きみを送るA
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#200 []
コウは窓に目を向けながら頭をかかえた。

「僕は…………」

「コウ?どしたん?」

俺はコウの目線を追い、窓の外を見た。

「……?」

何も見えない。が、
コウは明らかに何かを見ている。

「許して下さい……」

⏰:07/05/08 02:35 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#201 []
「おい!どないしたん!」

俺はコウのそばへ寄り、
コウの肩を掴んだ。

「許して下さい…あなたを助けなかった僕を…」

コウは泣きながら
窓の外を見て震えている。

「…外に……弟がおるんか?」

俺の問いに、コウはコクリと頷いた。

⏰:07/05/08 02:38 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#202 []
「俺には見えんけど…」

「見えないはずです」

「なんで?」

「…彼は僕に…僕にしか見えないんです」

「だからなんで」

「彼は…僕を憎んでいるからです」

⏰:07/05/08 02:40 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#203 []
 
憎んでいる…?

だからコウにしか見えないだと…?

《バタンッ》

「!?」

でかい音が聞こえ、
俺は音の方に目を向けた

「コウ!?おいコウ!」

目線の先には倒れているコウがいた。

⏰:07/05/08 02:44 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#204 []
 

「…………僕……」

「ああ、目さめたか?」

しばらくたったあと、コウは目をさました。

「僕は?」

「急に倒れたんやで」

「…そうですか…すみませんでした」

⏰:07/05/08 02:55 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#205 []
コウは俯き、フゥーっとため息をついたあと、
俺の顔を見上げた。

「志乃くん、僕を助けてくれますか?」

「…………え?」

「僕は今まで、誰かを信頼したり、誰かを頼ったりする事ができませんでした」

……まぁ、今までのコウを見てたらだいたいわかってたけど

「ですが志乃くん、あなたは僕を助けてくれますか」

⏰:07/05/08 02:59 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#206 []
「……………」

「志乃くん…」

「…当たり前やろ…友達やん!」

俺は顔がカァーっと赤くなった。

コウは驚いた表情で俺を見つめた。

「………………」

「…そうですね僕たち…友達…ですね…」

⏰:07/05/08 03:01 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#207 []
心なしか、コウも少し嬉しそうな顔をした。

「…おう、友達や」

俺はコウに向かい、照れながらもニコッと笑った。

「…初めて友達ができました」

コウもニッコリと笑い、
俺を見つめた。

「では聞いて下さい」

⏰:07/05/08 03:04 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#208 []
長いので略します。

語り手。おなじみ柏木志乃

コウが神谷家に引き取られたのはコウが5歳の時だった。
その時、神谷家には【旬】という名の5歳の子供がいた。
コウを引き取った
つまりコウの義父、尚人、義母、正子は
旬の遊び相手を探し、コウを養子にしたという。

⏰:07/05/08 03:08 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#209 []
「のちのちわかった事ですが、義父母は知的障害の弟のかわりの後継ぎを探していたみたいですけどね」

コウが養子になり、神谷家に入った時
旬はとても喜んだらしい。コウをお兄ちゃん、と呼び本当の兄のように慕って、常にコウにつきまとっていた。
コウも旬を実の弟のようにかわいがっていた。

⏰:07/05/08 03:11 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#210 []
コウの義父母も
それをにこやかに見ていた…最初の頃は。

そのうち、義父母は気付いてしまった。

コウの
ずば抜けた頭の良さに。

それはコウと旬を
幼稚園に迎えに行った時だった。

《コウくん、小学三年生の数学を簡単に解いたんですよ》

その保育士の一言だった。

⏰:07/05/08 03:16 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#211 []
義母は、その言葉を
義父に伝えた。
その日の夜、

《コウ、この問題を解いてみろ》

義父は小学四年生の問題集をコウに渡した。

コウは不思議に思いつつもすらすらと問題を解いてしまった。

《これは驚いた。コウは天才だ》

義父はその日から
コウの見る目を変えた。

そう、人間ではなく
人形として――

⏰:07/05/08 03:18 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#212 []
「その頃から、僕は義父母にとっての人形だと気付きました。だから僕は感情を表に出せなくなった…」

