クソガキジジイと少年」
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#451 [ザセツポンジュ]
きーさんご指名の
きららちゃんが登場した。
「きーさん久しぶりだね。失礼しまぁす。」
「やぁやぁ。先に好きなもの頼みなさい、きららちゃん」

きららちゃんはニッコリ笑い、きーさんのお酒を作る作業に取りかかった。

ふと、きーさんは
マドラーを回すきららちゃんの手を見つめた。

⏰:06/09/07 01:37 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#452 [ザセツポンジュ]
「きららちゃん、最近コケたのかね。どっかて打ったのかね。」

きららちゃんのコブシの下あたりに赤い小さなあざがポツポツとできていた。

火傷でもないし、打ったにしては小さすぎる。
きーさんは疑問を持った。

⏰:06/09/07 01:40 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#453 [ザセツポンジュ]
「あ、これ…は…そうなのちょっと打っちゃって。ヘヘへ。」

きららちゃんが気まずそうに笑った。
きーさんはそれ以上は聞かなかった。

「空ちゃんチュウは?」
「きゃー!すーさん恥ずかしいから二人きりのところで…ね?」
すーさんは目をつぶっているが

空ちゃんは完全に
引いていた。
顔のひきつりなんて尋常じゃない。

⏰:06/09/07 01:45 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#454 [ザセツポンジュ]
今宵楽しい一時を過ごしたすーさんは
満足そうな笑みを浮かべ
「ペケ。」
ボーイにチェックを言い渡した。

帰りのタクシーの中ですーさんは恒例の過去の栄光について
語った
「ワシだって昔はすごかったんじゃよ。月曜日にゃ抱いてオーラを放つ女子が家を押し掛け、火曜日にゃこの街一番のかわいこちゃんと手を繋ぎハニカミデートで水曜日にゃ…」
(あの手のあざはどうやったらできるんだ…う〜ん…)
きーさんは聞き飽きたすーさんの自慢話をよそにきららちゃんの手のあざの事で頭がいっぱいだった。

⏰:06/09/07 01:54 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#455 [ザセツポンジュ]
「あ、すいませんここでワシは降りますので。すーさん。お先に失礼おやすみよ。」
「はぁい、パイパーイ。」
きーさんは決してすーさんと家が隣ですと運転手に教えない。

すーさんは運転手に散々右だの左だの言いながら自慢話を繰り返し話し、運転手に完全に嫌われたところで気がすみ、きーさんをおろした同じところにまた止まる。
「はぁいおやすみよ〜。」

すーさんは死にたくないためか急な階段を登らず、リビングで夢の中に入った。

⏰:06/09/07 01:59 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#456 [ザセツポンジュ]
いつもならすーさんが家路につく頃には
いい夢を見ているきーさんも今日ばかりは
部屋で考え事をしていた。
(手の甲を怪我する方法……きららちゃんはストーカーに狙われていました。裏拳をかわした相手の鼻がさきっちょがやたらとがっていたため、きららちゃんはちょっとしたアザができました……。うん。700%ありえないな。)

きーさんは思考回路をフル回転にさせたが
いつの間にか眠りについたのであった。

⏰:06/09/07 02:05 📱:W41S 🆔:rKVp2pas


#457 [ザセツポンジュ]
翌日━。

きーさんはいつも通りに目が覚めた。
そしてカーテンを開け
窓を開けた。
「冷えるな朝は…。」
空気を吸い込み、すーさんの部屋を見た。

すーさんの部屋のカーテンが
もぞもぞしている。

ガラガラ━。
「わ!ゎゎゎゎゎ!」

⏰:06/09/10 01:22 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#458 [ザセツポンジュ]
「すーさん。ワシは長年連れそった友人だよ。そんな化け物を見るような目で見つめるんじゃないよ。」

すーさんは汚い顔をくしゃくしゃにして
大きなあくびをした。
「やぁやぁきーさん。おはよう。目が覚めるのが同時なんて珍しい事だ。#7791カフェのみーちゃんにでも会いに行かないかね?」

