【CARTAIN CALL】美しい村の醜い男
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#1 [オッズ]

また書かせて
いただきたいと思います
よかったら
読んでください

前作…【Devils×Night】
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/4190/

⏰:07/06/08 21:53 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#2 [オッズ]
僕は劇場に居た。

ステージを前に、誰もいない客席に腰をおろしている。

突然、パイプオルガンのような音が響き渡り、ステージの幕があがっていく。

演奏の始まりだ。

僕はステージを見た途端、恐怖に襲われた。

鳥肌がたつのを感じる。

てっきり、ステージにはオーケストラがあらわれるのかと思っていたのだ。

⏰:07/06/08 22:01 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#3 [オッズ]
しかし、僕の予想は間違いだった。

ステージにあらわれたのは、一人の髪の長い女の人だった。

しかも首を吊っているのだ。

ステージの天井から蜘蛛の糸のようにロープが垂れ下がり、女の人の首に絡み付いている。

僕は女の人から目を話すことができなかった。

そして、死んだと思っていた女の人は生きていた。

僕と目が合った。

⏰:07/06/08 22:07 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#4 [オッズ]
目からは涙が、鼻からは鼻水が、口から嘔吐物が滴れ流れている。

僕は恐ろしくて、身動きができずにいると、女の人はにやりと笑い、歌を歌い出した。

首を吊っているせいか、ひどいしゃがれ声だ。

堂々と響くパイプオルガン。

女の人の調子のはずれた陽気な歌声。

なにもかもが不気味に感じる。
いや、感じるのではなく、実際に不気味だった。

⏰:07/06/08 22:10 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#5 [オッズ]
美しい村

喜びと希望に満ち溢れる

輝かしい村

しかし、男があらわれた

ひどく醜い男

見た目も中身も腐ってる

男は殺した

村で一番の優しい女を

村人は怒り狂い殺したのさ

醜い醜い男をね

醜い男が行き着くところは

ただ一つ

地獄の果てさ

⏰:07/06/08 22:15 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#6 [オッズ]
女はそう歌った。

女が歌い終わると、客席から拍手喝采が起こった。

僕しかいなかったはずの客席には、いつのまにか人々で溢れかえっていた。

僕はどうしていいかわからず、茫然と椅子に座り続ける。

女の人は、再び動かなくなり、ステージの幕がゆっくり下りていった。

拍手はしばらくの間やむことはなかった。

⏰:07/06/08 22:28 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#7 [オッズ]
―――――――――…

僕は物凄い衝撃を受けた。

慌てて目を開け、ようやくどのような状況にいたのか理解できた。

ベッドから落ちたのだ。

「……いてて」

僕はのんびりと立ち上がる。

ってことは、さっきの首吊り女は夢だったのか。

なんとなく納得がいかない。

⏰:07/06/09 06:30 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#8 [オッズ]
今まで、こんなはっきりと夢を覚えていたことはなかった。

歌の内容だって、すべて覚えているっていうのに。

「ハンス!ハンス、起きているの?」

母さんが叫んでいるのが聞こえた。

「……起きてるよ!」

僕はそう叫ぶと、居間に向かった。

……やっぱり納得いかないよ。

⏰:07/06/09 06:35 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#9 [オッズ]
僕は夢について考えながらも、朝食を食べ、学校へ行く準備をした。

「いってきまーす」

呟くようにそう言うと、学校への道を歩きだした。

路地裏のような狭いところを歩いているときだった。

「ジェラルド……」

僕は思わず声に出して彼の名を呼んでしまった。

最悪だ。

⏰:07/06/09 06:59 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#10 [オッズ]
ジェラルドは一瞬こちらを見たが、すぐにそっぽを向いてしまった。

彼は僕と同い年の14歳で、同じ学校に通っている。

しかし、こんなに早い時間に彼を見たのは初めてだ。

たいていはお昼を過ぎてから姿をあらわすのに。

ジェラルドは天使のような少年だ。

落ち着いた感じの金色の髪に、深い青の瞳。
非常に整った顔をしていて、気品が漂っている。

⏰:07/06/09 20:31 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#11 [オッズ]
ただ、ジェラルドには一つ問題がある。

大きな問題だ。

彼はひどい乱暴者なのだ。

僕はジェラルドと面識はなかったが、彼の噂はなんどとなく聞いた。

その中にいい噂は一つもなかった。

誰を病院送りにしたとか、二度と人に見せられない顔にされた子がいるとか、万引きをしたとか……。

噂のほとんどは真実だ。

⏰:07/06/09 20:37 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#12 [オッズ]
そんなやつが目の前にいる。

しかもジェラルドは、狭い路地に座り込んでいるため、道の半分が塞がれてしまっている。

僕はその横を通り抜けなければならない。

困った……。

もしジェラルドに絡まれたら?
うっかり転んでしまって、彼を踏ん付けてしまったら?

僕は悩みながらもジェラルドに近づいていった。

⏰:07/06/09 20:41 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#13 [オッズ]
相変わらず、ジェラルドはボーッとしているようで、僕になんの反応もしめさない。

これなら大丈夫かも。

足音をたてずに、慎重にジェラルドの横を進もうとした。

しかし、こんなに注意していたにもかかわらず、僕の努力は水の泡となった。

空想に耽っている様子だったジェラルドが、いきなり足を引っ掛けてきたのだ。

「うわっ!」

僕は倒れこみ、地面に顎を打ち付けた。

⏰:07/06/09 20:48 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#14 [オッズ]
ジェラルドが倒れた僕の背中を思いっきり踏んだ。

思わずむせてしまう。

横目でジェラルドを見た。

彼は意地悪くほくそ笑んでいる。
天使なんてとんでもない。
あの笑顔は悪魔にしか見えない。

「よぉ、うすのろま」

「ぼ、僕はハンスだ……」

僕はうめきながらそう言った。

⏰:07/06/09 20:51 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#15 [オッズ]
ジェラルドはおもしろくなさそうに、フンと鼻をならした。

僕はすかさず立ち上がる。

ジェラルドは僕と背丈はあまりかわらない。

なのに、力の差は歴然だ。

「俺は機嫌が悪い……」

ジェラルドが続きを言う前に、僕は全速力で走り出した。

逃げなきゃ……。

⏰:07/06/09 20:55 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#16 [オッズ]
それしか頭になかった。

僕は逃げ足には自信があったため、ジェラルドからも簡単に逃げられると思っていた。

しかし、それは間違いだった。

ジェラルドは僕を追って走ってくる。

追い付かれることはないものの、引き離すこともできない。

ジェラルドが何か叫んでいたが、聞いている余裕はない。

僕はパニックになっていて、どこに行くかも考えず、やみくもに走り続けた。

⏰:07/06/09 20:58 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#17 [オッズ]
気付いた時には、僕は森のなかを走っていた。

僕が住んでいる町は、まわりを森に囲まれた小さなもので、少しあるけば、森へと出てしまうのだった。

僕のあとから規則正しい足音が聞こえる。

ジェラルドは今だに追い掛けてきているのだ。

僕の足はそろそろ限界を迎えようとしていた。

だが、走り続けなければジェラルドに捕まり、とんでもないことになる。

⏰:07/06/09 21:03 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#18 [オッズ]
絶望的だ……。

僕は、いつ走るのをやめるべきかを考え始めたときだった。
目の前に小さな家が見えたのは。

「あれは……」

息も絶え絶えに僕はつぶやいた。

あれは……魔女の家だ。

実際に魔女が住んでいるかは知らなかった。

町の間でそういう噂になっているだけだった。

ジェラルドと同様に悪い噂ばかりだったが、もしかしたら全部嘘かもしれない。

実は誰も住んでなかったり、気の優しいおばあさんが住んでいるかも。

⏰:07/06/09 21:10 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#19 [オッズ]
僕は決めた。

あの家に逃げ込もう。

一か八かの賭けだ。

僕は最後の力を振り絞り、家まで走りついた。

ドンドンと必死で家のドアを叩く。

ドアは僕の背丈ほどしかない。

早くしないと……。

ジェラルドに追い付かれてしまう!