「なんで気付いた?」

コウはフッと笑い、
ティーシャツの上から脇腹をさすった。

「出来ない問題があれば、暴行を受けましたから。小学五年生の問題を。僕が5歳なのにですよ?おかしな話でしょう?」

⏰:07/05/08 03:23 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#213 []
「お前は出来ないのか、お前はなぜこんな問題も出来ないのか、と。出来ない問題があれば毎日のように暴行を受けました。僕、5歳だよ?などと口応えすると暴行は更にひどくなりました。僕が感情を抑えるのは当然でしょう」

「…ひでぇ……」

「それでも、僕は耐えなければいけなかった。僕には行く場所など他にはなかったんですから」

⏰:07/05/08 03:28 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#214 []
コウが毎日毎日
自分の年齢よりはるかに上の勉強をしている中、
その事件は起きた。

「僕が小学校三年生の時でした」

夏休みになり、
義父母が伊豆の別荘に行こう、と言い出した。

「…あの別荘か?」

「はい、そうです」

⏰:07/05/08 03:31 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#215 []
「庭にプールがあったのを、ご存知ですよね」

妖怪に会った事やし
忘れられません。

「僕と旬は二人でプールで遊んでいました」

その日は珍しく、
義父母はコウに何も言わなかったらしい。

思いっきり遊べ、としか。

⏰:07/05/08 03:33 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#216 [ミルキー]
>>183-250

⏰:07/05/08 21:01 📱:N701i 🆔:WSokkI.s


#217 []
「僕達二人は、義父母から少し離れた場所で遊んでいました。義父母は、僕がついているから安心だ、と僕達を置いて家の中に入っていきました」

その時、僕は弟の本心を聞いてしまいました。と、コウは言った。

「彼は何て言ったと思いますか」

⏰:07/05/09 01:52 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#218 []
「…なんて言ったん?」

コウは目線を下に向け、
フッと笑った。

「お兄ちゃんは馬鹿だね、と言ったんです」

「……………え?」

「この言葉の意味、わかりますか」

「…………いや……」

「弟は、僕や…義父母が考えている以上に頭が良かったんです。おそらく僕以上に」

⏰:07/05/09 01:54 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#219 []
「…………知的障害ちゃうん…?」

俺の言葉に、
コウは顔をあげニッコリ微笑んだ。

「そのフリをしていたんです。知的障害のフリを」

「……………」

「なぜだか、もうわかりますよね」

「………まさか…」

「ええ、志乃くんの思っている通りです」

⏰:07/05/09 01:57 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#220 []
コウの義弟は
ずっと知的障害のフリをしていた。

理由は

「頭が良いとわかれば、自分も僕と同じ目に合うと、彼はわかっていたんです」

「でも…コウが養子にくる前から、知的障害やったんちゃうん?」

「ええ…僕の来る前から、彼はそのフリをしていました。彼は義父の血を引いている。おかしくはないでしょう?あんな体質になっても」

⏰:07/05/09 02:04 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#221 []
「あんな体質…って?」

「志乃くん、子供は母胎にいる頃から外の音が聞こえるという話、聞いた事ありませんか?」

「………さぁ…ある…かな……いや、ないかな…」

「弟は母胎にいる頃から、外の音を聞いていた。つまり義母のお腹にいた時から、義父の性格を知っていたという事になります」

⏰:07/05/09 02:06 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#222 []
「……………」

「まぁ、頭の悪い志乃くんには縁のない話ですが」

やかましい

「特殊能力、ですね。弟は特殊能力を持っていました。だから知的障害のフリをしていた。義父の暴行、異常なまでの完璧主義ぶりを…弟はわからないフリをしながらも影では笑っていた。頭良いですよね」

⏰:07/05/09 02:10 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#223 []
「しかし…」

コウはそれまでニッコリしていた顔を止めた。

眉間にしわを寄せている。

「……………」

俺のゴクリと緊張を飲み込む音だけが鳴り響く。

「その頭の良さ…完璧なほどの演技力が、弟を残酷な道に踏み込ませたんです」

⏰:07/05/09 02:13 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#224 []
コウと旬が話していた時
義父が一人、プールに近づいてきた。

