クソガキジジイと少年」
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#818 [ザセツポンジュ]
鈴木家の床暖房は

とても温かい。


『きーさん寒いよう。わしゃ寂しいよう。』


すーさんはきーさんにまとわりつき
寒さを忍んでいた。

『ええい!老いぼれがベタベタ触るんじゃないよ!酔っ払い!』


昼間からする事もなく
酒を飲んだくれている老人二人。
我が孫に、家から追い出されたと言う
かわいそうなこの老人
木田シゲル62歳。

⏰:08/06/06 12:45 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#819 [ザセツポンジュ]
『きーさん、ワシはな、きーさんの事が、、、、す、、、す、、、、』


ボコン!ゴツン!

お決まりのゲンコツを食らわしたが
何度殴られても、こたえないこの老人
鈴木ひとし62歳。

『その先が何語であってもそれ以上口に出すなよ!通報するぞ!』


すーさん。
娘が設計した
老人にとって心臓やぶりの
階段を、チョボチョボ上がり
ジョウの部屋を開けた。

⏰:08/06/06 12:45 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#820 [ザセツポンジュ]
ボコン!

『い、痛い!なんだよ!ノックしてよ!』

意味不明に殴られた事よりも
ノックをしなかった我が祖父に
腹を立てていた。

『今な!きーさんが来てる。』

『分かるよ。そのたんこぶ見れば。で、何?』

『トミオちゃんが女を連れ込むからと行って追い出されたそうだ。で、もっと遠くへ行って死ねばいいのに、すぐ隣のウチへ来たんじゃよ。その辺どう思うかね?ジョウジロウ。』

すーさんは、思い出したかのように
頭をさすりだした。

『ふーん。女を連れ込む時は追い出されるのか、きーさんは。』

上を向いて思い浮かぶのは
エノシタさんのことばかり。

⏰:08/06/06 12:46 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#821 [ザセツポンジュ]
『お前な、トミオちゃんは立派なのは充分承知の上で言うが、ヤラハタ決定だぞ。お前よ、そこのお前!鈴木さんちのジョウジロウちゃん!ワシは近所の人に言われるようになるんじゃ。あ〜れ〜ヤラずにハタチを迎えたお孫さんをお持ちの鈴木さ〜ん、ごきげんよいかが〜?そう言えばこないだ、、、』

『どうでもいいけど用事は何なの?』

ホロ酔い気分のジジイにかまっていられる気分じゃないのだ。

バコン!

『ただちに、去年のお年玉を崩して、クリスマスケーキを買いに行け!ついでに壁にもたれかかった娼婦に抱かれて来い!分かったな!』

『はいはい。』

ジョウは頭をさすりながら財布を持ち
ジャケットをはおり、マフラーをまいた。

タッタッタッタッタッタ、、、。

『あいつ、、、。階段をタッタタッタおりよって。年寄りの苦労も知らずに。』

⏰:08/06/06 12:46 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#822 [ザセツポンジュ]
すーさんはまた、一段一段チョボチョボと階段を
降りるのであった。


『ジョウジロウちゃん、メリークリスマス!』

きーさんは、さも我が家かのように
堂々とリビングでくつろいでいた。

『やあ!きーさん!メリークリスマス!』

挨拶を済ませたジョウはそそくさと玄関へと向かった。

『ちょちょちょ〜ちょ〜っと待て。どこに行くんじゃ?』

ジョウはスニーカーのつま先を
トントンと2回。

『スペシャルゲストのきーさんとパーティーでもしようかと思ってちょっとケーキ屋までね。』

⏰:08/06/06 19:31 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#823 [ザセツポンジュ]
『そうか。ジョウジロウちゃん、クリスマスじゃ、おこづかいをあげよう。』

きーさんはポケットから出したお札を
ジョウに渡した。

『えええええ!1万円も!ウチのじーちゃんとは大違い!ありがとうきーさん!ケーキ何がいい?』

『モンブランとカルピスな。』

『りょ、了解なまこん!』


冷たい風が吹き、マフラーに顔をうずめた少年。
行って帰る頃には夕日も沈み出すだろう。
肌を刺す寒さもよそに、
うっすらと浮かんだケーキ屋さん。
道は定かではないが
エノシタさんの顔が思い浮かぶ。

