クソガキジジイと少年」
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#420 [ザセツポンジュ]
そんなすーさんの質問はフルスルーしてきーさんは電話を続けた。
「あ、はい。そうですねぇ。じゃあお願いできますか。救急車。えーっと住所は…郵便番号から言います791の…」
「ちょちょちょちょちょ、ちょい待てよ!」
すーさんはきーさんの携帯電話を奪いとり通話を切断した。
:06/09/06 18:58 :W41S :MSsJL6VA
#421 [ザセツポンジュ]
「なんだすーさん。今のは。キムタクのつもりかね。」
「ん?だろう。かっこよかっただろう。」
「謝罪しに行きなさいジャ○ーズ事務所まで。」
きーさんは冷静に謝罪を進めた。
「きーさん!そんな事よりなぜワシを病院送りにさそうとするだ。説明してくれ。」
「…ワシは野球の話をしていた。すーさんはうそつき空ちゃんの話をした。腹が立った。病院から出てこなければいいと思った。それだけだ。」
「きーさん。そんっな冗談じゃないか。怒らないでくれ。まだワシはキャバクラ遊びがしたいのだよ。」
:06/09/06 19:08 :W41S :MSsJL6VA
#422 [ザセツポンジュ]
そう言ってすーさんは再び梅昆布茶を手に取ろうとした瞬間━。
「おぃ!木田シゲル!お前今、空ちゃんにうそつきと言うフレーズを足してなかったか!!!!!!どういうことか!!!!!空ちゃんをバカにするんじゃあないよ。ワシに殺されたいのかね!!!!」
:06/09/06 19:12 :W41S :MSsJL6VA
#423 [ザセツポンジュ]
すーさんはものすごい剣幕でまくしたてた。「お?さっそく必殺つば飛ばしで殺そうとでもしているのかねすーさん。」
顔に飛び散ったすーさんのツバをキレイなタオルで拭き取りながらきーさんはため息をついた。
いきなりボルテージを上げたすーさんは過呼吸を起こすまさにカウント3秒前だ。
「すーさん。じゃあ空ちゃんに会いに行って見るか。どんだけうそつきか。」
:06/09/06 19:15 :W41S :MSsJL6VA
#424 [ザセツポンジュ]
過呼吸になりそうな苦しさも、空ちゃんの笑顔を思い出しただけで、すーさんの呼吸は通常の値に戻った。
「そうだな。今日あたり行ってもいい頃だよきーさん。いい提案だ。よし!行こう!」
つい3日前も一人で足を運んだすーさん。
「またあとでな。」
すーさんが風呂に入る支度をしたところできーさんは自宅へ戻った。
:06/09/06 19:20 :W41S :MSsJL6VA
#425 [ザセツポンジュ]
コンコンコン。
「トーミオちゃん。おじぃちゃんとお話しーましょ。」
ガチャ。
「入っていいって言ってないだろ!俺を何歳児だと思ってるんだクソジジイ!」
ふと下に目を向けたきーさん。
「やかましいわ!14年しか生きてないクソガキがえらそうな口を叩くんじゃない!このせんずり小僧!」
トミーはきーさんの目の向かう先にある
いかがわしいビデオを手に取り、引き出しにしまった。
「……で、何の用事だ。」
:06/09/06 19:27 :W41S :MSsJL6VA
#426 [ザセツポンジュ]
「まぁ、今日はじぃちゃんの話を聞け。お前、あれだ。多分すーさんの孫だな。」
「やめてくれ。俺は将来あんなしょうもないジジイにはならない、確実に。62歳になってもダンディでちょい悪で女にモテまくっている俺がいるはずだ。」
:06/09/06 19:32 :W41S :MSsJL6VA
#427 [ザセツポンジュ]
「いやいやいや、すーさんだって昔ホントにモテていたんだぞ。この街の象徴と言えば鈴木さんとこのヒトシ君だろと言っても過言ではなかったよ。なのに今は、あんな落ちぶれスケベジジイだ。」
トミーはかすかに聞こえる隣の老人の風呂場からの歌声に寒気を感じた。
「じぃちゃん。その話やめにしないか。」