⏰:06/09/10 01:25 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#459 [ザセツポンジュ]
きーさんは、大きくうなずいて、顔を洗いに下へと降りて行った。
昨日の夜から考えているきららちゃんの手の甲のあざ━。

きーさんは顔を洗いながらも
難しそうな顔で
考えていた。

⏰:06/09/10 01:27 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#460 [ザセツポンジュ]
「小夜子ストロベリーふたつ」

「みーちゃん、先に梅昆布茶をワシにひとつ。」

今日もかわいくて小さくて色の白いみーちゃんは
「了解生コン☆」

笑顔で言ってくれた。

⏰:06/09/10 01:30 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#461 [ザセツポンジュ]
「なぁきーさん、ワシは悩むよ全く。空ちゃんとみーちゃん。…空ちゃん。みーちゃん…。空ちゃ…」

「すーさん。短刀直入に言うが、お前が選ぶ立場ではないと言う事を頭に入れて置くんだな。62にもなってみっともないぞ。」
きーさんは、窓の外をぼんやり見つめながら難しい顔ですーさんに忠告した。

⏰:06/09/10 01:33 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#462 [ザセツポンジュ]
「きーさん。今日は何を考えているんだ。」
すーさんは少し心配気味にきーさんの眉間のシワの数を数えていた。
「…あのな、すーさ…」

「おまたせしました、梅昆布茶…」

「みーちゃん。みーちゃん。かわいいねぇ。今日も。ウフフフフ。」

すーさんは親友のきーさんの悩み事よりも
一瞬登場する小さくてかわいいみーちゃんの方が大事なのだ。

⏰:06/09/10 01:37 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#463 [ザセツポンジュ]
きーさんは、この隣に生息している老人と、なぜ今日と言う今日まで一緒にいてしまう友達なのか、心底自分を疑った。

「気持ちが悪いぞ、すーさん。そろそろリハビリテーションの時間じゃないのかね?行かなくて大丈夫か。」

「このヴォケ!ワシはどっこも悪くないわ!」

そしてどこも悪くないすーさんは梅昆布茶をすする。
「ぅあちちちち。」

すーさんは猫舌なのだ。

⏰:06/09/10 01:43 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#464 [ザセツポンジュ]
オシボリで口をちょちょいとふいたすーさんは梅昆布茶が冷めるまでの間、タバコを手に取り火をつけた。

「なぁ。すーさん。手の甲に小さいアザをつくるにはどうしたらいいのかね。」

すーさんはきーさんの顔を3秒ほど見つめ、自分の手に持っているタバコときーさんの顔を交互に見て
決心したかのように
きーさんの手の甲に
タバコの火を近づけた。

⏰:06/09/10 01:48 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#465 [ザセツポンジュ]
「いやいやいやいやいや。君は間違っているよ。テストなら0点より下だ、すーさん。」
きーさんはさっと手を後ろにしまった。

「きーさん。あんた何がしたいんだね。」

「質問を変えよう。ここに小さなアザがポツポツと出来ている子がいたんだが、何をして出来たのだと思う?」

きーさんは昨日きららちゃんが手の甲に小さいアザを作っていたところを指差した。

⏰:06/09/10 01:53 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#466 [ザセツポンジュ]
すーさんは自分の手の甲を見つめ
真剣な眼差しになり

あまり息をしなくなった。

集中しているすーさんは、あまり呼吸をしない。

きーさんはこのすーさんが大好きだ。

⏰:06/09/10 01:54 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#467 [ザセツポンジュ]
「ウォ━━━━!!!!」
すーさんは立ち上がり
拳をそのままパックリ口の中に入れた。