ジョウはケーキ屋まで
小走りで向かった。

⏰:08/06/06 19:31 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#824 [ザセツポンジュ]
(エノシタさんなにしてるかな、今日。エノシタさんちサンタさん来たかな。。。なんつって。)



カランカラーン。


『ぎゃっ!うわ!!!!!!』

ケーキ屋の扉を開き、
マフラーから顔を出したジョウは
ベタにも自分のほっぺたを叩いてしまっていた。

『、、、。そんなにびっくりしないでよ。ジョウくんこんにちわ。』

かわいい手袋をした
エノシタさんが、目の前にいる。

『な、な、なななな、なにしてんの?』

『ケーキを、、、買いに来て、、、』

『そっそうだよね、ケーキ屋だもんね。バカだよねボク。頭おかしいよね。ハハ』

ジョウは並べられたケーキをガラスケース越しに覗き込んだ。
エノシタさんもすぐ隣でジョウと同じようにケーキを見ていた。

⏰:08/06/06 19:32 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#825 [ザセツポンジュ]
(近いし!近いし、エノシタさん近いし!頭とかぶつかったらどうすんのさ!)

『あたし何にしよっかな〜。ホールで買ってもな〜。ジョウくん何買うの?』

クルっとジョウの方に顔を向けたエノシタさん。
ジョウは尋常じゃない速さで目が泳いだ。

『え?え、ボクんち今トミーのじーちゃんが来てるから、とりあえずモンブランと、、、』

『トミーのおじいちゃんが来てるの?何で?』

『いや、、、そんの〜、、、居心地がいいからだと思うよ、うん。』

ジョウはさもケーキを探すふりをしたが、
緊張と興奮から、分かっているのに
お目当てのケーキを見つけられない。

『ハッハ〜ン。エノモトさんが来てるからトミーに追い出されたのね、おじいちゃ、、、』

ジョウはビシっと顔を上げて頭をフル回転させ、
オマケにものすごい早口で店員に告げた。

『モンブランひとつと、ストロベリーなんとか。あ、それです。それでチョコレートケーキと、にいちゃん、ウチのにいちゃんは何がいいだろうか?知らない。そうですか。ボクも知らないし、この店のオススメ適当に!はい、以上で。』

⏰:08/06/06 19:34 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#826 [ザセツポンジュ]
ごまかせたとでも思っているのだろうか。
ホっとした表情を浮かべたが
ふくれっ面で横に立っているエノシタさんを
ジョウは2度見してしまった。

(ふくれてる。エノシタさんたら。かわいいな。)

『あたしもストロベリーなんとかひとつください!』

かわいい手袋をはずして、
エノシタさんは、財布を取り出した。

『あれ、エノシタさん家族の分は?』

『ん?いいの、いいの。』

ちょっと寂しそうな顔をしたような気がした。

⏰:08/06/06 19:34 📱:PC 🆔:GiYNkI5c


#827 [ザセツポンジュ]
カランカランー

少しだけ、
また寒さを増した
オレンジ色の空の下を
かたや片思い中の少年と
かたや失恋したばかりの少女は歩き出していた。

『ねぇ、ジョウくん。前にさ、協力してくれてありがとう。』


ジョウは頷いた。


『うん。。。え?なにを?』

全校集会の件は
3年生には漏れていないはず。

と、ジョウは思っているのだろうが、かつてきーさんとすーさんが勝手に実行したエノシタ改造計画をこの少年は知るよしもない。


『でも、もういいの。トミーのことはあきらめたの。』

(分かってはいたけど、やっぱり好きだったんだな。)

ジョウは心にチクっと刺さる少し苦しいこの気持ちが恋をしている証拠なんだなと改めて実感した。

⏰:08/06/06 20:44 📱:W51CA 🆔:H2Pa6if.


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