旬はすぐさまいつも通りの障害あるフリをし、プールではしゃいでいた。

《コウ、少し外してくれないか》

義父がコウに向かい、
ニッコリと微笑み言った。

⏰:07/05/09 03:30 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#225 []
コウは義父には逆らわず、プールを出た。

《ああ、旬ものどが渇いただろう。コウ、ジュースをとってきてくれ》

義父の言う通り、
コウはジュースを取りに家の中に入ろうと、ドアに手を伸ばした。その時

⏰:07/05/09 03:32 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#226 []
《バシャーンッ!!》

大きな水しぶきの音が聞こえ、コウはプールを振り返った。

「義父は………」

まさか…

「義父は旬を…」

まさか……

「義父は旬をプールに沈めたんです」

⏰:07/05/09 03:35 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#227 []
「僕は足が動きませんでした。ただ…ただ呆然とし、その場に立ち尽くしていました」

コウは俯いたまま、
わずかだが震えていた。

「義父はバタバタとする旬の…義弟の頭を掴み…」

コウの顔から
涙がポタリと落ちた。

⏰:07/05/09 03:38 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#228 []
「…義父が殺した……お前は殺してないやん!殺したんはお前ちゃうやん!!」

俺の言葉に
コウは俯きながら首を横にふった。

「あの時僕は確かに、旬の声が頭の中に響いた…旬ははっきりと言いました。お兄ちゃん助けて、と。僕は…僕は旬を助ける事ができませんでした」

⏰:07/05/09 03:41 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#229 []
「あの時、助けようと思えば助けられたんです。なのに僕は……」

コウはポタポタと涙を流し続けている。

「お前が悪いわけちゃう」

俺はコウの肩をポンッと軽く叩いた。
コウはまた首を横に振った

「僕が悪いんです」

⏰:07/05/09 03:46 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#230 []
コウは旬が沈められ、
バタバタと動かなくなるまで黙って見ているしかできなかったらしい。

旬の動きはだんだんと弱くなり、ついには動かなくなった。

さっきまで動いていた旬の手が、身体が、
水面にぷかっと浮いた時、義父は旬を見ながらニヤリと笑い口を開いた。

《出来損ないは神谷家には必要ない》と。

⏰:07/05/09 03:50 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#231 []
コウはその時の義父の表情にとても怯え、一歩後退りをしてしまった。

《カラ…ン》

運悪く、コウの足元にはあき缶が落ちていて、コウの足にあたり義父はコウを見た。

《コウ、見てたのか》

⏰:07/05/09 03:52 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#232 []
義父は震えるコウに近付き耳元で一言、こう言った。

《私が殺した。だが、黙って見ていたお前も同罪だ》

義父はニヤリと笑い、家の中へ入った。

残されたコウは
ゆっくりと旬がいるプールへと向かった。

⏰:07/05/09 03:55 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#233 []
「志乃くん」

話の途中で
急にコウが俺を呼んだ。

「なんや?」

「志乃くんは悪夢を見た事がありますか?」

「……わからん……」

「そうですか…」

コウは俯いたまま、額に手を置いた。

「僕は毎晩夢に見てしまいます。あの時の義父の表情を…そして旬の……」

⏰:07/05/09 03:58 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#234 []
「……………」

「……………」

「……旬の…なに?」

「……旬の悪夢を」

プールに浮かぶ旬を見たコウは驚いて腰を抜かしたという。

「旬は目を開けたまま、僕を見ていたんです。そして言った……《お兄ちゃん、どうして助けてくれなかったの?》と」

⏰:07/05/09 04:01 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#235 [ミルキー]
>>216-300

