クソガキジジイと少年」
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#101 [ザゼツポンジュ]
『甘いだろう。ジョウジロウちゃんが恋をした時、きっとこんな気持ちになるそ。最初はな。こんなにも甘い恋をお前はもうすぐ味わうのだ。わかるか!!?いいか!!?このカルピスの味を忘れるなよ。気持ちはこんなにも甘く、その結果、出てきてしまうのも、カルピスだ!!』

きーさんの言葉がなぜか、ジョウの心に響いた。
『…まだよくわかんないや。でも、きーさん、今の言葉覚えておくよ。じーちゃん。もういいよ…ボクがまさこを散歩へ連れていくよ。それと…もうちょっと薄くつくってよ、カルピス』

⏰:06/06/13 11:33 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#102 [ザゼツポンジュ]
ジョウは外へ飛び出した。甘い甘いカルピスがのどにからむ。
ジョウの頭の中はきーさんの言葉がぐるぐるまわり、変な気分だった。
雨のせいだろうか。
甘い粘着がしばらく離れなかった。

⏰:06/06/13 11:37 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#103 [ザゼツポンジュ]
『すーさん。ワシは葬儀屋に電話した方がいいのか?そろそろ息をしてくれないか?』
むくっと起き上がった。すーさんはニッコリ笑った。外へ出なくてすんだのだ。
『やぁやぁ。どうしたんだ。きーさん相談でも!!?』
きーさん甘すぎるカルピスを平気でごくりと飲んだ。
『あのなすーさん。トミオは目がくりくりで髪の毛がサラサラでさせ子がタイプらしいんだが、今旬なかわいい女はどんな具合だ!!?』
すーさんは女の話になると生き生きする。

⏰:06/06/13 11:43 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#104 [ザゼツポンジュ]
『お宅のトミオちゃんの意見は、まさに模範解答だ。大正解だ。そんな女が常に旬でいてほしい。』
『じゃあ、コンタクトにさせた方がいいんだな。』
すーさんはぬるい梅昆布茶に口をつける。
『なあんだでは、ダメだ。すーさん、エノシタさんをお前好みの女に仕上げようじゃないか。お前好みという事は、トミオ好みという事になる。エノシタさんは好きな男のために変わっていくんだ。』
少しずつではあるがやる気になってきたすーさん。
62歳、老人。

⏰:06/06/13 11:49 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#105 [ザゼツポンジュ]
『しかしワシの孫のはずなんだが、女好きはすーさんに似ている…おかしな話だ。』
『……高い高いしすぎて入れ替わったんじゃないのか!!?』
『馬鹿たれ早く考えろ』

⏰:06/06/13 11:51 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#106 [ザゼツポンジュ]
『なぁんだエノシタさんの話か。…ぁ、間違った』
すーさんさんは心の叫びが口からもらしてしまった。
『すーさん、言いたい事は溜めずに出しておいた方がいい。ただな、梅昆布茶をすすったあたりからすーさんの心の声は十分伝わっていたよ。』

⏰:06/06/13 11:56 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#107 [我輩は匿名である]
書かないの待ってるよ

⏰:06/06/15 01:49 📱:D702i 🆔:c2Fb1lvg


#108 [ザゼツポンジュ]
すーさんは、ひとたび没頭すると、まなざしは真剣になり瞳はキラキラと輝く。
まばたきもしなくなり、呼吸の数も少なくなる。
一般人から見ると、この光景は実に気持ちが悪い。
剥製のようだ。
だがきーさんは、このすーさんが好きだ。
弱点は、その3までしか出てこないことであるが、きーさんは決して文句を言うことはなかった。

その1、メガネをとり、コンタクトをはめさせる。
その2、髪の毛をサラサラにさせる。題してキューティクルビューティー大作戦。
その3、自信をつけさせる

⏰:06/06/15 11:36 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#109 [ザゼツポンジュ]
さっそくきーさんはエノシタさんにメールを送った。

エノシタさん、アドバイスがあります!!トミーは、目がクリクリして髪の毛がサラサラの女の子が好きみたいなんだよ。エノシタさんがコンタクトにしたらかわいいと思う★どうだい!!?やってみないか!!?

送信

⏰:06/06/15 11:40 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#110 [ザゼツポンジュ]
エノシタさんからはいつも素早く返信される。

─そうかな!!?今更メガネ外すなんて恥ずかしいよ…

『この女はホントにいくじなしだな、けしからん』
と、きーさん。

─トミーは、段々変わっていくエノシタさんを見たいんだよ!!頑張れエノシタさん!!今からママンに相談だ。

⏰:06/06/15 11:46 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#111 [ザゼツポンジュ]
きーさんは徐々にメールの達人になっていく。
日本中の老人の中でこんなにも飲み込みが早く若々しいジジイは自分しかいないと思っている、木田シゲル。
メールのセリフを考えているすーさんは、こんなに言葉巧みに日本語を使いこなせるのは自分しかいないと思っている。
運がよければ脚本家と言う道でも開けたのではないかと自惚れる、鈴木ひとし。
共に62歳、老人

⏰:06/06/15 11:52 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#112 [ザゼツポンジュ]
一方、隣の木田家では14歳の少年二人が恋について語りあっていた。
『なぁトミー、人を好きになるとはどんな気持ちなんだい!!?』 
まさこの散歩を終えたジョウはまた自販機で購入したカルピスを飲んでいた。
『どうしたんだ、恋でもしたのか!!?おめでとう、ついに君も童貞卒業と言う事になるな。』
『…展開はやいよ。ボクはトミーに質問しているんだよ。』
今度は国語の教科書にパラパラまんがを制作していた。なんだかんだこの男、きーさんに影響されているのである。

⏰:06/06/15 12:06 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#113 [ザゼツポンジュ]
『うーん…今狙っているのはエノモトさんだな』
『トミー…ボクは、何を狙っているかは今聞いてなかったんだが。』
トミーは、自分が童貞を卒業したことに優越感を抱いている。
そして、隣に住んでいるこの同級生よりも、素晴らしい人材だと自分で思っている、木田トミオ。
しかしジョウはその部分に対しては、とても消極的であり、とくに羨ましいと感じてはいない。
今日というこの日、隣に住むじぃさんの訪問のせいで、まだ抱いたこともない恋心について少し気になっただけの、鈴木ジョウジロウ。   共に14歳・

