クソガキジジイと少年」
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#729 [ザセツポンジュ]
『今から全校集会を始めます。きりつ、気をつけ、れい。』
ステージには
新生徒会役員、トミーやジョウを含めた6名。
裏方に、旧生徒会役員、トキムネ氏、エノシタさんを含めた6名。
体育館2階には
父兄にPTAが勢揃い。
そして、1階の窓際に一列、教師達が並ぶ。
ステージに一番近いところに我が校代表する校長が座った。
:08/05/19 01:22 :W51CA :UWzOEldU
#730 [ザセツポンジュ]
女子達の黄色い悲鳴は止まない。
調子に乗りたい気持ちを抑え
トミーはマイクを持ちステージのそでに立った。
『女子達。キャーキャーピーピーうるさいんですけど。シーよ。シー。俺は、今日来ている君達のママやパパにひとりずつ挨拶してまわらないといけない。そしたらどうなる。全員のパパにボコスコにされてしまうよ。…それで余計かっこよくなれるかもしれないけど。』
腹の立つ勘違い発言だが片田舎のため許された。
いつものことだ。
2階からドっとわかせたところでトミーは口に人差し指を立て、会場をしずめた。
:08/05/19 01:33 :W51CA :UWzOEldU
#731 [ザセツポンジュ]
『皆様今日はお集まり頂き有難うございます。今年も、例年通りの議題で行うように校長から言われました。が、しかし、そんなのなんにもおもしろくないので校長の命令は完全無視する。』
小さな話し声が広がりざわつきはじめた。
校長はキョロキョロしてなにやら教頭に耳打ちした。
『議題を発表します。』
トミーは裏方の前生徒会長、トキムネ氏に指示を出した。
『そこのファイルにある1枚目をスクリーンに映し出せ。』
トミーの鋭い目に圧倒され、言われるがままに従った。
何も聞かされることのなかった旧生徒会役員。
トミー率いる新生徒会役員との確執は深かった。
:08/05/19 01:45 :W51CA :UWzOEldU
#732 [ザセツポンジュ(仕事中のためPC)]
《い じ め》
スクリーンいっぱいに
映し出された、たった3文字の言葉。
みんなが議題を飲み込んだのを
確認したトミーは、進行をジョウと交代した。
『はい。ここに出ている文字を見てハッとした人もいると思いますが、この学校にいじめは存在しました。今日来ているお父さんお母さんは、ショックかもしれませんが、娘さん、息子さんが誰かをいじめているかもしれません。』
:08/05/19 16:55 :PC :inGAe7KI
#733 [ザセツポンジュ]
ザワつきのボリュームは
次第にあがって行き、
校長は教頭をステージの上に送り出した。
教頭は校長に言われた通りの
マニュアル的台本を、ジョウの耳元で告げた。
普段は物静かなジョウジロウちゃんも
好きな子を守る
盛大なパーティーの最中、
忠告を聞き入れるわけにはいかない。
ジョウは、教頭の背中を押し
ステージの真ん中へ立たせた。
『今ボクに言った内容を、目の前にいるみんなにも発表してください。』
:08/05/19 17:01 :PC :inGAe7KI
#734 [ザセツポンジュ]
教頭に、マイクを渡した。
『、、、いや、、、あの。』
マイクを持って
突っ立ったまんまの教頭に
生徒からヤジが飛ぶ。
『何言ったんだよ!言えよ!』
『なにやってんだよ、お前コケシか!』
混乱する体育館内と
それ以上に困り果てた、教頭、校長、、、。
教頭はマイクをジョウに渡し、肩に手を置いた。
『やりたいようにやれ。知らないぞ。』
そう言い残し、あまりの恥ずかしさからか
ステージの裏に逃げてしまった。
:08/05/19 17:06 :PC :inGAe7KI
#735 [ザセツポンジュ]
校長がギラリと睨んだ先、
教頭は見えないステージの裏側で
今までにない屈辱を味わい
身震いせざるを得なくなってしまった。
裏方にかまえていた
旧生徒会役員も
この時ばかりは、かける言葉すら無かった。
『教頭が逃げたところで本題に入ります。スクリーンに映し出す資料をみんなで見て行きましょう。あとでみんなにも意見を発表してもらいます。』
:08/05/19 17:16 :PC :inGAe7KI
#736 [ザセツポンジュ]
ジョウはエノシタさんに
資料を渡し、順番に映しすようにお願いした。
エノシタさんは、普段は見せないような
不安な顔でジョウを見つめていた。
何を話せるわけでもなく
ジョウはステージに戻った。
:08/05/23 12:13 :PC :2EGMUVP.
