からっぽの心
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#392 [みぃ]

そんなことを考えているうちにダイヤ表に記された時間になったみたいで、
あたしの前にバスはゆっくりと停まる。


バスに乗ってしばらくすると、
灰色で埋めつくされていた窓の外の景色に
少しずつ緑が顔を出し始め、

あっという間にコンクリートの冷たい色は見えなくなった。

⏰:07/12/23 23:34 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#393 [みぃ]

春休みの週末だというのに、
バスの中はあたしの他に二、三人しか乗っていない。


バスの本数と合わせて考えても、
需要が少ないことに納得した。


他の人の傘を見る限り、
この雨は天気予報でも知らされていたのだろう。

雨の被害に遭ったのはあたしだけのようだ。

⏰:07/12/23 23:38 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#394 [みぃ]

湿気で髪が濡れてしまうことは分かっていたけど、
ひんやりとしたガラスが気持ち良くて、
バスの窓にもたれかかって目を閉じた。


雨がガラスに当たる音と車内の揺れが心地良くて、
自然に眠りにおちる。


どれぐらいこうしていたのだろう。

車内に流れるアナウンスの声で浅い眠りから呼び戻された。

⏰:07/12/23 23:43 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#395 [みぃ]


運賃を払い、
運転手さんにお礼を行ってバスを降りると、
雨はすっかり上がり、
水たまりだけが残っていた。



【吉野霊園】



そう記された石柱の横を通りすぎ、
桶に水を汲んで、
再び歩きだす。

⏰:08/01/01 02:49 📱:SH903i 🆔:FHVRgNWE


#396 [みぃ]

ここに来るのは一年ぶり。


去年の3月27日に来て、
今年で2回目になる。


頭の中の記憶を頼りに進んで行き、
目的の墓石に辿り着いた時、
墓石の前にしゃがみ込んでいる人影が目に入った。


『卒業、おめでとう。』

⏰:08/01/01 02:53 📱:SH903i 🆔:FHVRgNWE


#397 [みぃ]

あたしの声でその人物は振り返り、
顔を上げた。


「夢芽ちゃん。」


声の主は、
卒業式ぶりに会う大志くん。


『大志くん、早いね。
 いつ来たの?』

「ん?
 さっきだよ。
 今来たとこ。」

⏰:08/01/01 03:06 📱:SH903i 🆔:FHVRgNWE


#398 [みぃ]

そう言って笑い、
また墓石と向き合う。






そう。


今日はお姉ちゃんの命日。



お姉ちゃんがいなくなって丸2年が経った。

⏰:08/01/01 03:09 📱:SH903i 🆔:FHVRgNWE


#399 [みぃ]

毎年、この季節は心の傷が疼く。


胸を締め付ける痛みの重さに、
まだ思い出にするには早い年月なのだということを改めて知る。





用意した献花を供え、
墓石に水をかける。


雨で濡れた墓石は色に変化がなく、
水をかけた実感がなかった。

⏰:08/01/01 03:16 📱:SH903i 🆔:FHVRgNWE


#400 [みぃ]

『お墓、きれいにしとあるよね。』


雑草の生い茂っている周りの墓石に比べ、
お姉ちゃんのお墓は去年もきちんと手入れしてあった。


「おばさん、よく来てんだよ、きっと。」



お姉ちゃんが死んでしばらくした後、
施設に一本の電話が入った。

お姉ちゃんの実の母親からだった。

⏰:08/01/10 21:47 📱:SH903i 🆔:g9BX27JI


#401 [みぃ]

お姉ちゃんは3歳の時、
うちの施設に預けられた。


うちの施設に預けられている子は、
みんな何らかの事情があって預けられているのだけど、




お姉ちゃんの場合は、
【虐待】
だった。

⏰:08/01/10 21:55 📱:SH903i 🆔:g9BX27JI


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