が近くてラッキー!!エノシタさんちは遠いのかい!!?─

文章完成までに30分はついやした。
━送信。

⏰:06/06/13 03:42 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#78 [ザゼツポンジュ]
ピルピルピル

エノシタさんからは2分03秒で返信されてきた。

─ジョウくんおはよう
(o^o^o)あたしのおうちは、スーパーなんかいの近くだから、学校からはちょっとだけ遠いの★だからかならず濡れちゃう─

『濡れちゃう…へへへ…濡れちゃうんだってよエノシタさん。』
すーさんは、こんなささいな出来事で気分を良くする。
『馬鹿たれ!!そんなくだらん事で鼻の下をのばすんじゃないよ。まだ朝だぞ、日本は。スーパーなんかいと言うことは、#7791カフェを通る事になる。ななくいへ行こう』

⏰:06/06/13 03:51 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#79 [ザゼツポンジュ]
きーさんもかっぱを装着し、二人は外へ出た。
すーさんは一言
『付き合わんよ。小夜子とのデートには。』

⏰:06/06/13 03:54 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#80 [ザゼツポンジュ]
#7791カフェの朝のバイトの子で、とても可愛らしい女の子がいる。みーちゃん22歳。すーさんのここ1年の中での最強お気に入りランキング1位なのだ。
だが彼氏がいることも知っている。
『小夜子ストロベリーをふたつ。』
七夕の席へいつも通り座り、いつもと同じ決まり文句を言う。
『いや、今日はいい。みーちゃんワシには梅昆布茶を。』
みーちゃんはとても小さくまっしろで頬はほんのりピンク。いつもかわいい笑顔で、じーさん二人を迎えてくれる。

⏰:06/06/13 04:00 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#81 [ザゼツポンジュ]
『フフフ。朝ですもんね。じゃあ、小夜子ストロベリーと梅昆布茶を。了解なまこんっっ。』
きーさんの、はやってもいない流行語をみーちゃんはいつも付き合いで使ってくれている。
『すーさん、名札をよく見るんだよ。中3の子のバッチはオレンジ色だ。』
『了解なまこん

⏰:06/06/13 04:03 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#82 [ザゼツポンジュ]
中学生達が徐々に登校しはじめていた。
すーさんは窓にはりつき、くいいるように女子中学生を見ていた。
ただの変態だ。一歩間違えれば変質者として逮捕だ。もっとも今日が晴れならとっくに誰かが通報するか防犯ブザーの紐をひいているだろう。

⏰:06/06/13 04:09 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#83 [ザゼツポンジュ]
きーさんは、小夜子と対面し、一口パクっと食べた。
『甘い。ワシはこんなにも甘い恋心を一体何度抱いたことがあるのだろうか。』
『きーさん、やる気あるのかい!!?エノシタ、エノシタ…エノシタさーーん……と。ぅぉ!!!!きーさん、榎下さんを見つけたぞ。美女だ見てみろ。こんなかわいこちゃんをこらしめるこたぁできん、ワシには…すまんが今回ばかりは辞退させてもらう』

⏰:06/06/13 04:14 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#84 [ザゼツポンジュ]
すーさんは目をまんまるにし、小夜子タイムのきーさんに強く辞退を申し出たのだ。
『すーさん、その子はエノモトさんだ。』
『いや、馬鹿言え、漢字くらい読めるぞワシにだって。』
すーさんはぬるめの梅昆布茶をひとまず飲んだ。
『すーさん、音読みと訓読みがあることを知っているのかい?あまり馬鹿にはしたくないんだが…』
『おい、言ってる事がよく分からんぞ。』 
『まぁいい。もうひとりのエノシタさんが通ったら教えてくれ。』
『まだいるのか!!?双子か!!?べっぴん二人か!!?』

⏰:06/06/13 04:20 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#85 [ザゼツポンジュ]
すーさんはガラスに張りつき、きーさんはほおづえをついて、ミニ望遠鏡を持ちドシャブリの雨の中、傘をさして登校してゆく中学生の姿をカフェの中から目で追っていた。

⏰:06/06/13 04:22 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#86 [ザゼツポンジュ]
『お!!?……あ〜ぁ…』
すーさんは見つけてしまった。エノシタさんを…
きーさんは立ち上がった。
『あ〜ぁ。じゃないんだよ。今、完全にエノシタさんを見付けたんだろう。ブスだからと言って見なかったフリをするんじゃないよ。罪だぞ。』
きーさんは急いで#7791カフェのチラシを持って外へ飛び出しエノシタさんを追い掛けた。
すーさんは、肩を落とし梅昆布茶をすすった。

⏰:06/06/13 04:27 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#87 [ザゼツポンジュ]
『どーですかー。モーニングコーシーなんてどーですかー。ななくいのはおいしいっすよー。』
きーさんはエノシタさんの前に立ちはだかりチラシを差し出した。
『今から学校ですので。』『はぁーい、すんませーん』
傘から顔を出したエノシタさんを見た。きーさんはエノシタさんを見た。
メガネが少し邪魔をしていたがキレイな目をしたエノシタさんを、きーさんは、はっきりと見たのだ。

⏰:06/06/13 04:33 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#88 [ザゼツポンジュ]
『みーちゃん。みーちゃんはどうしてそんなにかわいいんだい!!?』
みーちゃんは困ったようにフフフと笑った。
そこがまたすーさんを刺激させてしまっているのだ。
『すーさん。口説いている場合か。エノシタさんを見たか!!?』
デレデレした表情を一変させ、男鈴木ヒトシは巣に戻った。
『ブスだ。』
そう言って梅昆布茶を口にふくんだ。
『トミオも同じことを言っていた。だがな、ワシはかわいいと思うんだがな。』すーさんは口にふくんだ梅昆布茶をそのまま垂れ流した。

⏰:06/06/13 04:38 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#89 [ザゼツポンジュ]
『おい!!大丈夫か!!?すーさんいきなりどうしたんだ?メンテナンス中か?しっかりしてくれ。』
みーちゃんはあわてておしぼりを持って来た。 
『ありがとう、みーちゃん。みーちゃんは優しい子だねぇ…きーさん!!!!老眼にもほどがあるぞ!!よく見えすぎだ!!』
すーさんは素早く口元をちょちょいとふいた。

⏰:06/06/13 04:42 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#90 [ザゼツポンジュ]
『すーさん、落ち着いてくれ。ワシが悪かったよ。あの子は元がいいと言いたいだけだ。メガネと髪型が邪魔をしているもったいない。』
サービスでみーちゃんが新しい梅昆布茶を持ってきてくれた。
『みーちゃん。みーちゃんありがとねー。きーさん。お前は好きだなぁそういうのが。どれだけべっぴんになるか好きなだけいじればいい。』
『それだよすーさん。』
すーさんはため息をついて入れたての梅昆布茶に口をつけた。
『ぅあっちちち。』
すーさんは猫舌なのだ。

⏰:06/06/13 04:47 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#91 [ザゼツポンジュ]
━エノシタさん改造計画 

その日の夕方、きーさんは家の電話から、トミーの携帯に電話をかけた。
トゥールルル、トゥールルル…
『なんだよ。』
『トミオ、部屋入ってもいいか!!?』        『いちいちわざわざドアの前で、かけてくんなよ!!』ガチャ。
『トミオ、コードレスとは便利だなぁ。』
糸でんわよりはもっぱら便利である。
『いいからもう切ろよ。なんだよ。』
トミーはベッドに寝そべって週刊誌を読んでいた。芸能情報もかかさずチェックだ。

⏰:06/06/13 04:54 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#92 [ザゼツポンジュ]
『お前かわいい女が好きなんだよな?具体的にどんなのが好きなんだ?』
『目がクリクリで髪の毛サラサラでいい匂いのするちょっとエッチで細い子。』きーさんは机の上に置いてある数学の問題集を手に取った。
『トミオ、センスないな、だめだ。』
きーさんはこんなにもおもしろくないパラパラ漫画を今だかつて見たことがない。

⏰:06/06/13 05:00 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#93 [ザゼツポンジュ]
初スキャンダルを起こした有名女優の記事を読みながらトミーはきーさんに問い掛けた。
『なんでだよ、じーちゃんはどんなのが好きなんだよ!!?』
『ワシはもっとユーモアのあるのが好きだ!!軟式テニスをしていると見せ掛けてズームアップしてみると目玉おやじをボールがわりにして遊んでいたというオチがあるやつとかな!!』
きーさんは、問題集を元の場所に置き、そそくさと階段を降りつっかけをはいた。
『どんな女だよ、気色わりぃよ。』

⏰:06/06/13 05:04 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#94 [ザゼツポンジュ]
━こちらは鈴木家。
『じーちゃん、そろそろまさこの散歩行ってきなよ。』
今日は、すーさんの当番だが雨なので外へは出たくない。
『ジョウジロウ。じーちゃん今日はお前に話がある。』
ジョウは分かっている。この話が長いということを。
『……うん。いや、じーちゃんまさこがね。』
さっきからずーっと吠えているのだ。
『ぅぁーーーわーわーわー。ちょっと今はじーちゃんの話を聞いてくれよぉ、頼むよぉー。』
すーさんは62歳になってもまだ聞き分けのないクソガキなのだ。
『わかった。わかったよ。』

⏰:06/06/13 05:12 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#95 [我輩は匿名である]
『よし、いい子だ。ちょっと待ってろ。』
すーさんは梅昆布茶と甘いカルピスを作りに下のリビングへと降りて行った。
すーさんちは新築だ。
階段なんて75度くらいの急な階段で、手すりはない。62歳にとっちゃ心臓やぶりの坂でしかない。
しかもコンクリートで固い。
完全に老人向きの家ではなく、近代的な、そしてデザイナーズ的なオシャレホームで暮らしているのだが、すーさんは肩身の狭い思いをしているのだ。

⏰:06/06/13 05:42 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#96 [ザゼツポンジュ]
この家の設計図を手がけたのは、建築士であるすーさんの娘。すなわちジョウの母親である。
62歳の同居人がいる事は、全面的に無視している。
殺意まで感じられるこの家は、きーさんさんの涙に飾られ2年前にそびえたったのだ。
命に支障のないように、なるべく階段を一段一段降りリビングに辿り着いた。カルピスの原液と梅昆布茶の粉を取り、ゆーっくり、ゆーっくりと時間をかけるすーさん。
まさこへの気遣いも忘れてはいない。

⏰:06/06/13 05:48 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#97 [ザゼツポンジュ]
『まさこよぉ。ごめんよぉ。ワシはなぁ、小さいときにバナナの皮で漫画のようにツルンとすべってなぁ、鎖骨を骨折したんじゃよ。それ以来雨の日はひびいてだめなんだよ。ごめんよぉ。雨に濡れて、まさこよ、実にセクシーだ』
……オスだがな。

⏰:06/06/13 05:52 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#98 [ザゼツポンジュ]
『じーちゃん、いつまで待たすんだよ。どうせコップふたつ持っては階段上がれないでしょう?』
キッと睨むすーさん。
『こんっのクソガキめが!!こんな階段目をつむってでも駈けのぼれるわ!!童貞め!!』
ハァっとため息をついて呆れるジョウ。

⏰:06/06/13 05:59 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#99 [ザゼツポンジュ]
『ピーンポーン。いやぁ、ずぶぬれだよ。ジョウジロウ、タオルをくれないか。』
10歩先に生息しているきーさんがすーさんちに遊びにきた。
『きーさん。口で効果音出さずにちゃんとインターホン押してくれない!!?』
ジョウは、そんなにぬれてもいないきーさんにタオルを渡した。
『おぉ!!?口がたつようになってきたな。関心、関心。お!!?ワシのカルピスか!!?勘がいいじゃないか、すーさん賢いぞ。』
きーさんはカルピスを一口ゴクリ。

⏰:06/06/13 11:21 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#100 [ザゼツポンジュ]
『甘い。まるで恋心のようだ。ジョウジロウ、これを一口飲んでみろ。ワシが口を付けたのはココだ。ココ以外で飲んでくれ。』
ジョウもわざわざ62歳の隣のじーさんと、間接キスをするなんざまっぴらごめんだろう。
『う甘い。濃いよ。』
すーさんはソファで横になら死んだフリをしている。まさこの散歩に行きたくないのだ。

⏰:06/06/13 11:27 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#101 [ザゼツポンジュ]
『甘いだろう。ジョウジロウちゃんが恋をした時、きっとこんな気持ちになるそ。最初はな。こんなにも甘い恋をお前はもうすぐ味わうのだ。わかるか!!?いいか!!?このカルピスの味を忘れるなよ。気持ちはこんなにも甘く、その結果、出てきてしまうのも、カルピスだ!!』

きーさんの言葉がなぜか、ジョウの心に響いた。
『…まだよくわかんないや。でも、きーさん、今の言葉覚えておくよ。じーちゃん。もういいよ…ボクがまさこを散歩へ連れていくよ。それと…もうちょっと薄くつくってよ、カルピス』

⏰:06/06/13 11:33 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#102 [ザゼツポンジュ]
ジョウは外へ飛び出した。甘い甘いカルピスがのどにからむ。
ジョウの頭の中はきーさんの言葉がぐるぐるまわり、変な気分だった。
雨のせいだろうか。
甘い粘着がしばらく離れなかった。

⏰:06/06/13 11:37 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#103 [ザゼツポンジュ]
『すーさん。ワシは葬儀屋に電話した方がいいのか?そろそろ息をしてくれないか?』
むくっと起き上がった。すーさんはニッコリ笑った。外へ出なくてすんだのだ。
『やぁやぁ。どうしたんだ。きーさん相談でも!!?』
きーさん甘すぎるカルピスを平気でごくりと飲んだ。
『あのなすーさん。トミオは目がくりくりで髪の毛がサラサラでさせ子がタイプらしいんだが、今旬なかわいい女はどんな具合だ!!?』
すーさんは女の話になると生き生きする。

⏰:06/06/13 11:43 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#104 [ザゼツポンジュ]
『お宅のトミオちゃんの意見は、まさに模範解答だ。大正解だ。そんな女が常に旬でいてほしい。』
『じゃあ、コンタクトにさせた方がいいんだな。』
すーさんはぬるい梅昆布茶に口をつける。
『なあんだでは、ダメだ。すーさん、エノシタさんをお前好みの女に仕上げようじゃないか。お前好みという事は、トミオ好みという事になる。エノシタさんは好きな男のために変わっていくんだ。』
少しずつではあるがやる気になってきたすーさん。
62歳、老人。

⏰:06/06/13 11:49 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#105 [ザゼツポンジュ]
『しかしワシの孫のはずなんだが、女好きはすーさんに似ている…おかしな話だ。』
『……高い高いしすぎて入れ替わったんじゃないのか!!?』
『馬鹿たれ早く考えろ』

⏰:06/06/13 11:51 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#106 [ザゼツポンジュ]
『なぁんだエノシタさんの話か。…ぁ、間違った』
すーさんさんは心の叫びが口からもらしてしまった。
『すーさん、言いたい事は溜めずに出しておいた方がいい。ただな、梅昆布茶をすすったあたりからすーさんの心の声は十分伝わっていたよ。』

⏰:06/06/13 11:56 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#107 [我輩は匿名である]
書かないの待ってるよ

⏰:06/06/15 01:49 📱:D702i 🆔:c2Fb1lvg


#108 [ザゼツポンジュ]
すーさんは、ひとたび没頭すると、まなざしは真剣になり瞳はキラキラと輝く。
まばたきもしなくなり、呼吸の数も少なくなる。
一般人から見ると、この光景は実に気持ちが悪い。
剥製のようだ。
だがきーさんは、このすーさんが好きだ。
弱点は、その3までしか出てこないことであるが、きーさんは決して文句を言うことはなかった。

その1、メガネをとり、コンタクトをはめさせる。
その2、髪の毛をサラサラにさせる。題してキューティクルビューティー大作戦。
その3、自信をつけさせる

⏰:06/06/15 11:36 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#109 [ザゼツポンジュ]
さっそくきーさんはエノシタさんにメールを送った。

エノシタさん、アドバイスがあります!!トミーは、目がクリクリして髪の毛がサラサラの女の子が好きみたいなんだよ。エノシタさんがコンタクトにしたらかわいいと思う★どうだい!!?やってみないか!!?

送信

⏰:06/06/15 11:40 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#110 [ザゼツポンジュ]
エノシタさんからはいつも素早く返信される。

─そうかな!!?今更メガネ外すなんて恥ずかしいよ…

『この女はホントにいくじなしだな、けしからん』
と、きーさん。

─トミーは、段々変わっていくエノシタさんを見たいんだよ!!頑張れエノシタさん!!今からママンに相談だ。

⏰:06/06/15 11:46 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#111 [ザゼツポンジュ]
きーさんは徐々にメールの達人になっていく。
日本中の老人の中でこんなにも飲み込みが早く若々しいジジイは自分しかいないと思っている、木田シゲル。
メールのセリフを考えているすーさんは、こんなに言葉巧みに日本語を使いこなせるのは自分しかいないと思っている。
運がよければ脚本家と言う道でも開けたのではないかと自惚れる、鈴木ひとし。
共に62歳、老人

⏰:06/06/15 11:52 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#112 [ザゼツポンジュ]
一方、隣の木田家では14歳の少年二人が恋について語りあっていた。
『なぁトミー、人を好きになるとはどんな気持ちなんだい!!?』 
まさこの散歩を終えたジョウはまた自販機で購入したカルピスを飲んでいた。
『どうしたんだ、恋でもしたのか!!?おめでとう、ついに君も童貞卒業と言う事になるな。』
『…展開はやいよ。ボクはトミーに質問しているんだよ。』
今度は国語の教科書にパラパラまんがを制作していた。なんだかんだこの男、きーさんに影響されているのである。

⏰:06/06/15 12:06 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#113 [ザゼツポンジュ]
『うーん…今狙っているのはエノモトさんだな』
『トミー…ボクは、何を狙っているかは今聞いてなかったんだが。』
トミーは、自分が童貞を卒業したことに優越感を抱いている。
そして、隣に住んでいるこの同級生よりも、素晴らしい人材だと自分で思っている、木田トミオ。
しかしジョウはその部分に対しては、とても消極的であり、とくに羨ましいと感じてはいない。
今日というこの日、隣に住むじぃさんの訪問のせいで、まだ抱いたこともない恋心について少し気になっただけの、鈴木ジョウジロウ。   共に14歳・

⏰:06/06/15 12:07 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#114 [ザゼツポンジュ]
『好きじゃなきゃ、触れないよ。かわいくなきゃ目が向かないよ。だからオレは見た目のいいものが欲しいんだ』
『…トミー。それは人を好きと言えるものなのかい!!?フラれたことはあるの!!?』
『あるさ!!そんな女は、っっどーでもいい。一応ショックは受けるが、寝て覚めればもう次の女の事でいっぱいおっぱいだ。』

⏰:06/06/15 12:11 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#115 [ザゼツポンジュ]
ジョウは隣の住人であり同級生に少し呆れた。
『いい性格をしているね。』
『ジョウも、顔は以外にも男前だぞ!!?がんがんいけよ。ただ韓国ドラマのような純愛なんてチャンチャラおかしい。あんなのに憧れるのだけはやめておけよ。バカバカしい。』
パラパラまんがを一生懸命制作しているように見えるトミーだが、少し悲しそうな背中をしていた。

⏰:06/06/15 12:18 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#116 [ザゼツポンジュ]
シャーペンを起き、こんな雨の日に何を思い立ったのか。トミーはお気に入りの古着をチョイスし、ランキング1位の香水をふりまき、出掛ける準備をする。
『ちーちゃんに会いたいな。ギャルも見たいしな。うん、ジョウジロウちゃん。何がしたいかわかるか!!?』
『エリアカフェに行きたいんだろ!!?お前、正気か?雨だぞ。しかも今エノモトさんがいいって言ったじゃねぇかよ。』
『ジョウジロウちゃん!!オレは男だぞ!!雨だろうと雷だろうと女がいればそれでいいのだ!!』
トミーの後ろを必然的についていかなければならないのであった。

⏰:06/06/15 12:28 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#117 [ザゼツポンジュ]
トミーんちのママは、トミーが小学4年生の時に出ていった。男ができたのだとトミーは言う。
トミーのパパは、ママを愛していたし優しかった。
だのに、なぜ、荷物をまとめ、家を出たのか、そんなにしてまで。
昔トミーは言った。
『女がなんだ!!ただの弱虫じゃないか!!ワガママじゃないか!!どんなに優しくされても都合のいいところに逃げていく最低な生きものだ!!』

⏰:06/06/15 12:34 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#118 [ザゼツポンジュ]
トミーは泣いていた。
でも男の子は泣かないのよと、ママがよく言っていたのをちゃんと、ちゃんと忘れてはいなかった。
後ろを向き、息を殺し、一生懸命涙が出るのをこらえていたが、逆にその姿が悲しくてたまらなかった。

⏰:06/06/15 12:39 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#119 [ザゼツポンジュ]
『おぃ、シンイチロウ!!新しいソフト買ったんだろ〜!!?かせよ!!さもなくば、お前の秘密を町内放送でながしてやるぞ!!』
5つも下のクソガキに窓の向かい側から大声をはられ、ひとりの時間を邪魔をされていた。
『わかったから静かにしてくれ。トミーお前今日、帰ってくんの早いのな。ジョウジロウはまだだぞ。早びけか!!?』
『オレ様だけは今日休みなのだ!!』
やけに、ニコニコしていたのをよく覚えている。
『トミオ、ちょっとおいでー!!』
案の定、ママ声が聞こえてきた。トミーは急いで走って行った。

⏰:06/06/15 12:50 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#120 [ザゼツポンジュ]
トミーのママは、クラブのママをしていてとてもキレイだった。

『オレんちのママかわいいし、いい匂いするんだぜ!!』
トミーは嬉しそうにママの事をよく自慢していた。
お酒を飲むママの体調が悪いとトミーは絶対学校へは行かなかった。
一日中ママといた。
ママが大好きだった。
いつもママのいない夜。
パパもお仕事でいない夜。トミーはきーさんとよく遊んでいた。

⏰:06/06/15 12:59 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#121 [ザゼツポンジュ]
二階には、トミーの部屋ときーさんの部屋が並んでいる。
改築する前の俺の部屋は、トミーの部屋のちょうど向かい側だった。
嫌でも隣の声は聞こえてくるものだ。

⏰:06/06/15 13:03 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#122 [ザゼツポンジュ]
きーさんは、トミーが小さい頃から無理難題をトミーに教えていた。
『トミオ、よく聞け。バスケを習っていてシュートが入るのは当たり前だ。わかるか!!?習字を習っていて字がキレイなのも当たり前だ。じーちゃんは何が言いたいかと言うとな。自分のチカラで何でもできるようになれと言いたいのだ。バスケ習ってもないのにできた方がかっこいいだろ。ただ字がきれいだったら、こんな美しいことはないだろ。家族が大変でもないのに、お前が家事ができていたらすごいだろ?』

⏰:06/06/15 13:11 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#123 [ザゼツポンジュ]
普通の話をしているのに、最後は家事の話になり、
『洗濯物を服屋の店員のようにたためる男は、モテるぞ。校内ランキング一位だ』
『食器を洗えば好きな子がお前にゾッコンラブになるという昔がの言い伝えがある。』
『大金持ちの男はみんな料理が得意だ。』

⏰:06/06/15 13:16 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#124 [ザゼツポンジュ]
今思うと、トミーのママがいなくなることをきーさんは予感していたのかもしれない。
こうしてトミーによい子シールを貼らして、毎日毎日レベルを上げ、自信をつけさせると言う、きーさんの作戦だったのだろう。
ママが出て行った時には、よい子シールは、もうたくさんと言うばかりに、たまりまくっていたのだ。
『ママは、急用でフランスのホテルのベッドメイキングの仕事をするようになっただけで、あと何年かしたら…。』
トミーの肩を抱き、きーさんは頭を優しくなでた。

⏰:06/06/15 13:24 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#125 [ザゼツポンジュ]
『男が泣いたらいけないなんて、誰が言いだしたんだろうなぁ。トミオ、お前見てみろ。こんなにもシールがたまっている。これが何の数かわかるか?先取り涙の数だ。お前は涙と引き替えに、いろんなものを手に入れる事ができたのだよ。自信を持ちなさい。』

⏰:06/06/15 13:29 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#126 [ザゼツポンジュ]
『こんなにキレイに服をたためる奴が他にいるか?習ってもいないのに、学校の習字のコンクールで、銅賞を取れる奴が他にいるか?こんなにうまい目玉焼きを作れる友達、見たことあるか!!?…確かにママはいなくなったが、トミオはそこいらじゃ一番かっこいい小学四年生だぞ。な。』

⏰:06/06/15 13:35 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#127 [ザゼツポンジュ]
ママがいなくて淋しい時の、我慢した涙の分。
冷凍食品が多くて、ママの作ったご飯が食べたいなーと、泣きたくなった時の分。
みんながママとの出来事を楽しそうに話している時の、悲しい気持ちの分。              泣きたい時がたくさんあっただろう。
シールの数がそれを表していたのだった。

⏰:06/06/15 13:47 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#128 [ザゼツポンジュ]
トミーは、次の日平然と、ジョウを迎えに来た。
いつもはジョウがトミーのうちに迎えに行くのだが、ママがいなくなった時から逆転した。
『ママがいなくなったらしいけど、お前はトミーにいつもどうりに接するのだよ。いいね!!?トミーがお前に頼った時は、せいいっぱいチカラになってやるんだ。』
『にぃちゃん、わかってるよ。そんなことくらい』
俺は、念を押してジョウに言ったのにジョウは平然としていて、熱くなった俺が少し恥ずかしかった。

⏰:06/06/15 13:55 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#129 [ザゼツポンジュ]
トミーは平気な顔で明るく振る舞っていた。
よくモテた。
昔からチョコをトミーんちにわざわざ持ってくる子もいた。
トミーと仲良しになりたいがためにジョウに近づく子もいた。
人気者は今だ健在だが、保っていられるのは、悲しみに耐えるチカラをきーさんにもらったからだと思う。

⏰:06/06/15 16:31 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#130 [ザゼツポンジュ]
                                    ━『ボク小夜子ストロベリー』
ジョウは単純に甘いものが好きだ。
『ちーちゃん、今日もかわいいねぇ。いつから付き合ってもらおうか。』
『フフフ。やーよ、トミーモテるから。』
ちーちゃんは完全にトミーをクソガキとして見ているナイスおねぇさんだ。

⏰:06/06/15 17:10 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#131 [ザゼツポンジュ]
『ふん、オレ梅昆布茶。』ちーちゃんは19歳。実はみーちゃんの妹なのだ。
昼の二時でちーちゃんと交代してしまうため、トミー達はみーちゃんの存在は、まだ知らない。
『ってゆうか、誰もいねーじゃんかよ!!痛恨のミスだぜ、オシャレ損だぜ!!……香水ふり損だぜ!!』
『トミー…たまには甘い物食べた方がいいよ。今のお前は生理前の女のようだ。』

⏰:06/06/15 17:16 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#132 [ザゼツポンジュ]
毎回、黄色いノートを死に物狂いチェックするトミー。
たまに電話番号が載っているがブスが多い。
『お前さ、女に触った事もないのにいつ機嫌が悪くなるとかよく分かるよな。変態だ、ジョウ。お前は変態だ。』
トミーは、1ページ1ページ真剣にくまなく読み、…しかも毎回だ。プリクラに関してはライト加減でかわいく映っているだけの女ではないかとか、その他もろもろ要チェックしている。

⏰:06/06/15 17:24 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#133 [ザゼツポンジュ]
『あぁ、すーさん変態だもんな。』
『トミーが言ってることとあまり変わらないけどな』ジョウも、ノートを覗き込んだ。
『おまたせしました。小夜子ストロベリーです。』
トミーは女の品定めに夢中だったが、ちーちゃんを二度見した。
『ちーちゃんなぜだ。オレの梅昆布茶はなぜこない。』 
ちーちゃんは申し訳なさそうに
『あぁ、ごめんねトミー。きれてたみたいで、今買いに行ってるからもぉちょっと待って。』
『ぅぁーいーょ、いーょ。ちーちゃんかわいいしな。』

⏰:06/06/15 17:32 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#134 [ザゼツポンジュ]
トミーはノートに目が行ったまんま離れなくなった。
『あ、ちーちゃん。ところで、どうして小夜子ストロベリーなんだい!!?誰がネーミングしたの!!?』
アメリカンなこのカフェにいかにもニッポンな、小夜子というネーミングに、ジョウは以前から疑問を抱いていた。
『お前、気やすくちーちゃんに話しかけんなよ。オレのだぞ、ちーちゃんは。』『ここのオーナーさんのおばぁちゃんの名前らしいよ。』
ちーちゃんはクソガキの甘い言葉には、フルスルーである。

⏰:06/06/15 17:39 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#135 [ザゼツポンジュ]
『あ、そうなの。オーナーさんのが決めてるのか。へぇ。ちーちゃんはオーナーさんに会ったことあるの?』
『たまにここに来るから。イラストを張り替えたりしにくるの。ここのイラストはみんなオーナーが描いてるのよ。』
#7791カフェの中に、ポツポツとだが、存在感のあるイラストが壁に飾られていた。
60年代くらいのアメリカンチックでポップな絵が主にだった。
『イラストもオーナーさんが描いてんのかぁ。』

⏰:06/06/15 17:46 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#136 [ザゼツポンジュ]
納得したジョウは甘い甘い小夜子をパクっと一口食べた。
やっとトミーの梅昆布茶がテーブルへやってきた。
フーフーと冷ます時でも、横目でノートを見ていた。そうすると、ハッと何かに気付き二度見した。
『あ!!エノモトさんだ!!!!』
トミーは飛び上がった。
『ちーちゃん!!ちょっと来てよ!!ぃや!!それは横着だ、迎えに行くよ』
トミーはチャラチャラしているようだが、かわいい女には優しい。

⏰:06/06/15 17:54 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#137 [ザゼツポンジュ]
どんなに近くてもレディーを迎えに行き、手を引くのだ。
『トミー、あたしおばぁちゃんじゃないんだから大丈夫よなぁに!!?』
『このプリクラ見てくれよ。この子よく来るのか!!?この席に座ってしまっているのか!!?』
『エノシタさんも映ってるね。』
エノシタさんとエノモトさんは“榎下コンビ”と書いて二人でプリクラを撮っていた。
明らかにエノモトさんのかわいさが目立つ一枚のプリクラだった。

⏰:06/06/15 18:00 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#138 [ザゼツポンジュ]
『そのブスの話は、っどーでもいいんだよ。漢字は一緒なのにこうも違う。世界とは不公平にできているものだ。…で、ちーちゃん、こっちだぞ、こっちの子よく来るのか!!?』
ちーちゃんはノートを近付けてプリクラをよく見た。
『うーんよくはこないけど、日曜日に来たのは覚えてる。』
『そーか、ちーちゃん。この子が来たらオレに連絡してくれ。学校の用事だが、学校では口にできない重要な話があるんだよ。偶然を装って、ぜひとも登場しようと思う。悪いが、この七夕の席を使わせてもらうよ。』

⏰:06/06/15 18:07 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#139 [ザゼツポンジュ]
『メモっといてよオレの番号、はぃゼロキューゼロのぉ…』
 バイト中のちーちゃんが怒られると思い、小声で言うところがこの男のおちゃめなところだ。
 大本命のエノモトさんをダシに、自分の番号を押し売りするのだ。
そうすると、ちーちゃんと、電波コミュニケーションもとれ、あわよくばエノモトさんともお茶が飲めるという、よく言えば一石二鳥だが……

⏰:06/06/15 22:32 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#140 [ザゼツポンジュ]
最悪の場合、にとうえるものいっとうを得ず…という事もある。
だが、出席番号3番木田トミオというこの男。
そくざにこの状況を把握し、頭を回すプレイボーイであり、根拠のない自信をいつも胸に抱き、女子を常に観察しているスーパー14歳なのだ。最悪のになる場合までは予想できないというのがたまに傷だが、彼には根拠のない自信がつきまとっているためいたしかたのないことだ。

⏰:06/06/15 22:40 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#141 [ザゼツポンジュ]
一応ちーちゃんは伝票にトミーの番号をメモった。
『ところでちーちゃん。この七夕テーブルにも何か意味はあるのかい!!?』
ジョウは、窓際のこのテーブルにだけ、七夕と刻まれていることも気になっていた。
『あのね、オーナーの七つ離れた妹さんの誕生日なんだって。』
『妹さんは7月7日生まれなのか…ん!!?#7791ってのは!!?』
『オーナーの誕生日が9月1日なの。』
『なるほど、誕生日を合わせて#7791と言うんだね。』

⏰:06/06/15 22:45 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#142 [ザゼツポンジュ]
トミーは、しつこくエノモトさんのプリクラを眺めていた。
『なぁ、ジョウ。エノモトさんやっぱかわいいよな!!?な!!?』
ちーちゃんがカウンターに戻った事を確認してから、エノモトさんへの興奮をジョウに伝えた。
ジョウは、じっくりと
“榎下コンビ”のプリクラを見つめた。

⏰:06/06/15 22:48 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#143 [ザゼツポンジュ]
『……この二人別に仲良くないんじゃないの?だってさ、かたやイケイケで、かたや生徒副会長だよ?一緒にいるとこなんか見た時ないし。このプリクラ、完全にエノシタさんをお引き立て役にしている。仲良くない人を利用してまで自分をかわいいように映しているとしか考えられないよ。エノシタさん明らかに楽しそうじゃないじゃん。……ぅーん。エノシタさんもかわいいと思うけどねぇ』

⏰:06/06/15 22:53 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#144 [ザゼツポンジュ]
トミーが集中して見すぎたためかエノモトさんの部分だけが、妙に色褪せて見えるような気がした。
ジョウは一枚のプリクラからいろんなことを分析した。
私の方がブサイクだと、誰もが思っているんだろうなと言わんばかりに申し訳なさそうにピースしているエノシタさんに目が行ったのだ。きっとエノシタさんは榎下コンビと書かれるのも嫌だったのではないだろうか!!?と…

⏰:06/06/15 23:05 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#145 [ザゼツポンジュ]
『はぁ!!?お前ホントに男か!!?しかもイケイケとかもはや死語だぞ!!?どれどれよく見せてみろ、ぅーん、ダメだ無理だ絶望的だの三拍子セットだ』
トミーは一瞬見てそう判断した。
『メガネとか外せば、かわいいと思わない!!?』
『ダメだ無理だ絶望的だの三拍子セットだ』
ジョウはもう何も言わず、小夜子を食べた。
自分とトミーが全く正反対の星にいるんだと改めて実感した。

⏰:06/06/15 23:10 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#146 [ザゼツポンジュ]
翌朝、いつのまにか雨は上がり、カラっと空は晴れていた。
ジョウはいつもより早くに目が覚めた。
窓を開けて大きく息を吸い込んだ。
ふと、木田家の方を見ると、きーさんが自分ちの前のはき掃除をしていた。
……全て鈴木家の方向へ葉っぱやゴミをよせているだけのように見えるのは気のせいだろうか。
ジョウはきーさんにオハヨウを言いに外へ出た。

⏰:06/06/15 23:18 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#147 [ザゼツポンジュ]
『やぁ、きーさんオハヨウ』
きーさんはいったん手を止めた。ただ鈴木家へまき散らしているゴミに関しては全く悪いとは思ってない様子だ。
『おはよう、ジョウジロウちゃん。いや、実にいい朝だ。この空気を吸ってごらん。』
『ボクね、雨が降った次の日のコンクリートの匂い好きなんだ。』
うーんとけのびをして息を吸い込むジョウジロウちゃん。
『おぉ。奇遇じゃな。ワシも大好きだ。とくに秋なんてなおさら最高だ。』

⏰:06/06/15 23:25 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#148 [ザゼツポンジュ]
『気が合うねえ、きーさん。ボクもそう思うよ。』
『フォッフォッフォッ。おかしな話じゃのう。すーさんのお孫さんがワシに似てしまうなんて』
『トミーもボクも自分ちのじいちゃん達を見て反面教師になっただけさ。そんであべこべになっちゃったんだよ、きっと』

⏰:06/06/15 23:28 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#149 [ザゼツポンジュ]
『朝からかしこいな。お前はすーさんの口うるさい女の話が嫌で隣のじーちゃんの話に耳を傾けてしまう。一方トミオは、ワシの口うるさい説教が嫌ですーさんのちゃらんぽらんさを吸収してしまった。そういうことだな。』
『そうさ。』 
そしてジョウは、学校へ行く支度をして、トミーの迎えを待った。

⏰:06/06/15 23:32 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#150 [ザゼツポンジュ]
>>1ー50
>>50ー100

⏰:06/06/15 23:38 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#151 [ザゼツポンジュ]
ミスった
>>1-50
>>50-100

⏰:06/06/15 23:42 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#152 [ザゼツポンジュ]
    ***
数日後えのしたさんがコンタクトを付着させる日がやってきた。

ピルピルピル
朝6時25分
エノシタさん
─昨日、お母さんとコンタクトを買いに行ってきた★今日からメガネを外そうと思う…(*_*)

きーさんは窓を開けすーさんを呼んだ。
『すーさん、おーい、すーさん!!!!』
カーテンを開け、すーさんが顔を出した
……ステテコ姿、ただのジジイの何者でもない。

⏰:06/06/16 00:24 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#153 [ザゼツポンジュ]
きーさんは窓を開けたすーさんに、耳の横できつねマークをした。
すーさんはウインクができないため、両目をつぶり、OKサインを出した。
これが糸電話のハンドサインだと分かるのが、このジジイ達の素晴らしいところだ。

⏰:06/06/16 00:28 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#154 [ザゼツポンジュ]
『すーさん、エノシタさんが本日、メガネを外して戦場へ向かう模様。早急に支度をして、7時ぴったりには#7791へ到着できるように!!いいか!!?』
『ふわ〜…了解なまこん』
またもや紙コップをつけたままなのが痛恨のミスだが、きーさんの一方的な命令を受けただけてらあるため、差し支えはたかった。

⏰:06/06/16 00:32 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#155 [ザゼツポンジュ]
きーさんもすーさんも、実はオシャレなのだ。
トミーが通う古着屋“ミッシェル”で最高の味方をつけたのだ。
それはピーマンと言う店員である。
絶妙な組み合わせ、バランスを一瞬で頭に浮かべられ、例え老人であろうとも、オシャレな生活を提供できるハンサムな男だ。
ただ、それ以外はトント優れないため、頭が空っぽのピーマンと言うニックネームがついたのだ。

⏰:06/06/16 00:41 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#156 [ザゼツポンジュ]
そんなジジイら二人は62歳のわりにはうんとオシャレな格好で#7791カフェへ出掛けたのである。
『小夜子ストロベリーをふたつ』
『……うーん、まぁいい。今日は晴舞台だ。いたしかたがない。みーちゃん。朝からごめんよ。』
みーちゃんは今日も小さかった。
そして白くてとってもかわいかった。
『いいえ、了解なまこんっっ。』
『かーゎぃッッ、ヒュッッ』
すーさんは両目をつぶった。ウインクのつもりなのだ。

⏰:06/06/16 00:45 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#157 [ザゼツポンジュ]
62歳のジジイらは老人にもかかわらず緊張した。
きーさんなんて
『甘い』
としか口にしていない。いつもの決めゼリフさえもままならない始末だ。               『ままままま、ま、まだか!!?すーさん』
『言語障害か、きーさん!!?がらにもないことは、やめてくれないか』
 5分10分と時が過ぎる。今日は晴天だ。

⏰:06/06/16 00:49 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#158 [ザゼツポンジュ]
エノシタさんをまぢまぢと見れるチャンスだ。
『お、えのしたさんじゃ。今日もやっぱりかわいいのう。』
『……すーさん、その子はエノモトさんだよ。この間も言っただろう?』  
次々と、中学生が通り過ぎる中、先にエノシタさんを見つけたのはきーさんだった。
遠慮もなく変質者並みに窓に張りついているすーさんは、ただの役立たずでしかない。

⏰:06/06/16 00:54 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#159 [ザゼツポンジュ]
エノシタさんはキョロキョロと落ち着きなく、一人で登校していた。
『…すーさん。えのしたさんじゃ。やっぱりメガネを外して正解だったようだな。』
しかし、すーさんはまゆをしかめた。
『あれじゃまだまだだよ、きーさん。髪型がダメだ。自信ねなさそうな顔もダメだ。…悪いが、メガネを洗面所に忘れて来たとしか思われないに決まっている。700%勇気が無駄だあれじゃあ。』

⏰:06/06/16 00:58 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#160 [ザゼツポンジュ]
きーさんは、ホッとした。すーさんの真剣なまなざしがキラキラと輝いている。
『そうだな、すーさん。いったん家へ帰ろう。そして11時になったら、ピーマンに会いに行こう。』
『…あぁ。…ん!!?なぜピーマンに会うんだ!!?』
『なぜって、ピーマンに聞くのが一番早いだろう、どこの床屋がいいだとか。』
『きーさんやめてくれないか。床屋だなんて。美容室と言うんだよ。』

⏰:06/06/16 01:03 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#161 [ザゼツポンジュ]
『おぉ、そうかそうか了解なまこん。』
そして、食べかけの小夜子を口にした。
きーさんはホッとした表情で
『甘いなあ、ワシはこんなにも甘い恋心を抱いた事が、一体何度あっただろうか。』
お見事です。きーさんは忘れてはいませんでした。

⏰:06/06/16 01:06 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#162 [ザゼツポンジュ]
    ***
トミーは学校が大好きだ。
決して大きいとは言えないこの町の、決して多いとは言えない人数の学校で、目立てるという快感が、彼を刺激しているのである。
中学2年生であるが、認知度、人気者度でいくと軍を抜いてナンバーワンだろう。
ただ、他に目立ちたいという奴がいないと言う事実も、見逃せない。

⏰:06/06/16 01:14 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#163 [ザゼツポンジュ]
トミーは器用だった。
どれもこれも極めれてはいないし、ホントは中途半端ではあるのだが、14歳のクソガキどもからすれば、器用にこなしているように見えるのだろう。
サッカーもバスケも野球も、人気者という名の錯覚作用で、全てうまくこなしているように見せる魔法を味方につけていた。

⏰:06/06/16 01:18 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#164 [ザゼツポンジュ]
ランキングにこだわり、はやりの物を身の回りに置き、金のなさをカバーできるように安くても、最強のオシャレでいられるようピーマンにおまかせだ。
ミッシェルに友達を連れて行くと、みんなオシャレになってしまうんじゃないかと言う恐怖から、内緒にしていた。
通っているのは、クソガキジジイ二人と、トミーとジョウだ。ジョウに関しては付いてくるだけの事が多かった。

⏰:06/06/16 01:23 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#165 [ザゼツポンジュ]
『あ、トミーおはよう!!』女子達は、トミーを見つけるなりフル笑顔で手を振っていた。毎日の事だ。
『やぁやぁ、おはよう。』と、手を上げたトミーから、ランキング1位の香水の香りがあたりに漂う。

トミーは誰かを従えて自分が一番でいるのがむしろ好きだ。むしろ、そうしないと気がすまない。
トミーの周りにはいつも人が集まった。

⏰:06/06/16 01:28 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#166 [ザゼツポンジュ]
家では、卑劣なことを言うが、実際学校ではブスとも話していた。
いかにも暗く、いつも一人でマンガばかり描いている、ゆみちゃんには
『ゆみちゃん、この子なんて言う名前つけたの?』
『…え、ミユキ…』
『ハハっ!!どうしてミユキなの!!?』
と、必要以上に近づいてしゃべったりもしていた。
ゆみちゃんには、誰も近づかなかった。いつも一人でいた。

⏰:06/06/16 01:34 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#167 [ザゼツポンジュ]
一方ジョウは、歴史だけが大好きだった。
トミーとは、正反対の性格なのだが、別に頭がいいわけではない。
世界史の時間だけは、誰にも邪魔はされたくない時間なのだ。
だが、この貴重な時間を邪魔される事があった。
ランキング一位の香水の香りを振りまく木田トミオのせいだ。

⏰:06/06/16 01:39 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#168 [ザゼツポンジュ]
何の授業にも、特に興味はなく、馬鹿をやって目立ちたいだけのトミーは、いつもいつもうるさかった。
『静かにしてください。』以外にも注意するのは、学級委員を努めるジョウからだった。
一瞬シーンとするのだが、、トミーはくじけない。

⏰:06/06/16 01:42 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#169 [ザゼツポンジュ]
スプレーを出す音を演出するのだ。
『プス───────。プス、プス───。』
『……効果音もやめてください』
ジョウはみんなから押しつけられてしまうタイプであり、しかたなく学級委員を努めている。
別にいじめられているわけではない。

⏰:06/06/16 01:45 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#170 [ザゼツポンジュ]
歴史以外の時はもっぱら窓の外を見ていた。
そして、周りの人間の事を考え、その中で自分をどう確立させていくかをよく考えていた。
自分と言うものついていろいろと模索している最中なのだ。
自分の意見をはっきりと言え、こだわりを持って生きていきたい、ジョウジロウ。出席番号9番。

⏰:06/06/16 01:50 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#171 [ザゼツポンジュ]
『憧れる人はたくさんいるし、羨ましい人もたくさんいる。だけど、尊敬できる人って言うのは、みんな死んでしまった人なんだ。ボクもきっと死んでしまった時に価値が決まる。人間、いくらいい人に見えたっていつどうなってしまうか分からない。ひょんなことでシャブ中になってしまうかもしれない。』

⏰:06/06/16 01:54 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#172 [ザゼツポンジュ]
歴史が好きなのも理由はその辺にある。
愛読している本は、隣に住むきーさんからもらった、太宰治の─人間失格─だ。
ジョウジロウは着る物も、置く物もこだわっていた。古着をバカみたいに買う事はなかった。
好きなところの服を高くても気に入れば購入した。

⏰:06/06/16 01:57 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#173 [ザゼツポンジュ]
トミーのように、ランキングには流されたくなかった。
来年になっても、絶対着るだろうと言う本気で気に入った服しかなるべく買わないようにしていた。
多種多様の物や、偽物、来年になれば興味がなくなってしまう物、すぐ飽きて捨ててしまうような物…
これら全てをジョウは嫌った。
古くてもみんなは気に入らなくても、自分にとっては、ひどく大切なんだと言う物をできるだけ長く傍に置いておきたいと、そう考えている。

⏰:06/06/16 02:02 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#174 [ザゼツポンジュ]
>>100-150

⏰:06/06/16 02:04 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#175 [ザゼツポンジュ]
『それでは、生徒副会長エノシタさんからみなさんにお知らせがあります。』
みんなダルそうな雰囲気は見せず、テキパキと体育館入りをする。
トミーは、全校生徒が一列に並ぶと言うのが苦痛でたまらなくなり、前の子をカンチョーしたくなる衝動にかられてしまうため、こういう無駄な朝会が大嫌いだった。
一年生の誰かの靴の中に画ビョウが入っていたとかで、急遽、体育館に全校生徒は集められてしまったのである。

⏰:06/06/16 02:27 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#176 [ザゼツポンジュ]
『みなさんおはようございます……えー、今日、画ビョウ入りの靴を発見したと…』
ジョウは気付いた。エノシタさんが、メガネを外したという事に。
背が高くもないのに、後ろの方で、みんなよりはるかに間を取ってあぐらをかいているトミーを見つけた。
ジョウは地味に地道にお尻をすべらしながら、後ろまでスルスルと下がって行き、トミーに近づいていく。

⏰:06/06/16 02:31 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#177 [ザゼツポンジュ]
『なんだ、ジョウ。小便か、立て』
トミーは近づいて来たジョウのえりを後ろからつかみ、立ち上がり、腰を曲げさせた。
そしてトミーに抱えられ、クルっと後ろを向き、トイレの方向へと連行させられた。
『この子具合悪いみたいっす、オレがトイレ連れて行くっす』
小声でペコペコとおじぎしながら、トイレへの移動を成功させた。

⏰:06/06/16 02:36 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#178 [ザゼツポンジュ]
『トミー、やめてくれよ。これじゃまるでボクがゲリしたみたいだ。』
大きく深呼吸をするトミー。重苦しい空間からやっと抜け出せた喜び。
『お前便所じゃないのか!!?じゃあなんで………おい、ジョウジロウちゃん、まさかオレの事が好きだとか言うんじゃないだろうな、やめてくれ、オレは女が好きだ、女好きだ、ただのチャラ男にみられているだけの人間だ。』

⏰:06/06/16 02:39 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#179 [ザゼツポンジュ]
呆れてトミーを見たジョウジロウちゃん。
『……しゃべってもいいか…』          『…ああどうぞ。』
朝からちょっとしつこすぎたと反省したトミー。
『エノシタさん、メガネ外していたの見たか!!?』
『お前、もしやそれが言いたかったのか!!?』
『そうだよ。』

⏰:06/06/16 02:42 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#180 [ザゼツポンジュ]
『あきれるよ。オレはこういう空間が大嫌いなんだ。入学式、卒業式、朝会、エトセトラ!!シーンとしすぎて頭が痛くなる。しかもそんな大嫌いな空間に、あんなど真ん中でえらそうにしゃべる副会長を、オレが見るとでも思うのか!!ええ!!?』
ジョウはトミーの肩をポンポンと叩いた。
『……そんなに興奮しないでくれよ。ボクが悪かったよ…。でもちよっとだけ、見てくれよ。』
トミーの背中を押し、トイレの扉を少しだけ開いて、全校生徒の前でマイクを持ってしゃべる、エノシタさんを見てもらった。

⏰:06/06/16 02:48 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#181 [ザゼツポンジュ]
『………メガネ忘れて来たんじゃないのか?洗面所とかに……』
『そんな事はいいんだよ。やっぱり外すと、ちょっとかわいくないか!!?』
『……お前、たいがい趣味悪いぞ!!あれじゃあ、勃ちもしない、おどろく段階ではない!!もっと…なんだろうな髪型も、陰気臭いところも、もっぱらダメだ!!』

⏰:06/06/16 02:51 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#182 [ザゼツポンジュ]
トミーも特にエノシタさんなんかに興味はなかったのだが、この日はちゃんとエノシタさんを見てみたのである。
『じゃあ、賭けをしようか』
ジョウは、トミーに賭けをしかけた。
『どんな賭けだ、いいだろう。童貞をもらってくれる女子を紹介しろとかはナシにしてくれよ。』

『ないよ…700%。そうだなぁ、エリアカフェで、トミーはボクに小夜子ストロベリーをオゴるってのは、どう!!?ボクが負けたらトミーは好きな物をいくらでも頼んでいいよ。場合によっちゃ、貯金もおろすつもりでいるよ。』

