クソガキジジイと少年」
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#401 [ザセツポンジュ]
そんな事は
どうでもいいだろうと突っ込むヤツがいてこそ日本のくそ田舎だ。
梅昆布茶をこよなく愛するトミーは演説を続けた。
「1、2年の女子!これからは春も夏も秋も冬も俺がこのしょうもないくそ田舎の中学校を引っ張って行く!心配することは0、5ミリもない。まぁ一つ心配なのは、俺がこの中の誰かに恋をしてしまい、恋に溺れ、生徒会長と言う立派な地位を捨ててしまうんじゃないかと言う事だ。」

⏰:06/09/05 22:58 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#402 [ザセツポンジュ]
『キャ━━━━━!!!!!!トミー!!』

トミーは人差し指を立て口元へあてた。

体育館中に響き渡っていた黄色い声も
徐々に静かになっていく…。

⏰:06/09/05 23:01 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#403 [ザセツポンジュ]
「そんな事あるわけないだろ!キャンキャンキャンキャンうるせーぞ!ゆみちゃんを見習えボケ!」


男子達から笑いが起きた。
女子達は、ゆみちゃんを白い目で見てバカにしたように笑った。
おとなしく演説を聞いていたゆみちゃん。
いつもひとりで漫画を描いているゆみちゃん。
物動じせず自分の道をつらぬき通すゆみちゃん。
話すのが苦手なゆみちゃん。

⏰:06/09/05 23:11 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#404 [ザセツポンジュ]
「ホントに言いたかった事はここからです。今ゆみちゃんを見て笑った人。バカにしたような目で見た人。俺はそういうヤツが大嫌いだ。」


体育館は、シーンとし、緊張した空気が一気に張りつめた。

⏰:06/09/05 23:15 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#405 [ザセツポンジュ]
「名指しにして悪いけどゆみちゃんだけじゃない。ちょっと人と話すのが苦手で大人しいだけのヤツを、暗いと勘違いしていて、汚い物を見るかのような目で見ていますが、絵を一生懸命描いているゆみちゃんを、俺は素敵だと思います。ゆみちゃんは文句も言いません。なのに、その辺の女子はコソコソ何か言ってバカにしながら、横を通り過ぎる。そんなのはやめにしようと俺は言いたい。」

⏰:06/09/05 23:22 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#406 [ザセツポンジュ]
「団結していれば人数が多い分、強いと思ってしまうと思います。でも一人で黙って文句も言わず、自分を殺し、相手を傷つける事もできないし、はなから傷つけようとも思っていないかもしれないその人達の優しい気持ちもちゃんと考えていけるような優しい学校にしたい。」

女子達はもはや、トミーの顔を見れなくなっていた。

「と言う事で、夜は寝る前に歯を磨け、寝起きの息は誰でも臭いぜと言う名言を残し、終わりたいと思います。木田トミオ。」

⏰:06/09/05 23:29 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#407 [ザセツポンジュ]
そのわけのわからない名言で少しやわらぎ
拍手喝采が
トミーを包んだ。

笑顔で体育館裏に、はけたトミーは次の演説を控えたジョウの肩を抱き抱えた。

⏰:06/09/05 23:32 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#408 [ザセツポンジュ]
「俺のかっこよさ分かるか?お前。無駄な演説だとは思うが頑張れよジョウジロウちゃん」

ニヤニヤニヤニヤしながらトミーはジョウを応援した。

⏰:06/09/05 23:34 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#409 [ザセツポンジュ]
「続きまして、鈴木ジョウジロウ君。」

エノシタさんのアナウンスにジョウはドキっとした。

「えぇ……。ボクは全て人並みの人間です。生徒会長になってみんなを引っ張って行けるとはとても思っていませんが、何か行き過ぎたマネをした木田トミオを止める力なら多少はあります。学校をまとめようとする木田トミオに協力する力は多いにあります。だからボクは生徒会役員となっていい学校を作りたいと言う気持ちは胸の中にたくさん詰まっています。」

⏰:06/09/05 23:41 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#410 [ザセツポンジュ]
「僕には友達がいます。大切です。木田トミオくんのおじいちゃんが昔言っていた言葉を紹介したいと思います。

《ワシは友達よりも確実に先に死ぬだろう。だから親や、ましてやこんなジジイの事よりも友達を一番に大切にしなさい。友達を大切にしていれば一生一緒にいて支えてくれる。》」

⏰:06/09/05 23:48 📱:W41S 🆔:cnUr1D/E


#411 [みぃ]
いい言葉やぁ

⏰:06/09/05 23:54 📱:W41SA 🆔:yezqlFqo


#412 [我輩は匿名である]
>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500

⏰:06/09/06 00:04 📱:P902iS 🆔:r6JdMDAY


#413 [ザセツポンジュ]
「親を邪気に扱えとは僕は言いません。見かけで判断するのではなくて一生一緒にいてくれる友達を大事に思い大切にしていこうと言う気持ちを持っていい学校にして行きたいと思います。終わります。」

⏰:06/09/06 17:08 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#414 [ザセツポンジュ]
こうして
二人の演説は終わった。

言う間でもないが
生徒会長は
ニューヨークシティに向けて演説をした
木田トミオに決まった。

⏰:06/09/06 17:11 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#415 [ザセツポンジュ]
「今日さぁ〜ぁ〜就任祝いに〜#7791エリアカフェ行かない?ジョージ〜」
イタリアの娼婦気分でトミーは嬉しさのあまり放課後ジョウに抱きついた。
「ジョージって誰だよ!気持ちが悪いよ。」ニタニタニタニタしたトミーの気持ち悪さったらこれ以上はなかった。

