クソガキジジイと少年」
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#840 [ザセツポンジュ]
ジョウは粉を入れて
ポットの湯を入れれば
すぐさま完成する梅昆布茶を、少し水でぬるめて
すーさんに飲ませた。
『ジョウジロウちゃん、いや、落ち着け。まぁ、そうアセるな。サンタさんが来なかったからって非行に走るなよ!エ!エ…エノシタさん!ケーキ食べようね〜、ね〜エノシタさん、ね〜。』
理不尽な理屈を並べているのはシゲル。木田シゲル62歳。
孫から注がれた
梅昆布茶と言う活動源で、少しだけ落ち着きを取り戻した、鈴木ヒトシ62歳。
この2人の老人、
『なに?殺人でも犯したの?ついに。』
と、少年に侮辱されてもなんらおかしくない行動をとっている。
:08/06/18 00:22 :W51CA :vSgbzwek
#841 [ザセツポンジュ]
こんな奇妙な家の中にいるのに、エノシタさんは、なんだか楽しそうに笑っていた。
きーさんは
自分の理不尽さは
棚に上げ、キッチンからジョウを追い払った。
首をかしげながら
コタツに入ったジョウは
何気なく座っている自分にハッとした。
エノシタさんの隣。
(あ…足とかあたったら…どうしよう…)
『エ…エノシタさん、なんかオープニングからこんな感じでごめんね。じーちゃん達いつもあんな調子でさ。』
申し訳なさそうな顔のジョウとは打って変わって、建て前ナシの笑顔で首を横に振るエノシタさん。
『いいなぁ。にぎやかで。面白いのね、おじいちゃん達。』
キッチンでなにやら
男の作戦会議を開始している老人2人を、エノシタさんは微笑ましく眺めていた。
:08/06/18 00:31 :W51CA :vSgbzwek
#842 [ザセツポンジュ]
:08/06/18 00:33 :W51CA :vSgbzwek
#843 [ザセツポンジュ]
(エノシタさん、いつもひとりなのかな…)
ジョウは、エノシタさんを見つめながら、少し寂しい気持ちになった。
『すーさん、すーさん、大丈夫。大丈夫。バレてない、バレてないよ。かえってこんな態度の方が怪しいじゃろ!平然とするんじゃ。何事も無かったかの様に!』
『そ、そうじゃな。もう、随分前の話よ。』
完全に殺人を犯してしまった2人組の会話である。
『はいは〜い。みなさ〜ん。今宵クリスマス、未成年飲酒でもしてね、今日は盛り上がりましょうね〜』
きーさんは不自然なほどの笑顔で、しきり直そうとコタツへ潜入してきた。
:08/06/18 00:44 :W51CA :vSgbzwek
#844 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウ!お前、ポケっとしてないで、ワシに、もう一回梅昆布茶を入れて来い!きーさんにはカウパーカルピス!エノシタさんは?何飲むんじゃ?』
きーさんに続いて、コタツに腰を下ろしたすーさん。
『カウパーカルピスって新しいの?』
エノシタさんの質問に、すーさんは、気を良くした。
『最新のカルピスだが、絶対に外部には漏らさないこと。』
きーさんのフォローにもジョウは呆れ返って、みんなの分のジュースを用意しに、キッチンへ移動した。
:08/06/18 00:52 :W51CA :vSgbzwek
#845 [ザセツポンジュ]
(台っっっっ無しだよ。エノシタさん、もう遊んでくれないよ…)
『はい、梅昆布茶!きーさんの最新のカルピス!エノシタさんの100%オレンジジュース!』
(そしてボクも…エノシタさんと同じオレンジジュース…うぅ…)
すーさんは梅昆布茶を
ふぅふぅと冷ましていたが突然ある事に気づいた。
『あっ!おい!ジョウジロウ!シンイチロウも呼んで来い!いいか!?今日はあの屋根裏から何が何でも引きずり出せ!』
ジョウはオレンジジュースをゴクリと飲み、ため息をついた。
『も〜。コキばっかり使わないでよね!』
:08/06/18 01:02 :W51CA :vSgbzwek