⏰:07/06/09 21:13 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#20 [オッズ]
僕は無駄だと思いながらもドアの取っ手を掴み、まわした。

ギィー……

なんとドアは鈍い音をたてながらゆっくりと開いた。

僕は戸惑いながらも家に飛び込み、ドアを閉めて鍵をかけた。

ドアを閉めるとき、ジェラルドが悔しそうな顔をしているのが一瞬だけ見えた。

助かった……。

そう思ったのも束の間だった。

⏰:07/06/10 11:30 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#21 [我輩は匿名様である]
面白そう!!(^O^)

⏰:07/06/10 13:21 📱:W42K 🆔:.QfUCVgg


#22 [オッズ]

匿名様
あ(・∀・)
匿名様が見にきてくれて
嬉しいです
面白くなるように
頑張りたいと思います
恋愛系
書きたいなって思うんですが、
これを書き上げてからの方が
いいですかね(´・ω・`)

⏰:07/06/10 21:11 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#23 [我輩は匿名である]
オッズさんができると思うんなら同時進行でもいいと思います
頑張って下さい

⏰:07/06/10 21:18 📱:N703iD 🆔:☆☆☆


#24 [我輩は匿名様である]
>>23と同じ意見です(^o^)ノ
恋愛系のも書くなら応援しに行きますよ〜(^_-)-☆

⏰:07/06/10 21:26 📱:W42K 🆔:.QfUCVgg


#25 [オッズ]

匿名さん匿名様
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒
そういっていただけて
嬉しいです(^ω^*)
あまり自信がないので
この話がもう少し進んだら
書こうかと思います
その時わ読んでください

匿名様が
応援にきてくれるなら
心強いな(*´ω`*)

⏰:07/06/10 21:35 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#26 [オッズ]
「おやおや……。
人の家に勝手に入ってくるなんて、なんて子なんでしょうねぇ……」

僕は慌てて声のする方を向く。

そこには小さなおばあさんがいた。

すでに200年以上は生きてるんじゃないかというほど、腰はまがり、体のあらゆるところにしわが刻み込まれている。

真っ黒なワンピースを着ていて、とんがり帽子をかぶれば魔女にしか見えないだろう。

おばあさんは、不吉な笑みを浮かべていた。

小さな黄色い歯がこれでもかというくらい、びっちりとはえている。

僕は思わず、ぞっとしてしまった。

⏰:07/06/10 21:43 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#27 [オッズ]
「あ、えっと、勝手に入ってしまってごめんなさい。
人に追われてて……。
それに、ドアを叩いても誰も出てこなかったから、てっきり空き家なんだと思ったんです……」

僕はもごもごとそう言った。

魔女のようなおばあさんは、怪しげに大きな目で僕をじろじろと眺める。

僕は目から変な光線がでないかとビクビクした。

「……まぁ、いいだろう」

おばあさんは、独り言のようにそう呟いた。

何がいいのか僕にはさっぱりわからない。
怒っていないのだろうか?
おばあさんの表情から感情は読み取れなかった。

⏰:07/06/10 21:49 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#28 [オッズ]
おばあさんは窓の外を見つめた。
この家には小さな窓が一つだけしかないらしく、昼間だというのに部屋のなかは薄暗い。
僕はさらに不安になってしまった。

「ところで……お前を追ってきたというやつは?」

おばあさんの口調は今までとは違い、楽しんでいるようだった。

「えーと、ジェラルドっていう乱暴な子です。
でも、音もしないし、もうあきらめて帰ったんじゃないかと……」

僕が言いおわらないうちに、おばあさんはつかつかとドアの方に歩いていき、凄い速さでドアの鍵を抜き、ドアを開けた。

⏰:07/06/10 21:57 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#29 [オッズ]
すると、帰っていたと思ったジェラルドが、部屋のなかに転がり込んだ。

「ジェラルド!」

僕は恐怖の叫び声をあげた。

ジェラルドは予想以上に早く僕を痛め付けることができそうなので、喜んでいるようだった。

「ハッ!間抜けなばあさんがドアを開けてくれたから助かったぜ!
俺はお前が出てくるまで待ってるつもりだった」

なんていうやつだろう。

僕はやられる前から失神しそうだった。

⏰:07/06/10 22:01 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#30 [オッズ]
せっかく助かったと思ったのに……。

ジェラルドはおばあさんを思いっきり突き飛ばし、僕に飛び掛かろうとした。

もうだめだ……!

「おやめっ!」

狭い部屋中におばあさんの声が響き渡った。

僕もジェラルドも呆気にとられ、おばあさんを見つめた。

おばあさんは腰に手をあて、僕らを睨み付けている。
気のせいか、さっきりより腰が真っすぐになっている。

⏰:07/06/10 22:05 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#31 [オッズ]
「私を突き飛ばすとは、なんてガキなんだい!
喧嘩はやめて、さっさとそこの椅子にお座り!」

僕は素直にそれに従った。

今はジェラルドと同じくらいおばあさんのことも恐かった。

ジェラルドも渋々、僕の隣の椅子に腰をおろした。

「いい子だ、いい子だ」

おばあさんは満足気にほほ笑み、僕らの目の前にある椅子に座った。

⏰:07/06/10 22:10 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#32 [奈菜]
オッズさんx
前作怖くて楽しかった
です(ノ∀`*愛)+゜
また新しいオッズ作品
が増えるなんて心から
嬉しく思います厥゚ッ


もうlつの作品もすべて
読みました…x*゜
桜と翠のその後も気に
なります…笑

ここに色々書いてしま
うと迷惑になってしま
うので感想板があった
ら貼ってもらぇると嬉
しぃですュフ

影ながら応援してぃる
ので、オッズさんのペ
ースで頑張って下さいイ

⏰:07/06/11 02:31 📱:W43H 🆔:sNjqNHqE


#33 []
覚えてますカ?
最近コメントしてなかツたケド,いつもみてましたあ

オッズさんのあと3つ??の作品とーツても良かったです


これからも頑張って下さい



応援してます

⏰:07/06/12 04:14 📱:P902iS 🆔:LUCR7yrE


#34 [Ayu]
楽しみに見てます
更新、頑張って下さい

⏰:07/06/12 06:30 📱:P902iS 🆔:siZe8Rv2


#35 [オッズ]

奈菜さん
前作読んでくださって
ありがとおございます
そういってもらえて
光栄です(´;ω;`)

もう一つの方も
読んでくださったんですか
嬉しいです
続きわ書かないつもりなので
その後わご想像におまかせ
します

新しい感想板わ作ってないので
何かあったら
こっちに書きしてきださい
いろいろ配慮してくれて
どうもです
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2082/

⏰:07/06/14 20:28 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#36 [オッズ]

さん
覚えてます(*´∪`*)

全部読んでくれたんですか
大変だったですよね
すごく嬉しいです
ありがとお
ございます(*´ω`*)

はい
頑張りますっ

⏰:07/06/14 20:32 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#37 [オッズ]

Ayuさん
いつもありがとおございます
更新遅いですが
精一杯頑張ります(*。_。)

⏰:07/06/14 20:34 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#38 [オッズ]
おばあさんは一段と目をギラギラと輝かせた。
目と同じように大きい鉤鼻にはいぼがたくさんできている。

僕はおばあさんを見つめることに堪えられなくなり、部屋の中を見渡した。

本やホルマリン漬けだと思われるビン等が部屋の隅々に積み上げられている。

僕はぞくっとして、再びおばあさんの顔を見ることにした。
さきほどよりは、おばあさんの顔が可愛らしく感じられる。

⏰:07/06/14 22:00 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#39 [オッズ]
「私の名前はジャクリーン。ハンスにジェラルド……あんたたちに頼みがあるんだよ」

ジャクリーンと名乗ったおばあさんは、口が張り裂けるんじゃないかというくらいにんまりとした。

あれ……?
僕の名前を教えたっけ?