「おごれ。ジョウジロウちゃん。強制だ。行くぞ。」

無理矢理かりだされて、ジョウジロウちゃんとトミーはエリアカフェへと向かうのでした━。

⏰:06/09/06 18:37 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#416 [ザセツポンジュ]
そんな選挙で追われていた中、老人二人はまた妙な事を考えていた。
「すーさん、ワシは思うんだよ。ホームランを打った野球選手が一周走る必要性はどこら辺にあるのかいっぺん説明して欲しいと切に願っているのはワシだけか?」

こちら、階段の急な、老人心臓破りの鈴木家リビング━。

⏰:06/09/06 18:42 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#417 [ザセツポンジュ]
「え?空ちゃんがワシを好きになって他の席を回るのも忘れてワシのところへずっと座ったまんまだと店長に怒られてクビになってワシと結婚とならないか切に願うって?そりゃそうだな。…ウヒヒヒ…ヒヒ。」

すーさんは梅昆布茶片手に右ななめ上をぼんやり眺めながらスケベな事を考えていた。

「ちょっと電話をかけるが静かにしていてくれすーさん。」

「お?あぁ。どうぞ。」

⏰:06/09/06 18:46 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#418 [ザセツポンジュ]
きーさんは、胸のポッケから最新機種だと思い込んでいる老人用の携帯電話を取り出して3つの数字をプッシュした。

「あっ。こんな昼間からすいません。わたくし木田と申します。…ええ、あんの〜ウチの隣に生息しております鈴木さんと言う、まぁ〜ざっと62歳くらいかと思われますが、えぇ、えぇ。はい、そうですそうです。とんでもないスケベの。」

⏰:06/09/06 18:51 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#419 [ザセツポンジュ]
「その鈴木さんが、ちょっと今流行りの認知症と言いますか。わけのわからない事をワーワーキャーキャーわめいちゃあ、梅昆布茶をふきだしていますので、はい、ちょっとわたくし近所の住人も大変迷惑しておりましてですね。」

すーさんはスケベスイッチを止め、我に返った。
「きーさんどこへダイヤルまわしたんじゃ。」

⏰:06/09/06 18:55 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#420 [ザセツポンジュ]
そんなすーさんの質問はフルスルーしてきーさんは電話を続けた。

「あ、はい。そうですねぇ。じゃあお願いできますか。救急車。えーっと住所は…郵便番号から言います791の…」

「ちょちょちょちょちょ、ちょい待てよ!」

すーさんはきーさんの携帯電話を奪いとり通話を切断した。

⏰:06/09/06 18:58 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#421 [ザセツポンジュ]
「なんだすーさん。今のは。キムタクのつもりかね。」

「ん?だろう。かっこよかっただろう。」

「謝罪しに行きなさいジャ○ーズ事務所まで。」
きーさんは冷静に謝罪を進めた。

「きーさん!そんな事よりなぜワシを病院送りにさそうとするだ。説明してくれ。」

「…ワシは野球の話をしていた。すーさんはうそつき空ちゃんの話をした。腹が立った。病院から出てこなければいいと思った。それだけだ。」

「きーさん。そんっな冗談じゃないか。怒らないでくれ。まだワシはキャバクラ遊びがしたいのだよ。」

⏰:06/09/06 19:08 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#422 [ザセツポンジュ]
そう言ってすーさんは再び梅昆布茶を手に取ろうとした瞬間━。


「おぃ!木田シゲル!お前今、空ちゃんにうそつきと言うフレーズを足してなかったか!!!!!!どういうことか!!!!!空ちゃんをバカにするんじゃあないよ。ワシに殺されたいのかね!!!!」

⏰:06/09/06 19:12 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#423 [ザセツポンジュ]
すーさんはものすごい剣幕でまくしたてた。「お?さっそく必殺つば飛ばしで殺そうとでもしているのかねすーさん。」

顔に飛び散ったすーさんのツバをキレイなタオルで拭き取りながらきーさんはため息をついた。

いきなりボルテージを上げたすーさんは過呼吸を起こすまさにカウント3秒前だ。

「すーさん。じゃあ空ちゃんに会いに行って見るか。どんだけうそつきか。」

⏰:06/09/06 19:15 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#424 [ザセツポンジュ]
過呼吸になりそうな苦しさも、空ちゃんの笑顔を思い出しただけで、すーさんの呼吸は通常の値に戻った。
「そうだな。今日あたり行ってもいい頃だよきーさん。いい提案だ。よし!行こう!」

つい3日前も一人で足を運んだすーさん。

「またあとでな。」
すーさんが風呂に入る支度をしたところできーさんは自宅へ戻った。

⏰:06/09/06 19:20 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#425 [ザセツポンジュ]
コンコンコン。

「トーミオちゃん。おじぃちゃんとお話しーましょ。」

ガチャ。

「入っていいって言ってないだろ!俺を何歳児だと思ってるんだクソジジイ!」

ふと下に目を向けたきーさん。

「やかましいわ!14年しか生きてないクソガキがえらそうな口を叩くんじゃない!このせんずり小僧!」

トミーはきーさんの目の向かう先にある
いかがわしいビデオを手に取り、引き出しにしまった。

「……で、何の用事だ。」

⏰:06/09/06 19:27 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#426 [ザセツポンジュ]
「まぁ、今日はじぃちゃんの話を聞け。お前、あれだ。多分すーさんの孫だな。」

「やめてくれ。俺は将来あんなしょうもないジジイにはならない、確実に。62歳になってもダンディでちょい悪で女にモテまくっている俺がいるはずだ。」

⏰:06/09/06 19:32 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#427 [ザセツポンジュ]
「いやいやいや、すーさんだって昔ホントにモテていたんだぞ。この街の象徴と言えば鈴木さんとこのヒトシ君だろと言っても過言ではなかったよ。なのに今は、あんな落ちぶれスケベジジイだ。」