⏰:06/06/15 12:07 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#114 [ザゼツポンジュ]
『好きじゃなきゃ、触れないよ。かわいくなきゃ目が向かないよ。だからオレは見た目のいいものが欲しいんだ』
『…トミー。それは人を好きと言えるものなのかい!!?フラれたことはあるの!!?』
『あるさ!!そんな女は、っっどーでもいい。一応ショックは受けるが、寝て覚めればもう次の女の事でいっぱいおっぱいだ。』

⏰:06/06/15 12:11 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#115 [ザゼツポンジュ]
ジョウは隣の住人であり同級生に少し呆れた。
『いい性格をしているね。』
『ジョウも、顔は以外にも男前だぞ!!?がんがんいけよ。ただ韓国ドラマのような純愛なんてチャンチャラおかしい。あんなのに憧れるのだけはやめておけよ。バカバカしい。』
パラパラまんがを一生懸命制作しているように見えるトミーだが、少し悲しそうな背中をしていた。

⏰:06/06/15 12:18 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#116 [ザゼツポンジュ]
シャーペンを起き、こんな雨の日に何を思い立ったのか。トミーはお気に入りの古着をチョイスし、ランキング1位の香水をふりまき、出掛ける準備をする。
『ちーちゃんに会いたいな。ギャルも見たいしな。うん、ジョウジロウちゃん。何がしたいかわかるか!!?』
『エリアカフェに行きたいんだろ!!?お前、正気か?雨だぞ。しかも今エノモトさんがいいって言ったじゃねぇかよ。』
『ジョウジロウちゃん!!オレは男だぞ!!雨だろうと雷だろうと女がいればそれでいいのだ!!』
トミーの後ろを必然的についていかなければならないのであった。

⏰:06/06/15 12:28 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#117 [ザゼツポンジュ]
トミーんちのママは、トミーが小学4年生の時に出ていった。男ができたのだとトミーは言う。
トミーのパパは、ママを愛していたし優しかった。
だのに、なぜ、荷物をまとめ、家を出たのか、そんなにしてまで。
昔トミーは言った。
『女がなんだ!!ただの弱虫じゃないか!!ワガママじゃないか!!どんなに優しくされても都合のいいところに逃げていく最低な生きものだ!!』

⏰:06/06/15 12:34 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#118 [ザゼツポンジュ]
トミーは泣いていた。
でも男の子は泣かないのよと、ママがよく言っていたのをちゃんと、ちゃんと忘れてはいなかった。
後ろを向き、息を殺し、一生懸命涙が出るのをこらえていたが、逆にその姿が悲しくてたまらなかった。

⏰:06/06/15 12:39 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#119 [ザゼツポンジュ]
『おぃ、シンイチロウ!!新しいソフト買ったんだろ〜!!?かせよ!!さもなくば、お前の秘密を町内放送でながしてやるぞ!!』
5つも下のクソガキに窓の向かい側から大声をはられ、ひとりの時間を邪魔をされていた。
『わかったから静かにしてくれ。トミーお前今日、帰ってくんの早いのな。ジョウジロウはまだだぞ。早びけか!!?』
『オレ様だけは今日休みなのだ!!』
やけに、ニコニコしていたのをよく覚えている。
『トミオ、ちょっとおいでー!!』
案の定、ママ声が聞こえてきた。トミーは急いで走って行った。

⏰:06/06/15 12:50 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#120 [ザゼツポンジュ]
トミーのママは、クラブのママをしていてとてもキレイだった。

『オレんちのママかわいいし、いい匂いするんだぜ!!』
トミーは嬉しそうにママの事をよく自慢していた。
お酒を飲むママの体調が悪いとトミーは絶対学校へは行かなかった。
一日中ママといた。
ママが大好きだった。
いつもママのいない夜。
パパもお仕事でいない夜。トミーはきーさんとよく遊んでいた。

⏰:06/06/15 12:59 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#121 [ザゼツポンジュ]
二階には、トミーの部屋ときーさんの部屋が並んでいる。
改築する前の俺の部屋は、トミーの部屋のちょうど向かい側だった。
嫌でも隣の声は聞こえてくるものだ。

⏰:06/06/15 13:03 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#122 [ザゼツポンジュ]
きーさんは、トミーが小さい頃から無理難題をトミーに教えていた。
『トミオ、よく聞け。バスケを習っていてシュートが入るのは当たり前だ。わかるか!!?習字を習っていて字がキレイなのも当たり前だ。じーちゃんは何が言いたいかと言うとな。自分のチカラで何でもできるようになれと言いたいのだ。バスケ習ってもないのにできた方がかっこいいだろ。ただ字がきれいだったら、こんな美しいことはないだろ。家族が大変でもないのに、お前が家事ができていたらすごいだろ?』

⏰:06/06/15 13:11 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#123 [ザゼツポンジュ]
普通の話をしているのに、最後は家事の話になり、
『洗濯物を服屋の店員のようにたためる男は、モテるぞ。校内ランキング一位だ』
『食器を洗えば好きな子がお前にゾッコンラブになるという昔がの言い伝えがある。』
『大金持ちの男はみんな料理が得意だ。』

⏰:06/06/15 13:16 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#124 [ザゼツポンジュ]
今思うと、トミーのママがいなくなることをきーさんは予感していたのかもしれない。
こうしてトミーによい子シールを貼らして、毎日毎日レベルを上げ、自信をつけさせると言う、きーさんの作戦だったのだろう。
ママが出て行った時には、よい子シールは、もうたくさんと言うばかりに、たまりまくっていたのだ。
『ママは、急用でフランスのホテルのベッドメイキングの仕事をするようになっただけで、あと何年かしたら…。』
トミーの肩を抱き、きーさんは頭を優しくなでた。

