クソガキジジイと少年」
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#1 [ザセツポンジュ]
オレ、木田トミオ14歳。
で、オレのじぃちゃん。
木田シゲル62歳。

『トミー。トミーやぁい。おーいトミー。』
朝からこんな大声を出すオレんちのじぃちゃん。

とうとうボケたんだ。
…その方がいい。このままボケて、老人ホームへ

人事移動だ。

⏰:06/06/12 01:03 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#2 [ザゼツポンジュ]
格言係からついに降格する時がきたのだ。

よし。今日はいい日だ。
『うるせー。なんだじじい。』
じじいは玄関で水槽を覗き込んでいた。

『お前じゃないんだよ。わしゃこのタートルに話し掛けてるんだ!!っつの。』

『じゃーオレの名前をこんな汚い亀に付けんじゃねぇよ!!』

チッと舌打ちをかましやがった。

⏰:06/06/12 01:08 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#3 [ザゼツポンジュ]
『お前はトミオ。こいつはトミー。お前は日本人。こいつは外国人だ。そしてお前はトミオというちょっとダサい名前に色をつけただけのニックネームだろ。だけどなこいつは…』

『うるせぇな!!なげぇよ!!わかったょ。悪かったよ!!』

⏰:06/06/12 01:11 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#4 [ザゼツポンジュ]
ウチのじぃちゃんは、もっともらしいことを一日一個は言ってくる。

人間はこうあるべきだとか、そんなことはしてはいけないんだとか。

悪いがオレはチャラチャラ生きたい。
女に囲まれ、ワーワーキャーキャー言われていたいのだ。
例え40になろうとも50になろうとも。

⏰:06/06/12 01:14 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#5 [ザゼツポンジュ]
自惚れているわけでは決してないのだが、

オレはモテている。
…そして童貞じゃない。
まさにオレは最強なのだ。
かわいい女が好きだ。
はやりものが大好きだ。
あくまでもランキングにこだわりいち早くトレンドのものを身につけて、さっそうと歩いていたいのだ。

⏰:06/06/12 01:17 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#6 [ザゼツポンジュ]
しかし、じぃちゃんの話を聞いていると、ついつい汚染されそうになる。

オレは型にはまりたくはないのだ。
時には右に曲がり、ちょっと原っぱで一休みし、苺をひとつぶ…そんなのでいいじゃないか。
一本の道をひたすらまっすぐ…なんて、そんな虫のわきそうな事は断じてしたくないのである。

⏰:06/06/12 01:20 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#7 [ザゼツポンジュ]
ひとつ言っておくがウチのじぃちゃんは、しっかりしているワケではないのだ。
変だ。変人だ。
口をすっぱくしていつも言う事がある。
『万引きはしてはいけない。とくに宇野店ではしてはいけない。
ただ、お墓のお供えものならば、盗って食べてもなんら問題はない。そんなに菓子が食いたいんならお墓にいきなさい。なぜなら、誰も食べられないからだ。ただのあまりものだありゃ。わかるか!!?宇野店のババアは人情もある。それに計算もしなくてはならないのだ。人が困る事はしてはいけないんだよ、トミオ』

⏰:06/06/12 01:25 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#8 [ザゼツポンジュ]
宇野店とは、店の番をしだして半世紀以上たつという、90歳をこえたシワクチャのおばぁちゃんがベンチに座っている小学校の裏の駄菓子屋の事だ。
じぃちゃんよりももっと年老いたばあちゃんが、駄菓子を毎日計算している。
オレ達にとっちゃ、万引きの練習場だった。
            でも、じぃちゃんがそう言うからオレは手を引いた。
それと、ウチの隣にもう一人、変なじいさんが住んでいる…

⏰:06/06/12 01:31 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#9 [ザゼツポンジュ]
『ジョウジロウ、ワシはみーちゃんが好きなんだが、みーちゃんには彼氏がいるんだ。ロックな奴らしい。要は変人だ。ワシは苦しいよ。』

ボクの名前は鈴木ジョウジロウ、14歳。
そして女好きのボクのじぃちゃんの名前は、鈴木ひとし62歳。
『じゃあじーちゃんもロックになればいいじゃない!!?』
じぃちゃんがプチ失恋をする度に、ボクはプチ慰めと称し一言で慰めた。

⏰:06/06/12 01:46 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#10 [ザゼツポンジュ]
ボクんちにお父さんはいない。
結構ちっちゃい時どっか行って今だ帰ってきていない。
もう絶対帰ってこないのは、ボクも14歳にもなれば察しがつくのだけれど。
ばーちゃんはとっくの昔に死んだんだけど、じーちゃんの、このデレデレした態度がばあちゃんを苦しめていたのではないかと、ボクは今でも疑問に思う。
じーちゃんはこの世のメスというメスが大好きだ。
ボクはじーちゃんっこでじーちゃんは好きだ。

ただ、完全に一つ言えるのはじーちゃんのようには決してなりたくない。

⏰:06/06/12 01:51 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#11 [ザゼツポンジュ]
『まさこの散歩、今日誰が当番だ!!?』
まさことは、3年前から飼いだしたウチんちの犬。
名前はじーちゃんが決めた。もちろんじーちゃんが拾ってきた。
その当時、一目惚れした女の子の名前だ。
『ぁ、ボクだ。じーちゃんも一緒に行くか!!?』

⏰:06/06/12 01:55 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#12 [ザゼツポンジュ]
『いや、いい。ワシは童貞とは歩きたくない。悪いなジョウジロウ。いつ何時もレディーを誉め、優しくするのだよ。まさこを頼んだ。ぉぃ、一言めは今日もかわいいなと言ってから連れ出すんだ。デートだと思え。わかったな!!?よし、行け。』

確かにボクは14歳、童貞だ。
だかしかし、まさこはオスだ。

⏰:06/06/12 01:59 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#13 [ザゼツポンジュ]
ボクもお母さんもこの事実については、墓場まで持って行くつもりだ。
まさこがオスだと知れば、じーちゃんは綱をちょんぎってしまうかもしれない。
隣に住んでいる、じーちゃんの同級生のきーさんと言う人と大の仲良しだ。
ボクはきーさんの孫のトミーと同級生。昔からよく遊んでる

⏰:06/06/12 02:04 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#14 [ザゼツポンジュ]
木田シゲル、鈴木ひとし。共に62歳。
きーさんとすーさん。
同級生であり仲良しだ。
そしてうっとうしいことに家が隣である。

だがすーさん宅を2年前、新築に改装をしたため、きーさんは少しヤキモチを妬いているのだ。
そして今だちょっと根に持っていることがある。

⏰:06/06/12 02:08 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#15 [ザゼツポンジュ]
すーさんは2年前のエイプリルフール4月1日、
きーさんに、こんな話を淋しそうにしたのだ。
『ワシには金もない。そして最近風呂で数を数えるといつも4つ目でつまづいてしまう…なんとも不吉なんだ。だからこの家を壊してワシはさくらんぼホームというかわいい名前の、シワクチャばぁさんが、わんさかのたうちまわる老人ホームへと……なぁ、きーさん。またいつの日かイタズラを一緒に考えられる日が来たならば…なぁきーさん。だまっていてごめんよ…』
『すーさん…すーさん』

⏰:06/06/12 02:14 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#16 [ザゼツポンジュ]
きーさんは涙した。
エイプリルフールだという事に気付かないまま

涙した。

すーさんは姿をくらました。
そしてすぐすーさんちは取り壊されていった。
隣の家がガシャンガシャンと音がする度
きーさんは胸を痛め
涙した。
2階のきーさんの部屋で、当時12歳の孫のトミオとあとかたもなくなったすーさんの家を見ながら、きーさんは半世紀分の思い出をトミオに語った…

⏰:06/06/12 02:19 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#17 [ザゼツポンジュ]
どっちがくしゃみを早く出せるかティッシュを細く丸めて鼻をつつき、競争した話。
わざと遠くへ行き、知らない道をさまよい、カンだけを頼りに家へ帰るという無駄な冒険をしていた話。
すーさんが好きだった女達の数のほんの少しだけではあるが50人分の話。
きーさんとすーさんが二人で川原で遊んでいるところを写真で撮られ、
“ここでは遊ばない”という注意事項のモデルにされていた話

⏰:06/06/12 02:26 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#18 [ザゼツポンジュ]
そんなこんなで5時間もしゃべり続けているうちに、またもや
涙した。
『なぁジジイ。すーさん帰ってくるんだぜ。』
すーさんとの思い出話は3分の1も聞き入れてはいないが、トミーは平然として、一言、言い放った。
『どこにだ、なぜだ。』
問い掛けたその時

⏰:06/06/12 02:35 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#19 [ザゼツポンジュ]
『トミー!!あそぼー!!』

(は!!すーさんの孫だ。ジョウジロウだ。どうしたんだ、なぜだ!!……すーさんカムバックなのか!!?そうなのか!!?いやちがう…お別れを言いにきたのだ、そうだ。)
『やぁ、きーさん生きていたのかい!!?』
ジョウは曇り一つ浮かべない晴れ晴れとした表情できーさんの目の前に現われた。
『ジョウジロウちゃん…ワシは辛くてたまらんよ。』
また、そしてまたきーさんはみっともなく
涙した。

⏰:06/06/12 02:40 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#20 [ザゼツポンジュ]
『そんなにボクんちが新しくなるのが嫌なのかい??』

『はて?ジョウジロウちゃん。ワシはボケたのかもしれんな。耳かきを持ってこないか今すぐ』

トミーもジョウもニンマリ笑った。
『すーさんはエイプリルフールにウソをついたんだよハハハハハ。』

⏰:06/06/12 02:44 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#21 [ザゼツポンジュ]
きーさんはついに気付いた。流した涙が実に無駄だったということを。
『ワシは女が好きなんじゃ!!ばーさんに内緒で、かわいこちゃんと接吻してしまった日付なら忘れもしない!!だがな!!60にもなったジジイから聞いた話の日付けまで覚えてられると思うか!!エイプリルフールにウソをつく奴ぁ、本日から刑務所行きじゃ!!
お前達!!そんな事で笑っているヒマがあるんなら二つ上のねーちゃんの乳でも揉んできてみろ!!わかったか!!』

ゴツン。

きーさんのゲンコツは痛いのだ。

⏰:06/06/12 02:50 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#22 [ザゼツポンジュ]
きーさんの孫はトミー。
すーさんの孫はジョー。

きーさんは何かと格言好きだ。すーさんは何かと流されやすく、影響されやすい。60過ぎてもミーハーだ。旬な女の要チェックはかかさない。
一方孫達はこの二人のジジイに振り回される毎日を送っており、ドリルどころではない。
そして普通の14歳ではいられなくなるのだ。

⏰:06/06/12 02:55 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#23 [ザゼツポンジュ]
クソガキジジイ二人とマセ気味少年二人の。
そしていきつけのこじゃれたカフェで、物語は色を濃くする。
少年のようなじーさんと、少し大人びた中学2年生。
プラマイはゼロだ。

え?私は誰かって!!?
後で分かりますよ。

⏰:06/06/12 02:59 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#24 [ザゼツポンジュ]
ここ1年くらい前にオープンしたカフェ。
最初に見つけたのはすーさんだ。かわいい女の子を探索中、カフェの前で小黒板にメニューを書いている小さくて真っ白のかわいいかわいい女の子を見つけたのだ。
そしてすーさんはその子を見つけたその日から、きーさんを連れてこのカフェへ通うようになった。
もうすぐ一年になる。

⏰:06/06/12 03:03 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#25 [ザゼツポンジュ]
『小夜子ストロベリーをふたつ』
きーさんは、ここの小夜子ストロベリーが大好物だ。
コップいっぱいにただでさえ甘い苺を潰し砂糖をたっぷり過ぎるほど混ぜた、糖尿病なら即死亡の甘い甘いデザート。
すーさんは無理矢理この甘い小夜子ストロベリーに付き合わされている。
『甘いなぁ。ワシはこんなにも甘い恋心を抱いた事が一体何度あっただろうか…』
きーさんは毎回必ずこのセリフを吐くのだ。

⏰:06/06/12 03:08 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#26 [我輩は匿名である]
おもろい

⏰:06/06/12 03:11 📱:D702i 🆔:XtEPLd5I


#27 [ザゼツポンジュ]
基本的にはアメリカンテイストだが、ガチャガチャしているわけではなく建物は木材の優しい感じで出来ていてカントリー風だ。証明はオレンジの小さな証明がいくつもやんわりと包む。
60年代の懐かしい洋楽が流れ時間をゆっくり刻む魔法をスピーカーからふきかけている。