トミーはかすかに聞こえる隣の老人の風呂場からの歌声に寒気を感じた。

「じぃちゃん。その話やめにしないか。」

「まぁ待てよく聞け最後まで。ホントに女を使う事ばかり考えると将来あぁなるぞ。すーさんがいい例だ。怖くないのかトミオよ。ワシゃ心配だよ」

⏰:06/09/06 19:38 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#428 [ザセツポンジュ]
「俺は使っているつもりはないよ。俺の心を動かすくらい、いい女がいっこうに現れないからいけないんじゃないか。現れるまでちょっとくらい遊んでもいいじゃないか。」

きーさんはトミーの目を10秒ほど見つめた。

⏰:06/09/06 19:42 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#429 [ザセツポンジュ]
「相手が現れる現れないの問題ではない。お前が現れるのを恐れて逃げているからだ。」
トミーは黙ってつばを飲み込んだ。

「まぁな。大好きになった人がいなくなるのは辛い。忘れられてしまうんじゃないかと思うと寂しい。離れて行くのは悲しい。そればかり考える自分が虚しい。でもそんな感情があってこそ人間だよ。」

⏰:06/09/06 19:45 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#430 [ザセツポンジュ]
トミーは壁に持たれかかって下を向いた。


「トミオ。こんな話したらお前は悲しい気持ちになるだろうが言わせてもらう。ママはお前を忘れてなんかいない。じぃちゃんが保証する。ママはキレイでいい女だ。なんてったってここらでは3本の指にはエントリーされるほどの店にしたクラブのママだよ。ただ人より少しワガママなところがあった。そして人一倍責任感が強かった。」

⏰:06/09/06 19:50 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#431 [ザセツポンジュ]
ポタン
ポタン━。

床には一粒一粒
トミーの中の強がりが体の外へ引越しをしている。
「ママは恋のかけひきのスペシャリストだ。だからよく分かっている。お前を愛しているから心の底から愛しているからこそお前に会わない。ワガママな自分をママ自身が許せないからだ。お前は自分勝手なママだろうと、どんな人だろうとも、いい匂いのするママが大好きだろう?許すだろう?それが申し訳なさすぎて見てられないからだよ。」

⏰:06/09/06 20:00 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#432 [ザセツポンジュ]
「まぁ、そこもママのワガママなところだがな。でもじぃちゃんは胸を張って言える。ママは一生お前の事が大好きで一生お前に片思いのピュアな女だと言う事だよ。お前がママを引きずる分、ママはまたとんでもない事をした自分を悔やみ、心の中は大雨だ。ママが悪いのは100も承知だよ。人間、忘れると言う都合のいい機能はポンポン使うが、許すと言う機能をなかなか使いこなせない。許すことは当たり前に難しい。」

⏰:06/09/06 20:08 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#433 [ザセツポンジュ]
きーさんはトミーの肩を抱いた。

「トミオ。ママが大好きならママを許そう。人を好きになろう。今すぐじゃなくていい。ゆっくりでいい。すーさんみたいになるお前を想像するとワシは天国でウカウカ遊んでられないよ。」

そうしてきーさんは、泣きじゃくるトミオの頭を撫でて部屋を出た。
すーさんをそろそろ迎えに行かなくちゃ。

⏰:06/09/06 20:12 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#434 [ザセツポンジュ]
感動的な時間を過ごす木田家をよそに
鈴木家では戦争が起きていた━。
「このドウテイ野郎!お前まさこの散歩をサボってタダで済むと思っているのか!」
メスだと思い込んでいる我が愛犬が散歩を忘れられてしょぼくれているところをたまたま見てしまったすーさん。
「今日ボクじゃないよ、じぃちゃんだよ。見てみてよカレンダー。」
10秒ほど1m先にあるカレンダーを見つめたすーさん。
「はぁ!?あれはウソだ!日付も西暦も全部ウソで、しいて言うなら去年のカレンダーじゃ!ワシゃ老眼で何も見えんわ!」

⏰:06/09/06 20:26 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#435 [ザセツポンジュ]
「言ってる事がめちゃくちゃだよ!じぃちゃん!ボクはもううんざりだよ!今日からじぃちゃんの孫を辞退するよ!さようなら!」

腹を立てたジョウは
急な階段を一気にかけあがり部屋に駆け込みバタンと戸を閉めた。

⏰:06/09/06 20:30 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#436 [ザセツポンジュ]
コトッッ━━


コトッッ━


コトッッ━

地味な物音が長く続いた。

「シュン……シュン…」
老人のすすり泣く声が部屋の戸のすぐそばで聞こえてきた。
ジョウは少し言い過ぎたかなと反省した。

あんな急な階段を仲直りするために一生懸命登ってきた祖父の姿を想像すると少し胸が痛かった。

⏰:06/09/06 20:33 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#437 [ザセツポンジュ]
ジョウはドアノブに手をかけた。
(ごめんねって謝ってボクがまさこの散歩へ行こう…。)

一方すーさんも鼻水を止めて口を開いた。
「…ジョージ。」


カチャン。

「ボクの名前はジョウジロウです。さようなら。」

鍵をしっかりと閉めたジョウジロウちゃん。
ジョウは孫の名前を間違えた自分ちのじいさんに失望し、こないだイタリア娼婦気分だった時のトミーを思い出したため、ダブルパンチをくらった。

⏰:06/09/06 20:38 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#438 [ザセツポンジュ]
「名前間違ったくらいでイヂけるんじゃないよ!むしろジョージの方がシャレた名前だろ!せっかく仲直りしようと思ったのに、この気持ちを踏みにじったお前は少年院行きだ!バカヤロウ!ワシはな!今日空ちゃんと言う恋人に会いに行くのだ!そんな老人に気を使う事もできないのか!そんなは絶対《ヤラハタ》だぞ!ヤラハタの意味分かるか!ヤラずにハタチを迎えるヤツの事だ!要はしょうもない童貞野郎の事だ!お前だ!」