⏰:07/05/09 21:18 📱:N701i 🆔:BfOYESTc


#236 [我輩は匿名である]
ミルキーて人うざい。主さんアンカーしてくれてるじゃん。せっかく楽しく読んでるのにアンカーのせいでだいなしだし

⏰:07/05/09 21:48 📱:N900i 🆔:☆☆☆


#237 [我輩は匿名である]
同感。感想ここに書いたりアンカーするのやめてもらいたい。
主さんが気を効かせて最初にアンカーしてるし感想板だって貼ってあるじゃん。
自分がよくても見てる周りは迷惑だよミルキーさん

⏰:07/05/10 03:03 📱:SH902iS 🆔:2l49x2hI


#238 []
あわわわわ
喧嘩みたいのはかんにんして下さい
アンカー100単位なので重い方もいるかもしれません…すみません
更新はもう少しあとにちょっとだけできそうです
体調悪いんですみませんコメントなどは感想板に下さるとありがたいです
こちらにはなるべく本文だけにしたほうが読者さまに読みやすいと思われますので

⏰:07/05/11 02:07 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#239 []
「…旬は…生きてたんか……?」

「いいえ」

「…ほななんで……」

「僕への怨みが、死後の旬を動かせた。ただそれだけの事です」

コウは俯き、
しばらくしたあと俺に向かいニッコリ微笑み、
ジュースもらえますか?と言った。

⏰:07/05/11 04:42 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#240 []
「30パーセントのオレンジジュースしかないけど」

「いいですよそれで」

「……………」

「どうかされましたか」

「いや…ちょっと待っててな」

俺は立ち上がりリビングへ向かい30パーセントオレンジジュースをコップに注ぎ部屋へ戻った。

⏰:07/05/11 04:44 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#241 []
部屋のドアを開け、
俺は愕然とした。

「…コウ…?」

「……………」

「おい!!コウ!!コウやめろ!!!」

俺はオレンジジュースのコップを手から落とした。

コウは

「コウ!!やめろ!!」

コウは窓から飛び降りようとしているところだった。

⏰:07/05/11 04:46 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#242 [シン]
ガンバレ

⏰:07/05/11 05:01 📱:P701iD 🆔:/T2k2fXE


#243 []
シンさん
ありがとうございます

これからこっちのトピに書き込まれてもお返事書かないことにします
小説だけを書くことにします読みやすくするためですのですみません
コメントなどは
>>2
の感想板にください

⏰:07/05/13 02:43 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#244 []
「コウ!!!」

俺は必死でコウの身体を引き寄せた。

「コウ!!やめろ!!」

「離して下さい」

コウは俺の腕を振り払おうとした。

「やめろ!!」

俺はコウの頬をバチンと叩いた。

⏰:07/05/13 03:02 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#245 []
「……………」

「………コウ……」

コウは頬を押さえフラフラと床に座り込んだ。

「……僕は…何を…?」

「え?」

「…………僕は……」

コウは両手で頭を押さえ、俯いた。

「志乃くん…すみません」

⏰:07/05/13 03:04 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#246 []
「志乃くん…本当に……すみません……」

コウの足元には
涙がポタッと落ちた。

俺はコウのそばにしゃがみコウの肩を組んだ。

「大丈夫、大丈夫やで」

「………すみません…」

いつものコウとは違い、弱々しく涙するコウの肩を
俺はずっと抱き寄せた。

「大丈夫やから、な?」

⏰:07/05/13 03:07 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#247 []
しばらくコウの肩を抱いていると、
ふいにコウが顔をあげ俺の顔を覗き込んだ。

「ん?」

「…すみませんでした」

「いや…大丈夫か?」

「はい…」

俺はコウの肩から腕をおろし、大きく伸びをした。

「何も聞かないんですね」

⏰:07/05/13 03:32 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#248 []
「え?」

「僕がなぜ飛び降りようとしたのか、志乃くんは聞かないんですね」

「……………」

黙って俯いていると
コウはフッと笑った。

「旬がいるんですよ」

⏰:07/05/13 03:34 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#249 []
コウは窓の外を指しながら言った。

「ずっと…僕を見ているんですよ」

俺は窓の外を眺めた。

「…え……?」

窓の外には
青白い顔の少年がふわりと浮いてこっちを見ていた

「あの子が…?」

⏰:07/05/13 03:36 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#250 []
「志乃くん見えるんですか?」