「頼みだと?」

ジェラルドはジャクリーンを恐れる様子もなく、今にも飛び掛かりそうな勢いで詰め寄った。

するとジャクリーンは黒いワンピースのポケットに手を突っ込み、何かを取り出した。

⏰:07/06/14 22:05 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#40 [オッズ]
「うわ……」

僕は息を呑んだ。

ジャクリーンは不気味に鈍く輝く銃を手にしていたのだ。

銃を実際に見たのは初めてだ……。

ジャクリーンがもっているとより一層恐ろしい。

僕たちを撃つつもりなんだろうか?

「ふぅん」

ジェラルドはおもしろそうにそう言っただけだった。

⏰:07/06/14 22:09 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#41 [オッズ]
僕はジェラルドの強きな態度に、なかば感動してきていた。

僕なんてさっきから足の震えがとまらないのに。

ジャクリーンは銃をテーブルのうえに置いた。

幸い僕らを撃つつもりではないらしい。

ジェラルドは獲物を狙う豹のように、目を爛々と光らせている。

⏰:07/06/14 22:11 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#42 [オッズ]
ジャクリーンは僕を無視してジェラルドに話し掛けた。

「ねぇ、ジェラルド?
この銃が欲しいと思わないかい?」

いやらしいしゃがれた声が静かな部屋に響く。

「くれるのか?」

ジェラルドはすでに銃を取ろうと手を伸ばしていた。

「もちろん。
ただ……条件があるね」

ジェラルドの手がピタリと動きを止める。

⏰:07/06/14 22:14 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#43 [オッズ]
「条件……?」

ジャクリーンは大げさに手を振った。

「なぁに、大したことじゃないんだよ。
さっきも言ったとおり、私の頼みを聞いてくれるだけでいいんだ……。
どうだい?」

「やる」

ジェラルドは考える様子もなく速答した。

ジャクリーンは満足そうにほほ笑み、今度は僕の方に向き直った。

⏰:07/06/14 22:18 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#44 [オッズ]
まさか……!

「僕は頼みなんて聞かないから!」

ジャクリーンが聞く前に、僕はそう叫んだ。

怪しいばあさんの頼みなんて、最上級に怪しいじゃないか。

そんなのをやすやすと引き受けるなんて、頭のいかれたやつだけだ。

例えば、僕の隣に座っている天使の顔をしたようなやつとかね。

ジャクリーンは小さく舌打ちをした。

⏰:07/06/14 22:21 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#45 [オッズ]
僕は聞こえないふりをして黙り込んだ。

ジャクリーンはしばらく僕を罵っていたが、ついにはあきらめ、作戦を変えることにしたようだ。

「ジェラルド、この銃がちゃんと使えるものか確かめてみたくないかい?」

そういって僕をチラリと横目で見る。

僕の手は汗で湿ってきた。

「あぁ……」

ジェラルドは無表情で答えた。

⏰:07/06/14 22:25 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#46 [オッズ]
ジャクリーンが勿体ぶった仕草で、銃をジェラルドに渡した。

僕は息を呑む。

「……僕を撃つ気?」

上ずった声。

ジェラルドは馬鹿にしたように笑うと、銃を僕に突き付けた。

銃は僕の眉間の辺りにしっかりと固定される。


ウソだろ……?

⏰:07/06/15 20:56 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#47 [オッズ]
いくらなんでも僕を撃つなんてありえないだろ?

しかし、無常にもジェラルドは引き金に指をかけ、今にも鉛の玉を発射させようとしている。

僕は泣きたくなった。

こんなのってひどすぎる……。
選択肢なんてないってわけか。

僕は消え入りそうな声でつぶやいた。

「……頼みを聞いてやる」

ジャクリーンは意地の悪い笑みを浮かべ、『感謝するよ』と言った。

⏰:07/06/15 22:22 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#48 [オッズ]
ジェラルドは『意気地なし』と僕をけなした後、銃を放り投げてジャクリーンに返した。

そのまま銃を持って逃走することも可能だったのに、ジェラルドはそうしなかった。
きっとジェラルドは、気味の悪いばあさんの頼みを聞いてやろうと張り切っているのだ。

彼はそんじょそこらの危険なことにはあきあきしていたのだろう。

そういう意味では、ジャクリーンの“頼み”は十分にジェラルドを満足させてやったはずだ。

だけど、僕は満足どころか今までに味わったことのない、後味の悪い思いをするはめになる。

⏰:07/06/15 22:28 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#49 [オッズ]
「さぁさぁ。さっそく頼みを聞いてもらうとしようか……」

僕はドキリとした。

一体、何を頼まれるんだろうか?

命に危険はないのか?

ジャクリーンは立ち上がった。
つられて僕らも立ち上がる。

僕は恐怖でまともに呼吸もできなくなっていた。

ジャクリーンはふところから蓋のされた試験管のようなものを取り出した。

⏰:07/06/15 22:31 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#50 [オッズ]
二つある。
試験管の中には赤みがかった紫色の液体がほんのちょっぴり入っている。

「お飲み」

ジャクリーンは無理矢理試験管を僕らに押しつけた。

さすがのジェラルドも疑わしげにおばあさんを睨んだが、意を決したように蓋を開け、飲み干した。

ジェラルドは一瞬顔をしかめたが、次の瞬間にはバタリと床に倒れた。

僕は声をあげることすら忘れていた。

⏰:07/06/15 22:36 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#51 [オッズ]
やっぱり……。

ジャクリーンは僕らを騙したんだ!

頼みなんて言っていたが、本当は僕らを殺そうとしていた。

「……騙したなっ!この魔女め!
ジェラルドが……。ジェラルドをよくも殺したな」

正直、ジェラルドはこの世から去るべき人間だと思っていたが、こうあっさりと床に倒れられると悲しい。

床に眠るジェラルドは息を呑むほど美しく、そのせいで余計に物悲しかった。

⏰:07/06/15 22:40 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#52 [オッズ]
ジャクリーンは目を見開いた。

「馬鹿なことを言うんじゃない!
いいから速くお飲み!」

僕は首を横に振った。

涙が頬を濡らしている。

ジャクリーンは観念したようにため息を吐いた。

「何を勘違いしているのかわからないが、ジェラルドなら生きている。
いいからさっさとしてくれないかい?」

生きている……?