⏰:06/06/16 03:00 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#183 [ザゼツポンジュ]
『お前大きく出たな、ホントにメニューのいちから隅まで全て頼むぞ、それでもいいんだな!!?そして、全部食べおわるまで家にも帰れないぞ、それでもいいんだな!!?…ついでに、一日オレ様のパシリだ。移動教室ではオレの分も持ち、音楽の時間はオレの代わりにリコーダーを披露し、完全に合格のハンコをもらってもらう!!…で、一体何の賭けだ!!?』
ジョウは上を向いてしばし考え、3度くらいうなずいた。
『洗面所にメガネを忘れてきたのか、はたまた、コンタクトにしたか…だ。ボクはもちろんコンタクトに賭けるよ。』

⏰:06/06/16 03:07 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#184 [ザゼツポンジュ]
『了解なまこん。』

自信満々なのはジョウの方だった。それは真ん中に立ってしゃべるエノシタさんの表情にハニカミが見られたからだ。
いつもはキリっとした表情で、全校生徒を見渡している。なのに今日は左右をキョロキョロし、少し頬を赤らめているのをジョウ見逃していなかった。
トミーには根拠のない自信がまとわりついているため、理由など何もない。ただオレが正しいとしか思っていないのだ。

⏰:06/06/16 03:14 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#185 [ザゼツポンジュ]
『それでは、全校朝会を終わります、きりつ。』
朝会が終わる号令がかけられた。
ザワザワし、一年生から、体育館を退場し、教室へと戻って行く姿を、トイレのドアの隙間から二人は見ていた。
『生徒会の奴らは最後の最後だ。オレらは生徒会の後ろを歩こう。』
と、トミー。
1年生……2年生……三年生……そして、最後、生徒会員達が体育館を出ようするところで、トイレから出た二人。

⏰:06/06/16 03:20 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#186 [ザゼツポンジュ]
トミーは、ツカツカと生徒会員の後ろにベタづけした。ジョウもぴたりとトミーの後ろにつける。

そしてトミーはエノシタさんの肩に手を回した。  『エノシタさん。』
エノシタさんはびっくりして、ガチガチになり、右手と右足が同時に出て、運動会で緊張した小1男子の図のようになった。
『今日メガネどうしたの?かわいいじゃん。』
トミーはエノシタさんの顔を至近距離で覗きこんだ。エノシタさんは顔を真っ赤にして
『コンタクトにしたの』
と言って走って逃げてしまった。

⏰:06/06/16 03:26 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#187 [ザゼツポンジュ]
トミーはくるっと後ろを振り返り、
『おい、ジョウジロウちゃん、やっぱ洗面所に置いてきたそうだ。』
両手でジョウの肩に手をかけた。
フワっといつもの香水の匂いがした。
ジョウもトミーの肩に手をかけ、
『無償で、耳かきをプレゼントするよ。』
と、勝利を飾ったのは、2年2組の学級委員、出席番号9番の、鈴木ジョウジロウだった。

⏰:06/06/16 03:31 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#188 [ザゼツポンジュ]
>>150-187

⏰:06/06/16 03:33 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#189 [ザゼツポンジュ]
○ーさん

jpg 30KB
⏰:06/06/16 05:04 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#190 [我輩は匿名である]
>>100-150

⏰:06/06/16 10:29 📱:P901i 🆔:8Q/VrG0E


#191 [クロ]
まぢおもしろいこんなにおもしろい小説初めて

⏰:06/06/16 18:37 📱:P901i 🆔:MemWjUcA


#192 [ザセツポンジュ]
─午前11時
老人二人は街へ繰り出していた。
街なかにあるアーケードの、分かりにくい路地裏に、ひっそりと、だけど堂々と、構えられた古着屋があった。
『おはよう。諸君。入ってもいいかね!!?』
オープンぴったりの時間にずうずうしく押し掛けたジジイ達
『あっ!!きーさんすーさんいらっしゃい!!』
準備中のピーマンは、キャップを取り、笑顔で一例した。
『おぃおぃ、つなげて呼ぶのはやめてくれないか。仲がいいと思われるだろう』
1個人として受け入れて欲しいきーさんだった。

⏰:06/06/16 22:28 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#193 [ザセツポンジュ]
『きーさんと、すーさんに着て欲しい服があるさね。』
ピーマンの想像力は豊かだ。
62歳のジジイであろうとも、どれだけファンキーに生きられるか、それをプロデュースするのを楽しみに生きている、ホントに服の大好きな青年だった。
九州の人で、ところどころ方言が出てしまうのが人気なところでもある。
顔も日本人離れしていて、西洋風のイケてるメンずだった。

⏰:06/06/16 22:32 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#194 [ザセツポンジュ]
『しかし、ピーマンは今で言うイケメンだな。』
すーさんは、ピーマンを、かわいがっていた。
『ん!!?イケメン!!?イケてるメン類か!!?』
『そうそう、ラーメンきし麺、うどん……って、きーさん!!イケメンも知らないのか!!?』
『はて。はて。』
『イケてるメンずって意味だ。』
『ほぉ!!!じゃあすーさんもイケメンだな。』
『ん…まぁ、当然だろう。』 
まんざらでもなさそうに、少し気色悪く照れていた。

⏰:06/06/16 22:39 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#195 [ザセツポンジュ]
『イケてないメンず』
きーさんは、か細い声で言った。
『……最近耳をほってないからなぁ…』
すーさんも、か細い声で言った。
『ところでピーマン。今日は相談も兼ねてココへやってきたのだ。おすすめの服なら買ってやるが、その後ワシの話も聞いてくれ。』
きーさんが本題を切り出した。
『了解す。』
『なまこんがぬけておるぞ。』
『…了解なまこん』
なかば強制的だが、きーさんにとっては永遠の流行語なのだ。

⏰:06/06/16 22:45 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#196 [ザセツポンジュ]
きーさんは、服屋に来ているのに自分の身の上話だけして帰るのは気が引ける性分だ。
付き合いでごはんにさそわれた時、自分はお腹がすいてなくても断れず、何か小さいものでも頼んでしまうのである。
すーさんはと言うと、あまりその辺に関しては無頓着で無神経だ。自分の好きなように生きている。
あまり信念というものもない。
だけどいつだって前向きで、深く考えず、いつだって歓楽的生きて行ける都合のいい性格をしていた。

⏰:06/06/16 22:55 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#197 [ザセツポンジュ]
ピーマンは、二人のジジイに今日もかっこいい服をコーディネートした。

そしてきーさんにはキャップを、すーさんにはニット帽をプレゼントした。ピーマンオリジナルの自信作だ。
これで、キャバクラに行ってもバカにされないジジイ二人が完成されて行く。
『いつもありがとうございます。』
『いゃいや。いいんだよ。ピーマンに質問だが…』
きーさんが美容室と言うことばを知らなかったのを思い出し、すーさんが説明を勝手出た。

⏰:06/06/16 23:01 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#198 [ザセツポンジュ]
『ピーマン、髪は一体どこでやってるんだ!!?……そして、……お前日本人なのか!!?』
すーさんは必要以上にピーマンに詰め寄り尋ねた。
『……ち、近いんすけど。ウチの上に美容室があるけんが、そこでやってもらいよぉとです。……、日本…人、……佐賀生まれす。』正直、62歳と言う圧力と気持ちの悪さに戸惑うピーマン。
『変えたい女子が一人いるんだが…ボサボサのキチキチのグジュグジュだ。いくらかかるんだ!!?』

⏰:06/06/16 23:26 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#199 [ザセツポンジュ]
『…そういや、カットモデル探しよったな。その子かわいいとですか!!?』
今まで鏡で自分の姿を眺めていたきーさんが、ピーマンの肩を持ち詰め寄った。
『モデルでも、実験台でもかまわん。必ずかわいくなるに違いない』
二人の最強ジジイに詰め寄られたピーマンに、逃げる事はできず、非協力的な言葉を出せるはずもなかった
『……ちょっと上行って、聞いてきます』

⏰:06/06/16 23:33 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#200 [ザセツポンジュ]
   ****
『トミー。今日女子と帰るのか!!?』
『オレがお前との約束を忘れたとでも言いたいのか!!?帰りに寄ってくぞ』
『了解……なまこん』
放課後、二人は#7791へと向かうのだった。
あたり一面オレンジ色になり、夕方という少し淋しいような切ないような空気が二人を包んだ 
『お前さ、エノシタ、エノシタって、エノシタさんが好きなのか!!?』
トミーは、ジョウより少し前を歩いた。
『…そんなこと考えたこともないよ。』
ジョウはまた、本当の甘いカルピスを知らない

⏰:06/06/16 23:41 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#201 [ザセツポンジュ]
くるっと後ろを振り返り、トミーはジョウに尋ねた
『じゃあ、どうして毎日毎日エノシタと言うフレーズが出てくるんだ。正直ウザイぞ』
ジョウは立ち止まった 
『…毎日は言ってないと思うんだけど。最悪ボクが間違っているのかもしれない。』
そして、トミーは、ジョウの肩を持ち、無駄に小さい声で言った
『オレはエノモトさんと付き合うから、お前はエノシタさんと付き合えよ』
バカにしたように、言ってきたトミーに少し腹を立てた

⏰:06/06/16 23:48 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#202 [ザセツポンジュ]
『トミーは、トミーの好きにすればいい。ボクは、ボクの好きなようにするよ。勝手にボクの道を作らないでくれ。だいたいボクは表面だけがすぐれている人間は嫌いだ。例えば外装だけはキレイなおうちがあったとしても、中に入ればキッチンも風呂もない。そんな家には帰れないだろう!!?多少古い外装でも、ちゃんとしたキッチンでおいしいものを作れて、あったまる風呂に入れたほうが、帰ろうと思うだろう!!?とにかくボクは、ランキングや見かけのものだけに左右されたくないんだよ。不愉快だから、バカにさたように笑うのはやめてくれないか』

⏰:06/06/16 23:55 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#203 [ザセツポンジュ]
いつになく、真剣なジョウだった。
『…どうした、お前カウンセリングうけた方がいいんじゃないのか!!?オレはホントに心配だ。そんなに真剣になるなよ。生きていけないぞ。』
『ボクは、確かにトミーみたいにモテないよ。今までもらったチョコもすべてトミーのおこぼれだった。ボクは、チョコは好きだ。女子を好きになった事なんか、ないんだ。でも、一つ言えるのは、人気者になれなくてもいい。将来好きな人ができたら、その子だけのスーパースターでいれたら、ボクはそれでいいよ。』

⏰:06/06/17 00:03 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#204 [ザセツポンジュ]
トミーはジョウの顔を不安そうに覗きこんだ。
『…ジョウジロウちゃん、どうして今日はよくしゃべるんだ。具合悪のか!!?』
『いたって普通だ。すまないね、心配をかけて』
『頼むよ、いつものお前に戻ってくれ。魔女の宅急便の恋をしたジジの逆バージョンみたいだ。』

不思議な空気に包まれたまんま、二人は#7791へと足を運ぶのだった…

⏰:06/06/17 00:08 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#205 [ザセツポンジュ]
きーさん(ジョウ)

エノシタさん、やっぱ絶対コンタクトの方がいいよ!!ところで、今週の土曜日カットモデルとして髪を切ってみないか!!?料金はタダなんだけど…というか勝手にもう予約入れといたから、必ず行ってね★
場所はわかんないと思うから、0×0ー△○○×に、TELしてお店の人に聞いてね(o^o^o)夜の7時で少し遅いけど、閉店後貸し切ってするみたいだからよろしく!!必ずだよ☆彡アディオス☆            ─送信

⏰:06/06/17 01:16 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#206 [ザセツポンジュ]
──ちょっとブレイク!!
きーさんとすーさん、キャバクラへ行く──の巻

すーさんには、お気に入りの女子がいた。名前は空ちゃん。
実は空ちゃん、重度の虚言癖なのだが、まんまとだまされてしまっている哀れなジジイなのだ。
きーさんは、いつも空ちゃんのウソツキっぷりを観察していた。

空ちゃんの虚言癖ぶりを紹介しよう。

⏰:06/06/17 01:25 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#207 [ザセツポンジュ]
『あたしぃ、実家は、東京の二子玉ってとこでぇ親は医者なんですぅ。それで、あたし今ぁ、こっち来て大学で看護科に通ってるんですぅ』
(そんな都会の子がわざわざこんな田舎に来るわけないだろ。)
『へぇ、だから空ちゃんはかわぃぃんだねぇ。頭もいいんだねぇ。いいとこ育ちなんだねぇ』
(……きーさんのバカ。ろくでなし。)

⏰:06/06/17 01:29 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#208 [ザセツポンジュ]
きーさんは空ちゃんに質問した。
『なあ、空ちゃん。ワシ東京行った時に二子玉ら辺に行ったんだが…二子玉の次の駅は何だったか思い出せんのだ。なんだったかな!!?』
『……えーと…ねぇ』
『三軒茶屋だったか…』
『っっそぉそぉ、三茶、三茶!!!!ねぇねぇすーさんあたしね…』

(このあせりぶり尋常じゃないな…)
二子玉の次の駅は用賀である。三茶なんて四つも向こうだ。
きーさんは、事前に調べていたのである。
空ちゃんのうそを見破った瞬間、きーさんの体はエクスタシーでいっぱいだった。

⏰:06/06/17 01:37 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#209 [ザセツポンジュ]
きーさんは、気付かないすーさんに対してではなく、それを言えない自分を責めていた。
(…きーさんのロクデナシ!!バカバカ、ここで今言うのじゃワシ!!木田シゲル!!62歳!!ぅー…よし)
『すーさん…』
『きーさん、飲めよワシがおごるから今日は』
『そうか、悪いな、うぃーっす!!』
またもや、言えないままのきーさんだった。
そしてまた自分を責めるのだ。
(……きーさんのバカバカ)

⏰:06/06/17 01:47 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#210 [ザセツポンジュ]
『あたしのお父さんは、食品会社の社長なのぉ。コンビニとかにもだしてて、誰でも分かるから、言えないんだけどぉ。』
(…こないだ、医者と言っていたような気がしたんだが…この店、耳かきをオーダーするといくらだろう、えーっと…)
『やっぱり空ちゃんはかわいいねぇ。パパもえらい人なんだねぇ。』
(…すーさんは風呂場で脳みそまでキレイに洗った方がよさそうだな)

⏰:06/06/17 01:53 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#211 [ザセツポンジュ]
『うちのママは、税理士なのっっ。』
(じゃあ、一体誰が医者なんだ。)
『セレブなんだね、空ちゃん、かわいいねぇ。ウヒヒ…ぅーひっく。』
『あ、あたしのママ若いんですよぉ。36歳なんです、まだ。』
『空ちゃんは、21だから、17歳の時の子ということかな!!!!?』
『そぉなのぉ。』
(…絶対15だ!!すーさんも空ちゃんも小2レベルで脳が止まっているぞ!!いいのか!!)
『すいません!!ボーイさん、電卓ください!!』
たまらず、きーさんはボーイを呼んでしまった事もある。

⏰:06/06/17 02:01 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#212 [ザセツポンジュ]
『あたし、おにいちゃんが6人いるんですよぉ。でも、みんな前の奥さんの子供なんですけどぉ。でも仲良しですっ』
『おにいちゃんだらけだな!!一番上のおにいちゃんは、いくつかな?』
『25ですっっ。』
(……おい!!どう考えてもふたりあまるぞ!!)

⏰:06/06/17 02:06 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#213 [ザセツポンジュ]
『あたしの親戚みんな警察官なんですよぉ。』

『あたし、DJやってるんですぅ。ハウスって言うジャンルなんですけどぉ。その世界であたし知らない人はもぐりですよぉ。』

『あたし実はなでしこジャパンに在籍中なんですよぉ。たまに会長から戻れって電話かかってくるんですけどぉ。腰のガンっぽくてぇ、ボール蹴れないんですぅ』

⏰:06/06/17 02:09 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#214 [ザセツポンジュ]
『サッカーの大久保○人とも仲良しですしぃ、奥さんとも仲良しでぇ、スペインでは家族席で見てきましたぁ。』
『あたし実は双子でぇ、男と女の双子なんですけど、陸と空って言うんですよぉ。オシャレでしょう〜』

⏰:06/06/17 02:13 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#215 [ザセツポンジュ]
『あたしフランスとスペインのクォーターなんで、小学校あがるまで家の中は英語でした。』
そんな空ちゃんだが、カラオケで英語の部分が出てきた時は、哀れにも完全にカタカナ発音であり、音痴であった。だが
『あたしCDデビューした事あるんですよぉ。』
『うちのおばちゃんは、芸能プロダクション経営してるんですぅ。』
『あたし、降○けんじのモトカノなんです。元カレはみんな芸能人でした』

と、快調に飛ばしまくり…

⏰:06/06/17 02:19 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#216 [ザセツポンジュ]
『来月ストリート雑誌に載るんですよぉ。あたし専属モデルなんですぅ。』

その後何ヵ月たっても空ちゃんらしき人すら出てこず
(……一年も先取りして、撮影しなくちゃならないのか…デルモとは大変だな…って、おーい!!!!)
きーさんは、証拠をつかむためコンビニでくまなく雑誌と言う雑誌を物色していた。
空ちゃんは一生あらわれはしなかった。

⏰:06/06/17 02:25 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#217 [ザセツポンジュ]
『あたしのおばあちゃんは銀座のオーナーなんですよぉ。』
『あたしのおにいちゃんはカフェバーをいくつも経営してるんですぅ。』
『あたし幼稚園からお茶の水エスカレーター式でしたよ?』


ここで、まとめて空ちゃんの家族紹介をしよう。

⏰:06/06/17 02:29 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#218 [ザセツポンジュ]
実家は、美容整形外科。
サッカーコートがあるくらいの豪邸が田園調布にあるらしい。
二子玉説もある。
そして、空ちゃんを15歳の時に産んだ36歳のママは、現在税理士に君臨しており、パパは超有名な食品会社の社長らしい。

おばあちゃんは銀座のオーナーをしており、
おばちゃんは芸能プロダクションの社長らしい。
そしておにいちゃん達はカフェバーを経営する。
と、言うことはだ。
残すところおじいちゃんが、美容整形外科の院長さんなのか!!?

⏰:06/06/17 02:36 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#219 [ザセツポンジュ]
『あたしのおじいちゃんは、東京で超有名な高級車のディーラーなんですう』 
一体全体どこの誰が美容整形外科を守っているのだろうか。
ちなみにそんなおじいちゃんは、ブラックカードの上のスケルトンカードを所持しているらしく、それを持っているのは世界に5人だけらしい。

⏰:06/06/17 02:40 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#220 [ザセツポンジュ]
空ちゃんの経歴も実に素晴らしい。

スペイン人で、銀座のクラブのオーナーをするおばあちゃんと、
フランス人で、高級車のディーラーをしていてスケルトンカード所持のおじいちゃん
との、間に生まれた   超有名食品会社を経営するお父さんと、
犯罪並みに若かった、現在税理士のママとの間に、
双子として生まれてきた。

⏰:06/06/17 02:46 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#221 [ザセツポンジュ]
そして、
御茶ノ水幼稚園、
御茶ノ水小学校、
御茶ノ水中学校、
御茶ノ水高等学校
と、空ちゃんいわくエスカレーター式できたらしく、東京のハンバーガー屋でアルバイトをしていた時、ミススマイル賞に輝き時給が1500円まで上がったらしい。
そんなお嬢様が、こんな田舎町で、現在大学の看護科に通い、なでしこジャパンに在籍中でもあり、でも腰のガンらしく、夜は有名DJもこなし、だが毎日フル出勤でキャバクラにも勤めている。         
地球始まって以来の最強さだ。

⏰:06/06/17 02:53 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#222 [ザセツポンジュ]
きーさんは、キャバクラから帰ると、ノートに向かった。
『えーつと…今日は…と。リフティング3000回の日本記録を今だ破られていない、空ちゃん…と』
箇条書きにすると、
もう100行くらいしたためてしまった、空ちゃんの嘘をまたひとつ、またひとつと増やし、空ちゃんマイレージを貯めて行った。
あまりにも頭に来たら、店の中で、マイクを使い、発表してやろうと考えているのだ。

⏰:06/06/17 02:59 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#223 [ザセツポンジュ]
『ありゃ、きーさん、今日は一番のりじゃな。貸し切りだ!!』
月曜日で雨の降る早い時間なら、どこもたいてい暇に決まっている。
『いらっしゃいませ、こちらの席へどうぞ。』
すーさん達は、ガラ空きのためか、広い席に案内された。
『ご指名の方はござ…』
『空ちゃん。』
すーさんは大好きな空ちゃんを指名した。
『…キララちゃん』
きーさんは、キララちゃんを気に入ってはいるのだが、別に誰でもいい。女の子がコロコロ変わって、何才ですか、何型ですか、何件目ですかと1から話すのがめんどくさいのだ。

⏰:06/06/17 03:06 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#224 [ザセツポンジュ]
『ボトルの方はございましたでしょうか。』
すーさんは、うれしそうに『黒霧で、すーさんと空ちゃんの唾液。と書いてるヤツな。』
『…お前、恥ずかしくないのか、リハビリうけた方がいいんじゃないのかね。』きーさんはそう言いながらおしぼりで顔をふいた。

⏰:06/06/17 03:11 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#225 [ザセツポンジュ]
『しつれいしまぁっす。』空ちゃんとキララちゃんが登場した。
『きーさん、おはよう』
キララちゃんは、隣へ座り、きーさん達のお酒を作っていた。
『キララちゃん、好きなもの頼んでいいからね。』
そしてきーさんは小声で
『空ちゃんには、けんちん汁でもオーダーしとけ。』キララちゃんは、笑って
『恐れおおくてできません。』
なかなか正直者である。

⏰:06/06/17 03:17 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#226 [ザセツポンジュ]
空ちゃんは今日はおなかがすいていたらしい。
『ねぇねぇ、すーさぁん。あたしお腹すいたぁ。からあげが食べたぁい。』
と、すーさんにピトっとくっついた。
『ん、頼もう!!頼もう!!ボーイさん!!出前のチラシ、カモン!!』
すーさんは、女子にはいい顔をしたいがために多めに頼む。
女ならこんな都合のいいジジイが客ならバンバンザイだろう。すーさんは携帯を持っていないと言うのが弱点だが、あんたの顔など見たくもないわと言うほど強烈キャラなので、たまに来るくらいがちょうどいいのだ。

⏰:06/06/17 03:23 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#227 [ザセツポンジュ]
すーさんは、何人家族だと言うほどのからあげを頼んでいた。からあげが到着しても、なお店はガラガラだったために、待機中の女子達にも、おすそわけすることにした。ただハーレム状態になりたいだけなのだろう。
キャバ嬢達を、両手に抱えみんなでからあげを食べた。すーさん達は、常連のため、店の子みんな顔見知りだった。そして店の子も、老人と思ってすーさん達には優しくしてくれた。
『じゃあ、じゃあー。この中で誰と結婚したいか、せぇので指さしゲーム!!』 『すーさん、はりきっているが二人しかいないよ。男子は。』

⏰:06/06/17 03:31 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#228 [ザセツポンジュ]
『やかましいわ!!これは、ワシとお前の勝負じゃ!!』すーさんは眉間にシワを寄せた。
そして、8人くらいのキャバ嬢たちは、どっちと結婚したいか選択せざるをえないためすーさんときーさんの顔を交互に見ていた。
『せーのっっ。』

⏰:06/06/17 03:35 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#229 [ザセツポンジュ]
『はい、全員撤収!!』
すーさんはそう叫んだ。空ちゃんを含む、全員きーさんを指さしたのだ。
『空ちゃん、いくらなんでも君はすーさんを指差すべきだ。気持ち悪いのはわかるが、指をさしたところで死にはいたらんよ。』
空ちゃんはあわてて
『いやぁ、ハラハラさせてくれるプレイボーイってモテるじゃないですかぁ。だからそんなすーさんと結婚したらぁ、あたし不安でたまらないなぁと思ってぇ。』
さすが、ザ水商売である。

⏰:06/06/17 03:41 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#230 [ザセツポンジュ]
気をよくしたすーさんは、『じゃあじゃあ〜、恋人ならどっちがいいか、せぇので指さしゲーム!!』

『せーのっっ』

『はい!!全員カンチョー!!ケツだせ、オラ!!

『すーさんはぁ、オシャレだし、モテるから、あたしなんか相手にされなさそうでぇ。ってか、その前にかっこよすぎて近付けないなぁと思ってぇ。』
(何のために、さえないジジイがお前を指名してると思ってんだ。)
『ウッフフーン。空ちゃん今日もかわいいねぇ。はい次ー。』

⏰:06/06/17 03:46 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#231 [ザセツポンジュ]
『顔見知りくらいがちょうどいいかなぁと思うのはどっちか、せぇので指さしゲーム』

『せーのっっ』
みんなの指がすーさんに向いているのに気をよくしたが、自分が言ったことをよく思い出してみた。
『…チェックしてくれ!!からあげも、お前ら返せ、はけ!!!!コラ!!』
空ちゃんは、意気奮闘する、すーさんをなだめた。

⏰:06/06/17 03:52 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#232 [ザセツポンジュ]
『すーさん、顔見知りの度合いがわかんないよぉ。質問が難しすぎたんだよ。だってぇ、すーさん有名だからぁ、あたしも知ってるあたしも知ってるぅって言いたいのかもしんないしぃ。』
………苦しすぎるが、すーさんは気をよくした。

そして、
『じゃあ、じゃあ次はー、どっちのDNAが欲しいか、せぇ…』
『すーさん!!頼むからDNAの領域に手を出すくらいにまで人間落とさないでくれ!!』          さすがにきーさんも、この男にアセりが出てきたんだと感じた。

⏰:06/06/17 03:58 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#233 [ザセツポンジュ]
帰りのタクシーで、酔っ払ったすーさんはいつも語っていた。
『ワシはなぁ、きーさんよりうんとモテたぞ、昔はワシの方に女の子がうじゃうじゃ寄ってきていた…』

『あぁ、知ってるよ。すーさんは人気者だった。よくモテたなぁ。月、水、金の彼女と、火、木、土の彼女と、日曜日専門の彼女、祝日専門の彼女、と、まぁわんさかいたもんだ。』

⏰:06/06/17 04:05 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#234 [ザセツポンジュ]
『そうだったなあ、月曜日は、サトちゃんを自転車で向かえに行って海を散歩して、それから火曜日はユリちゃんがウチへ来てハレンチ極まりないことを、楽しくして…へへ…へへへ…そいで水曜日はサトちゃ…』
『あ、ここで止まってください、じゃあなすーさん。気をつけてな。』
『はいはい。おやすみよ。』
きーさんは、タクシーのおじさんに、すーさんと家が隣ですよとは決して言わない。
すーさんも酔っ払っているためか、久々に会った友達と飲んでいたと言うことに設定してしまっている。

⏰:06/06/17 04:12 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#235 [ザセツポンジュ]
そしてすーさんは、タクシーの運転手に右だ左だと言いつつ、散々、昔の女自慢をして、きーさんをおろした場所にしばらくしてから再び止まる
『ヒック……ぅん、ココだよ。ソープ、ストーーップ、(そこストップ)ランパーーブ』
そして多めに払い、
『パイパイ、おやすみよ。』
きーさんはすでに、眠った後にすーさんは帰宅するのであった…。

⏰:06/06/17 04:19 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#236 [ザセツポンジュ]
>>150-237

⏰:06/06/17 04:22 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#237 [ザセツポンジュ]
──決戦の土曜日がやって来た。

きーさんとすーさんは美容室の控え室で待機をしていた。仕事を終えたピーマンもかけつけた。
美容室の店長がピーマンの知り合いと言う事もあり、無理に無理を言ってインカム(無線)とカメラを設置する事に成功した。
ちょっとした番組のコーナー気分を味わいたいだけなのだろう。
7時、店は閉店した。
片付け係が3人ほど残り、他はみな帰って行った。
『まだか、きーさん。』
すーさんは貧乏ゆすりが止まらなかった。

⏰:06/06/17 04:53 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#238 [ザセツポンジュ]
きーさんは、エノシタさんを改造してくれる美容師、吉田(オス)にインカムを装着させた。
そして裏方に回った。
『マイクテスッッマイクテスッッ。ヨッシー聞こえるかね!!』
『OKーっす。』
おもむろに、すーさんが、マイクのついたきーさんの胸のあたりに、ケツを突き出した。
『プ〜〜〜…』
そして、すーさんはマイクを掴み
『今のオナラの音階が、わかるか!!?ヨッシー!!』
『………み、ミ!!?』
『ファ#だ。』

⏰:06/06/17 05:01 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#239 [ザセツポンジュ]
ゴツン。
きーさんは62年分の思いを込めて、すーさんにゲンコツをかました。
すーさんから映る映像はマンガの用にヒヨコがピヨピヨとかけまわっていた。
『お前にとっちゃ、ファのシャープかもしれんがな!!ワシにとっちゃ、ブチくさの汚い屁でしかないのだ!!全部吸ってしまった、ワシの事も考えろ!!罪だぞ!!吉田!!クイズに答えたお前も罪だ!!バカたれ!!』
きーさんは久々に切れた。
──カランカラン
切れている場合ではなくなった。エノシタさんが無事到着した姿がモニターに映っている。

⏰:06/06/17 05:08 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#240 [ザセツポンジュ]
『あ、エノシタさんですか!!?』
『は、はい。よろしくお願いします。』
服が、冴えないエノシタさんが店へ入ってきた。
そこでピーマンはモニターを見ながら
『あぁ…サマーセール1980円でした、みたいな服やけんが、ダサすぎる。あの子には黄色とか、はっきりした色がいい…』
『ピーマン、終わったら服をコーディネートしてやってくれないか。』
『了解なまこん』
ダサいヤツを見るとピーマンは意欲を発揮したくなる。速答でOKを出した。

⏰:06/06/17 05:15 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#241 [ザセツポンジュ]
すーさんを起こし、エノシタさんの髪型をモニターで見させた。
ヨッシーは、とりあえず、エノシタさんを座らせた。『えーと、今日は、僕のしたいようにさせてもらうって事なんだけど、いいかな!!?絶対よくするからね。』
『あ、はい。おまかせします。』
エノシタさんは緊張しているようだ。
すーさんはエノシタさんのゴワゴワの髪の毛を見てイライラし、そして指示をだした。
『吉田。とりあえずすけ。とにかくすけ。』
『はい。』
『???』
エノシタさんはいきなり返事をした、美容師を不思議に思った。

⏰:06/06/17 05:22 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#242 [ザセツポンジュ]
『お前は、アホか。ワシの声に返事してどうする!!』『ハイ、すません。』
エノシタさんは、いきなりあやまる吉田を見て、少し不信感を抱いた。
『きーさん、吉田はブッ殺決定だな。』
『あぁ、ぶっころ決定だ。』

吉田はマズイと言う顔をしたが、平然を装いハサミを持った。
『じゃあとりあえず、軽くすいていきますね。』
『は、はい。』
『バッサバサすいていけよ、吉田。』
『は………歯医者いいとこ知ってる!!?』
いきなりの質問にエノシタさんは戸惑った。

⏰:06/06/17 05:29 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#243 [ザセツポンジュ]
『え、あの、あたし虫歯になったことないんです。』手強い髪の毛をすきながら、ホッとした表情をうかべた吉田。
うまく切り抜けたと安心していた。
『今のは歌うべきだったよな。』
と、すーさん。
『は…………ぁなが咲いたはーなが咲いた、真っ赤なばぁらぁがぁー♪』
すーさんは歌い出してしまった。
『真面目にやってくれないか。』
『あ、はい。』     きーさんは真剣だった。

⏰:06/06/17 05:33 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#244 [ザセツポンジュ]
髪の毛をすくのに時間がかかりそうだったため、すーさんは吉田に質問をさせた。
《ヨッシー。エノシタさんは中3だが一応、年を聞け。》
『……エノシタさんは何才かな!!?』
『15です』
《あなたホント、ブッサイクな15歳ですね。》
『…………あ、そうなの。じゃあ中3か。若いねぇ。』
《おい吉田!!お前もそう思ってるんだろ!!》
『……受験大変なんじゃないの?』
《おい、きさまワシを無視する気か!!》
『あぁ、大変です…って、あんま興味ないのに質問してるでしょう!!?』
《ヒャッヒャッヒャッ。中3に図星つかれてどうする吉田》

⏰:06/06/17 05:43 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#245 [ザセツポンジュ]
『……いやいや、そんな事ないよ。僕も中3の今頃奮闘してたよ。』
《オナニーにな。》
『アッハハ。まぁそれもあるけどな。』
『え、誰としゃべってるんですか!!?大丈夫ですか。』           《吉田。気持ち悪がられているぞ。しっかりしろ》 『あっ、あぁ、いやそんなことないでしょ。大丈夫。』
『……言ってることめちゃくちゃですけど。フフッッ、変な人』
『ごめんね、ちょっと、待っててね。』

─ガチャン
─パタン

⏰:06/06/17 05:50 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#246 [ザセツポンジュ]
『あの!!真面目にやってもらってもいいですか!!?』

『まぁまぁ、下ネタに反応したヨッシーも悪い。』 かばったのは以外にもきーさんだった。

深呼吸をし、目をつぶり、意識を集中させ、つばをゴクリと飲み込んだ吉田。
(なぜ俺が緊張しなくてはならない…。)

『ごめんね、エノシタさん。美容室とかあんまり行かないの!!?』
とにかく吉田は、すーさんの声が入る前に自ら質問をした。
『あ…はい…行かないですね。』

⏰:06/06/17 06:01 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#247 [ザセツポンジュ]
《どうりで、すずめが出てきそうな頭をしているわけだな。》
『たしかに、そうですね。すずめが…』
『すずめ!!?』
『ぃや、や、するめ、そぅ、学校の給食のスルメおいしかったなぁって』
《いいわけが苦しすぎるぞ。吉田》
『………ああ、あたしも好きですね、スルメ。』
『ってかエノシタさん、美容室は行った方がいいよ。ウチならクーポン使えは学生は安いしさ。』
吉田は、これ以上流されまいと奮い立たせた。

⏰:06/06/17 06:05 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#248 [ザセツポンジュ]
『そうなんですか…あたし、いい美容室とか知らなくって…今まで適当にしてきちゃいました。』
《ハッハッハ。ただ、ブスはクーポンが効かないのだがな。》 
『じゃあ、ウチ来なね。女の子は手入れしなきゃだからね。好きな子とかいないの!!?』
すーさんは、完全にスルーされてしまった。
『あ…あの…い…』
『いるんだ!!いいね青春。どんな子なの!!?』

⏰:06/06/17 06:11 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#249 [ザセツポンジュ]
『すごく、よくモテるんです。人気者ですし…。』
《その子の出席番号は5番でしょ!!?と言ってみろ》
『もしかしてその子の出席番号5番!!?』
『ぃや、そこまで知りません、ひとつ下の学年なので。』
《こんの、ブサイクめ!!調べろそれくらい!!》
『年下なんだ。』
《吉田、次は、その子の名前は木田トミオだろと言え。》
『木田トミオくん?』
『え!!何でトミーの事知ってるんですか!!?』

⏰:06/06/17 06:18 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#250 [ザセツポンジュ]
『えぇ!!こん子が好きな子って、きーさんの孫!!?』
ピーマンは驚いていた。
『説明不十分だったが、そうらしいぞ。』
きーさんは、冷静に言った。

《ナンパされちゃってー。》
『ナ…んでって、たまに来るからね、カレ』
《チッ》
『え、そぉなんですか!!』吉田が奮闘するなか、髪の毛もだいぶ軽くなってきた。

⏰:06/06/17 06:28 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#251 [ザセツポンジュ]
《おいおい、吉田。もうハゲてしまうからハサミを止めろ。そんで……うーん、次は一番軽いストパーをあてろ。》


イタズラのすぎるすーさんだが、指示は的確だった。ピーマンも少し関心した。

《中学生や高校生はやたらストパーをきつくあてすぎなんだよ。どいつもこいつも下敷きがブラさがってるみたいでダメだ。エノシタさんは下敷きみたいにするなよ。》

⏰:06/06/17 06:33 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#252 [ザセツポンジュ]
時間が長引きそうなため、すーさんときーさんは、たけのこニョッキを開始した。ピーマンは、頭で、エノシタさんのコーディネートをイメージし、いらない紙に意欲をはきちらしていた。             『たけのこたけのこニョッキッキいち!!!!!!』
すーさんは出遅れた。
バチン!!
ビンタをくらう。
『たけのこたけのこニョッキッキいち!!!!!!』
またすーさんは出遅れた。バチン!!
ビンタをくらう。

すーさんは、自分が不利だと言う事に気付いた時には、左のホッペがモッコリ腫れ上がった後だった。

⏰:06/06/17 06:42 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#253 [ザセツポンジュ]
──1時間半後
もう夜の9時になっていた。
散々ゲームをしたジジイ二人。すーさんは負けまくりボコスコに殴られ顔が変形して少し男前になっていた。
ピーマンは50体ものデザイン画ができていた。

ドライヤーでかわかした後のエノシタさんをモニターから見たすーさんは、固まった。そして真剣なまなざし…
剥製すーさんの登場だ。
『ゴワゴワではなくなった。サラサラにもなった。軽くなった。何かが足りない。うーん。』
真剣になりすぎ、呼吸もあまりしなくなったその時──
《吉田!!前髪を切るんだ!!パッツンにしろ!!!!》

⏰:06/06/17 06:51 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#254 [ザセツポンジュ]
モニターをズームアップさせた。
きーさん、すーさん、ピーマンの3人は息を止め、静かに見つめた。

(ここで吉田が失敗したら、ただのブスでおわってしまう……)

吉田は、前髪に手をかけた……
──チョキン
─チョキ
─チョキ………

⏰:06/06/17 06:57 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#255 [ザセツポンジュ]
『うぉ────!!!!』
きーさんとすーさんは抱き合った。
吉田の腕は確かだった。すーさんの指示も的確だった。
まるいおめめのとびきりかわいくなったエノシタさんが誕生した。
《かわいくなったねと言ってやれ吉田!!》
『エノシタさん、ほんっっとうにかわいくなりましたね。』
『ホントですか!!?』
『ホントだよ。……ホントにホントだよ。』
ピーマンは裏から階段をおりてミッシェルに急いで戻った。

⏰:06/06/17 07:02 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#256 [ザセツポンジュ]
そして鍵を開けて、興奮しつつ、あわてて服を探した。
イメージはもう完璧にできていた。
あとは、頭の中と同じ服を探せばいいだけだった。
黄色をベースに黒を足す…スカートにパンプスに…
ピーマンはエノシタさんにミツバチをイメージし、形をつくっていった。
強さ、甘さ、激しさ。
生まれ変わった強い自分、恋をしてしまった甘い自分、これからたたかう激しい自分。
そんな願いをピーマンは洋服にたくした。

⏰:06/06/17 07:10 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#257 [ザセツポンジュ]
『これと…これ……ベルト、ベルト……と。…そいで、あれと……よし、これだ!!!!』
ピーマンは2分半で衣裳を探しだし、服をかかえ、二階へかけあがった。

美容室には、カメラマンが来ていた。
『エノシタさん、次の月のクーポンに載せる写真を撮らせてもらうよ。』
『え、あ、あたしいいです、あたしなんかが…』
クーポンマガジンに載せるためのカットモデルだったのだ。だからエノシタさんにはかわいくなってもらわないと困るのだった。

⏰:06/06/17 07:17 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#258 [ザセツポンジュ]
ピーマンは到着して、一分という驚異的な早さで全て服をたたんだ。
《吉田さん、すいません、ちょっと来てください。》ピーマン自らマイクを手にとり、吉田にお願いした。
『どうした!!?』
『あの、これエノシタさんに着せてください。あ、でも内緒で持ってきたけんが、トップシークレットってことで。』
『了解。』
ピーマンは、あせって吉田になにやら耳打ちをした。

『了解なまこん!!』

きーさんはニッコリとほほえみ右手を高くあげた。

⏰:06/06/17 07:23 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#259 [ザセツポンジュ]
エノシタさんは、言われるがままにトイレで着替え、撮影に挑んだ。

モニターを眺める3人は目を輝かせた
『うん、うん。かわいくなったな。』
梅昆布茶を垂れ流し否定していたすーさんも、絶妙な衣裳をまとったエノシタさんを見て納得をした。
『やっぱり輝いた。あの子はダイアモンドだったんだよ。』
きーさんは磨く側に立っている自分を幸せに思った。『大成功だ……』
ピーマンは、頭の中でのイメージ通りにうまくいったエノシタさんの姿を見て嬉しくなった。

⏰:06/06/17 07:31 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#260 [ザセツポンジュ]
きーさんは嬉しさついでにピーマンが選んで来た服を買いとることにした。
《おい、吉田。もうその服をエノシタさんにプレゼントしてくれ。》
きーさんは満足気に言った。
『エノシタさん、今日はどうもありがとう。その衣裳はプレゼントです。』
『え、あ、あたし髪もキレイにしてもらったうえに、そんな、もらえません!!!!あたしの方がありがとうございました!!!!』

『ずっと、エノシタさんがかわいくいられるように、来月また、エノシタさんの映ったクーポンを持って、ウチに来てよ。いい恋をしていってね。』

⏰:06/06/17 07:41 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#261 [ザセツポンジュ]
『は、はい…。』
エノシタさんは泣きそうだった。少し頬を染め嬉しそうにしていた。
そして笑顔で帰って行った。           その姿を見たきーさん達も、嬉しくなり

吉田の片付けを待って、男四人でキャバクラへ行った。提案したのも自らおごると言ったのもすーさんだ。
『空ちゃ〜ん』    …こりないジジイである。

⏰:06/06/17 07:47 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#262 [我輩は匿名である]
>>234-261

>>1-150
>>151-222

⏰:06/06/17 07:52 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#263 [ザセツポンジュ]
>>1-23   ショウカイ
>>24-30 エリアカフェ
>>31-39   キダケ
>>40-72  エノシタサンのミス
>>73-116
>>117-129
>>130-145
>>152-161
>>162-187
>>192-199
>>206-235
>>237-261

⏰:06/06/17 08:43 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#264 [ザセツポンジュ]
きーさん(ジョウ)

エノシタさん!!かわいくなったみたいだね!!学校楽しみにしてるからね☆彡
ボクはこれくらいしかできないから後は、エノシタさんが、自分のチカラで頑張るんだよ☆応援してるね!!            ─送信

ピルピルピル
エノシタさん

ジョウくんありがとう☆勇気をたくさんもらうことができました(o^o^o)これから頑張ります!!

⏰:06/06/17 16:26 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#265 [ザセツポンジュ]
きーさん達は後日、#7791にて反省会を開いていた。
ただ、すーさんがみーちゃんに会いたいだけという理由も見逃してはいけない。『小夜子ストロベリーをふたつ』
『みーちゃんっっ。今日も小さいねぇ、かわいいねぇ。』
と、いつもと何ら変わりのない朝だった。

⏰:06/06/17 16:30 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#266 [ザセツポンジュ]
エノシタさんが通らないかなと、チラチラ横目で外を見ながらきーさんは口を開いた。
『エノシタさん大改造の件だが…』
『大成功に終わってよかったではないか。』
『いや、もちろんそうだ。』
『…でも、その辺のブスでも簡単にできそうな気がするけどな。』
『すーさん、それは間違っているぞ。』

⏰:06/06/17 16:34 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#267 [ザセツポンジュ]
きーさんは行き交う女子中学生を指差しながら語った『あの子は細すぎだ。栄養失調並み、あの子は、がっちりしている。将来レスリングにでもなるのだろう。そしてあの子は、スタイルはいいのに顔はめっぽう味気ない。あの子は姿勢が悪い。わかるか!!?女なんてみんなダメなところはあるものだ。生まれもって完璧なルックスを持つ人の方が、極めて少ない。』

⏰:06/06/17 16:38 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#268 [ザセツポンジュ]
『なぜ、女は変わりたいのか。それは、好きな男ができたから。ただ雑誌をペラペラめくり、痩せたい痩せたいというやつは世間の波に流されている。まわりの女と見栄のはりあいをしているだけだ。変わりたい、勇気が欲しい、キレイになりたい、ふりむいてほしい…これら全ては甘い恋心を抱いた相手がいたからだ。何が言いたいかって、自分一人のためだけに、痩せたりかわいくなろうとしたりするのは、とっても難しいものだ。恋をしたエノシタさんだからこそできた話なのだ』

⏰:06/06/17 16:45 📱:P701iD 🆔:10FaedBg


#269 [Й]
>>194-268

⏰:06/06/18 00:37 📱:SH900i 🆔:CG7Twt86


#270 [我輩は匿名である]
>>192

⏰:06/06/18 00:38 📱:SH900i 🆔:CG7Twt86


#271 [Й]
>>192-268
何度もすみません今から読ませてもらL1ます

⏰:06/06/18 00:39 📱:SH900i 🆔:CG7Twt86


#272 [ザセツポンジュ]
『おまたせしました。小夜子ストロベリーです。』
きーさん達の前に甘い甘い苺が顔をだした。
すーさんは窓にはりつき、女子中学生を物色していた。
『あ!!エノシタさんじゃ!!かわいいのう。』
『すーさんそれはエノモト……いや、エノシタさんだな!!今日は笑っているな』
いつもうつむき加減で登校するエノシタさんだったが今日は違った。友達と一緒に登校する姿に笑顔がみられた。

⏰:06/06/18 00:48 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#273 [ザセツポンジュ]
『天狗にならなければいいのだが…』
『後のことはどうでもいいよ。きーさん、ワシは満足だ。』
エノシタさんを見送った後、きーさんはスプーンを持った。
そして一口、小夜子を口へ運んだ。
『甘い。ワシはこんなにも甘い恋心を何度抱いたことがあるのだろうか…』

⏰:06/06/18 01:06 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#274 [ザセツポンジュ]
きーさんとすーさんは次なるターゲットを探すのであった。

⏰:06/06/18 01:07 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#275 [ザセツポンジュ]
Йサン、ぶっちゃけ正直心底嬉しいです
これからもよろしくお願いしますいつもありがとう

⏰:06/06/18 01:10 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#276 [ザセツポンジュ]
    ***
ジョウが日直にあたってしまったある朝、一人で少し早く登校した。
『あ、ジョウくんおはよう。』
ジョウは単独で行動していて挨拶をされた事がなかったため、少しおどろいた。
『…………!!?』
オレンジ色のバッチには
“榎下”と刻まれていた。
でも、ジョウは知らない人のように見えた。そのまま見つめ続け、10秒後、その知らない人に丁寧に挨拶した。
『おはようございます。』その人はニッコリ笑った。朝早く起きたからだろうか。ジョウの脳みそはまだ起きていなかった。

⏰:06/06/18 03:46 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#277 [ザセツポンジュ]
うわぐつにはきかえジョウは職員室に行きながら考えた。ニッコリ笑ったかわいい笑顔のオレンジ色のバッチの“榎下”を浮かべて。
(榎下、榎下……エノシタ…え!!?エノシタさん!!?)
ジョウは振り返り、走り、まだくつばこにいるエノシタさんの前へ立ってじっくりと見つめた。
『………エノシタさんどうしたの?かわいくなったね。』
『!!?ジョウくんホンッッットにありがとうね。』
と言ってエノシタさんは去って行った。

⏰:06/06/18 03:53 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#278 [ザセツポンジュ]
その瞬間だった。

ジョウの心の中に、カルピスが潤った。
すーさんが作るよりも、もっともっと甘いカルピスだった。

ジョウはきーさんの言ったことばを思い出した。
(きーさん。やっとボクにも分かったよ。……でもなんで面識ないのに挨拶してきたんだろう……しかもなんで、あんなに心からお礼を言われたんだ。)

⏰:06/06/18 03:57 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#279 [ザセツポンジュ]
その日からだった。
ジョウは、歴史の時間以外はもっぱら外を眺め、3年生が行き交う姿を目で追っていた。
遠くから見つめる先には、いつもいつもエノシタさんがいた。
以外と、友達がしたわれているところ。
陰キャラとも笑って話せるところ。
誰も気付かなかったゴミを拾ったところ。
体育の時間キツそうに、でもあきらめず一生懸命走っているところ…

ジョウはもうトミーには話さなかった。
かわいくなったエノシタさんを狙うんじゃないかと心配だったからだ。

⏰:06/06/18 04:04 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#280 [ザセツポンジュ]
   ****
きーさんは、旅行を計画していた。
『すーさん。』
季節は、わけもなく心がしめつけられて切なくなる秋中だった。
すーさんは、窓を開けた。
『どうしたんだ、いいネタでも見つかったか!!?』
『いいや。エノシタさん祝いに旅行でもいかないか。』
『……エジプト。』
『行きすぎだ。福岡あたりにしてくれ。』
『福岡かぁ。いつ行くんだ。』
『明日から三泊四日だ。』『きーさんちょっと長くないか。そんなに長いと変な気をおこしかねんよ。』
『……おおいに困るな。孫達も連れて行こう。』

⏰:06/06/18 04:11 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#281 [ザセツポンジュ]
夕方、トミーとジョウはほぼ同時に家の玄関を開けた。
『ただいま。』

──木田家
『トミオ!!!!トミオちゃん!!』
『なんだ!!!!ゆっくりさせてくれ!!』
『明日から福岡旅行に連れていってやる。』
『………。いや、学校だ。』
『強制だ。休め。命令だ。』
『すーさんもいるなら行くぜ。』
『あんたの顔なんて見たくもないわと思うほど、一緒にいられるぞ3泊4日だ。』
『……長すぎだが、まぁいい。』

⏰:06/06/18 04:18 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#282 [ザセツポンジュ]
──鈴木家
『ジョウジロウ、福岡へ引っ越すぞ』
『…ありえないよ。家建てたばっかだし』
『お母さんがくびになったんだよ。ローンを先々月から払っていないし、ホストにはまってしまって、ウチはもうテンテコマイだ。』
トゥルルルトゥルルル
《はい。》
『お母さんクビになったの!!?ホスト行ってるの!!?』《あんた、お母さんを何だと思ってるの。あるわけないでしょ!!プツッ…ツーツー》

『じーちゃん、それでどうしたの。何で福岡行くの。』
『旅行だ。きーさんとトミオちゃんとだ。三泊四日だ。学校は休みなさい』
『わーい!!』

⏰:06/06/18 04:25 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#283 [ザセツポンジュ]
『シンイチロウ。福岡に…』
『行かない。』
速答で誘いを断った。
『なんでだ。お前、一体毎日こんなとこで何やってんだ。じーちゃんもたまには混ぜてくれよぉ』
俺は、屋根裏部屋に生息している。いろんなことを見渡せ窓もついている。
言っておくが別にひきこもりではない。
服を作ったり、油絵を描いたり、なにかせいつも何かを制作し、フリーマーケットで売ったりしている。