「すーさん、すーさん。ワシが悪かったよ。質問が難し過ぎた。ごめんよ。パニックになるなすーさん。なんなら死んでくれ」

すーさんはスッポリ口の中に入ってしまった拳を、取り出して
そのままきーさんを殴った。

「どさくさにまぎれて死ねとは何だお前!」
きーさんの頭の上にはもはやヒヨコがピヨピヨ飛んでいる。

⏰:06/09/10 01:58 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#468 [ザセツポンジュ]
「お待たせしました………小夜子ストロベリーで……」

みーちゃんは気まずそうに小夜子を静かに置き去りにしてカウンターへ逃げてしまった。
きーさんを殴って気が済んだすーさんは
もうぬるくなった梅昆布茶で喉を潤した。
「きーさんよ。何をしようとしているんだね次は。」

⏰:06/09/10 02:03 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#469 [ザセツポンジュ]
ヒヨコがどこかへ去るのを見届けたきーさんがようやく戻ってきた。

「すーさん。もういい。アザの正体が分かってから話すよ。」

きーさんはパクリと一口小夜子を食べた。

⏰:06/09/10 02:07 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#470 [ザセツポンジュ]
「甘いなぁ。ワシはこんなにも甘い恋心を一体何度抱いた事があるのだろうか…」

ヒヨコを飛ばしていたきーさんもこのセリフだけは欠かした事がない。

きーさんの考え事は続いた。

⏰:06/09/10 02:11 📱:W41S 🆔:sOXotDB6


#471 [ザセツポンジュ]
━━
困った祖父を持ってしまった14歳の少年達も同じ日の夕方《エリアカフェ #7791》に来ていた。

「なぁかわいぃかわいぃちーちゃんよ。今月のクーポンもう来てる?」

ちーちゃんは手元にあったクーポン雑誌を
トミーに手渡した。

「これ今月の。お待たせしました小夜子ストロベリーです。」

トミーはクーポンと黄色いノートを小夜子ストロベリーのサイドに起き、めまぐるしく目の玉を動かしていた。

⏰:06/09/11 19:41 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#472 [ザセツポンジュ]
「トミー…物色するか探すか食べるかどれかにしなよ。欲張りな男だな。それにしても今日は小夜子ストロベリーを食べるなんて珍しいね。」
そう言ってジョウはいつものお約束、小夜子ストロベリー食べた。
「だってこのクーポンで安くなるんだもん。」

トミーはクーポン雑誌からエリアカフェの欄を見つけ、
小夜子ストロベリー100円引きと書いているところの点線をやぶった。
「……なんで小夜子好きのボクに今までそれを教えてくれなかったの?」

⏰:06/09/11 19:48 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#473 [ザセツポンジュ]
ジョウはクーポン雑誌にあまり興味がなかったためそんな事実がある事ですら把握できていなかった。

一方トミーは、いち早くトレンドのものを脳みその引き出しに入れておきたいがために、毎月必死に要チェックをしている。

安くなるなら一回くらい食べて見てやってもいいだろうと考えたのだろう。

⏰:06/09/11 19:51 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#474 [ザセツポンジュ]
「お前な、自分が好きなものなら自分の力で手に入れろ。人の情報をあてにするんじゃないよ………ん?」

トミーはスプーンをくわえたまんまクーポン雑誌の一部分に眉をひそめ目を落とした。

そんなトミーの様子を見たジョウも

クーポン雑誌をのぞきこんだ。

⏰:06/09/11 19:54 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#475 [ザセツポンジュ]
「エノシタさんじゃない!?」

ジョウはびっくりして少し声のボリュームをあげてしまった。
古着屋ミッシェルの上にある美容室の割引き券にエノシタさんが映っているのである。

トミーはジョウの顔とクーポン雑誌を交互に見た。
「お前やっぱエノシタさんが好きなんじゃん。俺はこっちを見ていたんだよ。」

トミーの指差した欄には美容室のコーナーではなく隣のページの

《新規OPEN★ホテルミラクル。休憩1000円割引き!宿泊半額★先着5名様》

新しく近所にできたラブホテルの欄だった。

⏰:06/09/11 20:04 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#476 [ザセツポンジュ]
「違います。ボクはエノシタさんに気付いただけです。」
ジョウはやたらキョロキョロしながら弁解をした。