僕はジェラルドを見なおした。

⏰:07/06/15 22:44 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#53 [オッズ]
確かに胸の辺りが上下に動いている。

僕はようやく液体を飲む決心をした。

なぜならジャクリーンが先程の銃をちらつかせはじめたからだ。

試験管の蓋を開ける。

僕は息を止めた。

そして中身のものを一気に飲み干す。

ひどい吐き気を感じたが、すぐに何が何だかわからなくなり、僕はジェラルドの隣に倒れた―――。

⏰:07/06/15 22:48 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#54 [オッズ]
―――――――――…

腹に痛みを感じて僕は目覚めた。

てっきり薬のせいで痛みを感じるのかと思ったが、ジェラルドが僕の腹を蹴り飛ばしたからだった。

「……ん?」

僕は目を擦りながら起き上がる。

頭がボーッとしていて気分が悪い。

ジェラルドが僕の頭を思いっきり殴った。

「痛っ!」

⏰:07/06/16 11:17 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#55 [オッズ]
「いつまでもボーッとしてんじゃねぇ!
まわりを見てみろ。それにこの臭いはなんだ?」

ジェラルドは忌々しそうに顔をしかめた。

彼の言うとおり、変な臭いがあたりに充満していた。

頭がちゃんと働くようになるにつれ、臭いはどんどん強烈になっていく。

僕も顔をしかめ、急いで鼻を摘んだ。

なんともいえない濃厚な生臭さ……。

この臭いを嗅ぎ続けたら、気がおかしくなりそうだ。

⏰:07/06/16 11:22 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#56 [オッズ]
必死で臭いから鼻を守りつつ、辺りを見回す。

僕達がいるのは小さな広場みたいなところで、まわりには民家が建っている。

変わったデザインの洋風な家々。

一見、特におかしな点はなかった。

「……変わったデザインの家だね」

僕はジェラルドに向かってそう言った。

⏰:07/06/16 15:19 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#57 [ふぅ]
>>1-100

⏰:07/06/16 17:09 📱:SH903iTV 🆔:xkPU0VwQ


#58 [オッズ]

ふぅさん
アンカありがとお
ございます(*゚ー゚)

⏰:07/06/16 22:21 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#59 [オッズ]
ジェラルドは僕を哀れむような目で見た。

暴力をふられるくらい、嫌な気分になった。

「お前ってマジで馬鹿だな。びっくりするぜ。
俺はデザインのことを聞きたいわけじゃない」

僕は首をひねった。

ジェラルドに馬鹿なんて言われる筋合いはない。

だけど、デザイン以外なにも思い浮かばない。

馬鹿と言われても仕方ないのかも……。

⏰:07/06/16 22:27 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#60 [オッズ]
「見てみろよ」

ジェラルドは一軒の家を指した。

僕は家をしっかりと観察するが、やっぱりダメだ。

デザインのことしか考えられない。

「全然人の気配がない。
庭なんて荒れ放題だし。
まわりの家も全部そうだ。
それに……ドアの近くの壁のところにある染みは血みたいだ」

⏰:07/06/16 22:31 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#61 [オッズ]
僕は息を呑んだ。

ジェラルドの言っていることはもっともだ。

人が長年住んでいないかのように、家々は不気味な静寂に包まれている。

壁の赤黒い染みも血のように見えるし。

なんの血であったとしても恐ろしい。

「あのババァは俺たちに何をやったんだ?
ここはどこなんだ?
夢じゃないんだよな?」

ジェラルドは呟いた。

⏰:07/06/16 22:36 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#62 [オッズ]
僕は何も答えることができなかった。

僕だって何もわかない。

やっぱりジャクリーンの頼みなんて聞こうとするべきじゃなかったんだ。

そもそも頼みがなんであるかもわからない。

僕がうなだれていると、ジェラルドが背後にある茂みを見つめた。

「……誰だ」

⏰:07/06/16 22:40 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#63 [オッズ]
僕は慌ててジェラルドが見つめている方を睨んだ。

すると茂みがごそごそと動き、人影が見えた。

僕は腰が抜けるんじゃないかというほど驚いた。

ジェラルドは鋭い目付きで人影を眺めている。

「……あ、あの」

透き通った女の人の声。

茂みから出てきた人影は、今まで見たこともないような美しい女の子だった。

⏰:07/06/18 22:25 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#64 [オッズ]
僕とジェラルドは一気に肩の力が抜けた。

綺麗な子だな……。

女の子は僕らよりも少し年上くらいに見えた。

肌は皮膚の中にラメが入っているんじゃないかと疑うほど、キラキラと白く輝いている。

すらっと背が高く、浮かんでいるのかと錯覚してしまいそうになるくらい、美のこなし方が優雅だ。

そして、何より驚いたのが髪。

頭の天辺は藍色で、毛先にいくほど水色っぽい色になっていく。

僕はうっとりと見惚れた。

⏰:07/06/18 22:34 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#65 [オッズ]
ジェラルドも、僕には絶対に見せそうもない気取った笑みを浮かべている。
町の女の子なら、いちころだったろう。

しかし、藍色の髪の女の子はそれどころではないようだ。

何かに怯えた顔をしている。

「ここわ危ないわ!
速くしないとミロが……死刑執行人が来ちゃう!」

女の子は切羽詰まったような口調でそう言い、茂みの中に飛び込んでいった。

「ついてきて!」

茂みの奥から女の子の声が聞こえてくる。

⏰:07/06/18 22:39 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#66 [オッズ]
僕が女の子を追って駆け出すと、しぶしぶジェラルドも付いてきた。

走るのが得意な僕だったが、茂みの奥は鬱蒼とした草木ばかりで、すぐに足を取られてしまう。

ジェラルドは難なく、女の子に負けない軽やかな足取りで進んでいく。

しばらく走るとようやく森を抜け、小さな家の前に着いた。

女の子は安心した表情で、僕とジェラルドを家のなかに入れた。

⏰:07/06/19 22:12 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#67 [オッズ]
「ここは私の家なの。
私の名前はキキよ」

女の子は微笑んだ。

髪と同じ藍色の瞳が僕らに問い掛けるように向けられている。

「ジェラルドだ」

ジェラルドは堂々と自慢げに名乗った。

僕はおどおどしてしまい、ジェラルドように格好よく言うことができなかった。

まあ、いつものことなのだが。

「ハンス……」

キキは、ジェラルドにも僕にも同様に笑いかけてくれた。

⏰:07/06/19 22:17 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#68 [オッズ]
茂みの奥から現れた時とは全く違い、キキは生き生きとしていてより一層美しかった。

「ジェラにハンスね!」

キキはそう言いながら踊りだした。

ジェラルドのことをジェラと呼べるのは彼女だけなんじゃないかと思った。

僕はいつまでもキキが踊っている姿を見ていたかったが、ジェラルドはそうでもないらしい。

「おい、キキ」

「なあに?」

ジェラルドの不躾な質問も気にしていないようだ。

⏰:07/06/19 22:22 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#69 [オッズ]
「さっき言ってたミロって誰だ?
死刑執行人とも言ってただろう?
それに、何故さっきの民家には人がいなかったんだ?
ひどい匂いもしやがった」

僕はふと気付いた。

「この辺りはあまり匂いがしないね」

キキは踊るのをやめ、目を伏せた。

とても悲しそうな顔をしている。

「あなたたちって旅人かなにか?この町のこと、何も知らないのね……」

⏰:07/06/19 22:26 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#70 [オッズ]
僕とジェラルドは黙ったまま頷いた。

「さっき、あなたたちを見つけられて本当によかったわ。
何も知らない旅人が時々この町に迷い込むのよね。
だから私、見回りをしているのよ」

茂みで会ったときのように、キキは不安そうにしていた。

「何のために?」

ジェラルドは容赦なかった。

キキの体がぶるぶると震えだす。

⏰:07/06/19 22:31 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#71 [オッズ]
「守るためよ。
ミロに……殺されないように……」

キキの声はひどく擦れていた。

僕はキキの声の調子から、それが真実であって深刻な問題であると理解できたが、いきなり『殺される』と言われてもピンとこなかった。

ジェラルドも訝しげに首を傾げている。

「殺されるのよ……。
さっきの家の人々はみんな殺されたか、仲間にされてしまった。
臭いのは死体の匂いだと思う……」

⏰:07/06/19 22:36 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#72 [ふぅ]
>>1-100

あげ

⏰:07/06/20 06:26 📱:SH903iTV 🆔:mxquRokw


#73 [オッズ]

ふぅさん
いつもいつも
あげてくださって
本当にありがとおございます
すごく嬉しいです(´;ω;`)

⏰:07/06/20 17:54 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#74 [オッズ]
それを聞いただけで吐きそうになった。

「それ、どういうこと?」

やっとの思いで僕はそう言った。

まさか、あの気分の悪くなる匂いが死体のものだなんて……。

そんなのありえるのか?