⏰:06/06/18 04:32 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#284 [ザセツポンジュ]
『じーちゃん、福岡楽しんできてよ。』
『お前、淋しくないのか。ワシならたえられんよ。置いてきぼりをくらうのは。』
めんどくさいジジイ二人と、なまいきなガキ二人と旅行にいきたいヤツがいるなら、ゲリラオーディションでも開催してほしい。
優勝者には俺が自腹で賞金を払ってやる。
『用事もあるしさ。』
『そうか…了解なまこん。』
『そんな淋しそうにするなよじーちゃん。おみやげ楽しみにして待ってるからな。』

⏰:06/06/18 04:42 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#285 [ザセツポンジュ]
じーちゃんは、きゅうな階段をちょこちょこと降りて行った。

次はジョウが入ってきた。
『にいちゃんおみやげ何がいい!!?』
『通りもん。』
『なんだ!!?ドラえもんの新キャラ!!?ボクてっきり明太子って言うと思ったけどな!!』
『お菓子だよ。金賞だからかなりうまいらしいぞ』
『…何サーチで金賞とったの!!?にいちゃん、ボクはねぇ、ホントに楽しみだよ。』
『ガラにもなく嬉しそうだな。楽しんでみやげ話でも聞かせてくれ。』
『了解なまこん!!』

⏰:06/06/18 04:57 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#286 [りな]
毎日楽しみにしてますBOOKマークしてみてます
きーさんとジョウジロウちゃん派です頑張ってください

⏰:06/06/18 23:13 📱:P901i 🆔:HLv3YCrc


#287 [ザセツポンジュ]
りなチャン、ありがとう
めっちゃ、嬉しいです

⏰:06/06/18 23:21 📱:P701iD 🆔:JAs9bvV6


#288 [ザセツポンジュ]
──朝8時前
観光港へ到着した男四人。
最初に口を開いたのは、次期生徒会長を狙う、中学校限定スーパースター2年2組5番、木田トミオだった。
『ぅえ──!!船かよ!!俺、かっこよく飛行機が良かったよぉ。誰だよ船にしたの。』
そして申し訳なさそうに、女がいれば生きていける62歳のエロジジイ鈴木ひとしが頭を下げた。
『…トミオちゃん。すまない。飛行機は、坂本九が墜落事故で亡くなっている…スーパースターでも飛行機の墜落には勝てん!!!!』
トミーはゴクリとツバを飲み込んだ。

⏰:06/06/19 01:06 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#289 [ザセツポンジュ]
(スーパースターですらわけなく殺されるのか…もしもオレが死んだら誰が生徒会長に…)
『すーさん、君の選択は正しかったようだ。』
トミーは落ち着きを取り戻した。

『きーさん、福岡にはどんくらいでつくんだい!!?』学校を四日も休める喜びをひしひしと感じている学級委員長、2年2組9番鈴木ジョウジロウ。
『2年と3ヵ月くらいだ。』
平然な顔で、朝から冴えたことを言う悪巧みのプロ、木田シゲル62歳。ただ現実人助けをしてしまっているのがかわいいところだ。

⏰:06/06/19 01:13 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#290 [Й]
今の所,全部読んだよ更新ガンバってネ

⏰:06/06/19 01:13 📱:SH900i 🆔:S5Eb1R/I


#291 [ザセツポンジュ]
了解なまこんありがとう

⏰:06/06/19 03:00 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#292 [ザセツポンジュ]
高速船に乗る男4人の姿はすがすがしかった。
しかし、波の関係で激しく船は揺れ、すがすがしさはカケラもなくなった状態で福岡へたどりついた。

⏰:06/06/19 03:03 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#293 [ザセツポンジュ]
『なんだよぉ、オレらの地元と変わらないじゃないかよ!!』
レトロな町並みを見たトミーは、船酔いで気分が悪いついでに文句を言った。
『トミオ、ここは門司港だよ。博多まではもう少しある。博多駅について失神するなよ。恥ずかしいぞ。』
今回3回目の福岡旅行のきーさんは得意気だった。

⏰:06/06/19 03:07 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#294 [ザセツポンジュ]
小倉へと渡り、新幹線の切符を買った。
『うわ!!これが新幹線!!?すげぇ!!なげぇ!!』
ジョウは素直に驚いた。我々の地元周辺全て新幹線なんてないのだ!!
『ワシは新大阪まで拉致されないかだけが心配だよ。』
無駄な心配をするすーさん。
新幹線に乗り込んでから、悪夢が待っていた。

⏰:06/06/19 03:10 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#295 [ザセツポンジュ]
すーさんときーさん、トミーとジョウは、向かい合わせで仲良く4人で座った。
すーさんと向かい合わせのトミー。このツートップが向かい合わせれば口からでる話は、女の話だろう。
きーさんとジョウは甘く見ていた。
『トミオちゃん、歌をうたわないか。』

⏰:06/06/19 03:14 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#296 [ザセツポンジュ]
『すーさん、提案が素晴らしいね。』
チョイスした歌がなんとも言えない

『君の〜ゆくぅ〜道わぁ』『はてしなく遠い〜』

『だのにぃ!!』

ハモってしまったところで、ジョウはきーさんの腕をつかみ、移動し、このバカ二人を赤の他人と認定した。

⏰:06/06/19 03:17 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#297 [ザセツポンジュ]
20分そこそこで博多に到着した。

『えぇ!!これ駅なの!!?デパートじゃんか!!』
『ジョウジロウちゃん、お前東京行ったら、後ろ向いてひっくり帰るんじゃないのかね』
『なんだこの郵便局!!!!どんだけ手紙をしたためればいいのだ!!』
『ジ、ジョウジロウちゃん…』
『カメラ専門店!!?どんだけカメラ置けば気がすむんだ、福岡県民は!!』
『ジョウジロウちゃん、ヨドバシカメラはカメラ屋じゃない。電気屋だ。心配するな。』

⏰:06/06/19 03:23 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#298 [ザセツポンジュ]
博多駅到着時点で興奮してしまったジョウジロウちゃん。
すーさんは孫を心配した。
『ウチの孫は、いつもある程度冷静なんですよ。どっか具合でも悪いんじゃないかと思うんです…あぁ神様仏様…』
念仏まで唱えだしてしまった。

⏰:06/06/19 03:26 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#299 [梅昆布]
夜更かしはよくないぞ

⏰:06/06/19 03:28 📱:D702i 🆔:cIMLnbJo


#300 [ザセツポンジュ]
ジョウの心搏数が下がったところで、クソガキジジイ共々行動を開始した。
博多駅内を探索し、次はバスでキャナルシティーへ…
『なぁ、ジョウ。博多弁聞きたいよなぁ。』
トミーは地元より遥かにレベルの高い九州の女を品定めしていた。
『すっげ!!でっけ!!ひっろ!!噴水だぜトミー!!』
キャナルシティーと言うショッピングモールに感激し、またもや興奮してしまうジョウ。トミーはこんなにも興奮する親友を心配した。

⏰:06/06/19 03:33 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#301 [ザセツポンジュ]
トミーにひっぱられ、ジョウは服屋のある3階まで連れていかれた。
『いらっしゃいませぇ。』
『かわいいおねぇさん、ちょっといいかい!!?』
服をたたむかわいいお姉さんに声をかけたトミー。
『え!!?若いっちゃないと!!?いくつと─!!?』
トミーはジョウの肩を抱いた。そして耳元で
『かわいすぎるな博多の女子は』
と囁いた。ジョウはブルブルっと身震いをした。
『囁くのはやめてくれ、気色が悪い』

⏰:06/06/19 03:39 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#302 [ザセツポンジュ]
トミーが興奮した博多弁の会話の模様をお伝えしよう。
『おねぇさんは、19くらいかい!!?』
『あたし、22になったっちゃんねぇ。』
『オレと付き合わない!?』『アハハ、ちかっぱかわいいっちゃけどぉ!!』
『…ちかっぱ!!?』
『かなりとか、めっちゃって意味とよ。どっから来たと!!?』
『…サンフランシスコだよ。そんな事より、図書券っておつりでるの知ってた!!?』
『知っとぉよぉ。そんな事ばっかりしよっちゃろぉ!!?』
(うぅ…博多弁、かわいすぎるぜ…)

⏰:06/06/19 03:46 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#303 [ザセツポンジュ]
興奮しているトミーを押し退け、ジョウが質問した。
『ボクね、ストリートとか、古着系とかが好きなんだけどね、この中のどこにあるのか教えてよ。』
『あぁ、あんまりキャナルの中にはないとよ。大名てとこにそういう系いっぱいあるっちゃん。わからんよね!!?地図書いちゃあか!!?バスでもすぐ行けるけん。』 
おねぇさんは、わかりやすく丁寧に、地図を書いてくれた。バスの乗る場所も丁寧に書いてくれた。
『ありがとお!!』
『オレが18になったら迎えに来るからお嫁さんになってね、かわいいお姉さん』『わかったぁ、まっとるけん!!』

⏰:06/06/19 03:53 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#304 [ザセツポンジュ]
──一方ジジイ二人は…
キャナルの中のおみやげ屋で、試食品をほぉばっていた。
『うまい、うまい。通りもん!!?うまいなぁ』
『すーさん、ひよこ食ってみ!!?』
『どれにしようかなシンイチロウのみやげは…』
『あいつ生きてたのか!!どれでもいいじゃないか。』『うーん…………は!!きーさん、もぉ、何にもなくなったぞ!!』
試食品という試食品を全て胃袋に収めてしまった、田舎町のジジイ…みやげよりもヒンシュクを買ってしまい、たまらず外へ出た。

⏰:06/06/19 03:59 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#305 [ザセツポンジュ]
『じぃちゃん、腹減ったよぉ。ラーメン食おうぜ、博多ラーメン。』
トミーは試食品で腹いっぱいのきーさんを昼飯に誘った。
『ゲッフ……アホか!!ジョウジロウちゃんとその辺で食ってこい。』

⏰:06/06/19 04:03 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#306 [ザセツポンジュ]
ジョウは、ひとりでおみやげを見ていた。     『にぃちゃんと…』
頭に浮かんだのは、オハヨウと言った笑顔のエノシタさん……
博多限定の携帯ストラップを見つめた。
(でも、どうやって渡そうかなぁ…トミーなら、なんなく渡すんだろうなぁ…だけど相談なんてできないしなぁ…)
『おい、ジョウ』
『わ!!!!わ!!わ─わ─わ─!!なんだよ!!』 
『…お前、ホンッットに今日おかしいぞ、おむつか!!?マンマか!!?おっぱいか!!?』
『ん…マンマかな。』
『じゃあ飯食おうぜ』
福岡へ来てまでハンバーガーを食べた少年達。

⏰:06/06/19 04:10 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#307 [ザセツポンジュ]
初日と言う事もあり、ホテルへ帰って眠りについた。
──二日目。
トミーとジョウは大名へ洋服を買いに行った。
地元でいうミッシェルがたくさんあって、品揃えが豊富で、ワクワクした。14歳と言う若さゆえにできた事だが、片っ端から店と言う店をまわってのけた。

⏰:06/06/19 04:17 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#308 [ザセツポンジュ]
『ねぇ、トミー。ピーマン佐賀じゃん。福岡の事知ってんじゃないの!!!?』
『お!!そうだな、お前頭いいな。』
トミーは、ピーマンに電話をかけ、大名を案内してもらった。ピーマンは大名を知りつくしていたらしく、ジョウの好きな店も電話のナビだけでたどりつくことができた。
最強のオシャレの味方だ。

⏰:06/06/19 04:21 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#309 [ザセツポンジュ]
そして、最後、大名をしめくくったのは…

─ヴィレッジヴァンガード
『ヴィレヴァンだ!!でけぇなぁ、ジョウ!!』
地元にもある、本と雑貨が置いてある店だったが、規模も品も、断然福岡のほうが豊富だった。
トミーもジョウも、このおもしろい本屋さんが、大ッッッ好きだ。
『満足だね。帰ろうか、トミー。』        二人はホテルへ戻った。

⏰:06/06/19 04:28 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#310 [ザセツポンジュ]
きーさんとすーさんはその頃屋台でラーメンを食べていた。
『きーさん、今日はハッスルか!!?』
『お前ひとりで行けよ、ワシはおっぱいパブは嫌いなんだよ。』
『悪いがきーさん。ワシは行くよ、キャバクラ、ランパブ、ヘルス!!!!ソープ!!』
『……最初からソープでいいんじゃないか!!?』
『モゾモゾしてから、最後グッッと……ウヘヘ…』
あまりの気持ち悪さにラーメンがまずくなった。

⏰:06/06/19 04:32 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#311 [ザセツポンジュ]
じーさん達のいないホテルで、トミーとジョウはファッションショーを開催していた。
『うん、いいね、トミー。』
シャツをはおり、襟を立てていたトミーを、ジョウは誉めた。
『いやいや相変わらずチョイスがいいねジョウジロウちゃん。』
今日も、少し高かったが、気に入ったのを何着か買ってご満悦だった。
『そんな……じーちゃん達キャバクラ行ったのかな!!?』
『だろうな。』
トミーはキャップをかぶり、鏡を見ていた。
『トミー行きたかったんじゃないのか!!?かわいい女がうーんと…』

『行きたくないよ。』

⏰:06/06/19 04:39 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#312 [ザセツポンジュ]
トミーは即座に拒否した。
今、きーさん達が酒を飲んで楽しんでいるこの時間。
トミーのママも、客を相手に頑張っている頃だ。

(……ごめん、トミー。) 
14歳の少年に、出ていったママを受け入れるのは、数学よりも理科よりも難しいことなのだろう。

⏰:06/06/19 04:43 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#313 [ザセツポンジュ]
キャバクラに入るなり酒をかなり飲んでしまった、きーさん達は、早い時間からいい具合に酔っ払っていた。
『お時間の方が参りましたが、ご延長…』
『ペケ、ペケ!!!!』
すーさんはボウイさんの顔の前に手でバッテンをしてみせた。
『すーさん、チェック、じゃよ。』
『イヒヒヒ、ひとしのバカん!!』

⏰:06/06/19 04:51 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#314 [ザセツポンジュ]
酔っ払って、中洲を出た二人は、南新地にある風俗街と全く逆の方向に歩きだしてしまった。
痛恨のミスである。
お互い肩を抱き、いい気分で、国体道路を歩き続けた。
酔っ払った時の昔の思い出話は楽しいもので、ケタケタ笑いながら、二人は知らないところへ、まーっすぐ、まーっすぐ歩いて行った。

⏰:06/06/19 04:56 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#315 [ザセツポンジュ]
そして警固本通りと言う道まで迷いこんでしまった。
スーパー、居酒屋が何件かに、釜戸で焼く本格的なピザ屋さんや、寿司屋、そば屋、とんかつ屋、弁当屋…とにかく食物屋の多い道だった。
しばらく歩くと立派な学校が見えた。
『筑紫女学園!!?きーさん!!女子ばっかりの学校だよ!!』
すーさんのボルテージは一気に上がった。
『すーさん、戻ろう、ワシら道を間違ったんじゃないか!!?すーさん、すーさん、不法侵入だ、セコムが鳴り響いたらアンタ変態ジジイとして逮捕だよ!!落ち着いて、今は夜じゃ。女子はおらんよ。』

⏰:06/06/19 05:05 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#316 [ザセツポンジュ]
引き戻し、歩いていた時、オシャレなショットバーを見つける。
透明なウィンドウにはアメリカンなペイントがほどこされ、ピンクでにぎやかそうな明かり、ごちゃごちゃした雑貨……きーさん達は完全に老人の行くところではないと察しはつくが吸い込まれてしまった。

⏰:06/06/19 05:10 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#317 [ザセツポンジュ]
『カランカラーン!!62歳だが入って飲んでもいいかね!!?』
『いらっしゃいませーぃ!!』
そこで働く女子達は老人達を明るくむかえてくれた。
すーさんは高めの椅子に座った途端、泣きだしてしまった。
『ぅぅぅ…きーさん、ワシは62なのに、こんなに優しい博多のおねぇちゃんがいる…うれしくてたまらんよ…』
『すーさん、…ヒック…多分な、従業員として当たり前の事をしているだけだと思うぞ。』

⏰:06/06/19 05:15 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#318 [ザセツポンジュ]
ショットバーなんて、来たこともないじぃさん二人は、とりあえず、店員のオススメカクテル、“泥ゆうこ”をオーダーした。
『ワ、ワシら殺されはしはいかね!!?ど、泥ゆうこだぞ。きーさん飲めるのか!!?』
『……すーさん、ここはひとつ、信じよう。小夜子ストロベリーみたいなものだよ。ワシも最初は、どっかのババアが苺くっつけて登場するかとドギマギしていたが、今は虜だ。それと一緒だ。』

⏰:06/06/19 05:25 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#319 [ザセツポンジュ]
そんな心配もよそに、泥ゆうこの味は、きーさん達からすれば甘いジュースでしかなかった。
だがカクテルをなめてかかってはいけない。
あとになってくるのだ。 きーさん達はそんな事はおかまいなしに、泥ゆうこを飲みまくった。
『おねぇしゃん、腹減った、何かないのかね!!?』
すーさんの気持ち悪さで、満足にラーメンを食べられなかったきーさんは腹をすかし、この店のオススメのフードをオーダーした。

⏰:06/06/19 05:30 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#320 [ザセツポンジュ]
『はぁい、モカジャバーガーで─す。』
『ポカスカジャン!!?』
きーさんは最近耳掃除をしてない。
『…モ、カ、ジャ、バー、ガー。この店モカジャバって言うっちゃんね。だけん、ココのハンバーガーやけん、モカジャバーガーって言うとよ!!おにぃさん達どっから来たと!!?』
《おにぃさん達どっから来たと!!?》
この質問をきっかけに、泥酔しているジジイ二人に火がついてしまった。

⏰:06/06/19 05:36 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#321 [ザセツポンジュ]
しばし、雑音なみのクソガキジジイの会話を聞いて頂こう。
はじめに発破をかけたのはきーさんだった。

『どこ!!?ってサンフランシスコからじゃよ。』      『サーンフランシスコ!!!!あの、奇遇ですねぇ、ワシもなんですよ。』
『え!!…失礼ですが、お名前…』
『あ、あたい、鈴木ひとしー言いますねん。』
『あぁ、鈴木さん、初めまして、木田と言います。』『やぁやぁ、顔をあげてください木田さん。』
『ぃやいや、さげてもないですが、鈴木さん、サンフランシスコのどの辺!!?ワシは、3丁目なんですよ。』

⏰:06/06/19 05:42 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#322 [ザセツポンジュ]
『ぇえ──!!!!あたいも3丁目なんですよ、木田さん。あの…3丁目の集会所の近くなんですよ、あたいんちは。』
『えっ、えっ、えっ、ワシんちは、その集会所のねぇ、ボスの自販機の裏なんですよ。』
『えぇえ─────!!!!あたいんちは、そのボスの自販機の横に、ブルーシートしいた、そのブルーシートの上で…』 

⏰:06/06/19 05:49 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#323 [ザセツポンジュ]
『あぁ!!!!!!いっつも回覧板、とばしてしまって、えらぃすんませんなぁ。この人は運動会と間違ってはるんやといつも思てましたわ。』
『いや、あれが、あたいの家なんですわ。あのブルーシート、ドンキホーテで980円やったんです。』
『………ぅぅ。』
きーさんが吐き気をもよおし、くだらない会話は終わった。

⏰:06/06/19 05:55 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#324 [ザセツポンジュ]
──三日目
大きな大きな観覧車のあるマリノアシティに行く前に、ジョウは一人でおみやげ屋に来ていた。
どこに行っても博多限定ストラップくらいあるだろう。
だけど、みんなの前ではとても買えない。
酔っ払って爆睡しているジジイ二人と、疲れきってスヤスヤ眠るトミーを置いて、こっそりとストラップを買いにでかけた。

(にいちゃんのみやげもついでに買っておこう…トオリモン……お、試食品だ………うまいな!!!!こりゃ金賞だ)
─通りもん─を購入した。

⏰:06/06/19 06:04 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#325 [ザセツポンジュ]
ストラップを見つめながら、ジョウは、いろんなエノシタさんを思い浮べていた。

メガネをはずした
エノシタさん

恥ずかしそうな
エノシタさん

髪を切った
エノシタさん

⏰:06/06/19 06:14 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#326 [ザセツポンジュ]
おはようをくれた
エノシタさん

にっこり笑った
エノシタさん

窓から見えた
エノシタさん

気取らない
エノシタさん

みんなに優しい
エノシタさん…

⏰:06/06/19 06:16 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#327 [ザセツポンジュ]
ストラップを手に取り、レジへ向かった

(……渡せないかもしれない…でもボクはエノシタさんのタメにこれを買うんだ)

⏰:06/06/19 06:18 📱:P701iD 🆔:pe2kktV2


#328 [我輩は匿名である]
失礼します
>>150-350

⏰:06/06/19 15:45 📱:P900iV 🆔:dk5/VGUE


#329 [我輩は匿名である]
>>1-200

⏰:06/06/22 02:19 📱:N901iC 🆔:TVkd/g7g


#330 [我輩は匿名である]
>>250-400

⏰:06/06/22 21:00 📱:N701i 🆔:LU4I8xHQ


#331 [我輩は匿名である]
>>213-500

⏰:06/06/22 22:02 📱:N901iC 🆔:TVkd/g7g


#332 [我輩は匿名である]
>>1-100

⏰:06/06/23 06:51 📱:W21CA 🆔:Nmz78Rvc


#333 [我輩は匿名である]
>>101-200
>>201-300
>>301-400

⏰:06/06/23 07:08 📱:W21CA 🆔:Nmz78Rvc


#334 [我輩は匿名である]
>>50-100

⏰:06/06/25 12:31 📱:W21K 🆔:JPrS1ywo


#335 [Й]
(`・・)ノ

⏰:06/06/25 13:37 📱:SH900i 🆔:89JMqKfs


#336 [我輩は匿名である]
>>40 I

⏰:06/06/26 00:46 📱:W21K 🆔:ajZ/sfNI


#337 [くぅ]
もぅ書かないのアタシこの小説の大ファンなのにぃ

⏰:06/06/28 20:51 📱:P901i 🆔:7.Y0JjFU


#338 [ザセツポンジュ]
携帯変えました!!!!ってゆうかドコモ止まってます!!!また書きます(●ε●;)くぅさんありがとぉございました☆
チョリーンす!!!!!!

⏰:06/07/02 14:15 📱:W22H 🆔:SB0fDldQ


#339 [ザセツポンジュ]
『にぃちゃんただいま!!!通りもん買ってきたよ!!!!………行ってきまぁす!!!!!』

中学生にとっちゃ地獄のようなスケジュールである。


突然、拉致され、3日間もの長い長い時間を福岡で過ごした挙げ句、朝到着するフェリーで地元へ戻り、即学校である。
きーさんは死んだように眠り

すーさんなんてすでに玄関先で死亡しており


トミーは眉間にシワをよせたまま国語の教科書をカバンに詰め込んで

ジョウに関しては半分泣きかけている

始末だ。

⏰:06/07/02 14:24 📱:W22H 🆔:SB0fDldQ


#340 [ザセツポンジュ]
ポケットの奥の方でジョウの恋のかけらが温められていた


(エノシタさん今日は何するんだろ。)


授業を受けに来て給食を食べるに決まっているが、ジョウはポッケの中のストラップを握りしめながらエノシタさんの事を考えていた。

⏰:06/07/02 14:31 📱:W22H 🆔:SB0fDldQ


#341 [ザセツポンジュ]
トミーは疲れのあまりランキング1位の香水をふりまくのを、忘れてきてしまい。眉間のシワがなかなか取れずにいた。
『おはようございます。今日はお知らせがあります。君達は来年3年生ですね。そこで、今月中に2年生の中から次期生徒会役員を決めなければいけません。それでですね…』


『ッッッッはい!!!!!!!!!!!!!!!オレ生徒会長やってのけます!!!』


トミーは一瞬の間で興奮のあまり机の上に立ち上がりピシッと手を上げ立候補した。
『……木田。今からそんなに興奮するな。ペース配分を考えろ。いいか、立候補したいやつは手をあてください。』

⏰:06/07/02 14:57 📱:W22H 🆔:SB0fDldQ


#342 [ザセツポンジュ]
机に飛び乗り一直線のトミーを1人浮かせ教室はシーン静まり返った。

『いないのかー。今の3年生が卒業するまでは、少しの間3年生と一緒にやってもらいます』


『はい!』

2年2組。学級委員長さんが手をあげた。

『鈴木。そうかそうか。よしよし。木田と鈴木の他いないか!?』

⏰:06/07/02 15:07 📱:W22H 🆔:SB0fDldQ


#343 []
あげ書かないのッ

⏰:06/07/27 07:51 📱:SH902iS 🆔:2jPxTNXE


#344 [りな]
気長に待ってますよ

⏰:06/07/27 13:59 📱:D902iS 🆔:uOXzjo6.


#345 [我輩は匿名である]
あげ↑↑↑↑

⏰:06/08/17 19:44 📱:PC 🆔:x/Mbq/82


#346 [我輩は匿名である]
>>1-350

⏰:06/08/17 22:06 📱:SH902i 🆔:wyTsD/GA


#347 [あみ]
超楽しいです(≧∇≦)
もぅ笑いまくってます☆☆すーさんきーさんのヤリトリとか最高"(ノ><)ノ
頑張って下さいね☆

⏰:06/08/18 01:13 📱:W41SA 🆔:HXlfdF0Y


#348 [我輩は匿名である]
すげぇ才能ありすぎ
プロが書いてるかとおもうほど
笑えるし文章力あるんなー

⏰:06/08/19 14:13 📱:PC 🆔:ITRrKzD6


#349 [我輩は匿名である]
>>241-350

⏰:06/08/23 06:13 📱:D901iS 🆔:WBGhptN2


#350 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800
>>801-900
>>901-1000

⏰:06/08/26 10:59 📱:F902iS 🆔:bBRAGXpA


#351 [我輩は匿名である]
>>350失礼します

⏰:06/08/26 10:59 📱:F902iS 🆔:bBRAGXpA


#352 [我輩は匿名である]
>>237-350

⏰:06/08/26 13:05 📱:N900iS 🆔:ZVLmCAC.


#353 [ちイ]
めえぇッちゃ 大好きでスおじーさン達が 激ウケるU

トミー かッけえーU実際L1たら惚れウ

コレからもー応援Uちャウンで ガンバでち

⏰:06/08/27 01:26 📱:SH700iS 🆔:g5WykDCs


#354 [ザセツポンジュ]
はーい
復活!!!!!

待たせたな
ニューヨーク!!!!

機種変しましたので
気にしないでくださいね(^◇^)


ヨッシャこら
えんやこら

⏰:06/09/03 22:22 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#355 [ザセツポンジュ]
「えぇ!ジョウジロウちゃんよ。お前正気か。」

「…僕ゎいつも正気だよ。」


「そうか。先生!以上です。俺、早退さしてください!」


トミーゎ急激に
テンションを上げたため
鉛筆を持つ気力を失ってしまった。

⏰:06/09/03 22:26 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#356 [ザセツポンジュ]
そりゃそうだ。

あまりに過酷過ぎる。

さっきまで福岡から帰る船に
ゆらりゆれて
香水ふるのも
うっかり忘れてしまうくらいなのだから。

トミーゎ家路を急いだ。


ジョウゎ必死に
疲労と戦いながら
半分目をつぶり歴史の授業を受けた。

⏰:06/09/03 22:33 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#357 [ザセツポンジュ]
(いつ渡そうかなぁ。)

ポッケの奥のストラップ。

ポケットに手を突っ込んで廊下をウロウロしながらジョウゎ
エノシタさんの事を
考えていた。


「鈴木。お前どうしたんだ。小便なら早く行けよ。さっきから股間おさえてみっともないぞ。大丈夫か。」

同じところを
行ったり来たりする
学級委員長を見かねて担任の先生ゎお声をかけてくれた

(ハッ!)


「そんなつもりゎありません。」

ポケットから手を出して
ジョウゎ恥ずかしさのあまり
階段をかけのぼった。


「……鈴木。給食いらないのか…」

⏰:06/09/03 22:48 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#358 [ザセツポンジュ]
ジョウゎ
階段をかけのぼり屋上のドアを開けた。

ひとまず
深呼吸━━。


そして青空の下に
恋をした少年は
一人あぐらをかいて
座った。

⏰:06/09/03 22:54 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#359 [ザセツポンジュ]
「なんて言うのかな。トミーは知ってるんだろうな。できるんだろうな。」

「いーなぁ。」

「……ぁ、エノシタさん、ストラップ落としたよ……落とさないよなぁ。」


「…テイクツー。ぁ、エノシタさん。福岡行った時のお土産!………って、そんな旅行した事すら知らないよな。」

⏰:06/09/03 22:57 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#360 [ザセツポンジュ]
「…テイクスリー。エノシタさん、僕の気持ち受けとってください。……うわ!恥ずかしい!しかもただのストラップだよ!ふざけてると思われるよ!何やってんだ!!」

『…鈴木。』


「ギャフ!!!!!」
給食を心配した担任が屋上まで様子を見に来てくれた。
「なんですか!非常識に!」
ジョウの恥ずかしさは今世紀最大の域に達した。

⏰:06/09/03 23:05 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#361 [ザセツポンジュ]
『鈴木。お前ブツブツ一人でどうしたんだ。先生心配だよ。小便我慢し過ぎない方がいいぞ。給食食べなさい。今日はいちごもあるぞ。お前甘いモノ好きってプロフィールに書いてただろ。』

そのいちごよりも
真っ赤な顔の
ジョウジロウちゃんは
黙りこくってフルダッシュで階段をかけおりた。

⏰:06/09/03 23:10 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#362 [ザセツポンジュ]
(なんて最悪な日なんだ。トミー今頃寝てるんだろうな。僕も帰れば良かった。クソ)

⏰:06/09/03 23:13 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#363 [ザセツポンジュ]
━━ジョウが顔を真っ赤に染めている頃トミーは地獄を味わっていた。
「眠い眠い眠い眠い。ただいま…ぅゎ…回覧版…」
しばし回覧版を見つめるトミー。

※10歩先の鈴木家に回なければならない。

眠い。

でも回さなければならない。

眠い。

こんだけ疲れているといつ起きるか分からない。

遅れる。

すーさんに怒られる。↓
話が長いと予想される。

またさらに疲れる。

もしかしたらすーさんの首を絞めてしまうかもしれない。

確実に少年院行きだ

セックスがしばらくできない。
……
「しょうがないな…」
回覧版片手に鈴木家を訪ねる事を決意した。

⏰:06/09/03 23:25 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#364 [ザセツポンジュ]
「わ!!!!!」

すーさんが玄関で
死んでいる。
「ご愁傷様でした。」
トミーは回覧版を
すーさんの顔にかぶせ
回れ右をした。

⏰:06/09/03 23:29 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#365 [ザセツポンジュ]
「へんた〜い。止まれいっち、に!」

すーさんが口を開いた。
変な性癖はないが
トミーは
一応立ち止まり後ろを振り返る。
「…寝言だな。」

そしてまた前へ歩き出そうとした瞬間
「あぁ〜!!!トミオちゃん!!!」

トミーはすーさんが死んでいないことを
残念に思った。
「なんだよすーさん。」

⏰:06/09/03 23:35 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#366 [ザセツポンジュ]
「体中が痛い!!!誰ぢゃワシをこんな…ぅぅ…こんな…かたい…こんなかたいところに…放置したんじゃ…ワシゃ肩身が狭いよ…。トミオ。」

すーさんは玄関先で子供のように泣き出してしまった。

⏰:06/09/03 23:39 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#367 [ザセツポンジュ]
「俺が泣きたいよ。すーさん。涙をふいて階段を上がってごらん」
すーさんゎ立ち上がった。
「おい!!!トミオ!!!お前ゎ不良か!!!ワシはもう62だぞ!!この急な階段を見てみろ!!!死んでくれと言わんばかりなのが分かるか!!!!」

⏰:06/09/03 23:43 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#368 [ザセツポンジュ]
トミーはため息をついた。
「設計したのおばちゃんじゃん。要はすーさんの娘でしょうよ。」
「はぁ!?小生意気なクソガキめ!!!性病!!!!包茎!!!!お前はワシに死んで欲しいと言うんだな!!!こんなに疲れていると言うのに階段を登らしてツルってコケて死ねと言うんだな!!!!ぉーそうかそうか。じゃあな!!!」

⏰:06/09/03 23:47 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#369 [ザセツポンジュ]
「あーもぉ!!!!わかったよ!!!!おぶるよ!!!!すーさん!!!!」

トミーは最後の力を振り絞り
すーさんを引きとめた。
「えらいすんませんなぁ。お邪魔します。」
すーさんはトミーの背中へのしかかった。

(このジジイ。いつか殺してやる。)

トミーは階段を半分くらい登ったところで
立ち止まった。

⏰:06/09/03 23:51 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#370 [ザセツポンジュ]
「すーさん、俺。性病でもないし包茎じゃあないんだな。悪いな。」

「…お前立派だな。ワガママ言ってごめんな。」

そのまま後ろへ落としてやろうかといういきおいだったトミーも

素直なすーさんを見ると
許そうと言う気になれた。

⏰:06/09/03 23:55 📱:W41S 🆔:FtQlwKtc


#371 [ザセツポンジュ]
すーさんは部屋につくやいなや
いびきをかいて寝始めた。

すーさんの部屋から
自分ちを覗くと
きーさんの部屋が見える。
ちゃんと布団で寝ている
我が祖父を見て
トミーは安心した。

⏰:06/09/04 02:59 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#372 [ザセツポンジュ]
「おい、シンイチロウ。いるのか。」

久しぶりにトミーが
俺の部屋を訪ねてきた。
「久しぶりだなトミー。」

「お前家族からいじめられてるのか?何かあるんだったら俺に言えよ。すーさんもあんな急な階段じゃかわいそうに。」

布や絵の具や作業道具が散らばる俺の部屋だがトミーは堂々と踏み付けて
気にせず座った。

⏰:06/09/04 03:03 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#373 [ザセツポンジュ]
俺は作業の手を止めた。
トミーには話したい事がたくさんあった。

ホントは強がっていてホントは今にもパンクしそうなんじゃないかとか

無理して笑っているんじゃないかとか。

⏰:06/09/04 03:05 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#374 [ザセツポンジュ]
「なぁトミー。」
「俺は元気だ、何も心配する事はないぞ。それより今月のBUBKAはどこにあるんだ。」

俺はBUBKAをトミーに手渡した。

「トミー。俺はお前と話したいんだよ。」

「…シンちゃん。お前40歳の出会い系にハマった男のセリフみたいで気持ちが悪いぞ。」
トミーは真剣に忠告をして
愛読書BUBKAを読み始めた。

⏰:06/09/04 03:10 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#375 [ザセツポンジュ]
「トミー今彼女何人いるんだ?」

「いないよ。俺の事好きな女ゎわんさかいるだろうけどな。」

俺は小さな冷蔵庫からジュースを取り出した。
「珍しいな。いないんだな。」
「おい、お前。ゲストをなんだと思っている。自分だけジュース取り出して飲むなんざ100万年早いぞ。俺だから良かったものの女が来た時ゎ女の分のジュースもちゃんと出せよ。甲斐性ナシと思われるぞ。」

俺はこんなクソガキに説教される自分が情けない。
できるものなら今日の洗濯物と一緒に俺をまわしてもらいたい気分だ。

⏰:06/09/04 03:15 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#376 [ザセツポンジュ]
何を話そう。
何て言おう。
ママの事を口に出すのは気が引けるな。

何から話そう…

そう思っている間に時間はたち、トミーはBUBKAを読み終わっていた。

⏰:06/09/04 03:18 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#377 [ザセツポンジュ]
「シンちゃん。俺疲れたよ。」
トミーはゴロンと横になって天井を見つめた。
「……まぁな、トミーもやっぱ辛いよな。うん。大切な事だよな」
「…なんの話だ。俺ゎ福岡生活で疲れているだけなんだけど」

「ぉ!?あ、そうか。福岡か。福岡な。楽しかったのか?」

⏰:06/09/04 04:05 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#378 [ゆきな]
失礼します
>>1-100

⏰:06/09/04 04:09 📱:P901i 🆔:QPSfCtV6


#379 [ザセツポンジュ]
トミーは天井を見つめたまんま
ボーっとしている。

俺は何か逆にトミーを傷つけた気がして
一人でアタフタしていた。

⏰:06/09/04 04:13 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#380 [ザセツポンジュ]
「シンちゃん。ママの事気にしてるのか?」

俺は心臓をコンパスでぶっさされるかのように痛くなった。

「…俺な、今でも思い出すよ。ママの事。大きくなったらクラブに顔出しに行こうかなぁとか考えたりする。けど、ママがどんな顔をするか検討もつかない。」

「………。」
俺は言葉が出てこなかった。

⏰:06/09/04 04:17 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#381 [ザセツポンジュ]
ちょっと周りを片付けたりしてみた。

自分の情けなさを隠すために

一人せわしく
あたりにある物を触ってみたのだ。

⏰:06/09/04 04:19 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#382 [ザセツポンジュ]
俺は手を止めた。

と言うか触る物が段々なくなってしまった。
「トミー。ママに会いたいのか。」


しばらく沈黙になり
俺は緊張していたが
平然なフリをした。

トミーは口を開いた。

⏰:06/09/04 04:21 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#383 [ザセツポンジュ]
「むかつくけど会いたいな。」

⏰:06/09/04 04:22 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#384 [ザセツポンジュ]
それ以上俺は
なんにも聞けなかった。

「そうか。そうだな。お前、今日学校早引けか。」

「……こんな過密なスケジュールを耐えれるのはお前の弟くらいだ。ちょっとシンちゃん。俺は寝るよ。」

「…あぁ、おやすみ。」


ちょっと気持ちが悪いが俺はしばらくトミーを見ていた。

⏰:06/09/04 04:26 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#385 [ザセツポンジュ]
ママが具合が悪いと
学校へ行かなかった
トミー。

ママが大好きだったトミー。

ママがいなくなったトミー。

寂しさをこらえ続けているトミー。

いつか爆発してしまったらどうしようか。

俺は何をしてやれるだろう。

女をとっかえひっかえしているのも
チャラチャラしているのも

大好きな人がいなくなる寂しさを
トミーはよく知っているからだ。

それはもう二度と味わいたくないに決まっている。

目をつぶったトミーは今何を思い出しているのだろうか。

⏰:06/09/04 04:32 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#386 [ザセツポンジュ]
「…シンちゃん。」

「お。おう。」

「もうちょっと大きくなったら話すよ。」

トミーは俺に背中を向け
丸くなって
眠り出した。

ちょっと悲しかった。

⏰:06/09/04 04:38 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#387 [ザセツポンジュ]
まぁ
俺が悲しいと思う
その100万倍くらい
トミーは悲しいだろう。

俺は今日
トミーの感情をひっかきまわさしたにも関わらず
トミーは冷静で

最低な事をしてしまったような気になった。

⏰:06/09/04 04:40 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#388 [ザセツポンジュ]
「ちーちゃん。小夜子ストロベリー」

「ジョウくん。今日一人なの。珍しい。」

「はぁ…。ちーちゃん。今ボクは明日が来るのが待ち遠しい気持ちと、切ない気持ちが戦争しているところだよ。」

ちーちゃんは目が点になった。

「大丈夫?何かあったの?おねえさんになんでも言ってよ。」

⏰:06/09/04 04:45 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#389 [ザセツポンジュ]
━━━━

「それは恋よ。ジョウくん。」

「やっぱそうだよね。ボクはどうしたらいいか分からないよ。」
と肩を落として小夜子ストロベリーをほうばった。
「女の子ゎね、恋なんかした日にはこんな甘くて美味しいものですら食べられないのよ。」

ジョウはスプーンを置いて、ちーちゃんを冷たい目で見た。

「……いや、食べていいよ。あたしは疑ってないよ。恋だよ。いくら世界史好きのジョウくんだって恋くらいするわよ。そうよ。」
ジョウはため息をついた。

⏰:06/09/04 04:51 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#390 [ザセツポンジュ]
「ちーちゃん。ボクはね、こんなに人を思って悩むのは久しぶり過ぎて困っているんだよ。そんな時になんだ。世界史好きのどうしようもないジョウくんはって…」
そうして再びスプーンを持った。

「…そこまで言ってないよ。ストラップ渡せるといいね」

「……トミーならできるんだろうな。トミーならかっこよくできるんだろうな。……トミーなら……こんなに悩まなくていいんだろうな」

⏰:06/09/04 04:57 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#391 [ザセツポンジュ]
ちーちゃんは
ジョウの肩に手を置いた。
「かっこ悪くても一生懸命の人の方があたしは好き。なんでも器用にできる人よりも、何か自分の好きなものをひとつだけ一生懸命やれる人があたしは好きよ。トミーとジョウくんは同じ人間だけど全く違う生き物でしょう?だからジョウくんなりのやり方で不器用でもかっこ悪くても一生懸命やればそれでいいと思うよ。」

⏰:06/09/04 05:05 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#392 [ザセツポンジュ]
「………それもそうだ。ありがとうちーちゃん。」

「……ストラップ渡せるといいね。」

ジョウは少し笑った。
窓の外を見ながら
いつも自分が考えている事を少しずつ
思い出した。

━流されない自分らしい自分でいる事。

いつだってそうしてきたじゃないか。

⏰:06/09/04 05:11 📱:W41S 🆔:T2waCVaU


#393 [ザセツポンジュ]
空も地もすっかり秋色になり
老人達も少年達も
肌寒さを感じていた。
(自動販売機のお釣りのところににゴキブリのおもちゃを詰め込むと、手を突っ込んだバカな一般人はどうなるんだろうな…)
悪巧みのスペシャリスト━。
木田シゲル62歳の考え事。

⏰:06/09/05 21:57 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#394 [ザセツポンジュ]
(特殊メイクをしてもらうにはいくらかかるんだろう…ワシがあと30歳若く見せれたらジローラモばりのちょい悪お兄に変身して……イヒヒ…お姉ちゃんの大事な部分が…フフ)

その前にちゃんと勃つのだろうか。

頭の事は女子と言う女子でいっぱいおっぱい━。
鈴木ひとし62歳の考え事━。

⏰:06/09/05 22:01 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#395 [ザセツポンジュ]
(俺、電話止まっちゃうからメールができなくなるね。寂しいよ、俺寂しいよ…とか言っとけば、《抱いてオーラ》プラス《金》持ってくる女ゎいないのか。)

そんな下手なホストごっこするのにはまだ少し早い、中学校限定スーパースター

木田トミオ14歳の考え事。

⏰:06/09/05 22:06 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#396 [ザセツポンジュ]
(これはもう強引に渡すしかない。…ぃゃぃゃぃゃ嫌われたらどうするんだバカヤロウ。クツバコにでも手紙付きで置いておこうかな…。ボク、自分の名前書き忘れるとか言う無駄なオチがついてそうで嫌だよ。)

福岡旅行から何十日とたっているのにも関わらず全く前には進めていない。
ズボンとストラップをいい加減一緒に洗濯機で回してしまってくれた方がむしろスッキリする。


恋と言う名の覚醒剤を打たれてしまった
鈴木ジョウジロウ
14歳の考え事

⏰:06/09/05 22:11 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#397 [ザセツポンジュ]
いたずらを考える
きーさん。

おっぱいを考える
すーさん。

金を考える
トミー。

恋を考える
ジョウ。


クソガキジジイと少年達は、今後何をしでかしてしまうのだろうか━。

⏰:06/09/05 22:15 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#398 [ザセツポンジュ]
「それでは、次期生徒会長を立候補するこの4人の演説を聞いてもらいたいと思います。」

体育館に全校生徒は集められ
選挙の時がやってきたのだ。
司会は、恋の覚醒剤をジョウジロウちゃんに売りつけて打ってしまった生徒副会長エノシタさん。

「えぇ、それではトップバッターの…」

⏰:06/09/05 22:20 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#399 [ザセツポンジュ]
エノシタさんからマイクを奪い
体育館と言うステージに立ってしまったトミー。


「待たせたな!!ニューヨークシティ!!」

『キャ━━━━━!!!!!!』
『トミ━━━!!!!』
『かっこいい━━━━!!!』

こんな黄色い声援を飛ばす物の良し悪しも分からない女子がいるから
この男、調子に乗ってしまうのである。

⏰:06/09/05 22:39 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#400 [ザセツポンジュ]
「俺が今日言いたいのは、とりあえず梅昆布茶を毎朝飲めと言う事だ!」

『飲む飲む━━!』

「それと、俺は今さっき待たせたなニューヨークシティと言ったが、日本のくそ田舎で演説を行おうとしているこの俺に誰か突っ込みを入れて欲しかったと言う事を事前にわきまえて今日の演説を聞いて欲しい。」

⏰:06/09/05 22:49 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#401 [ザセツポンジュ]
そんな事は
どうでもいいだろうと突っ込むヤツがいてこそ日本のくそ田舎だ。
梅昆布茶をこよなく愛するトミーは演説を続けた。
「1、2年の女子!これからは春も夏も秋も冬も俺がこのしょうもないくそ田舎の中学校を引っ張って行く!心配することは0、5ミリもない。まぁ一つ心配なのは、俺がこの中の誰かに恋をしてしまい、恋に溺れ、生徒会長と言う立派な地位を捨ててしまうんじゃないかと言う事だ。」

⏰:06/09/05 22:58 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#402 [ザセツポンジュ]
『キャ━━━━━!!!!!!トミー!!』

トミーは人差し指を立て口元へあてた。

体育館中に響き渡っていた黄色い声も
徐々に静かになっていく…。

⏰:06/09/05 23:01 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#403 [ザセツポンジュ]
「そんな事あるわけないだろ!キャンキャンキャンキャンうるせーぞ!ゆみちゃんを見習えボケ!」


男子達から笑いが起きた。
女子達は、ゆみちゃんを白い目で見てバカにしたように笑った。
おとなしく演説を聞いていたゆみちゃん。
いつもひとりで漫画を描いているゆみちゃん。
物動じせず自分の道をつらぬき通すゆみちゃん。
話すのが苦手なゆみちゃん。

⏰:06/09/05 23:11 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#404 [ザセツポンジュ]
「ホントに言いたかった事はここからです。今ゆみちゃんを見て笑った人。バカにしたような目で見た人。俺はそういうヤツが大嫌いだ。」


体育館は、シーンとし、緊張した空気が一気に張りつめた。

⏰:06/09/05 23:15 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#405 [ザセツポンジュ]
「名指しにして悪いけどゆみちゃんだけじゃない。ちょっと人と話すのが苦手で大人しいだけのヤツを、暗いと勘違いしていて、汚い物を見るかのような目で見ていますが、絵を一生懸命描いているゆみちゃんを、俺は素敵だと思います。ゆみちゃんは文句も言いません。なのに、その辺の女子はコソコソ何か言ってバカにしながら、横を通り過ぎる。そんなのはやめにしようと俺は言いたい。」

⏰:06/09/05 23:22 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#406 [ザセツポンジュ]
「団結していれば人数が多い分、強いと思ってしまうと思います。でも一人で黙って文句も言わず、自分を殺し、相手を傷つける事もできないし、はなから傷つけようとも思っていないかもしれないその人達の優しい気持ちもちゃんと考えていけるような優しい学校にしたい。」

女子達はもはや、トミーの顔を見れなくなっていた。

「と言う事で、夜は寝る前に歯を磨け、寝起きの息は誰でも臭いぜと言う名言を残し、終わりたいと思います。木田トミオ。」

⏰:06/09/05 23:29 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#407 [ザセツポンジュ]
そのわけのわからない名言で少しやわらぎ
拍手喝采が
トミーを包んだ。

笑顔で体育館裏に、はけたトミーは次の演説を控えたジョウの肩を抱き抱えた。

⏰:06/09/05 23:32 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#408 [ザセツポンジュ]
「俺のかっこよさ分かるか?お前。無駄な演説だとは思うが頑張れよジョウジロウちゃん」

ニヤニヤニヤニヤしながらトミーはジョウを応援した。

⏰:06/09/05 23:34 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#409 [ザセツポンジュ]
「続きまして、鈴木ジョウジロウ君。」

エノシタさんのアナウンスにジョウはドキっとした。

「えぇ……。ボクは全て人並みの人間です。生徒会長になってみんなを引っ張って行けるとはとても思っていませんが、何か行き過ぎたマネをした木田トミオを止める力なら多少はあります。学校をまとめようとする木田トミオに協力する力は多いにあります。だからボクは生徒会役員となっていい学校を作りたいと言う気持ちは胸の中にたくさん詰まっています。」

⏰:06/09/05 23:41 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#410 [ザセツポンジュ]
「僕には友達がいます。大切です。木田トミオくんのおじいちゃんが昔言っていた言葉を紹介したいと思います。

《ワシは友達よりも確実に先に死ぬだろう。だから親や、ましてやこんなジジイの事よりも友達を一番に大切にしなさい。友達を大切にしていれば一生一緒にいて支えてくれる。》」

⏰:06/09/05 23:48 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#411 [みぃ]
いい言葉やぁ

⏰:06/09/05 23:54 📱:W41SA 🆔:yezqlFqo


#412 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:06/09/06 00:04 📱:P902iS 🆔:r6JdMDAY


#413 [ザセツポンジュ]
「親を邪気に扱えとは僕は言いません。見かけで判断するのではなくて一生一緒にいてくれる友達を大事に思い大切にしていこうと言う気持ちを持っていい学校にして行きたいと思います。終わります。」

⏰:06/09/06 17:08 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#414 [ザセツポンジュ]
こうして
二人の演説は終わった。

言う間でもないが
生徒会長は
ニューヨークシティに向けて演説をした
木田トミオに決まった。

⏰:06/09/06 17:11 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#415 [ザセツポンジュ]
「今日さぁ〜ぁ〜就任祝いに〜#7791エリアカフェ行かない?ジョージ〜」
イタリアの娼婦気分でトミーは嬉しさのあまり放課後ジョウに抱きついた。
「ジョージって誰だよ!気持ちが悪いよ。」ニタニタニタニタしたトミーの気持ち悪さったらこれ以上はなかった。

「おごれ。ジョウジロウちゃん。強制だ。行くぞ。」

無理矢理かりだされて、ジョウジロウちゃんとトミーはエリアカフェへと向かうのでした━。

⏰:06/09/06 18:37 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#416 [ザセツポンジュ]
そんな選挙で追われていた中、老人二人はまた妙な事を考えていた。
「すーさん、ワシは思うんだよ。ホームランを打った野球選手が一周走る必要性はどこら辺にあるのかいっぺん説明して欲しいと切に願っているのはワシだけか?」

こちら、階段の急な、老人心臓破りの鈴木家リビング━。

⏰:06/09/06 18:42 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#417 [ザセツポンジュ]
「え?空ちゃんがワシを好きになって他の席を回るのも忘れてワシのところへずっと座ったまんまだと店長に怒られてクビになってワシと結婚とならないか切に願うって?そりゃそうだな。…ウヒヒヒ…ヒヒ。」

