【CARTAIN CALL】美しい村の醜い男
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#121 [オッズ]
僕はすぐにでもこの男から走って逃げ出したくなる衝動にかられた。

実際にそうすべきだった。

けれど、僕の足は地面にくっついてるんじゃないかと思うほど重く、とても逃げだせるような状態じゃなかったんだ。

もし、僕が逃げることができていたらと、今でも後悔しているんだ―――…。


「聞いていますか?」

ミロが僕の顔を覗き込んでいた。

⏰:07/07/03 16:58 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#122 [オッズ]
思わず小さな悲鳴をあげてしまった。

「すいません、驚かせてしまいましたねぇ……。
何を考えていたんでしょうねぇ?」

ミロの顔中に薄気味悪い笑みが広がった。

殴りたい。

僕はミロを思いっきり睨んでやった。

これがジェラルドだったら、即殴っているか、気のきいたことを言い返すんだろうなぁ。

⏰:07/07/03 17:03 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#123 [オッズ]
「おやおや……そんなに睨まないでくださいよぉ」

ミロはあきらかに楽しんでいる口調だった。

今のところ狂暴そうなところはない……。

キキの言うとおり、昼間は安全なのだろうか?

そもそも何を根拠に安全と言ったのだろう。

「……ところで、キキと君のオトモダチはどこにいるんだい?」

ドキッとした。

⏰:07/07/03 19:00 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#124 [オッズ]
「なんで……」

なんで知っているんだ?

キキはともかく、昨日この町にやってきたばかりのジェラルドのことまで……。

キキ以外には誰もあっていないはずなのに。

「……キキ……」

僕は呟いた。

僕の中にある疑問がわいてくる。

キキ……
彼女は一体何者なんだ?

⏰:07/07/03 19:06 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#125 [オッズ]
僕らはなんの疑いもなく、今までキキを信じてきた。

だけど、キキが僕達の味方だなんて誰が言った?

ミロの仲間じゃないと証明できるか?


……できない。


「ようやく理解できたようですね……」

ミロが卑しい声で囁く。

「……嘘だ」

⏰:07/07/03 19:10 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#126 [オッズ]
僕の声は弱々しかった。

キキのことを信じ続けることはできそうになかった。

キキがミロの仲間ならば、話の筋道がつく。

僕とジェラルドが眠っているうちに、こっそりとミロのところに行って、僕らのことを教えたんだ。

だから、こいつはジェラルドのことを知っている。
もちろん僕のことも。

「嘘じゃないということは、あなたもちゃんとわかっているはずです」

⏰:07/07/03 19:14 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#127 [オッズ]
ミロの甘ったるい口調に吐き気がした。

言い返す気力もない。

キキが僕らを裏切った。

もう何が本当なのかわからない。

「あれは……本当なのか?」

ミロは首を傾げた。

「何がです?」

「町の人たちを切り刻んだこと……」

⏰:07/07/03 19:18 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#128 [オッズ]
ミロは唸った。

「それは……事実ですね。
ですが、誤解しないでいただきたいです。
彼らにいいことだと思ったから、私はああしたのですよ」

彼らにいいこと?

ミロは結局、頭のいかれた残忍な野郎で、キキもそれと大差はないわけだ。

僕は鼻で笑った。

「……狂ってる」

僕の言葉を聞いて、ミロは眉をぴくっと動かした。

⏰:07/07/03 19:22 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#129 [オッズ]
「……あまり調子にのらないほうが身のためですよ」

ミロは苦々しげに言い、突き刺さるような視線を僕に送った。

そして付け加える。

「どっちにしても、もう遅いですがね……」

その時、ようやくミロが手にしているものに気付いた。

今までに
見たこともないような大きさの包丁だった―――…。

⏰:07/07/03 19:27 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#130 [オッズ]
――――――――――…

「さぁさぁ、ここで大人しくしていてくださいよ」

僕は檻の中からミロを眺めた。

まさか捕まってしまうなんて……。

でも、牛も楽々切り殺せるような包丁見せられて、無理矢理に逃げるなんてできるはずない。

ミロは満足そうに僕を見つめ返している。

部屋の四方に広がっていた檻は、二三人が入れるくらいの広さに区切られていた。

⏰:07/07/03 19:57 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#131 [オッズ]
ミロは巨大な包丁を杖のようにして立っている。