#846 [ザセツポンジュ]
ジョウは膨れっ面で階段を上がり、2階の上のそのまた上の、屋根裏部屋のドアを叩いた。
コンコンコン。
『に〜ちゃん!……に、にぃいちゃん!』
ジョウは少し待って、
耳を澄まし、ドアノブに手をかけた。
ガチャー。
相変わらずゴチャゴチャしている部屋。
画材に雑誌に、本にソフト。付けっぱなしのパソコンに…
『…あれ?にーちゃん、いないや。』
:08/06/18 01:09 :W51CA :vSgbzwek
#847 [ザセツポンジュ]
:08/06/18 01:13 :W51CA :vSgbzwek
#848 [ザセツポンジュ]
------------------
『おつかれさまで〜す。』
オレが店の戸を開けたと同時に
バイトの人とおぼしき若い女が店を出て行った。
『六さんの店、久しぶりだな。』
席に案内され、座敷に座るなり
目の前にいる中年男は
おしぼりで顔を拭きだした。
『そうだね。父さんと会うのもだいぶ久しぶりだけども。』
そう。そのだいぶ前に
出て行った父さんの顔を拭く姿を見て
老けたな〜と感じ、メニューを開いた。
『隣のおじいちゃんは元気か?あの説教くさいおじいちゃん。』
父さんはおしぼりを置いた。
『ん?元気に決まってるだろ。トミーも元気だよ。。。あと、ジョウジロウも元気。』
:08/06/18 13:24 :PC :Qvr/oogU
#849 [ザセツポンジュ]
家族の事よりも先に
きーさんの事を聞いて来るあたり、
よほどに目の敵にしているに違いない。
『元気か。ジョウジロウ、中2か。荒れてないか?』
寂しそうな顔でメニューを覗き込む父さん。
“松コース”を指差した。
『いいの?無理してない?』
『無理してるに決まってるだろ。いいから頼みなさい。』
えらそうにメニューを閉じた父さんだが、
無理してるとはっきり言われると、返ってスッキリするもんだ。
『すいませ〜ん。』
:08/06/18 13:25 :PC :Qvr/oogU
#850 [ザセツポンジュ]
ヒョイっと顔を出した六さんは、
オレ達の顔を見て、ニッコリ微笑み
テーブルに手をかけた。
六さんの、なんとも言えない優しい顔に
オレはホっとした。
『シンイチロっちゃん。お父さんと、珍しいな。アンタ、元気だったかい?』
ポンと、父さんの肩を叩いた六さん。
父さんは、笑った。
『あぁ。それなりにな。』
一番高い“松コース”を頼んだ後
料理を来るまでの間、黙っていることは
できなかった。
『ジョウジロウ、荒れたりしてないよ。年頃の割りにはいい子だと思うよ。鈴木の姓にも、もういい加減慣れたみたいだしさ。』
父さんは何度も頷いていた。
“それならよかった”と。
:08/06/18 13:26 :PC :Qvr/oogU
#851 [ザセツポンジュ]
『母さんは忙しそうか?』
『忙しそうだよ。帰って来るのも遅いしね。父さんはどうなの?』
父さんは、苦笑いして、こう答えたのだ。
『酒の量もだいぶ減ったな。ひとりきりだしな。会ってくれるのはお前だけだしな。』
オレは少し腹が立った。
何を聞いても腹は立つんだろうけど。
ちょっとした発言でもイラっとするんだろうけど。
父さんだけが、寂しいんじゃない。
自業自得なんだろ。
お前が家を出て行ったんだ。
酒を飲んで暴れて。
自分勝手に怒鳴って。
母さんを殴って。
じーちゃんを突き飛ばして。
ジョウジロウの話も聞かずに。
だけど、オレは。。。
:08/06/18 13:26 :PC :Qvr/oogU
#852 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウはさ、毎日夜になると泣いてたよ。まだ小学校も低学年だったし。小さかったのに父さんと母さんの間割って入ってさ。ジョウジロウは強いと思うよ。オレは母さんにくっついていればいいと思ってたから。どっちかについている方が楽なのに、ジョウジロウはそれをしなかった。なのに父さんはジョウジロウの話を聞かなかった。オレもオレだけど。父さんも父さんだよ。』