すーさんは梅昆布茶片手に右ななめ上をぼんやり眺めながらスケベな事を考えていた。

「ちょっと電話をかけるが静かにしていてくれすーさん。」

「お?あぁ。どうぞ。」

⏰:06/09/06 18:46 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#418 [ザセツポンジュ]
きーさんは、胸のポッケから最新機種だと思い込んでいる老人用の携帯電話を取り出して3つの数字をプッシュした。

「あっ。こんな昼間からすいません。わたくし木田と申します。…ええ、あんの〜ウチの隣に生息しております鈴木さんと言う、まぁ〜ざっと62歳くらいかと思われますが、えぇ、えぇ。はい、そうですそうです。とんでもないスケベの。」

⏰:06/09/06 18:51 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#419 [ザセツポンジュ]
「その鈴木さんが、ちょっと今流行りの認知症と言いますか。わけのわからない事をワーワーキャーキャーわめいちゃあ、梅昆布茶をふきだしていますので、はい、ちょっとわたくし近所の住人も大変迷惑しておりましてですね。」

すーさんはスケベスイッチを止め、我に返った。
「きーさんどこへダイヤルまわしたんじゃ。」

⏰:06/09/06 18:55 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#420 [ザセツポンジュ]
そんなすーさんの質問はフルスルーしてきーさんは電話を続けた。

「あ、はい。そうですねぇ。じゃあお願いできますか。救急車。えーっと住所は…郵便番号から言います791の…」

「ちょちょちょちょちょ、ちょい待てよ!」

すーさんはきーさんの携帯電話を奪いとり通話を切断した。

⏰:06/09/06 18:58 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#421 [ザセツポンジュ]
「なんだすーさん。今のは。キムタクのつもりかね。」

「ん?だろう。かっこよかっただろう。」

「謝罪しに行きなさいジャ○ーズ事務所まで。」
きーさんは冷静に謝罪を進めた。

「きーさん!そんな事よりなぜワシを病院送りにさそうとするだ。説明してくれ。」

「…ワシは野球の話をしていた。すーさんはうそつき空ちゃんの話をした。腹が立った。病院から出てこなければいいと思った。それだけだ。」

「きーさん。そんっな冗談じゃないか。怒らないでくれ。まだワシはキャバクラ遊びがしたいのだよ。」

⏰:06/09/06 19:08 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#422 [ザセツポンジュ]
そう言ってすーさんは再び梅昆布茶を手に取ろうとした瞬間━。


「おぃ!木田シゲル!お前今、空ちゃんにうそつきと言うフレーズを足してなかったか!!!!!!どういうことか!!!!!空ちゃんをバカにするんじゃあないよ。ワシに殺されたいのかね!!!!」

⏰:06/09/06 19:12 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#423 [ザセツポンジュ]
すーさんはものすごい剣幕でまくしたてた。「お?さっそく必殺つば飛ばしで殺そうとでもしているのかねすーさん。」

顔に飛び散ったすーさんのツバをキレイなタオルで拭き取りながらきーさんはため息をついた。

いきなりボルテージを上げたすーさんは過呼吸を起こすまさにカウント3秒前だ。

「すーさん。じゃあ空ちゃんに会いに行って見るか。どんだけうそつきか。」

⏰:06/09/06 19:15 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#424 [ザセツポンジュ]
過呼吸になりそうな苦しさも、空ちゃんの笑顔を思い出しただけで、すーさんの呼吸は通常の値に戻った。
「そうだな。今日あたり行ってもいい頃だよきーさん。いい提案だ。よし!行こう!」

つい3日前も一人で足を運んだすーさん。

「またあとでな。」
すーさんが風呂に入る支度をしたところできーさんは自宅へ戻った。

⏰:06/09/06 19:20 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#425 [ザセツポンジュ]
コンコンコン。

「トーミオちゃん。おじぃちゃんとお話しーましょ。」

ガチャ。

「入っていいって言ってないだろ!俺を何歳児だと思ってるんだクソジジイ!」

ふと下に目を向けたきーさん。

「やかましいわ!14年しか生きてないクソガキがえらそうな口を叩くんじゃない!このせんずり小僧!」

トミーはきーさんの目の向かう先にある
いかがわしいビデオを手に取り、引き出しにしまった。

「……で、何の用事だ。」

⏰:06/09/06 19:27 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#426 [ザセツポンジュ]
「まぁ、今日はじぃちゃんの話を聞け。お前、あれだ。多分すーさんの孫だな。」

「やめてくれ。俺は将来あんなしょうもないジジイにはならない、確実に。62歳になってもダンディでちょい悪で女にモテまくっている俺がいるはずだ。」

⏰:06/09/06 19:32 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#427 [ザセツポンジュ]
「いやいやいや、すーさんだって昔ホントにモテていたんだぞ。この街の象徴と言えば鈴木さんとこのヒトシ君だろと言っても過言ではなかったよ。なのに今は、あんな落ちぶれスケベジジイだ。」

トミーはかすかに聞こえる隣の老人の風呂場からの歌声に寒気を感じた。

「じぃちゃん。その話やめにしないか。」

「まぁ待てよく聞け最後まで。ホントに女を使う事ばかり考えると将来あぁなるぞ。すーさんがいい例だ。怖くないのかトミオよ。ワシゃ心配だよ」

⏰:06/09/06 19:38 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#428 [ザセツポンジュ]
「俺は使っているつもりはないよ。俺の心を動かすくらい、いい女がいっこうに現れないからいけないんじゃないか。現れるまでちょっとくらい遊んでもいいじゃないか。」

きーさんはトミーの目を10秒ほど見つめた。

⏰:06/09/06 19:42 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#429 [ザセツポンジュ]
「相手が現れる現れないの問題ではない。お前が現れるのを恐れて逃げているからだ。」
トミーは黙ってつばを飲み込んだ。

「まぁな。大好きになった人がいなくなるのは辛い。忘れられてしまうんじゃないかと思うと寂しい。離れて行くのは悲しい。そればかり考える自分が虚しい。でもそんな感情があってこそ人間だよ。」

⏰:06/09/06 19:45 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#430 [ザセツポンジュ]
トミーは壁に持たれかかって下を向いた。


「トミオ。こんな話したらお前は悲しい気持ちになるだろうが言わせてもらう。ママはお前を忘れてなんかいない。じぃちゃんが保証する。ママはキレイでいい女だ。なんてったってここらでは3本の指にはエントリーされるほどの店にしたクラブのママだよ。ただ人より少しワガママなところがあった。そして人一倍責任感が強かった。」

⏰:06/09/06 19:50 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#431 [ザセツポンジュ]
ポタン
ポタン━。

床には一粒一粒
トミーの中の強がりが体の外へ引越しをしている。
「ママは恋のかけひきのスペシャリストだ。だからよく分かっている。お前を愛しているから心の底から愛しているからこそお前に会わない。ワガママな自分をママ自身が許せないからだ。お前は自分勝手なママだろうと、どんな人だろうとも、いい匂いのするママが大好きだろう?許すだろう?それが申し訳なさすぎて見てられないからだよ。」

⏰:06/09/06 20:00 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#432 [ザセツポンジュ]
「まぁ、そこもママのワガママなところだがな。でもじぃちゃんは胸を張って言える。ママは一生お前の事が大好きで一生お前に片思いのピュアな女だと言う事だよ。お前がママを引きずる分、ママはまたとんでもない事をした自分を悔やみ、心の中は大雨だ。ママが悪いのは100も承知だよ。人間、忘れると言う都合のいい機能はポンポン使うが、許すと言う機能をなかなか使いこなせない。許すことは当たり前に難しい。」

⏰:06/09/06 20:08 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#433 [ザセツポンジュ]
きーさんはトミーの肩を抱いた。

「トミオ。ママが大好きならママを許そう。人を好きになろう。今すぐじゃなくていい。ゆっくりでいい。すーさんみたいになるお前を想像するとワシは天国でウカウカ遊んでられないよ。」

そうしてきーさんは、泣きじゃくるトミオの頭を撫でて部屋を出た。
すーさんをそろそろ迎えに行かなくちゃ。

⏰:06/09/06 20:12 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#434 [ザセツポンジュ]
感動的な時間を過ごす木田家をよそに
鈴木家では戦争が起きていた━。
「このドウテイ野郎!お前まさこの散歩をサボってタダで済むと思っているのか!」
メスだと思い込んでいる我が愛犬が散歩を忘れられてしょぼくれているところをたまたま見てしまったすーさん。
「今日ボクじゃないよ、じぃちゃんだよ。見てみてよカレンダー。」
10秒ほど1m先にあるカレンダーを見つめたすーさん。
「はぁ!?あれはウソだ!日付も西暦も全部ウソで、しいて言うなら去年のカレンダーじゃ!ワシゃ老眼で何も見えんわ!」

⏰:06/09/06 20:26 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#435 [ザセツポンジュ]
「言ってる事がめちゃくちゃだよ!じぃちゃん!ボクはもううんざりだよ!今日からじぃちゃんの孫を辞退するよ!さようなら!」

腹を立てたジョウは
急な階段を一気にかけあがり部屋に駆け込みバタンと戸を閉めた。

⏰:06/09/06 20:30 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#436 [ザセツポンジュ]
コトッッ━━


コトッッ━


コトッッ━

地味な物音が長く続いた。

「シュン……シュン…」
老人のすすり泣く声が部屋の戸のすぐそばで聞こえてきた。
ジョウは少し言い過ぎたかなと反省した。

あんな急な階段を仲直りするために一生懸命登ってきた祖父の姿を想像すると少し胸が痛かった。

⏰:06/09/06 20:33 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#437 [ザセツポンジュ]
ジョウはドアノブに手をかけた。
(ごめんねって謝ってボクがまさこの散歩へ行こう…。)

一方すーさんも鼻水を止めて口を開いた。
「…ジョージ。」


カチャン。

「ボクの名前はジョウジロウです。さようなら。」

鍵をしっかりと閉めたジョウジロウちゃん。
ジョウは孫の名前を間違えた自分ちのじいさんに失望し、こないだイタリア娼婦気分だった時のトミーを思い出したため、ダブルパンチをくらった。

⏰:06/09/06 20:38 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#438 [ザセツポンジュ]
「名前間違ったくらいでイヂけるんじゃないよ!むしろジョージの方がシャレた名前だろ!せっかく仲直りしようと思ったのに、この気持ちを踏みにじったお前は少年院行きだ!バカヤロウ!ワシはな!今日空ちゃんと言う恋人に会いに行くのだ!そんな老人に気を使う事もできないのか!そんなは絶対《ヤラハタ》だぞ!ヤラハタの意味分かるか!ヤラずにハタチを迎えるヤツの事だ!要はしょうもない童貞野郎の事だ!お前だ!」

⏰:06/09/06 20:44 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#439 [ザセツポンジュ]
すーさんは息切れをしながら
階段を一段一段ヒョコヒョコと降りて行った。

ジョウのストレスは一気に上昇した。

すーさんから受けるストレスは
14歳の少年にはあまりにもきつすぎるであろう。
しかしジョウはゆっくり深呼吸をし
気持ちを落ち着かせた。

(友達を大切にしよう。友達を大切にしよう。)

⏰:06/09/06 20:48 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#440 [ザセツポンジュ]
━━━━

タクシーに乗り込んだジジイ二人。
「ところできーさん。うそつき空ちゃんとはどういう意味だ。」

「すーさん。空ちゃんが今までにやったバイト何か覚えているか」
「…マックだろ」

「時給いくらで雇ってもらっていたか覚えているか?」

「え〜…ぃゃ〜…1500円だったか」

「ありえない話だろ。」
「空ちゃんかわいいだろう。当たり前だバカ。ひとつもおかしくないぞ」

⏰:06/09/07 00:21 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#441 [ザセツポンジュ]
きーさんはあきれかえってため息をついた。
「すいません運転手さん。ここで止めてください。」

「ん!?きーさん。どうしたんだ。」

「すーさん。ちょっと1件寄るところがある。降りてくれ」

すーさんは疑いもなくタクシーを降りた。

⏰:06/09/07 00:25 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#442 [ザセツポンジュ]
すーさんが地に両足をつけた瞬間
きーさんはおもいくそドアを閉めた。

「運転手さん。出してください。あのじぃさん頭がちょっと悪いんですよね。さぁ早く早く。あーもぅ、早く。」

きーさんはすーさんを取り残し

一人飲み屋街へと向かった。

⏰:06/09/07 00:29 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#443 [ザセツポンジュ]
━━カランカラン

店のドアを開けると
高級感の漂う
大理石、
ソファ。
グラス
シャンデリア━。

空ちゃんのいる
ちゃんがら屋とは
別世界のお店だ。

「いらっしゃいませ。木田様お待ちしておりました。」

⏰:06/09/07 00:33 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#444 [ザセツポンジュ]
「ママはおられますか今日は。」

「はい。今お呼びします。お席の方ご案内します。」

ほこりひとつない
キレイなソファに
きーさんは座った。

淡い桃色の着物を着た
背筋の真っ直ぐのびた美しい女が向こうの方から歩いてくる

「いらっしゃいませ。」

困ったようにいつも笑うママが
今日も困ったような笑顔できーさんの隣に座った。

⏰:06/09/07 00:39 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#445 [ザセツポンジュ]
「お前、困ってるのか嬉しいのかいつもはっきりしろと言っているだろう。キレイないでたちが台無しだぞ。」
きーさんはニッコリ笑った。

「すみません。」
きーさんの笑顔にホッとした表情を浮かべ
ママはニッコリ笑い

キレイな手で
グラスにアイスを
運び
ブランデーを注いだ。
「トミオがな、生徒会長になったぞ。」
きーさんはタバコをくわえ、ママは素早くそっとマッチをすった。
「ええ!トミオが?あの子大丈夫なんでしょうか…」

きーさんはタバコをふかした。

⏰:06/09/07 00:44 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#446 [ザセツポンジュ]
「服も店員並みにキレイにたためるし、目玉焼きだってうまくできる。塩コショウの加減も抜群だ。ちなみに、チャーハンの元ナシでチャーハンも作れるし、習字も習っていないのに字もキレイだ。」
ママは深くうなずきながらきーさんの話を聞いた。

「全部お父さんのおかげですね。」

「そうだ。ワシが教えた。」

⏰:06/09/07 00:49 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#447 [ザセツポンジュ]
きーさんは得意気な顔でニンマリ笑った。
「ワシが教えた。」


調子に乗りもう一度繰り返した。
きーさんは今までトミーと過ごした日々を思い出した。


「ワシが教えた。」

満面の笑みを浮かべ
また同じセリフを吐きやがった。

「………ありがとうございます。」

ママの声も届いてはいない。
今まさにきーさんは
トミオと過ごした日々の数あるなかの5年前の記憶をたどってニヤニヤニヤニヤしているところだ。

⏰:06/09/07 00:55 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#448 [ザセツポンジュ]
「そうだ。でもそれはワシのおかげではあるが、トミオがいつかあんたが帰ってきた時に誉めてもらえるようにと心の奥底からずっと思っていたから上達したに違いない。」

ママは涙を浮かべた。
でもグッとこらえた。
大好きな我が息子を捨ててまでも

この仕事だけは毎日しているのだから

泣いてはいけない。

⏰:06/09/07 01:02 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#449 [ザセツポンジュ]
━━━

こちらちゃんがら屋。
「空ちゃん空ちゃん、この人だーれだ!」

「すーさん☆」

「正解〜やっぱ空ちゃんはかわいいね〜」

すーさんはただの酔っ払いジジイになっていた。
空ちゃんがウソツキな事なんざどうでもいいのだ。
「第2問〜。この人だーれだぁ」

「すーさぁん!」

「あ〜空ちゃん今日は一段と可愛いねぇ…ヒック…正解でーす。」

3歳児でもあてられる質問で誉められる空ちゃんは幸せものだ。

⏰:06/09/07 01:26 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#450 [ザセツポンジュ]
「第3問目〜このイケてるおにいさんは誰でしょう〜」

「ぁ、きーさん!」

「はぁ!?胸くそ悪いヤツの名前を出すんじゃないよ。ブッブ〜不正解で〜す。そのきーさんてヤツは史上最強の最低最悪な歴史上人物の名前でした〜。……あ?」

すーさんは目を疑った。
前に座る見覚えのある老人を見るやいなや
頭を抱えた。
「すーさん。いやはや。やってるみたいだな。楽しそうに。」
「きーさん。ワシから映るビジョンであんただけが白黒に見えるよ。」
「勝手に殺さないでくれないかさっきから。明日眼科へ付き添ってやってもいいがな。別に。」

⏰:06/09/07 01:33 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#451 [ザセツポンジュ]
きーさんご指名の
きららちゃんが登場した。
「きーさん久しぶりだね。失礼しまぁす。」
「やぁやぁ。先に好きなもの頼みなさい、きららちゃん」

きららちゃんはニッコリ笑い、きーさんのお酒を作る作業に取りかかった。

ふと、きーさんは
マドラーを回すきららちゃんの手を見つめた。

⏰:06/09/07 01:37 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#452 [ザセツポンジュ]
「きららちゃん、最近コケたのかね。どっかて打ったのかね。」

きららちゃんのコブシの下あたりに赤い小さなあざがポツポツとできていた。

火傷でもないし、打ったにしては小さすぎる。
きーさんは疑問を持った。

⏰:06/09/07 01:40 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#453 [ザセツポンジュ]
「あ、これ…は…そうなのちょっと打っちゃって。ヘヘへ。」

きららちゃんが気まずそうに笑った。
きーさんはそれ以上は聞かなかった。

「空ちゃんチュウは?」
「きゃー!すーさん恥ずかしいから二人きりのところで…ね?」
すーさんは目をつぶっているが

空ちゃんは完全に
引いていた。
顔のひきつりなんて尋常じゃない。

⏰:06/09/07 01:45 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#454 [ザセツポンジュ]
今宵楽しい一時を過ごしたすーさんは
満足そうな笑みを浮かべ
「ペケ。」
ボーイにチェックを言い渡した。

帰りのタクシーの中ですーさんは恒例の過去の栄光について
語った
「ワシだって昔はすごかったんじゃよ。月曜日にゃ抱いてオーラを放つ女子が家を押し掛け、火曜日にゃこの街一番のかわいこちゃんと手を繋ぎハニカミデートで水曜日にゃ…」
(あの手のあざはどうやったらできるんだ…う〜ん…)
きーさんは聞き飽きたすーさんの自慢話をよそにきららちゃんの手のあざの事で頭がいっぱいだった。

⏰:06/09/07 01:54 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#455 [ザセツポンジュ]
「あ、すいませんここでワシは降りますので。すーさん。お先に失礼おやすみよ。」
「はぁい、パイパーイ。」
きーさんは決してすーさんと家が隣ですと運転手に教えない。

すーさんは運転手に散々右だの左だの言いながら自慢話を繰り返し話し、運転手に完全に嫌われたところで気がすみ、きーさんをおろした同じところにまた止まる。
「はぁいおやすみよ〜。」

すーさんは死にたくないためか急な階段を登らず、リビングで夢の中に入った。

⏰:06/09/07 01:59 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#456 [ザセツポンジュ]
いつもならすーさんが家路につく頃には
いい夢を見ているきーさんも今日ばかりは
部屋で考え事をしていた。
(手の甲を怪我する方法……きららちゃんはストーカーに狙われていました。裏拳をかわした相手の鼻がさきっちょがやたらとがっていたため、きららちゃんはちょっとしたアザができました……。うん。700%ありえないな。)

きーさんは思考回路をフル回転にさせたが
いつの間にか眠りについたのであった。

⏰:06/09/07 02:05 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#457 [ザセツポンジュ]
翌日━。

きーさんはいつも通りに目が覚めた。
そしてカーテンを開け
窓を開けた。
「冷えるな朝は…。」
空気を吸い込み、すーさんの部屋を見た。

すーさんの部屋のカーテンが
もぞもぞしている。

ガラガラ━。
「わ!ゎゎゎゎゎ!」

⏰:06/09/10 01:22 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#458 [ザセツポンジュ]
「すーさん。ワシは長年連れそった友人だよ。そんな化け物を見るような目で見つめるんじゃないよ。」

すーさんは汚い顔をくしゃくしゃにして
大きなあくびをした。
「やぁやぁきーさん。おはよう。目が覚めるのが同時なんて珍しい事だ。#7791カフェのみーちゃんにでも会いに行かないかね?」

⏰:06/09/10 01:25 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#459 [ザセツポンジュ]
きーさんは、大きくうなずいて、顔を洗いに下へと降りて行った。
昨日の夜から考えているきららちゃんの手の甲のあざ━。

きーさんは顔を洗いながらも
難しそうな顔で
考えていた。

⏰:06/09/10 01:27 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#460 [ザセツポンジュ]
「小夜子ストロベリーふたつ」

「みーちゃん、先に梅昆布茶をワシにひとつ。」

今日もかわいくて小さくて色の白いみーちゃんは
「了解生コン☆」

笑顔で言ってくれた。

⏰:06/09/10 01:30 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#461 [ザセツポンジュ]
「なぁきーさん、ワシは悩むよ全く。空ちゃんとみーちゃん。…空ちゃん。みーちゃん…。空ちゃ…」

「すーさん。短刀直入に言うが、お前が選ぶ立場ではないと言う事を頭に入れて置くんだな。62にもなってみっともないぞ。」
きーさんは、窓の外をぼんやり見つめながら難しい顔ですーさんに忠告した。

⏰:06/09/10 01:33 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#462 [ザセツポンジュ]
「きーさん。今日は何を考えているんだ。」
すーさんは少し心配気味にきーさんの眉間のシワの数を数えていた。
「…あのな、すーさ…」

「おまたせしました、梅昆布茶…」

「みーちゃん。みーちゃん。かわいいねぇ。今日も。ウフフフフ。」

すーさんは親友のきーさんの悩み事よりも
一瞬登場する小さくてかわいいみーちゃんの方が大事なのだ。

⏰:06/09/10 01:37 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#463 [ザセツポンジュ]
きーさんは、この隣に生息している老人と、なぜ今日と言う今日まで一緒にいてしまう友達なのか、心底自分を疑った。

「気持ちが悪いぞ、すーさん。そろそろリハビリテーションの時間じゃないのかね?行かなくて大丈夫か。」

「このヴォケ!ワシはどっこも悪くないわ!」

そしてどこも悪くないすーさんは梅昆布茶をすする。
「ぅあちちちち。」

すーさんは猫舌なのだ。

⏰:06/09/10 01:43 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#464 [ザセツポンジュ]
オシボリで口をちょちょいとふいたすーさんは梅昆布茶が冷めるまでの間、タバコを手に取り火をつけた。

「なぁ。すーさん。手の甲に小さいアザをつくるにはどうしたらいいのかね。」

すーさんはきーさんの顔を3秒ほど見つめ、自分の手に持っているタバコときーさんの顔を交互に見て
決心したかのように
きーさんの手の甲に
タバコの火を近づけた。

⏰:06/09/10 01:48 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#465 [ザセツポンジュ]
「いやいやいやいやいや。君は間違っているよ。テストなら0点より下だ、すーさん。」
きーさんはさっと手を後ろにしまった。

「きーさん。あんた何がしたいんだね。」

「質問を変えよう。ここに小さなアザがポツポツと出来ている子がいたんだが、何をして出来たのだと思う?」

きーさんは昨日きららちゃんが手の甲に小さいアザを作っていたところを指差した。

⏰:06/09/10 01:53 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#466 [ザセツポンジュ]
すーさんは自分の手の甲を見つめ
真剣な眼差しになり

あまり息をしなくなった。

集中しているすーさんは、あまり呼吸をしない。

きーさんはこのすーさんが大好きだ。

⏰:06/09/10 01:54 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#467 [ザセツポンジュ]
「ウォ━━━━!!!!」
すーさんは立ち上がり
拳をそのままパックリ口の中に入れた。

「すーさん、すーさん。ワシが悪かったよ。質問が難し過ぎた。ごめんよ。パニックになるなすーさん。なんなら死んでくれ」

すーさんはスッポリ口の中に入ってしまった拳を、取り出して
そのままきーさんを殴った。

「どさくさにまぎれて死ねとは何だお前!」
きーさんの頭の上にはもはやヒヨコがピヨピヨ飛んでいる。

⏰:06/09/10 01:58 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#468 [ザセツポンジュ]
「お待たせしました………小夜子ストロベリーで……」

みーちゃんは気まずそうに小夜子を静かに置き去りにしてカウンターへ逃げてしまった。
きーさんを殴って気が済んだすーさんは
もうぬるくなった梅昆布茶で喉を潤した。
「きーさんよ。何をしようとしているんだね次は。」

⏰:06/09/10 02:03 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#469 [ザセツポンジュ]
ヒヨコがどこかへ去るのを見届けたきーさんがようやく戻ってきた。

「すーさん。もういい。アザの正体が分かってから話すよ。」

きーさんはパクリと一口小夜子を食べた。

⏰:06/09/10 02:07 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#470 [ザセツポンジュ]
「甘いなぁ。ワシはこんなにも甘い恋心を一体何度抱いた事があるのだろうか…」

ヒヨコを飛ばしていたきーさんもこのセリフだけは欠かした事がない。

きーさんの考え事は続いた。

⏰:06/09/10 02:11 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#471 [ザセツポンジュ]
━━
困った祖父を持ってしまった14歳の少年達も同じ日の夕方《エリアカフェ #7791》に来ていた。

「なぁかわいぃかわいぃちーちゃんよ。今月のクーポンもう来てる?」

ちーちゃんは手元にあったクーポン雑誌を
トミーに手渡した。

「これ今月の。お待たせしました小夜子ストロベリーです。」

トミーはクーポンと黄色いノートを小夜子ストロベリーのサイドに起き、めまぐるしく目の玉を動かしていた。

⏰:06/09/11 19:41 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#472 [ザセツポンジュ]
「トミー…物色するか探すか食べるかどれかにしなよ。欲張りな男だな。それにしても今日は小夜子ストロベリーを食べるなんて珍しいね。」
そう言ってジョウはいつものお約束、小夜子ストロベリー食べた。
「だってこのクーポンで安くなるんだもん。」

トミーはクーポン雑誌からエリアカフェの欄を見つけ、
小夜子ストロベリー100円引きと書いているところの点線をやぶった。
「……なんで小夜子好きのボクに今までそれを教えてくれなかったの?」

⏰:06/09/11 19:48 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#473 [ザセツポンジュ]
ジョウはクーポン雑誌にあまり興味がなかったためそんな事実がある事ですら把握できていなかった。

一方トミーは、いち早くトレンドのものを脳みその引き出しに入れておきたいがために、毎月必死に要チェックをしている。

安くなるなら一回くらい食べて見てやってもいいだろうと考えたのだろう。

⏰:06/09/11 19:51 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#474 [ザセツポンジュ]
「お前な、自分が好きなものなら自分の力で手に入れろ。人の情報をあてにするんじゃないよ………ん?」

トミーはスプーンをくわえたまんまクーポン雑誌の一部分に眉をひそめ目を落とした。

そんなトミーの様子を見たジョウも

クーポン雑誌をのぞきこんだ。

⏰:06/09/11 19:54 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#475 [ザセツポンジュ]
「エノシタさんじゃない!?」

ジョウはびっくりして少し声のボリュームをあげてしまった。
古着屋ミッシェルの上にある美容室の割引き券にエノシタさんが映っているのである。

トミーはジョウの顔とクーポン雑誌を交互に見た。
「お前やっぱエノシタさんが好きなんじゃん。俺はこっちを見ていたんだよ。」

トミーの指差した欄には美容室のコーナーではなく隣のページの

《新規OPEN★ホテルミラクル。休憩1000円割引き!宿泊半額★先着5名様》

新しく近所にできたラブホテルの欄だった。

⏰:06/09/11 20:04 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#476 [ザセツポンジュ]
「違います。ボクはエノシタさんに気付いただけです。」
ジョウはやたらキョロキョロしながら弁解をした。

「ジョウジロウちゃん。君は、ウソをついたり怒ったりすると丁寧語になるクセがある。」
トミーは意地悪な笑みを浮かべた。

「……怒っている方です。」

ジョウは小夜子をほうばった。

「そうか、そうか。」
トミーも、今日はジョウと同じ甘い甘い小夜子を食べた。

⏰:06/09/11 20:14 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#477 [ザセツポンジュ]
━木田家。


「トミオ。座りなさい。」
トミーは家に帰るなり、真剣な瞳で玄関にたたずむ我が祖父に素直に従った。
「なんだ、今日は。」
トミーは玄関に座った。
「立て。」
「え!?」
真剣な瞳が気色の悪い我が祖父を2度見した。
「じぃちゃんの部屋に来なさい。」

きーさんはそう言い残して自分の部屋へと移動した。

(なぜ一度座らせる必要があるんだ…あのクソジジイ。)

⏰:06/09/11 20:23 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#478 [ザセツポンジュ]
きーさんは部屋で仁王立ちで偉そうにかまえていた。

「じぃちゃん…何がしたいんだ。」

「決闘だ。」

「……どうしてだ。」
「…すーさんが腹立つ行動ばっかりするからだ。」

「おい、すーさんを直接殴ればいいんじゃないのか、それ。」

⏰:06/09/11 20:31 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#479 [ザセツポンジュ]
「いいかトミオ。じぃちゃんのココ。拳の下にちっちゃいアザを作るような攻撃をくわえる事だけを考えろ」

「じいちゃん。俺は110を押した方がいいのか?おかしいぞ。」

「つべこべ言わずファイ!!」

きーさんはトミーに飛びついた。

⏰:06/09/11 20:37 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#480 [ザセツポンジュ]
「気持ちが悪いぞ!コノヤロウ!」

トミーはきーさんを殺さない程度に叩きまくった。
「トミオちゃ〜ん」
きーさんはトミーの顔をベタベタ触りチューを試みた。
「死ねジジイ!」

トミーは、きーさんの手を思いきり噛んだ。
「イッチチチチチチ!」
きーさんは目をつぶり手を押さえた。

⏰:06/09/11 20:42 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#481 [ザセツポンジュ]
その時だった。


きーさんの脳内の小さい引き出しが全て開放されたのだ。

気が狂って、拳をまるまま口に入れたすーさん。

気持ち悪さに抵抗して思いきり噛みついた
我が孫、トミー。


共通点は歯形。


女の子がキレイな自分の手を口の中に入れる━━。



「ハッッッ!!分かったぞトミオ!!」

ゴツン━。

きーさんは嬉しさついでにトミーにゲンコツをくらわした。

「くぅ……ぅぅ。」

きーさんのゲンコツは痛いのだ。

⏰:06/09/11 20:48 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#482 [ザセツポンジュ]
「鈴木ヒト━━━━━━シ!!!!」
トミーは、たまらず隣の家のエロジジイに叫んだ。
「こんのクソガキやっかましぃわ!!!!62歳のジジイだと思ってなめるんじゃないよ!!!今大事なビデオを観賞中なんじゃ!!!!次叫んだら売り飛ばすぞこのボケタレ!!!」
ピシャン━。
すーさんは窓の鍵をしめてカーテンをきっちりとしめ電気を消したた。
「ムフフフ…」


「わぁ〜〜ん。」
トミーの両目から涙がちょちょぎれた。

やっぱりきーさんのゲンコツはとっても痛いのだ。

⏰:06/09/12 00:18 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#483 [ザセツポンジュ]
━━季節は冬になった。

寒い寒い
冬になった。

ジョウはまだストラップを渡せずにいた。

生徒会役員が集まる生徒会室にエノシタさんはいつもいた。

用事以外何にも話せないジョウがいた。

それとは逆にかわいくなったエノシタさんとも、他の女子ともわけへだてなく楽しそうに話しているトミーがいた。

⏰:06/09/12 00:30 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#484 [ザセツポンジュ]
ジョウは、いつもいつもエノシタさんだけを見ていたのだ。


だけれども、やっと気付いた。


自分の大好きな人の大好きな人は
イヤでも分かってしまうものなのだ。


(エノシタさん…いつもいつもトミーを見てる。ボクはエノシタさんをいつもいつも見てるから、よく分かってしまうよ。)

⏰:06/09/12 00:34 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#485 [ザセツポンジュ]
「おーぃ。ジョウジロウちゃん。何考えてんだ帰るぞ。」

ボケーっと夕焼けを見つめ、心を切なくさせていたジョウジロウちゃん。

心をしめつけられるような、泣きたくなるような、もどかしい気持ちが全身をかけめぐっていた。
「ん?うん…そうだね。」

トミーは、遠い目をしたジョウを少し見ていた。

「…どの辺を見てるんだ。」
「ボクの心の中を見ているんだよ。トミー。」

⏰:06/09/12 05:01 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#486 [ザセツポンジュ]
ジョウは白く淡いため息をついた。
そして少しくしゃくしゃになってしまって、渡せないまんまのストラップはポケットの中で冬眠している。

「……ジョウ。」
トミーは眉をひそめてジョウの顔を覗き込んだ。
「ん?」

「気持ち悪いぞ。詩人にでもなりたいのか。」

「……。それもいいね」

⏰:06/09/12 05:09 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#487 [ザセツポンジュ]
ジョウは特に言い返す力もなく、カバンを背負った。

「トミー。おうちへ帰ろうか。ボクは早く帰りたいよ。」

「お前変だぞ。変態だ。早く帰りたいのにも関わらず、1時間も夕日を眺めたお前は異常だ。ワガママだな。俺は待ってたんだぞ。」
「ごめんごめん。」

⏰:06/09/12 05:13 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#488 [ザセツポンジュ]
トミーは前を歩いた。
日が暮れて、薄暗い道を二人は1列になって歩いていた。

「なぁ。」

「うん。」

最初に口を開いたのはトミーだった。

「具合悪いのか?ジョウジロウちゃん」

体操服を蹴りながら、ぶっきらぼうに前を歩くトミー。

ジョウは少し小走りしてトミーの横に並んだ。
「健康だよボクは。」
「そっか。ならいいんだよ。」

⏰:06/09/12 05:22 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#489 [ザセツポンジュ]
トミーはもう何にも言わず、体操服を蹴りながら、ぎこちない鼻歌を歌って歩いた。

ジョウは複雑な気持ちを重たいカバンの中に詰め込んで歩いた。

「ジョウ。また明日な。」

「うん。バイバイ、トミー。」

⏰:06/09/12 05:28 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#490 [ザセツポンジュ]
コトッッ━━。
コトッッ━━。
コトッッ━━。

翌朝、ジョウはいつもより早く目が覚めた。
(じぃちゃん、こんな朝からどこ行くんだろう…。ぅぅ…寒い…。)

ジョウは布団にくるまった。

今日はいつもより冷えているらしい。

ジョウの部屋のテレビがそう言っている。

⏰:06/09/12 05:35 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#491 [ザセツポンジュ]
ジョウはバサっと起き上がり支度を始めた。
こんな早くから支度をしたって、トミーが迎えに来るにはまだまだ時間がある。

ジョウは顔を洗い、制服を来てマフラーを巻き、重たいカバンを背負い、支度をすまして家を出た。

(トミー。今日は先に行くよ。)

ジョウは、隣のトミーの家を少し見つめて歩き出した。

白い息。
冷たい風。
赤い鼻先。

ジョウだけが知っている気持ち。

今日は一段と冷えているからだろうか。

歯をくいしばって

涙が込み上がってこないように

ジョウは歩いた。

⏰:06/09/12 05:47 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#492 [ザセツポンジュ]
「あんた。おばちゃんに会いたいからってこんな早い時間に来て、一体何をしでかすつもりなのよ。スケベね。」

用務員のおばちゃんが教師用の玄関を掃き掃除しながら、一番のりしたジョウをお出迎えしてくれた。

「おはようおばちゃん。朝から言ってくれるじゃない。疲れるよボク。」

ジョウはおばちゃんに愛想笑いをして
生徒用の玄関の扉を引いた。


「ん!?」

⏰:06/09/12 05:59 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#493 [ザセツポンジュ]
くしゃくしゃに丸まった紙くずが
3年のクツバコから
何個も転がっている。
ジョウはしゃがんで
至近距離で紙くずを見つめた。

(……あれ?これクーポン雑誌?)

トミーが毎月エリアカフェで見ているクーポン雑誌が散らばっている…。

首をかしげながらジョウはくしゃくしゃに丸まった紙を広げた。


「え……。」



そしてまだ転がっている丸まったクーポンをひとつひとつ広げていった。

(…なんだ。…なんでだ……。)

⏰:06/09/12 06:10 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#494 [ザセツポンジュ]
その紙くず達をたどって行く━。

顔をあげたジョウは
愕然とし、地べたに座りこんだ。


━━━榎下━━

くしゃくしゃにまるまった紙くずが
ぎゅうぎゅうに押し込まれて、こぼれ落ちてしまうほどのこのクツバコは

紛れもなくエノシタさんのクツバコだった。

⏰:06/09/12 06:14 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#495 [ザセツポンジュ]
カサッッ━━。

涙のようにひとつぶ
、エノシタさんのクツバコからこぼれ落ちた
紙くずを

ジョウは、拾って

ゆっくりと恐る恐る広げた。

《調子乗んな!ブサイク、死ね!》

エノシタさんが美容院のカットモデルをして、ニッコリ笑った顔と一緒にクーポン券になってから2ヶ月たっている。

今月のクーポン雑誌も、変わらずエノシタさんの笑顔と一緒にクーポン券は発行されているのだ。

鋭い言葉を殴り書きされ、顔には落書き━。

⏰:06/09/12 06:38 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#496 [ザセツポンジュ]
ジョウは
心臓にコンパスをぶっ刺したかのような痛みを
押さえて

クーポン券の紙くずを全部ゴミ箱に入れて

焼却炉へと走った。

⏰:06/09/12 06:41 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#497 [なちゅき]
この小説マジ好きですだから上げ
マイペースでぃぃんでがんばってくださぃね

⏰:06/09/14 18:59 📱:N701i 🆔:eymO6fNw


#498 [きーさん]
なちゅきちゃん☆
ありがとぉ
(o`∀´o)
ワシゎ嬉しいよ!

⏰:06/09/14 22:45 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#499 [ザセツポンジュ]
ジョウが胸を痛めていた早朝、きーさんとすーさんは#7791カフェにいた。


「小夜子ストロベリーをふたつ。」

きーさんは、注文したあと、すーさんがみーちゃん話しかける暇もなく大量の資料をバシっと机の上に置いた。

⏰:06/09/14 22:49 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#500 [ザセツポンジュ]
「…うん。きーさん。文字のおけいこにドリルに学級新聞とはなかなか画期的な事業に取り組むみたいだがワシは遠慮するぞ。」

すーさんはしかめっ面できーさんを睨んだ。

「ワシは62だぞ。そんな宿題やってられるかこのクソジジイ。イカレポンチ。きもエロス。」

きーさんはいつになく真剣だった。

⏰:06/09/14 22:56 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#501 [ザセツポンジュ]
「きーさん。今回は何をするつもりだ。」

すーさんはため息をつきいやいや質問した。

きーさんは資料の一番上のプリントを取り、すーさんの目の前に差し出した。

「今回ワシらが取り組むのは…」

すーさんはハテナをいっぱい並べプリントを眺めた。

「THE、摂食障害?」
すーさんはそのタイトルを読み終えると席を立った。

⏰:06/09/14 23:00 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#502 [ザセツポンジュ]
「おい!すーさん!どこへ行く!」

きーさんはケンカして家を出ていく彼女を止めるかのようにすーさんの手をつかんだ。

「やってられないわよ!こんな事!横文字から始まり漢字が4つも並んであたいにできるわけないじゃないの!」

「朝からみっともないコントはやめてくれ。疲れるぞ。」

きーさんはすーさんの手を引き、七夕の席へ再び座らせた。

⏰:06/09/14 23:05 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#503 [ザセツポンジュ]
「お待たせしました。小夜子ストロベリーと、梅昆布茶…は、こちらのサービスです。」
状況を見ていたみーちゃんはいつになくかたい表情の真剣なきーさんに察して、すーさんの機嫌をとるために気を使ってくれた。

「みーちゃん!あぁ、みーちゃん!…みーちゃんがあと30歳、年をとっていたらワシは間違いなくプロポーズしていたよ…」

すーさんは目に涙を浮かべた。
自分がどれだけえらいのか分かねるが条件をはきちがえているのを今回は目をつぶってあげようではないか。

きーさんは真剣なのだ。

⏰:06/09/14 23:11 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#504 [ザセツポンジュ]
「お前きららちゃん分かるだろ?」

あんだけ溺愛している空ちゃんの店にいるきららちゃんを覚えないわけがない。
「あー。きららちゃんね。ちょっとポッチャリのね。」

すーさんは得意気だ。女の子の事ならこの鈴木ヒトシ(62)にまかしておけ。

きーさんはきららちゃんを思い浮かべ首をかしげた。
「きららちゃんポッチャリか?ワシはあれくらいが健康的でいいと思うけどもな。」

⏰:06/09/14 23:16 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#505 [ザセツポンジュ]
「きーさん。最近の子は痩せてないと気が済まないんじゃよ。」

きーさんはすーさんが最近の女の子に詳しい事にホッとした。
そうだ、すーさんは女の子の授業なら得意中の得意だ。

⏰:06/09/14 23:19 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#506 [ザセツポンジュ]
「じゃあ摂食障害も難しい話ではないよ、すーさん。」

きーさんは資料を手に取った。

「みーちゃん、みーちゃん。フーフーして、これ、フーフー。ウヒヒヒヒ。」

そのまま資料を丸めて思いきりすーさんを何度も殴った。

「すまん!すまんこすまん!悪かった、悪かった!」

きーさんはせきばらいをして説明を開始した。

⏰:06/09/14 23:24 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#507 [ザセツポンジュ]
「先月すーさんと空ちゃんとこに飲みに行ったが、お前は気持ち悪く酔っ払っていたな。」

「あぁ、そうだな…ズズ…ん〜やっぱ梅昆布茶だな時代は。……おい、気持ち悪いって何だ!」

「それでだ、すーさん。そのきららちゃんの手の甲に吐きダコがあるのを発見したのだ。」

「タコねぇ。」

すーさんは手の甲にタコが並んで宝塚ばりのダンスをする光景を想像していた。

⏰:06/09/14 23:29 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#508 [ザセツポンジュ]
「…いいか。摂食障害とは食って吐いたり、何にも食べなかったり、食べたものを飲み込まずに噛んだだけで口から出したり、まぁその他いろいろあるが得に女子に多いらしい。意味分かるか?」

「わかっとるわ!要するに、きららちゃんは一回食って吐くんだろ。そんで手にタコができたんだろう?その話題ワイドショーで見たんじゃよ。きーさん、助ける気か?無謀だぞ。同棲しているわけでもないのに見張ってられるか!バカタレ!」
すーさんは以外にも、ごもっともな意見をきーさんにプレゼントした。

⏰:06/09/14 23:35 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#509 [ザセツポンジュ]
「…ん〜……ん?すーさん、エノシタさんじゃ!」

きーさんはふと目を窓の外に向けてエノシタさんの姿をたまたま発見した。

すーさんも前のめりになってエノシタさんを見た。
「なんか悲しそうに歩いてるなぁ…。あぁ、もとからか。」

「……いや、なんかあったはずだよ。」

エノシタさんが通り過ぎた後、きーさんは本題に戻した。

⏰:06/09/14 23:40 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#510 [ザセツポンジュ]
「無謀だが…。すーさん。ワシはやってみたいのだよ。コミカルに。」

すーさんは、きーさんもまだ口につけていない小夜子ストロベリーをパクパク口に入れた。

「きーさん。ミュージカルでもないのにコミカルに進むわけないだろうよ。だいたい、お前が思いつくネタは、昔からくだらん事だったろう。ティッシュを丸めてくしゃみ選手権とか見知らぬ人にカンチョーして怒らせよう大作戦とか、チョークで勝手に道路に事故現場をかいてみたりだとか……最近意味のある事をしすぎだ。」

⏰:06/09/14 23:49 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#511 [ザセツポンジュ]
すーさんは小夜子ストロベリーを完食して
汚く甘いゲップをきーさんにお見舞いした。

「やりたくないならいいけどな。まぁきららちゃんと接触する手と言えば、空ちゃんも誘ってダブル同伴と言う手も…」

「やる!乗ったその話!やろうじゃないか!頑張ろうきーさん!」

きーさんはこの言葉を聞いてやっと小夜子を口に運ぶ事ができた。

「甘い。ワシはこんなにも甘い恋心を何度抱いた事があるのだろうか。」

きーさんとすーさんの作戦は徐々に進んで行く。

⏰:06/09/14 23:53 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#512 [ザセツポンジュ]
きーさんとすーさんが作戦会議中、ジョウは教室に向かわず生徒会室に一人たたずんでいた。

(ボクは何にもできないまんまなのだろうか…いくじなしだな。)
焼却炉から戻ったジョウはクツバコに戻って3年生のクツバコ全部見回した。

こんな早い時間に学校に来るヤツなんていない。

なのに、
―榎下
―石崎
―山田

この3人のクツだけウワバキと交換されていた。


それを見たジョウは

たまらなくなり階段を登り生徒会室の扉を開けたのだった。

⏰:06/09/15 00:01 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#513 [ザセツポンジュ]
そして、コの字に並べられた机のジョウがいつも座る席に静かに座って頬づえをついた。

(エノシタさんが載ったクーポンが発行されたのは2ヶ月前。いつからあんな事されていたんだろう…)


ジョウの記憶につめこまれたエノシタさんがゆっくりゆっくりかけめぐる。

⏰:06/09/15 00:06 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#514 [ザセツポンジュ]
―ボクはいつもここに座っていて

エノシタさんを眺めている。

エノシタさんは、みんなに同じように話しかける。

優しいエノシタさん。
そんなエノシタさんは、トミーをよく見てる。

ボクがエノシタさんを眺めているのと、同じ感じでトミーを見ているんだきっと。

ボクには分かってしまった。

エノシタさんは、最近いきなり大変身して可愛くなった。

でも、自惚れているわけでもなく、いつもと変わらないエノシタさんだった。

そんなエノシタさんがボクは好きなんだ。

そして何にもできないボクなんだ。

こんなちっちゃいストラップですらまだポケットの中で眠ったまんま…。

ウジウジしているボクはきっと今、世界で一番いくじなしなんだ。

⏰:06/09/15 00:15 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#515 [ザセツポンジュ]
ジョウは、頭を机に落として窓の外を見た。
(寒いなぁ、今日は。)
生徒会室で吐く息も白く冷たかった。

まだエノシタさんを好きになる前に、エリアカフェで見かけたエノシタさんのプリクラ―。

それは
《榎下コンビ》
と書かれていて

たいして仲良くもないのに、かわいいエノモトさんの横で、ちっちゃく申し訳なさそうにピースをしていたエノシタさん。

二人は皮肉にも
《榎下》
という読み方の違う二つの漢字に縛られる運命にあった。

⏰:06/09/15 00:21 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#516 [ザセツポンジュ]
――ガラガラ

ジョウはびっくりして顔を上げた。

「…おはようジョウくん。……どうしたの?」

悲しそうな顔を無理矢理くしゃくしゃにして笑う女の子。

ジョウはベタに目をこすった。

「…おはよう。エノシタさんこそどうしたの?」

エノシタさんはいつも座る席に座った。

「…忘れものしちゃって。」

机の中をウソっぽく探すエノシタさん。

ジョウはエノシタさんに近付いた。

⏰:06/09/15 00:26 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#517 [ザセツポンジュ]
そしてエノシタさんの隣に座った。



エノシタさんは手を止めた。



「あのねエノシタさんは榎下さんじゃなくてもエノシタさんなんだよ。」

「……ジョウくん。朝だからかもしれないけど全く意味が分からないわ。」

サムく寒い空気だけが二人を包んだ。

⏰:06/09/15 00:29 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#518 [ザセツポンジュ]
「……エノシタさんが卒業するくらいには意味が分かるよきっと。…ハハ。」

ジョウは苦笑いを浮かべた。
そしてこう続けた。

「エノシタさんは、悲しい時は泣くの?」

「…泣かないかな。我慢しちゃうかも。」

(きーさん。きーさんが昔言っていた言葉を借りるよ。)

「…あのね、泣かないのが強いんじゃないんだよ。泣けない弱さがきっとエノシタさんの中で酒でも飲んだくれて暴れているんだ。」

⏰:06/09/15 00:38 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#519 [ザセツポンジュ]
「ボクは、そんなことで泣いちゃいけないよなんて言わないよ。我慢して悲しい顔を無理矢理笑った顔に変えるくらいなら汚い顔で子供みたいに泣いてくれた方がいい。」

ジョウは、ポケットに手を突っ込んでストラップを握りしめた。

「ジョウくん優しいね。何を知ってるの?」
エノシタさんは泣かない。

「ボクさ、こないだ福岡に旅行に行ったんだけど、お土産!」

ジョウは眠っていたストラップを叩き起こした。

「わぁ!かわいい!ありがとうジョウくん」
満面の笑みでエノシタさんは笑ってくれた。

⏰:06/09/15 00:43 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#520 [ザセツポンジュ]
キーンコーンカーンコーン


「ジョウジロウちゃんめ!ちゃんと来てんじゃんかよ!」

トミーは一人ジョウのクツバコに突っ込んだ。

⏰:06/09/15 00:45 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#521 [ザセツポンジュ]
チャイムが鳴り、ジョウもエノシタさんも教室へ戻った。


「ジョ―ウジロ―ウ!!」

ジョウを見つけ廊下を走るトミー。
そのまんま飛び蹴りをかました。

「イタタタ…」

そして胸ぐらをつかんだ。

「お前何で一言もなしに先に行くんだよ!」
「…早く目が覚めたんだよ、ごめんトミー。」

ジョウは背中を押さえて申し訳なさそうにトミーに謝った。

「何にも言わずに俺を置いて行かないでくれよ。心配するだろ」

⏰:06/09/15 00:53 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#522 [ザセツポンジュ]
そしてトミーは教室へ入って行った。

ナニモイワズニ
オレヲオイテイカナイデ…

ジョウは我れに返り
トミーを追い掛けた。

「トミー!今日エリアカフェの梅昆布茶一緒に飲もうよ!」

「ん?あぁ。」

トミーはニッコリ笑った。

⏰:06/09/15 00:56 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#523 [ザセツポンジュ]
(ρ_―)o

……(-_-)zzz。

⏰:06/09/15 01:05 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#524 [なちゅき]
さっそく更新ぅれしすぎっ(>v<)
主サマ大好きです

⏰:06/09/15 06:17 📱:N701i 🆔:/ejAqkes


#525 [ザセツポンジュ]
ブハッ(◎o◎)←鼻血
なちゅきちゃん嬉しすぎ!!!!!