⏰:06/06/15 13:24 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#125 [ザゼツポンジュ]
『男が泣いたらいけないなんて、誰が言いだしたんだろうなぁ。トミオ、お前見てみろ。こんなにもシールがたまっている。これが何の数かわかるか?先取り涙の数だ。お前は涙と引き替えに、いろんなものを手に入れる事ができたのだよ。自信を持ちなさい。』

⏰:06/06/15 13:29 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#126 [ザゼツポンジュ]
『こんなにキレイに服をたためる奴が他にいるか?習ってもいないのに、学校の習字のコンクールで、銅賞を取れる奴が他にいるか?こんなにうまい目玉焼きを作れる友達、見たことあるか!!?…確かにママはいなくなったが、トミオはそこいらじゃ一番かっこいい小学四年生だぞ。な。』

⏰:06/06/15 13:35 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#127 [ザゼツポンジュ]
ママがいなくて淋しい時の、我慢した涙の分。
冷凍食品が多くて、ママの作ったご飯が食べたいなーと、泣きたくなった時の分。
みんながママとの出来事を楽しそうに話している時の、悲しい気持ちの分。              泣きたい時がたくさんあっただろう。
シールの数がそれを表していたのだった。

⏰:06/06/15 13:47 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#128 [ザゼツポンジュ]
トミーは、次の日平然と、ジョウを迎えに来た。
いつもはジョウがトミーのうちに迎えに行くのだが、ママがいなくなった時から逆転した。
『ママがいなくなったらしいけど、お前はトミーにいつもどうりに接するのだよ。いいね!!?トミーがお前に頼った時は、せいいっぱいチカラになってやるんだ。』
『にぃちゃん、わかってるよ。そんなことくらい』
俺は、念を押してジョウに言ったのにジョウは平然としていて、熱くなった俺が少し恥ずかしかった。

⏰:06/06/15 13:55 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#129 [ザゼツポンジュ]
トミーは平気な顔で明るく振る舞っていた。
よくモテた。
昔からチョコをトミーんちにわざわざ持ってくる子もいた。
トミーと仲良しになりたいがためにジョウに近づく子もいた。
人気者は今だ健在だが、保っていられるのは、悲しみに耐えるチカラをきーさんにもらったからだと思う。

⏰:06/06/15 16:31 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#130 [ザゼツポンジュ]
                                    ━『ボク小夜子ストロベリー』
ジョウは単純に甘いものが好きだ。
『ちーちゃん、今日もかわいいねぇ。いつから付き合ってもらおうか。』
『フフフ。やーよ、トミーモテるから。』
ちーちゃんは完全にトミーをクソガキとして見ているナイスおねぇさんだ。

⏰:06/06/15 17:10 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#131 [ザゼツポンジュ]
『ふん、オレ梅昆布茶。』ちーちゃんは19歳。実はみーちゃんの妹なのだ。
昼の二時でちーちゃんと交代してしまうため、トミー達はみーちゃんの存在は、まだ知らない。
『ってゆうか、誰もいねーじゃんかよ!!痛恨のミスだぜ、オシャレ損だぜ!!……香水ふり損だぜ!!』
『トミー…たまには甘い物食べた方がいいよ。今のお前は生理前の女のようだ。』

⏰:06/06/15 17:16 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#132 [ザゼツポンジュ]
毎回、黄色いノートを死に物狂いチェックするトミー。
たまに電話番号が載っているがブスが多い。
『お前さ、女に触った事もないのにいつ機嫌が悪くなるとかよく分かるよな。変態だ、ジョウ。お前は変態だ。』
トミーは、1ページ1ページ真剣にくまなく読み、…しかも毎回だ。プリクラに関してはライト加減でかわいく映っているだけの女ではないかとか、その他もろもろ要チェックしている。

⏰:06/06/15 17:24 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#133 [ザゼツポンジュ]
『あぁ、すーさん変態だもんな。』
『トミーが言ってることとあまり変わらないけどな』ジョウも、ノートを覗き込んだ。
『おまたせしました。小夜子ストロベリーです。』
トミーは女の品定めに夢中だったが、ちーちゃんを二度見した。
『ちーちゃんなぜだ。オレの梅昆布茶はなぜこない。』 
ちーちゃんは申し訳なさそうに
『あぁ、ごめんねトミー。きれてたみたいで、今買いに行ってるからもぉちょっと待って。』
『ぅぁーいーょ、いーょ。ちーちゃんかわいいしな。』

⏰:06/06/15 17:32 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#134 [ザゼツポンジュ]
トミーはノートに目が行ったまんま離れなくなった。
『あ、ちーちゃん。ところで、どうして小夜子ストロベリーなんだい!!?誰がネーミングしたの!!?』
アメリカンなこのカフェにいかにもニッポンな、小夜子というネーミングに、ジョウは以前から疑問を抱いていた。
『お前、気やすくちーちゃんに話しかけんなよ。オレのだぞ、ちーちゃんは。』『ここのオーナーさんのおばぁちゃんの名前らしいよ。』
ちーちゃんはクソガキの甘い言葉には、フルスルーである。

⏰:06/06/15 17:39 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#135 [ザゼツポンジュ]
『あ、そうなの。オーナーさんのが決めてるのか。へぇ。ちーちゃんはオーナーさんに会ったことあるの?』
『たまにここに来るから。イラストを張り替えたりしにくるの。ここのイラストはみんなオーナーが描いてるのよ。』
#7791カフェの中に、ポツポツとだが、存在感のあるイラストが壁に飾られていた。
60年代くらいのアメリカンチックでポップな絵が主にだった。
『イラストもオーナーさんが描いてんのかぁ。』

⏰:06/06/15 17:46 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#136 [ザゼツポンジュ]
納得したジョウは甘い甘い小夜子をパクっと一口食べた。
やっとトミーの梅昆布茶がテーブルへやってきた。
フーフーと冷ます時でも、横目でノートを見ていた。そうすると、ハッと何かに気付き二度見した。
『あ!!エノモトさんだ!!!!』
トミーは飛び上がった。
『ちーちゃん!!ちょっと来てよ!!ぃや!!それは横着だ、迎えに行くよ』
トミーはチャラチャラしているようだが、かわいい女には優しい。