オープン朝の7時ピッタリにつけば、きーさんとすーさんは貸し切り状態で小一時間ゆっくりすることができた。

⏰:06/06/12 03:32 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#28 [ザゼツポンジュ]
席は10席弱で、カウンターもあり、広いわけではないが決してこじんまりとしているわけでもない、ちょうどいい広さで、このカフェには道路に面した窓際の席一つだけになぜか“七夕”と刻まれいた。
きーさんとすーさんはこの七夕の席に必ず座った。
すーさんは行き交う女子中学生を犯罪者並みにジロジロ観察し、きーさんはゆっくり甘い小夜子を口に運び、時折雑談を楽しむという老人らしくない朝を共にしていた。

⏰:06/06/12 03:40 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#29 [ザゼツポンジュ]
そしてこの席には、黄色いノートが置かれてある。
夕方には密集する若いギャル達がこのノートにプリクラを貼りまくっていた。
きーさん達はこのノートを開いた事はない。
かたや窓の外に夢中になり、かたや甘い苺に身を委ね、ノートの存在なんぞ気にも止めていなかったのだ。

⏰:06/06/12 03:45 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#30 [ザゼツポンジュ]
このカフェの名前は
AREA CAFE
#7791
(エリアカフェ ナンバーナナナナキュウイチ)きーさん達は
『略して、ななくいー』
別に対した略にもなってはいないが数字しか読めないためか、こう呼んだ。

この7791カフェは必ず朝は変なジジイ二人で貸し切りになる。

⏰:06/06/12 03:53 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#31 [ザゼツポンジュ]
『トミオ。お前はどんな女がいいんだ。』
きーさんはすーさんとの作戦会議に使う糸電話を制作していた。
『オレー?やっぱ見た目のいい奴がいいよな。オレクラスになるとな。』
トミーは宿題の数学の問題集を解いていた。
『トミオは、下の下クラスに降格した。たった今。』トミーはシャープペンシルを置いた。そしてハサミに持ちかえコップとコップの間にピンと張ったタコ糸をチョキンと切った。
『なぜだ。なぜそんなに下のクラスなんだ。』
ゴツン。
きーさんのゲンコツは痛い。

⏰:06/06/12 04:02 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#32 [ザゼツポンジュ]
『まず、お前は今、一所懸命数学と戦っている。そこがダメだ。パラパラ漫画で数学ができないことを挽回する度胸がないということだ。あらーん、やだーん。トミオくんのパラパラ漫画何ておもしろいんでしょー。先生好きよーこうゆーのー。合格くらい言わせてみろ。あの女はすーさんいわく年下好きだ。すーさんが言うんだから間違いはないぞ。』        きーさんは、また糸電話を作り直す準備に取り掛かった。

⏰:06/06/12 04:07 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#33 [ザゼツポンジュ]
『ジジイ。質問と答えと全然関係ねぇじゃんかよ。』とりあえずトミーはシャーペンを置いた。
『おぉ。間違えた。種目を間違えたようなもんだ。とみお、よく聞け。女は顔ではない。セックスも大切だが気が合うかどうかだ。ぺっぴんの上にはべっぴんがいる。お前は嫌でも街を歩く。そうすればまし今可愛い彼女を連れていたとしてもだ。そいつよりもかわいい人をお前は見てしまうだろう。』

⏰:06/06/12 04:14 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#34 [ザゼツポンジュ]
きーさんはメジャーを使い隣のすーさんの部屋まで何センチか計っている。そしてきーさんは再び女に対しての持論を話しだした
『見かけを求めるなんざ、くだらないことだ。かわいい女とセックスをした。そして性病になった。そんなオチだ。ちょっとした女がかわいいかわいいとちやほやされてみろ。ただのサセ子。もしくは自分を鏡で見て酔い痴れるだけのクズに過ぎない。』

⏰:06/06/12 04:21 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#35 [ザゼツポンジュ]
『努力をして何かを掴み取ろうとしている女を見極めろ。そこいらの女とは違うぞ。そんな女がいいぞ。でないとお前すーさんみたいなロクでもないジジイになるぞ。それでもいいのか!!?え!!?』
トミーは指先でシャーペンを回し珍しくきーさんの話を聞いていた。
『でもオレすーさんの観察力見習いたいよ。』
『頼むがワシより先に死んでくれ。トミオちゃんはカスだ。いいかお前考え直せ。よく聞けよ。』

⏰:06/06/12 04:26 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#36 [ザゼツポンジュ]
『顔だけちょっといい奴なんていっくらでもいるんだ。だがホントに自分を理解してくれて、お前もそれと同じくらい相手を理解しようとし、どっちかがかたよっていてもダメでっていうな、そんな貴重な恋愛をしてほしいんだよ。すーさんみたいにデレデレキャバクラに金を落としているようじゃいかんぞ。』

⏰:06/06/12 04:30 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#37 [ザゼツポンジュ]
『ワシだってそりゃあピチピチのおねぇちゃんは好きだ。だがしかし現実62にもなったジジイに本気になるか!!?ただの軽いひとときの遊びと割り切っている。すーさんみたいにワシは馬鹿ではないのだ。勉強ばかりができる子がいいのではないぞ。奴らは人間を数字で見ているからな。敵だ。かといって鏡ばかりを見ているような女もダメだ。』

⏰:06/06/12 04:34 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#38 [ザゼツポンジュ]
『そんな女は気持ちが悪い。ワシはどうも苦手だ。勉強はガツガツできなくていい。最低限できればいい。優しい気持ちをいつも持ち、悔しさでも努力に変えるしまえるチカラがある、そんな子がワシはタイプです。……ワシの好き嫌いはどうでもいいが、トミオちゃん、どーだ。』
トミーは問題集に向かっていた。
『とりあえず話がなっげーんだよ。』
『お、パラパラ漫画を書く気になったのか!!』
『今女の話してたんじゃねーのかよ、ぼけ!!』

⏰:06/06/12 04:41 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#39 [ザゼツポンジュ]
糸電話とは、二つの紙コップの間に糸をピンと張ればいいだけの事である。
『よーし、すーさんとのトランシーバー完成。おーい、すーさん生きてるかー。』
窓から顔を出しきーさんは隣のすーさんを呼んだ。
が、すでにすーさんは、つったっていたのだ。
『ロクデナシのモテない死にかけジジイで何が悪い、きーさん。』
別にそこまでは言ってないが心のなかで思っているのは確かだろう。
『ふぉっふぉっふぉっ。プライバシーのかけらもないのうこの街は。』

⏰:06/06/12 04:46 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#40 [ザゼツポンジュ]
━━━夕方電話が鳴った。
電話をとったのは木田家の悪党、シゲル62歳。
通称きーさん。
『はーい、もしもし。』
『あ、あの。』
若い女だった。
(こないだすーさんと行ったキャバクラのねーちゃんか!!?)
『あ、もしかしてキララちゃーん?』
ちょっと体をくねらしたきーさん。この間チラシの裏に書いた、家の電話番号をキャバ嬢に渡した。
『…いえ、ちがいます。』テンションは急降下。不機嫌は絶好調。勝手にキャバクラの女だと思った自分が恥ずかしくてたまらない。そんな木田シゲル62歳。

⏰:06/06/12 04:57 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#41 [ザゼツポンジュ]
『誰だ!!こんな時間に!!名を名乗らんか!!』
夕方の6時半です
『すいません、えのしたと申しますが、ジョウジロウくんいらっしゃいますでしょうか!!?』
『はぁ!!?ウチは木……』 
はっっ!!!!ピンっっ!!
きーさんのテンションは急上昇。頭の回転のレベルは上がった。

⏰:06/06/12 05:01 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#42 [ザゼツポンジュ]
『木ー…のうからジョウジロウは行方不明でしてね。』
『…あの、今日学校で見ましたが。』
『ちょっとしたジョークです。お嬢さん、ウチのジョウジロウに何かご用でも!!?今はちょっと犬の散歩へ行っているのだけれどもね、ちなみに犬の名前はまさこと行って、すーさん……すーさ…数三年前くらいに好きだった女の名前でさて』

⏰:06/06/12 05:11 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#43 [ザゼツポンジュ]
『???ぃや、いないならいいんです』
『よくないわ!!!!えのしたさんジョウジロウに用事ならメルアドを教えなさい。メールするように伝えておくから。』
『は、はい。じゃあ言います。ディー、イー…』
『やや!!?イージー!!?』
『ディー、イー…』
『ジー、ジー!!?誰がシジイじゃ
『…デー』
『でー?あ、デーね、デー…っと。で!!?』
メルアドを聞き出すのに20分もついやした。マセていても62である。

⏰:06/06/12 05:25 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#44 [ザゼツポンジュ]
『そいで、えのしたさん、ジョウジロウが好きなのかい!!?』
『い、いや、あの、いえ、や、ち』
『ぅぁーー、いーんだよ、みなまで言うんでない。検討を祈っているよ。アディオス!!!!』
ガチャン。

さも自分が14、5の少年かのように急いで二階へ駆け上がった木田シゲル62歳。

⏰:06/06/12 05:30 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#45 [ザゼツポンジュ]
『すーーさん!!すーさん。いいネタだーーーっと。おーっといけない。』
シー。何のために、糸電話を作ったんだきーさん。
ひょっこり顔をだしたすーさんに、口パクで糸電話使用を要求。
ウインクのできないすーさんは両目をつぶり、OKサイン

⏰:06/06/12 05:33 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#46 [ザゼツポンジュ]
窓をある程度閉め、ピンと糸を張り、きーさんは紙コップを口にあてる。すーさんは耳にあてる。
『今さっき、えのしたと言う女から電話がかかってきた。』
『どこの店の女だ!!?』
すーさんは、耳にあてたまましゃべっている。
『そしておたくのジョウジロウへの用事だが、間違えてウチへかけてきた。』
『なにを!!?中にの分際でキャバクラデビューとは、なんったる事だウチの孫は!!!!』
まだ耳にあてっぱなしだ。
このじいさんら二人は糸電話のしくみを把握できてはいない。
『ジョウジロウが童貞を捨てるチャンスだがそうさせられん。もっとこの状況をハプニングと化してサプライズにするんだすーさん。』

⏰:06/06/12 05:41 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#47 [ザゼツポンジュ]
『絶っっっ対だめだ!!あのジョウジロウがなぜ、おねーちゃんからアプローチを受けるんだ!!二重だからか!!は!!もしや、ジョウジロウの奴、営業されかけているんでは…いかんいかん。中2で借金は背負わせられん、ダメだダメだ。ぃゃ…キャバクラのねーちゃんとは言えど、ひとりの女だ。若い男が好きな女もいるだろう。ジョウジロウの奴め…いつの間に酒なんぞくらうようになったんだ。』
混乱しまくるすーさんを誰も止められない。

⏰:06/06/12 05:47 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#48 [ザゼツポンジュ]
『じーちゃんどうしたの?』
ジョウが犬の散歩から帰ってくるやいなや、わけのわからぬ独り言をしゃべっている祖父が心配になる。
『わ、わっっ!!ジョウジロウ!!どこまでできそけないなんだ!!この童貞野郎!!じーちゃんを脅かして何が楽しいんじゃ。下に迎えが来るところだったぞ、そこそこいい車で死神が、馬鹿たれ!!脅かすんじゃない!!』すーさんは糸電話どころではなくなり驚きついでに階段を降り、隣の木田家へと10歩ほど歩いた。

⏰:06/06/12 05:53 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#49 [ザゼツポンジュ]
『おじゃまします。』
小さく挨拶をし、きーさんさんの部屋、2階へと上がる。
『それでワシの考えた作戦はな、すーさんよ…』
『きーさん!!』
『ぎゃっっ!!』
きーさんは窓の向こうにすーさんの姿があると思い、紙コップからボイスを送っていたのである。
『すす、すーさん!!そのときすーさんは!!!!デ、デ、デデデ、デデデデン!!霊体離脱してウチを尋ねてきたーー!!』
きーさんはあわてふためく。なんと言っても62だ。反応もにぶくなれば理解するのにも時間がかかる。

⏰:06/06/12 06:01 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#50 [ザゼツポンジュ]
『きーさん、きーさん。おじゃましますはちゃんと言ったよ。小さい声で言ってしまったのはワシが悪かった。で、どこの店の女なんだ。ジョウジロウにホの字女は。』
『……まぁ一服しようじゃないか友よ。すーさん。あんた人話をまるで聞いてないようだがワシの方に原因があるかもわからない。耳かきを持ってこないか、ココへ。』
これでも、糸でんわをしたがるジジイ二人である。