⏰:06/09/15 11:29 📱:W41S 🆔:UyYQsWkM


#526 [なちゅき]
鼻血て!ワラ
主さん男の人ですか??
って小説と関係なぃこと聞いてごめんなさぃm(__)m
でもほんとに小説もこんな小説がかける主さんも大好きです☆☆☆

⏰:06/09/15 18:08 📱:N701i 🆔:/ejAqkes


#527 [我輩は匿名である]
いつも楽しく読ませていただいてます。
更新待ってるのでがんばってください。

⏰:06/09/18 21:07 📱:P902iS 🆔:VMM1CblQ


#528 [なちゅき]
ぁげとくっ

<<1-200
<<201-400
<<401-600
<<601-800
<<801-1000
<<601-700

できたかなっ

⏰:06/09/20 18:06 📱:N701i 🆔:o.ro.mLc


#529 [あんちあ]
更新待ってます

⏰:06/09/22 04:22 📱:D902iS 🆔:z5uYLHjI


#530 [主]
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650
>>651-700
>>701-750
>>751-800
>>801-850
>>851-900
>>901-950
>>951-1000

⏰:06/09/24 20:31 📱:F902iS 🆔:UnadDWuk


#531 [我輩は匿名である]
↑ハンネみすりました主じゃないです
ごめんなさい
面白いので、毎日更新楽しみにしています
頑張ってください

⏰:06/09/24 20:33 📱:F902iS 🆔:UnadDWuk


#532 [ザセツポンジュ]
うぅ…
ううぅ……
嬉し過ぎるコメントみなさまありがとうございました
(;□;)!!

わたくし自身
今世紀最大にびっくりしている限りです。

これからボチボチですが更新していきますのでなにとぞどうかチラ見してやってください。

んぢゃ更新します★

⏰:06/09/24 22:44 📱:W41S 🆔:kzwoA6xY


#533 [ザセツポンジュ]
「ちーちゃん。明日から俺と付き合ってよ。」
トミーはかわいいチワワのような目でちーちゃんに交際を申し込んだ。

「ご注文は。」
そして19歳のちーちゃんは満面の笑みで
シカトをかましてくれた。

「ちーちゃんとの男女交際。」

この男、めげない負けないくじけない。
行け行けトミオなのである。
「ボク今日は梅昆布茶。あ、二つね。」
ジョウは、エノシタさんと今朝3分ほど話せた興奮がまだ胸にごげついている。

「了解生コン。」

⏰:06/09/24 22:50 📱:W41S 🆔:kzwoA6xY


#534 [ザセツポンジュ]
トミーとジョウは
顔を見合わせた。

「え?きーさんやっぱり流行語大賞とったの?」
「あるわけないだろう。お前バカか。」

「アベシ!!」

ジョウは自分で自分の顔を殴った。

きーさんのたわ言、了解生コンが流行するわけないのだ。

⏰:06/09/24 22:53 📱:W41S 🆔:kzwoA6xY


#535 [ザセツポンジュ]
「ちーちゃん。その了解生コンどこで耳にしたの?」

自分で殴った頬をさすりながらジョウは聞いた。

「ん?うちのおねぇちゃんが家でよく言うの。」

「えぇ!ちーちゃんねぇちゃんがいるのか?かわいいのか!どこで何してるんだ?」

トミーは前のめりになって問いただした。

「トミー。刑事ドラマみたいだよ。落ち着かないか。」

ジョウはトミーのただならぬ興奮を止めてあげた。

「朝、ここで働いてるの。昼の2時からあたしと交代。」

⏰:06/09/24 23:01 📱:W41S 🆔:kzwoA6xY


#536 [ザセツポンジュ]
ちーちゃんはそう言って梅昆布茶を二つ置き
カウンターへ戻った。

「ねぇトミー。前からうちのじぃちゃん朝の7時前にトコトコどっか行ってるんだよ。」

「トコトコ行ってるのか。」

「…うん。でさ、それ週に3回くらいあるんだけど」

「トコトコ出かけるのがか?」

「……そうだよ。トコトコ出かけてるんだよ。朝。」

「アハハハ、トコトコ62にもなったジジイが、どこ行くんだよ、トコトコと!」
トミーはどうやらツボに入っていたらしい。腹を抱えてしばし笑っていた。

「……なんだよ。」

「いやトコトコって言ったお前がかわいかったんだよ。ってゆうかウチのじぃちゃんも朝どっか行ってるよ。」

⏰:06/09/24 23:13 📱:W41S 🆔:kzwoA6xY


#537 [ザセツポンジュ]
ジョウは、ちょっとぬるくなった梅昆布茶をすすった。
「どこ行ってるんだろうね。じぃちゃんと、きーさん。」

「トコトコとどこでかけてるんだろうね。じぃちゃんとすーさん。」

トミーも一口、大好きな梅昆布茶を飲んだ。

変なじぃさんをもった二人の少年は
わざとらしく
上を向いて考えた。

そして顔を見合わせて

笑った。

⏰:06/09/26 04:39 📱:W41S 🆔:dPV7sVoQ


#538 [RiN]
LIつも楽しく見てます
この小説大ファンですう続き楽しみに待ってます〜(*∪3u)+゚

⏰:06/09/28 06:01 📱:N701i 🆔:ODyASExs


#539 [゚∀゚]
失礼
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:06/09/28 15:17 📱:D902i 🆔:8dxhcM6Q


#540 [ザセツポンジュ]


「何やってんだ、すーさん。」

トミーは、部屋でくつろぐ隣の家の老人に
素朴な質問をした。

「トミオちゃん、香水かしてくれ。今ランキング1位のはどれだ。」

優しいトミーはしぶしぶ、去年のランキング1位の香水を手に取り、すーさんの手を持った。

「お前、ホモか!!気軽に手なんか触るんじゃないよ!変態!さっさと貸せ!!」

すーさんは
トミーから去年のランキング1位の香水を
取り上げ体中にしつこくふりまくった。

⏰:06/09/29 08:07 📱:W41S 🆔:hfmCCq3I


#541 [ザセツポンジュ]
「あ〜もぉ〜やると思ったよ!そんなにふりまいたら臭いだろ!」
自分が毎朝、しつこいほどに体中にふりまいている行動は棚にあげて、トミーは鼻をつまんで、手ではらった。

「お?ワシもこれで19くらいになったろう。」

くんくんと全身の匂いをかぎまくり
すーさんは何やら満足そうだ。

⏰:06/09/29 08:11 📱:W41S 🆔:hfmCCq3I


#542 [ザセツポンジュ]
「勘違いもはなはだしいぞ。すーさんそんな香水ふりまいて、どこへ行くつもりなんだい?それとうちのじーちゃんをどこへ隠したの??」

外はものすごく寒いが
この隣のじぃさんの
不釣り合いな香水の匂いと
そして同じ部屋にいる空気を吸わなければいけないくらいならと

歯を食いしばって

窓を開けたトミオちゃん。

⏰:06/09/29 08:15 📱:W41S 🆔:hfmCCq3I


#543 [ザセツポンジュ]
「今日は、空ちゃんとデートなの〜」

トミーは、この、目をパチクリさせている62にもなった
隣のじぃさんに
吐き気をもよおした。
「すーさん…ぉぇ………すーさん。まず、会ってすぐ嫌われるんじゃないのか。」

「な〜ぜだ。お前、あまりバカ気たことを言うんじゃないぞ。死なされるぞ。」

――ガチャ。

「あ〜いい湯だったよ、待たせたねすーさ………ぅぅうっぷ……おぇ……」

ゴツン。

今世紀最大の
思いを込めてきーさんはすーさんに
おもいくそ ゲンコツをくらわした。

⏰:06/09/29 08:22 📱:W41S 🆔:hfmCCq3I


#544 [ザセツポンジュ]
「おい!!お前、なんだその匂いは!!ドリアンか!!!ドリアンか!!!!」

すーさんは、泡をふいて倒れた。

きーさんのゲンコツは
痛いのだ。

⏰:06/09/29 08:25 📱:W41S 🆔:hfmCCq3I


#545 [ザセツポンジュ]
「じぃちゃん、運ぼうよすーさん。」

「そうだな。トミオ。お前は足を持て。」

トミーときーさんの共同作業ですーさんを

ベランダへ放置した。

「今日は寒いな、トミオ。きっちり鍵も閉めとけ。……お〜っと忘れものをしいた。」
きーさんはティッシュを2枚ほど手に取り
再びベランダへ出た。

そして、顔に一枚と
寒さしのぎのために
体に一枚
ティッシュをかぶせた。

⏰:06/09/29 08:30 📱:W41S 🆔:hfmCCq3I


#546 [ザセツポンジュ]
すーさんは
立派に
死人のようになったところを
ニンマリ笑ってきーさんは眺めている
実に満足そうだ。

⏰:06/09/29 08:32 📱:W41S 🆔:hfmCCq3I


#547 [ザセツポンジュ]
「で、じぃちゃんどこ行くの。」
トミーは暖房をつけてコタツにくるまった。
「あ〜。キャバクラだよ。またこれがすーさんが好きでねぇ。どぉにもならんな。」

きーさんは髪の毛を
タオルでわしゃわしゃ拭きながら、口笛を吹いていた。きーさんも心の中ではきららちゃんとご飯を食べに行くのが楽しみなのだ。

「こんなはやい時間から?同伴でもするのか?」

「トミオ。お前14歳のわりには世の中の仕組みを把握しているんだなぁ。正解だ。刺身を食いに行ってくる。」
「え!!あの臭さで女と飯を食うのか!?じぃちゃん、友達だろ、あんなので大丈夫か!?」

⏰:06/09/29 08:41 📱:W41S 🆔:hfmCCq3I


#548 [我輩は匿名である]
>>501-600

⏰:06/09/29 10:54 📱:P902iS 🆔:K9VImiro


#549 [なちゅき]
ぉひさです☆
毎日更新されてるかチェックしてます(o^o^o)
主さんファイトっ
(/≧∀)/

⏰:06/10/04 06:27 📱:N701i 🆔:TB85Eqeo


#550 [ザセツポンジュ]
なちゅきちゃん
ありがとう(^-^)
めっちゃ嬉しいです!

⏰:06/10/05 14:52 📱:W41S 🆔:r9QP06m6


#551 [ザセツポンジュ]
きーさんは
少し、ベランダをすかして
匂いをかいだ。

「……うむ。」


厳重にカギをかけ、
再びカーテンをしめた。

⏰:06/10/05 14:53 📱:W41S 🆔:r9QP06m6


#552 [ザセツポンジュ]
「やっぱりな、飯を食うとなれば、花くさい匂いをプンプンプンプン漂わせていてはダメだよなぁ。」

「じぃちゃん…すーさん着替えさせた方がいいよ。」
トミーはカーテンを1ミリ程度ずらし、このくそ寒い中、ベランダで泡をふいて倒れたすーさんを心配した。

「いや、いいんだよ。このまま放っておけ。ワシの準備が済む頃には匂いも消えているだろう。」


こうして、きーさんの身支度は
着々と進むのであった。

⏰:06/10/05 14:58 📱:W41S 🆔:r9QP06m6


#553 [ザセツポンジュ]
「う〜…きききききき〜さ……ワワワワワ…ワシを…」

ゴツン。

「やかましいわ。身体中の氷が溶けてからしゃべりなさい。」

きーさんとすーさんは
タクシーに乗って
空ちゃんときららちゃんの待つ場所へと向かった。

⏰:06/10/05 15:00 📱:W41S 🆔:r9QP06m6


#554 [ザセツポンジュ]
すーさんの
花臭いドリアン級の香水の匂いは
きーさんの長い身支度の間に
なにぶんやわらいではいたが
きーさんは
鼻にパチンコの玉を
詰めて
すーさんと同じ空気を
吸わないように
つとめた。

⏰:06/10/05 15:03 📱:W41S 🆔:r9QP06m6


#555 [ザセツポンジュ]
すーさんは
鼻水すら凍ってしまった中、ガタガタ震えたままタクシーに
乗り込んだのであった。

空ちゃんの笑顔を
思い出し
心の暖房を
フル活動させて
凍った身体を溶かそうと頑張ってはいるが

なかなか都合のいいようにはいかなかった。

⏰:06/10/05 15:05 📱:W41S 🆔:r9QP06m6


#556 [ザセツポンジュ]
「着いたぞ、降りろ。」

すーさんは
空ちゃんとのいかがわしいイメトレもむなしく

凍ったまんま待ち合わせ場所に
到着してしまった。


「す〜さぁん。……どうしたの!?」


空ちゃんが心配そうに
すーさんを見つめる……

⏰:06/10/05 15:07 📱:W41S 🆔:r9QP06m6


#557 [ザセツポンジュ]
ピキ━━━━━ン!!
パリパリパリ…



「空ちゃあ〜ん!いやぁ今日も可愛いね〜」
鈴木ひとし62歳。
空ちゃんの目から出てきたビームが
自分の瞳に貫通した事により

復活。

すーさんは復活祝いにきーさんに飛びかかった。

⏰:06/10/05 15:10 📱:W41S 🆔:r9QP06m6


#558 [ザセツポンジュ]
「おい!!木田しげる!!お前、つい先ほどまで殺人未遂をしていたのを分かって刺身を食うんだろうな!!えぇ!?」


すーさんはきーさんの胸ぐらをつかみ
つばを飛ばしながら熱弁を続けた。

⏰:06/10/05 15:16 📱:W41S 🆔:r9QP06m6


#559 [ザセツポンジュ]
きららちゃんは
困ったような顔で

すーさんを止めようとあわあわしていたが

空ちゃんは
腹をかかえてあわてていた。


どちらが正しい態度なのかはのかは……決めがたい。

⏰:06/10/05 15:21 📱:W41S 🆔:r9QP06m6


#560 [ザセツポンジュ]
「プェッッウェ…汚いなぁも〜。お前がドリアンのままで刺身を食ったら空ちゃんなんてすぐ死ぬぞ。そうだな。タクシーをおりた時点で死ぬだろう。お前空ちゃんに刺身も食わせんまんま死なせるつもりか?ヒッドイ男だなぁ。おい!空ちゃん。コイツはなぁ、空ちゃ……」


「あわゎゎゎわわ!!んちゅ〜」


すーさんは口封じのために
いきおい余って
きーさんにキスをしてしまった。

ゴツン!


ゴツン
ゴツン!!

⏰:06/10/05 15:24 📱:W41S 🆔:r9QP06m6


#561 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800
>>801-900
>>901-1000

⏰:06/10/05 21:33 📱:F902i 🆔:eg64K8I.


#562 [ザセツポンジュ]
「くぅ…。」



きーさんゎ泡をふくすーさんを抱きかかえて
空ちゃんときららちゃんを連れて


向かう先
懐石料理屋
《廣六》ひろむ

⏰:06/10/08 16:22 📱:W41S 🆔:dNVPaOkI


#563 [なちゅき]
続きめっちゃ気になりますっ(>_<)
主さんがんばっ
ヾ(ο´▽`ο)ノ

⏰:06/10/11 21:10 📱:N701i 🆔:xupfkEqk


#564 [まみぃ]
主サン
いつもコッソリ見てましたオモシロすぎですッ
待ってるんで、頑張って書いて下さぃねン

⏰:06/10/14 21:07 📱:P902iS 🆔:mWvxHQG.


#565 [我輩は匿名である]
がんばれ

⏰:06/10/20 05:21 📱:F901iS 🆔:mRWsBhI6


#566 [なちゅき]
ブックマークにぃれて毎日チェックしてますょ
頑張って(≧∀≦

⏰:06/10/23 18:15 📱:N701i 🆔:kpMJW.hE


#567 [りな]
書かないの〜??

⏰:06/11/15 22:25 📱:D902i 🆔:7dph4yec


#568 [我輩は匿名である]
>>1-600

⏰:06/11/29 21:40 📱:F902i 🆔:qgs51AKE


#569 [我輩は匿名である]
主って福島出身

⏰:06/11/29 23:48 📱:F902i 🆔:qgs51AKE


#570 [我輩は匿名である]
コノ小説大好きなんだけど…主サンもぉ書かないのかな?

⏰:06/12/28 18:34 📱:D901iS 🆔:dteWK0RA


#571 [すのーまん]
あげとこ

⏰:06/12/29 02:00 📱:F902iS 🆔:XKeNsSsU


#572 [我輩は匿名である]
書いて

⏰:07/02/09 01:22 📱:F901iS 🆔:TRr3q7bw


#573 [我輩は匿名である]
もう終わりですか?

⏰:07/03/18 22:22 📱:auCA37 🆔:UFktLyvg


#574 [みみ]
この作品大好きだったから最後まで書いてほしかったよね

⏰:07/03/19 07:36 📱:P700i 🆔:7TMyie7c


#575 [我輩は匿名である]
面白いからあげ

⏰:07/03/26 14:57 📱:PC 🆔:YshYjuXc


#576 [ザセツポンジュ]
携帯変えました。ザセツポンジュです。
いざ復活します…
デュハ!

⏰:07/03/26 22:06 📱:V703N 🆔:PU39XUfg


#577 [ザセツポンジュ]
『やぁ、六さんひさかたぶりだな。こっそりできる席に案内してくれ』

口から流れ出てやまない泡をふくこともせず
すーさんは六さんに挨拶をした。
六さんは、すーさん達のヒーローである。

お墓のお供えものの盗みかた、“遊ぶな危険”の旗がヒラヒラと忠告をする、スリル満点の河で遊ぶ方法…
全て六さんの影響なのだ。
六さんは変わった人で、その河にひそかに住んでいた魚達をこよなく愛し、
懐石料理を営むほどになった。
食の全てを極めた男なのだ。

⏰:07/03/26 22:15 📱:V703N 🆔:PU39XUfg


#578 [ザセツポンジュ]
『床を汚さないでくれ、すーさん。どうしたんだ、その泡は。風呂上がりか?』

そんな心配をしながら

六さんは、きーさん達と美女二人、援助交際にしても不釣り合い過ぎる
以外なメンバーを席へ案内したのだ。

⏰:07/03/26 22:18 📱:V703N 🆔:PU39XUfg


#579 [ザセツポンジュ]
きーさんは席へつくなりメニューを開いた。
『何か決まっているのかい?きーさん。』
六さんは、やさしくきーさんに尋ねた。

『んー。ピザが食べたい。』


『…出てってくれないか。』

六さんの顔はとても優しい。

『まぁ、まずは、魚だな。』

『むしろ魚しかいないがな、うちは。』

そう言って優しい顔でメニューを取り上げた六さんは、
厨房へと消えた。

⏰:07/03/26 22:25 📱:V703N 🆔:PU39XUfg


#580 [みみ]
やっと更新されたぁまぢうれしい頑張って書いてね_ちょくちょく覗きにきます

⏰:07/03/27 00:19 📱:P700i 🆔:r8uKsQZU


#581 [あお]
久々に更新されてて嬉しいです頑張ってください

⏰:07/03/27 11:54 📱:P902iS 🆔:wS9JTGDU


#582 [ザセツポンジュ]
『うわ〜こんなとこ来たことなぁい!!嬉しい〜!!』

そらちゃんは、ホントに飢えた子供のような演技をかまし、喜んだ。

『ね〜そらちゃん、ね〜いっぱい食べてもいいからね〜。かわいいね〜そらちゃん。』

そんな演技に騙され続けるすーさんは、まだ泡をふいている。
実に不潔だ。

それを見たきーさんは、そらちゃんをかわいそうとも思わず
きららちゃんを連れて
別席へ移動した。

⏰:07/03/27 12:23 📱:V703N 🆔:ZwiEpRVM


#583 [ザセツポンジュ]
『さぁ、きららちゃん。六さんが出す料理はうまいからな。たくさん食べなさい。』

きーさんは、きららちゃんの手の甲に出きた吐きダコをチラリと見た。

『私ホントにこんなちゃんとした懐石料理屋に来た事ないの。すごいんだねきーさん達は。』

きららちゃんは、以外と高そうなつくりの店内を見渡した。

⏰:07/03/28 17:34 📱:V703N 🆔:iX8OBsJU


#584 [ザセツポンジュ]
『まぁ、ただ、とてつもなく暇そうだがな。』

きーさんは小さく呟き、そしてきららちゃんはクスリと笑い

料理ができるまでの時間、しゃべり続けた。

⏰:07/03/28 17:37 📱:V703N 🆔:iX8OBsJU


#585 [ザセツポンジュ]
『ところできららちゃんは、兄弟はいるのかい?』

『妹がいます。』

『ほ〜。年はいくつだね?』

『今、14かな。』

『仲はいいのかい?』

『うん、今は私は一人暮らしで、離れてるけど妹は大好き。すごく可愛いし。』

⏰:07/03/28 17:39 📱:V703N 🆔:iX8OBsJU


#586 [ザセツポンジュ]
妹の話をするきららちゃんの目は少し悲しそうだった。

でもきららちゃんはかわいく笑って話した。

きーさんの尋問は続く。
『妹さんは、きららちゃんと似ているのかい?かわいいだろうね、妹も。』

きららちゃんは困ったように笑う。

『私は、化粧して化粧してこれだもの。妹は生まれた時から目もパッチリして可愛いいのよ。まわりからは、似てない姉妹ねと言われたわ。』

⏰:07/03/28 17:44 📱:V703N 🆔:iX8OBsJU


#587 [ザセツポンジュ]
(さては…きららちゃんのコンプレックスは家族とまわりの評価かな。)


きーさんは、62歳にしては脳細胞を使い、慎重に推理をしていると
新鮮な魚料理を持って六さんが現われた。

⏰:07/03/28 17:47 📱:V703N 🆔:iX8OBsJU


#588 [観客A]
書いてくれ…

⏰:07/04/18 16:42 📱:F902i 🆔:3iAMEUrU


#589 [のん]
まぢファンですっ
続き書いて〜

⏰:07/06/03 07:21 📱:SH902iS 🆔:sOo1Gc4Q


#590 [すのーまん]
懐かしいのが上がってる

⏰:07/06/03 14:47 📱:F902iS 🆔:7OrISBjQ


#591 [もんた]
あげ

⏰:07/06/03 16:50 📱:SH903i 🆔:765.RM.Q


#592 [ザセツポンジュ]
携帯変えました。
何回もすいませんそして気まぐれでソーリー

デュハ!

⏰:07/06/14 17:35 📱:W51CA 🆔:Kkj9ganA


#593 [ザセツポンジュ]
六さんの料理は

色鮮やかで
きーさんやすーさんには似合わず

とても上品で

そして体を壊しようのないバランスの整った料理が並べられた。

⏰:07/06/14 17:36 📱:W51CA 🆔:Kkj9ganA


#594 [ザセツポンジュ]
きーさんは食べる前に

きららちゃんの顔をしっかりと見て口を開いた。




『今日から毎日、ここに来てご飯を食べなさい。』




きららちゃんは
あ然した。

⏰:07/06/14 17:38 📱:W51CA 🆔:Kkj9ganA


#595 [ザセツポンジュ]
そして六さんもあ然とした。


(あぁ…いつもきーさんはムチャクチャ言うな。)



きーさんは六さんにウインクを投げかけた。

六さんはうなずいた。

が、しかし、何の合図かは全く分かっていない。

⏰:07/06/14 17:40 📱:W51CA 🆔:Kkj9ganA


#596 [ザセツポンジュ]
『…きーさん。いきなりどうしたの?毎日食べに来て…どうして?どうなるの?』


きららちゃんは
変態オヤジに犯されるか犯されないか一歩手前かのような
不安そうな表情を見せた。

⏰:07/06/14 17:42 📱:W51CA 🆔:Kkj9ganA


#597 [ザセツポンジュ]
きーさんは

ハシを持った。


そして、六さんの料理を一口食べた。



『うまい。んーうまいんだよ。この人の料理は。そして、いいところでおなかがいっぱいになる魔法もかけられている。要するに、きららちゃんは食べ物に関して何も心配することはないのだよ。たくさん食べ過ぎて泣くコトもなくなるだろう。』

⏰:07/06/14 17:45 📱:W51CA 🆔:Kkj9ganA


#598 [ザセツポンジュ]
きららちゃんは

同じ行為を何度も繰り返して、傷つけてしまった手を下に隠した。

そして涙をためた。

『きららちゃん。六さんは信用してもいい人なんだよ。ワシが随分前から知っている。安心してたくさん食べなさい。お金のコトは何も心配しなくていい。だが、条件がある。ちゃんと毎日ココへ通ってくれるかい?』


言うコトは優しいがバクバクと口へほうばるきーさん。

きららちゃんは戸惑った。

(私がこんなことしてもらっていいのかしら…)

⏰:07/06/14 17:50 📱:W51CA 🆔:Kkj9ganA


#599 [ザセツポンジュ]
きーさんは喉につまらせながら
お茶をすすり、一息ついて落ち着いた。

『ワシは心配なんじゃよ。なーんかな、死ぬコトもあるらしいぞ。摂食障害とかなんとかな。そんでな、家族や周りの徹底した協力が必要なんだよ。』

⏰:07/06/14 17:53 📱:W51CA 🆔:Kkj9ganA


#600 [ザセツポンジュ]
きららちゃんの
いっぱいたまった涙はとうとうこぼれ落ちてしまった。


『世の中に何人おるかは知らん。しかし、見つけてしまってはほっておくわけにはいかん。きららちゃんは家を出たのに今さら家族に頼れるかい?それもちょっと気が引けるだろう。そこはどんと、六さんに頼りなさいよ。とりあえず、1ヶ月だけでも。』

⏰:07/06/14 17:57 📱:W51CA 🆔:Kkj9ganA


#601 [ザセツポンジュ]
きららちゃんはうなずいて、我慢していた思いを吐き出すかのように
涙たくさん流した。そして、話し出したのだ。

⏰:07/06/14 17:58 📱:W51CA 🆔:Kkj9ganA


#602 [あお]
前から読んでますッ!!こんなにもハマった小説は初めてですッ!!
お願いだから更新してくださいッ(;´*д*)

⏰:07/07/31 23:02 📱:P902iS 🆔:mYnqxnBk


#603 [ザセツポンジュ]
『毎日毎日怖いの。誰かが私を見て批判してくるんじゃないかと思って。でもそんな顔をして仕事はできないわ。だからあとでどっと疲れるんだけど、食べてしまうの。いっぱい食べていっぱい吐くの。誰にも言えなかった。』

⏰:07/09/14 01:51 📱:W51CA 🆔:jAXbnQdU


#604 [ザセツポンジュ]
きららちゃんは
悔しそうに泣いた。

きーさんはバクついていた料理をひとまず放置して

きららちゃんの話を聞いた。

⏰:07/09/14 01:53 📱:W51CA 🆔:jAXbnQdU


#605 [ザセツポンジュ]
『夜の仕事はきららちゃんにとって楽しいコトかい?』

きーさんは訪ねた。毎日怯えて仕事をするきららちゃんへ。
『楽しい日もあるわ。だけど私は…今はとにかく怖い。』

⏰:07/09/14 01:55 📱:W51CA 🆔:jAXbnQdU


#606 [ザセツポンジュ]
きららちゃんは
正直に真っ直ぐに
気持ちを伝えた。

『ワシは正直きららちゃんのコトを太っているとは思わんよ。けどなぁ。きららちゃん自身は気になるんだなぁ。チヤホヤされる日の方がたくさんあっても、1日批判されたら嫌になるんじゃろ。店にはいろんな人が来るからなぁ。』

⏰:07/09/14 02:10 📱:W51CA 🆔:jAXbnQdU


#607 [なち]
更新がんばってください
(^∀^)
楽しみに待ってます☆

⏰:07/09/15 09:45 📱:SH902iS 🆔:LNLpISP6


#608 [すのーまん]
凄い久しぶり
冨樫の影響か?

⏰:07/09/15 14:09 📱:F902iS 🆔:5yW.b/io


#609 [か]
>>1-350
>>350-650

⏰:07/09/15 16:17 📱:SH903i 🆔:KNYmVfvw


#610 [か]
ごめんなさい
>>1-300
>>301-610
何度もすみません

⏰:07/09/15 16:19 📱:SH903i 🆔:KNYmVfvw


#611 [ザセツポンジュ]
きららちゃんは
深く深くうなずいた。


そして毎日
六さんの料理を
食べる事を約束したのだった。

⏰:07/10/12 13:12 📱:W51CA 🆔:QpirAHW.


#612 [ザセツポンジュ]
『いざこ-んや〜お前〜だけ-に〜ラ-ブパッションバリ ツナァ〜イ バラの花束抱えた俺が〜出会ったマイエンジェ〜ル♪空ちゃん大好き〜♪』

すーさんは酔っ払って空ちゃんへのラブソングを歌っていた。

『すーさん。お前、ここは上品な料理屋と言うことをわきまえて今を生きろ。なんだそのヘンテコリンな歌は。嫌われるのを覚悟したやつがやることだぞ。』

⏰:07/10/12 13:18 📱:W51CA 🆔:QpirAHW.


#613 [ザセツポンジュ]
『ヘンテコリンだと!!?きさま時代に乗り遅れるな!!!きーさん。マキシマムザホルモンのだいすけはんが歌ったロコフランクのな…』

『すーさん。何県何市にお住まいのどちらさんが何会場で唄った歌か知らんが、さっさと出る支度をしろ!!』

すーさんのラブソングにどん引きして顔面神経痛になりかけの空ちゃんと
希望を手に入れた
きららちゃん。
ひとつ橋をつくってあげたきーさんと
逮捕寸前のすーさんは
六さんの店をあとにした。

⏰:07/10/12 13:24 📱:W51CA 🆔:QpirAHW.


#614 [我輩は匿名である]
ageます

⏰:08/01/22 20:07 📱:F902iS 🆔:Wr2OJt8o


#615 [我輩は匿名である]
あげ

⏰:08/02/04 04:53 📱:SH904i 🆔:vtcksB6g


#616 [マーサル]
この小説書いてる主は男だとしたら
かなりモテル!!ww

⏰:08/02/04 09:34 📱:PC 🆔:SHC.Q3kY


#617 [我輩は匿名である]
あげー

⏰:08/02/04 16:25 📱:M-SKIN 🆔:xngdRWGA


#618 [スかなス]
あげますx

⏰:08/02/22 21:21 📱:W51CA 🆔:tzFtNMRs


#619 [しょう]
>>1-150
>>151-300
>>301-450
>>451-600
>>601-750

⏰:08/02/22 22:21 📱:P905i 🆔:9ar7dyg2


#620 [スかなス]
あげホホ

⏰:08/03/13 00:15 📱:W51CA 🆔:kVt7tXy.


#621 [.]
>>80-200

⏰:08/03/13 19:54 📱:SH903i 🆔:re1Uqg1c


#622 [.]
>>200-600

⏰:08/03/13 20:20 📱:SH903i 🆔:re1Uqg1c


#623 [.]
>>460-770

⏰:08/03/14 03:09 📱:SH903i 🆔:1C.z0jJE


#624 [ありとー]
アンカーとか無駄に多すぎて読みにくい(>A<)

⏰:08/03/17 20:57 📱:PC 🆔:..4ycGp.


#625 [ザセツポンジュ]
一方
生徒会長となり
少なからず
調子に乗りながら
青春を送っている
木田トミオ14歳と


もどかし過ぎる
恋に悩む
鈴木ジョウジロウ14歳。

対象的な
2人は
いつものカフェで
向かい合わせに
座っていた。

⏰:08/03/24 23:51 📱:W51CA 🆔:9b7EHO9g


#626 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウよ。オレさ、生徒会長と言う立場を大いに利用して、クリスマスからエノモトさんと付き合おうと思うんだけど。』

お決まりの梅昆布茶を
すする。

⏰:08/03/24 23:54 📱:W51CA 🆔:9b7EHO9g


#627 [ザセツポンジュ]
『まったくもって嫌なヤツだなトミーは。好きなら付き合えばいいじゃない。』

恋に悩む少年は
甘い甘〜い
小夜子ストロベリーを
少しずつ口に入れる。

⏰:08/03/24 23:57 📱:W51CA 🆔:9b7EHO9g


#628 [ザセツポンジュ]
『なにせエノモトさんは顔がいいからな。』


『へぇ……』


心ここにあらずと言う
返事を返したジョウは
何を隠そう
エノシタさんの事を
考えていた。

⏰:08/03/24 23:59 📱:W51CA 🆔:9b7EHO9g


#629 [ザセツポンジュ]
(可愛く変身し、美容室を代表してクーポン雑誌に乗ったことでエノシタさんは、嫉妬に狂ったメス達からいじめを受けている…だけどボクはなんにもしていない。鈴木さんちのジョウジロウちゃんよ。このままでいいのか。)

⏰:08/03/25 00:01 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#630 [ザセツポンジュ]
『おい。おーい。ジョウジロウ。帰ってこい。どこ見てんだ、死ぬのか?』

トミーは
ジョウジロウと
至近距離まで
近づいて
確かに
目を合わせているのに

ジョウジロウの視界に
入っていない
自分に
気づかされざるを得なかった。

⏰:08/03/25 00:03 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#631 [ザセツポンジュ]
『どうしたんだ。童貞だからと言って悩むなよ。快感はすぐそこだ、元気だせファイト鈴木。』



『あぁ…うん。』


2度までも
同じような対応のジョウジロウに
腹の立てたトミーは

周りを見渡し
大きく息を吸い込んだ。

⏰:08/03/25 00:06 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#632 [ザセツポンジュ]
『すいませーん。どちらさんかこの鈴木ジョウジロウ(14歳)の筆おろしを手伝ってく…』


『やめろ。やーめろ。うるさいよ、お前バカか。ただのカフェだぞここは。』


目の前にいる
幼なじみのとった
最終手段で
我に返った
ジョウジロウちゃん。


だけど決して
内に秘めた悩み事は
打ち明けなかった。

⏰:08/03/25 00:09 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#633 [ザセツポンジュ]
--------------


翌朝
早く目が覚めてしまったジョウは


寒い中ベランダに
立ちすくんでいた。


ガラガラガラーー。


『おや。いつもの風景が違って見える。今日はかわいい少年が見える。おはよう、ジョウジロウちゃん。』


『おはよう、きーさん。』

⏰:08/03/25 00:12 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#634 [ザセツポンジュ]
きーさんも
62年も生きていれば
分かる。

隣のおぼっちゃんが
悩ましげな
顔をしていることくらい。



『はっはーん。さては、カルピスだな。』

⏰:08/03/25 00:13 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#635 [ザセツポンジュ]
『さすがするどいな、きーさん。そうだよ、カルピスさ。だけどベランダ越しには話せないよ。』

きーさんは何か
ひらめき
ちょっと待てと
合図をし、
最強アイテムを
取り出して来た。



『糸でんわ。使うか?』



得意気に
紙コップと糸でできた
ひらめきの結晶を
さも自分が
考え出した発明品のように

隣にお住まいの
鈴木さんちの
ジョウジロウちゃんに投げ渡した。


《で、だれに恋をしているんだ??》

⏰:08/03/25 00:18 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#636 [ザセツポンジュ]
ジョウは紙コップに
口をあてて
返答しようとしたが


きーさんも
紙コップに口をあてたまま

目をぱちくり開けて
嬉しそうにこっちを
見ている。

⏰:08/03/25 00:20 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#637 [ザセツポンジュ]
ジョウは

“耳にあてろ”と言う

ジェスチャーをして
伝えようと試みたが


きーさんは
耳かきで耳くそを
ほじっただけであった。

⏰:08/03/25 00:21 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#638 [ザセツポンジュ]
ジョウは
あきらめた。


やっと
誰かに打ち明けられそうな
朝だったのに


目の前にいた
老人が
きーさんだった
自分は少し運が
悪かった。


『きーさん。また今度ゆっくり話そう。』


ジョウは軽く笑って
そっと糸でんわを
投げ返した。

⏰:08/03/25 00:24 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#639 [ザセツポンジュ]
『ちょっと待てジョウジロウちゃん。お前の恋心はお前だけのものだ。でもお前の恋はお前だけのものじゃない。いいか?落ち着いてよく考え、素直に、真っ直ぐ立ち向かうんだぞ。』


その言葉を
飲み込むように
ジョウジロウは
うなずいた。

⏰:08/03/25 00:27 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#640 [ザセツポンジュ]
学校と言う建物の中では

何が起こっても
何事も
なかったかのように
チャイムの音だけで
毎時間毎時間
区切られてしまう。


トミー達の通う
中学校は

冬休みが
始まる前に

新生徒会役員の
力だめしと称して

全校集会が開かれる。

⏰:08/03/25 02:36 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#641 [ザセツポンジュ]
3学期から
気持ちを新たに
学校生活を送るために
みんなで話し合いの場を
もうける集会だ。

生徒会室では
その集会にむけた会議でもっぱら忙しそうだ。

サポート役の
前生徒会役員の3年生と
トミーを筆頭にした
新生徒会役員2年生達が
衝突を重ねる。

⏰:08/03/25 02:41 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#642 [ザセツポンジュ]
生徒会長に
満を持して選ばれた
木田トミオ氏14歳ー。

なんとも不服そうな顔で
鈴木ジョウジロウを
見つめていた。

⏰:08/03/25 02:42 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#643 [ザセツポンジュ]
『なんだよトミー。』


『ジョウジロウちゃん。耐えられるか?この会議。カブトムシを捕まえるために、全身をミツバチの蜜で塗りたくっていた方がまだマシだ。』


『カブトムシってミツバチの蜜で捕まえるの?へぇ〜。パンクだね。トミーは物知りだね。』

⏰:08/03/25 02:46 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#644 [ザセツポンジュ]
『おい。お前、人を小馬鹿にするのは良くないぞ。すーさんによく似たモンだよ。まぁそんなエロジジイの事はどうでもいい。俺はこんなクソ会議は望んでないから、意見をすれば3年生がケツ毛みたいなしょうもない意見を返してきやがる。俺の発言はペシャンコだよ。くだらない。』

⏰:08/03/25 02:50 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#645 [ザセツポンジュ]
もっぱら
くだらない会議だと
ハナから分かっていた
ジョウは、耳を
傾けてすらいなかったが

トミーの悲痛な叫びを
耳に入れ

黒板に目をやった。


●見出しなみのチェック
●ゴミを拾う習慣

●各部活動の強化

⏰:08/03/25 02:52 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#646 [ザセツポンジュ]
ワイワイガヤガヤと
話し声だけは
いっちょ前に
聞こえるが

低レベルな議題だけに
さぞ会話も
薄っぺらいことだろう。

⏰:08/03/25 02:55 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#647 [ザセツポンジュ]
ジョウは
大好きなエノシタさんが
この生徒会室に
いることだけが
せめてもの救いだが

こんな
しょうもない会話を
エノシタさんも
しているのかと思うと

嫌気が
さしてしまいそうで

あえて
聞き入らないように
していた。

⏰:08/03/25 02:56 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#648 [ザセツポンジュ]
『トミーは何について取り上げたいの?』


待ってましたかのように
トミーは机の両端を持ち
いきおいよく
立ち上がった


『ズバリ。女の嫉妬についてだ。』

会議室はシーンと
静まり返った。

⏰:08/03/25 17:49 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#649 [ザセツポンジュ]
『…どっかのバラエティー番組みたいな内容だけどボクは賛成しようと思う。みんなはやりたくなさそうだけど。』

意外にも
ジョウジロウは
トミーの意見に
心から賛成していた。

⏰:08/03/25 17:50 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#650 [ザセツポンジュ]
『こんなの取り上げてどうするんだ。木田。お前生徒会長になったんだろ。しょうもない女子の人気だけで。もっと学校の事を考えろ。』


前生徒会長3年
西田トキムネ氏は
調子づく
生徒会長木田トミオに
キツいお灸をすえた。

⏰:08/03/25 17:53 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#651 [ザセツポンジュ]
だがこの木田家の長男。

めげない負けない
くじけない
行け行けトミオくんで
あることを
忘れてはいけない。

今だに
ファミコンのワンコンを
奪うために
必死そうな顔をしている
西田トキムネ氏の
そばに歩み寄り
トミーは言った。

⏰:08/03/25 17:57 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#652 [ザセツポンジュ]
『お前は生徒会長と言う名前が欲しかっただけの生徒会長だ。ここを卒業しても、「ボクは中学生の頃生徒会長と言う名前で学校へ通ってました」と威張っていたいだけだろう。考えてみろ。お前に慕ってくれている奴がどこにいるんだ。』

西田トキムネ氏は
トミーを睨みつけた。

⏰:08/03/25 18:00 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#653 [ザセツポンジュ]
『お前が生徒会長になってからの1年間。一体何ができたと思う?先生のご機嫌とりに大きな声での挨拶に例年通りの議題。小学生でも頑張ればできることだろう。自分の事しか考えてないから何も変わらないんだ。お前は歯を磨いてオナニーのちゃんとしたやり方でも勉強してろ。ブ男。』

⏰:08/03/25 18:04 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#654 [ザセツポンジュ]
静まり返った
教室に
トミーの必死な
抗議が響いた。

ジョウジロウは
静まり返ったついでに

エノシタさんを
見つめていた。

エノシタさんは
トミーを見て
また心がキュンキュン
鳴っている。


そんな
エノシタさんを見て
ジョウジロウは
胸を痛めた

⏰:08/03/25 18:06 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#655 [ザセツポンジュ]
恋心は自分だけのもの

恋は自分のものだけには
ならない。


(そうだよ。きーさん。今まさにその通りだよ。うぅ。)

⏰:08/03/25 18:08 📱:W51CA 🆔:WlQRdQf6


#656 [我輩は匿名である]
あげ

⏰:08/03/26 00:23 📱:M-SKIN 🆔:lZmj49DM


#657 [ザセツポンジュ]
自分の抗議の
不充分なオチに
納得のいかない
トミーは
どんでん返しに
生徒会ノートで
ジョウを思いくそ
叩いた。

バシッッ

『ぃ痛っっ!!!』

エノシタさんを
見つめていた自分と
サヨナラをしたジョウ。

『お前も何か言うんだジョウ。』

⏰:08/03/26 00:27 📱:W51CA 🆔:9iCCEi76


#658 [ザセツポンジュ]
ジョウは
仕方なく立ち上がり
ひとつため息をつき
話はじめた。

『女の嫉妬となれば、学校生活にはピンとこないと思います。この際“女”は外しましょう。男子でも女子でも、友達に嫉妬しますよね。それが延長したら何が起こるか分かりますか?』

⏰:08/03/26 00:31 📱:W51CA 🆔:9iCCEi76


#659 [ザセツポンジュ]
生徒会室の
机、イス、
チョークに
黒板、黒板消しでさえも
ジョウに視線を集めていた。


『それは…いじめです。いじめを取り上げて見てはどうですか?』


不覚にも
こんな時に
エノシタさんと
目が合ってしまった。

⏰:08/03/26 00:36 📱:W51CA 🆔:9iCCEi76


#660 [ザセツポンジュ]
『でもうちの学校にいじめなんてないだろ。』


西田トキムネと言う
童貞は
本当に
ファミコンの
ワンコンを奪うのに
必死そうな顔をしている。

そんな顔で発言する
西田トキムネ氏に
ジョウは腹が立った。

⏰:08/03/26 00:38 📱:W51CA 🆔:9iCCEi76


#661 [ザセツポンジュ]
『自分が可愛過ぎる西田先輩には到底分かりもしないことだと思いますが、その程度の発言しかできいような生徒会長と、中学校生活を過ごしたかと思うととても恥ずかしく思います。』


これだけ的確に
文句を述べても
ジョウの
怒りはおさまらなかった。

⏰:08/03/26 00:41 📱:W51CA 🆔:9iCCEi76


#662 [ザセツポンジュ]
『西田先輩。あなた、ファミコンのワンコンでストファイしたそうな顔をしてますけど、念願叶ってワンコンで対戦して、エドモンドホンダに負けたらどう言い訳するんですか?』

腹をかかえて
笑い出したのは
生徒会長
木田トミオだけであった。

⏰:08/03/26 00:46 📱:W51CA 🆔:9iCCEi76


#663 [ザセツポンジュ]
『ちょ………ちょっと待って!アハハハハ。ジョウジロウちゃん、それは言ったらダメじゃん。だけど、そうだよ西田、お前なんて言い訳するんだ。“ワンコンは使えたけど肝心な右手はオナニーの研究してました”とかか!?ハハハハ。』

⏰:08/03/26 00:50 📱:W51CA 🆔:9iCCEi76


#664 [ザセツポンジュ]
ツボにハマると
空気も読まず
なかなかしつこい男
木田トミオである。


西田トキムネ氏は
顔をこわばらせていた。

『お前らいい加減にしろ。どっちでゲームしたっていいだろう。』

⏰:08/03/26 00:52 📱:W51CA 🆔:9iCCEi76


#665 [我輩は匿名である]
>>1-100>>101-200>>201-300>>301-400>>401-500>>501-600>>601-700

⏰:08/03/26 00:55 📱:W51SA 🆔:saOEh9N6


#666 [ザセツポンジュ]
『ギャーハハハハ。そこじゃねぇよ。お前15歳にもなって空気くらい読めよ。』


トミーの
過度の冷やかしに
ストップをかけたのは
エノシタさんだった。


『き、木田くん。もういいわ。本題に戻らない?』

⏰:08/03/26 00:55 📱:W51CA 🆔:9iCCEi76


#667 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700

⏰:08/03/26 00:56 📱:W51SA 🆔:saOEh9N6


#668 [ザセツポンジュ]
『そうだよトミー。笑い過ぎだよ。』

どさくさにまぎれ
ジョウもトミーに
注意をした。


1000歩譲って
正気を取り戻した
トミーは

サポートして頂いている
麗しき3年生に
向かって
最後に捨てゼリフを
吐いてしまった。

⏰:08/03/26 00:58 📱:W51CA 🆔:9iCCEi76


#669 [ザセツポンジュ]
『ワンコンに命をかけている元生徒会長も、最近可愛くなって何を思ったかクーポン雑誌に顔載せしている元副会長も、今後一切口出ししないでくれ。』


『バカヤロウ!!!!』


ジョウは
一心不乱に
トミーを叩きまくった。

⏰:08/03/26 01:20 📱:W51CA 🆔:9iCCEi76


#670 [ザセツポンジュ]
『なんだっ、なんだよジョウ!!やめろ!何考えてるんだ!お前今、うちまただぞ!!』




とにもかくにも
この片田舎の
中学校の未来は

クソガキジジイに
育てられた
2人の少年に
たくされているのである。

⏰:08/03/26 01:24 📱:W51CA 🆔:9iCCEi76


#671 [すのーまん]
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650
>>651-700
>>701-750
>>751-800
>>801-850
>>851-900
>>901-950
>>951-1000

⏰:08/03/31 14:11 📱:F902iS 🆔:hLYHrirY


#672 [あぃこ]
あげます~~

⏰:08/04/03 11:30 📱:W51CA 🆔:2znD/fyg


#673 [ケイネス]
貴方のことを神と呼ばせて下さい。

⏰:08/04/03 15:10 📱:W53H 🆔:dxZ4b5/A


#674 [ザセツポンジュ(仕事中のためPC)]
「うん、却下ね。」

校長はいじめをテーマにした
うすっぺらい資料を
バサっとほうり投げた。

「そうハゲか。わかったハゲよ。じゃあハゲ例年通りハゲで行くよ。失礼ハゲしました。」

⏰:08/04/04 11:50 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#675 [ザセツポンジュ(仕事中のためPC)]
生徒会長木田トミオは
却下された資料をまるめて
すんなりと校長室を出た。

「ジョウジロウちゃん聞け。やっぱり却下だったよ。」

トミーはジョウジロウの肩に手をかけ
耳打ちした。

「あんな資料じゃダメだよ、証拠も出してないのに。ちょっと近いんだけど。耳元で喋るのやめてくれないか。」

⏰:08/04/04 11:54 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#676 [ザセツポンジュ(仕事中のためPC)]
「校長もそれと同じことを言いたそうに頭をハゲ散らかしてたから何も聞かずに出てきました。」

「そうか。じゃあぶっつけ本番、当日が勝負だね。トミーの腕次第だね。」

⏰:08/04/04 12:02 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#677 [ザセツポンジュ(仕事中のためPC)]
「それは心配するな。根拠はないがうまく行く。しかしせめて一回くらいはイメージプレイさせてくれ。それくらいいいだろ?俺だって人間だ、心臓は高鳴る。」

ジョウジロウは
なおも耳元で喋りまくる
トミーを振り払った。

「おい。ジョウ。ところでお前なぜ言わないんだ。いじめを目撃したんだろ?お前が証拠を出さないと俺だってやりづらいんだ。そろそろ言わないか!」

⏰:08/04/04 12:10 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#678 [ザセツポンジュ]
ジョウは立ち止まり
くつばこの横のゴミ箱を指指した。

「あの中に資料が入っている。」

そう言い残し、向かう足は
必然的に屋上を目指していた。

⏰:08/04/04 12:12 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#679 [ザセツポンジュ]
(トミーは気づくよね。エノシタさんがいじめられていると知れば俄然やる気が沸いて、黄色い声援を浴びる集会を開催する事ができる。そしてトミーがエノシタさんを助けることになる。そしたらエノシタさんはなおさらトミーを好きになって・・・)

⏰:08/04/04 12:16 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#680 [ザセツポンジュ]
(どんどんみだらな女になっていって、エノモトさん狙いのトミーもそんなエノシタさんに惹かれていって、やがてどっぷりハマる。そしたらボクの入る隙なんてみじんもなくなって、過去を振り返る歴史の勉強に明け暮れて、ヤラずにハタチを迎えるんだ。みんなにヤラハタって呼ばれるようになるんだ。)

⏰:08/04/04 12:19 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#681 [ザセツポンジュ]
(ボクはハタチで、金を払って風俗で童貞を捨てるんだ。。。でもそれでも素人童貞なんだ・・・)


「はあ、、、。ダメだダメだ。ボクはこともあろうか、なんて事を考えてるんだ、、、ふう。」

⏰:08/04/04 12:22 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#682 [ザセツポンジュ]
鈴木ジョウジロウ。
落ち着きを取り戻し、
寒空の下、呪文を唱えた。

「縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、鎌倉、室町、安土桃山、えーどーめいじーたしょーしょうわーへいせー!」


「、、、鈴木。」


「っぎゃっっっ!何ですか一体!何考えてるんですか!」

苦笑いの担任を目の前に
ジョウは大声で怒鳴りつけた。

⏰:08/04/04 12:27 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#683 [ザセツポンジュ]
「何を考えているかは、お前に聞きたい。昼休み、終わってるぞ。とっくにチャイム鳴ったぞ。」

チャイムの音すら聞こえない。
恋わずらいとは重い病気だ。

⏰:08/04/04 12:28 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#684 [ザセツポンジュ]
「鈴木、さっきの、奈良が抜けてたぞ。」

ジョウジロウはスクっと立ち上がり
階段を下りて、教室に向かった。

(縄文、弥生、エノシタ、古墳、飛鳥、エノシタ、奈良、平安エノシタ、安土エノシタ、江戸エノシタ。。。)

「頭おかしーんじゃねーのか!」

ジョウジロウは自分の頭をポコポコ殴った。
担任はジョウジロウの肩を抱いた。

⏰:08/04/04 12:34 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#685 [ザセツポンジュ]
そんなジョウとは
打って変わって
片田舎の中学限定
スーパースターの
昼休みはなんとも
さわやかなものだった。


ジョウにゴミ箱を指差され
置いてきぼりを食らったトミー。

悩ましげな幼馴染の
後ろ姿を見て、確認しないわけには
いかない。

⏰:08/04/04 13:56 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#686 [ザセツポンジュ]
ーガサゴソ、、、。

トミーは手当たり次第、
ゴミをあさった。

「ん?うん、、、。うん。ふ〜ん。、、、了解生コン!」

⏰:08/04/04 13:58 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#687 [ザセツポンジュ]
「誰と話してるの〜?」

ゴミと話していたトミーに
かけてきた女の声で
顔を上げた。

「エ!エノモトさん!」

トミーは紙くずをグシャっと
ポケットにつめこみ、変態トミオの
スイッチを軽く押した。

⏰:08/04/04 14:01 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#688 [ザセツポンジュ]
この男、よっぽどついているのか
意中の相手から声がかかるという
強運の持ち主である。

「エノモトさん、冬休みはどうお過ごしで?」

⏰:08/04/04 14:02 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#689 [ザセツポンジュ]
トミーはエノモトさんの手を
優しくひっぱり、靴箱の隅っこに
しゃがみこんだ。

「う〜ん、、、。特に予定は。」

トミーの目がギラリと光った。

「じゃあ、よく聞いて。クリスマスに俺とチュウするのと、クリスマスに俺とチュウするの、どっちがいい?」

片田舎のスーパースターじゃなかったら
殺されるほどの勘違い発言だが
木田トミオ、ギリギリセーフで通過できた。

「どっちも同じじゃん。」

⏰:08/04/04 14:06 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#690 [ザセツポンジュ]
そんなエノモトさんも
トミオマジックにかかり
照れて下を向いた。

「わかった。じゃあ頑張って1か2で答えてみよう。」

トミーはうつむくエノモトさんの顔を
覗きこんだ。

⏰:08/04/04 14:09 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#691 [ザセツポンジュ]
「い、、、いちばん、、?」

チラっとトミーを見る
エノモトさん。

「、、、お前、ヤリマンか?」

「は?」

<キーンコーンカーンコーン。>

予鈴が鳴った。

⏰:08/04/04 14:11 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#692 [ザセツポンジュ]
「じゃないよな。とりわけ、この俺のメアドにとてつもない速さでメールちょうだいね。」

トミーは事前に用意しておいた
マイアドレスのメモを
エノモトさんに渡し、立ち上がった。

「え、トミーは今彼女いないの?」

しゃがみこんだまま、
メモ紙を手に持ち顔を上げたエノモトさん。
トミービジョンから見下ろした、
そのエノモトさんの上目使いが
トミーのツボと言うツボを付き

もう一度しゃがみこんで、エノモトさんの目を見た。

⏰:08/04/04 14:16 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#693 [ザセツポンジュ]
「いない。エノモトさんが、俺の彼女になると簡単に思ってたんだけど、まだわかんない。エノモト争奪戦に参加して、なおかつ優勝しないとダメなんだよ、俺。それで冬休み忙しいんだ。」

エノモトさんは携帯を取りだして
トミーにメールを送った。

⏰:08/04/04 14:21 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#694 [ザセツポンジュ]
<優勝するようにおまじないしてるね☆>

何ともむずがゆい鳥肌の立つような
二人だが、本鈴がなるまでの
わずがな時間、トミーはエノモトさんと
靴箱の隅っこにしゃがみこみ、
甘いひと時を過ごしていた。

⏰:08/04/04 14:25 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#695 [ザセツポンジュ]
_______________

「あの女、あと二日もすれば落ちるな。ほんっとどいつもこいつもヤリマンだ。日本の女はヤリマンだ。あいつもこいつもヤリマンだ。ヤリマンダーヤリマンダー」

バシッッ。

「木田。もうちょっとマシな独り言にしろ。チャイム過ぎてるぞ。」

担任は持っていた教科書で
トミーの頭を憎しみを込めて
殴った。

「ヤリマンダー。」

バシッッッ

担任はそのまま階段を上がっていった。

(先生こそチャイム鳴ったのにどこ行ってるんだろう。)

⏰:08/04/04 14:29 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#696 [ザセツポンジュ]
先生のいない教室に戻ったトミーは
席に座り、あたりをグルっと見渡した。

「ヤリマンダーヤリマンダー」

「な、何言ってんの?トミー、ジョウと一緒じゃないの?先生探しに行ったのに。」

隣の席の、割りとブサイクな渡辺さんは、
トミーを二度見しつつも、ジョウの行方を心配していた。

「ヤリマンダー、ヤリマンダー」

⏰:08/04/04 14:33 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#697 [ザセツポンジュ]
「ふざけないでよ!」

「、、、渡辺さん、怒ったときの顔、超可愛いんだけど。」

「え、、、。」

顔を赤くする割とブサイクな渡辺さん。

「ヤリマンダーヤリマンダー」

⏰:08/04/04 14:36 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#698 [ザセツポンジュ]
「もう!」

ガラガラー。

渡辺さんをからかった後
担任とジョウは戻ってきた。

「はーい、授業始めるぞ〜。鈴木は屋上で独り言をぶつぶつつぶやいていたので遅れましたー。鈴木ー。みんなにあやまれ。」

「すいませんでした。」

ジョウは深いお辞儀をして、
憂鬱にも席に戻った。

すぐさまトミーがジョウの
耳元で話かける。

「ジョウジロウちゃん。俺、エノモトさんとクリスマスにセックスする約束しちゃったんだけど。ヤリマンダーヤリマンダー」

いつもだったらこの耳元で囁くトミーにイラつきを
覚えるのだが、さっきまでの悩みごとが
バカみたいに思えてきたジョウジロウ。

⏰:08/04/04 14:44 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#699 [ザセツポンジュ]
「え?クリスマス、エノモトさんと過ごすの?エノモトさん?エノモトさん?」

エノモトさんのモトの部分を
どうしても強調してしまうジョウジロウ。

「エノモトさんと何時から何時何分まで遊ぶの?え、それ確実に遊ぶわけ?エノモトさんと?」

尋問する警官のように
必死なジョウジロウ。

⏰:08/04/04 14:47 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#700 [ザセツポンジュ]
「、、、え?ジョウジロウちゃん。どうしたの?なんでそんなことまで聞いてくんの?だってもう決めちゃったもん。そうか、、、。俺と遊びたかったんだよな。俺とサンタさんごっこしたかったんだよな。それならそうと早、、」

ジョウはトミーを耳元から
押しのけた。

「さっきから近いし。全然違うし。サンタごっことかしたこともないし。」

⏰:08/04/04 14:51 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#701 [ザセツポンジュ]
ジョウは、トミーの
極度の勘違いにあきれながらも
希望で満ち溢れていた。

(じゃあ、じゃあ、ボクはエノシタさんと、エノシタさんとクリスマスを過ごせるチャンスかもしれないじゃん!いけいけごーごーすーずーき!)