⏰:06/09/06 20:44 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#439 [ザセツポンジュ]
すーさんは息切れをしながら
階段を一段一段ヒョコヒョコと降りて行った。

ジョウのストレスは一気に上昇した。

すーさんから受けるストレスは
14歳の少年にはあまりにもきつすぎるであろう。
しかしジョウはゆっくり深呼吸をし
気持ちを落ち着かせた。

(友達を大切にしよう。友達を大切にしよう。)

⏰:06/09/06 20:48 📱:W41S 🆔:MSsJL6VA


#440 [ザセツポンジュ]
━━━━

タクシーに乗り込んだジジイ二人。
「ところできーさん。うそつき空ちゃんとはどういう意味だ。」

「すーさん。空ちゃんが今までにやったバイト何か覚えているか」
「…マックだろ」

「時給いくらで雇ってもらっていたか覚えているか?」

「え〜…ぃゃ〜…1500円だったか」

「ありえない話だろ。」
「空ちゃんかわいいだろう。当たり前だバカ。ひとつもおかしくないぞ」

⏰:06/09/07 00:21 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#441 [ザセツポンジュ]
きーさんはあきれかえってため息をついた。
「すいません運転手さん。ここで止めてください。」

「ん!?きーさん。どうしたんだ。」

「すーさん。ちょっと1件寄るところがある。降りてくれ」

すーさんは疑いもなくタクシーを降りた。

⏰:06/09/07 00:25 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#442 [ザセツポンジュ]
すーさんが地に両足をつけた瞬間
きーさんはおもいくそドアを閉めた。

「運転手さん。出してください。あのじぃさん頭がちょっと悪いんですよね。さぁ早く早く。あーもぅ、早く。」

きーさんはすーさんを取り残し

一人飲み屋街へと向かった。

⏰:06/09/07 00:29 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#443 [ザセツポンジュ]
━━カランカラン

店のドアを開けると
高級感の漂う
大理石、
ソファ。
グラス
シャンデリア━。

空ちゃんのいる
ちゃんがら屋とは
別世界のお店だ。

「いらっしゃいませ。木田様お待ちしておりました。」

⏰:06/09/07 00:33 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#444 [ザセツポンジュ]
「ママはおられますか今日は。」

「はい。今お呼びします。お席の方ご案内します。」

ほこりひとつない
キレイなソファに
きーさんは座った。

淡い桃色の着物を着た
背筋の真っ直ぐのびた美しい女が向こうの方から歩いてくる

「いらっしゃいませ。」

困ったようにいつも笑うママが
今日も困ったような笑顔できーさんの隣に座った。

⏰:06/09/07 00:39 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#445 [ザセツポンジュ]
「お前、困ってるのか嬉しいのかいつもはっきりしろと言っているだろう。キレイないでたちが台無しだぞ。」
きーさんはニッコリ笑った。

「すみません。」
きーさんの笑顔にホッとした表情を浮かべ
ママはニッコリ笑い

キレイな手で
グラスにアイスを
運び
ブランデーを注いだ。
「トミオがな、生徒会長になったぞ。」
きーさんはタバコをくわえ、ママは素早くそっとマッチをすった。
「ええ!トミオが?あの子大丈夫なんでしょうか…」

きーさんはタバコをふかした。

⏰:06/09/07 00:44 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#446 [ザセツポンジュ]
「服も店員並みにキレイにたためるし、目玉焼きだってうまくできる。塩コショウの加減も抜群だ。ちなみに、チャーハンの元ナシでチャーハンも作れるし、習字も習っていないのに字もキレイだ。」
ママは深くうなずきながらきーさんの話を聞いた。

「全部お父さんのおかげですね。」

「そうだ。ワシが教えた。」

⏰:06/09/07 00:49 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#447 [ザセツポンジュ]
きーさんは得意気な顔でニンマリ笑った。
「ワシが教えた。」


調子に乗りもう一度繰り返した。
きーさんは今までトミーと過ごした日々を思い出した。


「ワシが教えた。」

満面の笑みを浮かべ
また同じセリフを吐きやがった。

「………ありがとうございます。」

ママの声も届いてはいない。
今まさにきーさんは
トミオと過ごした日々の数あるなかの5年前の記憶をたどってニヤニヤニヤニヤしているところだ。

⏰:06/09/07 00:55 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#448 [ザセツポンジュ]
「そうだ。でもそれはワシのおかげではあるが、トミオがいつかあんたが帰ってきた時に誉めてもらえるようにと心の奥底からずっと思っていたから上達したに違いない。」

ママは涙を浮かべた。
でもグッとこらえた。
大好きな我が息子を捨ててまでも

この仕事だけは毎日しているのだから

泣いてはいけない。

⏰:06/09/07 01:02 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#449 [ザセツポンジュ]
━━━

こちらちゃんがら屋。
「空ちゃん空ちゃん、この人だーれだ!」

「すーさん☆」

「正解〜やっぱ空ちゃんはかわいいね〜」

すーさんはただの酔っ払いジジイになっていた。
空ちゃんがウソツキな事なんざどうでもいいのだ。
「第2問〜。この人だーれだぁ」

「すーさぁん!」

「あ〜空ちゃん今日は一段と可愛いねぇ…ヒック…正解でーす。」

3歳児でもあてられる質問で誉められる空ちゃんは幸せものだ。

⏰:06/09/07 01:26 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#450 [ザセツポンジュ]
「第3問目〜このイケてるおにいさんは誰でしょう〜」

「ぁ、きーさん!」

「はぁ!?胸くそ悪いヤツの名前を出すんじゃないよ。ブッブ〜不正解で〜す。そのきーさんてヤツは史上最強の最低最悪な歴史上人物の名前でした〜。……あ?」

すーさんは目を疑った。
前に座る見覚えのある老人を見るやいなや
頭を抱えた。
「すーさん。いやはや。やってるみたいだな。楽しそうに。」
「きーさん。ワシから映るビジョンであんただけが白黒に見えるよ。」
「勝手に殺さないでくれないかさっきから。明日眼科へ付き添ってやってもいいがな。別に。」