⏰:06/06/12 06:08 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#51 [ザゼツポンジュ]
作戦会議のため、#7791カフェに行こうとしたが夕方にもなれば若者がわんさかくる。すーさんは若ければ何でもいいのだがきーさんは目の周りが真っ黒な女は嫌いだ。
すーさんは短いスカートを拝みたいのだが、きーさんはその隙間から見えるシミ付きの小便くさそうなパンツに吐き気すら覚える。

したがって、本日の作戦会議は
おでん屋『隊長』

ジジイは二人は15分散歩がてら海へ向かって歩き隊長を目指す。
『ジジイ二人がおでん屋なんて、ありきたりな展開だなすーさん』

⏰:06/06/12 06:14 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#52 [ザゼツポンジュ]
きーさんは自分が62だと言うことからできるだけ逃げたい。
『キャバクラ行く金もないしなぁ…』
すーさんはとにもかくにも、おねーちゃん、おねーちゃんで頭がもぉいっぱいいっぱいだ。
到着し、芋焼酎をひっかけながら作戦会議は始まった。

⏰:06/06/12 06:17 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#53 [ザゼツポンジュ]
『きーさん、すーさん。久しぶりだじょ。』
おでん屋隊長の店主、さとし。36歳。人妻と不倫中。ロクデナシ。顔は、ベビースターラーメンの表紙に似ている。
『さとしちゃんは、じょーじょー、口癖がうっとうしいじょ!!ワシもすーさんも帰ったらさとしちゃんの悪口で3時間は持つぜ。』
さとしは“酔うと赤ちゃん口調になる気色の悪い36歳”でこの街じゃ有名だ。そして誰も飲んでいいと言ってもないのに勝手に酒をくらいだすとんでもない奴なのだ。

⏰:06/06/12 06:22 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#54 [ザゼツポンジュ]
『なぁ、きーさん。早く説明してくれよ。ワシはどこのオナゴか気になって仕方がないよ。場合によっちゃいったん、ジョウジロウの首を絞めに帰る覚悟までできてるんだ。早く言ってくれよ。』
きーさんは芋焼酎を一口、ちくわをひとかじり、
『すーさん。さくらんぼホームへ行った方がいいんではないのかね。苦労してきた女達がいて価値があるぞ。キャバクラの女より、もっと立派だ。』

⏰:06/06/12 06:26 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#55 [ザゼツポンジュ]
すーさんは猫舌のため、冷めるまでおでんは食べられない。
『早く言えよ、ワシのこの胸の苦しみがきーさんにわからないのかい…』
『すーさん、えのしたさんは中学生だ。』
『ちゅ、中ーー学生が飲み屋で働いていいのかね、だめだきーさん。摘発しよう。今日の作戦は摘発の仕方だな。』
『…摘発なら電話一本だ、すーさん。とにかくキャバクラから離れてくれ。えのしたさんは、キャバ嬢ではない。ただの中学生の女子なんだよ。』

⏰:06/06/12 06:32 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#56 [ザゼツポンジュ]
きーさんは、これまでの事情をいちからすみまで説明した。そしてやっとすーさんから理解を得た。
糸電話の障害について、責めもしないこの二人は実にナイスガイだ。
きーさんの、勝手な推理はこうだ。
推定、中3女子えのしたさんは、ひとつ後輩のジョウジロウの二重まぶたに恋をする。だがなにをどう間違えたのか隣の家へかけてきてしまったのだ。そして、きっと告白するつもりが、きーさんの手によってハプニングが途中注入されてさまう…と、まぁこういう話だ。

⏰:06/06/12 06:41 📱:P701iD 🆔:WgVI3NcA


#57 [りな]
ぉもしろぃ
ゥチきーさん派(´`)

⏰:06/06/12 22:24 📱:P901i 🆔:97ucB5bw


#58 [Й]
コレ面白すぎだよ(ノ;)ノ
更新_ガンバってネ

⏰:06/06/12 23:26 📱:SH900i 🆔:.NJ.O/Vg


#59 [ザゼツポンジュ]
ぁ、ありがとぉござぃます、あせった!!すぃません…


きーさんは、えのしたさんのメルアドまでゲットしている。

20分もかけて、だ。

とりあえずメールをしれーっと送ることにした。
さとしちゃんの手を少しばかり借りてメールの送信に辿り着いた。


えのしたさん。ジョウです★電話くれたみたいなんだけどぉ、まさこの散歩させられててー。超ダルカタヨ。えのしたさん何してんの!!?メールちょうだいね☆彡

⏰:06/06/13 01:11 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#60 [ザゼツポンジュ]
誰の携帯からかって!!?
他でもない、木田家の悪党が最近購入した老人用の携帯電話だ。

ピルピルピル
えのしたさんからの返信はほんの数分でやってきた。

あの、いきなりなんだけど、ジョウくんてトミーと仲いいんだよね!!?


きーさんとすーさんは顔を見合わせた。
『よい、きーさん。えのしたさんはお宅のトミオちゃんが好きなんじゃないのかね!!?』
『……あぁ。ジョウジロウに仲を取り持ってもらおうって言うコンタンなのか!!?この女とんでもない性悪だな。ロクデナシだ。こらしめてやらないかん。』
『そーだな、させこださせこ。よーしよし。』
そして二人の老人は、熱く燃え上がりいたずらを考えに考えぬいた。

⏰:06/06/13 01:22 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#61 [ザゼツポンジュ]
メールのやりとりはこうだ。
きーさん(ジョウ)
『仲良いよー。どうしたの!!?』

えのした
『トミーって彼女いるのかな!!?』

きーさん(ジョウ)
『いやぁわかんないな、今は。でもだいたいいつもいるけど。』                   えのした
『そうだよね…わかったありがとう☆彡』

きーさん(ジョウ)
『ちょっと待ってよ、トミーが好きなら協力するよ!!えのしたさん頑張ろおよ!!大丈夫だよ!!』

えのした
『えっっ(*_*)じゃあ…お願いしようかな…』

きーさん(ジョウ)
『うん、うん、うんその方がいいよ。あとはまかせてね。おやすみ。またメールするよ』

⏰:06/06/13 01:34 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#62 [ザゼツポンジュ]
さとしはすでによっぱらっていた。
『ボク、いい気分でちゅーフフフ。やーん。』
もう夜の九時半をまわっていた。
『きーさん、さとしちゃんがこんなうちに家へ帰ろう。最悪ツケになるが今日は食い逃げだ。』
そっからの行動は速い。
小便に行きたかったきーさんも、我慢し、店の外へ出て、男の特権立ちションを暗やみの中でかますのだ。

⏰:06/06/13 01:42 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#63 [ザゼツポンジュ]
『すーさん、明日えのしたさんが、どんないでたちなのか、ちょいと朝偵察に行こう。』
ホロ酔いのジジイ二人はいい気分でヨタヨタ歩き帰っていた。
『おぉ、いーねぇ。女子中学生をたくさん見れるのか』
『しかし、なんたることだ、えのしため。すーさん、ジョウジロウにはくれぐれも、しーだぞ。』
『ぅぁーん、わかってるわかってる。きーさん風呂は入ってから寝ろよ。明日若い女のところへ行くんだ。わかったな。』
『了解なまこん』

⏰:06/06/13 01:51 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#64 [ザゼツポンジュ]
了解なまこんとは、きーさんが14歳の時に思いついたセリフだが、半世紀たった今でもはやる気配がまるでない。だがきーさんは流行語を生み出したんだと今だに思い、今だに言い続けているのだ。
『すーさん、この稲を刈った後のたんぼの匂いというのは実にいいな。秋がやってきたのだよ。』
九月も中旬に入り、きーさん達が暮らす田舎町は稲刈りシーズンだった。
きーさんは季節を肌で感じ楽しむなかなか古風な人なのである。
すーさんは、女さえいれば春だろうが夏だろうが氷河期に入ろうがどーだっていい。

⏰:06/06/13 01:55 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#65 [ザゼツポンジュ]
きーさんは家へ帰るなり、トミーの部屋へと向かった。
トミーの部屋のドアノブをクルっとまわし顔半分だけお邪魔した。
『トミオ入っていいか…』トミーはパラパラ漫画をつくっていた。
『入る前に聞け、なんだクソジジイ』
きーさんは座りとりあえずたばこに火をつけた。
『灰皿を出さないか!!ゲストがこうして来ているんだぞ』
『何様なんだよ!!用事を言え!!』
町内会でもらったきーさん用の灰皿をしぶしぶ出してあげたトミー。

⏰:06/06/13 02:02 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#66 [ザゼツポンジュ]
『えのしたって女知ってるか?』
トミーはそくざにこう答えた。
『ブスだ。』
『ほぅ。3文字で片付けたな。えのしたさんは処女か!!?』
『処女じゃないとしたら近親相姦としか考えられない。』 
『お前は物凄いことを口にする14歳だな。ところでそのえのしたさんがなんっっでもするから付き合ってくれと言われたら、トミオよどうする。』
『オレに触らず金だけくれるっつーんなら考えてやってもいいぜ。つーかお前なんであんなブス知ってんだよ』

⏰:06/06/13 02:08 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#67 [ザゼツポンジュ]
『お!!?……最近なスーパーで、うっかり小銭をばらまいてしまった時拾ってくれたんだよ。名札にえのしたと書いていた。』
きーさんは平気でウソをつく大物ゲストだ。
『は!!?じーちゃんはそんな事であのブスを気に入ったのか!!?』
きーさんは蚊取線香の匂いが大好きだ。夏も終わりそうだが夏の名残を惜しむようにそっと火を付けた。
『トミオ、えのしたさんは中3か!!?』
『ああ。』
きーさんは心の中でッッッシャ!!と叫んだ自分の推理が当たったのだ。

⏰:06/06/13 02:14 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#68 [ザゼツポンジュ]
『ワシは、えのしたさんを知らなかった。はたまたえのしたさんもワシの事は知らない。トミオの事は知っている。だがワシは名札なんぞつけてはいないのだ。ワシがトミオのじーちゃんである事は、えのしたさんは知らないワケだ。それでも親切に小銭を拾ってくれたのだ。いい子ではないか。』
『…まぁな。』
……架空の話だがな。
『で、トミオはえのしたさんと話した事があるのか!!?』
シャーペンを回しながらトミーは考えた。

⏰:06/06/13 02:22 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#69 [ザゼツポンジュ]
『……新学期早々の話なんだけど、理科の教室で、あのブスがノート置き忘れてたんだよ。たまたまオレ、えのしたさんと同じ席だったんだ。で、届けに行ったんだよ3年のクラスまで。オレさぁ、そこでミスを犯したんだ。3年に榎下(エノモト)さんてゆうかわいい子がいるんだけど、ブスな榎下(エノシタ)さんと、かわいい榎下(エノモト)さん漢字が一緒だから、オレえのもとさんの方だと思ったんだよ。』

⏰:06/06/13 02:28 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#70 [ザゼツポンジュ]
『それで、気分ウキウキでノート渡しに行ったらさ、かわいいえのもとさんに、ぁ、これ、えのしたさんのよ。あたしが渡しとくねぇなんて言われちゃてさ、発展なしだよ。親切したのに損したよ。しかもオレそのノートの最後のページに相合傘書いてオレ、オマエなんて書いちゃっててさぁ。』
きーさんは孫を二度見した。
『…お前気持ち悪がられているんじゃないのか…そんなこそくな手が現代的にはマルなのか!!?』
『まぁとりあえず、相合傘書いたくらいで話したことは一度もないよ。』

⏰:06/06/13 02:35 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#71 [ザゼツポンジュ]
トミオの話を聞き納得した。
(エノモトさんという奴はトミオがノートの忘れものを渡しに来てくれたとエノシタさんに伝えた。そうしてエノシタさんはだいぶたってノートを使い終わろうとした時、最後のページにトミオからの勘違いメッセージに気付いて恋をしてしまった…馬鹿な女だ。)

⏰:06/06/13 02:44 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#72 [ザゼツポンジュ]
きーさんはすーさんと糸電話をしようと思ったのだが、やめた。すーさんが伊勢崎ブルースを歌う声が聞こえて来る。長風呂中だろう。
『♪テレッテ、テレレレッテレンッッ、あっは〜ん…テレッテ、テレレレッテレン!!うふーん…あなたしぃってるぅ…てれって…』

やっっかましい!!

