クソガキジジイと少年」
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#162 [ザゼツポンジュ]
    ***
トミーは学校が大好きだ。
決して大きいとは言えないこの町の、決して多いとは言えない人数の学校で、目立てるという快感が、彼を刺激しているのである。
中学2年生であるが、認知度、人気者度でいくと軍を抜いてナンバーワンだろう。
ただ、他に目立ちたいという奴がいないと言う事実も、見逃せない。

⏰:06/06/16 01:14 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#163 [ザゼツポンジュ]
トミーは器用だった。
どれもこれも極めれてはいないし、ホントは中途半端ではあるのだが、14歳のクソガキどもからすれば、器用にこなしているように見えるのだろう。
サッカーもバスケも野球も、人気者という名の錯覚作用で、全てうまくこなしているように見せる魔法を味方につけていた。

⏰:06/06/16 01:18 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#164 [ザゼツポンジュ]
ランキングにこだわり、はやりの物を身の回りに置き、金のなさをカバーできるように安くても、最強のオシャレでいられるようピーマンにおまかせだ。
ミッシェルに友達を連れて行くと、みんなオシャレになってしまうんじゃないかと言う恐怖から、内緒にしていた。
通っているのは、クソガキジジイ二人と、トミーとジョウだ。ジョウに関しては付いてくるだけの事が多かった。

⏰:06/06/16 01:23 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#165 [ザゼツポンジュ]
『あ、トミーおはよう!!』女子達は、トミーを見つけるなりフル笑顔で手を振っていた。毎日の事だ。
『やぁやぁ、おはよう。』と、手を上げたトミーから、ランキング1位の香水の香りがあたりに漂う。

トミーは誰かを従えて自分が一番でいるのがむしろ好きだ。むしろ、そうしないと気がすまない。
トミーの周りにはいつも人が集まった。

⏰:06/06/16 01:28 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#166 [ザゼツポンジュ]
家では、卑劣なことを言うが、実際学校ではブスとも話していた。
いかにも暗く、いつも一人でマンガばかり描いている、ゆみちゃんには
『ゆみちゃん、この子なんて言う名前つけたの?』
『…え、ミユキ…』
『ハハっ!!どうしてミユキなの!!?』
と、必要以上に近づいてしゃべったりもしていた。
ゆみちゃんには、誰も近づかなかった。いつも一人でいた。

⏰:06/06/16 01:34 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#167 [ザゼツポンジュ]
一方ジョウは、歴史だけが大好きだった。
トミーとは、正反対の性格なのだが、別に頭がいいわけではない。
世界史の時間だけは、誰にも邪魔はされたくない時間なのだ。
だが、この貴重な時間を邪魔される事があった。
ランキング一位の香水の香りを振りまく木田トミオのせいだ。

⏰:06/06/16 01:39 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#168 [ザゼツポンジュ]
何の授業にも、特に興味はなく、馬鹿をやって目立ちたいだけのトミーは、いつもいつもうるさかった。
『静かにしてください。』以外にも注意するのは、学級委員を努めるジョウからだった。
一瞬シーンとするのだが、、トミーはくじけない。

⏰:06/06/16 01:42 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#169 [ザゼツポンジュ]
スプレーを出す音を演出するのだ。
『プス───────。プス、プス───。』
『……効果音もやめてください』
ジョウはみんなから押しつけられてしまうタイプであり、しかたなく学級委員を努めている。
別にいじめられているわけではない。

⏰:06/06/16 01:45 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#170 [ザゼツポンジュ]
歴史以外の時はもっぱら窓の外を見ていた。
そして、周りの人間の事を考え、その中で自分をどう確立させていくかをよく考えていた。
自分と言うものついていろいろと模索している最中なのだ。
自分の意見をはっきりと言え、こだわりを持って生きていきたい、ジョウジロウ。出席番号9番。

⏰:06/06/16 01:50 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#171 [ザゼツポンジュ]
『憧れる人はたくさんいるし、羨ましい人もたくさんいる。だけど、尊敬できる人って言うのは、みんな死んでしまった人なんだ。ボクもきっと死んでしまった時に価値が決まる。人間、いくらいい人に見えたっていつどうなってしまうか分からない。ひょんなことでシャブ中になってしまうかもしれない。』