「ジョウジロウちゃん。君は、ウソをついたり怒ったりすると丁寧語になるクセがある。」
トミーは意地悪な笑みを浮かべた。

「……怒っている方です。」

ジョウは小夜子をほうばった。

「そうか、そうか。」
トミーも、今日はジョウと同じ甘い甘い小夜子を食べた。

⏰:06/09/11 20:14 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#477 [ザセツポンジュ]
━木田家。


「トミオ。座りなさい。」
トミーは家に帰るなり、真剣な瞳で玄関にたたずむ我が祖父に素直に従った。
「なんだ、今日は。」
トミーは玄関に座った。
「立て。」
「え!?」
真剣な瞳が気色の悪い我が祖父を2度見した。
「じぃちゃんの部屋に来なさい。」

きーさんはそう言い残して自分の部屋へと移動した。

(なぜ一度座らせる必要があるんだ…あのクソジジイ。)

⏰:06/09/11 20:23 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#478 [ザセツポンジュ]
きーさんは部屋で仁王立ちで偉そうにかまえていた。

「じぃちゃん…何がしたいんだ。」

「決闘だ。」

「……どうしてだ。」
「…すーさんが腹立つ行動ばっかりするからだ。」

「おい、すーさんを直接殴ればいいんじゃないのか、それ。」

⏰:06/09/11 20:31 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#479 [ザセツポンジュ]
「いいかトミオ。じぃちゃんのココ。拳の下にちっちゃいアザを作るような攻撃をくわえる事だけを考えろ」

「じいちゃん。俺は110を押した方がいいのか?おかしいぞ。」

「つべこべ言わずファイ!!」

きーさんはトミーに飛びついた。

⏰:06/09/11 20:37 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#480 [ザセツポンジュ]
「気持ちが悪いぞ!コノヤロウ!」

トミーはきーさんを殺さない程度に叩きまくった。
「トミオちゃ〜ん」
きーさんはトミーの顔をベタベタ触りチューを試みた。
「死ねジジイ!」

トミーは、きーさんの手を思いきり噛んだ。
「イッチチチチチチ!」
きーさんは目をつぶり手を押さえた。

⏰:06/09/11 20:42 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#481 [ザセツポンジュ]
その時だった。


きーさんの脳内の小さい引き出しが全て開放されたのだ。

気が狂って、拳をまるまま口に入れたすーさん。

気持ち悪さに抵抗して思いきり噛みついた
我が孫、トミー。


共通点は歯形。


女の子がキレイな自分の手を口の中に入れる━━。



「ハッッッ!!分かったぞトミオ!!」

ゴツン━。

きーさんは嬉しさついでにトミーにゲンコツをくらわした。

「くぅ……ぅぅ。」

きーさんのゲンコツは痛いのだ。

⏰:06/09/11 20:48 📱:W41S 🆔:szQEfsT2


#482 [ザセツポンジュ]
「鈴木ヒト━━━━━━シ!!!!」
トミーは、たまらず隣の家のエロジジイに叫んだ。
「こんのクソガキやっかましぃわ!!!!62歳のジジイだと思ってなめるんじゃないよ!!!今大事なビデオを観賞中なんじゃ!!!!次叫んだら売り飛ばすぞこのボケタレ!!!」
ピシャン━。
すーさんは窓の鍵をしめてカーテンをきっちりとしめ電気を消したた。
「ムフフフ…」


「わぁ〜〜ん。」
トミーの両目から涙がちょちょぎれた。

やっぱりきーさんのゲンコツはとっても痛いのだ。

⏰:06/09/12 00:18 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#483 [ザセツポンジュ]
━━季節は冬になった。