#737 [ザセツポンジュ]
年間、少年少女の自殺が
600件にも達していること、
それを大人達は隠してしまっていること。
いじめをすることによって、
優越感を得る同年代の子達の心理
ネットでの書き込み、中傷が
増え続けている事。
黙って見ている人の立場。
ジョウが説明していくたびに
忠実に資料を映し出して行ったエノシタさん。
ステージの裏でのエノシタさんの様子が
気になって仕方のなかったジョウ、、、。
『暇なんですけど〜。』
ステージで説明するジョウを押しのけ
暇を持て余していた、生徒会長木田トミオが現れた。
トミーの再びの登場に
いちいちザワつく田舎女子。
ジョウはトミーと進行を交代した。
『鈴木くんの資料を見て、だいたい分かったと思いますが、ここで突撃インタビューを開始します。何か意見のある人は手を挙げましょう、、、。もちろん挙がりませんね。では、適当に出席番号を言うので各学年、呼ばれた出席番号の人は立ちましょう。』
新生徒会役員、トミーとジョウをステージに置き
残りの4人がマイクを持ち、体育館に散らばった。
:08/05/23 12:29 :PC :2EGMUVP.
#738 [ザセツポンジュ]
『それでは、出席番号を発表します。男子5番、20番。女子2番18番。今呼ばれた出席番号の人、さっさと起立。』
トミーは、立たされた顔ぶれを眺めた。
そして、質問を開始した。
『1年生、1組の男子5番の子。名前をどうぞ。』
いたって健康そうで、1年生ならではの
ズボンの丈が少し短い男の子だった。
『片岡洋平です。』
名前もいたって当たりさわりなく普通だ。
:08/05/23 14:33 :PC :2EGMUVP.
#739 [ザセツポンジュ]
『片岡君、さっきの資料で、年間600件の自殺が報告されていると言うことだったけども、600件全部がいじめが理由なワケではないと思う。でも死ぬほど嫌になるくらいのことを、片岡君は経験したことがありますか?』
トミーの唐突な質問に
いたって健康そうな片岡君は戸惑っていた。
『、、、ありません。』
『では、塾でもなんでもいい。しんどいな、苦しいなと思ったことはありますか?』
『、、、それは、あります。』
『そこで、そのしんどさをどうまぎらわす事ができましたか?』
『、、、。』
ズボンの丈が少し短い片岡君は
緊張のせいもあり、ガチガチで上のほうを見て考えた。
『僕は、、、。数学が苦手で、よく怒られていて、、、。それが嫌だったけど、友達に打ち明けたら、数学教えてくれるようになって、、、。まだ苦手だけどちょっとは楽になりました。』
:08/05/23 14:59 :PC :2EGMUVP.
#740 [ザセツポンジュ]
『ありがとうございます。座ってください。』
片岡くんはズボンの丈を気にする事もなく
ホっとした表情で着席した。
『同じく1年1組の男子20番。名前から。』
『福井祐樹です。』
ドラえもんで言うスネオポジションとおぼしき
男の子。
『いじめと言うのは、どこからがいじめと呼ぶのかは難しいかもしれませんが、誰かがいじめをしているのを見た事がありますか?』
『まだありません。』
『では、仲の良い友達に、簡単に言うといじめを誘われたらどうしますか?』
『、、、断ると思います。』
『断ると、思います?』
『、、、断ります。』
『今みんなの前で言ったその言葉を忘れないでください。座ってください。』
:08/05/23 15:13 :PC :2EGMUVP.
#741 [ザセツポンジュ]
ジャイアンポジションに
のび太ポジションをいじめようと誘われたら
きっとジャイアン側についてしまうだろう。
そんな自分の性格をなんとなく把握していた福井は
なかば強制的に宣言した言葉を重く受け止めた。
『では1組の2番女子。』
『安達さきです。』
安達さん、トミー軍団の一味である。
ニヤニヤしながらマイクを自らぶんどっていた。
『さきちゃん。無視したり、はみごにしたりと言う経験はありますか?』
『あ、ありません。でもしている人なら見た事があります。』
堂々とした発言に体育館がどよめいた。
:08/05/23 15:26 :PC :2EGMUVP.
#742 [ザセツポンジュ]
『どういう風な形で始まりますか?』
『目立つか暗いかでターゲットが決まるケースが多いです。』
1年1組女子から安達さんにブーイングが起きている。
『1組女子静かにして。まだ質問が残っている。』
1組女子達はふてくされながら口を閉じた。
『さきちゃんは、それに加わった事はないと言いましたが、ではそのされている人や、している人に、何か注意とかはできましたか?』
1組女子は全員安達さんを睨みつけた。
『注意はしたけど、、、聞いてくれませんでした。』
:08/05/23 15:32 :PC :2EGMUVP.