コウは驚いた表情で俺を見た。

「…見える…今見えた」

「………なぜ…」

コウは俺と旬を交互に見ながら目を見開いている。

「…あ!さっきお前の手に触れたからちゃう?」

「…いえ……見えるはずはないんです……」

⏰:07/05/13 03:38 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#251 []
「でも見える…」

「………なぜ…」

俺はその少年から目がそらせなかった。
少年も俺をじっと見ている

「……………?」

俺は窓に手を置き、
身をのりだした。

⏰:07/05/14 01:18 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#252 []
「志乃くん何してるんですか!」

今度はコウが俺の肩を掴んだ。

「死ぬ気ですか」

「いや…違う……」

俺はコウの腕をやんわりと振り払い、再び身を乗り出す。

《…………………》

え?何?何て言ってるんや?

少年は俺に向かい、何かを言いたそうに口を動かした

⏰:07/05/14 01:20 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#253 [我輩は匿名である]
今日はもう書かないの

⏰:07/05/14 01:42 📱:SH903i 🆔:n5jMIq4E


#254 []
《………………》

「何?何て言うてるん?」

《………………で》

「?聞こえへん」

俺は更に身を乗り出した

「志乃くん!!」

コウは俺の腹に腕をまわした。

「志乃くん落ちてしまいますよ!」

俺はあと少しで窓から落ちるところだった。

⏰:07/05/14 02:56 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#255 []
「あ…わりー……」

「いえ…」

「コウ、あの子何か言うてへんか?」

俺は少年に目を向けた。

「…旬が…ですか?僕には何も聞こえませんが」

コウは窓から離れ、ソファーに座り込んだ。

「そうか…俺には……あの子が何かを伝えたそうに見えるんやけど…」

⏰:07/05/14 03:00 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#256 []
「志乃くんを殺そうとしているんですよ、きっと」

コウはソファーの上に両足を立て、親指の爪をガリガリと噛みながら呟いた。

「僕も…いずれは彼に殺されます」

「でも………」

なぜだ?
俺にはこの少年がそんな事をするとは思えない。

⏰:07/05/14 03:02 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#257 []
旬と呼ばれる少年は

コウが時折見せる
少し悲しげに微笑む、
それに似た表情をしている

「…この子…旬君は俺に…何か言いたいんや…」

俺は少し身を乗り出し、
今度は落ちないようにしっかりと窓枠を握った。

⏰:07/05/14 03:07 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#258 []
コウは一瞬ソファーから立ち上がろうとしたが
すぐにやめ、目を伏せた。

「…旬君…」

俺は少年に向かい手を差し延べた。

少年は俺をじいっと見つめすうっと俺に近づいてきた

「何を言いたい?旬君、言ってみ………え?おい、やめ………うわぁぁあ!!」

⏰:07/05/14 03:10 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#259 []
「志乃くん!!」

俺……

「志乃くん!?」

コウ……?

「志乃くんしっかり!!」

コウの声が頭の奥から聞こえる。

「大丈夫ですか!?」

大丈夫…大丈夫やけど…
声がでない…
わりぃ…動けねー…

記憶が薄れる途中、
男の子の声が聞こえた。

「僕の記憶をあげる」

⏰:07/05/14 03:16 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#260 []
【第19章 記憶】

僕の……?

記憶を……あげる……?


目を覚ました俺は
ある一軒家の中にいた。

「ここは…コウの…?」

そこは、コウの家だった。

⏰:07/05/14 03:22 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#261 []
「コウ………?」

俺は部屋の中を歩いた。

コウはいない。

「どうなってんねや…」

俺は階段を上がり、
部屋の一つ一つを見た

「…ここは……」

俺はあるドアの前で足を止めた。
ドアにはプレートがかかっている。そこに書かれた名前は

《しゅん》

⏰:07/05/14 03:25 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#262 []
俺はドアを開けた。

《ガチャ…》

「コウ!!」

部屋の中にはコウが立って驚いた表情でドアを見た

「………コウ……」

俺が立っているドアを目を丸くして見つめ、しばらくしてからコウはフッと笑った。

「…旬……ですか?」

⏰:07/05/14 03:27 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#263 []
「え……?」

コウはドアから目をそらし、部屋にある机を撫でながら呟いた。

「旬……僕を憎んでますよね……」

「おい、コウ?」

俺の呼びかけも聞こえないのか、コウは俯いたまま小さな声で言った。

「すみません…すみません……旬……」

⏰:07/05/14 03:33 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#264 []
「コウ!!」

俺はコウの肩を掴もうと手を延ばした。

「うわっ!!」

………?
なにこれ……?