⏰:06/06/13 02:45 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#73 [ザゼツポンジュ]
━━朝6時15分。じーさんは早起きなのだ。
『実にいい朝だなきーさん。大雨だ。』
15歩程度しか歩かないにもかかわらず、嫌味にもすーさんはカッパを装着し、きーさん宅へ現われたのだ。一見準備のいいように見えるが雨に濡れたくないというすーさんのせいいっぱいの反抗である。

⏰:06/06/13 03:16 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#74 [ザゼツポンジュ]
『…すーさん、大雨だからと言ってやめにしようというのはワシはあまり好きではないのだよ。嫌な事があったらすぐ様諦めるようなのは好きじゃない。わかるか!!?すーさんは可愛いモロタイプの女が、たまたまおしっこを漏らしたからと言ってあきらめるのか!!?』
『…むしろ大歓迎だ。』

⏰:06/06/13 03:21 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#75 [ザゼツポンジュ]
『まぁすーさんの変な趣味はどうでもいいし朝からはキツイものがあるが、なぁ、考えてみろ。雨の方が身も隠れる。晴天の場合ワシらのシャツすら透けてしまうくらい丸見え、いや、まる見せになる可能性だってあるんだ。この雨に感謝しよう。望遠鏡を持って出掛けようじゃないか、すーさん』
すーさんは肩を落としため息をつき半分泣きかけた。

⏰:06/06/13 03:26 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#76 [ザゼツポンジュ]
雨がこの町一嫌いなのだ。理由はすーさんが若かった頃のある日ドシャブリで道すらわからなくなる始末だった。その日すーさんは大好きな鞠(まり)ちゃんと言う子に男女交際を申し込もうと、とある喫茶店で待ち合わせをしていた。
すーさんはずぶぬれになり、好きな女のために必死をこいて喫茶店へ行ったのだ。
が、鞠ちゃんはすーさんの姿にどん引きし、以来口も聞いてくれないようになったのだ。
という、理由があり雨の日がとにかく嫌いなのだ

大雨の日

⏰:06/06/13 03:33 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#77 [ザゼツポンジュ]
に、外へ出るなんて人権問題だと思っているすーさんだが、きーさんが言うのならいかしかたがない。

ジョウもトミーも眠っている。エノシタさんの登校ルートがわからない。
きーさんはエノシタさんにメールを送った。

─おっぱいよぉ(^O^)エノシタさんトミーには、それとなく昨日話してみたよ★エノシタさんの事はちゃんと女として見ているようだ。ところで今日は雨だねボクは雨に濡れるのが嫌いなんだ。学校から家が近くてラッキー!!エノシタさんちは遠いのかい!!?─

文章完成までに30分はついやした。
━送信。

⏰:06/06/13 03:42 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#78 [ザゼツポンジュ]
ピルピルピル

エノシタさんからは2分03秒で返信されてきた。

─ジョウくんおはよう
(o^o^o)あたしのおうちは、スーパーなんかいの近くだから、学校からはちょっとだけ遠いの★だからかならず濡れちゃう─

『濡れちゃう…へへへ…濡れちゃうんだってよエノシタさん。』
すーさんは、こんなささいな出来事で気分を良くする。
『馬鹿たれ!!そんなくだらん事で鼻の下をのばすんじゃないよ。まだ朝だぞ、日本は。スーパーなんかいと言うことは、#7791カフェを通る事になる。ななくいへ行こう』

⏰:06/06/13 03:51 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#79 [ザゼツポンジュ]
きーさんもかっぱを装着し、二人は外へ出た。
すーさんは一言
『付き合わんよ。小夜子とのデートには。』

⏰:06/06/13 03:54 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#80 [ザゼツポンジュ]
#7791カフェの朝のバイトの子で、とても可愛らしい女の子がいる。みーちゃん22歳。すーさんのここ1年の中での最強お気に入りランキング1位なのだ。
だが彼氏がいることも知っている。
『小夜子ストロベリーをふたつ。』
七夕の席へいつも通り座り、いつもと同じ決まり文句を言う。
『いや、今日はいい。みーちゃんワシには梅昆布茶を。』
みーちゃんはとても小さくまっしろで頬はほんのりピンク。いつもかわいい笑顔で、じーさん二人を迎えてくれる。

⏰:06/06/13 04:00 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#81 [ザゼツポンジュ]
『フフフ。朝ですもんね。じゃあ、小夜子ストロベリーと梅昆布茶を。了解なまこんっっ。』
きーさんの、はやってもいない流行語をみーちゃんはいつも付き合いで使ってくれている。
『すーさん、名札をよく見るんだよ。中3の子のバッチはオレンジ色だ。』
『了解なまこん

⏰:06/06/13 04:03 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#82 [ザゼツポンジュ]
中学生達が徐々に登校しはじめていた。
すーさんは窓にはりつき、くいいるように女子中学生を見ていた。
ただの変態だ。一歩間違えれば変質者として逮捕だ。もっとも今日が晴れならとっくに誰かが通報するか防犯ブザーの紐をひいているだろう。

⏰:06/06/13 04:09 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#83 [ザゼツポンジュ]
きーさんは、小夜子と対面し、一口パクっと食べた。
『甘い。ワシはこんなにも甘い恋心を一体何度抱いたことがあるのだろうか。』
『きーさん、やる気あるのかい!!?エノシタ、エノシタ…エノシタさーーん……と。ぅぉ!!!!きーさん、榎下さんを見つけたぞ。美女だ見てみろ。こんなかわいこちゃんをこらしめるこたぁできん、ワシには…すまんが今回ばかりは辞退させてもらう』

⏰:06/06/13 04:14 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#84 [ザゼツポンジュ]
すーさんは目をまんまるにし、小夜子タイムのきーさんに強く辞退を申し出たのだ。
『すーさん、その子はエノモトさんだ。』
『いや、馬鹿言え、漢字くらい読めるぞワシにだって。』
すーさんはぬるめの梅昆布茶をひとまず飲んだ。
『すーさん、音読みと訓読みがあることを知っているのかい?あまり馬鹿にはしたくないんだが…』
『おい、言ってる事がよく分からんぞ。』 
『まぁいい。もうひとりのエノシタさんが通ったら教えてくれ。』
『まだいるのか!!?双子か!!?べっぴん二人か!!?』

⏰:06/06/13 04:20 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#85 [ザゼツポンジュ]
すーさんはガラスに張りつき、きーさんはほおづえをついて、ミニ望遠鏡を持ちドシャブリの雨の中、傘をさして登校してゆく中学生の姿をカフェの中から目で追っていた。

⏰:06/06/13 04:22 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#86 [ザゼツポンジュ]
『お!!?……あ〜ぁ…』
すーさんは見つけてしまった。エノシタさんを…
きーさんは立ち上がった。
『あ〜ぁ。じゃないんだよ。今、完全にエノシタさんを見付けたんだろう。ブスだからと言って見なかったフリをするんじゃないよ。罪だぞ。』
きーさんは急いで#7791カフェのチラシを持って外へ飛び出しエノシタさんを追い掛けた。
すーさんは、肩を落とし梅昆布茶をすすった。

⏰:06/06/13 04:27 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#87 [ザゼツポンジュ]
『どーですかー。モーニングコーシーなんてどーですかー。ななくいのはおいしいっすよー。』
きーさんはエノシタさんの前に立ちはだかりチラシを差し出した。
『今から学校ですので。』『はぁーい、すんませーん』
傘から顔を出したエノシタさんを見た。きーさんはエノシタさんを見た。
メガネが少し邪魔をしていたがキレイな目をしたエノシタさんを、きーさんは、はっきりと見たのだ。

⏰:06/06/13 04:33 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#88 [ザゼツポンジュ]
『みーちゃん。みーちゃんはどうしてそんなにかわいいんだい!!?』
みーちゃんは困ったようにフフフと笑った。
そこがまたすーさんを刺激させてしまっているのだ。
『すーさん。口説いている場合か。エノシタさんを見たか!!?』
デレデレした表情を一変させ、男鈴木ヒトシは巣に戻った。
『ブスだ。』
そう言って梅昆布茶を口にふくんだ。
『トミオも同じことを言っていた。だがな、ワシはかわいいと思うんだがな。』すーさんは口にふくんだ梅昆布茶をそのまま垂れ流した。

⏰:06/06/13 04:38 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#89 [ザゼツポンジュ]
『おい!!大丈夫か!!?すーさんいきなりどうしたんだ?メンテナンス中か?しっかりしてくれ。』
みーちゃんはあわてておしぼりを持って来た。 
『ありがとう、みーちゃん。みーちゃんは優しい子だねぇ…きーさん!!!!老眼にもほどがあるぞ!!よく見えすぎだ!!』
すーさんは素早く口元をちょちょいとふいた。

⏰:06/06/13 04:42 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#90 [ザゼツポンジュ]
『すーさん、落ち着いてくれ。ワシが悪かったよ。あの子は元がいいと言いたいだけだ。メガネと髪型が邪魔をしているもったいない。』
サービスでみーちゃんが新しい梅昆布茶を持ってきてくれた。
『みーちゃん。みーちゃんありがとねー。きーさん。お前は好きだなぁそういうのが。どれだけべっぴんになるか好きなだけいじればいい。』
『それだよすーさん。』
すーさんはため息をついて入れたての梅昆布茶に口をつけた。
『ぅあっちちち。』
すーさんは猫舌なのだ。

⏰:06/06/13 04:47 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#91 [ザゼツポンジュ]
━エノシタさん改造計画 

その日の夕方、きーさんは家の電話から、トミーの携帯に電話をかけた。
トゥールルル、トゥールルル…
『なんだよ。』
『トミオ、部屋入ってもいいか!!?』        『いちいちわざわざドアの前で、かけてくんなよ!!』ガチャ。
『トミオ、コードレスとは便利だなぁ。』
糸でんわよりはもっぱら便利である。
『いいからもう切ろよ。なんだよ。』
トミーはベッドに寝そべって週刊誌を読んでいた。芸能情報もかかさずチェックだ。

⏰:06/06/13 04:54 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#92 [ザゼツポンジュ]
『お前かわいい女が好きなんだよな?具体的にどんなのが好きなんだ?』
『目がクリクリで髪の毛サラサラでいい匂いのするちょっとエッチで細い子。』きーさんは机の上に置いてある数学の問題集を手に取った。
『トミオ、センスないな、だめだ。』
きーさんはこんなにもおもしろくないパラパラ漫画を今だかつて見たことがない。

⏰:06/06/13 05:00 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#93 [ザゼツポンジュ]
初スキャンダルを起こした有名女優の記事を読みながらトミーはきーさんに問い掛けた。
『なんでだよ、じーちゃんはどんなのが好きなんだよ!!?』
『ワシはもっとユーモアのあるのが好きだ!!軟式テニスをしていると見せ掛けてズームアップしてみると目玉おやじをボールがわりにして遊んでいたというオチがあるやつとかな!!』
きーさんは、問題集を元の場所に置き、そそくさと階段を降りつっかけをはいた。
『どんな女だよ、気色わりぃよ。』

⏰:06/06/13 05:04 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#94 [ザゼツポンジュ]
━こちらは鈴木家。
『じーちゃん、そろそろまさこの散歩行ってきなよ。』
今日は、すーさんの当番だが雨なので外へは出たくない。
『ジョウジロウ。じーちゃん今日はお前に話がある。』
ジョウは分かっている。この話が長いということを。
『……うん。いや、じーちゃんまさこがね。』
さっきからずーっと吠えているのだ。
『ぅぁーーーわーわーわー。ちょっと今はじーちゃんの話を聞いてくれよぉ、頼むよぉー。』
すーさんは62歳になってもまだ聞き分けのないクソガキなのだ。
『わかった。わかったよ。』

⏰:06/06/13 05:12 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#95 [我輩は匿名である]
『よし、いい子だ。ちょっと待ってろ。』
すーさんは梅昆布茶と甘いカルピスを作りに下のリビングへと降りて行った。
すーさんちは新築だ。
階段なんて75度くらいの急な階段で、手すりはない。62歳にとっちゃ心臓やぶりの坂でしかない。
しかもコンクリートで固い。
完全に老人向きの家ではなく、近代的な、そしてデザイナーズ的なオシャレホームで暮らしているのだが、すーさんは肩身の狭い思いをしているのだ。