でも、キキが嘘をついているようには見えない。

僕は家の壁に血のようなものが付着していたのを思い出した。

「詳しく話せ」

⏰:07/06/20 17:59 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#75 [オッズ]
ジェラルドの口調はわずかではあるが、弱々しくなっていた。

キキも吐きそうな顔をしている。

「話すわ……。
ある日、突然この町の外れにミロっていう男が引っ越してきたの」

ミロ……。

そいつがどんなやつなのかさっぱりわからないのに、僕は思わず身震いをした。

「それで?」

⏰:07/06/20 18:02 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#76 [オッズ]
ジェラルドが先を促す。

キキは続きを話しだした。

「ミロは変わった男だったわ。
いつも何かに怯えているみたいだったし。
町の人たちはみんな優しい人たちばっかりだから……ミロと仲良くしようとしたの。
最初はなかなかうまくいかなかった。
だけど、あるとき彼はパーティを開くと言ってきたのよ」

「パーティ?」

キキはうなずいた。

⏰:07/06/20 18:06 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#77 [オッズ]
「そう、町の人を全員招待したの。
みんな喜んだわ。
多くの人が嬉しそうにパーティに向かった。
でも……」

キキはそこで啜り泣いた。

僕もジェラルドも口を挟まずに、キキが泣き止み、続きを話しだすのを待った。

キキは震えながら、辛そうに声を出す。

「みんな……」

⏰:07/06/20 18:10 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#78 [オッズ]
「殺されたの?!」

僕は我慢できずにそう聞いた。

ジェラルドが責めるような視線で僕を見つめる。

キキは寂しげに、口元を歪めた。

「殺されてない。
だけど、みんなミロに切り刻まれたわ……」

キキの目から大粒の涙が零れた。

⏰:07/06/20 19:07 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#79 [オッズ]
切り刻まれた……?

なのに殺されてない?

まったく矛盾してるじゃないか。

キキは涙を拭いて、肩をすくめた。

「ミロは不思議な力を持ってるの。
彼の包丁で体を切り裂かれても死ぬことはない。
彼の針で切り裂かれた体を縫い合わされたら、今まで通り動くことができる」

⏰:07/06/20 19:34 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#80 [オッズ]
僕もジェラルドも唖然とした。

そもそもジャクリーンに奇妙な薬を飲まされてから、変なことばかりだ。

ここは本当にどこなんだろう……。

夢であってほしい。

だけど、苦心するキキの顔はあまりにもリアルだ。

ジャクリーンは僕らに何をさせたかったんだ?

ジャクリーンの頼みごと……。

⏰:07/06/20 19:42 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#81 [オッズ]
「……切り刻まれて縫い合わされた人間はひどく醜いの。
見た目もそうだけど、中身も変わってしまって……。
何かを憎んでいるように、うなり声ばかりあげるの」

僕はなんとなくわかってきた。

ジェラルドもどうやらわかってきたらしい。

こんなおもしろいことはない、と言いたげに、顔中に美しい笑みを浮かべている。

「で?
パーティに行かなかった連中はどうなったんだ?」

⏰:07/06/20 19:45 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#82 [オッズ]
ジェラルドは意気揚揚と尋ねた。

すっかりやる気みたいだ。

「ミロはパーティの翌日、変わり果てた人々をパーティに来なかった人たちに見せたの。
『殺されるのが嫌だったら、私に切り刻まれろ』って言ったわ。
もちろん町の人たちは、あの姿になるのを嫌がった。
そしたら、ミロは夜のうちに次々と町の人たちを殺していった……」

「だから、死刑執行人って呼んだんだね?」

キキは小さな声で『えぇ』と答えた。

⏰:07/06/20 19:51 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#83 [オッズ]
「ここは安全なのか?」

ジェラルドはキキの家の中を物色しながら聞いた。

ジェラルドの手には、キキの物らしいはナイフが握られている。

「今のところは。
ここはミロが住んでいるところから離れているし。
あなたたちが居た所から少し離れたところが、今狙われているの……」

キキはそう言ってから、ジェラルドを眺めた。

「ところで何をしているの?」

⏰:07/06/20 19:56 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#84 [オッズ]
ジェラルドはキキを無視し、小さなキッチンを荒らしはじめた。

代わりに僕がキキに話し掛けた。

「ねぇ、キキ?」

「何?」

キキは疲れた笑みを浮かべた。

キキの顔はこの世のものとは思えないほど美しい。

ジェラルドだって勝ち目がないほどに。

やっぱりこれは夢なのかな……。

⏰:07/06/20 20:01 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#85 [オッズ]
そのほうがいいのかもしれない。

これから僕とジェラルドは危険な目にあうだろう。

でも夢なら、目覚めてしまえばそれですべてが終わる。

「ミロはなんでそんなことするのかな?」

「……わからないわ」

「キキは、この町を出ていかないの?」

僕は祈るような気持ちでそう聞いた。

⏰:07/06/20 20:05 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#86 [オッズ]
キキは首を振った。

「この町を去った人もいるわ。
だけど、こんな状況になってもほとんどの人が残っているのよ。
みんなこの町を愛しているから。
ミロが来る前の生活が、再び訪れるのを夢見てる」

僕は何も言えなくなってしまった。

想像してみる。

ミロというやつが来る前はどんなだったのかを。

⏰:07/06/20 20:12 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#87 [オッズ]
みんなキキみたいに美しかったのだろうか?

キキは静かに言った。

「とにかく、明日の朝には旅立ったほうがいいわ。
ここは危ないところよ。
朝のうちはミロは襲ってこないはずだから……」

「馬鹿言ってんじゃねぇ」

いつのまにか、ジェラルドはキキの横に居た。

「俺たちはここに残る」

⏰:07/06/20 20:15 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#88 [オッズ]
キキは目を真ん丸くした。

「馬鹿はそっちよ!
こんなところに長く居たってろくな目にあわないわ」

ジェラルドはにんまりとした。

「長居はしないぜ。
ミロを殺してとっとと出ていく」

キキはボーッと、自信満々にそう言うジェラルドを眺めていた。

僕も恨めしげにジェラルドを見る。

⏰:07/06/20 20:20 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#89 [オッズ]
「お前を助けてやる。
……俺らは救世主だ」

ジェラルドは手に持っていたナイフを、木のテーブルに突き刺した。

あぁ、やっぱり僕は危ない目にあうんだな。

僕とジェラルドが間違っていなければ、ジャクリーンの頼みは“この町を救え”ってところだろう。

いいさ、やってやる。


キキはジェラルドと僕を見つめ、また涙した。

⏰:07/06/20 20:24 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#90 [オッズ]
――――――――――…