⏰:06/06/15 17:54 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#137 [ザゼツポンジュ]
どんなに近くてもレディーを迎えに行き、手を引くのだ。
『トミー、あたしおばぁちゃんじゃないんだから大丈夫よなぁに!!?』
『このプリクラ見てくれよ。この子よく来るのか!!?この席に座ってしまっているのか!!?』
『エノシタさんも映ってるね。』
エノシタさんとエノモトさんは“榎下コンビ”と書いて二人でプリクラを撮っていた。
明らかにエノモトさんのかわいさが目立つ一枚のプリクラだった。

⏰:06/06/15 18:00 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#138 [ザゼツポンジュ]
『そのブスの話は、っどーでもいいんだよ。漢字は一緒なのにこうも違う。世界とは不公平にできているものだ。…で、ちーちゃん、こっちだぞ、こっちの子よく来るのか!!?』
ちーちゃんはノートを近付けてプリクラをよく見た。
『うーんよくはこないけど、日曜日に来たのは覚えてる。』
『そーか、ちーちゃん。この子が来たらオレに連絡してくれ。学校の用事だが、学校では口にできない重要な話があるんだよ。偶然を装って、ぜひとも登場しようと思う。悪いが、この七夕の席を使わせてもらうよ。』

⏰:06/06/15 18:07 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#139 [ザゼツポンジュ]
『メモっといてよオレの番号、はぃゼロキューゼロのぉ…』
 バイト中のちーちゃんが怒られると思い、小声で言うところがこの男のおちゃめなところだ。
 大本命のエノモトさんをダシに、自分の番号を押し売りするのだ。
そうすると、ちーちゃんと、電波コミュニケーションもとれ、あわよくばエノモトさんともお茶が飲めるという、よく言えば一石二鳥だが……

⏰:06/06/15 22:32 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#140 [ザゼツポンジュ]
最悪の場合、にとうえるものいっとうを得ず…という事もある。
だが、出席番号3番木田トミオというこの男。
そくざにこの状況を把握し、頭を回すプレイボーイであり、根拠のない自信をいつも胸に抱き、女子を常に観察しているスーパー14歳なのだ。最悪のになる場合までは予想できないというのがたまに傷だが、彼には根拠のない自信がつきまとっているためいたしかたのないことだ。

⏰:06/06/15 22:40 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#141 [ザゼツポンジュ]
一応ちーちゃんは伝票にトミーの番号をメモった。
『ところでちーちゃん。この七夕テーブルにも何か意味はあるのかい!!?』
ジョウは、窓際のこのテーブルにだけ、七夕と刻まれていることも気になっていた。
『あのね、オーナーの七つ離れた妹さんの誕生日なんだって。』
『妹さんは7月7日生まれなのか…ん!!?#7791ってのは!!?』
『オーナーの誕生日が9月1日なの。』
『なるほど、誕生日を合わせて#7791と言うんだね。』

⏰:06/06/15 22:45 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#142 [ザゼツポンジュ]
トミーは、しつこくエノモトさんのプリクラを眺めていた。
『なぁ、ジョウ。エノモトさんやっぱかわいいよな!!?な!!?』
ちーちゃんがカウンターに戻った事を確認してから、エノモトさんへの興奮をジョウに伝えた。
ジョウは、じっくりと
“榎下コンビ”のプリクラを見つめた。

⏰:06/06/15 22:48 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#143 [ザゼツポンジュ]
『……この二人別に仲良くないんじゃないの?だってさ、かたやイケイケで、かたや生徒副会長だよ?一緒にいるとこなんか見た時ないし。このプリクラ、完全にエノシタさんをお引き立て役にしている。仲良くない人を利用してまで自分をかわいいように映しているとしか考えられないよ。エノシタさん明らかに楽しそうじゃないじゃん。……ぅーん。エノシタさんもかわいいと思うけどねぇ』

⏰:06/06/15 22:53 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#144 [ザゼツポンジュ]
トミーが集中して見すぎたためかエノモトさんの部分だけが、妙に色褪せて見えるような気がした。
ジョウは一枚のプリクラからいろんなことを分析した。
私の方がブサイクだと、誰もが思っているんだろうなと言わんばかりに申し訳なさそうにピースしているエノシタさんに目が行ったのだ。きっとエノシタさんは榎下コンビと書かれるのも嫌だったのではないだろうか!!?と…

⏰:06/06/15 23:05 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#145 [ザゼツポンジュ]
『はぁ!!?お前ホントに男か!!?しかもイケイケとかもはや死語だぞ!!?どれどれよく見せてみろ、ぅーん、ダメだ無理だ絶望的だの三拍子セットだ』
トミーは一瞬見てそう判断した。
『メガネとか外せば、かわいいと思わない!!?』
『ダメだ無理だ絶望的だの三拍子セットだ』
ジョウはもう何も言わず、小夜子を食べた。
自分とトミーが全く正反対の星にいるんだと改めて実感した。

⏰:06/06/15 23:10 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#146 [ザゼツポンジュ]
翌朝、いつのまにか雨は上がり、カラっと空は晴れていた。
ジョウはいつもより早くに目が覚めた。
窓を開けて大きく息を吸い込んだ。
ふと、木田家の方を見ると、きーさんが自分ちの前のはき掃除をしていた。
……全て鈴木家の方向へ葉っぱやゴミをよせているだけのように見えるのは気のせいだろうか。
ジョウはきーさんにオハヨウを言いに外へ出た。

⏰:06/06/15 23:18 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#147 [ザゼツポンジュ]
『やぁ、きーさんオハヨウ』
きーさんはいったん手を止めた。ただ鈴木家へまき散らしているゴミに関しては全く悪いとは思ってない様子だ。
『おはよう、ジョウジロウちゃん。いや、実にいい朝だ。この空気を吸ってごらん。』
『ボクね、雨が降った次の日のコンクリートの匂い好きなんだ。』
うーんとけのびをして息を吸い込むジョウジロウちゃん。
『おぉ。奇遇じゃな。ワシも大好きだ。とくに秋なんてなおさら最高だ。』