「まぁ待てよく聞け最後まで。ホントに女を使う事ばかり考えると将来あぁなるぞ。すーさんがいい例だ。怖くないのかトミオよ。ワシゃ心配だよ」
:06/09/06 19:38 :W41S :MSsJL6VA
#428 [ザセツポンジュ]
「俺は使っているつもりはないよ。俺の心を動かすくらい、いい女がいっこうに現れないからいけないんじゃないか。現れるまでちょっとくらい遊んでもいいじゃないか。」
きーさんはトミーの目を10秒ほど見つめた。
:06/09/06 19:42 :W41S :MSsJL6VA
#429 [ザセツポンジュ]
「相手が現れる現れないの問題ではない。お前が現れるのを恐れて逃げているからだ。」
トミーは黙ってつばを飲み込んだ。
「まぁな。大好きになった人がいなくなるのは辛い。忘れられてしまうんじゃないかと思うと寂しい。離れて行くのは悲しい。そればかり考える自分が虚しい。でもそんな感情があってこそ人間だよ。」
:06/09/06 19:45 :W41S :MSsJL6VA
#430 [ザセツポンジュ]
トミーは壁に持たれかかって下を向いた。
「トミオ。こんな話したらお前は悲しい気持ちになるだろうが言わせてもらう。ママはお前を忘れてなんかいない。じぃちゃんが保証する。ママはキレイでいい女だ。なんてったってここらでは3本の指にはエントリーされるほどの店にしたクラブのママだよ。ただ人より少しワガママなところがあった。そして人一倍責任感が強かった。」
:06/09/06 19:50 :W41S :MSsJL6VA
#431 [ザセツポンジュ]
ポタン
ポタン━。
床には一粒一粒
トミーの中の強がりが体の外へ引越しをしている。
「ママは恋のかけひきのスペシャリストだ。だからよく分かっている。お前を愛しているから心の底から愛しているからこそお前に会わない。ワガママな自分をママ自身が許せないからだ。お前は自分勝手なママだろうと、どんな人だろうとも、いい匂いのするママが大好きだろう?許すだろう?それが申し訳なさすぎて見てられないからだよ。」
:06/09/06 20:00 :W41S :MSsJL6VA
#432 [ザセツポンジュ]
「まぁ、そこもママのワガママなところだがな。でもじぃちゃんは胸を張って言える。ママは一生お前の事が大好きで一生お前に片思いのピュアな女だと言う事だよ。お前がママを引きずる分、ママはまたとんでもない事をした自分を悔やみ、心の中は大雨だ。ママが悪いのは100も承知だよ。人間、忘れると言う都合のいい機能はポンポン使うが、許すと言う機能をなかなか使いこなせない。許すことは当たり前に難しい。」
:06/09/06 20:08 :W41S :MSsJL6VA
#433 [ザセツポンジュ]
きーさんはトミーの肩を抱いた。
「トミオ。ママが大好きならママを許そう。人を好きになろう。今すぐじゃなくていい。ゆっくりでいい。すーさんみたいになるお前を想像するとワシは天国でウカウカ遊んでられないよ。」
そうしてきーさんは、泣きじゃくるトミオの頭を撫でて部屋を出た。
すーさんをそろそろ迎えに行かなくちゃ。
:06/09/06 20:12 :W41S :MSsJL6VA
#434 [ザセツポンジュ]
感動的な時間を過ごす木田家をよそに
鈴木家では戦争が起きていた━。
「このドウテイ野郎!お前まさこの散歩をサボってタダで済むと思っているのか!」
メスだと思い込んでいる我が愛犬が散歩を忘れられてしょぼくれているところをたまたま見てしまったすーさん。
「今日ボクじゃないよ、じぃちゃんだよ。見てみてよカレンダー。」
10秒ほど1m先にあるカレンダーを見つめたすーさん。
「はぁ!?あれはウソだ!日付も西暦も全部ウソで、しいて言うなら去年のカレンダーじゃ!ワシゃ老眼で何も見えんわ!」
:06/09/06 20:26 :W41S :MSsJL6VA
#435 [ザセツポンジュ]
