クソガキジジイと少年」
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#837 [ザセツポンジュ]
『悪いねぇ、きららちゃん。クリスマスなのに。昨日から珍しく予約が入って忙しくってな。夕方にはあがっていいからね。』
『いえいえ。かまいませんよ。』
『おや?彼氏と約束があるのかい?』
六さんは、きららちゃんが手に持った小さな紙袋に目をやって微笑んだ。
『違いますよ。今日、妹が誕生日なんです。』
『そうか!きららちゃん妹がいたんだったな!じゃあ今日きららちゃんが帰るまでに、用意しておくから、帰ったらワシの料理をみんなで食べなさい!ね!』
そう言って六さんは嬉しそうに笑った。
(みんなで…食べる…か。)
きららちゃんは
六さんの嬉しそうな笑顔を踏みにじることはできないだろう。
:08/06/17 22:25 :W51CA :Rv5ry/LU
#838 [ザセツポンジュ]
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『ただいまぁ』
『おじゃましまぁす』
きーさんとすーさんは
リビングに入って来た
少年少女を二度見した後
顔を合わせ、目をかっぴらいたまんま
慌てふためいた。
『ど、ど、ど、どどど、どうもどうも!エノ…エノキ…エノキダケ!エノキダケ、ドコモダケ買って来たか!』
すーさんの目は
今だかつてない速さで
泳いでいた。
『え?エノキ岳?』
好きな子を勇気を出して家に呼んだのにも関わらず、オープニングから様子のおかしい老人2人。
鈴木ジョウジロウ14歳、クリスマスの落胆。
:08/06/18 00:01 :W51CA :vSgbzwek
#839 [ザセツポンジュ]
『はじめまして、エノシタと言います。』
エノシタさんがおじぎをしたのも束の間、
きーさんは、ジョウもまだ握った事のないエノシタさんの手を握り
コタツへ案内した。
『はじめまして、エノシタさん。ワシの名前はシゲルです。62歳です。どうぞ、この辺に座って。』
すーさんは慌てて
エノシタさんのために
梅昆布茶を入れてあげようと、不思議な歩き方で台所へ移動。
おもむろに手に取るグラス。
『ちょ、ちょっと!きーさん!目が怖いよ!手も震えてるし!わっ!じーちゃん!じーちゃん、何やってんの!それ洗剤!食器洗うものでしょ!飲めないし!なんで挙動不審なんだよ!なんなの!!?2人してさ!』
:08/06/18 00:13 :W51CA :vSgbzwek
#840 [ザセツポンジュ]
ジョウは粉を入れて
ポットの湯を入れれば
すぐさま完成する梅昆布茶を、少し水でぬるめて
すーさんに飲ませた。
『ジョウジロウちゃん、いや、落ち着け。まぁ、そうアセるな。サンタさんが来なかったからって非行に走るなよ!エ!エ…エノシタさん!ケーキ食べようね〜、ね〜エノシタさん、ね〜。』
理不尽な理屈を並べているのはシゲル。木田シゲル62歳。
孫から注がれた
梅昆布茶と言う活動源で、少しだけ落ち着きを取り戻した、鈴木ヒトシ62歳。
この2人の老人、
『なに?殺人でも犯したの?ついに。』
と、少年に侮辱されてもなんらおかしくない行動をとっている。
:08/06/18 00:22 :W51CA :vSgbzwek
#841 [ザセツポンジュ]
こんな奇妙な家の中にいるのに、エノシタさんは、なんだか楽しそうに笑っていた。
きーさんは
自分の理不尽さは
棚に上げ、キッチンからジョウを追い払った。
首をかしげながら
コタツに入ったジョウは
何気なく座っている自分にハッとした。
エノシタさんの隣。
(あ…足とかあたったら…どうしよう…)
『エ…エノシタさん、なんかオープニングからこんな感じでごめんね。じーちゃん達いつもあんな調子でさ。』
申し訳なさそうな顔のジョウとは打って変わって、建て前ナシの笑顔で首を横に振るエノシタさん。
『いいなぁ。にぎやかで。面白いのね、おじいちゃん達。』
キッチンでなにやら
男の作戦会議を開始している老人2人を、エノシタさんは微笑ましく眺めていた。
:08/06/18 00:31 :W51CA :vSgbzwek
#842 [ザセツポンジュ]
:08/06/18 00:33 :W51CA :vSgbzwek
#843 [ザセツポンジュ]
(エノシタさん、いつもひとりなのかな…)
ジョウは、エノシタさんを見つめながら、少し寂しい気持ちになった。
『すーさん、すーさん、大丈夫。大丈夫。バレてない、バレてないよ。かえってこんな態度の方が怪しいじゃろ!平然とするんじゃ。何事も無かったかの様に!』
『そ、そうじゃな。もう、随分前の話よ。』
完全に殺人を犯してしまった2人組の会話である。
『はいは〜い。みなさ〜ん。今宵クリスマス、未成年飲酒でもしてね、今日は盛り上がりましょうね〜』
きーさんは不自然なほどの笑顔で、しきり直そうとコタツへ潜入してきた。
:08/06/18 00:44 :W51CA :vSgbzwek
#844 [ザセツポンジュ]
『ジョウジロウ!お前、ポケっとしてないで、ワシに、もう一回梅昆布茶を入れて来い!きーさんにはカウパーカルピス!エノシタさんは?何飲むんじゃ?』
きーさんに続いて、コタツに腰を下ろしたすーさん。
『カウパーカルピスって新しいの?』
エノシタさんの質問に、すーさんは、気を良くした。
『最新のカルピスだが、絶対に外部には漏らさないこと。』
きーさんのフォローにもジョウは呆れ返って、みんなの分のジュースを用意しに、キッチンへ移動した。
:08/06/18 00:52 :W51CA :vSgbzwek
#845 [ザセツポンジュ]
(台っっっっ無しだよ。エノシタさん、もう遊んでくれないよ…)
『はい、梅昆布茶!きーさんの最新のカルピス!エノシタさんの100%オレンジジュース!』
(そしてボクも…エノシタさんと同じオレンジジュース…うぅ…)
すーさんは梅昆布茶を
ふぅふぅと冷ましていたが突然ある事に気づいた。
『あっ!おい!ジョウジロウ!シンイチロウも呼んで来い!いいか!?今日はあの屋根裏から何が何でも引きずり出せ!』
ジョウはオレンジジュースをゴクリと飲み、ため息をついた。
『も〜。コキばっかり使わないでよね!』
:08/06/18 01:02 :W51CA :vSgbzwek
#846 [ザセツポンジュ]
ジョウは膨れっ面で階段を上がり、2階の上のそのまた上の、屋根裏部屋のドアを叩いた。
コンコンコン。
『に〜ちゃん!……に、にぃいちゃん!』
ジョウは少し待って、
耳を澄まし、ドアノブに手をかけた。
ガチャー。
相変わらずゴチャゴチャしている部屋。
画材に雑誌に、本にソフト。付けっぱなしのパソコンに…
『…あれ?にーちゃん、いないや。』
:08/06/18 01:09 :W51CA :vSgbzwek
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