#743 [ザセツポンジュ]
1組女子はこの発言を聞いた途端
言いたいことをガヤガヤと言い始めた。
『トミー先輩の前だからっていい顔すんなし。』
『注意とか言う前にお前もやってんじゃん。』
『お前がむしろ先陣きってはじめてるし。』
安達さんは自分が掘った墓穴を恥じて
泣き出した。
マイクを持ったまま席に座りこんだ。
生徒会役員はマイクだけはと
奪い返した。
:08/05/23 15:38 :PC :2EGMUVP.
#744 [ザセツポンジュ]
『静かに。静かに!1年1組の女子、貴重な意見をどうもありがとう。でも別に褒めているわけではない。これで、先生達も、体育館2階の皆様も、なんとなく今回この議題にした意味が分かったと思います。ただ、1組女子も他のクラスも他の学年も、考えを改めてください。している人だけが悪いのではなく、黙って見ている人も関係しています。そしてこの俺も、えらそうに言える立場ではありません。』
:08/05/23 15:43 :PC :2EGMUVP.
#745 [ザセツポンジュ]
トミーは空気の変わりつつある
体育館の温度を感じ取り、
各学年、各クラスに質問を投げかけていった。
最後、3年3組ー。
『3組女子、2番。』
『石崎、、、みさです。』
石崎さんは、エノモトさんと人気を二分するくらいの
可愛さの目立つ女の子であるが、
どこかトゲトゲしい雰囲気を持っていた。
『石崎さん。クラス内で悪質ないじめが発覚した場合、石崎さんならどうしますか?』
『どう?って言われても、、、。』
『ほっときたいですか?』
『ほっときたいワケじゃないけど、この先もいじめは続いて行くと思います。』
『いじめている人が死ねば、そこでひとつのいじめは終わりますね。それでもまだ続きますか?』
『続きますね。全国全ての学校でのいじめをいちいち終わらすことは不可能だと思います。』
『全国区の話はしていません。身近なあなたのクラスでの話しをしているんです。』
石崎さんの尖った態度に
トミーも強気に出ていた。
この最終地点までやっとこぎつけたのに
今さらひるむワケにはいかなかったのだ。
:08/05/23 15:58 :PC :2EGMUVP.
#746 [ザセツポンジュ]
『石崎さんのクラスで、いじめがあったとします。でも、3年生はあと1学期過ごせば卒業して学校もバラバラですよね。そしたらそのいじめはなかったことになると思いますか?』
『わからないんじゃないんですか?』
『石崎さんは、いじめに対してとても安易な考えと言うことでよろしいでしょうか?』
『そう思いたいならかまいません。逆に、木田くんはどうにかできるんですか?』
:08/05/23 16:03 :PC :2EGMUVP.
#747 [ザセツポンジュ]
この白熱した言葉の交換に
目をいったりきたりさせる
生徒達の心臓は高鳴っていた。
そして石崎さんの投げかけた質問の答えを
トミーにたくし、ステージを真剣に見つめた。
『俺は、人をいじめると言う趣味はない。それは誓う。それにクラスにも恵まれています。俺のクラスには多分いじめはない。でもそれは多分としか言えません。この学校は田舎で、生徒も割りと少ないほうで、いじめなんかなさそうに見えるが、この学校であるまじき行動を目撃したヤツがいる。俺はそれを聞くまで、いじめには無頓着だったから、俺も悪い。』
:08/05/23 16:15 :PC :2EGMUVP.
#748 [ザセツポンジュ]
『だけど、いじめがあるんだったら、見逃すワケにはいかないだろう。俺は、全国のいじめをなくしたいとか、そんな偽善ぶったことは言えないし、できない。自信はない。でも俺はこないだの演説で約束したんだよ。みんなは覚えてないかもしれないけど、俺は自分が言った言葉に責任を持ちたい。この学校の中だけでも、どうにかしたいと思ったから、今日この集会を開いている。』
:08/05/23 16:23 :PC :2EGMUVP.
#749 [ザセツポンジュ]
『石崎さんは、どうにかできるんですか?と質問してきたけど、もちろん俺だけでどうにかすることはできない。それが答えです。他に言いたいことはありますか?石崎さん。』
いつもなら、ダルいだけの集会で
いつもなら、人の話もロクに聞いてなくて
いつもなら、話している人の顔すら見ない生徒達だったが
全員が、右後方にマイクを向けられて立ったままの
石崎さんの顔を、石崎さんの目を見ていた。
石崎さんは自分の目では入りきれないほどの数の
全校生徒の目を見たまま答えた。
『あ、、、、ありません。』
:08/05/23 16:30 :PC :2EGMUVP.