他にミロについてわかっていることは特になかった。

ミロに切り刻まれた人たちはミロの家やその周辺に住んでいるらしい。

そして、キキの妹も切り刻まれた人間の一人らしい。

「妹はダコタっていうの。
すっごく可愛い子だったのよ。
肌はピカピカだし、髪は虹色なの……」

⏰:07/06/20 22:09 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#91 [オッズ]
キキは懐かしそうな顔をしていた。

ダコタはキキみたいに綺麗だったんだろうな。

切り刻まれた人間がどんな姿になってしまうのかわからないが、麗しい姿とは言えないだろう。

「なぁ、さっそくミロの家に行ってみようぜ!」

ジェラルドは陽気にそう言ったが、僕とキキはとてもそんな風にはしていられない。

「ダメよ!
夜はすごく危険なの!
せめて明日の朝になるまで待ちましょう」

⏰:07/06/20 22:15 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#92 [オッズ]
ジェラルドは顔をしかめたが、すぐに表情を緩めた。

「わかった。
じゃ、さっさと寝ようぜ」

ジェラルドは床に寝転がると、すぐにいびきをかきはじめた。

「どういう神経してるんだよ?」

僕は呆れながらも、ジェラルドの隣に横になった。

キキはほほ笑みながら、僕達に布団をかけてくれた。

⏰:07/06/20 22:19 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#93 [オッズ]
――――――――――…

朝。

僕は寝ていることができずに、早い時間に目を覚ました。

まだうっすらと空が明るくなってきたばかりだ。

僕は目を擦り、立ち上がった。

「……ん?あ、あれ?」

僕の隣に寝ていたはずのジェラルドがいない。

僕は焦った。

⏰:07/06/20 22:23 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#94 [小説案内人]
頑張れ
天才なオッズさん

⏰:07/06/22 14:59 📱:N703iD 🆔:☆☆☆


#95 [オッズ]

小説案内人さん
ありがとおございます
頑張りますね(*´∪`)
天才
ふつーの凡人オッズです

⏰:07/06/23 06:55 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#96 [オッズ]
僕は小さな家の中をキョロキョロと見回した。

ジェラルドは居そうにない。

家から出て、外を眺めてみたが静まり返っており、人の気配はない。

ジェラルドのやつ……。

僕は仕方なくキキを起こしに行った。

「キキ……」

キキは美しくベッドに横たわっていた。

僕が声をかけると、すぐにパチリと目を開けた。

⏰:07/06/24 17:38 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#97 [オッズ]
「おはよう、ハンス」

キキは笑顔を見せた。
表情が明るい。

たぶん、何ができるかわからない子供ではあるが救世主がやってきたことで少し希望を持ったのだろう。

でもキキが期待してるのは僕じゃない。

ジェラルドだ。

口は悪いし、乱暴だけど、他の人が持ってないような何かを持っている。

僕と違って、ジェラルドは側に居てくれるだけで頼もしい。

そんなジェラルドがいなくなったなんて……。

⏰:07/06/24 17:43 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#98 [オッズ]
「おはよう、キキ。
あのさ……」

キキは可愛らしい笑顔を保ちながら、ベッドから起き上がった。

「何?
あ、お腹すいてる?」

確かにすいてはいるんだけど……。

「違うんだ。
あの……居なくなっちゃったんだ」

キキは目を真ん丸くした。

「何が?」

⏰:07/06/24 17:47 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#99 [オッズ]
「ジェラルド……」

そう言った途端、キキの笑顔は萎んでいった。

僕は腑甲斐ない自分を恨み、申し訳なく思った。

「そっか……。
きっとこの町から出てっちゃったのよ」

キキはふらふらとした足取りで部屋から出た。

僕はあわててキキの後をついていく。

ジェラルドがこの町を出ていった?

⏰:07/06/24 17:51 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#100 [小説案内人]
あげ
更新頑張れ

⏰:07/06/27 00:13 📱:N703iD 🆔:☆☆☆


#101 [オッズ]

小説案内人さん
ありがとおございます
頑張ります(u_u)

テスト期間中なんで
終わりしだい
更新します
すいません(;´・∧・`)

⏰:07/06/28 21:29 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#102 [オッズ]
「それはないよ」

僕は力強く言った。

キキは立ち止まったが僕に背を向けたままだ。

「……なぜそう思うの?」

理由はいくつかある。

ここはジェラルドが知らない土地だ。

昨日、キキにここの地名を聞いてみたが、全く知らなかった。

僕らが住んでいた土地とは違う次元にあるか、すごく離れているかだ。

⏰:07/06/29 12:42 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#103 [オッズ]
いくらジェラルドだって、そんな得体の知れない土地からいきなり消え去ったりはしないだろう。

それに、ジェラルドはこれから身に起こることを楽しみにしていた。

それを思えば、ジェラルドはこの町から逃げたのではない。

考えられるのは……。

「ジェラルドは逃げたんじゃなくて、その逆なんだ」

キキは振り向いた。

眉間にしわがはいり、口元を歪めている。

⏰:07/06/29 12:47 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#104 [オッズ]
「まさか……」

キキの眉間にはより一層深いしわが刻まれた。

「ジェラルドはミロに会いに行ったんだ……。
それしか考えられない」

僕の声は擦れていた。

食べたものをすべて吐き出しそうになるくらい、気分が悪い。

あいつはミロに会いに行った……。


なんて命知らずなやつなんだろう。

⏰:07/06/29 15:51 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#105 [オッズ]
――――――――――…


僕とキキは林の中を通る一本の道を歩いていた。

二人とも足取りが重い。

風が僕らが先に進むのを阻止するかのように、ねっとりと吹き付けてくる。

「……もうすぐよ」

キキは言った。

僕は恐怖と不安で声を出すことができそうになかったので、とりあえずうなずいておいた。

⏰:07/06/29 22:22 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#106 [オッズ]
僕らはミロのところに向かっている。

だが、それは『ミロ』を殺すためというわけではなかった。

偵察するためといったところだろうか。

ミロがどんなやつなのかまったく知らなかったし、もしかしたらジェラルドがいるかもしれない。

僕とキキだけになった今では、ミロに太刀打ちするのは不可能だ。

相手は不思議な力を持っているようだし、切り裂かれた人々もミロの味方であるらしい。

⏰:07/06/29 22:26 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#107 [オッズ]
「切り刻まれて一つだけ特なことがあるとしたら、なかなか死なないことよ。
寿命はないし、病気にもかからない。
ひどい怪我を負わせれば息絶えるって聞いたけど、よくわからないわ。
誰もそんなことしたことがないし」

キキはそう語った。

ミロだけでなく、切り刻まれたやつらも強敵なわけだ。
なんて最高なんだ。


その時、異臭が僕の鼻をついた。

あの匂いだ……。

⏰:07/06/29 22:34 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#108 [オッズ]
ここに来たときと同じ匂い……。

人間の血の香りだ――。

全身でミロに近づいたことを感じる。

今すぐにでも走って逃げ出したい。

生きていられれば、元居た場所に帰れなくてもいい。
ジャクリーンの頼みなんて知ったことじゃない。

そもそもこの町を救うことがジャクリーンの頼みなのか?

