クソガキジジイと少年」
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#90 [ザゼツポンジュ]
『すーさん、落ち着いてくれ。ワシが悪かったよ。あの子は元がいいと言いたいだけだ。メガネと髪型が邪魔をしているもったいない。』
サービスでみーちゃんが新しい梅昆布茶を持ってきてくれた。
『みーちゃん。みーちゃんありがとねー。きーさん。お前は好きだなぁそういうのが。どれだけべっぴんになるか好きなだけいじればいい。』
『それだよすーさん。』
すーさんはため息をついて入れたての梅昆布茶に口をつけた。
『ぅあっちちち。』
すーさんは猫舌なのだ。

⏰:06/06/13 04:47 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#91 [ザゼツポンジュ]
━エノシタさん改造計画 

その日の夕方、きーさんは家の電話から、トミーの携帯に電話をかけた。
トゥールルル、トゥールルル…
『なんだよ。』
『トミオ、部屋入ってもいいか!!?』        『いちいちわざわざドアの前で、かけてくんなよ!!』ガチャ。
『トミオ、コードレスとは便利だなぁ。』
糸でんわよりはもっぱら便利である。
『いいからもう切ろよ。なんだよ。』
トミーはベッドに寝そべって週刊誌を読んでいた。芸能情報もかかさずチェックだ。

⏰:06/06/13 04:54 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#92 [ザゼツポンジュ]
『お前かわいい女が好きなんだよな?具体的にどんなのが好きなんだ?』
『目がクリクリで髪の毛サラサラでいい匂いのするちょっとエッチで細い子。』きーさんは机の上に置いてある数学の問題集を手に取った。
『トミオ、センスないな、だめだ。』
きーさんはこんなにもおもしろくないパラパラ漫画を今だかつて見たことがない。

⏰:06/06/13 05:00 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#93 [ザゼツポンジュ]
初スキャンダルを起こした有名女優の記事を読みながらトミーはきーさんに問い掛けた。
『なんでだよ、じーちゃんはどんなのが好きなんだよ!!?』
『ワシはもっとユーモアのあるのが好きだ!!軟式テニスをしていると見せ掛けてズームアップしてみると目玉おやじをボールがわりにして遊んでいたというオチがあるやつとかな!!』
きーさんは、問題集を元の場所に置き、そそくさと階段を降りつっかけをはいた。
『どんな女だよ、気色わりぃよ。』

⏰:06/06/13 05:04 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#94 [ザゼツポンジュ]
━こちらは鈴木家。
『じーちゃん、そろそろまさこの散歩行ってきなよ。』
今日は、すーさんの当番だが雨なので外へは出たくない。
『ジョウジロウ。じーちゃん今日はお前に話がある。』
ジョウは分かっている。この話が長いということを。
『……うん。いや、じーちゃんまさこがね。』
さっきからずーっと吠えているのだ。
『ぅぁーーーわーわーわー。ちょっと今はじーちゃんの話を聞いてくれよぉ、頼むよぉー。』
すーさんは62歳になってもまだ聞き分けのないクソガキなのだ。
『わかった。わかったよ。』

⏰:06/06/13 05:12 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#95 [我輩は匿名である]
『よし、いい子だ。ちょっと待ってろ。』
すーさんは梅昆布茶と甘いカルピスを作りに下のリビングへと降りて行った。
すーさんちは新築だ。
階段なんて75度くらいの急な階段で、手すりはない。62歳にとっちゃ心臓やぶりの坂でしかない。
しかもコンクリートで固い。
完全に老人向きの家ではなく、近代的な、そしてデザイナーズ的なオシャレホームで暮らしているのだが、すーさんは肩身の狭い思いをしているのだ。

⏰:06/06/13 05:42 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#96 [ザゼツポンジュ]
この家の設計図を手がけたのは、建築士であるすーさんの娘。すなわちジョウの母親である。
62歳の同居人がいる事は、全面的に無視している。
殺意まで感じられるこの家は、きーさんさんの涙に飾られ2年前にそびえたったのだ。
命に支障のないように、なるべく階段を一段一段降りリビングに辿り着いた。カルピスの原液と梅昆布茶の粉を取り、ゆーっくり、ゆーっくりと時間をかけるすーさん。
まさこへの気遣いも忘れてはいない。