⏰:06/09/07 01:33 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#451 [ザセツポンジュ]
きーさんご指名の
きららちゃんが登場した。
「きーさん久しぶりだね。失礼しまぁす。」
「やぁやぁ。先に好きなもの頼みなさい、きららちゃん」

きららちゃんはニッコリ笑い、きーさんのお酒を作る作業に取りかかった。

ふと、きーさんは
マドラーを回すきららちゃんの手を見つめた。

⏰:06/09/07 01:37 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#452 [ザセツポンジュ]
「きららちゃん、最近コケたのかね。どっかて打ったのかね。」

きららちゃんのコブシの下あたりに赤い小さなあざがポツポツとできていた。

火傷でもないし、打ったにしては小さすぎる。
きーさんは疑問を持った。

⏰:06/09/07 01:40 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#453 [ザセツポンジュ]
「あ、これ…は…そうなのちょっと打っちゃって。ヘヘへ。」

きららちゃんが気まずそうに笑った。
きーさんはそれ以上は聞かなかった。

「空ちゃんチュウは?」
「きゃー!すーさん恥ずかしいから二人きりのところで…ね?」
すーさんは目をつぶっているが

空ちゃんは完全に
引いていた。
顔のひきつりなんて尋常じゃない。

⏰:06/09/07 01:45 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#454 [ザセツポンジュ]
今宵楽しい一時を過ごしたすーさんは
満足そうな笑みを浮かべ
「ペケ。」
ボーイにチェックを言い渡した。

帰りのタクシーの中ですーさんは恒例の過去の栄光について
語った
「ワシだって昔はすごかったんじゃよ。月曜日にゃ抱いてオーラを放つ女子が家を押し掛け、火曜日にゃこの街一番のかわいこちゃんと手を繋ぎハニカミデートで水曜日にゃ…」
(あの手のあざはどうやったらできるんだ…う〜ん…)
きーさんは聞き飽きたすーさんの自慢話をよそにきららちゃんの手のあざの事で頭がいっぱいだった。

⏰:06/09/07 01:54 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#455 [ザセツポンジュ]
「あ、すいませんここでワシは降りますので。すーさん。お先に失礼おやすみよ。」
「はぁい、パイパーイ。」
きーさんは決してすーさんと家が隣ですと運転手に教えない。

すーさんは運転手に散々右だの左だの言いながら自慢話を繰り返し話し、運転手に完全に嫌われたところで気がすみ、きーさんをおろした同じところにまた止まる。
「はぁいおやすみよ〜。」

すーさんは死にたくないためか急な階段を登らず、リビングで夢の中に入った。

⏰:06/09/07 01:59 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#456 [ザセツポンジュ]
いつもならすーさんが家路につく頃には
いい夢を見ているきーさんも今日ばかりは
部屋で考え事をしていた。
(手の甲を怪我する方法……きららちゃんはストーカーに狙われていました。裏拳をかわした相手の鼻がさきっちょがやたらとがっていたため、きららちゃんはちょっとしたアザができました……。うん。700%ありえないな。)

きーさんは思考回路をフル回転にさせたが
いつの間にか眠りについたのであった。

⏰:06/09/07 02:05 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#457 [ザセツポンジュ]
翌日━。

きーさんはいつも通りに目が覚めた。
そしてカーテンを開け
窓を開けた。
「冷えるな朝は…。」
空気を吸い込み、すーさんの部屋を見た。

すーさんの部屋のカーテンが
もぞもぞしている。

ガラガラ━。
「わ!ゎゎゎゎゎ!」

⏰:06/09/10 01:22 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#458 [ザセツポンジュ]
「すーさん。ワシは長年連れそった友人だよ。そんな化け物を見るような目で見つめるんじゃないよ。」

すーさんは汚い顔をくしゃくしゃにして
大きなあくびをした。
「やぁやぁきーさん。おはよう。目が覚めるのが同時なんて珍しい事だ。#7791カフェのみーちゃんにでも会いに行かないかね?」

⏰:06/09/10 01:25 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#459 [ザセツポンジュ]
きーさんは、大きくうなずいて、顔を洗いに下へと降りて行った。
昨日の夜から考えているきららちゃんの手の甲のあざ━。

きーさんは顔を洗いながらも
難しそうな顔で
考えていた。

⏰:06/09/10 01:27 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#460 [ザセツポンジュ]
「小夜子ストロベリーふたつ」

「みーちゃん、先に梅昆布茶をワシにひとつ。」

今日もかわいくて小さくて色の白いみーちゃんは
「了解生コン☆」

笑顔で言ってくれた。

⏰:06/09/10 01:30 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#461 [ザセツポンジュ]
「なぁきーさん、ワシは悩むよ全く。空ちゃんとみーちゃん。…空ちゃん。みーちゃん…。空ちゃ…」

「すーさん。短刀直入に言うが、お前が選ぶ立場ではないと言う事を頭に入れて置くんだな。62にもなってみっともないぞ。」
きーさんは、窓の外をぼんやり見つめながら難しい顔ですーさんに忠告した。

⏰:06/09/10 01:33 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#462 [ザセツポンジュ]
「きーさん。今日は何を考えているんだ。」
すーさんは少し心配気味にきーさんの眉間のシワの数を数えていた。
「…あのな、すーさ…」

「おまたせしました、梅昆布茶…」

「みーちゃん。みーちゃん。かわいいねぇ。今日も。ウフフフフ。」

すーさんは親友のきーさんの悩み事よりも
一瞬登場する小さくてかわいいみーちゃんの方が大事なのだ。

⏰:06/09/10 01:37 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#463 [ザセツポンジュ]
きーさんは、この隣に生息している老人と、なぜ今日と言う今日まで一緒にいてしまう友達なのか、心底自分を疑った。

