クソガキジジイと少年」
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#740 [ザセツポンジュ]
『ありがとうございます。座ってください。』
片岡くんはズボンの丈を気にする事もなく
ホっとした表情で着席した。
『同じく1年1組の男子20番。名前から。』
『福井祐樹です。』
ドラえもんで言うスネオポジションとおぼしき
男の子。
『いじめと言うのは、どこからがいじめと呼ぶのかは難しいかもしれませんが、誰かがいじめをしているのを見た事がありますか?』
『まだありません。』
『では、仲の良い友達に、簡単に言うといじめを誘われたらどうしますか?』
『、、、断ると思います。』
『断ると、思います?』
『、、、断ります。』
『今みんなの前で言ったその言葉を忘れないでください。座ってください。』
:08/05/23 15:13 :PC :2EGMUVP.
#741 [ザセツポンジュ]
ジャイアンポジションに
のび太ポジションをいじめようと誘われたら
きっとジャイアン側についてしまうだろう。
そんな自分の性格をなんとなく把握していた福井は
なかば強制的に宣言した言葉を重く受け止めた。
『では1組の2番女子。』
『安達さきです。』
安達さん、トミー軍団の一味である。
ニヤニヤしながらマイクを自らぶんどっていた。
『さきちゃん。無視したり、はみごにしたりと言う経験はありますか?』
『あ、ありません。でもしている人なら見た事があります。』
堂々とした発言に体育館がどよめいた。
:08/05/23 15:26 :PC :2EGMUVP.
#742 [ザセツポンジュ]
『どういう風な形で始まりますか?』
『目立つか暗いかでターゲットが決まるケースが多いです。』
1年1組女子から安達さんにブーイングが起きている。
『1組女子静かにして。まだ質問が残っている。』
1組女子達はふてくされながら口を閉じた。
『さきちゃんは、それに加わった事はないと言いましたが、ではそのされている人や、している人に、何か注意とかはできましたか?』
1組女子は全員安達さんを睨みつけた。
『注意はしたけど、、、聞いてくれませんでした。』
:08/05/23 15:32 :PC :2EGMUVP.
#743 [ザセツポンジュ]
1組女子はこの発言を聞いた途端
言いたいことをガヤガヤと言い始めた。
『トミー先輩の前だからっていい顔すんなし。』
『注意とか言う前にお前もやってんじゃん。』
『お前がむしろ先陣きってはじめてるし。』
安達さんは自分が掘った墓穴を恥じて
泣き出した。
マイクを持ったまま席に座りこんだ。
生徒会役員はマイクだけはと
奪い返した。
:08/05/23 15:38 :PC :2EGMUVP.
#744 [ザセツポンジュ]
『静かに。静かに!1年1組の女子、貴重な意見をどうもありがとう。でも別に褒めているわけではない。これで、先生達も、体育館2階の皆様も、なんとなく今回この議題にした意味が分かったと思います。ただ、1組女子も他のクラスも他の学年も、考えを改めてください。している人だけが悪いのではなく、黙って見ている人も関係しています。そしてこの俺も、えらそうに言える立場ではありません。』
:08/05/23 15:43 :PC :2EGMUVP.
#745 [ザセツポンジュ]
トミーは空気の変わりつつある
体育館の温度を感じ取り、
各学年、各クラスに質問を投げかけていった。
最後、3年3組ー。
『3組女子、2番。』
『石崎、、、みさです。』
石崎さんは、エノモトさんと人気を二分するくらいの
可愛さの目立つ女の子であるが、
どこかトゲトゲしい雰囲気を持っていた。
『石崎さん。クラス内で悪質ないじめが発覚した場合、石崎さんならどうしますか?』
『どう?って言われても、、、。』
『ほっときたいですか?』
『ほっときたいワケじゃないけど、この先もいじめは続いて行くと思います。』
『いじめている人が死ねば、そこでひとつのいじめは終わりますね。それでもまだ続きますか?』
『続きますね。全国全ての学校でのいじめをいちいち終わらすことは不可能だと思います。』
『全国区の話はしていません。身近なあなたのクラスでの話しをしているんです。』
石崎さんの尖った態度に
トミーも強気に出ていた。
この最終地点までやっとこぎつけたのに
今さらひるむワケにはいかなかったのだ。
:08/05/23 15:58 :PC :2EGMUVP.
#746 [ザセツポンジュ]
『石崎さんのクラスで、いじめがあったとします。でも、3年生はあと1学期過ごせば卒業して学校もバラバラですよね。そしたらそのいじめはなかったことになると思いますか?』
『わからないんじゃないんですか?』
『石崎さんは、いじめに対してとても安易な考えと言うことでよろしいでしょうか?』
『そう思いたいならかまいません。逆に、木田くんはどうにかできるんですか?』
:08/05/23 16:03 :PC :2EGMUVP.
#747 [ザセツポンジュ]
この白熱した言葉の交換に
目をいったりきたりさせる
生徒達の心臓は高鳴っていた。
そして石崎さんの投げかけた質問の答えを
トミーにたくし、ステージを真剣に見つめた。
『俺は、人をいじめると言う趣味はない。それは誓う。それにクラスにも恵まれています。俺のクラスには多分いじめはない。でもそれは多分としか言えません。この学校は田舎で、生徒も割りと少ないほうで、いじめなんかなさそうに見えるが、この学校であるまじき行動を目撃したヤツがいる。俺はそれを聞くまで、いじめには無頓着だったから、俺も悪い。』
:08/05/23 16:15 :PC :2EGMUVP.
#748 [ザセツポンジュ]
『だけど、いじめがあるんだったら、見逃すワケにはいかないだろう。俺は、全国のいじめをなくしたいとか、そんな偽善ぶったことは言えないし、できない。自信はない。でも俺はこないだの演説で約束したんだよ。みんなは覚えてないかもしれないけど、俺は自分が言った言葉に責任を持ちたい。この学校の中だけでも、どうにかしたいと思ったから、今日この集会を開いている。』
:08/05/23 16:23 :PC :2EGMUVP.
#749 [ザセツポンジュ]
『石崎さんは、どうにかできるんですか?と質問してきたけど、もちろん俺だけでどうにかすることはできない。それが答えです。他に言いたいことはありますか?石崎さん。』
いつもなら、ダルいだけの集会で
いつもなら、人の話もロクに聞いてなくて
いつもなら、話している人の顔すら見ない生徒達だったが
全員が、右後方にマイクを向けられて立ったままの
石崎さんの顔を、石崎さんの目を見ていた。
石崎さんは自分の目では入りきれないほどの数の
全校生徒の目を見たまま答えた。
『あ、、、、ありません。』
:08/05/23 16:30 :PC :2EGMUVP.
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