俺の身体はコウをすりぬけ俺は床に倒れ込んだ。

「…なんや?」

俺は自分の両手を見る。

「…透けてる……?」

⏰:07/05/14 03:35 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#265 []
俺は窓ガラスを見た。

ない……

俺が……ガラスにうつっていない……

どうなってる……?

俺が窓ガラスを見ながら呆然としていた時、背後から声が聞こえた。

「兄は…」

「!?」

俺はびっくりして声の主を振り返る。

⏰:07/05/14 03:37 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#266 []
「…きみは……」

背後には
あの時の少年

旬の姿があった。

「兄はずっと僕の幻影に怯えてるんだ」

「……幻影?」

俺の問いに、旬はコクリと頷いた。

「兄に僕の姿が見えるわけないんだ。僕は特殊能力があるから兄に僕の姿を見せない事ができる。でも…」

⏰:07/05/14 03:41 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#267 []
旬は口を止め、コウをじっと見つめた。

「旬…すみません……」

コウは
旬がいる場所とは全く真逆の場所を見つめ、涙を流している。

「兄は《僕》という幻影を自ら造りだして苦しんでいる。兄を憎んでる《僕》っていう幻影をね」

⏰:07/05/14 03:45 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#268 []
「…じゃあ……コウはきみの事…」

「本当の僕は見えてないよ。兄には偽物の…幻影の僕が見えてるんだよ」

旬は俯きながら
悲しそうな表情をした。

やっぱり…

「きみはコウを憎んでへんねやな…」

「……………」

⏰:07/05/15 03:30 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#269 []
旬はコウをじいっと見つめた。

俺も視線をコウに向ける

「……………?」

あれ?
なんかこのコウ…

「…幼い……?」

「僕の記憶をあげるって言ったでしょ?今あなたが見てるのは僕の記憶。兄の中学時代なんだよ」

「……中学時代……」

「そう…兄が一番苦しんでいた時期…」

⏰:07/05/15 03:33 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#270 []
「…コウが………」

苦しんでいた時期……

俺の知らないコウの

過去………

「志乃さん…」

ふいに旬が俺の名を呼んだ

「…なに……?」

「志乃さんは、いじめにあった事ある?」

⏰:07/05/15 03:37 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#271 []
いじめ………

「いや…ない……」

「……………」

まさか

「もしかして…」

「うん。兄はいじめにあってた。中学生の時にね」

⏰:07/05/15 03:39 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#272 []
「そんな………」

俺は言葉を失った。

コウの過去が
これほどまで悲惨だとは思っていなかった。

両親に捨てられ
弟も助けられず
義父母も殺害され
そのうえいじめだと…?

「志乃さん知ってた?兄が一度自殺未遂をした事を」

⏰:07/05/15 03:42 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#273 []
自殺未遂…

「コウ…が……?」

「やっぱり知らないんだね。兄は中学の頃、自殺未遂をした。手首を切ったんだ。その傷見た事ない?」

「…いや……」

⏰:07/05/15 03:45 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#274 []
そんな傷…
見た事ない…。
原因は…自殺未遂の原因…

「原因は?」

俺の問いに
旬は眉間にしわを寄せた。そして一言、悔しそうに
本当に悔しそうな表情で言った。

「僕の幻影」

⏰:07/05/15 03:47 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#275 []
「…え……」