「言ってる事がめちゃくちゃだよ!じぃちゃん!ボクはもううんざりだよ!今日からじぃちゃんの孫を辞退するよ!さようなら!」
腹を立てたジョウは
急な階段を一気にかけあがり部屋に駆け込みバタンと戸を閉めた。
:06/09/06 20:30 :W41S :MSsJL6VA
#436 [ザセツポンジュ]
コトッッ━━
コトッッ━
コトッッ━
地味な物音が長く続いた。
「シュン……シュン…」
老人のすすり泣く声が部屋の戸のすぐそばで聞こえてきた。
ジョウは少し言い過ぎたかなと反省した。
あんな急な階段を仲直りするために一生懸命登ってきた祖父の姿を想像すると少し胸が痛かった。
:06/09/06 20:33 :W41S :MSsJL6VA
#437 [ザセツポンジュ]
ジョウはドアノブに手をかけた。
(ごめんねって謝ってボクがまさこの散歩へ行こう…。)
一方すーさんも鼻水を止めて口を開いた。
「…ジョージ。」
カチャン。
「ボクの名前はジョウジロウです。さようなら。」
鍵をしっかりと閉めたジョウジロウちゃん。
ジョウは孫の名前を間違えた自分ちのじいさんに失望し、こないだイタリア娼婦気分だった時のトミーを思い出したため、ダブルパンチをくらった。
:06/09/06 20:38 :W41S :MSsJL6VA
#438 [ザセツポンジュ]
「名前間違ったくらいでイヂけるんじゃないよ!むしろジョージの方がシャレた名前だろ!せっかく仲直りしようと思ったのに、この気持ちを踏みにじったお前は少年院行きだ!バカヤロウ!ワシはな!今日空ちゃんと言う恋人に会いに行くのだ!そんな老人に気を使う事もできないのか!そんなは絶対《ヤラハタ》だぞ!ヤラハタの意味分かるか!ヤラずにハタチを迎えるヤツの事だ!要はしょうもない童貞野郎の事だ!お前だ!」
:06/09/06 20:44 :W41S :MSsJL6VA
#439 [ザセツポンジュ]
すーさんは息切れをしながら
階段を一段一段ヒョコヒョコと降りて行った。
ジョウのストレスは一気に上昇した。
すーさんから受けるストレスは
14歳の少年にはあまりにもきつすぎるであろう。
しかしジョウはゆっくり深呼吸をし
気持ちを落ち着かせた。
(友達を大切にしよう。友達を大切にしよう。)
:06/09/06 20:48 :W41S :MSsJL6VA
#440 [ザセツポンジュ]
━━━━
タクシーに乗り込んだジジイ二人。
「ところできーさん。うそつき空ちゃんとはどういう意味だ。」
「すーさん。空ちゃんが今までにやったバイト何か覚えているか」
「…マックだろ」
「時給いくらで雇ってもらっていたか覚えているか?」
「え〜…ぃゃ〜…1500円だったか」
「ありえない話だろ。」
「空ちゃんかわいいだろう。当たり前だバカ。ひとつもおかしくないぞ」
:06/09/07 00:21 :W41S :rKVp2pas
#441 [ザセツポンジュ]
きーさんはあきれかえってため息をついた。
「すいません運転手さん。ここで止めてください。」
「ん!?きーさん。どうしたんだ。」
「すーさん。ちょっと1件寄るところがある。降りてくれ」
すーさんは疑いもなくタクシーを降りた。
:06/09/07 00:25 :W41S :rKVp2pas
#442 [ザセツポンジュ]
すーさんが地に両足をつけた瞬間
きーさんはおもいくそドアを閉めた。
「運転手さん。出してください。あのじぃさん頭がちょっと悪いんですよね。さぁ早く早く。あーもぅ、早く。」
きーさんはすーさんを取り残し
一人飲み屋街へと向かった。
:06/09/07 00:29 :W41S :rKVp2pas
#443 [ザセツポンジュ]
━━カランカラン
店のドアを開けると
高級感の漂う
大理石、
ソファ。
グラス
シャンデリア━。
空ちゃんのいる
ちゃんがら屋とは
別世界のお店だ。
「いらっしゃいませ。木田様お待ちしておりました。」
:06/09/07 00:33 :W41S :rKVp2pas
#444 [ザセツポンジュ]