ジョウは、自分にエールを送り
気持ちを入れ替え
歴史の授業を受けた。

⏰:08/04/04 15:00 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#702 [ザセツポンジュ]
「ねえ、トミー。エノモトさんと、エノモトサンとうまく行けばいいね!」

「、、、。お前何でさっきからエノモトサンのとこだけカタコトになるんだ?」

おおっと危ない。
恋に集会に冬休みにクリスマス。
これから忙しくなる少年2人だった。

⏰:08/04/04 15:40 📱:PC 🆔:1Bn.IsqU


#703 [スかなス]
あげ

⏰:08/04/06 13:57 📱:W51CA 🆔:atC9RIq6


#704 [我輩は匿名である]
あげ〜

⏰:08/04/12 20:21 📱:F705i 🆔:gVWd4Us.


#705 [べあ-]
定期あげ-

⏰:08/04/28 23:15 📱:W51CA 🆔:8wFrJpcE


#706 [ケイネス]
書籍化しないんですかー?

⏰:08/05/03 17:10 📱:W53H 🆔:JFmXJx66


#707 [ザセツポンジュ]
【談】

ザセツポンジュ。
持続性がないのであります。
もうきーさんだのすーさんだのをちまちま書きはじめて
あしかけ
2年ほどになりました。2008年7月7日に完結させます〜
(と、言わないとやらないので言ったからには個人的にやろうと思います。)

“あげ〜”してくれた方々。

たんまに開くと
嬉しくて鼻血が出そうです。

最後の最後には
しょうもないサプライズとともに
完結させますので

7月7日まで
ダラダラとよろしくです。

ありがとうです。

⏰:08/05/03 17:41 📱:W51CA 🆔:NqM0mZf2


#708 [みずき]
主サン大好きです(ω)ノ
期待してます

⏰:08/05/03 22:17 📱:W44K 🆔:z8giIPI2


#709 [ゆちよん]
全部読みました
頑張ってくださいね~

⏰:08/05/05 21:59 📱:W51S 🆔:gldcouak


#710 [ケイネス]
書籍化してくれる人いないかな
でたら買うよ。主のクオリティとセンス良すぎですって!

⏰:08/05/08 23:44 📱:W53H 🆔:GEKeQMHQ


#711 [ザセツポンジュ]
『ブフォ!格別に熱い!まるでみーちゃんのワシに対する想いがココに表れているみたいでならん!』


早朝の#7791カフェで、猫舌なのにも関わらず熱い梅昆布茶を嬉しそうにすするすーさん。


きーさんは
小夜子ストロベリーをほうばりながら
すーさんを軽蔑した。

⏰:08/05/13 23:13 📱:W51CA 🆔:aYBz2q7U


#712 [ザセツポンジュ]
『すーさん。そこまで熱い梅昆布茶を出してこられたみーちゃんは、心底自分の事が嫌いなのではないかと疑うのが一般論だ。すなわちすーさんの脳内は腐っている。近くの病院に行きなさい。』


『フーァッ。フー、フーァッ。』


否定的な意見は聞き入れない主義。
鈴木ひとし、老人。

⏰:08/05/13 23:16 📱:W51CA 🆔:aYBz2q7U


#713 [ザセツポンジュ]
『きーさん。吐きダコのきららちゃんはどうなったんじゃ。もうずっとキャバクラにも行ってないし、なにより空ちゃんがワシを呼んでおる。』


『営業と言う漢字2文字の意味がお分かりかね。まぁいい。きららちゃんの様子見がてら、まず六さんのところへ行ってみよう。すーさん。また夕方に。』

小夜子と甘い一時を過ごしたきーさんは
伝票をすーさんの顔に貼り付けカフェを出た。

『ワシのオゴリ系かよ〜。うぜぇ系?伝票も貼り付ける系?代金払え系?きーさん。ゴールデンエッグスて知ってるか系?あ、あれ?きーさん!みーちゃん!きーさんは!!?』

⏰:08/05/13 23:25 📱:W51CA 🆔:aYBz2q7U


#714 [ザセツポンジュ]
日が暮れだした
茜色の寒空の下

老人2人は
懐石料理“廣六”へと
向かった。


ガラガラガラー。


『いらっしゃいま…』

出迎えた
着物を来た可愛らしい女性は
びっくりした様子で2人を見たまま口に手をやった。

⏰:08/05/13 23:30 📱:W51CA 🆔:aYBz2q7U


#715 [ザセツポンジュ]
『きららちゃん…アンタまさか六さんと性行為に及んだのでは…きーさん、この女危ないぞ、気を付けろ…』


すーさんは難しい表情を浮かべきーさんの後ろに下がった。


きーさんは
きららちゃんを
上から下までじっくりと眺めこう言った。



『きららちゃん。少し、痩せたな。』


『うん!』


きららちゃんは
とても嬉しそうにニッコリ笑った。

⏰:08/05/13 23:33 📱:W51CA 🆔:aYBz2q7U


#716 [ザセツポンジュ]
六さんの店に通ううちに
バランスの良い食事を
こころよくとらせてもらっていることに
気が引けて

週に2、3回程度
中居として働かせてもらうことになったと言うきららちゃん。


ちなみに
六さんと言う老人と
セックスをしてしまうほどアバズレではない。

うそつき空ちゃんと
働くキャバクラには
出勤を減らし
こちらも週3程度で働いている。


精神的なバランスも
徐々にとれだしていた。

『きーさん。私ホントに感謝してます。ありがとう。』

⏰:08/05/13 23:38 📱:W51CA 🆔:aYBz2q7U


#717 [ザセツポンジュ]
きーさんの手を握った
きららちゃんの手の甲から見える
吐きダコの跡が
少し薄くなっていることに、きーさんは安心した。


『きららちゃん。空ちゃんはワシのこと寂しそうに待っているんじゃろ。ワシも会いたいよ。なのにきーさんときたら、何遍誘っても首を縦に振ってくれないんじゃ。きーさんはインポなんじゃ。』


『すーさん。いい加減、死のうとは思わないのかね。この町内のためにも。ちょっと黙っててくれ。』


くすくすと笑うきららちゃんは何かを少しとっぱらったような可愛い笑顔だった。

⏰:08/05/13 23:43 📱:W51CA 🆔:aYBz2q7U


#718 [ザセツポンジュ]
『もう今日は暇だし、アンタもきーさん達とご飯食べなさい。仕事はもういいから。ね。』

六さんの登場に
すーさんはブーイングした。

『六さん!アンタ、きららちゃんをアンタ呼ばわりして何様のつもりかね!変態!ワシですら空ちゃんとチュウもしたことないのに若い娘をなめまわしやがって!』


ゴツン!

『…っつ…。』


きーさんのゲンコツは痛いのだ。

六さんの料理フルコースを食べあさるうちに

日本酒に酔っ払った
すーさんは
ウトウトしだし、大人しくなった。

⏰:08/05/13 23:50 📱:W51CA 🆔:aYBz2q7U


#719 [ザセツポンジュ]
きーさんはタバコに火を付け
一息ついたところで
ゆっくり話だした。


『きららちゃん。本名は何と言うか知らないがそれはどーでもいい。だが…あの…その…手の…事だけども、…体が痩せてキレイになったからと言って解決する問題と言うワケではないのは分かるかい?』

きららちゃんは
手の甲の自分をいじめた赤色の痕跡にそっと手でおおいかぶせ
話し出した。

⏰:08/05/13 23:55 📱:W51CA 🆔:aYBz2q7U


#720 [ザセツポンジュ]
『はい。私ちょっと、勘違いと言うか、過剰に思いすぎていたところがあった…。何かうまく行かない事があると、太っているせいだとか、容姿端麗ならこんな風にはならなかったはずだとか、胃の中に入れたら太ってしまう…出してしまわないと自分は醜いだとか…』

きーさんは
静かな空気の中
フゥっと煙を吐き出した。



『だけど、それよりももっともっと奥の方に、きららちゃんがそうなってしまった原因があるだろう?』


きーさんの
とても柔らかい口調に
きららちゃんは
ほだされていった。

⏰:08/05/14 00:04 📱:W51CA 🆔:FHLTeiMw


#721 [ザセツポンジュ]
『そうね…。それがどうなれば解決とされるのかは分からないけれど、まずは自分を安定させて、それから少しずつ向き合って行けたらなと思うの。』



せめてきららちゃんは
このまま
今、描いているイメージ通りに
進んでいけることを
きーさんは切に願った。


『ピーピーピー。ピピッピピー。空ちゃ〜ん。ワシの空ちゃ〜ん。』


すーさんは顰蹙係。
酔っ払った時は
いつだってこうだ。

⏰:08/05/14 00:08 📱:W51CA 🆔:FHLTeiMw


#722 [ザセツポンジュ]
口の中の
歯ぐきが
ガクガク踊り出して

次は
のどに

次は
心臓に

次は
胃に

次は
心臓に

次は
のどに。

顔を憎み
腕を憎み
胸を憎み
腹を憎み
足を憎み

怖くなって
怖くなって


眠る。

⏰:08/05/14 00:14 📱:W51CA 🆔:FHLTeiMw


#723 [ザセツポンジュ]
チョコレートもポテチも牛丼も

お母さんもお父さんも近所の人も

サンドイッチもハンバーガーもラーメンも

学校も友達も先生も。

アイスもケーキもワッフルも。

妹も妹も妹も…


私の中から出て行って
いらないわ、何もかも
邪魔だわどれもこれも


ずっと比べていればいいわ。

⏰:08/05/14 00:17 📱:W51CA 🆔:FHLTeiMw


#724 [ザセツポンジュ]
どうだっていいもの。
私にはどうだっていいもの。



無くなればいい。
死ねばいい。
私は醜い。
消えてしまえばいい。


どうだっていい。
どうだっていいもの。


全部
どうだっていいもの。

⏰:08/05/14 00:19 📱:W51CA 🆔:FHLTeiMw


#725 [ザセツポンジュ]
ーーーーーーーーー



『おはようございます。木田です。生徒会長です。皆様、ご機嫌はいかが?』


恒例の、全校集会が幕を開けた。


《キャーーーー!!!!トミーーーーー!!!》


何を土地狂ったのか
片田舎の女子中学生の
黄色い声援と言うものは

トミーをつけあがらせる
最大の覚せい剤だ。

⏰:08/05/14 00:23 📱:W51CA 🆔:FHLTeiMw


#726 [我輩は匿名である]
>>230ー300
>>300-400

⏰:08/05/14 07:04 📱:N902i 🆔:BcjqSwbk


#727 [我輩は匿名である]
>>200-300

⏰:08/05/14 07:05 📱:N902i 🆔:BcjqSwbk


#728 [空の色]
こんな小説あったんだ…ほんと読めてよかったbb

温かい気持ちになるよ、これからも楽しみに読ませてもらいやす

⏰:08/05/16 21:36 📱:W43H 🆔:mHnGFj8s


#729 [ザセツポンジュ]
『今から全校集会を始めます。きりつ、気をつけ、れい。』

ステージには
新生徒会役員、トミーやジョウを含めた6名。
裏方に、旧生徒会役員、トキムネ氏、エノシタさんを含めた6名。

体育館2階には
父兄にPTAが勢揃い。

そして、1階の窓際に一列、教師達が並ぶ。


ステージに一番近いところに我が校代表する校長が座った。

⏰:08/05/19 01:22 📱:W51CA 🆔:UWzOEldU


#730 [ザセツポンジュ]
女子達の黄色い悲鳴は止まない。

調子に乗りたい気持ちを抑え

トミーはマイクを持ちステージのそでに立った。


『女子達。キャーキャーピーピーうるさいんですけど。シーよ。シー。俺は、今日来ている君達のママやパパにひとりずつ挨拶してまわらないといけない。そしたらどうなる。全員のパパにボコスコにされてしまうよ。…それで余計かっこよくなれるかもしれないけど。』

腹の立つ勘違い発言だが片田舎のため許された。
いつものことだ。

2階からドっとわかせたところでトミーは口に人差し指を立て、会場をしずめた。

⏰:08/05/19 01:33 📱:W51CA 🆔:UWzOEldU


#731 [ザセツポンジュ]
『皆様今日はお集まり頂き有難うございます。今年も、例年通りの議題で行うように校長から言われました。が、しかし、そんなのなんにもおもしろくないので校長の命令は完全無視する。』


小さな話し声が広がりざわつきはじめた。
校長はキョロキョロしてなにやら教頭に耳打ちした。

『議題を発表します。』

トミーは裏方の前生徒会長、トキムネ氏に指示を出した。

『そこのファイルにある1枚目をスクリーンに映し出せ。』

トミーの鋭い目に圧倒され、言われるがままに従った。


何も聞かされることのなかった旧生徒会役員。
トミー率いる新生徒会役員との確執は深かった。

⏰:08/05/19 01:45 📱:W51CA 🆔:UWzOEldU


#732 [ザセツポンジュ(仕事中のためPC)]
《い  じ  め》

スクリーンいっぱいに
映し出された、たった3文字の言葉。

みんなが議題を飲み込んだのを
確認したトミーは、進行をジョウと交代した。

『はい。ここに出ている文字を見てハッとした人もいると思いますが、この学校にいじめは存在しました。今日来ているお父さんお母さんは、ショックかもしれませんが、娘さん、息子さんが誰かをいじめているかもしれません。』

⏰:08/05/19 16:55 📱:PC 🆔:inGAe7KI


#733 [ザセツポンジュ]
ザワつきのボリュームは
次第にあがって行き、
校長は教頭をステージの上に送り出した。
教頭は校長に言われた通りの
マニュアル的台本を、ジョウの耳元で告げた。

普段は物静かなジョウジロウちゃんも
好きな子を守る
盛大なパーティーの最中、
忠告を聞き入れるわけにはいかない。

ジョウは、教頭の背中を押し
ステージの真ん中へ立たせた。

『今ボクに言った内容を、目の前にいるみんなにも発表してください。』

⏰:08/05/19 17:01 📱:PC 🆔:inGAe7KI


#734 [ザセツポンジュ]
教頭に、マイクを渡した。

『、、、いや、、、あの。』

マイクを持って
突っ立ったまんまの教頭に
生徒からヤジが飛ぶ。

『何言ったんだよ!言えよ!』
『なにやってんだよ、お前コケシか!』

混乱する体育館内と
それ以上に困り果てた、教頭、校長、、、。

教頭はマイクをジョウに渡し、肩に手を置いた。

『やりたいようにやれ。知らないぞ。』

そう言い残し、あまりの恥ずかしさからか
ステージの裏に逃げてしまった。

⏰:08/05/19 17:06 📱:PC 🆔:inGAe7KI


#735 [ザセツポンジュ]
校長がギラリと睨んだ先、
教頭は見えないステージの裏側で
今までにない屈辱を味わい
身震いせざるを得なくなってしまった。

裏方にかまえていた
旧生徒会役員も
この時ばかりは、かける言葉すら無かった。

『教頭が逃げたところで本題に入ります。スクリーンに映し出す資料をみんなで見て行きましょう。あとでみんなにも意見を発表してもらいます。』

⏰:08/05/19 17:16 📱:PC 🆔:inGAe7KI


#736 [ザセツポンジュ]
ジョウはエノシタさんに
資料を渡し、順番に映しすようにお願いした。

エノシタさんは、普段は見せないような
不安な顔でジョウを見つめていた。

何を話せるわけでもなく
ジョウはステージに戻った。

⏰:08/05/23 12:13 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#737 [ザセツポンジュ]
年間、少年少女の自殺が
600件にも達していること、
それを大人達は隠してしまっていること。

いじめをすることによって、
優越感を得る同年代の子達の心理

ネットでの書き込み、中傷が
増え続けている事。

黙って見ている人の立場。


ジョウが説明していくたびに
忠実に資料を映し出して行ったエノシタさん。

ステージの裏でのエノシタさんの様子が
気になって仕方のなかったジョウ、、、。

『暇なんですけど〜。』

ステージで説明するジョウを押しのけ
暇を持て余していた、生徒会長木田トミオが現れた。

トミーの再びの登場に
いちいちザワつく田舎女子。
ジョウはトミーと進行を交代した。

『鈴木くんの資料を見て、だいたい分かったと思いますが、ここで突撃インタビューを開始します。何か意見のある人は手を挙げましょう、、、。もちろん挙がりませんね。では、適当に出席番号を言うので各学年、呼ばれた出席番号の人は立ちましょう。』

新生徒会役員、トミーとジョウをステージに置き
残りの4人がマイクを持ち、体育館に散らばった。

⏰:08/05/23 12:29 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#738 [ザセツポンジュ]
『それでは、出席番号を発表します。男子5番、20番。女子2番18番。今呼ばれた出席番号の人、さっさと起立。』

トミーは、立たされた顔ぶれを眺めた。

そして、質問を開始した。

『1年生、1組の男子5番の子。名前をどうぞ。』


いたって健康そうで、1年生ならではの
ズボンの丈が少し短い男の子だった。

『片岡洋平です。』

名前もいたって当たりさわりなく普通だ。

⏰:08/05/23 14:33 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#739 [ザセツポンジュ]
『片岡君、さっきの資料で、年間600件の自殺が報告されていると言うことだったけども、600件全部がいじめが理由なワケではないと思う。でも死ぬほど嫌になるくらいのことを、片岡君は経験したことがありますか?』

トミーの唐突な質問に
いたって健康そうな片岡君は戸惑っていた。

『、、、ありません。』

『では、塾でもなんでもいい。しんどいな、苦しいなと思ったことはありますか?』

『、、、それは、あります。』

『そこで、そのしんどさをどうまぎらわす事ができましたか?』

『、、、。』

ズボンの丈が少し短い片岡君は
緊張のせいもあり、ガチガチで上のほうを見て考えた。

『僕は、、、。数学が苦手で、よく怒られていて、、、。それが嫌だったけど、友達に打ち明けたら、数学教えてくれるようになって、、、。まだ苦手だけどちょっとは楽になりました。』

⏰:08/05/23 14:59 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#740 [ザセツポンジュ]
『ありがとうございます。座ってください。』

片岡くんはズボンの丈を気にする事もなく
ホっとした表情で着席した。

『同じく1年1組の男子20番。名前から。』

『福井祐樹です。』

ドラえもんで言うスネオポジションとおぼしき
男の子。

『いじめと言うのは、どこからがいじめと呼ぶのかは難しいかもしれませんが、誰かがいじめをしているのを見た事がありますか?』

『まだありません。』

『では、仲の良い友達に、簡単に言うといじめを誘われたらどうしますか?』

『、、、断ると思います。』

『断ると、思います?』

『、、、断ります。』

『今みんなの前で言ったその言葉を忘れないでください。座ってください。』

⏰:08/05/23 15:13 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#741 [ザセツポンジュ]
ジャイアンポジションに
のび太ポジションをいじめようと誘われたら
きっとジャイアン側についてしまうだろう。
そんな自分の性格をなんとなく把握していた福井は
なかば強制的に宣言した言葉を重く受け止めた。

『では1組の2番女子。』

『安達さきです。』

安達さん、トミー軍団の一味である。
ニヤニヤしながらマイクを自らぶんどっていた。

『さきちゃん。無視したり、はみごにしたりと言う経験はありますか?』

『あ、ありません。でもしている人なら見た事があります。』

堂々とした発言に体育館がどよめいた。

⏰:08/05/23 15:26 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#742 [ザセツポンジュ]
『どういう風な形で始まりますか?』

『目立つか暗いかでターゲットが決まるケースが多いです。』

1年1組女子から安達さんにブーイングが起きている。

『1組女子静かにして。まだ質問が残っている。』

1組女子達はふてくされながら口を閉じた。

『さきちゃんは、それに加わった事はないと言いましたが、ではそのされている人や、している人に、何か注意とかはできましたか?』

1組女子は全員安達さんを睨みつけた。

『注意はしたけど、、、聞いてくれませんでした。』

⏰:08/05/23 15:32 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#743 [ザセツポンジュ]
1組女子はこの発言を聞いた途端
言いたいことをガヤガヤと言い始めた。

『トミー先輩の前だからっていい顔すんなし。』
『注意とか言う前にお前もやってんじゃん。』
『お前がむしろ先陣きってはじめてるし。』

安達さんは自分が掘った墓穴を恥じて
泣き出した。
マイクを持ったまま席に座りこんだ。
生徒会役員はマイクだけはと
奪い返した。

⏰:08/05/23 15:38 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#744 [ザセツポンジュ]
『静かに。静かに!1年1組の女子、貴重な意見をどうもありがとう。でも別に褒めているわけではない。これで、先生達も、体育館2階の皆様も、なんとなく今回この議題にした意味が分かったと思います。ただ、1組女子も他のクラスも他の学年も、考えを改めてください。している人だけが悪いのではなく、黙って見ている人も関係しています。そしてこの俺も、えらそうに言える立場ではありません。』

⏰:08/05/23 15:43 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#745 [ザセツポンジュ]
トミーは空気の変わりつつある
体育館の温度を感じ取り、
各学年、各クラスに質問を投げかけていった。

最後、3年3組ー。

『3組女子、2番。』

『石崎、、、みさです。』

石崎さんは、エノモトさんと人気を二分するくらいの
可愛さの目立つ女の子であるが、
どこかトゲトゲしい雰囲気を持っていた。

『石崎さん。クラス内で悪質ないじめが発覚した場合、石崎さんならどうしますか?』

『どう?って言われても、、、。』

『ほっときたいですか?』

『ほっときたいワケじゃないけど、この先もいじめは続いて行くと思います。』

『いじめている人が死ねば、そこでひとつのいじめは終わりますね。それでもまだ続きますか?』

『続きますね。全国全ての学校でのいじめをいちいち終わらすことは不可能だと思います。』

『全国区の話はしていません。身近なあなたのクラスでの話しをしているんです。』

石崎さんの尖った態度に
トミーも強気に出ていた。
この最終地点までやっとこぎつけたのに
今さらひるむワケにはいかなかったのだ。

⏰:08/05/23 15:58 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#746 [ザセツポンジュ]
『石崎さんのクラスで、いじめがあったとします。でも、3年生はあと1学期過ごせば卒業して学校もバラバラですよね。そしたらそのいじめはなかったことになると思いますか?』

『わからないんじゃないんですか?』

『石崎さんは、いじめに対してとても安易な考えと言うことでよろしいでしょうか?』

『そう思いたいならかまいません。逆に、木田くんはどうにかできるんですか?』

⏰:08/05/23 16:03 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#747 [ザセツポンジュ]
この白熱した言葉の交換に
目をいったりきたりさせる
生徒達の心臓は高鳴っていた。
そして石崎さんの投げかけた質問の答えを
トミーにたくし、ステージを真剣に見つめた。


『俺は、人をいじめると言う趣味はない。それは誓う。それにクラスにも恵まれています。俺のクラスには多分いじめはない。でもそれは多分としか言えません。この学校は田舎で、生徒も割りと少ないほうで、いじめなんかなさそうに見えるが、この学校であるまじき行動を目撃したヤツがいる。俺はそれを聞くまで、いじめには無頓着だったから、俺も悪い。』

⏰:08/05/23 16:15 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#748 [ザセツポンジュ]
『だけど、いじめがあるんだったら、見逃すワケにはいかないだろう。俺は、全国のいじめをなくしたいとか、そんな偽善ぶったことは言えないし、できない。自信はない。でも俺はこないだの演説で約束したんだよ。みんなは覚えてないかもしれないけど、俺は自分が言った言葉に責任を持ちたい。この学校の中だけでも、どうにかしたいと思ったから、今日この集会を開いている。』

⏰:08/05/23 16:23 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#749 [ザセツポンジュ]
『石崎さんは、どうにかできるんですか?と質問してきたけど、もちろん俺だけでどうにかすることはできない。それが答えです。他に言いたいことはありますか?石崎さん。』

いつもなら、ダルいだけの集会で
いつもなら、人の話もロクに聞いてなくて
いつもなら、話している人の顔すら見ない生徒達だったが

全員が、右後方にマイクを向けられて立ったままの
石崎さんの顔を、石崎さんの目を見ていた。

石崎さんは自分の目では入りきれないほどの数の
全校生徒の目を見たまま答えた。

『あ、、、、ありません。』

⏰:08/05/23 16:30 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#750 [ザセツポンジュ]
石崎さんは、自分が今までしてきたことを
全て思い出し、そして全校生徒の目を自分が自分に突き刺さったように感じて、席に座った。

『それでは最後です。3組女子、18番』

『、、、。』

『、、、。名前、どうぞ。』

『、、、。』

トミーもジョウジロウも分かっていたのだ。
あまりの衝撃に言葉も出なくなった
この女子の名前を。

『山田さん。山田さんには、最後の質問に答えてもらいたいんですが、答えられますか?』

山田さんは、ただただ首を横に振って
座ってしまった。

山田さんは、石崎さんと毎日毎日
一緒にいる。

二人は仲良し。
どちらかがどちらかに
支配されている。
二人は仲良し。

どちらかが命令して
どちらかが従っている。
二人は仲良し。

⏰:08/05/23 16:44 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#751 [ザセツポンジュ]
トミーが質問をしている最中、
ジョウは体育館のマイクを持って2階に移動していた。

そして、人を探していた。

ポン、ポン。

『ジョウジロウちゃん。』

『ワッ。、、、。きーさん。何やってんの?服、オシャレだね。この日のために用意した、、、え!にいちゃん!来たの!にいちゃんこんな昼間に外に出て大丈夫なわけ?』

『俺をひきこもりみたいに言うなよ、インドア派なだけだ。』

『そ、そう。って言うかまさかウチのじいちゃんまで来てるの?』

『ジョウジロウちゃん。あそこを見てみろ、ほれ。あの遺伝子がジョウジロウちゃんに影響してないかがワシはただ心配じゃよ。』

きーさんが指をさした先の
我が祖父を視界に入れたジョウは愕然とした。

立ち見の若くてキレイな誰かのお母様のケツの下に
地味に座り込んでいる。
気分が悪そうな小芝居まで地味に披露。

ジョウはきーさんの肩で一瞬涙を見せたが
探していたのは
自分ちのじーさん達ではなかったのだ。

⏰:08/05/23 17:00 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#752 [ザセツポンジュ]
くたびれてくたびれて
だけどそれも隠そうとしていて
隠して隠して
化粧をしている。

そんな派手目なお母様をジョウは見つけた。

顔は美人で、若い時は娘と同じくらい
人気だったのかなとジョウか思った。
とても悲しそうな顔をしているお母様。

⏰:08/05/23 17:06 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#753 [ザセツポンジュ]
もう1人は、気の強そうなお母様。

自分の育て方は決して間違ってはいないと
無理に暗示をかかえているような
難しい表情で呆然としている。
こちらは夫婦で娘の行事に参加している様子。

ジョウはこの二人の母親のいる場所を把握して
トミーからのパスを待ちながら
石崎、山田。両者の姿をしっかりと見ていた。

⏰:08/05/23 17:12 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#754 [ザセツポンジュ]
『では、次のコーナーに参ります。生徒のみなさんは、後ろを向いてください。お父様、お母様方の意見を聞いてみましょう。鈴木くが2階にいると思うんですけど。鈴木くん、どこですか?』

『はいは〜い。トミオちゃ〜ん。人気者のトミオちゃ〜んこちら鈴木で〜、、、』

ゴツン。
ゴツン。

『もうやめてよ、じーちゃん!』

孫と隣の家に住む老人からの
ゲンコツをくらったすーさん。

確かに鈴木くんに間違いはないが、
中学生の鈴木くんは、恥ずかしくて倒れそうだった。

⏰:08/05/23 17:21 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#755 [ザセツポンジュ]
体育館中から笑いが起こり
空気が和らいだ。
これもすーさんのおかげと言えよう。

『みなさん、今のは鈴木君のおじいさんなんですが、別に危険人物と言うわけでもないので、この集会が終わった後、袋叩きとかにはしてあげないでください。もう62歳ですしね。中学2年生のほうの鈴木くん。準備はいいですか?』

ジョウはマイクを取り返し
恥ずかしさを隠せないでいた。

『お見苦しいところをお見せしましたが、僕は将来こうなるつもりは1ミクロもありませんのでご理解頂きたい。準備オーケーです。』

クスクスと言う温かめの
笑い声。


『はい、は〜い。静かにしてくださ〜い。ジョウジロウちゃんのじいちゃんの話はまた3学期に学校通信でお伝えします。1,2年生はご期待くださ〜い。』

『もうトミーいいよ、その話。こっちの身にもなってください。一刻も早く進めてください。』

トミーとジョウの
ステージと2階からのやりとりを見て
仲の良さがみんなに充分に伝わったところで
後半戦を開始した。

⏰:08/05/23 17:39 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#756 [ザセツポンジュ]
>>729-755
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/357/

⏰:08/05/23 17:50 📱:PC 🆔:2EGMUVP.


#757 [ザセツポンジュ]
『大人の意見も突撃で聞いてみましょう。鈴木くん適当に2階にいるお父様お母様を選んでください。』

ジョウは、まず適当に少し小太りなお母様を選んだ。

『お名前をお願いします。』

マイクを向けられた小太りのお母様は
戸惑ってマイクに口を近づけた。

『小橋です。』

2年3組の方でのザワつきが目立つ。
そしてその中の少し小太りな女子生徒を見て
完全なる親子だなと言う事を、みな把握した。

⏰:08/05/28 13:22 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#758 [ザセツポンジュ]
『それでは質問します。小橋さんが学生の頃に、いじめはあったのでしょうか?』

小太り小橋さんは、
右上を眺め学生時代を思い出していた。
学生時代はもう少しスマートだったのだろうか。
、、、娘を見れば分かることだが。

『はい、私自身フフフこの通り見事な体型は昔から変っていませんので、からかわれたりは、まあ、ありましたね。でもみんな意気揚々としたクラスメイトだったので、陰湿ないじめと言った点での経験はありません。』

2年3組の小橋さんは下を向いてしまった。

⏰:08/05/28 13:40 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#759 [ザセツポンジュ]
トミーは質問を続ける。

『陰湿ないじめが同じクラス内で起こっていたら、小橋さんが今、学生だと想定して、どういう対応をされると思いますか?』

『、、、私事態もう大人ですので、無責任なことはできないと言う意識が当然ながらあります。なので、いじめがあったら全力で止めたいと思うのですが、キレイ事に聞こえるのかもしれませんね。だけど、今日のこの集会で、改めてそうしなければいけないと子供にも教えないと、と考えさせられました。』

小太り小橋さんの発言に2階からステージに向けて拍手が送られた。
2年3組の小橋さんも顔を上げてくれた。

⏰:08/05/28 13:42 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#760 [ザセツポンジュ]
『ありがとうございました。座ってください。ラテンダンスのDVDでもプレゼントしようかと思いましたが、その必要は無いようですね。』

トミーが冗談を言う間、ジョウはキョロキョロと次の相手を探していた。適当が一番困る。

『ジョウジロウ、ワシのところへはくるなよ!行くならきーさんとこにな!』

すーさんは照れたような気持ち悪い顔でジョウをうながした。

『、、、、。』

言われなくともそうするよ。と言う冷めた目つきで
我が祖父を睨んだあと、ターゲットを決めた。

『木田くん、次の質問いいですか?こちらのお父様です。お名前をどうぞ。』

人前では自分の主張を控えてきたと思われる
気の弱そうな風貌のお父様。

⏰:08/05/28 14:16 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#761 [ザセツポンジュ]
『田中です。よろしくお願いします。』

案の定、声の小さい男だった。
田中と言う名字はどの学年、どのクラスにも
だいたい存在するためか、ざわつきは見られない。

それよりも、必死に声を聞き取ろうと
体育館中のみんなが口を閉じ、耳を済ませた。


『田中さんに質問です。もしも自分のお子さんが、いじめられる立場にいて、相談を受けたとします。どんな事を言ってあげますか?』

体育館はシンとして空気の音が聞こえるほどだ。

⏰:08/05/28 14:23 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#762 [さちこ]
失礼します

>>1-200
>>201-400
>>401-600
>>601-800

⏰:08/05/28 14:23 📱:D705i 🆔:UtbZ04VI


#763 [ザセツポンジュ]
『、、、。内容によりけりえすけど、、、。理不尽な理由でいじめられているんだったら学校に行かなくてもいいと提案してしまうかもしれません。父親が、こんだけ気弱ですから、打ち明けて来た時は精一杯我慢した後のことだと思うんです。ウチの子の場合は。やめてともやめようよとも言えない人間もいると思います。それじゃあダメなんですけどね、、、。そりゃ、、、。活発で、意見もハキハキ言える子に育てたいですけどね。』

内気な生徒達はツバを飲み込んだだろう。
それくらい正直な意見を田中さんは述べた。

⏰:08/05/28 14:29 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#764 [ザセツポンジュ]
ステージにいる
トミーは少し間を置いてから
話始めた。

『俺は、自分でも、内気でも気弱でもないタイプの人間だと思っています。なので、俺みたいな性格側が、気弱な人の気持ちまで察せれるようになれば、いい方向に持っていけるのかなと。田中さん貴重なご意見ありがとうございました。今後考えたいと思います。座ってください。』

⏰:08/05/28 14:33 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#765 [ザセツポンジュ]
トミーはいろんな事を考えながら
大人たちに次々と質問をぶつけていった。

そしてトミーはジョウに事前に決めていた手のサインで合図を送った。

ジョウはまず
顔は美人だけど、
とても悲しそうな顔をしているお母様の元へ向かった。

『よろしくお願いします。お名前をどうぞ。』

ついに来たかと言う
ため息まじりの笑みで席を立った。

『どうも、恐縮です、石崎と申します。』

トミーは石崎さんの母を
ステージからしっかりと見つめていた。

⏰:08/05/28 14:42 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#766 [ザセツポンジュ]
『はい、質問します。石崎さんはいじめを受けている生徒の事をどう思われますか?』


石崎さんは顔を下に向けて息を吸った。

『いじめられる側にも問題があるという意見もあると思いますが、そのいじめられる理由がくだらないことであれば、いじめられる子達って言うのは悪くないんだと思います。ただ運が悪かったんだと。』

『では、いじめをしている側についてはどうお考えですか?』

石崎さんは、前を向いた。

『最低ですね。、、、。人をいじめてまでも優位に立ちたいというまでの気持ちを止められなくした親の教育にも問題があります。、、、。子育ては難しいものです。私にも原因があり、そうすることによって、外で誰かが傷ついているんだと思うととても責任を感じます。』

自分の娘の変化、親なら気づく事だろう。
石崎さんは娘を思い、自分を責めた。

そしてとても悲しい表情で立っていた。

⏰:08/05/28 14:54 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#767 [ザセツポンジュ]
トミーは
何も、あなたの娘さんが
人をいじめているんですよ、とは
言っていないのに、

苦しそうに意見を述べる石崎さんの悲しい顔を見て
心が痛んだ。
そして、かける言葉がなかった。

『、、、ありがとうございました。』

『はい、どうもありがとうございました。』

石崎さんからのありがとうと言う言葉が
なぜかトミーの頭の中をぐるぐると回る。

一方ジョウも
自分の好きな子をいじめている
リーダー格の母親の
困り果てて弱り果てている姿を隣で見て
胸が締め付けられるのだった。


3年3組の石崎さんはこみ上げる涙をぬぐうこともなく
自分の母親を直視することもなく
表情変えず、ただただ、どこかを見つめていた。

⏰:08/05/28 15:05 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#768 [ザセツポンジュ]
トミーは気を取り直し、
ジョウのいる場所を目で追った。


『では最後の質問です。鈴木くん、いいですか?』

『はい、最後はご夫婦二人共の意見を伺いたいと思います。お名前よろしいですか?』

先ほど目をつけておいた夫婦のそばへ行き
お母様のほうにマイクをかたむけた。

夫婦は二人でゆっくり席を立ち

生徒会役員のマイク係が
気をきかせて飛んで来た。

そして夫婦のお父様側に立ってマイクを近づけた。

『あ、山、、、』

「山田で、、」

『山田です。』

「す、、、。」

両側からマイクを向けたのも悪いが
この夫婦、確実に緊張していて、息も合っていない。
お見合いだったのだろうか。

⏰:08/05/28 15:17 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#769 [ザセツポンジュ]
『とても仲良し夫婦のようですね。声もそろって素敵です。それでは最後の質問をします。』

さっきの重い空気を振り払うかのように
生徒達は無理に小さく笑った。

『家で、いじめをテーマにしたような話を子供達とされていますか?』

ジョウはお母様にマイクを。

『そうですね、どことなくはしていますね、フフフ。』

お父様はマイクを向けられるも
苦笑いの奥様が心配の様子。

「いや、普段、勉強の事ばかりを言いすぎていたかと、、、。」

お母様はジョウからマイクを奪い取った。

『いいえ、勉強もそこそこに家族の団欒も欠かしてはおりません。』

「でも塾に通っていて、夜が結構遅いし、、」

『朝ご飯も一緒に食べて話したりしています。』

「朝は僕の方が早く家を出てるから、、、」

『わ、わたくしは。学校の事など、いつも話していますよ、お勉強のことももちろん言いますけどね。』


ありきたりだが、奥様は隣のご主人のおしりをつねって
余計な事言わなくていいから!と小さい声で忠告している。
夫婦での会話が始まり
ご主人のほうにも直接マイクを渡した。

⏰:08/05/28 15:29 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#770 [ザセツポンジュ]
『ちょっと、ちょっといいですか〜。質問します。それではお父様の方に質問します。』

トミーは奥様にさまたげられてしまうお父様の意見に重点を置いた。

『家族のだんらんは、やはり夕ご飯の時間なんですか?』

「いや、それが塾でいないんですよね。勉強ばっかりしていて最近は正直話してませんね、イテテ。」

またおしりをつねられた様子。

『お父様は本当はどうすれば一番いいとお考えですか?』

「時期も時期ですし、年頃なので、あんまり僕の方が近づくと嫌がっちゃって、、、。でも時期を越えれば、また仲良く食卓を囲みたいです。」

お母様は、つねろうとした手をゆっくりおろした。

「いろんな話もしたいけど、時間が合わない日が続くと、話しかけるタイミングまで分からなくなる。同じ家なのに、遠い島で離れて暮らしているみたいな。落ち着けば、また話したりできればなと。黙っていた僕も悪いですね、今回のことは。」

お父様はお母様の顔を見て
申し訳なさそうに笑った。

⏰:08/05/28 15:40 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#771 [ザセツポンジュ]
トミーはステージから拍手を送った。

トミーにつれて今度は1階の生徒達が
2階に向けて拍手を送った。

その時校長はおもしろくない表情で
手をたたいていた。

『次は、ハゲ散らかしたお前の番だ。』

トミーはマイクを一瞬オフにして
拍手の音の中
校長にメッセージを送った。

そしてスイッチをオンにする。

『素敵な家族。みんなの前でこれだけ言えるなら安心できますね、多分。多分ですけど。はい、それではこのコーナーは終わりです。今一度拍手を。』

嫌味を言いつつも
フィナーレの準備を始めた。

ジョウはステージに戻り
トミーに近寄った。

⏰:08/05/28 15:47 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#772 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウちゃん、俺オシッコ行きたいんだけど。』

『行ってきなよ。・・・まさか緊張してるのトミー。』

『バカかお前。お前んちのじーさんから梅昆布茶を2リットルもらったんだよ。昨日な。』

『全部飲んだの?』

『バカか、お前。朝一で全部飲んだよ。』

『飲んだんだ。。。軽蔑するよ。』

『名誉なことだな。頼んだよ。』

トミーはジョウと交代した。
そして、堂々と真ん中を歩き
人々の期待を裏切り
トイレに入り用を足した。

そして何食わぬ顔で同じルートを歩き
ステージのすぐしたで待機した。

フィナーレはラスボスの出番だ。
気合を入れろよ、木田、鈴木。

⏰:08/05/28 15:56 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#773 [ザセツポンジュ]
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/357/
>>757-772

⏰:08/05/28 17:00 📱:PC 🆔:R.qPL9/.