⏰:06/06/15 23:25 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#148 [ザゼツポンジュ]
『気が合うねえ、きーさん。ボクもそう思うよ。』
『フォッフォッフォッ。おかしな話じゃのう。すーさんのお孫さんがワシに似てしまうなんて』
『トミーもボクも自分ちのじいちゃん達を見て反面教師になっただけさ。そんであべこべになっちゃったんだよ、きっと』

⏰:06/06/15 23:28 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#149 [ザゼツポンジュ]
『朝からかしこいな。お前はすーさんの口うるさい女の話が嫌で隣のじーちゃんの話に耳を傾けてしまう。一方トミオは、ワシの口うるさい説教が嫌ですーさんのちゃらんぽらんさを吸収してしまった。そういうことだな。』
『そうさ。』 
そしてジョウは、学校へ行く支度をして、トミーの迎えを待った。

⏰:06/06/15 23:32 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#150 [ザゼツポンジュ]
>>1ー50
>>50ー100

⏰:06/06/15 23:38 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#151 [ザゼツポンジュ]
ミスった
>>1-50
>>50-100

⏰:06/06/15 23:42 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#152 [ザゼツポンジュ]
    ***
数日後えのしたさんがコンタクトを付着させる日がやってきた。

ピルピルピル
朝6時25分
エノシタさん
─昨日、お母さんとコンタクトを買いに行ってきた★今日からメガネを外そうと思う…(*_*)

きーさんは窓を開けすーさんを呼んだ。
『すーさん、おーい、すーさん!!!!』
カーテンを開け、すーさんが顔を出した
……ステテコ姿、ただのジジイの何者でもない。

⏰:06/06/16 00:24 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#153 [ザゼツポンジュ]
きーさんは窓を開けたすーさんに、耳の横できつねマークをした。
すーさんはウインクができないため、両目をつぶり、OKサインを出した。
これが糸電話のハンドサインだと分かるのが、このジジイ達の素晴らしいところだ。

⏰:06/06/16 00:28 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#154 [ザゼツポンジュ]
『すーさん、エノシタさんが本日、メガネを外して戦場へ向かう模様。早急に支度をして、7時ぴったりには#7791へ到着できるように!!いいか!!?』
『ふわ〜…了解なまこん』
またもや紙コップをつけたままなのが痛恨のミスだが、きーさんの一方的な命令を受けただけてらあるため、差し支えはたかった。

⏰:06/06/16 00:32 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#155 [ザゼツポンジュ]
きーさんもすーさんも、実はオシャレなのだ。
トミーが通う古着屋“ミッシェル”で最高の味方をつけたのだ。
それはピーマンと言う店員である。
絶妙な組み合わせ、バランスを一瞬で頭に浮かべられ、例え老人であろうとも、オシャレな生活を提供できるハンサムな男だ。
ただ、それ以外はトント優れないため、頭が空っぽのピーマンと言うニックネームがついたのだ。

⏰:06/06/16 00:41 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#156 [ザゼツポンジュ]
そんなジジイら二人は62歳のわりにはうんとオシャレな格好で#7791カフェへ出掛けたのである。
『小夜子ストロベリーをふたつ』
『……うーん、まぁいい。今日は晴舞台だ。いたしかたがない。みーちゃん。朝からごめんよ。』
みーちゃんは今日も小さかった。
そして白くてとってもかわいかった。
『いいえ、了解なまこんっっ。』
『かーゎぃッッ、ヒュッッ』
すーさんは両目をつぶった。ウインクのつもりなのだ。

⏰:06/06/16 00:45 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#157 [ザゼツポンジュ]
62歳のジジイらは老人にもかかわらず緊張した。
きーさんなんて
『甘い』
としか口にしていない。いつもの決めゼリフさえもままならない始末だ。               『ままままま、ま、まだか!!?すーさん』
『言語障害か、きーさん!!?がらにもないことは、やめてくれないか』
 5分10分と時が過ぎる。今日は晴天だ。

⏰:06/06/16 00:49 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#158 [ザゼツポンジュ]
エノシタさんをまぢまぢと見れるチャンスだ。
『お、えのしたさんじゃ。今日もやっぱりかわいいのう。』
『……すーさん、その子はエノモトさんだよ。この間も言っただろう?』  
次々と、中学生が通り過ぎる中、先にエノシタさんを見つけたのはきーさんだった。
遠慮もなく変質者並みに窓に張りついているすーさんは、ただの役立たずでしかない。

⏰:06/06/16 00:54 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#159 [ザゼツポンジュ]
エノシタさんはキョロキョロと落ち着きなく、一人で登校していた。
『…すーさん。えのしたさんじゃ。やっぱりメガネを外して正解だったようだな。』
しかし、すーさんはまゆをしかめた。
『あれじゃまだまだだよ、きーさん。髪型がダメだ。自信ねなさそうな顔もダメだ。…悪いが、メガネを洗面所に忘れて来たとしか思われないに決まっている。700%勇気が無駄だあれじゃあ。』

⏰:06/06/16 00:58 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#160 [ザゼツポンジュ]
きーさんは、ホッとした。すーさんの真剣なまなざしがキラキラと輝いている。
『そうだな、すーさん。いったん家へ帰ろう。そして11時になったら、ピーマンに会いに行こう。』
『…あぁ。…ん!!?なぜピーマンに会うんだ!!?』
『なぜって、ピーマンに聞くのが一番早いだろう、どこの床屋がいいだとか。』
『きーさんやめてくれないか。床屋だなんて。美容室と言うんだよ。』

⏰:06/06/16 01:03 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#161 [ザゼツポンジュ]
『おぉ、そうかそうか了解なまこん。』
そして、食べかけの小夜子を口にした。
きーさんはホッとした表情で
『甘いなあ、ワシはこんなにも甘い恋心を抱いた事が、一体何度あっただろうか。』
お見事です。きーさんは忘れてはいませんでした。