いや、オレは今日
誰が一番悪かったと、
決めたかったわけじゃないのに。
父さんを責めに来たんじゃなかったのに。
掘り返して、父さんを悪者にしようと思っていたんじゃなかったのに。
今日は、
今日は、、、。
こんな空気にするつもりじゃなかったのに。
:08/06/18 13:27 :PC :Qvr/oogU
#853 [ザセツポンジュ]
『悪かったな。母さんにも、ジョウジロウにも、、、、お前にもな。父さんな、ホントに悪かったと思ってるよ。』
違うんだ、父さん。
父さん、オレはね、
父さんが出て行って、ジョウジロウが泣く姿を見て
自分が情けなくなったよ。
オレの方がおにいさんなのに、
オレは何にもしなかった。
部屋に隠れて、耳を塞いでいるだけで。
オレには、二人の間に入る勇気なんてなかったし。
:08/06/18 13:28 :PC :Qvr/oogU
#854 [ザセツポンジュ]
ジョウジロウはね、何も知らないんだ。
どっちについていればいいとか、分からないんだ。多分。
戦国時代のお話をいつも聞かせてくれたりしていた大好きな父さんと、
お弁当のおにぎりに、タコさんウインナーを入れてくれていた大好きな母さんが
いがみ合っているのを見ているのが
ただ、嫌だっただけなんだよ。
どっちがどうとか
そんなの思いつきもしてなかったんだよ。
泣きながら、何度も何度も
父さんと母さんの間に割り込んで
止めようとしていたんだ。
真ん中。
二人の真ん中に立って。
:08/06/18 13:29 :PC :Qvr/oogU
#855 [ザセツポンジュ]
オレには、そんな気持ち、きっとなかったから。
いなくなって気付いたんだ。
父さんがいなくなって、オレは気付いたんだ。
父さん、父さんも
ひとりになって分かった事が
いっぱいあるんだろうね。
ひとりにならないと思い知れない事もあるんだろうけど
それに気付いて反省した時に、
もう戻せなくなってしまったものもあると言うこと。
クリスマスの夜に。
:08/06/18 13:29 :PC :Qvr/oogU
#856 [ザセツポンジュ]
---------------------
学校一の可愛い女子を
見事自分の彼女として
獲得し、至福の時を過ごした
木田トミオ14歳。
クリスマスとエノモトさん15歳の
誕生日を存分に過ごした。
辺りはもう薄暗い。
『あたしもう帰らなくちゃ。』
『え〜もう帰るの〜。もう俺んち住んじゃえよ。風呂沸かそうぜ。』
と、無理な冗談こそ平気で言ってみるが、
トミーはエノモトさんの手を取った。
『おうちまで送ります。』
『うん!』
二人は手を繋いで、玄関を出た。
:08/06/18 14:22 :PC :Qvr/oogU
#857 [ザセツポンジュ]
《ボケタレ!ワシの目玉焼きの方がよっぽど目玉らしいわ!》
《すーさんの目玉焼きは目玉じゃないわい!下手クソ!》
《も〜。。。じーちゃんもきーさんも無駄使いしないでよ、たまご!目玉焼き選手権なんてやめようよ、クリスマスに!》
《キャハハハ。》
何やら隣のオウチはにぎやかなご様子。
『隣の家うるさいね〜、エノモトさん。』
ガラガラガラ。
『空気が悪いわ!、、、あ!トミオ!どこへ行く!』
ぷ〜んと漂う卵の匂い。
『あの人知ってる?エノモトさん。』
『、、、。トミーのおじいちゃんでしょ。無視していいの?』
エノモトさんは、繋いだ手を気にしながら歩いた。
無視していいわけがあるまい。
:08/06/18 14:23 :PC :Qvr/oogU
#858 [ザセツポンジュ]
ガチャ。
鈴木家の玄関から顔を出した老人二人のお出ましだ。
『おい!あっ!お前ら!セックスしていいと思ってんのか!』
すーさんは、繋いだ手を見るなり、近所迷惑スイッチをONにした。
『すーさんやめてよ。俺の可愛い可愛い彼女が困惑するだろ。セックスはしなかったよ。とても残念だよ。』
きーさんは、これ以上喋らせまいと、すーさんの口を塞いだ。
:08/06/18 14:24 :PC :Qvr/oogU