「もちろん僕には本当の原因はわかんないよ。僕は兄じゃないからね」

こーゆー言い方は
コウに似てるな。

「原因は色々とあったと思うよ。いじめだとか、父母の事だとか。でもね…」

旬は唇をキュッと結んだ

「でも…?」

「手首を切る直前に兄は言った。《旬、僕が死ねば許してくれますか》って」

⏰:07/05/15 03:50 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#276 []
「兄は僕が死んでから毎日、毎日、僕に謝り続けてるんだ。今でも…」

「でもきみはコウを憎んでへんねやろ?」

俺の問いに旬は
ニッコリ微笑んだ。

「憎んでないよ。僕は兄が大好きだから」

「じゃあ…コウに姿を見せたら…」

「見えないんだよ」

⏰:07/05/15 10:11 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#277 []
「え?」

「兄には見えないんだよ」

「なんで…?」

「志乃さん聞いたでしょ?僕が死んだ時兄は僕が《どうして助けてくれなかったの?》って言ってたって」

「うん」

「それは既に兄が造った僕の幻影だ」

⏰:07/05/15 10:13 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#278 []
つまり

コウは幻影の方を旬だと思い込み

本当の旬を拒んでいる?

「……………」

「志乃さんには難しい話だったかな?」

旬は俺を見てフフッと笑った。

こ…この兄弟…

二人して俺を馬鹿にしてんのか!?

⏰:07/05/15 10:16 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#279 []
「わかりますー」

いや、ほんまは頭ん中がぐちゃぐちゃやけど。

「無理しないでね」

こ…こやつ…

話し方はコウとは少し違うが生きていたら間違いなくコウ2号だ。

「兄の部屋に移動しよう」

⏰:07/05/15 18:24 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#280 []
「コウは?」

旬はチラリと時計を見て、まだ時間はあるから
と言った。

「なんの時間よ?」

「時がくればわかる」

…か……かっこ…

「この台詞かっこよすぎたかな」

かっこよすぎ!!
きみ小学生のままだよね?

⏰:07/05/15 18:27 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#281 []
「行こう」

コウを残し、
俺と旬はコウの部屋に入った。

「部屋綺麗にしてんな〜」

「志乃さんの部屋とは大違いだよね」

やかましい

「これ、見てよ」

旬は机に置かれた教科書を差し出した。

⏰:07/05/15 18:29 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#282 []
パラパラと教科書をめくる

「すげ〜なぁ〜足し書きだらけやん!」

「志乃さんちゃんと見てよ!見る点が違うよ」

「は〜?」

「よく見てよ、ほら」

旬は教科書のある部分を指した。

「…死…ね……?死ね!?死ねって書いてある!」

教科書にはうっすらと
《死ね》の文字があった

⏰:07/05/15 18:33 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#283 []
「これが兄の受けたいじめ。まだ可愛い方だけど」

よく見ると教科書はしわだらけになっている。
色んなページにうっすら書かれた《死ね》の文字は
コウが必死に消したことを示している。

「…ガキのいじめやん」

「中学生はまだガキだよ」

きみは小学生のままやけど!!

⏰:07/05/15 18:37 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#284 []
「学校でのいじめはひどかったよ。兄の給食だけ異物を入れられたり、ね。殴られたりもしょっちゅうあった」

「いじめの原因って何?」

「………………」

「………なに?」

⏰:07/05/15 18:39 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#285 []
「兄の性格…」

「…ああ」

なっとくするけど
いじめられるくらいの性格ちゃうのにな…

「兄の性格は人とは違って異常だから」

きみとそっくりなんですけど。

⏰:07/05/15 18:42 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#286 [沢子]
ふあいと

⏰:07/05/15 18:58 📱:P903i 🆔:4QnGglN2


#287 []
「何?志乃さん」

「へ?」

「なにかいいたげな顔してる」

「…………」

「志乃さん、人間思った事を口にださないと伝わらないよ?」

ほら、こーゆーとこ

「コウにそっくり」

⏰:07/05/16 11:57 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#288 []
「ほめてる?」

「……………まぁ」

「ほめてないね。沈黙長かったもん」

「………………」

「まぁいいや。そろそろ時間だよ。兄のところに戻ろう」

⏰:07/05/16 12:02 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#289 []
「何か起きるん?」

