クソガキジジイと少年」
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#882 [ザセツポンジュ]
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エノモトさんを送り終えたトミーは
人が隣にいなくなると
急に寒さを感じるものなんだと
痛感し、ポケットに手を突っ込んで
少し走った。

クシャ。

『あ。じーちゃんに1万円もらってたんだった。』

ケーキを買わなければいけない事に
気づいたトミーは
めんどくささを振り切り
ケーキの置いてある喫茶店まで
急いだ。

(さみぃさみぃ。)

⏰:08/07/03 15:33 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#883 [ザセツポンジュ]
カランカラン。

『えーと、モンブランと、あとは適当に。5つほど、オススメで。』

トミーはガラスケースのケーキも見ずに
店員の顔を見てオーダーした。

店員はニッコリ笑った。

『かしこまりました。お客様、お待ちの方が、あちらのお席に。どうぞ。』

『は?』

トミーは店員の手の指す方向をゆっくりと辿った。
辿るうちに、大好きだった懐かしい匂いが
漂っている事に気づいた。

『え、、、、。』

⏰:08/07/03 15:34 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#884 [ザセツポンジュ]
目をやった先には
自分が近年、葛藤し続けて来た
原因そのものが
椅子に座っている。

それはとても美しく
本来なら、飛びついてしまいたいほどの
事だったが、
トミーはそれを許してはいなかった。
顔を見る事もできず、
とりあえず席に座った。

『、、、、。』

何も話す事のできない自分。
喫茶店の暖房がよく効いている事だけは
分かった。


『トミオ。ケーキ食べる?』

トミーは相手の手だけを見つめ
首を横にふった。

⏰:08/07/03 15:34 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#885 [ザセツポンジュ]
『元気、、、だった?』

『、、、。うん。分かるだろ見たら。』

『そうね、、、。あの、、、。怒ってる?』

『、、、。その質問、間違ってると思わないの?』

いつになく緊張して
顔をこわばらせているトミーは
列記とした14歳の少年なのだ。

『トミオは、何にも聞きたくないかもしれないけど、』

『聞きたくないよ、ホントに。何も。ってか何でいるの?どうせじーちゃんに頼まれたんだろ。』

⏰:08/07/03 15:35 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#886 [ザセツポンジュ]
複雑な気持ちだけが
トミーに絡みついていた。
怒るにも怒れない。
笑うにも笑えない。
見るにも見れない。

そんな初めての気持ちと
緊張が、トミーを襲っていた。

『、、、。トミオ。』

その言葉にビクっとしたトミーは
顔をあげた。

そこには大好きな人が
困った笑顔を浮かべ
まっすぐにトミーを見つめていた。

『、、、。ごめんね。ママのこと、許してだなんて言わないわ。だけど、、、ごめんね。トミオ。』

トミーはテーブルにひじをついて
両手を頬にあてた。
ふくれっつらで
言葉もでないまま。

⏰:08/07/03 15:36 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#887 [ザセツポンジュ]
<何も言わずに置いて行くなんて卑怯だ。

うそつき。

女なんてクズだ。

弱虫。

俺はへこたれない。

お前みたいに
無責任な事はしない人になる。

最低女。

どこかで
そう思って過ごしていなければ
寂しさで埋もれてしまうような
気がしてたまらなかった。

⏰:08/07/03 15:36 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#888 [ザセツポンジュ]
ママが急にいなくなった。
じーちゃんは変な嘘をついて
ごまかしていた。

寝て起きて、寝て起きて
待っても待っても
ママがいない。

でもね、練習したんだ。
キレイに字をかけるように
目玉焼きも焼けるように
服もキチンとたためるように、、、。

じーちゃんと一緒に
練習したんだ。

ママが、帰って来たら
いや、帰って来るから

その時、書いた字を見せるんだ。
ママに褒めてもらうんだ。

ママがおなか減ったら
俺が目玉焼きを焼いてあげる。

ママの代わりに
俺が洗濯物もやってやるから

何にも心配しなくていいよ、ママ。

いつでも帰って来て大丈夫だよ
ママ、、、。>

⏰:08/07/03 15:37 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#889 [ザセツポンジュ]
トミーは
頬にあてていた手で
顔を覆った。


『、、、。、、、うぅ。。。』


恨んでいた気持ちは
負けた。

14歳にもなって
涙でノックアウトだなんて
恥ずかしくてたまらない。

学校にも行けない。

誰かに見られたら困るし、、、。

それでもトミーは
ずっとためていた想いを
止める事ができなかったのだった。

⏰:08/07/03 15:38 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#890 [ザセツポンジュ]
そして
きーさんが今も
きっと大事に持っているであろう
よい子ちゃんシールの事を
トミーは思い出しながら
こらえてもこらえきれない
涙を流し、声を押し殺した。

ママがいなくて淋しい時の、我慢した涙の分。
冷凍食品が多くて、ママの作ったご飯が食べたいなーと、泣きたくなった時の分。
みんながママとの出来事を楽しそうに話している時の、悲しい気持ちの分。
              
その分をひとつずつ
シールに代えていた
小学生の頃の自分。

⏰:08/07/03 15:38 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#891 [ザセツポンジュ]
“男の子は泣かないのよ。”

と言っていたママの声が
頭を駆け巡った。

ママは、いい匂いのする手で
トミーの頭を撫でた。
自分の息子が
この年にして
いかに純粋かを目の当たりにし、
心を締め付けられると同時に
ホっとしていた。

トミーはいろんな想いを
外に出して、涙をふいた。

“むかつくけど、会いたかったんだ
ママに。”




『。。。ケーキ。。。食べるよ。』

『うん。。。。!』




ママはにっこり笑った。
トミーは鼻水をすすりながら、照れて
まだママの顔を見れないでいた。

⏰:08/07/03 15:39 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


#892 [ザセツポンジュ]
大好きな人に
裏切られたんじゃないかと
疑うこと。
それを受け入れなければ
いけないのかと
疑問を持つこと。

何かを信じて

“待つ”と言うこと。



クリスマスの夜に。

⏰:08/07/03 15:39 📱:PC 🆔:l1y/MU3Q


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