きらきら
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#940 [○○&◆.x/9qDRof2]
しんでからきづく、大切なひと


 僅かな音すらない静けさの中、ゆっくりと意識が戻ってくる。ふわふわと宙に浮いているような奇妙な感覚に包まれて、私は目を覚ました。

⏰:22/10/20 09:00 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#941 [○○&◆.x/9qDRof2]
たった今、生まれ落ちたばかりのように頭がうまく働かず、無心でぼーっと天井を見つめる。天井とはこんなに低かっただろうか。ちょっと手を伸ばせば触れてしまいそうなほどに近く感じる。

⏰:22/10/20 09:01 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#942 [○○&◆.x/9qDRof2]
いや、実際近いのではないか?と考えが頭を過ぎったりもしたが、正直どうでもよく感じ、あっさりと思考を停止させた。

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#943 [○○&◆.x/9qDRof2]
そんなことを考えながら天井を見つめていると、次第に世界に音が戻ってきた。何の音だろう。聞き覚えのある一定のリズムが耳に届く。ぽくぽくぽく。

⏰:22/10/20 09:01 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#944 [○○&◆.x/9qDRof2]
嗚呼、これは確か。木魚(もくぎょ)の音か。そういえば、さっきからお経のような声も聞こえるし、これは夢だろうか。そうでないとするなら、私は葬式中に寝ていることになる。頭が少しずつ機能してきた時、聞き覚えのある母の啜り泣く声が聞こえてきた。

⏰:22/10/20 09:01 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#945 [○○&◆.x/9qDRof2]
.......お母さん?

「うっ、うぅっ.......」
「良枝、」

 母の泣き声に次いで、父のなだめるような声が母の名前を呼んだ。お母さん?どうして泣いてるの?お父さん?何があったの?私の声は喉から出てくることはなく、心の中で虚しく響いて消えた。

⏰:22/10/20 09:01 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#946 [○○&◆.x/9qDRof2]
声が、出ない。身体も動かない。母と、その他のいくつかの泣き声とお経だけが耳に届く。

「千恵、」

母が私を呼んでいる。どうしたの?お母さん。

⏰:22/10/20 09:02 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#947 [○○&◆.x/9qDRof2]
答えは返ってこなかった。私の意識は一気に覚醒してきた。先程からずっと続いている奇妙な感覚。身体を取り巻く違和感に、生きた心地がしなかった。言うならば、呼吸しないで生きているような感覚。

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#948 [○○&◆.x/9qDRof2]
息苦しい。体は質量を失い、ふわふわとしながらも心臓だけがずっしりと重い。経験したことのない感覚。お母さん。これは夢だよね?現実味がありすぎて、頭が困惑してしまった。夢には思えない、でも夢だと信じたい。私は怖くなった。

⏰:22/10/20 09:02 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#949 [○○&◆.x/9qDRof2]
早く覚めろ早く覚めろ。声が出ない、何故?


早く、早く!
これは夢だ!
身体もっ!

動いて、動いてっ、

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#950 [○○&◆.x/9qDRof2]
動いて!!


「千恵…どうして死んでしまったの?」

 母の声と共に、私の体は下から弾かれたような強い衝撃を受けた。驚く間もなく、気付いたら動けるようになっていた。あの感覚は消えないものの、いつもと何ら変わりない目覚め。

⏰:22/10/20 09:02 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#951 [○○&◆.x/9qDRof2]
ただ違うのは、目の前に広がる光景だった。目に映ったのは、綺麗に正座しながら泣く、全身真っ黒の知り合いたち。友達から親戚まで、どうやら外にもまだいるようだ。壁には白と黒の幕が垂れ下がり、目の前にはお坊さんがお経を読んでいる。

⏰:22/10/20 09:03 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#952 [○○&◆.x/9qDRof2]
.......ほらね、やっぱり夢だった。現実的すぎるけど、これは夢だ。夢じゃないなら何なのか、教えて欲しいくらいだ。辺りを見渡せば、暗い雰囲気は葬式そのものだった。ちらりと振り向けば自分の遺影が目に入る。

⏰:22/10/20 09:03 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#953 [○○&◆.x/9qDRof2]
一ヶ月前に家族で遊園地に行った時のものだ。写真の中の私は恥ずかしそうにしながらも笑顔を作っている。あぁ、もう。せめて使うならこの写真じゃなくて生徒手帳とかの写真を使って欲しかった。

⏰:22/10/20 09:03 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#954 [○○&◆.x/9qDRof2]
カメラに向けて笑うのが苦手な私は、小さい頃から写真が嫌いだった。自分の照れ臭そうに笑う写真を葬式に使うとは、恐らく父の考えだろう。目が覚めたら「葬式には無表情の写真を使ってくれ」と頼もうと決めた。

⏰:22/10/20 09:03 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#955 [○○&◆.x/9qDRof2]
ふとそんな考えを巡らせていた時、何気なく目をやった私の友達の列の中で、一人の人物に目が止まった。友達の列の最後尾にいる男。見覚えのあるなんてものじゃない。

名前は、西山 孝。

⏰:22/10/20 09:03 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#956 [○○&◆.x/9qDRof2]
同じクラスで私の大嫌いな男で、私のことが大嫌いな男だ。保育園から一緒の幼なじみではあるし、周りからは悪友と言われることもあった。だけど孝の悪ふざけは私からしたら嫌なものでしかない。