⏰:06/06/16 01:06 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#162 [ザゼツポンジュ]
    ***
トミーは学校が大好きだ。
決して大きいとは言えないこの町の、決して多いとは言えない人数の学校で、目立てるという快感が、彼を刺激しているのである。
中学2年生であるが、認知度、人気者度でいくと軍を抜いてナンバーワンだろう。
ただ、他に目立ちたいという奴がいないと言う事実も、見逃せない。

⏰:06/06/16 01:14 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#163 [ザゼツポンジュ]
トミーは器用だった。
どれもこれも極めれてはいないし、ホントは中途半端ではあるのだが、14歳のクソガキどもからすれば、器用にこなしているように見えるのだろう。
サッカーもバスケも野球も、人気者という名の錯覚作用で、全てうまくこなしているように見せる魔法を味方につけていた。

⏰:06/06/16 01:18 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#164 [ザゼツポンジュ]
ランキングにこだわり、はやりの物を身の回りに置き、金のなさをカバーできるように安くても、最強のオシャレでいられるようピーマンにおまかせだ。
ミッシェルに友達を連れて行くと、みんなオシャレになってしまうんじゃないかと言う恐怖から、内緒にしていた。
通っているのは、クソガキジジイ二人と、トミーとジョウだ。ジョウに関しては付いてくるだけの事が多かった。

⏰:06/06/16 01:23 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#165 [ザゼツポンジュ]
『あ、トミーおはよう!!』女子達は、トミーを見つけるなりフル笑顔で手を振っていた。毎日の事だ。
『やぁやぁ、おはよう。』と、手を上げたトミーから、ランキング1位の香水の香りがあたりに漂う。

トミーは誰かを従えて自分が一番でいるのがむしろ好きだ。むしろ、そうしないと気がすまない。
トミーの周りにはいつも人が集まった。

⏰:06/06/16 01:28 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#166 [ザゼツポンジュ]
家では、卑劣なことを言うが、実際学校ではブスとも話していた。
いかにも暗く、いつも一人でマンガばかり描いている、ゆみちゃんには
『ゆみちゃん、この子なんて言う名前つけたの?』
『…え、ミユキ…』
『ハハっ!!どうしてミユキなの!!?』
と、必要以上に近づいてしゃべったりもしていた。
ゆみちゃんには、誰も近づかなかった。いつも一人でいた。

⏰:06/06/16 01:34 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#167 [ザゼツポンジュ]
一方ジョウは、歴史だけが大好きだった。
トミーとは、正反対の性格なのだが、別に頭がいいわけではない。
世界史の時間だけは、誰にも邪魔はされたくない時間なのだ。
だが、この貴重な時間を邪魔される事があった。
ランキング一位の香水の香りを振りまく木田トミオのせいだ。

⏰:06/06/16 01:39 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#168 [ザゼツポンジュ]
何の授業にも、特に興味はなく、馬鹿をやって目立ちたいだけのトミーは、いつもいつもうるさかった。
『静かにしてください。』以外にも注意するのは、学級委員を努めるジョウからだった。
一瞬シーンとするのだが、、トミーはくじけない。

⏰:06/06/16 01:42 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#169 [ザゼツポンジュ]
スプレーを出す音を演出するのだ。
『プス───────。プス、プス───。』
『……効果音もやめてください』
ジョウはみんなから押しつけられてしまうタイプであり、しかたなく学級委員を努めている。
別にいじめられているわけではない。

⏰:06/06/16 01:45 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#170 [ザゼツポンジュ]
歴史以外の時はもっぱら窓の外を見ていた。
そして、周りの人間の事を考え、その中で自分をどう確立させていくかをよく考えていた。
自分と言うものついていろいろと模索している最中なのだ。
自分の意見をはっきりと言え、こだわりを持って生きていきたい、ジョウジロウ。出席番号9番。

⏰:06/06/16 01:50 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#171 [ザゼツポンジュ]
『憧れる人はたくさんいるし、羨ましい人もたくさんいる。だけど、尊敬できる人って言うのは、みんな死んでしまった人なんだ。ボクもきっと死んでしまった時に価値が決まる。人間、いくらいい人に見えたっていつどうなってしまうか分からない。ひょんなことでシャブ中になってしまうかもしれない。』

⏰:06/06/16 01:54 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#172 [ザゼツポンジュ]
歴史が好きなのも理由はその辺にある。
愛読している本は、隣に住むきーさんからもらった、太宰治の─人間失格─だ。
ジョウジロウは着る物も、置く物もこだわっていた。古着をバカみたいに買う事はなかった。
好きなところの服を高くても気に入れば購入した。

⏰:06/06/16 01:57 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#173 [ザゼツポンジュ]
トミーのように、ランキングには流されたくなかった。
来年になっても、絶対着るだろうと言う本気で気に入った服しかなるべく買わないようにしていた。
多種多様の物や、偽物、来年になれば興味がなくなってしまう物、すぐ飽きて捨ててしまうような物…
これら全てをジョウは嫌った。
古くてもみんなは気に入らなくても、自分にとっては、ひどく大切なんだと言う物をできるだけ長く傍に置いておきたいと、そう考えている。

⏰:06/06/16 02:02 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#174 [ザゼツポンジュ]
>>100-150

⏰:06/06/16 02:04 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#175 [ザゼツポンジュ]
『それでは、生徒副会長エノシタさんからみなさんにお知らせがあります。』
みんなダルそうな雰囲気は見せず、テキパキと体育館入りをする。
トミーは、全校生徒が一列に並ぶと言うのが苦痛でたまらなくなり、前の子をカンチョーしたくなる衝動にかられてしまうため、こういう無駄な朝会が大嫌いだった。
一年生の誰かの靴の中に画ビョウが入っていたとかで、急遽、体育館に全校生徒は集められてしまったのである。

⏰:06/06/16 02:27 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#176 [ザゼツポンジュ]
『みなさんおはようございます……えー、今日、画ビョウ入りの靴を発見したと…』
ジョウは気付いた。エノシタさんが、メガネを外したという事に。
背が高くもないのに、後ろの方で、みんなよりはるかに間を取ってあぐらをかいているトミーを見つけた。
ジョウは地味に地道にお尻をすべらしながら、後ろまでスルスルと下がって行き、トミーに近づいていく。