⏰:06/06/13 05:42 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#96 [ザゼツポンジュ]
この家の設計図を手がけたのは、建築士であるすーさんの娘。すなわちジョウの母親である。
62歳の同居人がいる事は、全面的に無視している。
殺意まで感じられるこの家は、きーさんさんの涙に飾られ2年前にそびえたったのだ。
命に支障のないように、なるべく階段を一段一段降りリビングに辿り着いた。カルピスの原液と梅昆布茶の粉を取り、ゆーっくり、ゆーっくりと時間をかけるすーさん。
まさこへの気遣いも忘れてはいない。

⏰:06/06/13 05:48 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#97 [ザゼツポンジュ]
『まさこよぉ。ごめんよぉ。ワシはなぁ、小さいときにバナナの皮で漫画のようにツルンとすべってなぁ、鎖骨を骨折したんじゃよ。それ以来雨の日はひびいてだめなんだよ。ごめんよぉ。雨に濡れて、まさこよ、実にセクシーだ』
……オスだがな。

⏰:06/06/13 05:52 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#98 [ザゼツポンジュ]
『じーちゃん、いつまで待たすんだよ。どうせコップふたつ持っては階段上がれないでしょう?』
キッと睨むすーさん。
『こんっのクソガキめが!!こんな階段目をつむってでも駈けのぼれるわ!!童貞め!!』
ハァっとため息をついて呆れるジョウ。

⏰:06/06/13 05:59 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#99 [ザゼツポンジュ]
『ピーンポーン。いやぁ、ずぶぬれだよ。ジョウジロウ、タオルをくれないか。』
10歩先に生息しているきーさんがすーさんちに遊びにきた。
『きーさん。口で効果音出さずにちゃんとインターホン押してくれない!!?』
ジョウは、そんなにぬれてもいないきーさんにタオルを渡した。
『おぉ!!?口がたつようになってきたな。関心、関心。お!!?ワシのカルピスか!!?勘がいいじゃないか、すーさん賢いぞ。』
きーさんはカルピスを一口ゴクリ。

⏰:06/06/13 11:21 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#100 [ザゼツポンジュ]
『甘い。まるで恋心のようだ。ジョウジロウ、これを一口飲んでみろ。ワシが口を付けたのはココだ。ココ以外で飲んでくれ。』
ジョウもわざわざ62歳の隣のじーさんと、間接キスをするなんざまっぴらごめんだろう。
『う甘い。濃いよ。』
すーさんはソファで横になら死んだフリをしている。まさこの散歩に行きたくないのだ。

⏰:06/06/13 11:27 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#101 [ザゼツポンジュ]
『甘いだろう。ジョウジロウちゃんが恋をした時、きっとこんな気持ちになるそ。最初はな。こんなにも甘い恋をお前はもうすぐ味わうのだ。わかるか!!?いいか!!?このカルピスの味を忘れるなよ。気持ちはこんなにも甘く、その結果、出てきてしまうのも、カルピスだ!!』

きーさんの言葉がなぜか、ジョウの心に響いた。
『…まだよくわかんないや。でも、きーさん、今の言葉覚えておくよ。じーちゃん。もういいよ…ボクがまさこを散歩へ連れていくよ。それと…もうちょっと薄くつくってよ、カルピス』

⏰:06/06/13 11:33 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#102 [ザゼツポンジュ]
ジョウは外へ飛び出した。甘い甘いカルピスがのどにからむ。
ジョウの頭の中はきーさんの言葉がぐるぐるまわり、変な気分だった。
雨のせいだろうか。
甘い粘着がしばらく離れなかった。

⏰:06/06/13 11:37 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#103 [ザゼツポンジュ]
『すーさん。ワシは葬儀屋に電話した方がいいのか?そろそろ息をしてくれないか?』
むくっと起き上がった。すーさんはニッコリ笑った。外へ出なくてすんだのだ。
『やぁやぁ。どうしたんだ。きーさん相談でも!!?』
きーさん甘すぎるカルピスを平気でごくりと飲んだ。
『あのなすーさん。トミオは目がくりくりで髪の毛がサラサラでさせ子がタイプらしいんだが、今旬なかわいい女はどんな具合だ!!?』
すーさんは女の話になると生き生きする。

⏰:06/06/13 11:43 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#104 [ザゼツポンジュ]
『お宅のトミオちゃんの意見は、まさに模範解答だ。大正解だ。そんな女が常に旬でいてほしい。』
『じゃあ、コンタクトにさせた方がいいんだな。』
すーさんはぬるい梅昆布茶に口をつける。
『なあんだでは、ダメだ。すーさん、エノシタさんをお前好みの女に仕上げようじゃないか。お前好みという事は、トミオ好みという事になる。エノシタさんは好きな男のために変わっていくんだ。』
少しずつではあるがやる気になってきたすーさん。
62歳、老人。

⏰:06/06/13 11:49 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#105 [ザゼツポンジュ]
『しかしワシの孫のはずなんだが、女好きはすーさんに似ている…おかしな話だ。』
『……高い高いしすぎて入れ替わったんじゃないのか!!?』
『馬鹿たれ早く考えろ』

⏰:06/06/13 11:51 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#106 [ザゼツポンジュ]
『なぁんだエノシタさんの話か。…ぁ、間違った』
すーさんさんは心の叫びが口からもらしてしまった。
『すーさん、言いたい事は溜めずに出しておいた方がいい。ただな、梅昆布茶をすすったあたりからすーさんの心の声は十分伝わっていたよ。』

⏰:06/06/13 11:56 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#107 [我輩は匿名である]
書かないの待ってるよ

⏰:06/06/15 01:49 📱:D702i 🆔:c2Fb1lvg


#108 [ザゼツポンジュ]
すーさんは、ひとたび没頭すると、まなざしは真剣になり瞳はキラキラと輝く。
まばたきもしなくなり、呼吸の数も少なくなる。
一般人から見ると、この光景は実に気持ちが悪い。
剥製のようだ。
だがきーさんは、このすーさんが好きだ。
弱点は、その3までしか出てこないことであるが、きーさんは決して文句を言うことはなかった。

その1、メガネをとり、コンタクトをはめさせる。
その2、髪の毛をサラサラにさせる。題してキューティクルビューティー大作戦。
その3、自信をつけさせる

⏰:06/06/15 11:36 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#109 [ザゼツポンジュ]
さっそくきーさんはエノシタさんにメールを送った。

エノシタさん、アドバイスがあります!!トミーは、目がクリクリして髪の毛がサラサラの女の子が好きみたいなんだよ。エノシタさんがコンタクトにしたらかわいいと思う★どうだい!!?やってみないか!!?

送信

⏰:06/06/15 11:40 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#110 [ザゼツポンジュ]
エノシタさんからはいつも素早く返信される。

─そうかな!!?今更メガネ外すなんて恥ずかしいよ…

『この女はホントにいくじなしだな、けしからん』
と、きーさん。

─トミーは、段々変わっていくエノシタさんを見たいんだよ!!頑張れエノシタさん!!今からママンに相談だ。

⏰:06/06/15 11:46 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#111 [ザゼツポンジュ]
きーさんは徐々にメールの達人になっていく。
日本中の老人の中でこんなにも飲み込みが早く若々しいジジイは自分しかいないと思っている、木田シゲル。
メールのセリフを考えているすーさんは、こんなに言葉巧みに日本語を使いこなせるのは自分しかいないと思っている。
運がよければ脚本家と言う道でも開けたのではないかと自惚れる、鈴木ひとし。
共に62歳、老人

⏰:06/06/15 11:52 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#112 [ザゼツポンジュ]
一方、隣の木田家では14歳の少年二人が恋について語りあっていた。
『なぁトミー、人を好きになるとはどんな気持ちなんだい!!?』 
まさこの散歩を終えたジョウはまた自販機で購入したカルピスを飲んでいた。
『どうしたんだ、恋でもしたのか!!?おめでとう、ついに君も童貞卒業と言う事になるな。』
『…展開はやいよ。ボクはトミーに質問しているんだよ。』
今度は国語の教科書にパラパラまんがを制作していた。なんだかんだこの男、きーさんに影響されているのである。

⏰:06/06/15 12:06 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#113 [ザゼツポンジュ]
『うーん…今狙っているのはエノモトさんだな』
『トミー…ボクは、何を狙っているかは今聞いてなかったんだが。』
トミーは、自分が童貞を卒業したことに優越感を抱いている。
そして、隣に住んでいるこの同級生よりも、素晴らしい人材だと自分で思っている、木田トミオ。
しかしジョウはその部分に対しては、とても消極的であり、とくに羨ましいと感じてはいない。
今日というこの日、隣に住むじぃさんの訪問のせいで、まだ抱いたこともない恋心について少し気になっただけの、鈴木ジョウジロウ。   共に14歳・

⏰:06/06/15 12:07 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#114 [ザゼツポンジュ]
『好きじゃなきゃ、触れないよ。かわいくなきゃ目が向かないよ。だからオレは見た目のいいものが欲しいんだ』
『…トミー。それは人を好きと言えるものなのかい!!?フラれたことはあるの!!?』
『あるさ!!そんな女は、っっどーでもいい。一応ショックは受けるが、寝て覚めればもう次の女の事でいっぱいおっぱいだ。』

⏰:06/06/15 12:11 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#115 [ザゼツポンジュ]
ジョウは隣の住人であり同級生に少し呆れた。
『いい性格をしているね。』
『ジョウも、顔は以外にも男前だぞ!!?がんがんいけよ。ただ韓国ドラマのような純愛なんてチャンチャラおかしい。あんなのに憧れるのだけはやめておけよ。バカバカしい。』
パラパラまんがを一生懸命制作しているように見えるトミーだが、少し悲しそうな背中をしていた。

⏰:06/06/15 12:18 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#116 [ザゼツポンジュ]
シャーペンを起き、こんな雨の日に何を思い立ったのか。トミーはお気に入りの古着をチョイスし、ランキング1位の香水をふりまき、出掛ける準備をする。
『ちーちゃんに会いたいな。ギャルも見たいしな。うん、ジョウジロウちゃん。何がしたいかわかるか!!?』
『エリアカフェに行きたいんだろ!!?お前、正気か?雨だぞ。しかも今エノモトさんがいいって言ったじゃねぇかよ。』
『ジョウジロウちゃん!!オレは男だぞ!!雨だろうと雷だろうと女がいればそれでいいのだ!!』
トミーの後ろを必然的についていかなければならないのであった。

⏰:06/06/15 12:28 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#117 [ザゼツポンジュ]
トミーんちのママは、トミーが小学4年生の時に出ていった。男ができたのだとトミーは言う。
トミーのパパは、ママを愛していたし優しかった。
だのに、なぜ、荷物をまとめ、家を出たのか、そんなにしてまで。
昔トミーは言った。
『女がなんだ!!ただの弱虫じゃないか!!ワガママじゃないか!!どんなに優しくされても都合のいいところに逃げていく最低な生きものだ!!』

⏰:06/06/15 12:34 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#118 [ザゼツポンジュ]
トミーは泣いていた。
でも男の子は泣かないのよと、ママがよく言っていたのをちゃんと、ちゃんと忘れてはいなかった。
後ろを向き、息を殺し、一生懸命涙が出るのをこらえていたが、逆にその姿が悲しくてたまらなかった。

⏰:06/06/15 12:39 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#119 [ザゼツポンジュ]
『おぃ、シンイチロウ!!新しいソフト買ったんだろ〜!!?かせよ!!さもなくば、お前の秘密を町内放送でながしてやるぞ!!』
5つも下のクソガキに窓の向かい側から大声をはられ、ひとりの時間を邪魔をされていた。
『わかったから静かにしてくれ。トミーお前今日、帰ってくんの早いのな。ジョウジロウはまだだぞ。早びけか!!?』
『オレ様だけは今日休みなのだ!!』
やけに、ニコニコしていたのをよく覚えている。
『トミオ、ちょっとおいでー!!』
案の定、ママ声が聞こえてきた。トミーは急いで走って行った。

⏰:06/06/15 12:50 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#120 [ザゼツポンジュ]
トミーのママは、クラブのママをしていてとてもキレイだった。

『オレんちのママかわいいし、いい匂いするんだぜ!!』
トミーは嬉しそうにママの事をよく自慢していた。
お酒を飲むママの体調が悪いとトミーは絶対学校へは行かなかった。
一日中ママといた。
ママが大好きだった。
いつもママのいない夜。
パパもお仕事でいない夜。トミーはきーさんとよく遊んでいた。

⏰:06/06/15 12:59 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#121 [ザゼツポンジュ]
二階には、トミーの部屋ときーさんの部屋が並んでいる。
改築する前の俺の部屋は、トミーの部屋のちょうど向かい側だった。
嫌でも隣の声は聞こえてくるものだ。