⏰:06/06/16 01:54 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#172 [ザゼツポンジュ]
歴史が好きなのも理由はその辺にある。
愛読している本は、隣に住むきーさんからもらった、太宰治の─人間失格─だ。
ジョウジロウは着る物も、置く物もこだわっていた。古着をバカみたいに買う事はなかった。
好きなところの服を高くても気に入れば購入した。

⏰:06/06/16 01:57 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#173 [ザゼツポンジュ]
トミーのように、ランキングには流されたくなかった。
来年になっても、絶対着るだろうと言う本気で気に入った服しかなるべく買わないようにしていた。
多種多様の物や、偽物、来年になれば興味がなくなってしまう物、すぐ飽きて捨ててしまうような物…
これら全てをジョウは嫌った。
古くてもみんなは気に入らなくても、自分にとっては、ひどく大切なんだと言う物をできるだけ長く傍に置いておきたいと、そう考えている。

⏰:06/06/16 02:02 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#174 [ザゼツポンジュ]
>>100-150

⏰:06/06/16 02:04 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#175 [ザゼツポンジュ]
『それでは、生徒副会長エノシタさんからみなさんにお知らせがあります。』
みんなダルそうな雰囲気は見せず、テキパキと体育館入りをする。
トミーは、全校生徒が一列に並ぶと言うのが苦痛でたまらなくなり、前の子をカンチョーしたくなる衝動にかられてしまうため、こういう無駄な朝会が大嫌いだった。
一年生の誰かの靴の中に画ビョウが入っていたとかで、急遽、体育館に全校生徒は集められてしまったのである。

⏰:06/06/16 02:27 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#176 [ザゼツポンジュ]
『みなさんおはようございます……えー、今日、画ビョウ入りの靴を発見したと…』
ジョウは気付いた。エノシタさんが、メガネを外したという事に。
背が高くもないのに、後ろの方で、みんなよりはるかに間を取ってあぐらをかいているトミーを見つけた。
ジョウは地味に地道にお尻をすべらしながら、後ろまでスルスルと下がって行き、トミーに近づいていく。

⏰:06/06/16 02:31 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#177 [ザゼツポンジュ]
『なんだ、ジョウ。小便か、立て』
トミーは近づいて来たジョウのえりを後ろからつかみ、立ち上がり、腰を曲げさせた。
そしてトミーに抱えられ、クルっと後ろを向き、トイレの方向へと連行させられた。
『この子具合悪いみたいっす、オレがトイレ連れて行くっす』
小声でペコペコとおじぎしながら、トイレへの移動を成功させた。

⏰:06/06/16 02:36 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#178 [ザゼツポンジュ]
『トミー、やめてくれよ。これじゃまるでボクがゲリしたみたいだ。』
大きく深呼吸をするトミー。重苦しい空間からやっと抜け出せた喜び。
『お前便所じゃないのか!!?じゃあなんで………おい、ジョウジロウちゃん、まさかオレの事が好きだとか言うんじゃないだろうな、やめてくれ、オレは女が好きだ、女好きだ、ただのチャラ男にみられているだけの人間だ。』

⏰:06/06/16 02:39 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#179 [ザゼツポンジュ]
呆れてトミーを見たジョウジロウちゃん。
『……しゃべってもいいか…』          『…ああどうぞ。』
朝からちょっとしつこすぎたと反省したトミー。
『エノシタさん、メガネ外していたの見たか!!?』
『お前、もしやそれが言いたかったのか!!?』
『そうだよ。』

⏰:06/06/16 02:42 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#180 [ザゼツポンジュ]
『あきれるよ。オレはこういう空間が大嫌いなんだ。入学式、卒業式、朝会、エトセトラ!!シーンとしすぎて頭が痛くなる。しかもそんな大嫌いな空間に、あんなど真ん中でえらそうにしゃべる副会長を、オレが見るとでも思うのか!!ええ!!?』
ジョウはトミーの肩をポンポンと叩いた。
『……そんなに興奮しないでくれよ。ボクが悪かったよ…。でもちよっとだけ、見てくれよ。』
トミーの背中を押し、トイレの扉を少しだけ開いて、全校生徒の前でマイクを持ってしゃべる、エノシタさんを見てもらった。