#859 [ザセツポンジュ]
『トミオ!どこ方面に送るんじゃ!?』
『あっち。北公民館の方面。』
『そうか!その近くに喫茶店があっただろう!そこにケーキも売ってるから、ケーキを買って来い!モンブランと〜、、、あと適当に!必ずだぞ!ほれ、エノモトさんにもあったかいカフェオレ買ってあげなさい。』
トミーにも1万円を渡したきーさん。
かっこつけたいがために気前の良くなるクリスマス。
『ラッキ〜。』
『じゃあな、我が孫トミオよ。』
ガチャン。
すーさんを窒息死させる寸前で
老人達は家へ引っ込んだ。
『なんであたしの事知ってるの?』
『、、、あれ?ホントだ。なんでだろう?』
:08/06/18 14:25 :PC :Qvr/oogU
#860 [ザセツポンジュ]
きーさんは、すーさんをリビングに放り投げ、
玄関の電話の前に立った。
きーさん。携帯電話を購入したのにも
関わらず、家に置き忘れ、人んちの家の電話を使用する。
老人とはそんなものだ。
『090の、、、え〜と、、、』
リビングからホフク前進でしかえしを試みているすーさん。
『おい、木田シゲル。モンブランモンブランって、糖尿病になって死んでしまえ。。。おや?どこに電話しとるんじゃ?』
『トミオの本命の彼女。』
『あぁそう。』
すーさんはそう言って素直に退散し、コタツに戻った。
『、、、もしもし?ワシじゃ。今すーさんちからかけておる。今どこにおるんじゃ?』
:08/06/18 14:26 :PC :Qvr/oogU
#861 [ザセツポンジュ]
-----------------
エノモトさんちは少し遠かった。
二人はたわいもない話をしながら
ゆっくり歩いた。
『トミーはいつも音楽何聴いてるの?』
『え〜っとね〜、怪獣のバラード。』
『、、、。それって合唱曲でしょ。CD出てるの?』
『うん、出てる出てる。エノモトさんは?』
『あたし、ジュディマリ。』
『俺もジュディマリ好き〜。ジョウの兄ちゃんにCD借りた事あるんだ。小さな頃からとかね、KISSの温度とかいいよね。』
『ホント!?あたしは、おねーちゃんから教えてもらったの。あ、怪獣のバラードあたしも好きだよ。』
:08/06/18 14:39 :PC :Qvr/oogU
#862 [ザセツポンジュ]
CDはおそらく持っていないだろうが、
木田トミオと言う生意気な少年。
怪獣のバラードと言う歌を
こよなく愛していた。
『でもさ〜怪獣のバラードを歌ったクラスが絶対優勝するじゃん。あれどうにかして欲しいよね〜、、、。あ、自販機。エノモトさん、おいで。』
あったかいカフェオレを飲みながら二人は進んで行った。
吐く息はとても白かった。
『もうすぐウチなの。あの、そこの犬がいるオウチの、、、。隣、、、、。』
エノモトさんの足が止まった。
トミーはエノモトさんの顔を覗き込んで
視線を辿った先、街灯の下に女の人が立っているのが見える。
『おねーちゃん!』
そう叫んでエノモトさんは、走って行く。
振り返ったエノモトさんに、トミーは笑って手を振った。
(会いたい人に会えてよかったね、エノモトさん。)
:08/06/18 14:40 :PC :Qvr/oogU
#863 [ザセツポンジュ]
---------------------
ジョウは時計を見てハっとした。
ジジイ二人のドンチャン騒ぎに
付き合っている場合ではないのだ。
こともあろうかエノシタさんは
楽しそうにケタケタ笑っていた。
ジョウはこのままでは
エノシタさんが危ないと思い、
肩を叩いて現実世界へ引き戻した。
『エノシタさん!もう8時が来るよ!』
エノシタさんはやっとこさ
我に返り、帰り支度をした。
『エノシタさん、また目玉焼き選手権しようね〜』
酔っ払ったすーさんはとてもご機嫌。
『また遊びにおいで、エノシタさん。』
きーさんは、ここを自分ちだとでも思っているのだろうか。
ジョウとエノシタさんは、クリスマスと言う冬の道を歩き出した。
:08/06/18 16:48 :PC :1u1mw9wo