「気持ちが悪いぞ、すーさん。そろそろリハビリテーションの時間じゃないのかね?行かなくて大丈夫か。」

「このヴォケ!ワシはどっこも悪くないわ!」

そしてどこも悪くないすーさんは梅昆布茶をすする。
「ぅあちちちち。」

すーさんは猫舌なのだ。

⏰:06/09/10 01:43 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#464 [ザセツポンジュ]
オシボリで口をちょちょいとふいたすーさんは梅昆布茶が冷めるまでの間、タバコを手に取り火をつけた。

「なぁ。すーさん。手の甲に小さいアザをつくるにはどうしたらいいのかね。」

すーさんはきーさんの顔を3秒ほど見つめ、自分の手に持っているタバコときーさんの顔を交互に見て
決心したかのように
きーさんの手の甲に
タバコの火を近づけた。

⏰:06/09/10 01:48 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#465 [ザセツポンジュ]
「いやいやいやいやいや。君は間違っているよ。テストなら0点より下だ、すーさん。」
きーさんはさっと手を後ろにしまった。

「きーさん。あんた何がしたいんだね。」

「質問を変えよう。ここに小さなアザがポツポツと出来ている子がいたんだが、何をして出来たのだと思う?」

きーさんは昨日きららちゃんが手の甲に小さいアザを作っていたところを指差した。

⏰:06/09/10 01:53 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#466 [ザセツポンジュ]
すーさんは自分の手の甲を見つめ
真剣な眼差しになり

あまり息をしなくなった。

集中しているすーさんは、あまり呼吸をしない。

きーさんはこのすーさんが大好きだ。

⏰:06/09/10 01:54 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#467 [ザセツポンジュ]
「ウォ━━━━!!!!」
すーさんは立ち上がり
拳をそのままパックリ口の中に入れた。

「すーさん、すーさん。ワシが悪かったよ。質問が難し過ぎた。ごめんよ。パニックになるなすーさん。なんなら死んでくれ」

すーさんはスッポリ口の中に入ってしまった拳を、取り出して
そのままきーさんを殴った。

「どさくさにまぎれて死ねとは何だお前!」
きーさんの頭の上にはもはやヒヨコがピヨピヨ飛んでいる。

⏰:06/09/10 01:58 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#468 [ザセツポンジュ]
「お待たせしました………小夜子ストロベリーで……」

みーちゃんは気まずそうに小夜子を静かに置き去りにしてカウンターへ逃げてしまった。
きーさんを殴って気が済んだすーさんは
もうぬるくなった梅昆布茶で喉を潤した。
「きーさんよ。何をしようとしているんだね次は。」

⏰:06/09/10 02:03 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#469 [ザセツポンジュ]
ヒヨコがどこかへ去るのを見届けたきーさんがようやく戻ってきた。

「すーさん。もういい。アザの正体が分かってから話すよ。」

きーさんはパクリと一口小夜子を食べた。

⏰:06/09/10 02:07 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#470 [ザセツポンジュ]
「甘いなぁ。ワシはこんなにも甘い恋心を一体何度抱いた事があるのだろうか…」

ヒヨコを飛ばしていたきーさんもこのセリフだけは欠かした事がない。

きーさんの考え事は続いた。

⏰:06/09/10 02:11 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#471 [ザセツポンジュ]
━━
困った祖父を持ってしまった14歳の少年達も同じ日の夕方《エリアカフェ #7791》に来ていた。

「なぁかわいぃかわいぃちーちゃんよ。今月のクーポンもう来てる?」

ちーちゃんは手元にあったクーポン雑誌を
トミーに手渡した。

「これ今月の。お待たせしました小夜子ストロベリーです。」

トミーはクーポンと黄色いノートを小夜子ストロベリーのサイドに起き、めまぐるしく目の玉を動かしていた。

⏰:06/09/11 19:41 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#472 [ザセツポンジュ]
「トミー…物色するか探すか食べるかどれかにしなよ。欲張りな男だな。それにしても今日は小夜子ストロベリーを食べるなんて珍しいね。」
そう言ってジョウはいつものお約束、小夜子ストロベリー食べた。
「だってこのクーポンで安くなるんだもん。」

トミーはクーポン雑誌からエリアカフェの欄を見つけ、
小夜子ストロベリー100円引きと書いているところの点線をやぶった。
「……なんで小夜子好きのボクに今までそれを教えてくれなかったの?」

⏰:06/09/11 19:48 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#473 [ザセツポンジュ]
ジョウはクーポン雑誌にあまり興味がなかったためそんな事実がある事ですら把握できていなかった。

一方トミーは、いち早くトレンドのものを脳みその引き出しに入れておきたいがために、毎月必死に要チェックをしている。

安くなるなら一回くらい食べて見てやってもいいだろうと考えたのだろう。

⏰:06/09/11 19:51 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#474 [ザセツポンジュ]
「お前な、自分が好きなものなら自分の力で手に入れろ。人の情報をあてにするんじゃないよ………ん?」

トミーはスプーンをくわえたまんまクーポン雑誌の一部分に眉をひそめ目を落とした。

そんなトミーの様子を見たジョウも

クーポン雑誌をのぞきこんだ。

⏰:06/09/11 19:54 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#475 [ザセツポンジュ]
「エノシタさんじゃない!?」

ジョウはびっくりして少し声のボリュームをあげてしまった。
古着屋ミッシェルの上にある美容室の割引き券にエノシタさんが映っているのである。

トミーはジョウの顔とクーポン雑誌を交互に見た。
「お前やっぱエノシタさんが好きなんじゃん。俺はこっちを見ていたんだよ。」

トミーの指差した欄には美容室のコーナーではなく隣のページの

《新規OPEN★ホテルミラクル。休憩1000円割引き!宿泊半額★先着5名様》

新しく近所にできたラブホテルの欄だった。

⏰:06/09/11 20:04 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#476 [ザセツポンジュ]
「違います。ボクはエノシタさんに気付いただけです。」
ジョウはやたらキョロキョロしながら弁解をした。