⏰:07/06/29 22:38 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#109 [オッズ]
違うかもしれない。

例えば……隣の町で愛犬がいなくなってしまったおばあさんがいる。

そのおばあさんはジャクリーンの友達で、ジャクリーンの頼みっていうのは、その犬を見つけだすとか。

「はぁ……」

僕はため息を吐き、馬鹿らしい考えを頭から締め出した。

たとえこれがジャクリーンの頼みと違っていたって、今更どうにもできないじゃないか。

⏰:07/06/29 22:53 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#110 [オッズ]
関わってしまった以上、キキを放ってはおけない。

「あれよ」

キキが静かにそういった。

僕は我に返り、キキが見つめる先を見る。

そこには小さな家が建っていた。

煉瓦を積み重ね、無理矢理固めたような粗末で汚らしい家だった。

「あれがミロの家よ」

⏰:07/06/29 22:59 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#111 [オッズ]
物音をたてないように家に近づいていく。

僕は不恰好に取り付けられている窓の側に行き、そっと覗き込んだ。

朝だというのに、家のなかはとても暗かった。

「何か見える?」

僕は首を振ったが、段々と家のなかの様子がわかってきた。

四角い部屋のまわりは、ぐるりと柵が囲いこむようにたっている。

たぶん檻なのだろう。

⏰:07/06/30 08:52 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#112 [オッズ]
そして部屋の真ん中には人がゆったりと寝そべることができそうな、銀色に鈍く輝く台が置かれていた。

テーブルに使っているのだろうか?

それにしては椅子がない。

檻があることだって、十分すぎるほどおかしい。

「ねぇ、キキ。
ミロの姿は見えないよ。
それから、檻とか変な台があるんだけど……」

僕はそう言いながら振り向いた。

キキは落ち着かなさそうにそわそわと辺りを見回している。

⏰:07/06/30 15:46 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#113 [オッズ]
「そう……。
私、ちょっと気分が悪いの。家の周りを歩いてくることにするわ。
気晴らしにもなるし、ジェラも見つかるかも」

キキは弱々しく笑いながらそう言うと、僕が止める間もなく林の中へ行ってしまった。

キキはどうしたんだ?

一人にしたらあぶないし……。

けれどキキはこのへんの土地をよくわかっているし、僕が居たって居なくったって同じかもしれない。

僕は再び家のなかをのぞいた。

⏰:07/06/30 15:52 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#114 [オッズ]
何かいる様子はない。

部屋はこれ一つしかないようだし。

「……ミロのやつ、どこにいるんだ?」

そのとき、背後から不気味な笑い声が聞こえた。

僕はさっと振り向く。

「……ミロ?」

言葉がついて出た。

僕の前には気色の悪い男が笑みを浮かべて立っていた。

⏰:07/07/01 18:42 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#115 [エ]
ぷぎゃー!!
テスト前なのに一気に読んじゃったじゃないよおーイイ(笑)

なんかうざい子で申し訳ないけど、一応応援してますので!!!
ファイトですよっイ

⏰:07/07/01 20:34 📱:W44K 🆔:/qHswysQ


#116 [オッズ]

>>115さん
テスト前なのに
読んでくださって
ありがとおございます

全然うざくなんて
ないですよ(゚Д゚V)
むしろ嬉しいです
誰も読んでないかと
思っていたので

頑張ります(o´ω`)

うちも明日からまたテストだ

⏰:07/07/01 23:03 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#117 [小説案内人]
テストがやっと終わって
オッズさんの小説が読めます
更新いつでも楽しみにしてます

⏰:07/07/02 23:58 📱:N703iD 🆔:☆☆☆


#118 [オッズ]

小説案内人さん

テストお疲れさまでした
うちも今日で
テスト終わりです(・∀・)

そういってもらえて
すっごく嬉しいです

更新たくさんできるよおに
頑張ります(o´ω`)

⏰:07/07/03 16:38 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#119 [オッズ]
「おぉ……!」

男は両手をあげて、大げさに驚いてみせた。

鳥肌がたつ。

「私の名前をよくご存じですね……」

ミロはニカッと口を開いて笑みを浮かべる。

真っ赤な腫れぼったい唇から黄色い小さな歯たちがむき出しとなる。

魚のような目は充血しており、意地悪く爛々と輝いている。

⏰:07/07/03 16:46 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#120 [オッズ]
ミロの外見は僕が想像していたよりも、普通の人間ぽかった。

風船のように突き出たお腹から、細くて短い手足が生えている。

どことなくピエロを連想させるような小男だ。

しかし、ミロの持つ雰囲気は想像以上だった。

なんといっていいのかわからないが、側にいるだけで相手を不快にさせる。

⏰:07/07/03 16:52 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#121 [オッズ]
僕はすぐにでもこの男から走って逃げ出したくなる衝動にかられた。

実際にそうすべきだった。

けれど、僕の足は地面にくっついてるんじゃないかと思うほど重く、とても逃げだせるような状態じゃなかったんだ。

もし、僕が逃げることができていたらと、今でも後悔しているんだ―――…。


「聞いていますか?」

ミロが僕の顔を覗き込んでいた。

⏰:07/07/03 16:58 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#122 [オッズ]
思わず小さな悲鳴をあげてしまった。

「すいません、驚かせてしまいましたねぇ……。
何を考えていたんでしょうねぇ?」

ミロの顔中に薄気味悪い笑みが広がった。

殴りたい。

僕はミロを思いっきり睨んでやった。

これがジェラルドだったら、即殴っているか、気のきいたことを言い返すんだろうなぁ。

⏰:07/07/03 17:03 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#123 [オッズ]
「おやおや……そんなに睨まないでくださいよぉ」

ミロはあきらかに楽しんでいる口調だった。

今のところ狂暴そうなところはない……。

キキの言うとおり、昼間は安全なのだろうか?

そもそも何を根拠に安全と言ったのだろう。

「……ところで、キキと君のオトモダチはどこにいるんだい?」

ドキッとした。

⏰:07/07/03 19:00 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#124 [オッズ]
「なんで……」

なんで知っているんだ?

キキはともかく、昨日この町にやってきたばかりのジェラルドのことまで……。

キキ以外には誰もあっていないはずなのに。

「……キキ……」

僕は呟いた。

僕の中にある疑問がわいてくる。

キキ……
彼女は一体何者なんだ?

⏰:07/07/03 19:06 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#125 [オッズ]
僕らはなんの疑いもなく、今までキキを信じてきた。

だけど、キキが僕達の味方だなんて誰が言った?

ミロの仲間じゃないと証明できるか?


……できない。


「ようやく理解できたようですね……」

ミロが卑しい声で囁く。

「……嘘だ」

⏰:07/07/03 19:10 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#126 [オッズ]
僕の声は弱々しかった。

キキのことを信じ続けることはできそうになかった。

キキがミロの仲間ならば、話の筋道がつく。

僕とジェラルドが眠っているうちに、こっそりとミロのところに行って、僕らのことを教えたんだ。

だから、こいつはジェラルドのことを知っている。
もちろん僕のことも。

「嘘じゃないということは、あなたもちゃんとわかっているはずです」

⏰:07/07/03 19:14 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#127 [オッズ]
ミロの甘ったるい口調に吐き気がした。

言い返す気力もない。

キキが僕らを裏切った。

もう何が本当なのかわからない。

「あれは……本当なのか?」

ミロは首を傾げた。

「何がです?」

「町の人たちを切り刻んだこと……」

⏰:07/07/03 19:18 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#128 [オッズ]
ミロは唸った。

「それは……事実ですね。
ですが、誤解しないでいただきたいです。
彼らにいいことだと思ったから、私はああしたのですよ」

彼らにいいこと?