⏰:06/06/16 02:31 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#177 [ザゼツポンジュ]
『なんだ、ジョウ。小便か、立て』
トミーは近づいて来たジョウのえりを後ろからつかみ、立ち上がり、腰を曲げさせた。
そしてトミーに抱えられ、クルっと後ろを向き、トイレの方向へと連行させられた。
『この子具合悪いみたいっす、オレがトイレ連れて行くっす』
小声でペコペコとおじぎしながら、トイレへの移動を成功させた。

⏰:06/06/16 02:36 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#178 [ザゼツポンジュ]
『トミー、やめてくれよ。これじゃまるでボクがゲリしたみたいだ。』
大きく深呼吸をするトミー。重苦しい空間からやっと抜け出せた喜び。
『お前便所じゃないのか!!?じゃあなんで………おい、ジョウジロウちゃん、まさかオレの事が好きだとか言うんじゃないだろうな、やめてくれ、オレは女が好きだ、女好きだ、ただのチャラ男にみられているだけの人間だ。』

⏰:06/06/16 02:39 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#179 [ザゼツポンジュ]
呆れてトミーを見たジョウジロウちゃん。
『……しゃべってもいいか…』          『…ああどうぞ。』
朝からちょっとしつこすぎたと反省したトミー。
『エノシタさん、メガネ外していたの見たか!!?』
『お前、もしやそれが言いたかったのか!!?』
『そうだよ。』

⏰:06/06/16 02:42 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#180 [ザゼツポンジュ]
『あきれるよ。オレはこういう空間が大嫌いなんだ。入学式、卒業式、朝会、エトセトラ!!シーンとしすぎて頭が痛くなる。しかもそんな大嫌いな空間に、あんなど真ん中でえらそうにしゃべる副会長を、オレが見るとでも思うのか!!ええ!!?』
ジョウはトミーの肩をポンポンと叩いた。
『……そんなに興奮しないでくれよ。ボクが悪かったよ…。でもちよっとだけ、見てくれよ。』
トミーの背中を押し、トイレの扉を少しだけ開いて、全校生徒の前でマイクを持ってしゃべる、エノシタさんを見てもらった。

⏰:06/06/16 02:48 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#181 [ザゼツポンジュ]
『………メガネ忘れて来たんじゃないのか?洗面所とかに……』
『そんな事はいいんだよ。やっぱり外すと、ちょっとかわいくないか!!?』
『……お前、たいがい趣味悪いぞ!!あれじゃあ、勃ちもしない、おどろく段階ではない!!もっと…なんだろうな髪型も、陰気臭いところも、もっぱらダメだ!!』

⏰:06/06/16 02:51 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#182 [ザゼツポンジュ]
トミーも特にエノシタさんなんかに興味はなかったのだが、この日はちゃんとエノシタさんを見てみたのである。
『じゃあ、賭けをしようか』
ジョウは、トミーに賭けをしかけた。
『どんな賭けだ、いいだろう。童貞をもらってくれる女子を紹介しろとかはナシにしてくれよ。』

『ないよ…700%。そうだなぁ、エリアカフェで、トミーはボクに小夜子ストロベリーをオゴるってのは、どう!!?ボクが負けたらトミーは好きな物をいくらでも頼んでいいよ。場合によっちゃ、貯金もおろすつもりでいるよ。』

⏰:06/06/16 03:00 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#183 [ザゼツポンジュ]
『お前大きく出たな、ホントにメニューのいちから隅まで全て頼むぞ、それでもいいんだな!!?そして、全部食べおわるまで家にも帰れないぞ、それでもいいんだな!!?…ついでに、一日オレ様のパシリだ。移動教室ではオレの分も持ち、音楽の時間はオレの代わりにリコーダーを披露し、完全に合格のハンコをもらってもらう!!…で、一体何の賭けだ!!?』
ジョウは上を向いてしばし考え、3度くらいうなずいた。
『洗面所にメガネを忘れてきたのか、はたまた、コンタクトにしたか…だ。ボクはもちろんコンタクトに賭けるよ。』

⏰:06/06/16 03:07 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#184 [ザゼツポンジュ]
『了解なまこん。』

自信満々なのはジョウの方だった。それは真ん中に立ってしゃべるエノシタさんの表情にハニカミが見られたからだ。
いつもはキリっとした表情で、全校生徒を見渡している。なのに今日は左右をキョロキョロし、少し頬を赤らめているのをジョウ見逃していなかった。
トミーには根拠のない自信がまとわりついているため、理由など何もない。ただオレが正しいとしか思っていないのだ。

⏰:06/06/16 03:14 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#185 [ザゼツポンジュ]
『それでは、全校朝会を終わります、きりつ。』
朝会が終わる号令がかけられた。
ザワザワし、一年生から、体育館を退場し、教室へと戻って行く姿を、トイレのドアの隙間から二人は見ていた。
『生徒会の奴らは最後の最後だ。オレらは生徒会の後ろを歩こう。』
と、トミー。
1年生……2年生……三年生……そして、最後、生徒会員達が体育館を出ようするところで、トイレから出た二人。

⏰:06/06/16 03:20 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#186 [ザゼツポンジュ]
トミーは、ツカツカと生徒会員の後ろにベタづけした。ジョウもぴたりとトミーの後ろにつける。

そしてトミーはエノシタさんの肩に手を回した。  『エノシタさん。』
エノシタさんはびっくりして、ガチガチになり、右手と右足が同時に出て、運動会で緊張した小1男子の図のようになった。
『今日メガネどうしたの?かわいいじゃん。』
トミーはエノシタさんの顔を至近距離で覗きこんだ。エノシタさんは顔を真っ赤にして
『コンタクトにしたの』
と言って走って逃げてしまった。

