きらきら
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#965 [○○&◆.x/9qDRof2]
譫言のように私の名前を呼ぶ母の姿は痛々しく、胸が締め付けられた。涙が出ない。死人には涙は必要ない、ということか。涙が出ない自分への悔しさと母への申し訳なさが拳を強く握った。

「お母さん.......」

やはり返事はない。私は落胆するように肩を落とした。自分だけ隔離された世界にいるように感じた。

⏰:22/10/20 09:05 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#966 [○○&◆.x/9qDRof2]
「私はここにいるよ、」

母の横に立ってみたが反応は得られなかった。

「お母さん。ごめんね、ごめんねっ…!」

通り抜けないように母を抱きしめる形になるよう身体を合わせた。謝罪の言葉を漏らした途端、その僅かな心の亀裂から溢れ出してきた想いが、波のように押し寄せてきた。

⏰:22/10/20 09:06 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#967 [○○&◆.x/9qDRof2]
「今まで育ててくれたのに、先に死んでごめん。たくさん愛情を注いでくれたのに、返せなくてごめんっ。親孝行しなきゃいけないのに、最後に悲しませてごめん.......もう一緒の世界に居れなくてごめんっ!」

⏰:22/10/20 09:06 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#968 [○○&◆.x/9qDRof2]
唇を強く噛んで沸き上がる気持ちを抑える。痛みはないが、胸の奥はいつまでもキリキリと痛んだ。母は突然泣き止んで私の身体を突き抜けて立ち上がると、私の抜け殻がある部屋に入って行った。私には、後を追う勇気がなかった。あれ以上、大好きだった母の哀しむ姿を見るのは堪えられなかったのだ。私は、朝までソファに座っていた。

⏰:22/10/20 09:06 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#969 [○○&◆.x/9qDRof2]
私はようやく完全に現実を受け入れた。自分でも不思議なほど冷静だが、やはり動揺は隠せない。私はまだ十八歳の高校生だし、やり残したことの方が多い。大学受験も残っている。とにかく未練は数え切れない。時間の経過と共に気分は滅入っていく。

⏰:22/10/20 09:06 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#970 [○○&◆.x/9qDRof2]
現実から逃げ出したくなり、どれだけ夢ならいいと願ったか。それでも朝はやってきた。寒さも暑さも感じない朝は、叶わない願いを薄めていった。昨晩から母は私の肉体がある部屋から出て来なかった。

⏰:22/10/20 09:07 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#971 [○○&◆.x/9qDRof2]
家族の姿を見たくない私は、昨日の孝を思い出して興味本意で学校に行くことにした。朝の清々しさなど感じずに私は家を出た。いつもと違わぬ朝。違うのは私が死者だということ。私は学校までゆっくりと歩きだして行った。

⏰:22/10/20 09:07 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#972 [○○&◆.x/9qDRof2]
その道すがらで、自分の死について考えてみた。そこで初めて、死の瞬間をよく覚えてないことに気付いた。それどころか、今までの記憶が曖昧になっていることを自覚する。確かに覚えているはずなのに、小さい頃の記憶はおろか、嬉しかったことや悲しかったことなど、感情的な記憶しかない。

⏰:22/10/20 09:07 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#973 [○○&◆.x/9qDRof2]
最近のことすらわからない。今更ながらやはり夢じゃないかと疑いそうになった。制服を着ていることから、死んだ時も制服を着ていたのではないかと考えた。だとしたら、登下校か学校に滞在している間に事故か事件に巻き込まれたのだろうか。

⏰:22/10/20 09:07 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


#974 [○○&◆.x/9qDRof2]
いくら推理しても答えは出なかった。結局思い出すこともなく、学校に到着してしまった。知っている人や知らない人、誰もが私に気付かなかった。中には私の身体を素通りする人もいた。人間の習性だろうか。

⏰:22/10/20 09:07 📱:Android 🆔:nvDpRiyU


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