寒い寒い
冬になった。

ジョウはまだストラップを渡せずにいた。

生徒会役員が集まる生徒会室にエノシタさんはいつもいた。

用事以外何にも話せないジョウがいた。

それとは逆にかわいくなったエノシタさんとも、他の女子ともわけへだてなく楽しそうに話しているトミーがいた。

⏰:06/09/12 00:30 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#484 [ザセツポンジュ]
ジョウは、いつもいつもエノシタさんだけを見ていたのだ。


だけれども、やっと気付いた。


自分の大好きな人の大好きな人は
イヤでも分かってしまうものなのだ。


(エノシタさん…いつもいつもトミーを見てる。ボクはエノシタさんをいつもいつも見てるから、よく分かってしまうよ。)

⏰:06/09/12 00:34 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#485 [ザセツポンジュ]
「おーぃ。ジョウジロウちゃん。何考えてんだ帰るぞ。」

ボケーっと夕焼けを見つめ、心を切なくさせていたジョウジロウちゃん。

心をしめつけられるような、泣きたくなるような、もどかしい気持ちが全身をかけめぐっていた。
「ん?うん…そうだね。」

トミーは、遠い目をしたジョウを少し見ていた。

「…どの辺を見てるんだ。」
「ボクの心の中を見ているんだよ。トミー。」

⏰:06/09/12 05:01 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#486 [ザセツポンジュ]
ジョウは白く淡いため息をついた。
そして少しくしゃくしゃになってしまって、渡せないまんまのストラップはポケットの中で冬眠している。

「……ジョウ。」
トミーは眉をひそめてジョウの顔を覗き込んだ。
「ん?」

「気持ち悪いぞ。詩人にでもなりたいのか。」

「……。それもいいね」

⏰:06/09/12 05:09 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#487 [ザセツポンジュ]
ジョウは特に言い返す力もなく、カバンを背負った。

「トミー。おうちへ帰ろうか。ボクは早く帰りたいよ。」

「お前変だぞ。変態だ。早く帰りたいのにも関わらず、1時間も夕日を眺めたお前は異常だ。ワガママだな。俺は待ってたんだぞ。」
「ごめんごめん。」

⏰:06/09/12 05:13 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#488 [ザセツポンジュ]
トミーは前を歩いた。
日が暮れて、薄暗い道を二人は1列になって歩いていた。

「なぁ。」

「うん。」

最初に口を開いたのはトミーだった。

「具合悪いのか?ジョウジロウちゃん」

体操服を蹴りながら、ぶっきらぼうに前を歩くトミー。

ジョウは少し小走りしてトミーの横に並んだ。
「健康だよボクは。」
「そっか。ならいいんだよ。」

⏰:06/09/12 05:22 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#489 [ザセツポンジュ]
トミーはもう何にも言わず、体操服を蹴りながら、ぎこちない鼻歌を歌って歩いた。

ジョウは複雑な気持ちを重たいカバンの中に詰め込んで歩いた。

「ジョウ。また明日な。」

「うん。バイバイ、トミー。」

⏰:06/09/12 05:28 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#490 [ザセツポンジュ]
コトッッ━━。
コトッッ━━。
コトッッ━━。

翌朝、ジョウはいつもより早く目が覚めた。
(じぃちゃん、こんな朝からどこ行くんだろう…。ぅぅ…寒い…。)

ジョウは布団にくるまった。

今日はいつもより冷えているらしい。

ジョウの部屋のテレビがそう言っている。

⏰:06/09/12 05:35 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#491 [ザセツポンジュ]
ジョウはバサっと起き上がり支度を始めた。
こんな早くから支度をしたって、トミーが迎えに来るにはまだまだ時間がある。

ジョウは顔を洗い、制服を来てマフラーを巻き、重たいカバンを背負い、支度をすまして家を出た。

(トミー。今日は先に行くよ。)