「先程も聞きましたが、キキとジェラルド君はどこでしょうね?」

「知らない」

僕はぶっきら棒にそう答えた。

「今すぐ僕を殺す気がないならどこかに行ってよ!」
ミロをこれ以上眺めていたら目が腐る。

殺されるなら、せめてそれまでの間一人にさせてほしい。

⏰:07/07/03 20:52 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#132 [オッズ]
ミロに対する怒りが強すぎて、恐怖を感じている余裕はなかった。

でも、何よりも気掛かりなのはキキのことだ……。

キキ……。

「さっさと出ていけ!」

僕は叫んだ。

ミロは渋い顔をして、どうするべきか迷っている。

その時、僕の視界にあるものが飛び込んできた。

⏰:07/07/03 20:55 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#133 [オッズ]
ついにミロは部屋から出るために、僕に背を向けようとした。

「待って!」

ミロは動きを止めると、驚いたと言わんばかりに目を真ん丸くした。

「……何か?」

僕はこっそりと深呼吸をする。

「ぼ、僕を……僕を殺さないでっ!」

⏰:07/07/03 21:00 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#134 [オッズ]
ミロは更に目を丸くした。
目玉が飛び出しそうだ。

「……ほぅ、いきなりどうしたんです」

ミロは興味深そうに、顎を擦った。

僕は泣き声をあげ、切実に訴える。

「やっぱり死にたくないんだ!
キキとジェラルドの居場所なら教える!」

ミロがにんまりと微笑んだ。

⏰:07/07/03 21:12 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#135 [オッズ]
僕はミロの返事を待たずに、わめき散らした。

「キキとはここにくる途中ではぐれたんだ!
でも、必ずこの近くにいるはずだよ!信じてよっ!」

ミロは顔を檻に近付けてきた。

「信じますよ。
それでは……ジェラルド君は……?」

「ジェラルド……?」

僕は思わず笑みを零した。

⏰:07/07/03 21:18 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#136 [オッズ]
「俺ならここだ!」

ジェラルドの咆哮が狭い部屋に轟く。

ミロはギョッとし、振り返ろうとしたが、ジェラルドの素早さにはかなわなかった。

ジェラルドは飛び掛かり、首を絞めるような態勢でミロに抱きついた。

ジェラルドの手にはキキの家で調達したナイフが握られている。

「ジェラルド!」

⏰:07/07/03 22:16 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#137 [オッズ]
僕は喜びの声をあげた。

ジェラルドは僕の方をちらりと見て、かすかに笑った。

「ハンス、なかなかやるじゃねぇか」

嬉しさを隠し切れずに、僕はにっこりと笑う。

ジェラルドに誉められた!

ミロを追い出そうとしたときに、ジェラルドが窓からこちらを覗いているのが見えたのだ。

⏰:07/07/03 22:21 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#138 [オッズ]
そこで僕がミロの気を引いて、ジェラルドに気付かないようにしたのだ。

ミロの顔は、ジェラルドに首を絞められているため、土気色に変わっている。

「残念だったな……。
死ぬのは俺たちじゃなくてお前だ!」

ジェラルドは不気味に笑いながら、ナイフを振りかざす。

ミロの口から涎とともに悲痛な音がもれた。

「ま、待て……待ってくれ!!お前ら、俺が死んだら困ったことになるぞ……」

⏰:07/07/04 18:11 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#139 [オッズ]
ミロは泣き叫んだ。

目は涙で潤み、鼻水が上向きについた不恰好な鼻から流れ出ている。

その姿は醜悪で、とても惨めだった。

ジェラルドは目を細めた。

獲物を狙う鷹のような目である。

そして、ナイフをそっとミロの頬にあてる。

一筋の血が垂れた。

「困んねぇな……」

⏰:07/07/04 20:13 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#140 [オッズ]
「ひぃ!」

ミロはこの世の終わりでもやってくるかのような悲鳴をあげた。

「や、やめ……やめて!」

頬から流れる血。

赤い……。

ミロも一応人間なんだ。

僕がボーッとそんなことを考えていると、ミロがいきなりこちらを見た。

「ハンス君!
お願いだ……助けて!」

⏰:07/07/04 20:22 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#141 [オッズ]
僕はこの醜い男から目をそらした。

「僕も困らないよ。
それに檻に入れられてるんだ。何もできない」

ミロは歯を食い縛った。
物凄い形相だ。

「いいや!困るはずだ!
ハンス君、よく考え……」

声はそこでとまった。

ジェラルドが更に力をこめて、ミロの首を締め付けたらしい。

「黙れ」

⏰:07/07/04 20:27 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#142 [オッズ]
ミロはそれでも口をパクパクと動かし、必死で僕に喋りかけてくる。

しかし、何を言っているのかちっともわからない。

ミロが死んで困る?