⏰:06/06/15 13:03 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#122 [ザゼツポンジュ]
きーさんは、トミーが小さい頃から無理難題をトミーに教えていた。
『トミオ、よく聞け。バスケを習っていてシュートが入るのは当たり前だ。わかるか!!?習字を習っていて字がキレイなのも当たり前だ。じーちゃんは何が言いたいかと言うとな。自分のチカラで何でもできるようになれと言いたいのだ。バスケ習ってもないのにできた方がかっこいいだろ。ただ字がきれいだったら、こんな美しいことはないだろ。家族が大変でもないのに、お前が家事ができていたらすごいだろ?』

⏰:06/06/15 13:11 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#123 [ザゼツポンジュ]
普通の話をしているのに、最後は家事の話になり、
『洗濯物を服屋の店員のようにたためる男は、モテるぞ。校内ランキング一位だ』
『食器を洗えば好きな子がお前にゾッコンラブになるという昔がの言い伝えがある。』
『大金持ちの男はみんな料理が得意だ。』

⏰:06/06/15 13:16 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#124 [ザゼツポンジュ]
今思うと、トミーのママがいなくなることをきーさんは予感していたのかもしれない。
こうしてトミーによい子シールを貼らして、毎日毎日レベルを上げ、自信をつけさせると言う、きーさんの作戦だったのだろう。
ママが出て行った時には、よい子シールは、もうたくさんと言うばかりに、たまりまくっていたのだ。
『ママは、急用でフランスのホテルのベッドメイキングの仕事をするようになっただけで、あと何年かしたら…。』
トミーの肩を抱き、きーさんは頭を優しくなでた。

⏰:06/06/15 13:24 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#125 [ザゼツポンジュ]
『男が泣いたらいけないなんて、誰が言いだしたんだろうなぁ。トミオ、お前見てみろ。こんなにもシールがたまっている。これが何の数かわかるか?先取り涙の数だ。お前は涙と引き替えに、いろんなものを手に入れる事ができたのだよ。自信を持ちなさい。』

⏰:06/06/15 13:29 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#126 [ザゼツポンジュ]
『こんなにキレイに服をたためる奴が他にいるか?習ってもいないのに、学校の習字のコンクールで、銅賞を取れる奴が他にいるか?こんなにうまい目玉焼きを作れる友達、見たことあるか!!?…確かにママはいなくなったが、トミオはそこいらじゃ一番かっこいい小学四年生だぞ。な。』

⏰:06/06/15 13:35 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#127 [ザゼツポンジュ]
ママがいなくて淋しい時の、我慢した涙の分。
冷凍食品が多くて、ママの作ったご飯が食べたいなーと、泣きたくなった時の分。
みんながママとの出来事を楽しそうに話している時の、悲しい気持ちの分。              泣きたい時がたくさんあっただろう。
シールの数がそれを表していたのだった。

⏰:06/06/15 13:47 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#128 [ザゼツポンジュ]
トミーは、次の日平然と、ジョウを迎えに来た。
いつもはジョウがトミーのうちに迎えに行くのだが、ママがいなくなった時から逆転した。
『ママがいなくなったらしいけど、お前はトミーにいつもどうりに接するのだよ。いいね!!?トミーがお前に頼った時は、せいいっぱいチカラになってやるんだ。』
『にぃちゃん、わかってるよ。そんなことくらい』
俺は、念を押してジョウに言ったのにジョウは平然としていて、熱くなった俺が少し恥ずかしかった。

⏰:06/06/15 13:55 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#129 [ザゼツポンジュ]
トミーは平気な顔で明るく振る舞っていた。
よくモテた。
昔からチョコをトミーんちにわざわざ持ってくる子もいた。
トミーと仲良しになりたいがためにジョウに近づく子もいた。
人気者は今だ健在だが、保っていられるのは、悲しみに耐えるチカラをきーさんにもらったからだと思う。

⏰:06/06/15 16:31 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#130 [ザゼツポンジュ]
                                    ━『ボク小夜子ストロベリー』
ジョウは単純に甘いものが好きだ。
『ちーちゃん、今日もかわいいねぇ。いつから付き合ってもらおうか。』
『フフフ。やーよ、トミーモテるから。』
ちーちゃんは完全にトミーをクソガキとして見ているナイスおねぇさんだ。

⏰:06/06/15 17:10 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#131 [ザゼツポンジュ]
『ふん、オレ梅昆布茶。』ちーちゃんは19歳。実はみーちゃんの妹なのだ。
昼の二時でちーちゃんと交代してしまうため、トミー達はみーちゃんの存在は、まだ知らない。
『ってゆうか、誰もいねーじゃんかよ!!痛恨のミスだぜ、オシャレ損だぜ!!……香水ふり損だぜ!!』
『トミー…たまには甘い物食べた方がいいよ。今のお前は生理前の女のようだ。』

⏰:06/06/15 17:16 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#132 [ザゼツポンジュ]
毎回、黄色いノートを死に物狂いチェックするトミー。
たまに電話番号が載っているがブスが多い。
『お前さ、女に触った事もないのにいつ機嫌が悪くなるとかよく分かるよな。変態だ、ジョウ。お前は変態だ。』
トミーは、1ページ1ページ真剣にくまなく読み、…しかも毎回だ。プリクラに関してはライト加減でかわいく映っているだけの女ではないかとか、その他もろもろ要チェックしている。

⏰:06/06/15 17:24 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#133 [ザゼツポンジュ]
『あぁ、すーさん変態だもんな。』
『トミーが言ってることとあまり変わらないけどな』ジョウも、ノートを覗き込んだ。
『おまたせしました。小夜子ストロベリーです。』
トミーは女の品定めに夢中だったが、ちーちゃんを二度見した。
『ちーちゃんなぜだ。オレの梅昆布茶はなぜこない。』 
ちーちゃんは申し訳なさそうに
『あぁ、ごめんねトミー。きれてたみたいで、今買いに行ってるからもぉちょっと待って。』
『ぅぁーいーょ、いーょ。ちーちゃんかわいいしな。』

⏰:06/06/15 17:32 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#134 [ザゼツポンジュ]
トミーはノートに目が行ったまんま離れなくなった。
『あ、ちーちゃん。ところで、どうして小夜子ストロベリーなんだい!!?誰がネーミングしたの!!?』
アメリカンなこのカフェにいかにもニッポンな、小夜子というネーミングに、ジョウは以前から疑問を抱いていた。
『お前、気やすくちーちゃんに話しかけんなよ。オレのだぞ、ちーちゃんは。』『ここのオーナーさんのおばぁちゃんの名前らしいよ。』
ちーちゃんはクソガキの甘い言葉には、フルスルーである。

⏰:06/06/15 17:39 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#135 [ザゼツポンジュ]
『あ、そうなの。オーナーさんのが決めてるのか。へぇ。ちーちゃんはオーナーさんに会ったことあるの?』
『たまにここに来るから。イラストを張り替えたりしにくるの。ここのイラストはみんなオーナーが描いてるのよ。』
#7791カフェの中に、ポツポツとだが、存在感のあるイラストが壁に飾られていた。
60年代くらいのアメリカンチックでポップな絵が主にだった。
『イラストもオーナーさんが描いてんのかぁ。』

⏰:06/06/15 17:46 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#136 [ザゼツポンジュ]
納得したジョウは甘い甘い小夜子をパクっと一口食べた。
やっとトミーの梅昆布茶がテーブルへやってきた。
フーフーと冷ます時でも、横目でノートを見ていた。そうすると、ハッと何かに気付き二度見した。
『あ!!エノモトさんだ!!!!』
トミーは飛び上がった。
『ちーちゃん!!ちょっと来てよ!!ぃや!!それは横着だ、迎えに行くよ』
トミーはチャラチャラしているようだが、かわいい女には優しい。

⏰:06/06/15 17:54 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#137 [ザゼツポンジュ]
どんなに近くてもレディーを迎えに行き、手を引くのだ。
『トミー、あたしおばぁちゃんじゃないんだから大丈夫よなぁに!!?』
『このプリクラ見てくれよ。この子よく来るのか!!?この席に座ってしまっているのか!!?』
『エノシタさんも映ってるね。』
エノシタさんとエノモトさんは“榎下コンビ”と書いて二人でプリクラを撮っていた。
明らかにエノモトさんのかわいさが目立つ一枚のプリクラだった。

⏰:06/06/15 18:00 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#138 [ザゼツポンジュ]
『そのブスの話は、っどーでもいいんだよ。漢字は一緒なのにこうも違う。世界とは不公平にできているものだ。…で、ちーちゃん、こっちだぞ、こっちの子よく来るのか!!?』
ちーちゃんはノートを近付けてプリクラをよく見た。
『うーんよくはこないけど、日曜日に来たのは覚えてる。』
『そーか、ちーちゃん。この子が来たらオレに連絡してくれ。学校の用事だが、学校では口にできない重要な話があるんだよ。偶然を装って、ぜひとも登場しようと思う。悪いが、この七夕の席を使わせてもらうよ。』

⏰:06/06/15 18:07 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#139 [ザゼツポンジュ]
『メモっといてよオレの番号、はぃゼロキューゼロのぉ…』
 バイト中のちーちゃんが怒られると思い、小声で言うところがこの男のおちゃめなところだ。
 大本命のエノモトさんをダシに、自分の番号を押し売りするのだ。
そうすると、ちーちゃんと、電波コミュニケーションもとれ、あわよくばエノモトさんともお茶が飲めるという、よく言えば一石二鳥だが……

⏰:06/06/15 22:32 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#140 [ザゼツポンジュ]
最悪の場合、にとうえるものいっとうを得ず…という事もある。
だが、出席番号3番木田トミオというこの男。
そくざにこの状況を把握し、頭を回すプレイボーイであり、根拠のない自信をいつも胸に抱き、女子を常に観察しているスーパー14歳なのだ。最悪のになる場合までは予想できないというのがたまに傷だが、彼には根拠のない自信がつきまとっているためいたしかたのないことだ。

⏰:06/06/15 22:40 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#141 [ザゼツポンジュ]
一応ちーちゃんは伝票にトミーの番号をメモった。
『ところでちーちゃん。この七夕テーブルにも何か意味はあるのかい!!?』
ジョウは、窓際のこのテーブルにだけ、七夕と刻まれていることも気になっていた。
『あのね、オーナーの七つ離れた妹さんの誕生日なんだって。』
『妹さんは7月7日生まれなのか…ん!!?#7791ってのは!!?』
『オーナーの誕生日が9月1日なの。』
『なるほど、誕生日を合わせて#7791と言うんだね。』

⏰:06/06/15 22:45 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#142 [ザゼツポンジュ]
トミーは、しつこくエノモトさんのプリクラを眺めていた。
『なぁ、ジョウ。エノモトさんやっぱかわいいよな!!?な!!?』
ちーちゃんがカウンターに戻った事を確認してから、エノモトさんへの興奮をジョウに伝えた。
ジョウは、じっくりと
“榎下コンビ”のプリクラを見つめた。

⏰:06/06/15 22:48 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#143 [ザゼツポンジュ]
『……この二人別に仲良くないんじゃないの?だってさ、かたやイケイケで、かたや生徒副会長だよ?一緒にいるとこなんか見た時ないし。このプリクラ、完全にエノシタさんをお引き立て役にしている。仲良くない人を利用してまで自分をかわいいように映しているとしか考えられないよ。エノシタさん明らかに楽しそうじゃないじゃん。……ぅーん。エノシタさんもかわいいと思うけどねぇ』

⏰:06/06/15 22:53 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#144 [ザゼツポンジュ]
トミーが集中して見すぎたためかエノモトさんの部分だけが、妙に色褪せて見えるような気がした。
ジョウは一枚のプリクラからいろんなことを分析した。
私の方がブサイクだと、誰もが思っているんだろうなと言わんばかりに申し訳なさそうにピースしているエノシタさんに目が行ったのだ。きっとエノシタさんは榎下コンビと書かれるのも嫌だったのではないだろうか!!?と…

⏰:06/06/15 23:05 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#145 [ザゼツポンジュ]
『はぁ!!?お前ホントに男か!!?しかもイケイケとかもはや死語だぞ!!?どれどれよく見せてみろ、ぅーん、ダメだ無理だ絶望的だの三拍子セットだ』
トミーは一瞬見てそう判断した。
『メガネとか外せば、かわいいと思わない!!?』
『ダメだ無理だ絶望的だの三拍子セットだ』
ジョウはもう何も言わず、小夜子を食べた。
自分とトミーが全く正反対の星にいるんだと改めて実感した。