⏰:06/06/13 05:48 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#97 [ザゼツポンジュ]
『まさこよぉ。ごめんよぉ。ワシはなぁ、小さいときにバナナの皮で漫画のようにツルンとすべってなぁ、鎖骨を骨折したんじゃよ。それ以来雨の日はひびいてだめなんだよ。ごめんよぉ。雨に濡れて、まさこよ、実にセクシーだ』
……オスだがな。

⏰:06/06/13 05:52 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#98 [ザゼツポンジュ]
『じーちゃん、いつまで待たすんだよ。どうせコップふたつ持っては階段上がれないでしょう?』
キッと睨むすーさん。
『こんっのクソガキめが!!こんな階段目をつむってでも駈けのぼれるわ!!童貞め!!』
ハァっとため息をついて呆れるジョウ。

⏰:06/06/13 05:59 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#99 [ザゼツポンジュ]
『ピーンポーン。いやぁ、ずぶぬれだよ。ジョウジロウ、タオルをくれないか。』
10歩先に生息しているきーさんがすーさんちに遊びにきた。
『きーさん。口で効果音出さずにちゃんとインターホン押してくれない!!?』
ジョウは、そんなにぬれてもいないきーさんにタオルを渡した。
『おぉ!!?口がたつようになってきたな。関心、関心。お!!?ワシのカルピスか!!?勘がいいじゃないか、すーさん賢いぞ。』
きーさんはカルピスを一口ゴクリ。

⏰:06/06/13 11:21 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#100 [ザゼツポンジュ]
『甘い。まるで恋心のようだ。ジョウジロウ、これを一口飲んでみろ。ワシが口を付けたのはココだ。ココ以外で飲んでくれ。』
ジョウもわざわざ62歳の隣のじーさんと、間接キスをするなんざまっぴらごめんだろう。
『う甘い。濃いよ。』
すーさんはソファで横になら死んだフリをしている。まさこの散歩に行きたくないのだ。

⏰:06/06/13 11:27 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#101 [ザゼツポンジュ]
『甘いだろう。ジョウジロウちゃんが恋をした時、きっとこんな気持ちになるそ。最初はな。こんなにも甘い恋をお前はもうすぐ味わうのだ。わかるか!!?いいか!!?このカルピスの味を忘れるなよ。気持ちはこんなにも甘く、その結果、出てきてしまうのも、カルピスだ!!』

きーさんの言葉がなぜか、ジョウの心に響いた。
『…まだよくわかんないや。でも、きーさん、今の言葉覚えておくよ。じーちゃん。もういいよ…ボクがまさこを散歩へ連れていくよ。それと…もうちょっと薄くつくってよ、カルピス』

⏰:06/06/13 11:33 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#102 [ザゼツポンジュ]
ジョウは外へ飛び出した。甘い甘いカルピスがのどにからむ。
ジョウの頭の中はきーさんの言葉がぐるぐるまわり、変な気分だった。
雨のせいだろうか。
甘い粘着がしばらく離れなかった。

⏰:06/06/13 11:37 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#103 [ザゼツポンジュ]
『すーさん。ワシは葬儀屋に電話した方がいいのか?そろそろ息をしてくれないか?』
むくっと起き上がった。すーさんはニッコリ笑った。外へ出なくてすんだのだ。
『やぁやぁ。どうしたんだ。きーさん相談でも!!?』
きーさん甘すぎるカルピスを平気でごくりと飲んだ。
『あのなすーさん。トミオは目がくりくりで髪の毛がサラサラでさせ子がタイプらしいんだが、今旬なかわいい女はどんな具合だ!!?』
すーさんは女の話になると生き生きする。

⏰:06/06/13 11:43 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#104 [ザゼツポンジュ]
『お宅のトミオちゃんの意見は、まさに模範解答だ。大正解だ。そんな女が常に旬でいてほしい。』
『じゃあ、コンタクトにさせた方がいいんだな。』
すーさんはぬるい梅昆布茶に口をつける。
『なあんだでは、ダメだ。すーさん、エノシタさんをお前好みの女に仕上げようじゃないか。お前好みという事は、トミオ好みという事になる。エノシタさんは好きな男のために変わっていくんだ。』
少しずつではあるがやる気になってきたすーさん。
62歳、老人。