#864 [ザセツポンジュ]
:08/06/18 18:21 :PC :1u1mw9wo
#865 [ザセツポンジュ]
------------------
街灯の下で手を振る女の子。
街灯まで走る女の子。
二人は姉妹。
『おねーちゃん。。。』
『お誕生日おめでとう。はい、これプレゼント。私からがこっちで、この料理はバイト先の人から。』
二つのプレゼントを
妹に渡した姉は、
時計を見た。
『ありがとう。。。おねーちゃん。どこでバイトしてるの?』
『ん?料理のおいしいところでバイトしてるのよ。』
姉は、再び時計を見た。
予定は何もないのに。
:08/06/30 01:11 :PC :3PmgDCPQ
#866 [ザセツポンジュ]
『おねーちゃん、おうち入らないの?』
すぐさま帰ろうとしている姉の様子に気付き、
なんとか引きとめようとしている妹。
『今日はもう帰るよ。おめでとうって、言いに来ただけだったから。』
『一緒にケーキ食べようよ。。。帰って来てよおねーちゃん。』
姉は、困ったように笑い、首を横に振る。
ガチャ。
『遅いわねぇあの子。誕生日だって言うのに。』
エプロン姿のまんま、薄着で外に出て来た母親。
隣の家の犬が吠え出した。
『お母さん!おねーちゃん、おねーちゃんとケーキ食べたいんだけど!』
:08/06/30 01:11 :PC :3PmgDCPQ
#867 [ザセツポンジュ]
姉は、母親の姿を見た途端、
背を向けて口を閉ざした。
『あれ?お前いたのか。』
続いて玄関先まで出て来た父親は、
様子に気づき、妻の方へ近づいて行った。
そうして、もう一人の我が娘が
自分達に背を向けている事が分かったのだった。
家族は4人。
食卓を4人で囲むのが当たり前で、
普通の家庭だと、誰もが思っていた。
両親は、7つ、年の離れた妹を
とても可愛がっていた。
天真爛漫で、容姿も端麗だった妹を。
:08/06/30 01:12 :PC :3PmgDCPQ
#868 [ザセツポンジュ]
姉は次第に嫉妬して行った。
クリスマスに生まれた妹を
妬んでもいた。
置いてきぼをくらっているような生活が
何年も続いたが、
姉は、疑問をどこに、誰に、
ぶつけたらいいのかさえも分からなかった。
普通の家庭だと誰もが思っていた家庭に
口を閉ざした姉だけが、ポツリと食卓を囲む。
物静かな性格だったためか、
ちょっとした姉の変化に気づく者は、
いなかった。
:08/06/30 01:12 :PC :3PmgDCPQ
#869 [ザセツポンジュ]
お姉ちゃんはしっかりしてるから。
お姉ちゃんは心配いらないから。
妹は甘えん坊で可愛いから。
妹は手のかかる子だから。
(私はおねえちゃんだから。私はおねえちゃんだけど。だから何だって言うのよ。。。)
『お姉ちゃん。お母さんね、みんなの好きなケーキ買ってきてるの。』
『おねーちゃん。おうち、入ろうよ。。。』
母の言葉も、妹の言葉も
背中では受け止めているが、
まだ振り返る気には、なれないでいる姉。
何も語らないでいる姿を見かねて、
父親は、ゆっくり姉に近づいて行った。
そして、姉の肩に、手を
置いた。
:08/06/30 01:12 :PC :3PmgDCPQ
#870 [ザセツポンジュ]
『さみしい思いをさせていて、ごめんな。。。お姉ちゃん。帰っておいでよ。ね。今日は、クリスマスだから。』
お姉ちゃんは、
ちゃんと分かっていたのだ。
自分が、大きな大きな
意地を張って生きていると言うことを。
抵抗として、
沈黙と言う手段を選んでいたが、
相手に真意を
気づいてもらえにくいと言う事だって
分かっていた。
だけど、それでいて時は経ってしまい、
口に出す事が、日に日に困難になって行った。
溜め込んだものを吐き出すために
手にあざを作り、のどをかき回していた自分。
:08/06/30 01:13 :PC :3PmgDCPQ
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