⏰:06/06/15 23:10 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#146 [ザゼツポンジュ]
翌朝、いつのまにか雨は上がり、カラっと空は晴れていた。
ジョウはいつもより早くに目が覚めた。
窓を開けて大きく息を吸い込んだ。
ふと、木田家の方を見ると、きーさんが自分ちの前のはき掃除をしていた。
……全て鈴木家の方向へ葉っぱやゴミをよせているだけのように見えるのは気のせいだろうか。
ジョウはきーさんにオハヨウを言いに外へ出た。

⏰:06/06/15 23:18 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#147 [ザゼツポンジュ]
『やぁ、きーさんオハヨウ』
きーさんはいったん手を止めた。ただ鈴木家へまき散らしているゴミに関しては全く悪いとは思ってない様子だ。
『おはよう、ジョウジロウちゃん。いや、実にいい朝だ。この空気を吸ってごらん。』
『ボクね、雨が降った次の日のコンクリートの匂い好きなんだ。』
うーんとけのびをして息を吸い込むジョウジロウちゃん。
『おぉ。奇遇じゃな。ワシも大好きだ。とくに秋なんてなおさら最高だ。』

⏰:06/06/15 23:25 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#148 [ザゼツポンジュ]
『気が合うねえ、きーさん。ボクもそう思うよ。』
『フォッフォッフォッ。おかしな話じゃのう。すーさんのお孫さんがワシに似てしまうなんて』
『トミーもボクも自分ちのじいちゃん達を見て反面教師になっただけさ。そんであべこべになっちゃったんだよ、きっと』

⏰:06/06/15 23:28 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#149 [ザゼツポンジュ]
『朝からかしこいな。お前はすーさんの口うるさい女の話が嫌で隣のじーちゃんの話に耳を傾けてしまう。一方トミオは、ワシの口うるさい説教が嫌ですーさんのちゃらんぽらんさを吸収してしまった。そういうことだな。』
『そうさ。』 
そしてジョウは、学校へ行く支度をして、トミーの迎えを待った。

⏰:06/06/15 23:32 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#150 [ザゼツポンジュ]
>>1ー50
>>50ー100

⏰:06/06/15 23:38 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#151 [ザゼツポンジュ]
ミスった
>>1-50
>>50-100

⏰:06/06/15 23:42 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#152 [ザゼツポンジュ]
    ***
数日後えのしたさんがコンタクトを付着させる日がやってきた。

ピルピルピル
朝6時25分
エノシタさん
─昨日、お母さんとコンタクトを買いに行ってきた★今日からメガネを外そうと思う…(*_*)

きーさんは窓を開けすーさんを呼んだ。
『すーさん、おーい、すーさん!!!!』
カーテンを開け、すーさんが顔を出した
……ステテコ姿、ただのジジイの何者でもない。

⏰:06/06/16 00:24 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#153 [ザゼツポンジュ]
きーさんは窓を開けたすーさんに、耳の横できつねマークをした。
すーさんはウインクができないため、両目をつぶり、OKサインを出した。
これが糸電話のハンドサインだと分かるのが、このジジイ達の素晴らしいところだ。

⏰:06/06/16 00:28 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#154 [ザゼツポンジュ]
『すーさん、エノシタさんが本日、メガネを外して戦場へ向かう模様。早急に支度をして、7時ぴったりには#7791へ到着できるように!!いいか!!?』
『ふわ〜…了解なまこん』
またもや紙コップをつけたままなのが痛恨のミスだが、きーさんの一方的な命令を受けただけてらあるため、差し支えはたかった。

⏰:06/06/16 00:32 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#155 [ザゼツポンジュ]
きーさんもすーさんも、実はオシャレなのだ。
トミーが通う古着屋“ミッシェル”で最高の味方をつけたのだ。
それはピーマンと言う店員である。
絶妙な組み合わせ、バランスを一瞬で頭に浮かべられ、例え老人であろうとも、オシャレな生活を提供できるハンサムな男だ。
ただ、それ以外はトント優れないため、頭が空っぽのピーマンと言うニックネームがついたのだ。

⏰:06/06/16 00:41 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#156 [ザゼツポンジュ]
そんなジジイら二人は62歳のわりにはうんとオシャレな格好で#7791カフェへ出掛けたのである。
『小夜子ストロベリーをふたつ』
『……うーん、まぁいい。今日は晴舞台だ。いたしかたがない。みーちゃん。朝からごめんよ。』
みーちゃんは今日も小さかった。
そして白くてとってもかわいかった。
『いいえ、了解なまこんっっ。』
『かーゎぃッッ、ヒュッッ』
すーさんは両目をつぶった。ウインクのつもりなのだ。

⏰:06/06/16 00:45 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#157 [ザゼツポンジュ]
62歳のジジイらは老人にもかかわらず緊張した。
きーさんなんて
『甘い』
としか口にしていない。いつもの決めゼリフさえもままならない始末だ。               『ままままま、ま、まだか!!?すーさん』
『言語障害か、きーさん!!?がらにもないことは、やめてくれないか』
 5分10分と時が過ぎる。今日は晴天だ。

⏰:06/06/16 00:49 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#158 [ザゼツポンジュ]
エノシタさんをまぢまぢと見れるチャンスだ。
『お、えのしたさんじゃ。今日もやっぱりかわいいのう。』
『……すーさん、その子はエノモトさんだよ。この間も言っただろう?』  
次々と、中学生が通り過ぎる中、先にエノシタさんを見つけたのはきーさんだった。
遠慮もなく変質者並みに窓に張りついているすーさんは、ただの役立たずでしかない。

⏰:06/06/16 00:54 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#159 [ザゼツポンジュ]
エノシタさんはキョロキョロと落ち着きなく、一人で登校していた。
『…すーさん。えのしたさんじゃ。やっぱりメガネを外して正解だったようだな。』
しかし、すーさんはまゆをしかめた。
『あれじゃまだまだだよ、きーさん。髪型がダメだ。自信ねなさそうな顔もダメだ。…悪いが、メガネを洗面所に忘れて来たとしか思われないに決まっている。700%勇気が無駄だあれじゃあ。』

⏰:06/06/16 00:58 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#160 [ザゼツポンジュ]
きーさんは、ホッとした。すーさんの真剣なまなざしがキラキラと輝いている。
『そうだな、すーさん。いったん家へ帰ろう。そして11時になったら、ピーマンに会いに行こう。』
『…あぁ。…ん!!?なぜピーマンに会うんだ!!?』
『なぜって、ピーマンに聞くのが一番早いだろう、どこの床屋がいいだとか。』
『きーさんやめてくれないか。床屋だなんて。美容室と言うんだよ。』

⏰:06/06/16 01:03 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#161 [ザゼツポンジュ]
『おぉ、そうかそうか了解なまこん。』
そして、食べかけの小夜子を口にした。
きーさんはホッとした表情で
『甘いなあ、ワシはこんなにも甘い恋心を抱いた事が、一体何度あっただろうか。』
お見事です。きーさんは忘れてはいませんでした。

⏰:06/06/16 01:06 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#162 [ザゼツポンジュ]
    ***
トミーは学校が大好きだ。
決して大きいとは言えないこの町の、決して多いとは言えない人数の学校で、目立てるという快感が、彼を刺激しているのである。
中学2年生であるが、認知度、人気者度でいくと軍を抜いてナンバーワンだろう。
ただ、他に目立ちたいという奴がいないと言う事実も、見逃せない。

⏰:06/06/16 01:14 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#163 [ザゼツポンジュ]
トミーは器用だった。
どれもこれも極めれてはいないし、ホントは中途半端ではあるのだが、14歳のクソガキどもからすれば、器用にこなしているように見えるのだろう。
サッカーもバスケも野球も、人気者という名の錯覚作用で、全てうまくこなしているように見せる魔法を味方につけていた。

⏰:06/06/16 01:18 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#164 [ザゼツポンジュ]
ランキングにこだわり、はやりの物を身の回りに置き、金のなさをカバーできるように安くても、最強のオシャレでいられるようピーマンにおまかせだ。
ミッシェルに友達を連れて行くと、みんなオシャレになってしまうんじゃないかと言う恐怖から、内緒にしていた。
通っているのは、クソガキジジイ二人と、トミーとジョウだ。ジョウに関しては付いてくるだけの事が多かった。

⏰:06/06/16 01:23 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#165 [ザゼツポンジュ]
『あ、トミーおはよう!!』女子達は、トミーを見つけるなりフル笑顔で手を振っていた。毎日の事だ。
『やぁやぁ、おはよう。』と、手を上げたトミーから、ランキング1位の香水の香りがあたりに漂う。

トミーは誰かを従えて自分が一番でいるのがむしろ好きだ。むしろ、そうしないと気がすまない。
トミーの周りにはいつも人が集まった。

⏰:06/06/16 01:28 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#166 [ザゼツポンジュ]
家では、卑劣なことを言うが、実際学校ではブスとも話していた。
いかにも暗く、いつも一人でマンガばかり描いている、ゆみちゃんには
『ゆみちゃん、この子なんて言う名前つけたの?』
『…え、ミユキ…』
『ハハっ!!どうしてミユキなの!!?』
と、必要以上に近づいてしゃべったりもしていた。
ゆみちゃんには、誰も近づかなかった。いつも一人でいた。

⏰:06/06/16 01:34 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#167 [ザゼツポンジュ]
一方ジョウは、歴史だけが大好きだった。
トミーとは、正反対の性格なのだが、別に頭がいいわけではない。
世界史の時間だけは、誰にも邪魔はされたくない時間なのだ。
だが、この貴重な時間を邪魔される事があった。
ランキング一位の香水の香りを振りまく木田トミオのせいだ。

⏰:06/06/16 01:39 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#168 [ザゼツポンジュ]
何の授業にも、特に興味はなく、馬鹿をやって目立ちたいだけのトミーは、いつもいつもうるさかった。
『静かにしてください。』以外にも注意するのは、学級委員を努めるジョウからだった。
一瞬シーンとするのだが、、トミーはくじけない。

⏰:06/06/16 01:42 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#169 [ザゼツポンジュ]
スプレーを出す音を演出するのだ。
『プス───────。プス、プス───。』
『……効果音もやめてください』
ジョウはみんなから押しつけられてしまうタイプであり、しかたなく学級委員を努めている。
別にいじめられているわけではない。

⏰:06/06/16 01:45 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#170 [ザゼツポンジュ]
歴史以外の時はもっぱら窓の外を見ていた。
そして、周りの人間の事を考え、その中で自分をどう確立させていくかをよく考えていた。
自分と言うものついていろいろと模索している最中なのだ。
自分の意見をはっきりと言え、こだわりを持って生きていきたい、ジョウジロウ。出席番号9番。

⏰:06/06/16 01:50 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#171 [ザゼツポンジュ]
『憧れる人はたくさんいるし、羨ましい人もたくさんいる。だけど、尊敬できる人って言うのは、みんな死んでしまった人なんだ。ボクもきっと死んでしまった時に価値が決まる。人間、いくらいい人に見えたっていつどうなってしまうか分からない。ひょんなことでシャブ中になってしまうかもしれない。』

⏰:06/06/16 01:54 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#172 [ザゼツポンジュ]
歴史が好きなのも理由はその辺にある。
愛読している本は、隣に住むきーさんからもらった、太宰治の─人間失格─だ。
ジョウジロウは着る物も、置く物もこだわっていた。古着をバカみたいに買う事はなかった。
好きなところの服を高くても気に入れば購入した。

⏰:06/06/16 01:57 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#173 [ザゼツポンジュ]
トミーのように、ランキングには流されたくなかった。
来年になっても、絶対着るだろうと言う本気で気に入った服しかなるべく買わないようにしていた。
多種多様の物や、偽物、来年になれば興味がなくなってしまう物、すぐ飽きて捨ててしまうような物…
これら全てをジョウは嫌った。
古くてもみんなは気に入らなくても、自分にとっては、ひどく大切なんだと言う物をできるだけ長く傍に置いておきたいと、そう考えている。

⏰:06/06/16 02:02 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#174 [ザゼツポンジュ]
>>100-150

⏰:06/06/16 02:04 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#175 [ザゼツポンジュ]
『それでは、生徒副会長エノシタさんからみなさんにお知らせがあります。』
みんなダルそうな雰囲気は見せず、テキパキと体育館入りをする。
トミーは、全校生徒が一列に並ぶと言うのが苦痛でたまらなくなり、前の子をカンチョーしたくなる衝動にかられてしまうため、こういう無駄な朝会が大嫌いだった。
一年生の誰かの靴の中に画ビョウが入っていたとかで、急遽、体育館に全校生徒は集められてしまったのである。