⏰:06/06/13 11:49 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#105 [ザゼツポンジュ]
『しかしワシの孫のはずなんだが、女好きはすーさんに似ている…おかしな話だ。』
『……高い高いしすぎて入れ替わったんじゃないのか!!?』
『馬鹿たれ早く考えろ』

⏰:06/06/13 11:51 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#106 [ザゼツポンジュ]
『なぁんだエノシタさんの話か。…ぁ、間違った』
すーさんさんは心の叫びが口からもらしてしまった。
『すーさん、言いたい事は溜めずに出しておいた方がいい。ただな、梅昆布茶をすすったあたりからすーさんの心の声は十分伝わっていたよ。』

⏰:06/06/13 11:56 📱:P701iD 🆔:5A22jEVw


#107 [我輩は匿名である]
書かないの待ってるよ

⏰:06/06/15 01:49 📱:D702i 🆔:c2Fb1lvg


#108 [ザゼツポンジュ]
すーさんは、ひとたび没頭すると、まなざしは真剣になり瞳はキラキラと輝く。
まばたきもしなくなり、呼吸の数も少なくなる。
一般人から見ると、この光景は実に気持ちが悪い。
剥製のようだ。
だがきーさんは、このすーさんが好きだ。
弱点は、その3までしか出てこないことであるが、きーさんは決して文句を言うことはなかった。

その1、メガネをとり、コンタクトをはめさせる。
その2、髪の毛をサラサラにさせる。題してキューティクルビューティー大作戦。
その3、自信をつけさせる

⏰:06/06/15 11:36 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#109 [ザゼツポンジュ]
さっそくきーさんはエノシタさんにメールを送った。

エノシタさん、アドバイスがあります!!トミーは、目がクリクリして髪の毛がサラサラの女の子が好きみたいなんだよ。エノシタさんがコンタクトにしたらかわいいと思う★どうだい!!?やってみないか!!?

送信

⏰:06/06/15 11:40 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#110 [ザゼツポンジュ]
エノシタさんからはいつも素早く返信される。

─そうかな!!?今更メガネ外すなんて恥ずかしいよ…

『この女はホントにいくじなしだな、けしからん』
と、きーさん。

─トミーは、段々変わっていくエノシタさんを見たいんだよ!!頑張れエノシタさん!!今からママンに相談だ。

⏰:06/06/15 11:46 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#111 [ザゼツポンジュ]
きーさんは徐々にメールの達人になっていく。
日本中の老人の中でこんなにも飲み込みが早く若々しいジジイは自分しかいないと思っている、木田シゲル。
メールのセリフを考えているすーさんは、こんなに言葉巧みに日本語を使いこなせるのは自分しかいないと思っている。
運がよければ脚本家と言う道でも開けたのではないかと自惚れる、鈴木ひとし。
共に62歳、老人

⏰:06/06/15 11:52 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#112 [ザゼツポンジュ]
一方、隣の木田家では14歳の少年二人が恋について語りあっていた。
『なぁトミー、人を好きになるとはどんな気持ちなんだい!!?』 
まさこの散歩を終えたジョウはまた自販機で購入したカルピスを飲んでいた。
『どうしたんだ、恋でもしたのか!!?おめでとう、ついに君も童貞卒業と言う事になるな。』
『…展開はやいよ。ボクはトミーに質問しているんだよ。』
今度は国語の教科書にパラパラまんがを制作していた。なんだかんだこの男、きーさんに影響されているのである。

⏰:06/06/15 12:06 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#113 [ザゼツポンジュ]
『うーん…今狙っているのはエノモトさんだな』
『トミー…ボクは、何を狙っているかは今聞いてなかったんだが。』
トミーは、自分が童貞を卒業したことに優越感を抱いている。
そして、隣に住んでいるこの同級生よりも、素晴らしい人材だと自分で思っている、木田トミオ。
しかしジョウはその部分に対しては、とても消極的であり、とくに羨ましいと感じてはいない。
今日というこの日、隣に住むじぃさんの訪問のせいで、まだ抱いたこともない恋心について少し気になっただけの、鈴木ジョウジロウ。   共に14歳・

