クソガキジジイと少年」
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#795 [ザセツポンジュ]
『腹立つなぁ、きーさん。ズルいぞそんなちまちましやがって。』


こちらは木田家。
きーさんの部屋で
老人2人は
将棋のコマで
“コマ崩し大会”を
開催していた。


『すーさん。ほれ、早く。コマをうそつき空ちゃんだと思って。』


『ウヒャヒャ。空ちゃんは可愛い子よの〜。デヘヘ、むぅ…どこにするかのう。う〜ん……ん?』


ガシャグシャ。


すーさんは突然
コマの山をぐしゃぐしゃに崩した。


『おい!お前今うそつき空ちゃんと言ったな!言った!絶対に言ったんじゃ!ワシは昨日確実に耳クソを取った!だから聞こえたことは間違いじゃない!クゥオンノ〜!!!』

すーさんは地道に
ひとつずつコマを
投げて
きーさんに当てつけた。

⏰:08/06/03 19:08 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#796 [ザセツポンジュ]
『…飛車…ん?…歩兵…歩兵…これはと…歩兵…角行…桂馬…すーさん、すーさん。こんなんじゃ効かんぞ。もっと強い奴を投げつけて来い。』

すーさんは憎しみを込めて
最後にひとコマ投げつけた。

パシン!


『ん?…金…。フハハ。“金”?金たま鈴木。』



すーさんは怒り狂ってきーさんを殴ったが、年のせいか
なぜ、一体なぜ怒り狂っているのかは忘れてしまっていた。



バタバタバタバタ


ガチャ。


『じーちゃんただいま!』

『きーさん、おじゃまします!』

⏰:08/06/03 19:30 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#797 [ザセツポンジュ]
少年達2人のご帰宅だ。
『おや!ジョウジロウちゃん!よく来たねぇいらっしゃい。』

バタン。

2人はストリートファイターのために
挨拶もそこそこ
トミーの部屋へと急いだ。
そこですーさんの怒りは
さらにヒートアップした。

『おい、見たか!きーさん!ワシに挨拶もナシじゃ!ジョウジロウのやつめ!ワシにおじゃましますくらい言え!』


『すーさん、ここはワシの家だ。それにジョウジロウちゃんはあんたの孫だよ。』


『いや!もうそんなこたぁどうでもいい!トミオちゃんですらワシに声もかけん!いかん!いかんです!』

『町内みなすーさんと話せば性病になると思っとるんじゃよ。』

きーさんは
将棋のコマを一個一個拾った。

⏰:08/06/03 19:35 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#798 [ザセツポンジュ]
『はぁ!!!?なんたる不謹慎!きーさん!トミオちゃんの部屋へ突入じゃ!』


バタン。
すーさんは足の裏に
将棋のコマを
2つ3つ踏んづけたまま
トミーの部屋へ移動した。

きーさんは
片付けもそこそこに
好き勝手やられちゃ
困ると、あとを追いかけた。

⏰:08/06/03 19:39 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#799 [ザセツポンジュ]
『ヤァ!ヤァヤァヤァヤァヤァ!ヤヤヤヤヤ!』


『もうトミーったら、チュンリー使ったらひゃくれつキックしかやらないんだもんな!うぅ…』


『ヤヤヤヤヤ!ヤァヤァ』


『いちいち声に出さなくてもいいよ、トミー』


『ヤァヤァヤァヤァヤァ!』


ガチャ!


『ヤァ……ヤァヤァヤァヤァヤァ!!』

トミーは
部屋に入って来たすーさんを2度見して、プレイを続けた。

ジョウは見向きもしなかった。

『ヤァ!じゃないわ、クソガキどもめ!』

すーさんは足の裏に
貼りついた将棋のコマを
2人に思いくそ投げつけてテレビを消した。

『いて!』

『いてて!じーちゃん何してんの?付けてよテレビ!』

⏰:08/06/03 19:46 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#800 [ザセツポンジュ]
すーさんは少年達から
コントローラーを取り上げた。


『まずは、ジョウジロウ。きさま、ワシに挨拶もなしにインベーダーゲームか!』

ジョウジロウの胸ぐらをつかみ鼻息を荒くさせた老人。

『違うよ、ストリートファイターだよ。ボクはエドモンド本田。トミーはチュンリー…』


『パキスタン塩田でもトミーフェブラリーでもどっちゃでもいいわい!』


ゴツン。


『うぅ…。やりやがったな木田シゲル…』


理不尽なすーさんは
きーさんからゲンコツをくらった。

きーさんのゲンコツは
痛いのだ。

⏰:08/06/03 20:33 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#801 [ザセツポンジュ]
『そんなことより、トミオもジョウジロウちゃんも最近帰りが遅いじゃないか。部活か?』

きーさんの問いかけに
2人とも首を横に振った。

『女か?』

再び首を横に振った。


ゲンコツのダメージから、なんとか起き上がったすーさんは
きーさんにもたれかかった。

『ジョウジロウが女なワケないじゃろ。どうせ古本屋でエロ本の立ち読みでもしとるんじゃよ?このいかれぽんち!変態!』

弱ったすーさんを
平気な顔で再びどつき

きーさんは2人の顔を見た。


『おや?隠しごとかい?』

少年2人は顔を見合わせて笑って首を横に振った。

⏰:08/06/03 20:39 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#802 [ザセツポンジュ]
『会議だよ。今度学校の参観日に集会があるんだ。それの話し合い。』

そう言ってトミーは
テレビを付けて
ゲームをセットした。

『ほお!ジョウジロウちゃんもその話し合いか!変態ではないんだな!』

ジョウはうなずき
トミーの横に座って
ツーコンを握った。


『きーさん、見に行こう!まだギリギリきれいなお母さんも何人かはいるだろう!』

『それはどうでもいいが、孫の晴れ舞台に家でワイドショーを見ているわけにはいかんからな!』


トミーとジョウは
いったんゲームを止め

くるっと振り返り
お互い、我が祖父を見つめ、声を揃えて言った。


『絶対に来ないでね。』

⏰:08/06/03 20:47 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#803 [ザセツポンジュ]
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(あぁ、とんでもないことをボクはしているんじゃないだろうか…今さら逃げられない…)



『。。。。』


校長は黙ったまま
次第に少し焦りだしていた。

トミーは
校長の焦りを見逃さなかった。


『では、これを見てくれたら校長も何か分かると思います。ジョウジロウちゃん!!アレ持って来て!』


(き…来た…。)



トミーの少し大きな声に生徒達も2階の父兄達にも緊張感が漂った。

⏰:08/06/03 20:52 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


#804 [ザセツポンジュ]
ジョウは
丸まった紙を抱えて
立ち上がった。


そして
近くにいる
エノシタさんを見た。

心臓もバクバク鳴る中
暗いステージ裏で
エノシタさんは
ジョウの肩にふれた。


『いってらっしゃい。』

こくん。と頷いた
14歳の少年。


ジョウの
心臓の高鳴りを
エノシタさんと
半分こできたなら。



(ボクはエノシタさんのことが好きなんだよ。とても好きなんだよ。)

⏰:08/06/03 21:01 📱:W51CA 🆔:zIUGw8LY


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