⏰:06/06/16 02:27 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#176 [ザゼツポンジュ]
『みなさんおはようございます……えー、今日、画ビョウ入りの靴を発見したと…』
ジョウは気付いた。エノシタさんが、メガネを外したという事に。
背が高くもないのに、後ろの方で、みんなよりはるかに間を取ってあぐらをかいているトミーを見つけた。
ジョウは地味に地道にお尻をすべらしながら、後ろまでスルスルと下がって行き、トミーに近づいていく。

⏰:06/06/16 02:31 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#177 [ザゼツポンジュ]
『なんだ、ジョウ。小便か、立て』
トミーは近づいて来たジョウのえりを後ろからつかみ、立ち上がり、腰を曲げさせた。
そしてトミーに抱えられ、クルっと後ろを向き、トイレの方向へと連行させられた。
『この子具合悪いみたいっす、オレがトイレ連れて行くっす』
小声でペコペコとおじぎしながら、トイレへの移動を成功させた。

⏰:06/06/16 02:36 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#178 [ザゼツポンジュ]
『トミー、やめてくれよ。これじゃまるでボクがゲリしたみたいだ。』
大きく深呼吸をするトミー。重苦しい空間からやっと抜け出せた喜び。
『お前便所じゃないのか!!?じゃあなんで………おい、ジョウジロウちゃん、まさかオレの事が好きだとか言うんじゃないだろうな、やめてくれ、オレは女が好きだ、女好きだ、ただのチャラ男にみられているだけの人間だ。』

⏰:06/06/16 02:39 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#179 [ザゼツポンジュ]
呆れてトミーを見たジョウジロウちゃん。
『……しゃべってもいいか…』          『…ああどうぞ。』
朝からちょっとしつこすぎたと反省したトミー。
『エノシタさん、メガネ外していたの見たか!!?』
『お前、もしやそれが言いたかったのか!!?』
『そうだよ。』

⏰:06/06/16 02:42 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#180 [ザゼツポンジュ]
『あきれるよ。オレはこういう空間が大嫌いなんだ。入学式、卒業式、朝会、エトセトラ!!シーンとしすぎて頭が痛くなる。しかもそんな大嫌いな空間に、あんなど真ん中でえらそうにしゃべる副会長を、オレが見るとでも思うのか!!ええ!!?』
ジョウはトミーの肩をポンポンと叩いた。
『……そんなに興奮しないでくれよ。ボクが悪かったよ…。でもちよっとだけ、見てくれよ。』
トミーの背中を押し、トイレの扉を少しだけ開いて、全校生徒の前でマイクを持ってしゃべる、エノシタさんを見てもらった。

⏰:06/06/16 02:48 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#181 [ザゼツポンジュ]
『………メガネ忘れて来たんじゃないのか?洗面所とかに……』
『そんな事はいいんだよ。やっぱり外すと、ちょっとかわいくないか!!?』
『……お前、たいがい趣味悪いぞ!!あれじゃあ、勃ちもしない、おどろく段階ではない!!もっと…なんだろうな髪型も、陰気臭いところも、もっぱらダメだ!!』

⏰:06/06/16 02:51 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#182 [ザゼツポンジュ]
トミーも特にエノシタさんなんかに興味はなかったのだが、この日はちゃんとエノシタさんを見てみたのである。
『じゃあ、賭けをしようか』
ジョウは、トミーに賭けをしかけた。
『どんな賭けだ、いいだろう。童貞をもらってくれる女子を紹介しろとかはナシにしてくれよ。』

『ないよ…700%。そうだなぁ、エリアカフェで、トミーはボクに小夜子ストロベリーをオゴるってのは、どう!!?ボクが負けたらトミーは好きな物をいくらでも頼んでいいよ。場合によっちゃ、貯金もおろすつもりでいるよ。』

⏰:06/06/16 03:00 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#183 [ザゼツポンジュ]
『お前大きく出たな、ホントにメニューのいちから隅まで全て頼むぞ、それでもいいんだな!!?そして、全部食べおわるまで家にも帰れないぞ、それでもいいんだな!!?…ついでに、一日オレ様のパシリだ。移動教室ではオレの分も持ち、音楽の時間はオレの代わりにリコーダーを披露し、完全に合格のハンコをもらってもらう!!…で、一体何の賭けだ!!?』
ジョウは上を向いてしばし考え、3度くらいうなずいた。
『洗面所にメガネを忘れてきたのか、はたまた、コンタクトにしたか…だ。ボクはもちろんコンタクトに賭けるよ。』

⏰:06/06/16 03:07 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#184 [ザゼツポンジュ]
『了解なまこん。』

自信満々なのはジョウの方だった。それは真ん中に立ってしゃべるエノシタさんの表情にハニカミが見られたからだ。
いつもはキリっとした表情で、全校生徒を見渡している。なのに今日は左右をキョロキョロし、少し頬を赤らめているのをジョウ見逃していなかった。
トミーには根拠のない自信がまとわりついているため、理由など何もない。ただオレが正しいとしか思っていないのだ。

⏰:06/06/16 03:14 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#185 [ザゼツポンジュ]
『それでは、全校朝会を終わります、きりつ。』
朝会が終わる号令がかけられた。
ザワザワし、一年生から、体育館を退場し、教室へと戻って行く姿を、トイレのドアの隙間から二人は見ていた。
『生徒会の奴らは最後の最後だ。オレらは生徒会の後ろを歩こう。』
と、トミー。
1年生……2年生……三年生……そして、最後、生徒会員達が体育館を出ようするところで、トイレから出た二人。

⏰:06/06/16 03:20 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#186 [ザゼツポンジュ]
トミーは、ツカツカと生徒会員の後ろにベタづけした。ジョウもぴたりとトミーの後ろにつける。

そしてトミーはエノシタさんの肩に手を回した。  『エノシタさん。』
エノシタさんはびっくりして、ガチガチになり、右手と右足が同時に出て、運動会で緊張した小1男子の図のようになった。
『今日メガネどうしたの?かわいいじゃん。』
トミーはエノシタさんの顔を至近距離で覗きこんだ。エノシタさんは顔を真っ赤にして
『コンタクトにしたの』
と言って走って逃げてしまった。

⏰:06/06/16 03:26 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#187 [ザゼツポンジュ]
トミーはくるっと後ろを振り返り、
『おい、ジョウジロウちゃん、やっぱ洗面所に置いてきたそうだ。』
両手でジョウの肩に手をかけた。
フワっといつもの香水の匂いがした。
ジョウもトミーの肩に手をかけ、
『無償で、耳かきをプレゼントするよ。』
と、勝利を飾ったのは、2年2組の学級委員、出席番号9番の、鈴木ジョウジロウだった。

⏰:06/06/16 03:31 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#188 [ザゼツポンジュ]
>>150-187

⏰:06/06/16 03:33 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#189 [ザゼツポンジュ]
○ーさん

jpg 30KB
⏰:06/06/16 05:04 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#190 [我輩は匿名である]
>>100-150

⏰:06/06/16 10:29 📱:P901i 🆔:8Q/VrG0E


#191 [クロ]
まぢおもしろいこんなにおもしろい小説初めて

⏰:06/06/16 18:37 📱:P901i 🆔:MemWjUcA


#192 [ザセツポンジュ]
─午前11時
老人二人は街へ繰り出していた。
街なかにあるアーケードの、分かりにくい路地裏に、ひっそりと、だけど堂々と、構えられた古着屋があった。
『おはよう。諸君。入ってもいいかね!!?』
オープンぴったりの時間にずうずうしく押し掛けたジジイ達
『あっ!!きーさんすーさんいらっしゃい!!』
準備中のピーマンは、キャップを取り、笑顔で一例した。
『おぃおぃ、つなげて呼ぶのはやめてくれないか。仲がいいと思われるだろう』
1個人として受け入れて欲しいきーさんだった。

⏰:06/06/16 22:28 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#193 [ザセツポンジュ]
『きーさんと、すーさんに着て欲しい服があるさね。』
ピーマンの想像力は豊かだ。
62歳のジジイであろうとも、どれだけファンキーに生きられるか、それをプロデュースするのを楽しみに生きている、ホントに服の大好きな青年だった。
九州の人で、ところどころ方言が出てしまうのが人気なところでもある。
顔も日本人離れしていて、西洋風のイケてるメンずだった。

⏰:06/06/16 22:32 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#194 [ザセツポンジュ]
『しかし、ピーマンは今で言うイケメンだな。』
すーさんは、ピーマンを、かわいがっていた。
『ん!!?イケメン!!?イケてるメン類か!!?』
『そうそう、ラーメンきし麺、うどん……って、きーさん!!イケメンも知らないのか!!?』
『はて。はて。』
『イケてるメンずって意味だ。』
『ほぉ!!!じゃあすーさんもイケメンだな。』
『ん…まぁ、当然だろう。』 
まんざらでもなさそうに、少し気色悪く照れていた。

⏰:06/06/16 22:39 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#195 [ザセツポンジュ]
『イケてないメンず』
きーさんは、か細い声で言った。
『……最近耳をほってないからなぁ…』
すーさんも、か細い声で言った。
『ところでピーマン。今日は相談も兼ねてココへやってきたのだ。おすすめの服なら買ってやるが、その後ワシの話も聞いてくれ。』
きーさんが本題を切り出した。
『了解す。』
『なまこんがぬけておるぞ。』
『…了解なまこん』
なかば強制的だが、きーさんにとっては永遠の流行語なのだ。

⏰:06/06/16 22:45 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#196 [ザセツポンジュ]
きーさんは、服屋に来ているのに自分の身の上話だけして帰るのは気が引ける性分だ。
付き合いでごはんにさそわれた時、自分はお腹がすいてなくても断れず、何か小さいものでも頼んでしまうのである。
すーさんはと言うと、あまりその辺に関しては無頓着で無神経だ。自分の好きなように生きている。
あまり信念というものもない。
だけどいつだって前向きで、深く考えず、いつだって歓楽的生きて行ける都合のいい性格をしていた。

⏰:06/06/16 22:55 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#197 [ザセツポンジュ]
ピーマンは、二人のジジイに今日もかっこいい服をコーディネートした。

そしてきーさんにはキャップを、すーさんにはニット帽をプレゼントした。ピーマンオリジナルの自信作だ。
これで、キャバクラに行ってもバカにされないジジイ二人が完成されて行く。
『いつもありがとうございます。』
『いゃいや。いいんだよ。ピーマンに質問だが…』
きーさんが美容室と言うことばを知らなかったのを思い出し、すーさんが説明を勝手出た。

⏰:06/06/16 23:01 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#198 [ザセツポンジュ]
『ピーマン、髪は一体どこでやってるんだ!!?……そして、……お前日本人なのか!!?』
すーさんは必要以上にピーマンに詰め寄り尋ねた。
『……ち、近いんすけど。ウチの上に美容室があるけんが、そこでやってもらいよぉとです。……、日本…人、……佐賀生まれす。』正直、62歳と言う圧力と気持ちの悪さに戸惑うピーマン。
『変えたい女子が一人いるんだが…ボサボサのキチキチのグジュグジュだ。いくらかかるんだ!!?』

⏰:06/06/16 23:26 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#199 [ザセツポンジュ]
『…そういや、カットモデル探しよったな。その子かわいいとですか!!?』
今まで鏡で自分の姿を眺めていたきーさんが、ピーマンの肩を持ち詰め寄った。
『モデルでも、実験台でもかまわん。必ずかわいくなるに違いない』
二人の最強ジジイに詰め寄られたピーマンに、逃げる事はできず、非協力的な言葉を出せるはずもなかった
『……ちょっと上行って、聞いてきます』

⏰:06/06/16 23:33 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


#200 [ザセツポンジュ]
   ****
『トミー。今日女子と帰るのか!!?』
『オレがお前との約束を忘れたとでも言いたいのか!!?帰りに寄ってくぞ』
『了解……なまこん』
放課後、二人は#7791へと向かうのだった。
あたり一面オレンジ色になり、夕方という少し淋しいような切ないような空気が二人を包んだ 
『お前さ、エノシタ、エノシタって、エノシタさんが好きなのか!!?』
トミーは、ジョウより少し前を歩いた。
『…そんなこと考えたこともないよ。』
ジョウはまた、本当の甘いカルピスを知らない

⏰:06/06/16 23:41 📱:P701iD 🆔:LtWl5Ezk


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