「ジョウジロウちゃん。君は、ウソをついたり怒ったりすると丁寧語になるクセがある。」
トミーは意地悪な笑みを浮かべた。

「……怒っている方です。」

ジョウは小夜子をほうばった。

「そうか、そうか。」
トミーも、今日はジョウと同じ甘い甘い小夜子を食べた。

⏰:06/09/11 20:14 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#477 [ザセツポンジュ]
━木田家。


「トミオ。座りなさい。」
トミーは家に帰るなり、真剣な瞳で玄関にたたずむ我が祖父に素直に従った。
「なんだ、今日は。」
トミーは玄関に座った。
「立て。」
「え!?」
真剣な瞳が気色の悪い我が祖父を2度見した。
「じぃちゃんの部屋に来なさい。」

きーさんはそう言い残して自分の部屋へと移動した。

(なぜ一度座らせる必要があるんだ…あのクソジジイ。)

⏰:06/09/11 20:23 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#478 [ザセツポンジュ]
きーさんは部屋で仁王立ちで偉そうにかまえていた。

「じぃちゃん…何がしたいんだ。」

「決闘だ。」

「……どうしてだ。」
「…すーさんが腹立つ行動ばっかりするからだ。」

「おい、すーさんを直接殴ればいいんじゃないのか、それ。」

⏰:06/09/11 20:31 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#479 [ザセツポンジュ]
「いいかトミオ。じぃちゃんのココ。拳の下にちっちゃいアザを作るような攻撃をくわえる事だけを考えろ」

「じいちゃん。俺は110を押した方がいいのか?おかしいぞ。」

「つべこべ言わずファイ!!」

きーさんはトミーに飛びついた。

⏰:06/09/11 20:37 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#480 [ザセツポンジュ]
「気持ちが悪いぞ!コノヤロウ!」

トミーはきーさんを殺さない程度に叩きまくった。
「トミオちゃ〜ん」
きーさんはトミーの顔をベタベタ触りチューを試みた。
「死ねジジイ!」

トミーは、きーさんの手を思いきり噛んだ。
「イッチチチチチチ!」
きーさんは目をつぶり手を押さえた。

⏰:06/09/11 20:42 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#481 [ザセツポンジュ]
その時だった。


きーさんの脳内の小さい引き出しが全て開放されたのだ。

気が狂って、拳をまるまま口に入れたすーさん。

気持ち悪さに抵抗して思いきり噛みついた
我が孫、トミー。


共通点は歯形。


女の子がキレイな自分の手を口の中に入れる━━。



「ハッッッ!!分かったぞトミオ!!」

ゴツン━。

きーさんは嬉しさついでにトミーにゲンコツをくらわした。

「くぅ……ぅぅ。」

きーさんのゲンコツは痛いのだ。

⏰:06/09/11 20:48 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#482 [ザセツポンジュ]
「鈴木ヒト━━━━━━シ!!!!」
トミーは、たまらず隣の家のエロジジイに叫んだ。
「こんのクソガキやっかましぃわ!!!!62歳のジジイだと思ってなめるんじゃないよ!!!今大事なビデオを観賞中なんじゃ!!!!次叫んだら売り飛ばすぞこのボケタレ!!!」
ピシャン━。
すーさんは窓の鍵をしめてカーテンをきっちりとしめ電気を消したた。
「ムフフフ…」


「わぁ〜〜ん。」
トミーの両目から涙がちょちょぎれた。

やっぱりきーさんのゲンコツはとっても痛いのだ。

⏰:06/09/12 00:18 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#483 [ザセツポンジュ]
━━季節は冬になった。

寒い寒い
冬になった。

ジョウはまだストラップを渡せずにいた。

生徒会役員が集まる生徒会室にエノシタさんはいつもいた。

用事以外何にも話せないジョウがいた。

それとは逆にかわいくなったエノシタさんとも、他の女子ともわけへだてなく楽しそうに話しているトミーがいた。

⏰:06/09/12 00:30 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#484 [ザセツポンジュ]
ジョウは、いつもいつもエノシタさんだけを見ていたのだ。


だけれども、やっと気付いた。


自分の大好きな人の大好きな人は
イヤでも分かってしまうものなのだ。


(エノシタさん…いつもいつもトミーを見てる。ボクはエノシタさんをいつもいつも見てるから、よく分かってしまうよ。)

⏰:06/09/12 00:34 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#485 [ザセツポンジュ]
「おーぃ。ジョウジロウちゃん。何考えてんだ帰るぞ。」

ボケーっと夕焼けを見つめ、心を切なくさせていたジョウジロウちゃん。

心をしめつけられるような、泣きたくなるような、もどかしい気持ちが全身をかけめぐっていた。
「ん?うん…そうだね。」

トミーは、遠い目をしたジョウを少し見ていた。

「…どの辺を見てるんだ。」
「ボクの心の中を見ているんだよ。トミー。」

⏰:06/09/12 05:01 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#486 [ザセツポンジュ]
ジョウは白く淡いため息をついた。
そして少しくしゃくしゃになってしまって、渡せないまんまのストラップはポケットの中で冬眠している。

「……ジョウ。」
トミーは眉をひそめてジョウの顔を覗き込んだ。
「ん?」

「気持ち悪いぞ。詩人にでもなりたいのか。」

「……。それもいいね」

⏰:06/09/12 05:09 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#487 [ザセツポンジュ]
ジョウは特に言い返す力もなく、カバンを背負った。