馬鹿らしい。

生きている方が困るというのに。

町の人々を無残な姿に
変えて……

無残な姿に……?

そうか!

⏰:07/07/04 20:55 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#143 [オッズ]
僕はハッとし、

「ジェラルド!」

と、大声を出した。

ジェラルドは驚き、ナイフをミロから遠ざけた。

「ジェラルド、ミロを離してやれ」

ジェラルドは不愉快そうにした。

「なぜだ?」

僕は肩をすくめる。

ミロは苦痛に顔を歪めながらも、声をあげて笑った。

「困ったことになるんだ」

⏰:07/07/04 20:59 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#144 [オッズ]
「どういうことだ?」

「ミロを殺したら、町の人たちの姿はあのままだ」

僕は呟いた。

「その通りです!」

ミロが口をはさんだ。
絶望の表情は消え、生き生きとしている。

「ハンス君の言ったとおり、私を殺したって町の人々はもとの姿には戻れませんよ。
ですが……」

ミロは
えげつない顔で話す。

⏰:07/07/04 21:26 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#145 [オッズ]
「私は彼らをもとの姿に戻すことができます。
ただし、生きていれば……ですがね」

ジェラルドは眉間にしわを寄せ、ミロを睨み付けた。

「関係ねぇな。
俺はこの町のやつがどんな姿だろうと、どうでもいいし」

僕はため息をついた。

「……だめなんだよ。
おそらく僕達がこの町に連れてこられたのは、町の人たちを元に戻すためのはずだ。
だから、ミロを殺してしまったら町の人々を元に戻せないことになる。
そしたら、僕らは家に帰れないんだ!」

⏰:07/07/04 21:33 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#146 [オッズ]
僕はヒステリックにそう言った。

二度と家に帰れないなんてごめんだ。

ミロはわけがわからないと言う顔をしていた。

僕らがジャクリーンに無理矢理ここに連れてこられたのを知らないからだろう。

僕の話を聞いて、ジェラルドはミロを殺すのをやめるかと思ったが、そうではなかった。

彼の目は殺気でみなぎっている。

⏰:07/07/04 21:36 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#147 [オッズ]
「俺はかまわねぇ……」

ジェラルドは以前から人を殺したくてうずうずしていたんだろう。

いつも普通じゃない目をしていた。

そこら変にいる悪なんかとは違う。

もっと恐ろしい何かを隠し持っていた。

「ジェラルド……!」

どうしよう?

⏰:07/07/05 17:14 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#148 [オッズ]
どうすればジェラルドを止められるんだ?!

ミロの顔は汗でテカテカと光っている。

ジェラルド――…

……そうだ!

僕は、ジャクリーンがジェラルドにした約束を思い出した。

「やっぱりそいつを殺すべきじゃないと思うけど?」

僕の声は不安でうわずっていた。

果たして、ジェラルドは食い付いてくれるだろうか?

⏰:07/07/05 17:19 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#149 [オッズ]
「ジャクリーンから……銃をもらえなくなるぞ。
人なんていつでも殺せるけど、ここにいたら銃は手に入らないかもしれないし……」

祈るような目でジェラルドを見つめる。

「……しょーがねぇな」

ジェラルドは渋々ではあったが、ミロを離した。

その途端、ミロのおぞましい高笑いが響き渡った。

僕とジェラルドはぞっとした。

⏰:07/07/05 20:20 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#150 [オッズ]
次の瞬間、ミロは物凄い勢いでジェラルドに飛び掛かった。

あの体であんなに素早く動けるとは驚きだ。

さっきとは逆に、今度はジェラルドに包丁が突き付けられる。

「……クソッ」

ジェラルドは舌打ちをした。

「おい、ハンス。
こうなることは想定内だったんだろうなぁ?」

⏰:07/07/05 20:24 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#151 [オッズ]
僕は怖ず怖ずと首を振った。

少し考えればこうなることはわかったはずなのに。

このままじゃ二人とも殺される……。

「……ごめん」

僕はその場に座り込んだ。

ジェラルドは思いっきり悪態をつく。

「喧嘩はおよしなさい。
ジェラルド君……君の美しい体を切り裂けるなんて光栄だ……」

⏰:07/07/05 20:30 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#152 [オッズ]
巨大な包丁がギラギラと輝き、ジェラルドに迫る。

“やめろ!”