「見てればわかるよ」

旬は時計を気にしながら早足でコウのいる部屋へ向かった。

部屋の前で旬は立ち止まり俺の顔を見て言った。

「今から起きる事、黙って見ててね。手は出せないから。それと、この出来事が終わったらあなたは目が覚める。そしたらあなたがするべき事はただひとつ」

⏰:07/05/17 01:54 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#290 []
「…なに?」

「兄を救って下さい。兄には僕が見えないから…僕が兄を憎んではないって…いつも見守ってるって伝えて下さい」

「…わかった」

「ありがとう。じゃあ、入るよ」

旬はドアへ向かって歩き、すうっと中へ入った。
俺もあとを追う。

⏰:07/05/17 01:56 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#291 []
俺もドアを擦り抜けれるんかな?

俺はドアへ向かって歩いた

「うわっ」

なんだこれ…
身体がドアを抜けるけど
なんとも気味が悪い感触だ

俺はドアを擦り抜け、
目の前の光景を見て呆然とした。

「コウ………?」

⏰:07/05/17 01:58 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#292 []
目の前には
ナイフを手首に当てるコウの姿。

「コウ!!やめろ!!」

「志乃さん!手は出せないと言ったはずだよ!」

「でも…」

俺は押さえつける旬を振り払おうとした

「大丈夫!兄は死なない!さっき言ったでしょ?兄が自殺未遂をしたって!」

⏰:07/05/17 02:01 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#293 []
「…それが…今日なんか」

「そうだよ」

「……わざわざ…それを見せるために……?」

「僕の記憶だ。僕が一番辛かった時の記憶なんだよ」

旬を見ると
旬は目に涙をためていた。

⏰:07/05/17 02:02 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#294 []
「僕は許せない」

旬は唇を噛み締めた。

「いくら僕の幻影だからって…兄をここまで追い詰めるなんて……」

「…旬………」

「志乃さん、約束だからね。兄を救ってね」

「当たり前や」

⏰:07/05/17 02:05 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#295 []
旬が俺に向かい
ありがとう、と言うや否やコウはボソッと呟いた。

「旬…僕が死ねば…許してくれますか?」

そう言って
ナイフで手首をザクッと切った。

「うっ………」

俺は口を押さえた。
ここまでひどいとは
思っていなかった。

コウの手首からは
血がドクドクと流れ出し
床は物凄い勢いで血の海となった。

⏰:07/05/17 02:08 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#296 []
「これ…ほんまに大丈夫なんか!?」

俺は旬を見た。

「大丈夫…大丈夫だけど…何回見ても嫌な光景…」

旬はコウから目をそらした

「…旬…ごめんなさい…」

コウは一言言い、
ドサッと倒れた。

「コウ!!コウ!!コ………うわぁぁぁああ!!!」

⏰:07/05/17 02:11 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#297 []
 
――――…‥

「………コウ…」

「志乃くん!」

「………………」

「志乃くん!?」

「…コウ……?」

俺が目覚めた時
目の前には心配した顔のコウの姿があった。

⏰:07/05/17 02:12 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#298 []
「よかったです…志乃くんなかなか目が覚めなくて」

コウはガタガタと震えている。

そんな心配してたんや…

「…旬の記憶を見てた…」

俺の言葉に、コウは目を丸くした。

「…旬……の……?」

⏰:07/05/17 02:16 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#299 []
「そう。旬の記憶」

「………………」

コウは眉間にしわを寄せた

「あ…あ〜あいつの性格お前ソックリやな」

「……僕と旬が…?」

全然似てませんよ、とコウは続けた。

「全く同じやったで」

⏰:07/05/17 02:37 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


#300 []
「……そうですか…」

コウは俯き黙り込んだ。

えーっと…
救えって言ってたけど

どうしたらいいんや…?

「……………」

「……………」

旬…旬は……

俺は周りをキョロキョロ見渡した。が、旬が見当たらない。

⏰:07/05/18 03:46 📱:SH901iS 🆔:☆☆☆


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