⏰:22/10/20 09:04 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#957 [○○&◆.x/9qDRof2]
昔から何かしら頻繁に茶々を入れ、しつこくからかってくる行為の数々には悪意を感じずにはいられなかった。基本無視をする私を見て仲の悪さを悟ってか、最近では悪友呼ばわりも減ってきた。とにかく大嫌いなのだ。

⏰:22/10/20 09:04 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#958 [○○&◆.x/9qDRof2]
それは向こうも認めていた。それなのに、今の孝の表情は何なのか。流石に泣いてはいないものの、すっかり気の抜けた顔をしている。大して興味はないが、孝のそんな表情を見るのはなかなか面白かった。

⏰:22/10/20 09:04 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#959 [○○&◆.x/9qDRof2]
たまにはこんな夢も悪くはないな、と私は心の中で微笑んだ。しばらくして、私は焦りを覚えた。これは現実だ。突然そんなことを思い始めていた。こんな夢は有り得ない。場面は一向に変わる気配はないし、何よりリアルすぎる。

⏰:22/10/20 09:04 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#960 [○○&◆.x/9qDRof2]
では、私が座布団代わりにしているこの棺桶の中に眠る、私そっくりな人物は誰だ。そっくりというか、見る限りでは毎朝鏡で見る私自身だ。じゃあ、やはり夢だろう。私はここにいるし、誰も私に反応しない。

⏰:22/10/20 09:04 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#961 [○○&◆.x/9qDRof2]
これが現実であるはずがない。だが、ただ一つだけ、私の脳裏に現実的な答えが巡った。もしかして.......


「私…死んだ?」


私の言葉に誰も反応しなかった。私の前で、お坊さんの唱えるありがたいお経は終わりを告げた。

⏰:22/10/20 09:05 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#962 [○○&◆.x/9qDRof2]
家族がお礼をしている姿が映ったが、私はそれどころではなかった。受け入れがたい仮説に、どうしていいかわからなかった。その後、わかったことが二つあった。

⏰:22/10/20 09:05 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#963 [○○&◆.x/9qDRof2]
一つは、やはりこれは夢じゃないこと。もう一つは私は間違いなく死んでいること。最高に現実的な悪夢を見ている訳でないなら、私の姿や声に誰か反応するはずだし、体が浮くことも、人や物を体が突き抜けることもないはずだ。私は目の前で起きている事実を痛感せずにはいられなかった。ドアノブを握ろうとした私の手が、無抵抗に空を掴んだ。

⏰:22/10/20 09:05 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#964 [○○&◆.x/9qDRof2]
私は小さく溜め息を漏らした。確かにここに存在するのに、触れられない。すでに時計は午後十一時を指していた。ドアという一枚の壁をものともせず、身体は向こう側へと通り抜ける。リビングは、電気も付けていない薄暗さの中、母が静かに泣いていた。

⏰:22/10/20 09:05 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#965 [○○&◆.x/9qDRof2]
譫言のように私の名前を呼ぶ母の姿は痛々しく、胸が締め付けられた。涙が出ない。死人には涙は必要ない、ということか。涙が出ない自分への悔しさと母への申し訳なさが拳を強く握った。

「お母さん.......」

やはり返事はない。私は落胆するように肩を落とした。自分だけ隔離された世界にいるように感じた。

⏰:22/10/20 09:05 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#966 [○○&◆.x/9qDRof2]
「私はここにいるよ、」

母の横に立ってみたが反応は得られなかった。

「お母さん。ごめんね、ごめんねっ…!」

通り抜けないように母を抱きしめる形になるよう身体を合わせた。謝罪の言葉を漏らした途端、その僅かな心の亀裂から溢れ出してきた想いが、波のように押し寄せてきた。

⏰:22/10/20 09:06 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#967 [○○&◆.x/9qDRof2]
「今まで育ててくれたのに、先に死んでごめん。たくさん愛情を注いでくれたのに、返せなくてごめんっ。親孝行しなきゃいけないのに、最後に悲しませてごめん.......もう一緒の世界に居れなくてごめんっ!」

⏰:22/10/20 09:06 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#968 [○○&◆.x/9qDRof2]
唇を強く噛んで沸き上がる気持ちを抑える。痛みはないが、胸の奥はいつまでもキリキリと痛んだ。母は突然泣き止んで私の身体を突き抜けて立ち上がると、私の抜け殻がある部屋に入って行った。私には、後を追う勇気がなかった。あれ以上、大好きだった母の哀しむ姿を見るのは堪えられなかったのだ。私は、朝までソファに座っていた。

⏰:22/10/20 09:06 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#969 [○○&◆.x/9qDRof2]
私はようやく完全に現実を受け入れた。自分でも不思議なほど冷静だが、やはり動揺は隠せない。私はまだ十八歳の高校生だし、やり残したことの方が多い。大学受験も残っている。とにかく未練は数え切れない。時間の経過と共に気分は滅入っていく。

⏰:22/10/20 09:06 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#970 [○○&◆.x/9qDRof2]
現実から逃げ出したくなり、どれだけ夢ならいいと願ったか。それでも朝はやってきた。寒さも暑さも感じない朝は、叶わない願いを薄めていった。昨晩から母は私の肉体がある部屋から出て来なかった。

⏰:22/10/20 09:07 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


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