【CARTAIN CALL】美しい村の醜い男
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#1 [オッズ]
:07/06/08 21:53 :N700i :☆☆☆
#2 [オッズ]
僕は劇場に居た。
ステージを前に、誰もいない客席に腰をおろしている。
突然、パイプオルガンのような音が響き渡り、ステージの幕があがっていく。
演奏の始まりだ。
僕はステージを見た途端、恐怖に襲われた。
鳥肌がたつのを感じる。
てっきり、ステージにはオーケストラがあらわれるのかと思っていたのだ。
:07/06/08 22:01 :N700i :☆☆☆
#3 [オッズ]
しかし、僕の予想は間違いだった。
ステージにあらわれたのは、一人の髪の長い女の人だった。
しかも首を吊っているのだ。
ステージの天井から蜘蛛の糸のようにロープが垂れ下がり、女の人の首に絡み付いている。
僕は女の人から目を話すことができなかった。
そして、死んだと思っていた女の人は生きていた。
僕と目が合った。
:07/06/08 22:07 :N700i :☆☆☆
#4 [オッズ]
目からは涙が、鼻からは鼻水が、口から嘔吐物が滴れ流れている。
僕は恐ろしくて、身動きができずにいると、女の人はにやりと笑い、歌を歌い出した。
首を吊っているせいか、ひどいしゃがれ声だ。
堂々と響くパイプオルガン。
女の人の調子のはずれた陽気な歌声。
なにもかもが不気味に感じる。
いや、感じるのではなく、実際に不気味だった。
:07/06/08 22:10 :N700i :☆☆☆
#5 [オッズ]
美しい村
喜びと希望に満ち溢れる
輝かしい村
しかし、男があらわれた
ひどく醜い男
見た目も中身も腐ってる
男は殺した
村で一番の優しい女を
村人は怒り狂い殺したのさ
醜い醜い男をね
醜い男が行き着くところは
ただ一つ
地獄の果てさ
:07/06/08 22:15 :N700i :☆☆☆
#6 [オッズ]
女はそう歌った。
女が歌い終わると、客席から拍手喝采が起こった。
僕しかいなかったはずの客席には、いつのまにか人々で溢れかえっていた。
僕はどうしていいかわからず、茫然と椅子に座り続ける。
女の人は、再び動かなくなり、ステージの幕がゆっくり下りていった。
拍手はしばらくの間やむことはなかった。
:07/06/08 22:28 :N700i :☆☆☆
#7 [オッズ]
―――――――――…
僕は物凄い衝撃を受けた。
慌てて目を開け、ようやくどのような状況にいたのか理解できた。
ベッドから落ちたのだ。
「……いてて」
僕はのんびりと立ち上がる。
ってことは、さっきの首吊り女は夢だったのか。
なんとなく納得がいかない。
:07/06/09 06:30 :N700i :☆☆☆
#8 [オッズ]
今まで、こんなはっきりと夢を覚えていたことはなかった。
歌の内容だって、すべて覚えているっていうのに。
「ハンス!ハンス、起きているの?」
母さんが叫んでいるのが聞こえた。
「……起きてるよ!」
僕はそう叫ぶと、居間に向かった。
……やっぱり納得いかないよ。
:07/06/09 06:35 :N700i :☆☆☆
#9 [オッズ]
僕は夢について考えながらも、朝食を食べ、学校へ行く準備をした。
「いってきまーす」
呟くようにそう言うと、学校への道を歩きだした。
路地裏のような狭いところを歩いているときだった。
「ジェラルド……」
僕は思わず声に出して彼の名を呼んでしまった。
最悪だ。
:07/06/09 06:59 :N700i :☆☆☆
#10 [オッズ]
ジェラルドは一瞬こちらを見たが、すぐにそっぽを向いてしまった。
彼は僕と同い年の14歳で、同じ学校に通っている。
しかし、こんなに早い時間に彼を見たのは初めてだ。
たいていはお昼を過ぎてから姿をあらわすのに。
ジェラルドは天使のような少年だ。
落ち着いた感じの金色の髪に、深い青の瞳。
非常に整った顔をしていて、気品が漂っている。
:07/06/09 20:31 :N700i :☆☆☆
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