#774 [ザセツポンジュ]
『それでは、最後のコーナーに参りたいと思います。』

ステージに立ったのはジョウだった。

トミーはステージを降りたすぐそばで
マイクを持って待機している。

⏰:08/06/02 15:14 📱:PC 🆔:OOkjqJBY


#775 [ザセツポンジュ]
『まずはじめにお話しておきたい事があります。みなさんニュースでいじめによる自殺報道があった時、その学校の校長先生が大体何と答えているか、分かりますか?僕が思うに、ウチの学校ではいじめなどありませんとか、報告は受けておりませんとか、そういう答えが返ってくるパターン多いなと感じるのです。』

生徒達はみな校長の方をチラチラ見ていたが
校長の近くに立っていたトミーは
勘違いしてかっこつけていた。

⏰:08/06/02 15:20 📱:PC 🆔:OOkjqJBY


#776 [ザセツポンジュ]
『今回、本当は例年通りの議題で行う予定でした。それはなぜかと言いますと、この集会を開く前に校長先生の許可がいるんです。そこで生徒会長である木田くんが校長先生にいじめについてのレポートを提出しにいった時の事。校長先生は企画書のレポート見るなり“却下”とだけ答えたと言います。木田くんはそこで、そう言うなら例年通り行いますと頭を下げたけれども、納得がいかなかったため今に至る。と、こういうわけです。』

⏰:08/06/02 15:27 📱:PC 🆔:OOkjqJBY


#777 [ザセツポンジュ]
体育館中の目が、校長に集中的に集まり、
軽蔑の空気を漂わせていた。

トミーはその時ようやく
自分の勘違いに気づいた。

777

⏰:08/06/02 15:29 📱:PC 🆔:OOkjqJBY


#778 [ザセツポンジュ]
『いい機会ですので、我が校代表する校長先生にインタビューしたいと思います。マイク木田くんお願いします。』

トミーは手をあげた。
懲りない田舎女子から歓声が沸き起こった。

『マイク木田です。マイク木田です。』

トミーは機械的な声を発した後
普通に歩いて校長のそばに立った。

『校長先生。わたくし生徒会長の木田と申します。ご起立願えますか?』

トミーは紳士のように手を差し伸べたが
校長先生は無視してゆっくりと立ち上がった。

⏰:08/06/02 15:35 📱:PC 🆔:OOkjqJBY


#779 [ザセツポンジュ]
トミーはステージのジョウに手を上げて合図した。

《用意して待ってろ》

の合図。
ジョウはステージ裏にまわり、
一番大切な“資料”を手に取った。

『それでは質問します。校長先生。父兄さん達が見ておられますので、正直にいさぎよく答えてください。いいですね?』

『木田、ふざけるのもいい加減にしろ。』

校長はマイクには入らない小さい声でトミーに忠告して睨んだ。

『はい、今校長先生は、小さい声で、木田、ふざけるのもいい加減にしろと言われましたが、予定を変更せず、質問したいと思います。あなたは、俺が校長室へ行った時、却下とだけ答えましたね?』

⏰:08/06/02 15:44 📱:PC 🆔:OOkjqJBY


#780 [ザセツポンジュ]
静まり返る体育館。
オロオロとした空気が全体を包んだ。

『ああ。』

校長は短く答えた。

『なぜ却下にしたんですか?』

『資料がうすっぺらだったからだ。』

『いいわけはいいんですよ。なぜ却下にしたのでしょうか?さあお答えください。』

トミーは自分の否を思い切り高い棚に上げ、
ふざけているのかそうでないのか
きわどい感じで
校長にクイズ風で投げかけた。

今ふざけている場合ではないのだ。

⏰:08/06/02 15:51 📱:PC 🆔:OOkjqJBY


#781 [ザセツポンジュ]
『。。。。』

校長はギロっと
トミーを睨んだ。


トミーは、マイクを
校長の鼻の下に持って行った。


『もう一度だけ質問します。なぜ、却下にしたんですか?』


そう言ったトミーは
またもや校長の鼻の下に
マイクを持って行った。
笑いをこらえる生徒もいたが
空気を読んで下を向いて我慢していた。

この男、空気の読まなさも学校1である。

⏰:08/06/02 21:15 📱:W51CA 🆔:qzJ1Dt5o


#782 [ザセツポンジュ]
それでも何も答えない様がこの学校を代表する校長の姿であって、果たして良いのだろうか。

トミーは
見かねてしゃべりだした。

『校長先生は、校長室で何をしているんですか?学校全体を見守っているんですか?そもそも校長先生の仕事は何なんですか?いじめなんてありえないとでも思っているんですか?何のための校長先生なんですか?責任のがれするために何か大きい力を使うつもりなんですか?』

⏰:08/06/02 21:21 📱:W51CA 🆔:qzJ1Dt5o


#783 [ザセツポンジュ]
ジョウは裏で
丸めた大きな1枚のポスターを抱えて
耳をとぎすませていた。

(ボクがトミーの背中を押したんだ。ボクがトミーの話に乗ったんだ。エノシタさんにかっこつけれると思って乗ったんだ。ボクは浅はかだ…浅はかだけれども絶対最後まで成功させなければ。)

⏰:08/06/02 21:25 📱:W51CA 🆔:qzJ1Dt5o


#784 [ザセツポンジュ]
-----------------

トミーの率いる
2年生新生徒会役員と
3年生旧生徒会役員との
確執は深かった。

『おい西田トキムネ。今日こそは口出しするなよ。』

嫌でも生徒会室に集まらなければならなかった新旧生徒会役員。

トミーは
先生達の顔色しか伺わない、旧生徒会会長の
西田トキムネ氏を、
毛嫌いしていた。
それはジョウも
同じだった。

西田はえらそうな態度で
腕を組み、トミーを睨んだ。

『木田。お前いい加減にしろよ。好き勝手やっていると報告するぞ。』


トミーは立ち上がった。
『新生徒会役員、移動します。場所は3階の資料室。西田達はここに残ってグチグチブツブツ勝手にやってろ。先生にでも警察にでもお母さんにでもいいつけていればいい。』

⏰:08/06/02 21:35 📱:W51CA 🆔:qzJ1Dt5o


#785 [ザセツポンジュ]
ジョウはエノシタさんの困った顔を見ていられないほど
複雑な心境だった。


だけど、その時
ジョウは黙って
資料室に向かう事が
エノシタさんのためにできる最善の策だと思い


トミーに従ったのだ。

それから
新生徒会役員計6名の
会議する場所は
生徒会室から3階資料室に変わった。

⏰:08/06/02 22:26 📱:W51CA 🆔:qzJ1Dt5o


#786 [ザセツポンジュ]
『生まれ変わっても西田トキムネと言う名前にだけは生まれたくないな。ニもシもダも嫌だ。くそぅ絶対俺の方が西田よりストU強いのに!た〜つまきせんぷうきゃく!た〜つまきせんぷうきゃく!た〜つ…』



『トミー、もう!いい年して何やってんの。早くやろうよ。みんな集まってくれてるのに。』


トミーは
ふざけて
竜巻せんぷうきゃくを
ジョウにおみまいしているが


狭い資料室の方が
会議しやすかっただろう。
気も楽だっただろう。

⏰:08/06/03 00:48 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#787 [ザセツポンジュ]
『まず、西田達に渡すダミーの企画書を作る人と、ぶっつけ本番の議題での進行を考える人と、1・5でふたてに別れよう。』


『トミー!もう、おべんちゃらはいいってば。3・3でいいんでしょ。じゃあボクは新企画の方にまわる。』


『じゃあお〜れも!生徒会長だからな!当然よ!あとひとり、入りたい人は勝手に入ってきてみほ。』


こうして

木田、鈴木、
生徒会役員の
公文式に通っている頭の良い佐野くんは

新企画班。

残る3人は

ダミー企画班に回った。

『ダミー企画班。もう、西田達が去年やったやつモロパクりでさっさとすませて、こっちに入って来て一緒に作戦ねろう。』

⏰:08/06/03 00:56 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#788 [ザセツポンジュ]
日がたつごとに
テキパキと事を
済ませ、

ダミー企画班が
新企画班にまざった時

ジョウとトミーは
作戦をみんなに伝えた。
そして
エノシタさんの
クーポン雑誌いじめ問題を打ち明けた。

絶対に
外に漏らさないように

ワイロとして
生徒会役員の男子には
人気AV女優の新作を
トミーが贈呈し

生徒会役員の女子には
今までひそかにお世話になっていたエロ本を
ジョウが贈呈した。


『え!鈴木くん、ガラじゃないんだけど!私、遠慮する!』


ウケ狙いの為に
持って来たのに
受け取るどころか
どん引きされてしまい、
ジョウは
この割とブサイクな女子達の冗談の通じなさに
不安を覚えた。

⏰:08/06/03 01:41 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#789 [ザセツポンジュ]
>>774-778
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/357/

⏰:08/06/03 01:45 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#790 [ザセツポンジュ]
会議の3分の2は
ストリートファイターネタでふざけ続けた
トミーだったが

残りの3分の1は
ジョウと同じくらい
真剣に取り組み
的確な作戦を公言した。

こういうところは
なぜか隣のじーさん
鈴木ひとしに似ている。

放課後、会議のために
集まる資料室に
最後まで残るのは
変なじーさんを持つ
少年2人で

家に持ち帰ってまでも
どちらかの家で
話し合いをした。

時に7791カフェに
立ち寄ることもあった。

⏰:08/06/03 18:20 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#791 [ザセツポンジュ]
『ボクは小夜子ストロベリー。』

ジョウはいつも通り。
トミーもいつも通り。

『俺はちーちゃんとの男女交際。』


『梅昆布茶ね。かしこまりました。』

ちーちゃんは
ガキには目もくれず
いつも通りニコっと笑い
準備をした。


2人はいつも通り
“七夕の席”に座った。

『ちょっと待って。ちーちゃんて何で俺のこと見ないわけ?頭おかしいよね多分。俺?俺の頭は正常だよね。』


『誰としゃべってるの、トミー。あきらめなよ。エノモトさんがいるじゃない。』


『まぁな。エノモトさんヤリマンかもしれないけども可愛いしさ。仕方ないよね、ジョウジロウちゃん。』


『うん。』

⏰:08/06/03 18:28 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#792 [ザセツポンジュ]
ジョウは
ただただ
小夜子ストロベリーが
来るのを待っていた。

『でさ、ジョウジロウちゃんはエノシタさんが好きだもんね。』


『うん、うん。…うん。』


トミーは
ジョウに顔を近づけてまで
わざとらしく驚いていた。


『えぇえ!!!お前、お前“うん”て3回言うほどエノシタさんが好きなの?』


『お待たせしま…』


『え!え!ちーちゃん!ちーちゃん!うちの隣のジョウジロウちゃんがさ!恋をしちゃったんだって!』


『はい、梅昆布茶。トミーも毎日ジョウくんといるんだから、分かっていたんでしょ。からかうのはやめてよね。』


ちーちゃんは
そんじょそこらの
田舎女子中学生とは
違うのだ。

⏰:08/06/03 18:35 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#793 [ザセツポンジュ]
『はぁい。もうしませーん。ちーちゃん怒らないで。で、でさ!そんな恋をしちゃった鈴木くんさ!今回の集会、親達も来る参観日だしさ、絶対的にミスは許されないわけよ。』


トミーは熱そうに
梅昆布茶に口をつけた。

『そうだよね。石崎さんのお母さんも山田さんのお母さんもいるだろうしさ。』


ジョウは小夜子ストロベリーをパクっと食べた。


『なぁ…。そうだよなぁ。どんな感じの親なんだろう。あちち…。嫌な感じな親なのかな。』


『う〜ん。嫌な感じなのかなぁ。』


『ツンケンしててさ、ウチの子に限ってそんなことはしてません的な感じだったらコテンパンにやってやろうぜ。例えばサイコクラッシャーとかでな。』

⏰:08/06/03 18:45 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#794 [ザセツポンジュ]
『トミー、最近ストファイネタにもっぱらハマってるね。やりたくなるね。』

『おい、お前。早く食え。ほうばれ。今からウチでストリートファイターごっこだ!』

トミーは猫舌にも
関わらず
無理して急いで飲んだ。

『ごっこ?ごっこなの?せめてスーファミにしてよ。』

ジョウもつられて
パクパクと口に入れた。

せっかく甘いのに
もったいないな。と
思ってはいるのだが。

『ごちそうさま!ばいばいちーちゃん!お釣りはちーちゃんにあげる!』

『フグっ。ファイファイヒーヒャン…』


『2人で500円です。トミー、お釣りありがとう。フフ。』

ちーちゃんはトミーが置いたピッタリ500円玉をレジの中にしまった。


こうして2人は木田家へと急いだのだった。

⏰:08/06/03 18:57 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#795 [ザセツポンジュ]
『腹立つなぁ、きーさん。ズルいぞそんなちまちましやがって。』


こちらは木田家。
きーさんの部屋で
老人2人は
将棋のコマで
“コマ崩し大会”を
開催していた。


『すーさん。ほれ、早く。コマをうそつき空ちゃんだと思って。』


『ウヒャヒャ。空ちゃんは可愛い子よの〜。デヘヘ、むぅ…どこにするかのう。う〜ん……ん?』


ガシャグシャ。


すーさんは突然
コマの山をぐしゃぐしゃに崩した。


『おい!お前今うそつき空ちゃんと言ったな!言った!絶対に言ったんじゃ!ワシは昨日確実に耳クソを取った!だから聞こえたことは間違いじゃない!クゥオンノ〜!!!』

すーさんは地道に
ひとつずつコマを
投げて
きーさんに当てつけた。

⏰:08/06/03 19:08 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#796 [ザセツポンジュ]
『…飛車…ん?…歩兵…歩兵…これはと…歩兵…角行…桂馬…すーさん、すーさん。こんなんじゃ効かんぞ。もっと強い奴を投げつけて来い。』

すーさんは憎しみを込めて
最後にひとコマ投げつけた。

パシン!


『ん?…金…。フハハ。“金”?金たま鈴木。』



すーさんは怒り狂ってきーさんを殴ったが、年のせいか
なぜ、一体なぜ怒り狂っているのかは忘れてしまっていた。



バタバタバタバタ


ガチャ。


『じーちゃんただいま!』

『きーさん、おじゃまします!』

⏰:08/06/03 19:30 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#797 [ザセツポンジュ]
少年達2人のご帰宅だ。
『おや!ジョウジロウちゃん!よく来たねぇいらっしゃい。』

バタン。

2人はストリートファイターのために
挨拶もそこそこ
トミーの部屋へと急いだ。
そこですーさんの怒りは
さらにヒートアップした。

『おい、見たか!きーさん!ワシに挨拶もナシじゃ!ジョウジロウのやつめ!ワシにおじゃましますくらい言え!』


『すーさん、ここはワシの家だ。それにジョウジロウちゃんはあんたの孫だよ。』


『いや!もうそんなこたぁどうでもいい!トミオちゃんですらワシに声もかけん!いかん!いかんです!』

『町内みなすーさんと話せば性病になると思っとるんじゃよ。』

きーさんは
将棋のコマを一個一個拾った。

⏰:08/06/03 19:35 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#798 [ザセツポンジュ]
『はぁ!!!?なんたる不謹慎!きーさん!トミオちゃんの部屋へ突入じゃ!』


バタン。
すーさんは足の裏に
将棋のコマを
2つ3つ踏んづけたまま
トミーの部屋へ移動した。

きーさんは
片付けもそこそこに
好き勝手やられちゃ
困ると、あとを追いかけた。

⏰:08/06/03 19:39 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#799 [ザセツポンジュ]
『ヤァ!ヤァヤァヤァヤァヤァ!ヤヤヤヤヤ!』


『もうトミーったら、チュンリー使ったらひゃくれつキックしかやらないんだもんな!うぅ…』


『ヤヤヤヤヤ!ヤァヤァ』


『いちいち声に出さなくてもいいよ、トミー』


『ヤァヤァヤァヤァヤァ!』


ガチャ!


『ヤァ……ヤァヤァヤァヤァヤァ!!』

トミーは
部屋に入って来たすーさんを2度見して、プレイを続けた。

ジョウは見向きもしなかった。

『ヤァ!じゃないわ、クソガキどもめ!』

すーさんは足の裏に
貼りついた将棋のコマを
2人に思いくそ投げつけてテレビを消した。

『いて!』

『いてて!じーちゃん何してんの?付けてよテレビ!』

⏰:08/06/03 19:46 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#800 [ザセツポンジュ]
すーさんは少年達から
コントローラーを取り上げた。


『まずは、ジョウジロウ。きさま、ワシに挨拶もなしにインベーダーゲームか!』

ジョウジロウの胸ぐらをつかみ鼻息を荒くさせた老人。

『違うよ、ストリートファイターだよ。ボクはエドモンド本田。トミーはチュンリー…』


『パキスタン塩田でもトミーフェブラリーでもどっちゃでもいいわい!』


ゴツン。


『うぅ…。やりやがったな木田シゲル…』


理不尽なすーさんは
きーさんからゲンコツをくらった。

きーさんのゲンコツは
痛いのだ。

⏰:08/06/03 20:33 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#801 [ザセツポンジュ]
『そんなことより、トミオもジョウジロウちゃんも最近帰りが遅いじゃないか。部活か?』

きーさんの問いかけに
2人とも首を横に振った。

『女か?』

再び首を横に振った。


ゲンコツのダメージから、なんとか起き上がったすーさんは
きーさんにもたれかかった。

『ジョウジロウが女なワケないじゃろ。どうせ古本屋でエロ本の立ち読みでもしとるんじゃよ?このいかれぽんち!変態!』

弱ったすーさんを
平気な顔で再びどつき

きーさんは2人の顔を見た。


『おや?隠しごとかい?』

少年2人は顔を見合わせて笑って首を横に振った。

⏰:08/06/03 20:39 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#802 [ザセツポンジュ]
『会議だよ。今度学校の参観日に集会があるんだ。それの話し合い。』

そう言ってトミーは
テレビを付けて
ゲームをセットした。

『ほお!ジョウジロウちゃんもその話し合いか!変態ではないんだな!』

ジョウはうなずき
トミーの横に座って
ツーコンを握った。


『きーさん、見に行こう!まだギリギリきれいなお母さんも何人かはいるだろう!』

『それはどうでもいいが、孫の晴れ舞台に家でワイドショーを見ているわけにはいかんからな!』


トミーとジョウは
いったんゲームを止め

くるっと振り返り
お互い、我が祖父を見つめ、声を揃えて言った。


『絶対に来ないでね。』

⏰:08/06/03 20:47 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#803 [ザセツポンジュ]
------------------


(あぁ、とんでもないことをボクはしているんじゃないだろうか…今さら逃げられない…)



『。。。。』


校長は黙ったまま
次第に少し焦りだしていた。

トミーは
校長の焦りを見逃さなかった。


『では、これを見てくれたら校長も何か分かると思います。ジョウジロウちゃん!!アレ持って来て!』


(き…来た…。)



トミーの少し大きな声に生徒達も2階の父兄達にも緊張感が漂った。

⏰:08/06/03 20:52 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#804 [ザセツポンジュ]
ジョウは
丸まった紙を抱えて
立ち上がった。


そして
近くにいる
エノシタさんを見た。

心臓もバクバク鳴る中
暗いステージ裏で
エノシタさんは
ジョウの肩にふれた。


『いってらっしゃい。』

こくん。と頷いた
14歳の少年。


ジョウの
心臓の高鳴りを
エノシタさんと
半分こできたなら。



(ボクはエノシタさんのことが好きなんだよ。とても好きなんだよ。)

⏰:08/06/03 21:01 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#805 [ザセツポンジュ]
ジョウは

エノシタさんの目を
しっかり見つめたあと



歩き出した。


体育館中の視線が
ジョウに向けられている。


ラストボス。

校長とトミーの
目の前に立ち、
生徒達に背を向けた。

(ジョウジロウちゃん、お疲れ様。)

トミーはジョウを
見守った。


そしてゆっくりゆっくり丸めていた紙、大きなポスターを


広げて行った。

⏰:08/06/03 21:09 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#806 [ザセツポンジュ]
『え?何?』
『何が書いてあるの?』
『な〜に〜??』


覗こうとしても
見られないポスターに
生徒達はもどかしさを
あらわにした。

皆がザワつくなか
ポスターで顔の隠れた校長。
目をひんむいて
口をガクガクさせていた。


トミーとジョウは
しっかりと見たのだ。

ラスボスを倒す瞬間を。

⏰:08/06/03 21:13 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#807 [ザセツポンジュ]
『これを、いじめととらえますか!アートととらえますか!』








ジョウの声が
最後のとどめをさした。

⏰:08/06/03 21:15 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#808 [ザセツポンジュ]
-------------------

オレが作ったこの
ポスターは

エノシタさんが
100人いる。

ジョウジロウが、オレの屋根裏部屋を尋ねて来たんだ。

たった1人の弟だ。

いつもと様子が違うのは察しがついた。

その時俺は
アンディーウォーホルの作品集を見て浸っているところだった。

⏰:08/06/03 21:20 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#809 [ザセツポンジュ]
『…にーちゃん…ちょっと頼みがあるんだ。』


オレの弟は
優しい奴なんだ。

だけど少し内気で
不器用なだけなんだな。

14歳の少年は
ビニール袋に集めた紙くずを、ひっくり返してきた。

オレはその紙くずを
ひとつひとつ手にとって
見てみたんだ。

クーポン雑誌で
美容室の広告塔になったエノシタさん。
卑猥な言葉を書き殴られたエノシタさんもいれば、ビリビリに破られているエノシタさんもいて、落書きされているエノシタさんもいた。

⏰:08/06/03 21:29 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#810 [ザセツポンジュ]
『ボクね、自分でやりたかったんだけど、うまい使い方を思いつかなくって。』

ショボンと肩を落とすジョウジロウだったが


ちょうど見ていた
アンディーウォーホルの作品集のこともあり

必ず素敵な
1枚のポスターにすることをオレは約束した。


『充分だよ。こんだけ回収したんだもの。よくやったよお前。』


毎日毎日
気づかれないように

ゴミ箱を一個一個
見回ったのだろうか。


そして初めて好きな子ができたことも思春期の少年には打ち明けにくかったのではないだろうか。

⏰:08/06/03 21:35 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#811 [ザセツポンジュ]
少年は少年なりにいろいろ考えていくにつれ、時間がなくなってしまったのだろうか。

あれこれ憶測を巡らせていくうちに
自分の弟だが
だんだんかわいく思えてきたオレだった。

アンディーウォーホルの
代表的な作品に
同じような
コカ・コーラのビンを
ひたすら描いているものがある。

だけど、よく見れば違う。

その意味を考えさせられるポスターに仕上げようと思ったんだ。
案はモロパクリだけれども。

⏰:08/06/03 21:42 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#812 [ザセツポンジュ]
同じ顔のはずの
クーポン雑誌のエノシタさんが

誰かの手が加わって
違う顔に変わっている。

いじめたみんなが
いけないアートをほどこした

エノシタさんが100人。
それをかき集めた
ジョウジロウがいて
それを受け取ったオレがいる。

一枚の厚紙に
エノシタペーパーが100枚並んで問いかける。


『これを、いじめととらえますか?アートととらえますか?』

⏰:08/06/03 21:48 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#813 [ザセツポンジュ]
>>790-812
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/357/

⏰:08/06/03 21:50 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#814 [ザセツポンジュ]
=============
年月を重ね、見開いた目で
世界を飲み込む。
知識と言う種ばかりを
埋め込んだ
脳みその使い道は
いかほどなものだろうか。

都合の悪い物事は
焼却炉へと飛び込ませ
蓋を閉めたその先
灰色の煙を見送る
ハゲ散らかした頭よ。


少年の思春期爆弾を
いざ受け止めよ。

⏰:08/06/06 12:05 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#815 [ザセツポンジュ]
唇を震わせ、
体中全ての神経を
困惑させ
自分の愚かさを知るため
今宵、育毛剤と言う名のシャワーよ

奴に魔法をかけて。

目は何の為に
余計な物を見ない為に
鼻は何の為に
近道をかぎわけるために

口は何の為に
嘘をこぼし、自分を弁護する為に、、、。

戻り先はふりだし。

⏰:08/06/06 12:05 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#816 [ザセツポンジュ]
好きな子が泣いていたら。
大切な人が応援してくれていたなら。
たったひとりでも味方でいてくれたなら。

もしかして
救われただろうか。
救えたのだろうか。

向き合うことを忘れた
大きな子供達。

背中ばかりを追いかけて叫んだ
小さな子供達。

思春期爆弾が
手元に届いた時

使い道は、自分次第。
自分の為に
誰かの為に。

決められるのは
自分だけ。

⏰:08/06/06 12:06 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#817 [ザセツポンジュ(仕事中のためPC)]
============
最終章 クリスマスの夜に。
============

⏰:08/06/06 12:08 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#818 [ザセツポンジュ]
鈴木家の床暖房は

とても温かい。


『きーさん寒いよう。わしゃ寂しいよう。』


すーさんはきーさんにまとわりつき
寒さを忍んでいた。

『ええい!老いぼれがベタベタ触るんじゃないよ!酔っ払い!』


昼間からする事もなく
酒を飲んだくれている老人二人。
我が孫に、家から追い出されたと言う
かわいそうなこの老人
木田シゲル62歳。

⏰:08/06/06 12:45 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#819 [ザセツポンジュ]
『きーさん、ワシはな、きーさんの事が、、、、す、、、す、、、、』


ボコン!ゴツン!

お決まりのゲンコツを食らわしたが
何度殴られても、こたえないこの老人
鈴木ひとし62歳。

『その先が何語であってもそれ以上口に出すなよ!通報するぞ!』


すーさん。
娘が設計した
老人にとって心臓やぶりの
階段を、チョボチョボ上がり
ジョウの部屋を開けた。

⏰:08/06/06 12:45 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#820 [ザセツポンジュ]
ボコン!

『い、痛い!なんだよ!ノックしてよ!』

意味不明に殴られた事よりも
ノックをしなかった我が祖父に
腹を立てていた。

『今な!きーさんが来てる。』

『分かるよ。そのたんこぶ見れば。で、何?』

『トミオちゃんが女を連れ込むからと行って追い出されたそうだ。で、もっと遠くへ行って死ねばいいのに、すぐ隣のウチへ来たんじゃよ。その辺どう思うかね?ジョウジロウ。』

すーさんは、思い出したかのように
頭をさすりだした。

『ふーん。女を連れ込む時は追い出されるのか、きーさんは。』

上を向いて思い浮かぶのは
エノシタさんのことばかり。

⏰:08/06/06 12:46 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#821 [ザセツポンジュ]
『お前な、トミオちゃんは立派なのは充分承知の上で言うが、ヤラハタ決定だぞ。お前よ、そこのお前!鈴木さんちのジョウジロウちゃん!ワシは近所の人に言われるようになるんじゃ。あ〜れ〜ヤラずにハタチを迎えたお孫さんをお持ちの鈴木さ〜ん、ごきげんよいかが〜?そう言えばこないだ、、、』

『どうでもいいけど用事は何なの?』

ホロ酔い気分のジジイにかまっていられる気分じゃないのだ。

バコン!

『ただちに、去年のお年玉を崩して、クリスマスケーキを買いに行け!ついでに壁にもたれかかった娼婦に抱かれて来い!分かったな!』

『はいはい。』

ジョウは頭をさすりながら財布を持ち
ジャケットをはおり、マフラーをまいた。

タッタッタッタッタッタ、、、。

『あいつ、、、。階段をタッタタッタおりよって。年寄りの苦労も知らずに。』

⏰:08/06/06 12:46 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#822 [ザセツポンジュ]
すーさんはまた、一段一段チョボチョボと階段を
降りるのであった。


『ジョウジロウちゃん、メリークリスマス!』

きーさんは、さも我が家かのように
堂々とリビングでくつろいでいた。

『やあ!きーさん!メリークリスマス!』

挨拶を済ませたジョウはそそくさと玄関へと向かった。

『ちょちょちょ〜ちょ〜っと待て。どこに行くんじゃ?』

ジョウはスニーカーのつま先を
トントンと2回。

『スペシャルゲストのきーさんとパーティーでもしようかと思ってちょっとケーキ屋までね。』

⏰:08/06/06 19:31 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#823 [ザセツポンジュ]
『そうか。ジョウジロウちゃん、クリスマスじゃ、おこづかいをあげよう。』

きーさんはポケットから出したお札を
ジョウに渡した。

『えええええ!1万円も!ウチのじーちゃんとは大違い!ありがとうきーさん!ケーキ何がいい?』

『モンブランとカルピスな。』

『りょ、了解なまこん!』


冷たい風が吹き、マフラーに顔をうずめた少年。
行って帰る頃には夕日も沈み出すだろう。
肌を刺す寒さもよそに、
うっすらと浮かんだケーキ屋さん。
道は定かではないが
エノシタさんの顔が思い浮かぶ。

ジョウはケーキ屋まで
小走りで向かった。

⏰:08/06/06 19:31 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#824 [ザセツポンジュ]
(エノシタさんなにしてるかな、今日。エノシタさんちサンタさん来たかな。。。なんつって。)



カランカラーン。


『ぎゃっ!うわ!!!!!!』

ケーキ屋の扉を開き、
マフラーから顔を出したジョウは
ベタにも自分のほっぺたを叩いてしまっていた。

『、、、。そんなにびっくりしないでよ。ジョウくんこんにちわ。』

かわいい手袋をした
エノシタさんが、目の前にいる。

『な、な、なななな、なにしてんの?』

『ケーキを、、、買いに来て、、、』

『そっそうだよね、ケーキ屋だもんね。バカだよねボク。頭おかしいよね。ハハ』

ジョウは並べられたケーキをガラスケース越しに覗き込んだ。
エノシタさんもすぐ隣でジョウと同じようにケーキを見ていた。

⏰:08/06/06 19:32 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#825 [ザセツポンジュ]
(近いし!近いし、エノシタさん近いし!頭とかぶつかったらどうすんのさ!)

『あたし何にしよっかな〜。ホールで買ってもな〜。ジョウくん何買うの?』

クルっとジョウの方に顔を向けたエノシタさん。
ジョウは尋常じゃない速さで目が泳いだ。

『え?え、ボクんち今トミーのじーちゃんが来てるから、とりあえずモンブランと、、、』

『トミーのおじいちゃんが来てるの?何で?』

『いや、、、そんの〜、、、居心地がいいからだと思うよ、うん。』

ジョウはさもケーキを探すふりをしたが、
緊張と興奮から、分かっているのに
お目当てのケーキを見つけられない。

『ハッハ〜ン。エノモトさんが来てるからトミーに追い出されたのね、おじいちゃ、、、』

ジョウはビシっと顔を上げて頭をフル回転させ、
オマケにものすごい早口で店員に告げた。

『モンブランひとつと、ストロベリーなんとか。あ、それです。それでチョコレートケーキと、にいちゃん、ウチのにいちゃんは何がいいだろうか?知らない。そうですか。ボクも知らないし、この店のオススメ適当に!はい、以上で。』

⏰:08/06/06 19:34 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#826 [ザセツポンジュ]
ごまかせたとでも思っているのだろうか。
ホっとした表情を浮かべたが
ふくれっ面で横に立っているエノシタさんを
ジョウは2度見してしまった。

(ふくれてる。エノシタさんたら。かわいいな。)

『あたしもストロベリーなんとかひとつください!』

かわいい手袋をはずして、
エノシタさんは、財布を取り出した。

『あれ、エノシタさん家族の分は?』

『ん?いいの、いいの。』

ちょっと寂しそうな顔をしたような気がした。

⏰:08/06/06 19:34 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#827 [ザセツポンジュ]
カランカランー

少しだけ、
また寒さを増した
オレンジ色の空の下を
かたや片思い中の少年と
かたや失恋したばかりの少女は歩き出していた。

『ねぇ、ジョウくん。前にさ、協力してくれてありがとう。』


ジョウは頷いた。


『うん。。。え?なにを?』

全校集会の件は
3年生には漏れていないはず。

と、ジョウは思っているのだろうが、かつてきーさんとすーさんが勝手に実行したエノシタ改造計画をこの少年は知るよしもない。


『でも、もういいの。トミーのことはあきらめたの。』

(分かってはいたけど、やっぱり好きだったんだな。)

ジョウは心にチクっと刺さる少し苦しいこの気持ちが恋をしている証拠なんだなと改めて実感した。

⏰:08/06/06 20:44 📱:W51CA 🆔:H2Pa6if.


#828 [ザセツポンジュ]
『まぁ、またいいことがあるよ、そのうち。いっぱい期待しちゃいけないけど。』

エノシタさんは首を縦に降ってニコっと笑った。
『あれ?エノシタさんちどこだっけ?』

エノシタさんは
立ち止まって
反対方向を指さした。


『え!逆じゃん!お、お…送ろうか!』

トミーだったらサっと出る一言でも、ジョウにとっては心臓破りの5文字だった。

『いいよいいよ!おじいちゃん達がケーキ待ってるでしょ?』

エノシタさんは
いつも笑顔を絶やさない女の子だ。

ジョウはエノシタさんが手に持つ、ひとつだけ買った小さいケーキの箱に目をやった。


『な、なにするの?帰ってから。』

『…え〜と、ケーキ!ケーキ食べるよ!ジョウくんと同じイチゴの!ヘヘ。』

エノシタさんはケーキの箱を高く持ち上げて見せた。

⏰:08/06/06 20:54 📱:W51CA 🆔:H2Pa6if.


#829 [ザセツポンジュ]
『ひとりで?』

『うん。ウチね、パパはパイロットでママはキャビンアテンダントなの。遅い夜には帰って来ると思うんだけどさ。』

“心配しないで”と笑うエノシタさんをほってはいられないジョウジロウちゃん。

(サンタさん…ボクに勇気をくださいぃ…)


ジョウは目をつむって
バクバク鳴る心臓を
確認した。

『あ!あのさ!ウチのじーちゃんもトミーのじーちゃんも変だけどおもしろい人でさ!1人でケーキ食べるんだったら、よかったらウチでみんなで食べようよ!』

恥ずかしさを隠すため、マフラーに顔をうずめた。


『ホ、ホント!!いいの??』

『い、いいよ!みんな大歓迎だよ!』

エノシタさんは
また笑った。
嬉しそうに嬉しそうに笑っていた。

⏰:08/06/06 21:03 📱:W51CA 🆔:H2Pa6if.


#830 [ザセツポンジュ]
『あ!きーさんにカルピス頼まれてたんだった!エノシタさん何飲む?』

夕日が暮れる前に
早くおうちへ帰ろう。
楽しい時間はすぐ過ぎてしまう。


--------------


パパン!パパパパン!パン!

『ハッピバ〜スデイ俺のかわいい彼女のエノモトさ〜んハッピバースデイトゥ〜ユ〜!フ〜〜〜!』
トミーはたった今
このバースデイソングで
無理やり彼女にした
エノモトさんと
クラッカーの音と共に
パーティーを開催していた。

今日はエノモトさんの誕生日でもあるのだ。

『ありがとうトミー!キャ〜かわいい!嬉しい!』
トミーはジョウの兄に作らせた世界でひとつのネックレスを
エノモトさんの首にかけてあげた。

⏰:08/06/06 21:11 📱:W51CA 🆔:H2Pa6if.


#831 [ザセツポンジュ]
『ねぇ、ねぇなんでケーキはいらないの?エノモトさんデブじゃないのに。』

ケーキを買いに行くつもりがかたくなに拒否されてしまった木田トミオ14歳。


『ケーキは一緒に食べたい人がいるの。』

エノモトさんはトミーからもらったネックレスを嬉しそうに手に取って見ていた。

『は!早くも浮気!?だ、誰!!!』


『おねーちゃん。』


トミーはネックレスをずっと眺めているエノモトさんをずっと見ていた。

『かわい〜。かわい〜ね。へへ〜。ってかお前ねぇちゃんいたの?』

彼女になって2分もすればお前呼ばわりする態度のデカさだが、悪い気はしないエノモトさん。

⏰:08/06/06 21:17 📱:W51CA 🆔:H2Pa6if.


#832 [ザセツポンジュ]
『そう、7つ上におねぇちゃんがいるの。めったに帰って来ないけど。』
エノモトさんは
遠い目をした。

『めったに帰って来ないけど、俺にチュウして。』

トミーはエノモトさんのとてつもなく近い距離まで移動した。

チュ。

『うわ!めったに帰って来ないけど、お前!軽々しくチュウとかすんなよ!ヤリマンか!』

そう怒鳴って
トミーはエノモトさんに甘えて抱きついた。

エノモトさんは
照れてそのまま顔を赤らめていた。

⏰:08/06/06 21:57 📱:W51CA 🆔:H2Pa6if.


#833 [ザセツポンジュ]
『めったに帰って来ないけど今日おねーちゃん帰ってくるよきっと。ねー。めったに帰って来ないけどあとでエッチしようねー。』

『やだ。』

『そうだよ!そう!一回は断って欲しいもん俺!』


なにがしたくてなにを理想としているのかは分からない少年だが、15歳になったエノモトさんは自分が思ったよりも速いスピードでトミーに惹かれて行くのであった。



----------------

こないだ
携帯に非通知で
着信があったんだ。

でもどうしようもないから
画面を見つめていたら
また非通知で電話が
鳴り出した。

『はい。』

『…シンイチロウ。元気か?』

『あぁ。なんだ。なんで非通知なの?』

『それが使い方がよく分からなくって。』

⏰:08/06/06 22:05 📱:W51CA 🆔:H2Pa6if.


#834 [ザセツポンジュ]
こういうところ、ジョウジロウとそっくりだなと思った。

『どうしたの?』

『お前さ…クリスマスは何かするのか?』

『特になにもないけど…』

『飯でも食いに行こう。オゴってやるから。』

オレはクリスマスに
会う約束をした。

夕方頃、待ち合わせの
予定。

何を話すのが
いちばんいいだろうか。
あれも言ってやりたい。
これも言ってやりたいけど…

オレ、何かを
作るのは好きだけど

生身の人間と
直接言いたいことを
言い合うのは苦手だな。
だけど今日は
クリスマスだから
今まで言いたかったこと全部、言ってみようか。

もう時間が迫ってる。

⏰:08/06/06 22:16 📱:W51CA 🆔:H2Pa6if.


#835 [ザセツポンジュ]
>>814-834
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/357/

⏰:08/06/06 22:23 📱:W51CA 🆔:H2Pa6if.


#836 [ザセツポンジュ]
---------------

バイトへ向かう前に
少し早く家を出て
雑貨屋巡りをする女の子。


(なにがいいのかなぁ…もう中学生だもんなぁ)

リンゴ、イチゴ、バナナの小物…

人にプレゼントすることが苦手な人種。

自分が中学生の頃、何を欲しがっていたのかも、思い出せなかった。

(…これにしよう。)

『プレゼント用にしてください。』

可愛らしい写真入れを選んで、リボンのついた小袋を手に持ち、バイト先へ向かった。

懐石料理“廣六”

⏰:08/06/17 22:19 📱:W51CA 🆔:Rv5ry/LU


#837 [ザセツポンジュ]
『悪いねぇ、きららちゃん。クリスマスなのに。昨日から珍しく予約が入って忙しくってな。夕方にはあがっていいからね。』

『いえいえ。かまいませんよ。』

『おや?彼氏と約束があるのかい?』

六さんは、きららちゃんが手に持った小さな紙袋に目をやって微笑んだ。

『違いますよ。今日、妹が誕生日なんです。』

『そうか!きららちゃん妹がいたんだったな!じゃあ今日きららちゃんが帰るまでに、用意しておくから、帰ったらワシの料理をみんなで食べなさい!ね!』

そう言って六さんは嬉しそうに笑った。


(みんなで…食べる…か。)

きららちゃんは
六さんの嬉しそうな笑顔を踏みにじることはできないだろう。

⏰:08/06/17 22:25 📱:W51CA 🆔:Rv5ry/LU


#838 [ザセツポンジュ]
----------------
『ただいまぁ』

『おじゃましまぁす』

きーさんとすーさんは
リビングに入って来た
少年少女を二度見した後
顔を合わせ、目をかっぴらいたまんま
慌てふためいた。

『ど、ど、ど、どどど、どうもどうも!エノ…エノキ…エノキダケ!エノキダケ、ドコモダケ買って来たか!』

すーさんの目は
今だかつてない速さで
泳いでいた。

『え?エノキ岳?』

好きな子を勇気を出して家に呼んだのにも関わらず、オープニングから様子のおかしい老人2人。
鈴木ジョウジロウ14歳、クリスマスの落胆。

⏰:08/06/18 00:01 📱:W51CA 🆔:vSgbzwek


#839 [ザセツポンジュ]
『はじめまして、エノシタと言います。』

エノシタさんがおじぎをしたのも束の間、
きーさんは、ジョウもまだ握った事のないエノシタさんの手を握り
コタツへ案内した。

『はじめまして、エノシタさん。ワシの名前はシゲルです。62歳です。どうぞ、この辺に座って。』

すーさんは慌てて
エノシタさんのために
梅昆布茶を入れてあげようと、不思議な歩き方で台所へ移動。
おもむろに手に取るグラス。

『ちょ、ちょっと!きーさん!目が怖いよ!手も震えてるし!わっ!じーちゃん!じーちゃん、何やってんの!それ洗剤!食器洗うものでしょ!飲めないし!なんで挙動不審なんだよ!なんなの!!?2人してさ!』

⏰:08/06/18 00:13 📱:W51CA 🆔:vSgbzwek


#840 [ザセツポンジュ]
ジョウは粉を入れて
ポットの湯を入れれば
すぐさま完成する梅昆布茶を、少し水でぬるめて
すーさんに飲ませた。

『ジョウジロウちゃん、いや、落ち着け。まぁ、そうアセるな。サンタさんが来なかったからって非行に走るなよ!エ!エ…エノシタさん!ケーキ食べようね〜、ね〜エノシタさん、ね〜。』

理不尽な理屈を並べているのはシゲル。木田シゲル62歳。


孫から注がれた
梅昆布茶と言う活動源で、少しだけ落ち着きを取り戻した、鈴木ヒトシ62歳。

この2人の老人、

『なに?殺人でも犯したの?ついに。』


と、少年に侮辱されてもなんらおかしくない行動をとっている。

⏰:08/06/18 00:22 📱:W51CA 🆔:vSgbzwek


#841 [ザセツポンジュ]
こんな奇妙な家の中にいるのに、エノシタさんは、なんだか楽しそうに笑っていた。

きーさんは
自分の理不尽さは
棚に上げ、キッチンからジョウを追い払った。

首をかしげながら
コタツに入ったジョウは
何気なく座っている自分にハッとした。

エノシタさんの隣。

(あ…足とかあたったら…どうしよう…)

『エ…エノシタさん、なんかオープニングからこんな感じでごめんね。じーちゃん達いつもあんな調子でさ。』


申し訳なさそうな顔のジョウとは打って変わって、建て前ナシの笑顔で首を横に振るエノシタさん。

『いいなぁ。にぎやかで。面白いのね、おじいちゃん達。』


キッチンでなにやら
男の作戦会議を開始している老人2人を、エノシタさんは微笑ましく眺めていた。

⏰:08/06/18 00:31 📱:W51CA 🆔:vSgbzwek


#842 [ザセツポンジュ]
>>841

⏰:08/06/18 00:33 📱:W51CA 🆔:vSgbzwek


#843 [ザセツポンジュ]
(エノシタさん、いつもひとりなのかな…)

ジョウは、エノシタさんを見つめながら、少し寂しい気持ちになった。


『すーさん、すーさん、大丈夫。大丈夫。バレてない、バレてないよ。かえってこんな態度の方が怪しいじゃろ!平然とするんじゃ。何事も無かったかの様に!』

『そ、そうじゃな。もう、随分前の話よ。』

完全に殺人を犯してしまった2人組の会話である。

『はいは〜い。みなさ〜ん。今宵クリスマス、未成年飲酒でもしてね、今日は盛り上がりましょうね〜』


きーさんは不自然なほどの笑顔で、しきり直そうとコタツへ潜入してきた。

⏰:08/06/18 00:44 📱:W51CA 🆔:vSgbzwek


#844 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウ!お前、ポケっとしてないで、ワシに、もう一回梅昆布茶を入れて来い!きーさんにはカウパーカルピス!エノシタさんは?何飲むんじゃ?』


きーさんに続いて、コタツに腰を下ろしたすーさん。

『カウパーカルピスって新しいの?』

エノシタさんの質問に、すーさんは、気を良くした。

『最新のカルピスだが、絶対に外部には漏らさないこと。』


きーさんのフォローにもジョウは呆れ返って、みんなの分のジュースを用意しに、キッチンへ移動した。

⏰:08/06/18 00:52 📱:W51CA 🆔:vSgbzwek


#845 [ザセツポンジュ]
(台っっっっ無しだよ。エノシタさん、もう遊んでくれないよ…)

『はい、梅昆布茶!きーさんの最新のカルピス!エノシタさんの100%オレンジジュース!』

(そしてボクも…エノシタさんと同じオレンジジュース…うぅ…)

すーさんは梅昆布茶を
ふぅふぅと冷ましていたが突然ある事に気づいた。


『あっ!おい!ジョウジロウ!シンイチロウも呼んで来い!いいか!?今日はあの屋根裏から何が何でも引きずり出せ!』


ジョウはオレンジジュースをゴクリと飲み、ため息をついた。


『も〜。コキばっかり使わないでよね!』

⏰:08/06/18 01:02 📱:W51CA 🆔:vSgbzwek


#846 [ザセツポンジュ]
ジョウは膨れっ面で階段を上がり、2階の上のそのまた上の、屋根裏部屋のドアを叩いた。

コンコンコン。

『に〜ちゃん!……に、にぃいちゃん!』

ジョウは少し待って、
耳を澄まし、ドアノブに手をかけた。

ガチャー。

相変わらずゴチャゴチャしている部屋。

画材に雑誌に、本にソフト。付けっぱなしのパソコンに…


『…あれ?にーちゃん、いないや。』

⏰:08/06/18 01:09 📱:W51CA 🆔:vSgbzwek


#847 [ザセツポンジュ]
>>836-840
>>841
>>843-846
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/357/

⏰:08/06/18 01:13 📱:W51CA 🆔:vSgbzwek


#848 [ザセツポンジュ]
------------------


『おつかれさまで〜す。』

オレが店の戸を開けたと同時に
バイトの人とおぼしき若い女が店を出て行った。

『六さんの店、久しぶりだな。』

席に案内され、座敷に座るなり
目の前にいる中年男は
おしぼりで顔を拭きだした。

『そうだね。父さんと会うのもだいぶ久しぶりだけども。』

そう。そのだいぶ前に
出て行った父さんの顔を拭く姿を見て

老けたな〜と感じ、メニューを開いた。

『隣のおじいちゃんは元気か?あの説教くさいおじいちゃん。』

父さんはおしぼりを置いた。

『ん?元気に決まってるだろ。トミーも元気だよ。。。あと、ジョウジロウも元気。』

⏰:08/06/18 13:24 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#849 [ザセツポンジュ]
家族の事よりも先に
きーさんの事を聞いて来るあたり、
よほどに目の敵にしているに違いない。

『元気か。ジョウジロウ、中2か。荒れてないか?』

寂しそうな顔でメニューを覗き込む父さん。
“松コース”を指差した。

『いいの?無理してない?』

『無理してるに決まってるだろ。いいから頼みなさい。』

えらそうにメニューを閉じた父さんだが、
無理してるとはっきり言われると、返ってスッキリするもんだ。

『すいませ〜ん。』

⏰:08/06/18 13:25 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#850 [ザセツポンジュ]
ヒョイっと顔を出した六さんは、
オレ達の顔を見て、ニッコリ微笑み
テーブルに手をかけた。
六さんの、なんとも言えない優しい顔に
オレはホっとした。

『シンイチロっちゃん。お父さんと、珍しいな。アンタ、元気だったかい?』

ポンと、父さんの肩を叩いた六さん。
父さんは、笑った。

『あぁ。それなりにな。』

一番高い“松コース”を頼んだ後
料理を来るまでの間、黙っていることは
できなかった。

『ジョウジロウ、荒れたりしてないよ。年頃の割りにはいい子だと思うよ。鈴木の姓にも、もういい加減慣れたみたいだしさ。』

父さんは何度も頷いていた。
“それならよかった”と。

⏰:08/06/18 13:26 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#851 [ザセツポンジュ]
『母さんは忙しそうか?』

『忙しそうだよ。帰って来るのも遅いしね。父さんはどうなの?』

父さんは、苦笑いして、こう答えたのだ。

『酒の量もだいぶ減ったな。ひとりきりだしな。会ってくれるのはお前だけだしな。』

オレは少し腹が立った。
何を聞いても腹は立つんだろうけど。
ちょっとした発言でもイラっとするんだろうけど。

父さんだけが、寂しいんじゃない。
自業自得なんだろ。

お前が家を出て行ったんだ。
酒を飲んで暴れて。
自分勝手に怒鳴って。
母さんを殴って。
じーちゃんを突き飛ばして。
ジョウジロウの話も聞かずに。
だけど、オレは。。。

⏰:08/06/18 13:26 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#852 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウはさ、毎日夜になると泣いてたよ。まだ小学校も低学年だったし。小さかったのに父さんと母さんの間割って入ってさ。ジョウジロウは強いと思うよ。オレは母さんにくっついていればいいと思ってたから。どっちかについている方が楽なのに、ジョウジロウはそれをしなかった。なのに父さんはジョウジロウの話を聞かなかった。オレもオレだけど。父さんも父さんだよ。』

いや、オレは今日
誰が一番悪かったと、
決めたかったわけじゃないのに。

父さんを責めに来たんじゃなかったのに。
掘り返して、父さんを悪者にしようと思っていたんじゃなかったのに。

今日は、
今日は、、、。
こんな空気にするつもりじゃなかったのに。

⏰:08/06/18 13:27 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#853 [ザセツポンジュ]
『悪かったな。母さんにも、ジョウジロウにも、、、、お前にもな。父さんな、ホントに悪かったと思ってるよ。』

違うんだ、父さん。
父さん、オレはね、
父さんが出て行って、ジョウジロウが泣く姿を見て
自分が情けなくなったよ。

オレの方がおにいさんなのに、
オレは何にもしなかった。

部屋に隠れて、耳を塞いでいるだけで。
オレには、二人の間に入る勇気なんてなかったし。

⏰:08/06/18 13:28 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#854 [ザセツポンジュ]
ジョウジロウはね、何も知らないんだ。
どっちについていればいいとか、分からないんだ。多分。
戦国時代のお話をいつも聞かせてくれたりしていた大好きな父さんと、
お弁当のおにぎりに、タコさんウインナーを入れてくれていた大好きな母さんが

いがみ合っているのを見ているのが
ただ、嫌だっただけなんだよ。

どっちがどうとか
そんなの思いつきもしてなかったんだよ。

泣きながら、何度も何度も
父さんと母さんの間に割り込んで
止めようとしていたんだ。

真ん中。
二人の真ん中に立って。

⏰:08/06/18 13:29 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#855 [ザセツポンジュ]
オレには、そんな気持ち、きっとなかったから。

いなくなって気付いたんだ。
父さんがいなくなって、オレは気付いたんだ。

父さん、父さんも
ひとりになって分かった事が
いっぱいあるんだろうね。

ひとりにならないと思い知れない事もあるんだろうけど
それに気付いて反省した時に、
もう戻せなくなってしまったものもあると言うこと。


クリスマスの夜に。

⏰:08/06/18 13:29 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#856 [ザセツポンジュ]
---------------------

学校一の可愛い女子を
見事自分の彼女として
獲得し、至福の時を過ごした
木田トミオ14歳。

クリスマスとエノモトさん15歳の
誕生日を存分に過ごした。
辺りはもう薄暗い。

『あたしもう帰らなくちゃ。』

『え〜もう帰るの〜。もう俺んち住んじゃえよ。風呂沸かそうぜ。』

と、無理な冗談こそ平気で言ってみるが、
トミーはエノモトさんの手を取った。

『おうちまで送ります。』

『うん!』

二人は手を繋いで、玄関を出た。

⏰:08/06/18 14:22 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#857 [ザセツポンジュ]
《ボケタレ!ワシの目玉焼きの方がよっぽど目玉らしいわ!》

《すーさんの目玉焼きは目玉じゃないわい!下手クソ!》

《も〜。。。じーちゃんもきーさんも無駄使いしないでよ、たまご!目玉焼き選手権なんてやめようよ、クリスマスに!》

《キャハハハ。》

何やら隣のオウチはにぎやかなご様子。

『隣の家うるさいね〜、エノモトさん。』

ガラガラガラ。

『空気が悪いわ!、、、あ!トミオ!どこへ行く!』

ぷ〜んと漂う卵の匂い。

『あの人知ってる?エノモトさん。』
『、、、。トミーのおじいちゃんでしょ。無視していいの?』

エノモトさんは、繋いだ手を気にしながら歩いた。
無視していいわけがあるまい。

⏰:08/06/18 14:23 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#858 [ザセツポンジュ]
ガチャ。

鈴木家の玄関から顔を出した老人二人のお出ましだ。

『おい!あっ!お前ら!セックスしていいと思ってんのか!』

すーさんは、繋いだ手を見るなり、近所迷惑スイッチをONにした。

『すーさんやめてよ。俺の可愛い可愛い彼女が困惑するだろ。セックスはしなかったよ。とても残念だよ。』

きーさんは、これ以上喋らせまいと、すーさんの口を塞いだ。

⏰:08/06/18 14:24 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#859 [ザセツポンジュ]
『トミオ!どこ方面に送るんじゃ!?』
『あっち。北公民館の方面。』
『そうか!その近くに喫茶店があっただろう!そこにケーキも売ってるから、ケーキを買って来い!モンブランと〜、、、あと適当に!必ずだぞ!ほれ、エノモトさんにもあったかいカフェオレ買ってあげなさい。』

トミーにも1万円を渡したきーさん。
かっこつけたいがために気前の良くなるクリスマス。

『ラッキ〜。』
『じゃあな、我が孫トミオよ。』

ガチャン。
すーさんを窒息死させる寸前で
老人達は家へ引っ込んだ。

『なんであたしの事知ってるの?』
『、、、あれ?ホントだ。なんでだろう?』

⏰:08/06/18 14:25 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#860 [ザセツポンジュ]
きーさんは、すーさんをリビングに放り投げ、
玄関の電話の前に立った。

