クソガキジジイと少年」
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#903 [ザセツポンジュ]
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俺、鈴木シンイチロウ。
19歳。
専門学校をすぐやめました。
理由、授業がつまらないから。
って言っても
後ろめたさがあって
屋根裏部屋に
こもってたら
髪の毛はだんだん伸びるし
自己嫌悪にはなるし
無気力になるし
やべぇなぁと思って。
:08/07/07 00:14 :PC :WBqr7ZlI
#904 [ザセツポンジュ]
とりあえず服買う金がないから
服を作った。
そしたら案外上手く行ってさ。
あ、こんなに暇なら
絵を描くのが好きだし
作品つくろう。
だけどそれでも暇だから
アートブックでも読もうと
思って。
飽きたらギターを弾いて
暇をつぶして、、、。
あ、俺
ひとりでいけんじゃん!
って。
:08/07/07 00:15 :PC :WBqr7ZlI
#905 [ザセツポンジュ]
そう思ったすぐ後に
なんか寂しくなって来たんだよ。
オレの生活全て
マスターベーションじゃない?
年の近い奴らは
酒飲んで
ボーリングして
流行の服着て
ランキングばっか気にして
バカバカしいじゃん。
で、オレはひとりでいたいの?
人といたいの?
全然分からない。
むかつく。
自分がむかつくんだよ。
何にもできないし
何にもしないくせして、、、。
:08/07/07 00:16 :PC :WBqr7ZlI
#906 [ザセツポンジュ]
くだらない。
でもそんなくだらないことを
オレは毎日毎日考えてる。
考えながら、いつの間にか眠るんだ。
夢を見た。
地震が来てさ、
家族みんな行き場に困ってる。
オレは迷わず言うんだ。
『オレがなんとかするから、オレについて来て!』
できるわけないだろ。
って、目が覚めて思った。
:08/07/07 00:16 :PC :WBqr7ZlI
#907 [ザセツポンジュ]
すごい汗かいてて
日付を見たら
7月7日だったんだ。
そりゃ暑いはずだよ。夏だもの。
で、そんな七夕にさ。
トミーが遊びに来て
『カフェに行くからお前も来い、オゴってやるから。っていうか髪伸びすぎだぞ、ロン毛。いつのキムラだよ。』
って。
オレは中学生にオゴってもらうのは
さすがに情けないと思ったよ。
『ボクも出すから行こうよ、にーちゃん。』
トミーの後ろにいた
弟のジョウジロウまで
オレに同情してる。
:08/07/07 00:16 :PC :WBqr7ZlI
#908 [ザセツポンジュ]
ホントに恥ずかしくなったよ。
『行かない。』
当然だけど、こう答えたんだ。
そしたらさ二人して言うんだよ。
『今日は短冊にお願い事を書く日だからカフェに行くんだよ。』
“お願い事”って聞いた時に
同時に“希望”って言う
言葉が頭に浮かんだんだ。
だからカフェに行った。
初めて行ったんだ、そのカフェ。
出来たのは知ってたけど
行く機会がなかった。
:08/07/07 00:17 :PC :WBqr7ZlI
#909 [ザセツポンジュ]
“ERIA CAFE”って看板が出てる。
(エリアカフェ?)
まさか綴り間違えてんのかなと
思ったけど、あえてスルーした。
『いらっしゃいませ。』
中に入った時
鳥肌が立った。
かかる音楽も
テーブルもソファも
チェアーもライトも
全て
きどってないのに
存在感があって、
媚びてなくて
生かされてて、、、。
:08/07/07 00:17 :PC :WBqr7ZlI
#910 [ザセツポンジュ]
素敵だと感じた。
心からそう感じたんだ。
くだらないことで悩んでいる自分が
求めていることは
こういう事なんじゃないかと
熱くなった。
よくは分からないけど
そう思った。
:08/07/07 00:18 :PC :WBqr7ZlI
#911 [ザセツポンジュ]
『今日はね、笹の木が届くんだって。』
ジョウジロウがオレの袖をつかんで
ひっぱる。
『え?木が?』
『そうだよ。その木に短冊をくくりつけて、植えるんだよ。』
『そう言うイベントなの?』
『うん。にーちゃんも書きなよ。』
オレはジョウジロウからペンをもらった。
(何書こう。。。って、オレ、、、もう19なんだけど。)
:08/07/07 00:18 :PC :WBqr7ZlI
#912 [ザセツポンジュ]
ちょっと子供じみてて恥ずかしかったんだけど
横を見るとトミーがなんか楽しそうに
何枚も何枚も短冊書いてんの。
『お前、欲張りすぎじゃないのか、これ。』
『うるせーよ、ひきこもり。』
うぅ。
オレ、すごく傷ついたぞ。
自分が悪いんだけどさ。
:08/07/07 00:18 :PC :WBqr7ZlI