⏰:06/06/16 03:26 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#187 [ザゼツポンジュ]
トミーはくるっと後ろを振り返り、
『おい、ジョウジロウちゃん、やっぱ洗面所に置いてきたそうだ。』
両手でジョウの肩に手をかけた。
フワっといつもの香水の匂いがした。
ジョウもトミーの肩に手をかけ、
『無償で、耳かきをプレゼントするよ。』
と、勝利を飾ったのは、2年2組の学級委員、出席番号9番の、鈴木ジョウジロウだった。

⏰:06/06/16 03:31 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#188 [ザゼツポンジュ]
>>150-187

⏰:06/06/16 03:33 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#189 [ザゼツポンジュ]
○ーさん

jpg 30KB
⏰:06/06/16 05:04 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#190 [我輩は匿名である]
>>100-150

⏰:06/06/16 10:29 📱:P901i 🆔:8Q/VrG0E


#191 [クロ]
まぢおもしろいこんなにおもしろい小説初めて

⏰:06/06/16 18:37 📱:P901i 🆔:MemWjUcA


#192 [ザセツポンジュ]
─午前11時
老人二人は街へ繰り出していた。
街なかにあるアーケードの、分かりにくい路地裏に、ひっそりと、だけど堂々と、構えられた古着屋があった。
『おはよう。諸君。入ってもいいかね!!?』
オープンぴったりの時間にずうずうしく押し掛けたジジイ達
『あっ!!きーさんすーさんいらっしゃい!!』
準備中のピーマンは、キャップを取り、笑顔で一例した。
『おぃおぃ、つなげて呼ぶのはやめてくれないか。仲がいいと思われるだろう』
1個人として受け入れて欲しいきーさんだった。

⏰:06/06/16 22:28 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#193 [ザセツポンジュ]
『きーさんと、すーさんに着て欲しい服があるさね。』
ピーマンの想像力は豊かだ。
62歳のジジイであろうとも、どれだけファンキーに生きられるか、それをプロデュースするのを楽しみに生きている、ホントに服の大好きな青年だった。
九州の人で、ところどころ方言が出てしまうのが人気なところでもある。
顔も日本人離れしていて、西洋風のイケてるメンずだった。

⏰:06/06/16 22:32 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#194 [ザセツポンジュ]
『しかし、ピーマンは今で言うイケメンだな。』
すーさんは、ピーマンを、かわいがっていた。
『ん!!?イケメン!!?イケてるメン類か!!?』
『そうそう、ラーメンきし麺、うどん……って、きーさん!!イケメンも知らないのか!!?』
『はて。はて。』
『イケてるメンずって意味だ。』
『ほぉ!!!じゃあすーさんもイケメンだな。』
『ん…まぁ、当然だろう。』 
まんざらでもなさそうに、少し気色悪く照れていた。

⏰:06/06/16 22:39 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#195 [ザセツポンジュ]
『イケてないメンず』
きーさんは、か細い声で言った。
『……最近耳をほってないからなぁ…』
すーさんも、か細い声で言った。
『ところでピーマン。今日は相談も兼ねてココへやってきたのだ。おすすめの服なら買ってやるが、その後ワシの話も聞いてくれ。』
きーさんが本題を切り出した。
『了解す。』
『なまこんがぬけておるぞ。』
『…了解なまこん』
なかば強制的だが、きーさんにとっては永遠の流行語なのだ。

⏰:06/06/16 22:45 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#196 [ザセツポンジュ]
きーさんは、服屋に来ているのに自分の身の上話だけして帰るのは気が引ける性分だ。
付き合いでごはんにさそわれた時、自分はお腹がすいてなくても断れず、何か小さいものでも頼んでしまうのである。
すーさんはと言うと、あまりその辺に関しては無頓着で無神経だ。自分の好きなように生きている。
あまり信念というものもない。
だけどいつだって前向きで、深く考えず、いつだって歓楽的生きて行ける都合のいい性格をしていた。

⏰:06/06/16 22:55 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#197 [ザセツポンジュ]
ピーマンは、二人のジジイに今日もかっこいい服をコーディネートした。

そしてきーさんにはキャップを、すーさんにはニット帽をプレゼントした。ピーマンオリジナルの自信作だ。
これで、キャバクラに行ってもバカにされないジジイ二人が完成されて行く。
『いつもありがとうございます。』
『いゃいや。いいんだよ。ピーマンに質問だが…』
きーさんが美容室と言うことばを知らなかったのを思い出し、すーさんが説明を勝手出た。

⏰:06/06/16 23:01 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#198 [ザセツポンジュ]
『ピーマン、髪は一体どこでやってるんだ!!?……そして、……お前日本人なのか!!?』
すーさんは必要以上にピーマンに詰め寄り尋ねた。
『……ち、近いんすけど。ウチの上に美容室があるけんが、そこでやってもらいよぉとです。……、日本…人、……佐賀生まれす。』正直、62歳と言う圧力と気持ちの悪さに戸惑うピーマン。
『変えたい女子が一人いるんだが…ボサボサのキチキチのグジュグジュだ。いくらかかるんだ!!?』

⏰:06/06/16 23:26 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#199 [ザセツポンジュ]
『…そういや、カットモデル探しよったな。その子かわいいとですか!!?』
今まで鏡で自分の姿を眺めていたきーさんが、ピーマンの肩を持ち詰め寄った。
『モデルでも、実験台でもかまわん。必ずかわいくなるに違いない』
二人の最強ジジイに詰め寄られたピーマンに、逃げる事はできず、非協力的な言葉を出せるはずもなかった
『……ちょっと上行って、聞いてきます』

⏰:06/06/16 23:33 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#200 [ザセツポンジュ]
   ****
『トミー。今日女子と帰るのか!!?』
『オレがお前との約束を忘れたとでも言いたいのか!!?帰りに寄ってくぞ』
『了解……なまこん』
放課後、二人は#7791へと向かうのだった。
あたり一面オレンジ色になり、夕方という少し淋しいような切ないような空気が二人を包んだ 
『お前さ、エノシタ、エノシタって、エノシタさんが好きなのか!!?』
トミーは、ジョウより少し前を歩いた。
『…そんなこと考えたこともないよ。』
ジョウはまた、本当の甘いカルピスを知らない

⏰:06/06/16 23:41 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


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