きーさん。携帯電話を購入したのにも
関わらず、家に置き忘れ、人んちの家の電話を使用する。
老人とはそんなものだ。

『090の、、、え〜と、、、』

リビングからホフク前進でしかえしを試みているすーさん。

『おい、木田シゲル。モンブランモンブランって、糖尿病になって死んでしまえ。。。おや?どこに電話しとるんじゃ?』

『トミオの本命の彼女。』

『あぁそう。』

すーさんはそう言って素直に退散し、コタツに戻った。

『、、、もしもし?ワシじゃ。今すーさんちからかけておる。今どこにおるんじゃ?』

⏰:08/06/18 14:26 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#861 [ザセツポンジュ]
-----------------
エノモトさんちは少し遠かった。
二人はたわいもない話をしながら
ゆっくり歩いた。

『トミーはいつも音楽何聴いてるの?』
『え〜っとね〜、怪獣のバラード。』
『、、、。それって合唱曲でしょ。CD出てるの?』
『うん、出てる出てる。エノモトさんは?』
『あたし、ジュディマリ。』
『俺もジュディマリ好き〜。ジョウの兄ちゃんにCD借りた事あるんだ。小さな頃からとかね、KISSの温度とかいいよね。』
『ホント!?あたしは、おねーちゃんから教えてもらったの。あ、怪獣のバラードあたしも好きだよ。』

⏰:08/06/18 14:39 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#862 [ザセツポンジュ]
CDはおそらく持っていないだろうが、
木田トミオと言う生意気な少年。
怪獣のバラードと言う歌を
こよなく愛していた。

『でもさ〜怪獣のバラードを歌ったクラスが絶対優勝するじゃん。あれどうにかして欲しいよね〜、、、。あ、自販機。エノモトさん、おいで。』

あったかいカフェオレを飲みながら二人は進んで行った。
吐く息はとても白かった。

『もうすぐウチなの。あの、そこの犬がいるオウチの、、、。隣、、、、。』

エノモトさんの足が止まった。
トミーはエノモトさんの顔を覗き込んで
視線を辿った先、街灯の下に女の人が立っているのが見える。

『おねーちゃん!』

そう叫んでエノモトさんは、走って行く。
振り返ったエノモトさんに、トミーは笑って手を振った。

(会いたい人に会えてよかったね、エノモトさん。)

⏰:08/06/18 14:40 📱:PC 🆔:Qvr/oogU


#863 [ザセツポンジュ]
---------------------

ジョウは時計を見てハっとした。
ジジイ二人のドンチャン騒ぎに
付き合っている場合ではないのだ。

こともあろうかエノシタさんは
楽しそうにケタケタ笑っていた。

ジョウはこのままでは
エノシタさんが危ないと思い、
肩を叩いて現実世界へ引き戻した。

『エノシタさん!もう8時が来るよ!』

エノシタさんはやっとこさ
我に返り、帰り支度をした。

『エノシタさん、また目玉焼き選手権しようね〜』

酔っ払ったすーさんはとてもご機嫌。

『また遊びにおいで、エノシタさん。』

きーさんは、ここを自分ちだとでも思っているのだろうか。

ジョウとエノシタさんは、クリスマスと言う冬の道を歩き出した。

⏰:08/06/18 16:48 📱:PC 🆔:1u1mw9wo


#864 [ザセツポンジュ]
>>836-840
>>841
>>843-846
>>848-863
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/357/

⏰:08/06/18 18:21 📱:PC 🆔:1u1mw9wo


#865 [ザセツポンジュ]
------------------
街灯の下で手を振る女の子。
街灯まで走る女の子。
二人は姉妹。

『おねーちゃん。。。』
『お誕生日おめでとう。はい、これプレゼント。私からがこっちで、この料理はバイト先の人から。』

二つのプレゼントを
妹に渡した姉は、
時計を見た。

『ありがとう。。。おねーちゃん。どこでバイトしてるの?』

『ん?料理のおいしいところでバイトしてるのよ。』

姉は、再び時計を見た。
予定は何もないのに。

⏰:08/06/30 01:11 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#866 [ザセツポンジュ]
『おねーちゃん、おうち入らないの?』

すぐさま帰ろうとしている姉の様子に気付き、
なんとか引きとめようとしている妹。

『今日はもう帰るよ。おめでとうって、言いに来ただけだったから。』

『一緒にケーキ食べようよ。。。帰って来てよおねーちゃん。』

姉は、困ったように笑い、首を横に振る。

ガチャ。

『遅いわねぇあの子。誕生日だって言うのに。』

エプロン姿のまんま、薄着で外に出て来た母親。
隣の家の犬が吠え出した。

『お母さん!おねーちゃん、おねーちゃんとケーキ食べたいんだけど!』

⏰:08/06/30 01:11 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#867 [ザセツポンジュ]
姉は、母親の姿を見た途端、
背を向けて口を閉ざした。

『あれ?お前いたのか。』

続いて玄関先まで出て来た父親は、
様子に気づき、妻の方へ近づいて行った。

そうして、もう一人の我が娘が
自分達に背を向けている事が分かったのだった。

家族は4人。
食卓を4人で囲むのが当たり前で、
普通の家庭だと、誰もが思っていた。

両親は、7つ、年の離れた妹を
とても可愛がっていた。
天真爛漫で、容姿も端麗だった妹を。

⏰:08/06/30 01:12 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#868 [ザセツポンジュ]
姉は次第に嫉妬して行った。
クリスマスに生まれた妹を
妬んでもいた。

置いてきぼをくらっているような生活が
何年も続いたが、
姉は、疑問をどこに、誰に、
ぶつけたらいいのかさえも分からなかった。

普通の家庭だと誰もが思っていた家庭に
口を閉ざした姉だけが、ポツリと食卓を囲む。

物静かな性格だったためか、
ちょっとした姉の変化に気づく者は、
いなかった。

⏰:08/06/30 01:12 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#869 [ザセツポンジュ]
お姉ちゃんはしっかりしてるから。
お姉ちゃんは心配いらないから。

妹は甘えん坊で可愛いから。
妹は手のかかる子だから。

(私はおねえちゃんだから。私はおねえちゃんだけど。だから何だって言うのよ。。。)


『お姉ちゃん。お母さんね、みんなの好きなケーキ買ってきてるの。』

『おねーちゃん。おうち、入ろうよ。。。』

母の言葉も、妹の言葉も
背中では受け止めているが、
まだ振り返る気には、なれないでいる姉。

何も語らないでいる姿を見かねて、
父親は、ゆっくり姉に近づいて行った。

そして、姉の肩に、手を
置いた。

⏰:08/06/30 01:12 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#870 [ザセツポンジュ]
『さみしい思いをさせていて、ごめんな。。。お姉ちゃん。帰っておいでよ。ね。今日は、クリスマスだから。』

お姉ちゃんは、
ちゃんと分かっていたのだ。

自分が、大きな大きな
意地を張って生きていると言うことを。

抵抗として、
沈黙と言う手段を選んでいたが、

相手に真意を
気づいてもらえにくいと言う事だって
分かっていた。

だけど、それでいて時は経ってしまい、
口に出す事が、日に日に困難になって行った。


溜め込んだものを吐き出すために
手にあざを作り、のどをかき回していた自分。

⏰:08/06/30 01:13 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#871 [ザセツポンジュ]
“私は何も語らないけど、そんな私の気持ちを察して、あなた達が考えて行動してください。”

は、とても無理な話なのだ。

相手の思惑は探る事が出来たとしても、
真意を掴む事なんて出来ない。

超能力者でもなんでもないんだから。

伝えるべき事は、
口に出して伝える。

それを苦手としている人もいるのだろうけど。

“もっと早く言えば良かった。
もっと私にもかまってと
甘えてみれば良かった。

⏰:08/06/30 01:13 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#872 [ザセツポンジュ]
寒い中、薄着で立っている
お母さんが
とても恋しくなったのだ。

必死で引き止めようとしてくれている
妹の姿が
とても愛おしく思えたのだ。

姉の目から
次第に涙がこぼれ落ちた。

自分の涙が、温かい事に
気づいた姉は、背を向けるのをやめた。

ずっと前から言いたい事は
たくさんあった。
だけど、今、一番言いたい事を、、、。

隣の犬も、おとなしくしている。

お父さんもお母さんも
妹も、

おねえちゃんの帰りを待ってる、、、。

⏰:08/06/30 01:14 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#873 [ザセツポンジュ]
『、、、、ただいま。』

妹は姉に飛びついて行った。

『おかえりなさい。』


お父さんの手
お母さんの顔
妹の声。


帰りたい場所があると言うこと。

クリスマスの夜に。

⏰:08/06/30 01:15 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#874 [ザセツポンジュ]
辺りの空気は冷たく、
吐く息はとても白かった。

最初に口を開いたのは、エノシタさん。

『今日はありがとう。あんな賑やかなオウチで、ジョウくんが羨ましいわ。楽しかったな〜。』
『え?それホントなの?こっちこそありがとう。そしてごめんなさい。相手するのも後始末も大変だけど良かったらいつでも遊びに来てね、エノシタさん、、、。』

⏰:08/06/30 01:15 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#875 [ザセツポンジュ]
『フフフ。ジョウくんのお兄さん、呼びに行ったのに今日いなかったんでしょ?忙しい人なの?』
『ううん。にいちゃんホントどこ行ったんだろうな。普段は屋根裏部屋にこもって、いろんなものを創作してるんだ。そんでその作ったものを売ってる。』
『へぇ〜すごいね。器用なんだね。例えば何作ってるの?』
『服も縫っちゃうし、絵も描くし、パソコンで何か難しい事してるし、ギターもピアノもやるし、エヴァンゲリヲンマニアだし。何でも出来るオタクだよ。』
『多趣味なのね。ジョウくんは何か趣味あるの?』

⏰:08/06/30 01:16 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#876 [ザセツポンジュ]
『ボクはね、、、、。』
(、、、。ないんだけど。得に。何でボクとにいちゃんはあんなに違うんだろうか。。。)

『音楽、、、は、よく聴くかな。』
『なに聴くの?』
『笠置シヅコさんとか〜、、、。』

(え?ボク何言ってんの?バカ?中3の女子相手に昭和のブギの女王の話して、どうするんだよ。)

⏰:08/06/30 01:17 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#877 [ザセツポンジュ]
『知ってる!東京ブギウギとか買物ブギーの人でしょ!ちびまる子ちゃんの映画で見た事あるんだ〜。』
『えぇぇぇぇええぇ!!エノシタさん知ってるの!?うそ、いやぁぁホンッッッット、嬉しいんだけど!!』

尋常じゃないジョウの喜びように
エノシタさんは若干引いていた。

(こんなジョウくん見た事ないわ。。。)

⏰:08/06/30 01:17 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#878 [ザセツポンジュ]
『あ、あとは、、、何聴いてるの?』
『あとはね〜ハイスタでしょ、ブルーハーツでしょ、倉橋ヨエコでしょ、ジュディマリでしょ、え〜とね〜、、、』

『ジョウくんごめん。全部知らない、、、。』

笠置シヅコさんの一件で、並々ならぬ
テンションアップをしてしまっていた
鈴木家の次男だったが、エノシタさんの一言で
自分の体調を通常値に急いで戻した。

『ハ、、ハハ。今度良かったら貸すよ。全部にいちゃんの私物なんだけどもね。』
『そっか。私、流行の歌とかに、うとくてさ。実は。』

⏰:08/06/30 01:17 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#879 [ザセツポンジュ]
エノシタさんの、正直な答えを
ジョウは嬉しく思った。

『ボクもね、知らないんだよ。さっき言った人達も少し古いんだよ。いい歌は時代をピョンと飛び越えて来てくれるって、きーさんが言ってたんだ。あ!じゃあさ、エノシタさん学校の歌で好きな歌は何?』

エノシタさんは上を向いて考えた。

『あ。ある。ジョウくんはあるの?』
『あるよ、一番大好きなやつ。』
『じゃあさ、せーので言おうよ。』

⏰:08/06/30 01:24 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#880 [ザセツポンジュ]
星がとてもキレイなクリスマス。
街灯の明かりはとても小さいけど、二人の真上に広がる夜空は
とてもとても明るかった。

“せーの”

『怪獣のバラード!』
『怪獣のバラード!』

二人は顔を見合わせて笑った。
















星がとてもキレイなクリスマス。
街灯の明かりはとても小さいけど、二人の真上に広がる夜空は
とてもとても明るかった。

“せーの”

『怪獣のバラード!』
『怪獣のバラード!』

二人は顔を見合わせて笑った。

⏰:08/06/30 01:26 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#881 [ザセツポンジュ]
>>865-880
ミスッタ...880
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/357/

⏰:08/06/30 01:29 📱:PC 🆔:3PmgDCPQ


#882 [ザセツポンジュ]
---------------
エノモトさんを送り終えたトミーは
人が隣にいなくなると
急に寒さを感じるものなんだと
痛感し、ポケットに手を突っ込んで
少し走った。

クシャ。

『あ。じーちゃんに1万円もらってたんだった。』

ケーキを買わなければいけない事に
気づいたトミーは
めんどくささを振り切り
ケーキの置いてある喫茶店まで
急いだ。

(さみぃさみぃ。)

⏰:08/07/03 15:33 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#883 [ザセツポンジュ]
カランカラン。

『えーと、モンブランと、あとは適当に。5つほど、オススメで。』

トミーはガラスケースのケーキも見ずに
店員の顔を見てオーダーした。

店員はニッコリ笑った。

『かしこまりました。お客様、お待ちの方が、あちらのお席に。どうぞ。』

『は?』

トミーは店員の手の指す方向をゆっくりと辿った。
辿るうちに、大好きだった懐かしい匂いが
漂っている事に気づいた。

『え、、、、。』

⏰:08/07/03 15:34 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#884 [ザセツポンジュ]
目をやった先には
自分が近年、葛藤し続けて来た
原因そのものが
椅子に座っている。

それはとても美しく
本来なら、飛びついてしまいたいほどの
事だったが、
トミーはそれを許してはいなかった。
顔を見る事もできず、
とりあえず席に座った。

『、、、、。』

何も話す事のできない自分。
喫茶店の暖房がよく効いている事だけは
分かった。


『トミオ。ケーキ食べる?』

トミーは相手の手だけを見つめ
首を横にふった。

⏰:08/07/03 15:34 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#885 [ザセツポンジュ]
『元気、、、だった?』

『、、、。うん。分かるだろ見たら。』

『そうね、、、。あの、、、。怒ってる?』

『、、、。その質問、間違ってると思わないの?』

いつになく緊張して
顔をこわばらせているトミーは
列記とした14歳の少年なのだ。

『トミオは、何にも聞きたくないかもしれないけど、』

『聞きたくないよ、ホントに。何も。ってか何でいるの?どうせじーちゃんに頼まれたんだろ。』

⏰:08/07/03 15:35 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#886 [ザセツポンジュ]
複雑な気持ちだけが
トミーに絡みついていた。
怒るにも怒れない。
笑うにも笑えない。
見るにも見れない。

そんな初めての気持ちと
緊張が、トミーを襲っていた。

『、、、。トミオ。』

その言葉にビクっとしたトミーは
顔をあげた。

そこには大好きな人が
困った笑顔を浮かべ
まっすぐにトミーを見つめていた。

『、、、。ごめんね。ママのこと、許してだなんて言わないわ。だけど、、、ごめんね。トミオ。』

トミーはテーブルにひじをついて
両手を頬にあてた。
ふくれっつらで
言葉もでないまま。

⏰:08/07/03 15:36 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#887 [ザセツポンジュ]
<何も言わずに置いて行くなんて卑怯だ。

うそつき。

女なんてクズだ。

弱虫。

俺はへこたれない。

お前みたいに
無責任な事はしない人になる。

最低女。

どこかで
そう思って過ごしていなければ
寂しさで埋もれてしまうような
気がしてたまらなかった。

⏰:08/07/03 15:36 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#888 [ザセツポンジュ]
ママが急にいなくなった。
じーちゃんは変な嘘をついて
ごまかしていた。

寝て起きて、寝て起きて
待っても待っても
ママがいない。

でもね、練習したんだ。
キレイに字をかけるように
目玉焼きも焼けるように
服もキチンとたためるように、、、。

じーちゃんと一緒に
練習したんだ。

ママが、帰って来たら
いや、帰って来るから

その時、書いた字を見せるんだ。
ママに褒めてもらうんだ。

ママがおなか減ったら
俺が目玉焼きを焼いてあげる。

ママの代わりに
俺が洗濯物もやってやるから

何にも心配しなくていいよ、ママ。

いつでも帰って来て大丈夫だよ
ママ、、、。>

⏰:08/07/03 15:37 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#889 [ザセツポンジュ]
トミーは
頬にあてていた手で
顔を覆った。


『、、、。、、、うぅ。。。』


恨んでいた気持ちは
負けた。

14歳にもなって
涙でノックアウトだなんて
恥ずかしくてたまらない。

学校にも行けない。

誰かに見られたら困るし、、、。

それでもトミーは
ずっとためていた想いを
止める事ができなかったのだった。

⏰:08/07/03 15:38 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#890 [ザセツポンジュ]
そして
きーさんが今も
きっと大事に持っているであろう
よい子ちゃんシールの事を
トミーは思い出しながら
こらえてもこらえきれない
涙を流し、声を押し殺した。

ママがいなくて淋しい時の、我慢した涙の分。
冷凍食品が多くて、ママの作ったご飯が食べたいなーと、泣きたくなった時の分。
みんながママとの出来事を楽しそうに話している時の、悲しい気持ちの分。
              
その分をひとつずつ
シールに代えていた
小学生の頃の自分。

⏰:08/07/03 15:38 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#891 [ザセツポンジュ]
“男の子は泣かないのよ。”

と言っていたママの声が
頭を駆け巡った。

ママは、いい匂いのする手で
トミーの頭を撫でた。
自分の息子が
この年にして
いかに純粋かを目の当たりにし、
心を締め付けられると同時に
ホっとしていた。

トミーはいろんな想いを
外に出して、涙をふいた。

“むかつくけど、会いたかったんだ
ママに。”




『。。。ケーキ。。。食べるよ。』

『うん。。。。!』




ママはにっこり笑った。
トミーは鼻水をすすりながら、照れて
まだママの顔を見れないでいた。

⏰:08/07/03 15:39 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#892 [ザセツポンジュ]
大好きな人に
裏切られたんじゃないかと
疑うこと。
それを受け入れなければ
いけないのかと
疑問を持つこと。

何かを信じて

“待つ”と言うこと。



クリスマスの夜に。

⏰:08/07/03 15:39 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#893 [ザセツポンジュ]
>>882-892
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/357/

⏰:08/07/03 15:40 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#894 [我輩は匿名である]
あげ。

⏰:08/07/05 19:23 📱:F906i 🆔:r0G5r4Ls


#895 [ザセツポンジュ]
きーさんとすーさんは
鈴木家の床暖房にこたつに

日本酒くらって
いい気分。

『おい、きーさん。トミオちゃんは大丈夫かね。』

『大丈夫じゃ。ワシには分かる。シンイチロっちゃんこそ大丈夫かね。』

『ワシは関わっておらん。今日まで知らんかったんじゃ。おそらく六さんとこで飯でも食ったんじゃろ。あいつが自分で決めた事。大丈夫に決まっておる。』

⏰:08/07/06 01:39 📱:PC 🆔:JyF5mtcA


#896 [ザセツポンジュ]
きーさんはついにうとうとしだして
こう言った。

『ありがとうと、、、ごめんなさい。』

すーさんはきーさんを2度見、3度見した。

『いえいえ、どういたしまして。』

目をパチっと開けた
木田家の老人。62歳。

『お前な、ありがとうと言われるような事もしてなけりゃあ、謝られるような事態にも巻き込まれてないだろ、バカか。何がいえいえどういたしましてじゃ、全く。』

⏰:08/07/06 01:39 📱:PC 🆔:JyF5mtcA


#897 [ザセツポンジュ]
『いや、あるぞ。ワシはな、きーさんの企みにはシブシブ付き合っているし、時間も裂いておる。』

この町の
近所迷惑代表と言う事を
忘れて誇らしげな
鈴木家の老人。62歳。

『人はな、ごめんねと言われると許してしまう事もある。その言葉を一言聞きたかっただけなんじゃ。』

『きーさん、すまんな。』

『。。。。許そうと思った事もないわ。』

共に62歳の仕掛け職人は
2人して
コタツで眠りについた。

⏰:08/07/06 01:40 📱:PC 🆔:JyF5mtcA


#898 [ザセツポンジュ]
友達が
いると言う事。

ひとりでもいい。
友達が、ここに
いると言う事。

クリスマスの夜に。

⏰:08/07/06 01:41 📱:PC 🆔:JyF5mtcA


#899 [ザセツポンジュ]
-----------------------

『真っ赤な〜太陽〜』

『沈む〜さぁばく〜に』

『おおき〜な怪獣が』

『の〜んびり暮らしてたっ。フフフ。』

怪獣のバラードを
変わりばんこに
口ずさみながら
夜道を歩く二人の少年少女。

ジョウは続けた。

『ある朝目〜覚めたら』

『遠〜くで〜キャラバンの』

『鈴の音聞〜こえたよ、お〜もわず叫んだよっ。』

『海が見〜たぁ〜い〜』

『人を〜。』



“人を愛したい、怪獣にも心はあるのさ。”

⏰:08/07/06 01:41 📱:PC 🆔:JyF5mtcA


#900 [ザセツポンジュ]
エノシタさんは止まった。
ジョウが次のフレーズを
歌う番だ。


(ひ〜と〜を〜あ〜いしたい、、、、。ボクにも心はあるんだよ。)


『あ、、、。』

ジョウは、足を止めた。
エノシタさんは、笑ってる。

『なんか恥ずかしいね。』

そう言ってエノシタさんは
歩き出した。

『エ、エノシタさん、あのね!』

ジョウの声に
驚いて振り向いた少女は
一瞬にして空気が変わるのが
分かった。

⏰:08/07/06 01:43 📱:PC 🆔:JyF5mtcA


#901 [ザセツポンジュ]
『あの!ボクね!、、、え〜と、、、。』


切り出したのはいいものの
緊張から
困惑するジョウジロウちゃん。



人のいいところを
見つけると言うこと。

人を好きになると
言うこと。


想いを
伝えると言うこと。






『エノシタさんのことね、結構前から好きでした、、、。』





クリスマスの夜に。

⏰:08/07/06 01:44 📱:PC 🆔:JyF5mtcA


#902 [ザセツポンジュ]
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/357/
>>895-901

⏰:08/07/06 01:46 📱:PC 🆔:JyF5mtcA


#903 [ザセツポンジュ]
----------------------------
俺、鈴木シンイチロウ。
19歳。
専門学校をすぐやめました。

理由、授業がつまらないから。

って言っても
後ろめたさがあって
屋根裏部屋に
こもってたら
髪の毛はだんだん伸びるし
自己嫌悪にはなるし
無気力になるし
やべぇなぁと思って。

⏰:08/07/07 00:14 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#904 [ザセツポンジュ]
とりあえず服買う金がないから
服を作った。
そしたら案外上手く行ってさ。
あ、こんなに暇なら
絵を描くのが好きだし
作品つくろう。
だけどそれでも暇だから
アートブックでも読もうと
思って。

飽きたらギターを弾いて
暇をつぶして、、、。

あ、俺
ひとりでいけんじゃん!
って。

⏰:08/07/07 00:15 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#905 [ザセツポンジュ]
そう思ったすぐ後に
なんか寂しくなって来たんだよ。
オレの生活全て
マスターベーションじゃない?

年の近い奴らは
酒飲んで
ボーリングして
流行の服着て
ランキングばっか気にして
バカバカしいじゃん。

で、オレはひとりでいたいの?
人といたいの?


全然分からない。

むかつく。
自分がむかつくんだよ。
何にもできないし
何にもしないくせして、、、。

⏰:08/07/07 00:16 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#906 [ザセツポンジュ]
くだらない。
でもそんなくだらないことを
オレは毎日毎日考えてる。

考えながら、いつの間にか眠るんだ。


夢を見た。
地震が来てさ、
家族みんな行き場に困ってる。

オレは迷わず言うんだ。

『オレがなんとかするから、オレについて来て!』

できるわけないだろ。
って、目が覚めて思った。

⏰:08/07/07 00:16 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#907 [ザセツポンジュ]
すごい汗かいてて
日付を見たら
7月7日だったんだ。
そりゃ暑いはずだよ。夏だもの。

で、そんな七夕にさ。
トミーが遊びに来て

『カフェに行くからお前も来い、オゴってやるから。っていうか髪伸びすぎだぞ、ロン毛。いつのキムラだよ。』

って。
オレは中学生にオゴってもらうのは
さすがに情けないと思ったよ。

『ボクも出すから行こうよ、にーちゃん。』

トミーの後ろにいた
弟のジョウジロウまで
オレに同情してる。

⏰:08/07/07 00:16 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#908 [ザセツポンジュ]
ホントに恥ずかしくなったよ。

『行かない。』

当然だけど、こう答えたんだ。
そしたらさ二人して言うんだよ。

『今日は短冊にお願い事を書く日だからカフェに行くんだよ。』

“お願い事”って聞いた時に
同時に“希望”って言う
言葉が頭に浮かんだんだ。

だからカフェに行った。

初めて行ったんだ、そのカフェ。
出来たのは知ってたけど
行く機会がなかった。

⏰:08/07/07 00:17 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#909 [ザセツポンジュ]
“ERIA CAFE”って看板が出てる。
(エリアカフェ?)
まさか綴り間違えてんのかなと
思ったけど、あえてスルーした。

『いらっしゃいませ。』

中に入った時
鳥肌が立った。
かかる音楽も
テーブルもソファも
チェアーもライトも
全て
きどってないのに
存在感があって、
媚びてなくて
生かされてて、、、。

⏰:08/07/07 00:17 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#910 [ザセツポンジュ]
素敵だと感じた。
心からそう感じたんだ。
くだらないことで悩んでいる自分が
求めていることは
こういう事なんじゃないかと
熱くなった。

よくは分からないけど
そう思った。

⏰:08/07/07 00:18 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#911 [ザセツポンジュ]
『今日はね、笹の木が届くんだって。』

ジョウジロウがオレの袖をつかんで
ひっぱる。

『え?木が?』

『そうだよ。その木に短冊をくくりつけて、植えるんだよ。』

『そう言うイベントなの?』

『うん。にーちゃんも書きなよ。』

オレはジョウジロウからペンをもらった。

(何書こう。。。って、オレ、、、もう19なんだけど。)

⏰:08/07/07 00:18 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#912 [ザセツポンジュ]
ちょっと子供じみてて恥ずかしかったんだけど
横を見るとトミーがなんか楽しそうに
何枚も何枚も短冊書いてんの。

『お前、欲張りすぎじゃないのか、これ。』

『うるせーよ、ひきこもり。』

うぅ。
オレ、すごく傷ついたぞ。
自分が悪いんだけどさ。

⏰:08/07/07 00:18 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#913 [ザセツポンジュ]
“希望”

書くことに困ったから
カフェに行く前に
ふと頭に浮かんだ言葉を書いた。
そして誰にも見られないように
隠して持った。

よく晴れてて
セミがホンットうるさい。


大きなトラックが
こっちに向かって来る。

笹の木を乗せて。

小さい子供、小学生、
お母さん。

親子がちらほらいて出迎えてる。

⏰:08/07/07 00:19 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#914 [ザセツポンジュ]
笹の木を植える前に
短冊をくくりつけた。

『なんて書いたんだ?お前、髪切れよ。』

トミーはたくさん書いた
短冊を急いでくくりつけてる。

『いい美容師が見つかりますようにって書いたよ。』

『ハハ!そらそうだ。いい美容師がいないから髪切らないんだよな、シンちゃん。』

それもチクっと来たぞ、オレ。
まあオレが悪いんだけど。

⏰:08/07/07 00:19 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#915 [ザセツポンジュ]
そしてオレ達は
“七夕の席”と書かれている席に
座って、窓から
木が植えられるのを見ていた。

オレ、来て良かったって思ったんだ。
そして、小夜子ストロベリーと言う
変な名前のデザートを食べて、店を出た。

もちろん、オゴってもらったけど。
クズだよね、オレ。

『あ、先帰ってて。オレ、ちょっと行くとこあった。』

ジョウジロウとトミーを置いて
オレはある場所へ行った。

⏰:08/07/07 00:19 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#916 [ザセツポンジュ]
何を隠そう。
求人雑誌を取りに行っただけなんだけど。

『やっと働く気になったか、シンイチロっちゃん。』

こういうの、
誰にも見られたくなかったのに。
隣の家のじーさんが
立ってるんだよ。

『いや、、、うん。そう。何してんの?きーさん。』

⏰:08/07/07 00:20 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#917 [ザセツポンジュ]
『亀さんを、もらってね。名前ももう付けてやった。』

きーさんは虫カゴに小さめの亀を入れて
嬉しそうに見せてきた。

『名前なんて言うの?』

『トミー。』

にんまり笑ったきーさんと
夏の風。
夕方の匂い。
空の色。

⏰:08/07/07 00:20 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#918 [ザセツポンジュ]
あぁ、この気持ち
なんて言うんだろう。

何か起こりそうで
ワクワクするような
切なくて胸がキュンとなるような
何でも許せてしまいそうな、、、。

ごちゃ混ぜで
優しい気持ち。

何て呼ぶんだろう。

オレは、きーさんと
ゆっくり歩いて
家に帰った。
説教もされたけど。
きーさんの言い方は嫌じゃない。

⏰:08/07/07 00:20 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#919 [ザセツポンジュ]
『じゃーね、きーさん。』

『たまには出ろよ、家。』

『了解なまこん。』

きーさんはオレに背を向けて
手をふってきた。

それを確認したオレは
自分ちの玄関の扉を開けた。

ウチのじーちゃんは
犬のまさこの散歩の事で
ジョウジロウと何か
話してる。
話してると言うか
意地悪言ってるよ、また。

ふざけた老人だ。
バカだなぁ。

⏰:08/07/07 00:21 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#920 [ザセツポンジュ]
屋根裏部屋に戻ったオレ。
部屋の片付けをしようと
思った矢先、

隣の家から大きな声が聞こえてきた。

『トミー。トミーやぁい、おーい。』

きーさんは、さっきもらった亀に
声をかけてる。
トミーが怒鳴ってる。

⏰:08/07/07 00:21 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#921 [ザセツポンジュ]
ミシンの周りの糸くず、
布の切れ端、
紙くず、ゴミ。
ゴミばっかり。

何着作ったんだろう、服。
結構あるな。
何枚描いたんだろう、絵。
結構あるな。

、、、。
これ全部売ればいいじゃん!

何かしないとダメだよね、オレ。

⏰:08/07/07 00:22 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#922 [ザセツポンジュ]
でも、もっと
今までとは違う新しい
何か、、、。

何か、、、。

何か、、、。



オレの部屋まで届く声、
変な老人、
そして
そのそばにいる少年、、、。

⏰:08/07/07 00:22 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#923 [ザセツポンジュ]
-




『あ、小説書こう。』







昨日までの
自分は一体何だったのか。
だけど、無駄じゃない。
無駄じゃなかったと
思える自分になれる気がする。

希望に満ち溢れた日。
7月7日。





=完=


エンディングテーマ
怪獣のバラード

⏰:08/07/07 00:23 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#924 [ザセツポンジュ]
>>903-923
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/357/

⏰:08/07/07 00:24 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#925 [ザセツポンジュ]
>>1-50
>>50-100
>>100-150
>>150-200
>>200-250
>>250-300
>>300-350
>>350-400
>>450-500
>>500-550

⏰:08/07/07 00:26 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#926 [ザセツポンジュ]
>>550-600
>>600-650
>>650-700
>>700-750
>>750-800
>>800-850
>>850-900
>>900-950

⏰:08/07/07 00:27 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#927 [ザセツポンジュ]
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/357/

⏰:08/07/07 00:27 📱:PC 🆔:WBqr7ZlI


#928 [なお]
面白い

⏰:08/07/23 15:24 📱:SH905i 🆔:0mIjngjE


#929 [我輩は匿名である]
>>400-450

⏰:08/08/07 08:50 📱:SH905i 🆔:hiKTgj1A


#930 [アミコ]
AgeAge

⏰:08/09/11 02:29 📱:SH906i 🆔:1vuVE4xc


#931 [我輩は匿名である]
あげあ

⏰:08/09/13 00:02 📱:W51S 🆔:tzVb8Tmw


#932 [我輩は匿名である]
あげ
(^o^)

⏰:08/10/13 03:37 📱:W51CA 🆔:6Rp.9qHo


#933 [batako]
>>01-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650
>>651-700
>>701-750
>>751-800
>>801-850
>>851-900
>>901-950
>>951-1000

⏰:08/10/25 11:02 📱:SH905i 🆔:pJ6hXRvY


#934 [あかね]
感動した~
あげあげ

⏰:08/10/26 11:03 📱:W51S 🆔:j/KDBPH6


#935 [我輩は匿名である]
>>1-200
>>201-400
>>401-600
>>601-700

⏰:08/11/01 12:46 📱:D904i 🆔:RPexO3YQ


#936 [我輩は匿名である]
>>701-900
>>901-1000

⏰:08/11/01 12:47 📱:D904i 🆔:RPexO3YQ


#937 [あお]
あげィ

⏰:09/01/02 01:37 📱:auCA3C 🆔:F53qZs6o


#938 [我輩は匿名である]
この小説まとめサイトとかに載せて欲しい
この作品だけは崖落ちしてほしくない

⏰:09/01/02 02:11 📱:PC 🆔:he/H65xU


#939 [あお]
あげます

⏰:09/01/27 18:12 📱:auCA3C 🆔:P.Tqd0Sc


#940 [きーさん]
ちびまる子ちゃんはじまるよ。
みたいなノリで

クソガキジジイと少年
みそ汁編

はじまるよ。

⏰:09/02/18 03:59 📱:W61S 🆔:QP.UDvFQ


#941 [ザセツポンジュ]
あっ…。 あの。
今さらなんですけども
コメントとか
あげ
してくれていたみたいで
本当に
ありがとうございました。
ふつつつつつかものですが
よろしくお願いします。

bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/9891/f

⏰:09/02/18 04:03 📱:W61S 🆔:QP.UDvFQ


#942 [我輩は匿名である]
大好きなのであげます(^ω^)

⏰:09/03/20 00:21 📱:SH905i 🆔:dfI2X5Ew


#943 [我輩は匿名である]
感動した!!
主の表現の仕方すごい好き

⏰:09/05/19 09:16 📱:W64SA 🆔:7hAf5LD.


#944 [我輩は匿名である]
おもしろかった!
泣きました

安価させていただきます
>>1-50
>>51-100
>>101-150
>>151-200
>>201-250
>>251-300
>>301-350
>>351-400
>>401-450
>>451-500
>>501-550
>>551-600
>>601-650
>>651-700
>>701-750
>>751-800
>>801-850
>>851-900
>>900-1000

失礼しました

⏰:09/07/18 22:43 📱:SH001 🆔:lcsT9jLg


#945 [我輩は匿名である]
あげ

⏰:09/11/20 22:29 📱:SH704i 🆔:xKnSidxs


#946 []
あげます

⏰:10/02/11 10:28 📱:SH01B 🆔:A2d2MxEI


#947 [我輩は匿名である]
保守age

⏰:10/03/02 21:14 📱:SH905i 🆔:Z4B8nH5s


#948 [我輩は匿名である]
あげます

⏰:10/09/02 03:52 📱:auSH3F 🆔:o84F6wac


#949 [我輩は匿名である]
めちゃ面白かった!!

⏰:10/10/03 01:44 📱:840SH 🆔:GxsBU8xE


#950 [我輩は匿名である]
>>1-1000

⏰:10/10/03 10:40 📱:SH06A3 🆔:nL3ndJOw


#951 [我輩は匿名である]
保守!

⏰:11/05/21 12:14 📱:SH06B 🆔:riN5cwK2


#952 [我輩は匿名である]
ほしゅ

⏰:11/10/09 23:08 📱:SH06B 🆔:L9p/erG.


#953 [我輩は匿名である]
age

⏰:15/04/10 04:13 📱:PC 🆔:LLa.P8vg


#954 [我輩は匿名である]
(  ̄▽ ̄)

⏰:20/06/20 00:42 📱:Android 🆔:0OusyMi.


#955 [&◆JJNmA2e1As]
[完]👷👨👩‍🦱👨‍🦱👂🦻🧠👱‍♀️👨‍🦰😻

⏰:22/10/01 17:58 📱:Android 🆔:rYsbLV12


#956 [&◆JJNmA2e1As]
(´∀`∩)↑a

⏰:22/10/01 18:39 📱:Android 🆔:rYsbLV12


#957 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/01 21:53 📱:Android 🆔:rYsbLV12


#958 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)

⏰:22/10/02 02:32 📱:Android 🆔:Ltpo.xA.


#959 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30

⏰:22/10/07 12:22 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#960 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>870-900

⏰:22/10/07 12:23 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#961 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>900-930

⏰:22/10/07 12:24 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#962 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30
>>30-60
>>60-90
>>90-120
>>120-150

⏰:22/10/07 12:57 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#963 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>150-180
>>180-210
>>210-240
>>240-270
>>270-300

⏰:22/10/07 12:59 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#964 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>300-330
>>330-360
>>360-390
>>390-420
>>420-450

⏰:22/10/07 13:01 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#965 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>450-480
>>480-510
>>510-540
>>540-570
>>570-600

⏰:22/10/07 13:02 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#966 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>600-630
>>630-660
>>660-690
>>690-720
>>720-750

⏰:22/10/07 13:04 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#967 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>750-780
>>780-810
>>810-840
>>840-870
>>870-900

⏰:22/10/07 13:06 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#968 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>900-940

⏰:22/10/07 13:07 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#969 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/07 16:10 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#970 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑a

⏰:22/10/07 17:09 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#971 [○○&◆.x/9qDRof2]
隠謀

 目を覚まして最初に飛び込んできたのは、縦横(じゅうおう)に溝が走るタイル張りの白い天井と、ほのかに黄ばんだ蛍光灯。耳に入るのは雑多な電子音と、機械が稼働するファンの音。からだを起こそうと上半身に少し力を込めようとして、そこで初めて自分がベッドに寝ている事に気付いた。

⏰:22/10/07 19:02 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#972 [○○&◆.x/9qDRof2]
「お目覚めかね?」

 ベッドの脇から、落ち着き払った男の声。見ると、白衣を着た男性が、不敵な笑みで立っている。

「.......ふん」

⏰:22/10/07 19:03 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#973 [○○&◆.x/9qDRof2]
口角を片方吊り上げ、目を半月状に細めてこちらを見る男から視線を外し、上半身を起こして辺りを見回す。どこかの研究施設にでもあるようなコンピューターとコンソールの類の機械が、そう広くない室内の壁際にずらりと配置されている。

⏰:22/10/07 19:03 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#974 [○○&◆.x/9qDRof2]
「第二の人生を手に入れた気分はどうかね?」

 白衣の男が問い掛ける。わたしは部屋を眺めながら男には目を合わせず、自嘲(じちょう)するように鼻で笑った。

「最悪だな。いますぐ貴様をぶち殺してやりたいくらいには」
「女性があまり汚い言葉を使うべきではないねー。ま、どちらにしろそんな事は不可能だけど.......」

⏰:22/10/07 19:03 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#975 [○○&◆.x/9qDRof2]
そう言って白衣の男はくぐもったように笑い、側にあったテーブルのマグカップを手に取った。薄く湯気が立ち上る中身を一口啜り、再び口を開く。

「死人に口なしと言うだろう?」
「.......」

⏰:22/10/07 19:03 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#976 [○○&◆.x/9qDRof2]
自分の手のひらに視線を落とす。既に血の通わないそれは青白く澱んでおり、軽く握ると冷ややかな感触が返ってきた。手のひらを自身の胸に当てる。柔らく弾力があり、それなりの大きさもある.......が、しかし、心臓の鼓動は微塵も感じてはくれなかった。

「.......ふん」
「ま、働きには期待しているよ。その為にきみたちを直したのだから」

⏰:22/10/07 19:04 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#977 [○○&◆.x/9qDRof2]
そう言いながら、白衣の男が顎先で部屋の中央を指す。そこにはベッドが二つ。即(すなわ)ち自分がいまいるベッドと、その隣。自分が着ている物と同じような、簡素(かんそ)な白い患者衣を着た男が、先刻までの自分と同じように眠っている。その横顔を眺めながら、わたしは無意識のうちに冷たい手を伸ばした。男の頬に指先が触れる.......と、同時に男の眉間に皺(しわ)が寄り、頬に僅かな力が入る。驚いて反射的に手を引いたわたしと、その様子を無表情に眺めていた白衣の男の見守る中、もうひとりの屍(しかばね)が目を覚まそうとしていた。

⏰:22/10/07 19:04 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#978 [○○&◆.x/9qDRof2]
 愛しのイザベラ。

 白骨死体になっても美しいきみに魅入られたぼくは二度とここから出られないだろう。


永遠にわたしの傍にいて。

青年の耳に美しいイザベラの声が響いた。

⏰:22/10/07 19:07 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#979 [○○&◆.x/9qDRof2]
『雨、恋、盆栽』

 細く単調な雨音が、薄い窓一枚を通して伝わって来る。雨は昨晩からずっと降り続いていた。

 夏の盛りも僅かに陰りを見せ始めた折、まるでそれまで夏の王者として居座っていた太陽の休息を狙うかの如く、雨雲はごく自然に日本全土へと入り込んで、憂鬱な雨を降らしている。
 だが、盆帰省に際して大多数の人間から疎ましがられるであろうそんな天気も、佐々木麻衣には愛おしい時間の一つであった。

⏰:22/10/07 19:07 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#980 [○○&◆.x/9qDRof2]
 麻衣は雨が嫌いではない。むしろ、雨が降るとどうにも心が踊るのだ。そして、そういう時は馴染みのカフェでひたすら読書に耽るというのが麻衣の密やかな楽しみだった。

 高級品ではないにしろ、旧き良き時代を感じさせる上品な木製のテーブルセットと煉瓦造りを基調とした落ち着いた雰囲気の店内には、静謐とした空気が流れ、そこにいると時が歩みを緩めたように、ゆっくりと感じられる。

⏰:22/10/07 19:08 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#981 [○○&◆.x/9qDRof2]
 客は、麻衣一人きりだった。適度にボリュームの押さえられた音楽は、古い洋楽だろうか。
 懐かしいような気分にさせてくれるが、そのどれもが麻衣は知らない曲ばかりで、辛うじて分かったのは、今掛かっているプラターズの「煙が目にしみる」くらい。しっとりと情感に富んだそのメロディは妙に店の雰囲気と合っている。

⏰:22/10/07 19:08 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#982 [○○&◆.x/9qDRof2]
ふと、麻衣は人の気配を感じた。と、同時にコトッと小さな音が耳に届き、目の前の木製のテーブルに覚えのないグラスが置かれた。

「――集中するのはいいけどね」

 そんな言葉とともにテーブルの上に現れたもう一つのグラスと文庫本。誘われるように、麻衣は顔を上げていた。

「温くなってしまって、もったいないよ、佐々木」

⏰:22/10/07 19:08 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#983 [○○&◆.x/9qDRof2]
ここのアイスコーヒーは美味しいんだから――耳に心地好く響く低音に乗せて、彼は微かに笑った。

「……英輔」

 麻衣の呟きに返事を返して、彼――木戸英輔は麻衣の対面に腰を下ろした。

「コーヒー、ありがとう」
「ああ」

⏰:22/10/07 19:09 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#984 [○○&◆.x/9qDRof2]
 早速ストローの封を切って、新しく渡されたグラスに差し込む。
 黒色の中に仄かな褐色を残した液体は、掻き混ぜるごとに小さく渦を巻いていた。口に含めば、先程までの水に薄まったそれとは比べものにならない刺激が、冷たく舌を刺す。

 新鮮なブラック特有の苦味と酸味に、麻衣は満足した溜息を零していた。
 そんな麻衣を一通り見遣ってから、英輔もグラスを傾ける。麻衣のようにストローは使わなかった。

⏰:22/10/07 19:09 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#985 [○○&◆.x/9qDRof2]
「……さっきから何度も呼んでたんだけど」
「そうなの? ……ごめん。気が付かなかった」
「だろうね。どうせ、それを読んで別の世界にでも行ってたんだろう」

 英輔が麻衣の手元を指差す。閉じられた本の背表紙が見えた。

⏰:22/10/07 19:09 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#986 [○○&◆.x/9qDRof2]
「それ、面白いの?」

 「それ」と英輔に称されたのは、麻衣も初めて知ったような無名の作家が書いた「365日盆栽白書」。

「盆栽のことが書かれた小説ねぇ……」

 声に小さな笑いが混じっていたことに、麻衣はむっとした。

「……別にいいじゃない」
「まぁね。けど、相変わらず、オッサンだね」

⏰:22/10/07 19:09 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#987 [○○&◆.x/9qDRof2]
 オッサンとは、二十代をまだ半ばしか過ぎていない女性に対して、失礼である。
 が、自分に対する評価としては言い得て妙だと麻衣は思った。自身の趣向が一般からは少し外れたものだということは、麻衣自身、常々認識していたからだ。

⏰:22/10/07 19:10 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#988 [○○&◆.x/9qDRof2]
麻衣は盆栽が好きなのだ。昨今女性にも人気のあるミニ盆栽などという可愛いものではない。もちろん、大品盆栽――樹の高さが五十センチメートル以上になる種類――だ。それも「松臣」や「桜御膳」など、鉢一つ一つに名前を付ける程の凝りよう。

⏰:22/10/07 19:10 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#989 [○○&◆.x/9qDRof2]
「普通、盆栽が題材の小説なんか買わないよ。しかもタイトルだけで衝動買いって」
「煩い」
「黙ってたら美人なのに」
「煩いってば」

 暗に麻衣の恋愛経験値の低さを言われたようで、英輔の言葉に麻衣は羞恥に頬を染めた。

 英輔の言うように、麻衣は美人だった。

⏰:22/10/07 19:10 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#990 [○○&◆.x/9qDRof2]
無駄がなく涼しげな顎の湾曲に合わせたかのように、きゅっと持ち上がった勝ち気そうな唇とその上に乗った切れ長の瞳。
 身長もあり全体的に細く、長く艶やかな黒髪が一層華奢に見せている。だが、その身体つきに似合わず、胴体のラインは緩やかな曲線を描き意外にもボリューム豊かなことが一目でわかる。
 正に容姿端麗を地でいくような恵まれた容姿。

⏰:22/10/07 19:10 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#991 [○○&◆.x/9qDRof2]
それなのに、口を開けば出てくる言葉は盆栽関連のものばかり。晴れた休日は盆栽の剪定に精を出し、日がな一日盆栽を愛でて恍惚の眼差しを向ける。一言で言えば変わっていた。
 過去に付き合った男で一月と保った者はなく、またその人数も片手だけでも余るくらいだ。

⏰:22/10/07 19:11 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#992 [○○&◆.x/9qDRof2]
その容姿に惹かれて、ふらふらと寄ってきた男は皆、麻衣の偏愛の激しさに閉口してすぐに離れていく。
 もっとも、麻衣にしても彼等に心惹かれる何かを見出だすことはできなかったのだが。
 幼馴染みの英輔は、その全てを一番近くで見ていた。

⏰:22/10/07 19:11 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#993 [○○&◆.x/9qDRof2]
「英輔だってモテた試しはないでしょう。顔はいいのに」

 麻衣は当て擦りのように語尾も荒く言い返す。

「ああ……、何でだろうな」
「動物オタクだからでしょう」

 間髪を入れずに答えると苦笑が返ってきた。

⏰:22/10/07 19:11 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#994 [○○&◆.x/9qDRof2]
掘りの深い目元はいつも優しげに細められていて、高く整った鼻梁が甘いマスクを演出している。物腰穏やかな声音はアリアの歌い手のように、柔らかなテノール。
 髪が寝起きのままのように所々跳ねていることだけが残念だったが、それでも、英輔も麻衣に劣らず、外国の映画俳優顔負けの好青年だった。

⏰:22/10/07 19:11 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#995 [○○&◆.x/9qDRof2]
しかし、こちらも麻衣同様、極度の動物好きなのだ。動物好きと言えば聞こえはいいが、最早愛好者という段階ではない。
 麻衣はその人のことを詳しくは知らないが、唯一の彼女であった大学時代のクラスメイトが吹聴していた話では、「彼は人に興味がない」らしい。

「何?」
「……別に。何でもない」

⏰:22/10/07 19:11 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#996 [○○&◆.x/9qDRof2]
素っ気なく答えてみるが、頭の中ではそのクラスメイトの顔を思い出していた。甘いお菓子や花なんかがよく似合う、小動物のような可愛らしい顔立ち――思い出して、僅かに眉間に皺が寄ったのが自分でも分かった。

「ふーん」

 何か察したのだろう。言ったきり、英輔は追及してこなかった。

⏰:22/10/07 19:12 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#997 [○○&◆.x/9qDRof2]
彼女が告白を押し通したような形だったのだが、それなりに長く付き合いは続いていたらしい。
 だが、英輔は優しくてよく気が付くわりに、男女の関係となると途端に鈍くなるという。“そういうこと”に対する意識は始終上の空で、結局、キスをすることさえなく別れたのだそうだ。

⏰:22/10/07 19:12 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#998 [○○&◆.x/9qDRof2]
確かに学生時代から英輔の話すことと言えば――これまた麻衣に通じるものがあるが――、種の遺伝子レベルから始まる話ばかりで退屈そのものだった。恋愛に関して奥手だろうということも、麻衣には何とはなしにわかっていた。

⏰:22/10/07 19:12 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#999 [○○&◆.x/9qDRof2]
それでも、麻衣の知る限り、英輔が彼女を見る瞳には優しい光や愛おしさに溢れていた。そこに、英輔が心惹かれていた動物への愛情をまるで越えた、別の、大きな愛情が存在していたことは一目でわかった。

 それなのに。

『セックスもキスもできないなんて、顔だけの無能な男』

⏰:22/10/07 19:12 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#1000 [○○&◆.x/9qDRof2]
そう、彼女は言い捨てたのだそうだ。
 彼女の言いたいこともわからないでもない。女だって――いや、女だからこそ好意を感じる為に行為を求めるのだ。
 それができなかった英輔にも問題はあるのだろう。彼女ばかりに非がある訳ではない。

 ただ、それを、他人に面白おかしく吹聴することが麻衣には許せなかった。英輔は真剣だったのだから。

⏰:22/10/07 19:13 📱:Android 🆔:GR1soPvw


#1001 [我輩は匿名である]
このスレッドは 1000 を超えました。
もう書けないので新しいスレッドを建ててください。

⏰:22/10/07 19:13 📱: 🆔:Thread}


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194