「トミー。おうちへ帰ろうか。ボクは早く帰りたいよ。」

「お前変だぞ。変態だ。早く帰りたいのにも関わらず、1時間も夕日を眺めたお前は異常だ。ワガママだな。俺は待ってたんだぞ。」
「ごめんごめん。」

⏰:06/09/12 05:13 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#488 [ザセツポンジュ]
トミーは前を歩いた。
日が暮れて、薄暗い道を二人は1列になって歩いていた。

「なぁ。」

「うん。」

最初に口を開いたのはトミーだった。

「具合悪いのか?ジョウジロウちゃん」

体操服を蹴りながら、ぶっきらぼうに前を歩くトミー。

ジョウは少し小走りしてトミーの横に並んだ。
「健康だよボクは。」
「そっか。ならいいんだよ。」

⏰:06/09/12 05:22 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#489 [ザセツポンジュ]
トミーはもう何にも言わず、体操服を蹴りながら、ぎこちない鼻歌を歌って歩いた。

ジョウは複雑な気持ちを重たいカバンの中に詰め込んで歩いた。

「ジョウ。また明日な。」

「うん。バイバイ、トミー。」

⏰:06/09/12 05:28 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#490 [ザセツポンジュ]
コトッッ━━。
コトッッ━━。
コトッッ━━。

翌朝、ジョウはいつもより早く目が覚めた。
(じぃちゃん、こんな朝からどこ行くんだろう…。ぅぅ…寒い…。)

ジョウは布団にくるまった。

今日はいつもより冷えているらしい。

ジョウの部屋のテレビがそう言っている。

⏰:06/09/12 05:35 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#491 [ザセツポンジュ]
ジョウはバサっと起き上がり支度を始めた。
こんな早くから支度をしたって、トミーが迎えに来るにはまだまだ時間がある。

ジョウは顔を洗い、制服を来てマフラーを巻き、重たいカバンを背負い、支度をすまして家を出た。

(トミー。今日は先に行くよ。)

ジョウは、隣のトミーの家を少し見つめて歩き出した。

白い息。
冷たい風。
赤い鼻先。

ジョウだけが知っている気持ち。

今日は一段と冷えているからだろうか。

歯をくいしばって

涙が込み上がってこないように

ジョウは歩いた。

⏰:06/09/12 05:47 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#492 [ザセツポンジュ]
「あんた。おばちゃんに会いたいからってこんな早い時間に来て、一体何をしでかすつもりなのよ。スケベね。」

用務員のおばちゃんが教師用の玄関を掃き掃除しながら、一番のりしたジョウをお出迎えしてくれた。

「おはようおばちゃん。朝から言ってくれるじゃない。疲れるよボク。」

ジョウはおばちゃんに愛想笑いをして
生徒用の玄関の扉を引いた。


「ん!?」

⏰:06/09/12 05:59 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#493 [ザセツポンジュ]
くしゃくしゃに丸まった紙くずが
3年のクツバコから
何個も転がっている。
ジョウはしゃがんで
至近距離で紙くずを見つめた。

(……あれ?これクーポン雑誌?)

トミーが毎月エリアカフェで見ているクーポン雑誌が散らばっている…。

首をかしげながらジョウはくしゃくしゃに丸まった紙を広げた。


「え……。」



そしてまだ転がっている丸まったクーポンをひとつひとつ広げていった。

(…なんだ。…なんでだ……。)

⏰:06/09/12 06:10 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#494 [ザセツポンジュ]
その紙くず達をたどって行く━。

顔をあげたジョウは
愕然とし、地べたに座りこんだ。


━━━榎下━━

くしゃくしゃにまるまった紙くずが
ぎゅうぎゅうに押し込まれて、こぼれ落ちてしまうほどのこのクツバコは

紛れもなくエノシタさんのクツバコだった。

⏰:06/09/12 06:14 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#495 [ザセツポンジュ]
カサッッ━━。

涙のようにひとつぶ
、エノシタさんのクツバコからこぼれ落ちた
紙くずを

ジョウは、拾って

ゆっくりと恐る恐る広げた。

《調子乗んな!ブサイク、死ね!》

エノシタさんが美容院のカットモデルをして、ニッコリ笑った顔と一緒にクーポン券になってから2ヶ月たっている。

今月のクーポン雑誌も、変わらずエノシタさんの笑顔と一緒にクーポン券は発行されているのだ。

鋭い言葉を殴り書きされ、顔には落書き━。

⏰:06/09/12 06:38 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#496 [ザセツポンジュ]
ジョウは
心臓にコンパスをぶっ刺したかのような痛みを
押さえて

クーポン券の紙くずを全部ゴミ箱に入れて

焼却炉へと走った。

⏰:06/09/12 06:41 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#497 [なちゅき]
この小説マジ好きですだから上げ
マイペースでぃぃんでがんばってくださぃね

⏰:06/09/14 18:59 📱:N701i 🆔:eymO6fNw


#498 [きーさん]
なちゅきちゃん☆
ありがとぉ
(o`∀´o)
ワシゎ嬉しいよ!

⏰:06/09/14 22:45 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#499 [ザセツポンジュ]
ジョウが胸を痛めていた早朝、きーさんとすーさんは#7791カフェにいた。


「小夜子ストロベリーをふたつ。」

きーさんは、注文したあと、すーさんがみーちゃん話しかける暇もなく大量の資料をバシっと机の上に置いた。

⏰:06/09/14 22:49 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#500 [ザセツポンジュ]
「…うん。きーさん。文字のおけいこにドリルに学級新聞とはなかなか画期的な事業に取り組むみたいだがワシは遠慮するぞ。」

すーさんはしかめっ面できーさんを睨んだ。

「ワシは62だぞ。そんな宿題やってられるかこのクソジジイ。イカレポンチ。きもエロス。」

きーさんはいつになく真剣だった。

⏰:06/09/14 22:56 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


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