⏰:06/06/15 12:07 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#114 [ザゼツポンジュ]
『好きじゃなきゃ、触れないよ。かわいくなきゃ目が向かないよ。だからオレは見た目のいいものが欲しいんだ』
『…トミー。それは人を好きと言えるものなのかい!!?フラれたことはあるの!!?』
『あるさ!!そんな女は、っっどーでもいい。一応ショックは受けるが、寝て覚めればもう次の女の事でいっぱいおっぱいだ。』

⏰:06/06/15 12:11 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#115 [ザゼツポンジュ]
ジョウは隣の住人であり同級生に少し呆れた。
『いい性格をしているね。』
『ジョウも、顔は以外にも男前だぞ!!?がんがんいけよ。ただ韓国ドラマのような純愛なんてチャンチャラおかしい。あんなのに憧れるのだけはやめておけよ。バカバカしい。』
パラパラまんがを一生懸命制作しているように見えるトミーだが、少し悲しそうな背中をしていた。

⏰:06/06/15 12:18 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#116 [ザゼツポンジュ]
シャーペンを起き、こんな雨の日に何を思い立ったのか。トミーはお気に入りの古着をチョイスし、ランキング1位の香水をふりまき、出掛ける準備をする。
『ちーちゃんに会いたいな。ギャルも見たいしな。うん、ジョウジロウちゃん。何がしたいかわかるか!!?』
『エリアカフェに行きたいんだろ!!?お前、正気か?雨だぞ。しかも今エノモトさんがいいって言ったじゃねぇかよ。』
『ジョウジロウちゃん!!オレは男だぞ!!雨だろうと雷だろうと女がいればそれでいいのだ!!』
トミーの後ろを必然的についていかなければならないのであった。

⏰:06/06/15 12:28 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#117 [ザゼツポンジュ]
トミーんちのママは、トミーが小学4年生の時に出ていった。男ができたのだとトミーは言う。
トミーのパパは、ママを愛していたし優しかった。
だのに、なぜ、荷物をまとめ、家を出たのか、そんなにしてまで。
昔トミーは言った。
『女がなんだ!!ただの弱虫じゃないか!!ワガママじゃないか!!どんなに優しくされても都合のいいところに逃げていく最低な生きものだ!!』

⏰:06/06/15 12:34 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#118 [ザゼツポンジュ]
トミーは泣いていた。
でも男の子は泣かないのよと、ママがよく言っていたのをちゃんと、ちゃんと忘れてはいなかった。
後ろを向き、息を殺し、一生懸命涙が出るのをこらえていたが、逆にその姿が悲しくてたまらなかった。

⏰:06/06/15 12:39 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#119 [ザゼツポンジュ]
『おぃ、シンイチロウ!!新しいソフト買ったんだろ〜!!?かせよ!!さもなくば、お前の秘密を町内放送でながしてやるぞ!!』
5つも下のクソガキに窓の向かい側から大声をはられ、ひとりの時間を邪魔をされていた。
『わかったから静かにしてくれ。トミーお前今日、帰ってくんの早いのな。ジョウジロウはまだだぞ。早びけか!!?』
『オレ様だけは今日休みなのだ!!』
やけに、ニコニコしていたのをよく覚えている。
『トミオ、ちょっとおいでー!!』
案の定、ママ声が聞こえてきた。トミーは急いで走って行った。

⏰:06/06/15 12:50 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


#120 [ザゼツポンジュ]
トミーのママは、クラブのママをしていてとてもキレイだった。

『オレんちのママかわいいし、いい匂いするんだぜ!!』
トミーは嬉しそうにママの事をよく自慢していた。
お酒を飲むママの体調が悪いとトミーは絶対学校へは行かなかった。
一日中ママといた。
ママが大好きだった。
いつもママのいない夜。
パパもお仕事でいない夜。トミーはきーさんとよく遊んでいた。

⏰:06/06/15 12:59 📱:P701iD 🆔:R3UK8pLI


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