⏰:06/06/16 02:48 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#181 [ザゼツポンジュ]
『………メガネ忘れて来たんじゃないのか?洗面所とかに……』
『そんな事はいいんだよ。やっぱり外すと、ちょっとかわいくないか!!?』
『……お前、たいがい趣味悪いぞ!!あれじゃあ、勃ちもしない、おどろく段階ではない!!もっと…なんだろうな髪型も、陰気臭いところも、もっぱらダメだ!!』

⏰:06/06/16 02:51 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#182 [ザゼツポンジュ]
トミーも特にエノシタさんなんかに興味はなかったのだが、この日はちゃんとエノシタさんを見てみたのである。
『じゃあ、賭けをしようか』
ジョウは、トミーに賭けをしかけた。
『どんな賭けだ、いいだろう。童貞をもらってくれる女子を紹介しろとかはナシにしてくれよ。』

『ないよ…700%。そうだなぁ、エリアカフェで、トミーはボクに小夜子ストロベリーをオゴるってのは、どう!!?ボクが負けたらトミーは好きな物をいくらでも頼んでいいよ。場合によっちゃ、貯金もおろすつもりでいるよ。』

⏰:06/06/16 03:00 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#183 [ザゼツポンジュ]
『お前大きく出たな、ホントにメニューのいちから隅まで全て頼むぞ、それでもいいんだな!!?そして、全部食べおわるまで家にも帰れないぞ、それでもいいんだな!!?…ついでに、一日オレ様のパシリだ。移動教室ではオレの分も持ち、音楽の時間はオレの代わりにリコーダーを披露し、完全に合格のハンコをもらってもらう!!…で、一体何の賭けだ!!?』
ジョウは上を向いてしばし考え、3度くらいうなずいた。
『洗面所にメガネを忘れてきたのか、はたまた、コンタクトにしたか…だ。ボクはもちろんコンタクトに賭けるよ。』

⏰:06/06/16 03:07 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#184 [ザゼツポンジュ]
『了解なまこん。』

自信満々なのはジョウの方だった。それは真ん中に立ってしゃべるエノシタさんの表情にハニカミが見られたからだ。
いつもはキリっとした表情で、全校生徒を見渡している。なのに今日は左右をキョロキョロし、少し頬を赤らめているのをジョウ見逃していなかった。
トミーには根拠のない自信がまとわりついているため、理由など何もない。ただオレが正しいとしか思っていないのだ。

⏰:06/06/16 03:14 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#185 [ザゼツポンジュ]
『それでは、全校朝会を終わります、きりつ。』
朝会が終わる号令がかけられた。
ザワザワし、一年生から、体育館を退場し、教室へと戻って行く姿を、トイレのドアの隙間から二人は見ていた。
『生徒会の奴らは最後の最後だ。オレらは生徒会の後ろを歩こう。』
と、トミー。
1年生……2年生……三年生……そして、最後、生徒会員達が体育館を出ようするところで、トイレから出た二人。

⏰:06/06/16 03:20 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#186 [ザゼツポンジュ]
トミーは、ツカツカと生徒会員の後ろにベタづけした。ジョウもぴたりとトミーの後ろにつける。

そしてトミーはエノシタさんの肩に手を回した。  『エノシタさん。』
エノシタさんはびっくりして、ガチガチになり、右手と右足が同時に出て、運動会で緊張した小1男子の図のようになった。
『今日メガネどうしたの?かわいいじゃん。』
トミーはエノシタさんの顔を至近距離で覗きこんだ。エノシタさんは顔を真っ赤にして
『コンタクトにしたの』
と言って走って逃げてしまった。

⏰:06/06/16 03:26 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#187 [ザゼツポンジュ]
トミーはくるっと後ろを振り返り、
『おい、ジョウジロウちゃん、やっぱ洗面所に置いてきたそうだ。』
両手でジョウの肩に手をかけた。
フワっといつもの香水の匂いがした。
ジョウもトミーの肩に手をかけ、
『無償で、耳かきをプレゼントするよ。』
と、勝利を飾ったのは、2年2組の学級委員、出席番号9番の、鈴木ジョウジロウだった。

⏰:06/06/16 03:31 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


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