ジョウは、隣のトミーの家を少し見つめて歩き出した。

白い息。
冷たい風。
赤い鼻先。

ジョウだけが知っている気持ち。

今日は一段と冷えているからだろうか。

歯をくいしばって

涙が込み上がってこないように

ジョウは歩いた。

⏰:06/09/12 05:47 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#492 [ザセツポンジュ]
「あんた。おばちゃんに会いたいからってこんな早い時間に来て、一体何をしでかすつもりなのよ。スケベね。」

用務員のおばちゃんが教師用の玄関を掃き掃除しながら、一番のりしたジョウをお出迎えしてくれた。

「おはようおばちゃん。朝から言ってくれるじゃない。疲れるよボク。」

ジョウはおばちゃんに愛想笑いをして
生徒用の玄関の扉を引いた。


「ん!?」

⏰:06/09/12 05:59 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#493 [ザセツポンジュ]
くしゃくしゃに丸まった紙くずが
3年のクツバコから
何個も転がっている。
ジョウはしゃがんで
至近距離で紙くずを見つめた。

(……あれ?これクーポン雑誌?)

トミーが毎月エリアカフェで見ているクーポン雑誌が散らばっている…。

首をかしげながらジョウはくしゃくしゃに丸まった紙を広げた。


「え……。」



そしてまだ転がっている丸まったクーポンをひとつひとつ広げていった。

(…なんだ。…なんでだ……。)

⏰:06/09/12 06:10 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#494 [ザセツポンジュ]
その紙くず達をたどって行く━。

顔をあげたジョウは
愕然とし、地べたに座りこんだ。


━━━榎下━━

くしゃくしゃにまるまった紙くずが
ぎゅうぎゅうに押し込まれて、こぼれ落ちてしまうほどのこのクツバコは

紛れもなくエノシタさんのクツバコだった。

⏰:06/09/12 06:14 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#495 [ザセツポンジュ]
カサッッ━━。

涙のようにひとつぶ
、エノシタさんのクツバコからこぼれ落ちた
紙くずを

ジョウは、拾って

ゆっくりと恐る恐る広げた。

《調子乗んな!ブサイク、死ね!》

エノシタさんが美容院のカットモデルをして、ニッコリ笑った顔と一緒にクーポン券になってから2ヶ月たっている。

今月のクーポン雑誌も、変わらずエノシタさんの笑顔と一緒にクーポン券は発行されているのだ。

鋭い言葉を殴り書きされ、顔には落書き━。

⏰:06/09/12 06:38 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#496 [ザセツポンジュ]
ジョウは
心臓にコンパスをぶっ刺したかのような痛みを
押さえて

クーポン券の紙くずを全部ゴミ箱に入れて

焼却炉へと走った。

⏰:06/09/12 06:41 📱:W41S 🆔:x4l6J1Kg


#497 [なちゅき]
この小説マジ好きですだから上げ
マイペースでぃぃんでがんばってくださぃね

⏰:06/09/14 18:59 📱:N701i 🆔:eymO6fNw


#498 [きーさん]
なちゅきちゃん☆
ありがとぉ
(o`∀´o)
ワシゎ嬉しいよ!

⏰:06/09/14 22:45 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#499 [ザセツポンジュ]
ジョウが胸を痛めていた早朝、きーさんとすーさんは#7791カフェにいた。


「小夜子ストロベリーをふたつ。」

きーさんは、注文したあと、すーさんがみーちゃん話しかける暇もなく大量の資料をバシっと机の上に置いた。

⏰:06/09/14 22:49 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


#500 [ザセツポンジュ]
「…うん。きーさん。文字のおけいこにドリルに学級新聞とはなかなか画期的な事業に取り組むみたいだがワシは遠慮するぞ。」

すーさんはしかめっ面できーさんを睨んだ。

「ワシは62だぞ。そんな宿題やってられるかこのクソジジイ。イカレポンチ。きもエロス。」

きーさんはいつになく真剣だった。

⏰:06/09/14 22:56 📱:W41S 🆔:n3DJ4syY


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