「ママはおられますか今日は。」
「はい。今お呼びします。お席の方ご案内します。」
ほこりひとつない
キレイなソファに
きーさんは座った。
淡い桃色の着物を着た
背筋の真っ直ぐのびた美しい女が向こうの方から歩いてくる
「いらっしゃいませ。」
困ったようにいつも笑うママが
今日も困ったような笑顔できーさんの隣に座った。
:06/09/07 00:39 :W41S :rKVp2pas
#445 [ザセツポンジュ]
「お前、困ってるのか嬉しいのかいつもはっきりしろと言っているだろう。キレイないでたちが台無しだぞ。」
きーさんはニッコリ笑った。
「すみません。」
きーさんの笑顔にホッとした表情を浮かべ
ママはニッコリ笑い
キレイな手で
グラスにアイスを
運び
ブランデーを注いだ。
「トミオがな、生徒会長になったぞ。」
きーさんはタバコをくわえ、ママは素早くそっとマッチをすった。
「ええ!トミオが?あの子大丈夫なんでしょうか…」
きーさんはタバコをふかした。
:06/09/07 00:44 :W41S :rKVp2pas
#446 [ザセツポンジュ]
「服も店員並みにキレイにたためるし、目玉焼きだってうまくできる。塩コショウの加減も抜群だ。ちなみに、チャーハンの元ナシでチャーハンも作れるし、習字も習っていないのに字もキレイだ。」
ママは深くうなずきながらきーさんの話を聞いた。
「全部お父さんのおかげですね。」
「そうだ。ワシが教えた。」
:06/09/07 00:49 :W41S :rKVp2pas
#447 [ザセツポンジュ]
きーさんは得意気な顔でニンマリ笑った。
「ワシが教えた。」
調子に乗りもう一度繰り返した。
きーさんは今までトミーと過ごした日々を思い出した。
「ワシが教えた。」
満面の笑みを浮かべ
また同じセリフを吐きやがった。
「………ありがとうございます。」
ママの声も届いてはいない。
今まさにきーさんは
トミオと過ごした日々の数あるなかの5年前の記憶をたどってニヤニヤニヤニヤしているところだ。
:06/09/07 00:55 :W41S :rKVp2pas
#448 [ザセツポンジュ]
「そうだ。でもそれはワシのおかげではあるが、トミオがいつかあんたが帰ってきた時に誉めてもらえるようにと心の奥底からずっと思っていたから上達したに違いない。」
ママは涙を浮かべた。
でもグッとこらえた。
大好きな我が息子を捨ててまでも
この仕事だけは毎日しているのだから
泣いてはいけない。
:06/09/07 01:02 :W41S :rKVp2pas
#449 [ザセツポンジュ]
━━━
こちらちゃんがら屋。
「空ちゃん空ちゃん、この人だーれだ!」
「すーさん☆」
「正解〜やっぱ空ちゃんはかわいいね〜」
すーさんはただの酔っ払いジジイになっていた。
空ちゃんがウソツキな事なんざどうでもいいのだ。
「第2問〜。この人だーれだぁ」
「すーさぁん!」
「あ〜空ちゃん今日は一段と可愛いねぇ…ヒック…正解でーす。」
3歳児でもあてられる質問で誉められる空ちゃんは幸せものだ。
:06/09/07 01:26 :W41S :rKVp2pas
#450 [ザセツポンジュ]
「第3問目〜このイケてるおにいさんは誰でしょう〜」
「ぁ、きーさん!」
「はぁ!?胸くそ悪いヤツの名前を出すんじゃないよ。ブッブ〜不正解で〜す。そのきーさんてヤツは史上最強の最低最悪な歴史上人物の名前でした〜。……あ?」
すーさんは目を疑った。
前に座る見覚えのある老人を見るやいなや
頭を抱えた。
「すーさん。いやはや。やってるみたいだな。楽しそうに。」
「きーさん。ワシから映るビジョンであんただけが白黒に見えるよ。」
「勝手に殺さないでくれないかさっきから。明日眼科へ付き添ってやってもいいがな。別に。」
:06/09/07 01:33 :W41S :rKVp2pas
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