#750 [ザセツポンジュ]
石崎さんは、自分が今までしてきたことを
全て思い出し、そして全校生徒の目を自分が自分に突き刺さったように感じて、席に座った。
『それでは最後です。3組女子、18番』
『、、、。』
『、、、。名前、どうぞ。』
『、、、。』
トミーもジョウジロウも分かっていたのだ。
あまりの衝撃に言葉も出なくなった
この女子の名前を。
『山田さん。山田さんには、最後の質問に答えてもらいたいんですが、答えられますか?』
山田さんは、ただただ首を横に振って
座ってしまった。
山田さんは、石崎さんと毎日毎日
一緒にいる。
二人は仲良し。
どちらかがどちらかに
支配されている。
二人は仲良し。
どちらかが命令して
どちらかが従っている。
二人は仲良し。
:08/05/23 16:44 :PC :2EGMUVP.
#751 [ザセツポンジュ]
トミーが質問をしている最中、
ジョウは体育館のマイクを持って2階に移動していた。
そして、人を探していた。
ポン、ポン。
『ジョウジロウちゃん。』
『ワッ。、、、。きーさん。何やってんの?服、オシャレだね。この日のために用意した、、、え!にいちゃん!来たの!にいちゃんこんな昼間に外に出て大丈夫なわけ?』
『俺をひきこもりみたいに言うなよ、インドア派なだけだ。』
『そ、そう。って言うかまさかウチのじいちゃんまで来てるの?』
『ジョウジロウちゃん。あそこを見てみろ、ほれ。あの遺伝子がジョウジロウちゃんに影響してないかがワシはただ心配じゃよ。』
きーさんが指をさした先の
我が祖父を視界に入れたジョウは愕然とした。
立ち見の若くてキレイな誰かのお母様のケツの下に
地味に座り込んでいる。
気分が悪そうな小芝居まで地味に披露。
ジョウはきーさんの肩で一瞬涙を見せたが
探していたのは
自分ちのじーさん達ではなかったのだ。
:08/05/23 17:00 :PC :2EGMUVP.
#752 [ザセツポンジュ]
くたびれてくたびれて
だけどそれも隠そうとしていて
隠して隠して
化粧をしている。
そんな派手目なお母様をジョウは見つけた。
顔は美人で、若い時は娘と同じくらい
人気だったのかなとジョウか思った。
とても悲しそうな顔をしているお母様。
:08/05/23 17:06 :PC :2EGMUVP.
#753 [ザセツポンジュ]
もう1人は、気の強そうなお母様。
自分の育て方は決して間違ってはいないと
無理に暗示をかかえているような
難しい表情で呆然としている。
こちらは夫婦で娘の行事に参加している様子。
ジョウはこの二人の母親のいる場所を把握して
トミーからのパスを待ちながら
石崎、山田。両者の姿をしっかりと見ていた。
:08/05/23 17:12 :PC :2EGMUVP.
#754 [ザセツポンジュ]
『では、次のコーナーに参ります。生徒のみなさんは、後ろを向いてください。お父様、お母様方の意見を聞いてみましょう。鈴木くが2階にいると思うんですけど。鈴木くん、どこですか?』
『はいは〜い。トミオちゃ〜ん。人気者のトミオちゃ〜んこちら鈴木で〜、、、』
ゴツン。
ゴツン。
『もうやめてよ、じーちゃん!』
孫と隣の家に住む老人からの
ゲンコツをくらったすーさん。
確かに鈴木くんに間違いはないが、
中学生の鈴木くんは、恥ずかしくて倒れそうだった。
:08/05/23 17:21 :PC :2EGMUVP.
#755 [ザセツポンジュ]
体育館中から笑いが起こり
空気が和らいだ。
これもすーさんのおかげと言えよう。
『みなさん、今のは鈴木君のおじいさんなんですが、別に危険人物と言うわけでもないので、この集会が終わった後、袋叩きとかにはしてあげないでください。もう62歳ですしね。中学2年生のほうの鈴木くん。準備はいいですか?』
ジョウはマイクを取り返し
恥ずかしさを隠せないでいた。
『お見苦しいところをお見せしましたが、僕は将来こうなるつもりは1ミクロもありませんのでご理解頂きたい。準備オーケーです。』
クスクスと言う温かめの
笑い声。
『はい、は〜い。静かにしてくださ〜い。ジョウジロウちゃんのじいちゃんの話はまた3学期に学校通信でお伝えします。1,2年生はご期待くださ〜い。』
『もうトミーいいよ、その話。こっちの身にもなってください。一刻も早く進めてください。』
トミーとジョウの
ステージと2階からのやりとりを見て
仲の良さがみんなに充分に伝わったところで
後半戦を開始した。
:08/05/23 17:39 :PC :2EGMUVP.
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