僕が叫ぼうとしたときだった。

「やめてっ!!」

甲高い叫び声がした。

もちろん僕の声ではない。

ミロの口元がほころんだ。

「おや……、ようこそいらっしゃい。
我が友キキよ……」

⏰:07/07/05 20:41 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#153 [オッズ]
キキは息を切らせ、肩を震わせながらドアのところに立っていた。

「私は……あなたの友達なんかじゃないわ」

キキは冷たく言い放った。

僕は複雑な表情でキキを眺める。

キキは僕の視線に気付くと申し訳なさそうにした。

「ハンス!
ごめんなさい。私、昼間は安全だと思ってたの……」

僕はポカーンとした。

キキは何を言ってるの?

ミロの仲間じゃないのか?

⏰:07/07/05 20:50 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#154 [オッズ]
キキはミロの方に向き直った。

「ジェラを離して」

厳しい口調だ。

キキの顔は不安と怒りが入り交じり、今にも泣きだしそうになっている。

「……ダメです」

ミロは細い目を限界までぱっちりと開いた。

キキは唇を噛み締めた。

僕は混乱のなか、美しい彼女がどうするつもりなのかをうかがった。

⏰:07/07/05 20:55 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#155 [オッズ]
わずかな間、沈黙が続く。

そして、ついにキキが意を決したらしく、口を開いた。

「……だったら、
私がジェラの代わりになるわ―――…」

僕は固まった。

ジェラルドも呆然とキキを見つめている。

頭の整理がつかないうちにミロが話を進めた。

「……わかりました。
それでしたら、ジェラルド君を離しましょう」

満面の笑みだ。

⏰:07/07/05 20:59 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#156 [オッズ]
キキは慎重にうなずく。

「あともう一つ……条件があるの」

「なんでしょう?」

ミロはそう言いながら、ジェラルドを僕の隣の檻に閉じ込めた。

「あなたが
醜くしてしまった町の人たちを元に戻して」

いくらなんでもその条件はのまないだろうと思った。

しかし、ミロは簡単に“わかった”と、返事をした。

「私を殺す前に元に戻して。いますぐに、ここで」

⏰:07/07/05 21:06 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#157 [オッズ]
ミロがパチンと指をならした。

すると、どこからともなく布を引きずる無数な音が聞こえてきた。

そして、数分の間に部屋は切り裂かれた町の人々でいっぱいになった。

僕は息を呑んだ。

初めて切り裂かれた人たちを見た。

体中が紫や赤黒い色をしており、継ぎ接ぎだらけで縫い目からはぬるぬるとしたものがはみ出ている。

顔がまったく顔らしくないものや、体の一部がなくなっているものもいた。

⏰:07/07/05 21:10 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#158 [オッズ]
性別はさっぱりわからず、腐敗臭がひどい。

服の代わりにボロ布を体に巻き付けている。

僕は気分が更に悪くなった。

切り裂かれた人がこんなにひどい姿をしていたなんて……。

「いきますよ」

ミロはそう呟くと、懐から小瓶をとりだした。

その中には液体が並々と入っている。

⏰:07/07/05 21:14 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#159 [オッズ]
ジャクリーンに飲まされたものが頭を過る。

ミロは小瓶の蓋を開け、液体を人々に振り掛けた。

振り掛けながら呪文のようなものを唱える。

その途端、醜かった人たちが変わった。

もう醜くくなどなかった。

皆美しい、本来の姿に戻ったのだ。

僕は呆気にとられた。

⏰:07/07/05 21:18 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#160 [オッズ]
こんなことが世の中にはあるのだ。

町の人たちは戸惑い、その場に立ち尽くしていた。

よく見ると、彼らは槍のような武器を手にしている。

「さぁ、あなたの望みは叶えました。
中央の台にお乗りなさい」

キキは町の人たちを眺めて涙をこぼした。

「わかった……」

ゆっくりとした足取りで、キキは部屋の真ん中にある台の上まで歩いた。

⏰:07/07/05 21:23 📱:N700i 🆔:☆☆☆


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