#913 [ザセツポンジュ]
“希望”
書くことに困ったから
カフェに行く前に
ふと頭に浮かんだ言葉を書いた。
そして誰にも見られないように
隠して持った。
よく晴れてて
セミがホンットうるさい。
大きなトラックが
こっちに向かって来る。
笹の木を乗せて。
小さい子供、小学生、
お母さん。
親子がちらほらいて出迎えてる。
:08/07/07 00:19 :PC :WBqr7ZlI
#914 [ザセツポンジュ]
笹の木を植える前に
短冊をくくりつけた。
『なんて書いたんだ?お前、髪切れよ。』
トミーはたくさん書いた
短冊を急いでくくりつけてる。
『いい美容師が見つかりますようにって書いたよ。』
『ハハ!そらそうだ。いい美容師がいないから髪切らないんだよな、シンちゃん。』
それもチクっと来たぞ、オレ。
まあオレが悪いんだけど。
:08/07/07 00:19 :PC :WBqr7ZlI
#915 [ザセツポンジュ]
そしてオレ達は
“七夕の席”と書かれている席に
座って、窓から
木が植えられるのを見ていた。
オレ、来て良かったって思ったんだ。
そして、小夜子ストロベリーと言う
変な名前のデザートを食べて、店を出た。
もちろん、オゴってもらったけど。
クズだよね、オレ。
『あ、先帰ってて。オレ、ちょっと行くとこあった。』
ジョウジロウとトミーを置いて
オレはある場所へ行った。
:08/07/07 00:19 :PC :WBqr7ZlI
#916 [ザセツポンジュ]
何を隠そう。
求人雑誌を取りに行っただけなんだけど。
『やっと働く気になったか、シンイチロっちゃん。』
こういうの、
誰にも見られたくなかったのに。
隣の家のじーさんが
立ってるんだよ。
『いや、、、うん。そう。何してんの?きーさん。』
:08/07/07 00:20 :PC :WBqr7ZlI
#917 [ザセツポンジュ]
『亀さんを、もらってね。名前ももう付けてやった。』
きーさんは虫カゴに小さめの亀を入れて
嬉しそうに見せてきた。
『名前なんて言うの?』
『トミー。』
にんまり笑ったきーさんと
夏の風。
夕方の匂い。
空の色。
:08/07/07 00:20 :PC :WBqr7ZlI
#918 [ザセツポンジュ]
あぁ、この気持ち
なんて言うんだろう。
何か起こりそうで
ワクワクするような
切なくて胸がキュンとなるような
何でも許せてしまいそうな、、、。
ごちゃ混ぜで
優しい気持ち。
何て呼ぶんだろう。
オレは、きーさんと
ゆっくり歩いて
家に帰った。
説教もされたけど。
きーさんの言い方は嫌じゃない。
:08/07/07 00:20 :PC :WBqr7ZlI
#919 [ザセツポンジュ]
『じゃーね、きーさん。』
『たまには出ろよ、家。』
『了解なまこん。』
きーさんはオレに背を向けて
手をふってきた。
それを確認したオレは
自分ちの玄関の扉を開けた。
ウチのじーちゃんは
犬のまさこの散歩の事で
ジョウジロウと何か
話してる。
話してると言うか
意地悪言ってるよ、また。
ふざけた老人だ。
バカだなぁ。
:08/07/07 00:21 :PC :WBqr7ZlI
#920 [ザセツポンジュ]
屋根裏部屋に戻ったオレ。
部屋の片付けをしようと
思った矢先、
隣の家から大きな声が聞こえてきた。
『トミー。トミーやぁい、おーい。』
きーさんは、さっきもらった亀に
声をかけてる。
トミーが怒鳴ってる。
:08/07/07 00:21 :PC :WBqr7ZlI
#921 [ザセツポンジュ]
ミシンの周りの糸くず、
布の切れ端、
紙くず、ゴミ。
ゴミばっかり。
何着作ったんだろう、服。
結構あるな。
何枚描いたんだろう、絵。
結構あるな。
、、、。
これ全部売ればいいじゃん!
何かしないとダメだよね、オレ。
:08/07/07 00:22 :PC :WBqr7ZlI
#922 [ザセツポンジュ]
でも、もっと
今までとは違う新しい
何か、、、。
何か、、、。
何か、、、。
オレの部屋まで届く声、
変な老人、
そして
そのそばにいる少年、、、。
:08/07/07 00:22 :PC :WBqr7ZlI
#923 [ザセツポンジュ]
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『あ、小説書こう。』
昨日までの
自分は一体何だったのか。
だけど、無駄じゃない。
無駄じゃなかったと
思える自分になれる気がする。
希望に満ち溢れた日。
7月7日。
=完=
エンディングテーマ
怪獣のバラード
:08/07/07 00:23 :PC :WBqr7ZlI
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