ミロは結局、頭のいかれた残忍な野郎で、キキもそれと大差はないわけだ。

僕は鼻で笑った。

「……狂ってる」

僕の言葉を聞いて、ミロは眉をぴくっと動かした。

⏰:07/07/03 19:22 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#129 [オッズ]
「……あまり調子にのらないほうが身のためですよ」

ミロは苦々しげに言い、突き刺さるような視線を僕に送った。

そして付け加える。

「どっちにしても、もう遅いですがね……」

その時、ようやくミロが手にしているものに気付いた。

今までに
見たこともないような大きさの包丁だった―――…。

⏰:07/07/03 19:27 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#130 [オッズ]
――――――――――…

「さぁさぁ、ここで大人しくしていてくださいよ」

僕は檻の中からミロを眺めた。

まさか捕まってしまうなんて……。

でも、牛も楽々切り殺せるような包丁見せられて、無理矢理に逃げるなんてできるはずない。

ミロは満足そうに僕を見つめ返している。

部屋の四方に広がっていた檻は、二三人が入れるくらいの広さに区切られていた。

⏰:07/07/03 19:57 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#131 [オッズ]
ミロは巨大な包丁を杖のようにして立っている。

「先程も聞きましたが、キキとジェラルド君はどこでしょうね?」

「知らない」

僕はぶっきら棒にそう答えた。

「今すぐ僕を殺す気がないならどこかに行ってよ!」
ミロをこれ以上眺めていたら目が腐る。

殺されるなら、せめてそれまでの間一人にさせてほしい。

⏰:07/07/03 20:52 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#132 [オッズ]
ミロに対する怒りが強すぎて、恐怖を感じている余裕はなかった。

でも、何よりも気掛かりなのはキキのことだ……。

キキ……。

「さっさと出ていけ!」

僕は叫んだ。

ミロは渋い顔をして、どうするべきか迷っている。

その時、僕の視界にあるものが飛び込んできた。

⏰:07/07/03 20:55 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#133 [オッズ]
ついにミロは部屋から出るために、僕に背を向けようとした。

「待って!」

ミロは動きを止めると、驚いたと言わんばかりに目を真ん丸くした。

「……何か?」

僕はこっそりと深呼吸をする。

「ぼ、僕を……僕を殺さないでっ!」

⏰:07/07/03 21:00 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#134 [オッズ]
ミロは更に目を丸くした。
目玉が飛び出しそうだ。

「……ほぅ、いきなりどうしたんです」

ミロは興味深そうに、顎を擦った。

僕は泣き声をあげ、切実に訴える。

「やっぱり死にたくないんだ!
キキとジェラルドの居場所なら教える!」

ミロがにんまりと微笑んだ。

⏰:07/07/03 21:12 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#135 [オッズ]
僕はミロの返事を待たずに、わめき散らした。

「キキとはここにくる途中ではぐれたんだ!
でも、必ずこの近くにいるはずだよ!信じてよっ!」

ミロは顔を檻に近付けてきた。

「信じますよ。
それでは……ジェラルド君は……?」

「ジェラルド……?」

僕は思わず笑みを零した。

⏰:07/07/03 21:18 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#136 [オッズ]
「俺ならここだ!」

ジェラルドの咆哮が狭い部屋に轟く。

ミロはギョッとし、振り返ろうとしたが、ジェラルドの素早さにはかなわなかった。

ジェラルドは飛び掛かり、首を絞めるような態勢でミロに抱きついた。

ジェラルドの手にはキキの家で調達したナイフが握られている。

「ジェラルド!」

⏰:07/07/03 22:16 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#137 [オッズ]
僕は喜びの声をあげた。

ジェラルドは僕の方をちらりと見て、かすかに笑った。

「ハンス、なかなかやるじゃねぇか」

嬉しさを隠し切れずに、僕はにっこりと笑う。

ジェラルドに誉められた!

ミロを追い出そうとしたときに、ジェラルドが窓からこちらを覗いているのが見えたのだ。

⏰:07/07/03 22:21 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#138 [オッズ]
そこで僕がミロの気を引いて、ジェラルドに気付かないようにしたのだ。

ミロの顔は、ジェラルドに首を絞められているため、土気色に変わっている。

「残念だったな……。
死ぬのは俺たちじゃなくてお前だ!」

ジェラルドは不気味に笑いながら、ナイフを振りかざす。

ミロの口から涎とともに悲痛な音がもれた。

「ま、待て……待ってくれ!!お前ら、俺が死んだら困ったことになるぞ……」

⏰:07/07/04 18:11 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#139 [オッズ]
ミロは泣き叫んだ。

目は涙で潤み、鼻水が上向きについた不恰好な鼻から流れ出ている。

その姿は醜悪で、とても惨めだった。

ジェラルドは目を細めた。

獲物を狙う鷹のような目である。

そして、ナイフをそっとミロの頬にあてる。

一筋の血が垂れた。

「困んねぇな……」

⏰:07/07/04 20:13 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#140 [オッズ]
「ひぃ!」

ミロはこの世の終わりでもやってくるかのような悲鳴をあげた。

「や、やめ……やめて!」

頬から流れる血。

赤い……。

ミロも一応人間なんだ。

僕がボーッとそんなことを考えていると、ミロがいきなりこちらを見た。

「ハンス君!
お願いだ……助けて!」

⏰:07/07/04 20:22 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#141 [オッズ]
僕はこの醜い男から目をそらした。

「僕も困らないよ。
それに檻に入れられてるんだ。何もできない」

ミロは歯を食い縛った。
物凄い形相だ。

「いいや!困るはずだ!
ハンス君、よく考え……」

声はそこでとまった。

ジェラルドが更に力をこめて、ミロの首を締め付けたらしい。

「黙れ」

⏰:07/07/04 20:27 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#142 [オッズ]
ミロはそれでも口をパクパクと動かし、必死で僕に喋りかけてくる。

しかし、何を言っているのかちっともわからない。

ミロが死んで困る?

馬鹿らしい。

生きている方が困るというのに。

町の人々を無残な姿に
変えて……

無残な姿に……?

そうか!

⏰:07/07/04 20:55 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#143 [オッズ]
僕はハッとし、

「ジェラルド!」

と、大声を出した。

ジェラルドは驚き、ナイフをミロから遠ざけた。

「ジェラルド、ミロを離してやれ」

ジェラルドは不愉快そうにした。

「なぜだ?」

僕は肩をすくめる。

ミロは苦痛に顔を歪めながらも、声をあげて笑った。

「困ったことになるんだ」

⏰:07/07/04 20:59 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#144 [オッズ]
「どういうことだ?」

「ミロを殺したら、町の人たちの姿はあのままだ」

僕は呟いた。

「その通りです!」

ミロが口をはさんだ。
絶望の表情は消え、生き生きとしている。

「ハンス君の言ったとおり、私を殺したって町の人々はもとの姿には戻れませんよ。
ですが……」

ミロは
えげつない顔で話す。

⏰:07/07/04 21:26 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#145 [オッズ]
「私は彼らをもとの姿に戻すことができます。
ただし、生きていれば……ですがね」

ジェラルドは眉間にしわを寄せ、ミロを睨み付けた。

「関係ねぇな。
俺はこの町のやつがどんな姿だろうと、どうでもいいし」

僕はため息をついた。

「……だめなんだよ。
おそらく僕達がこの町に連れてこられたのは、町の人たちを元に戻すためのはずだ。
だから、ミロを殺してしまったら町の人々を元に戻せないことになる。
そしたら、僕らは家に帰れないんだ!」

⏰:07/07/04 21:33 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#146 [オッズ]
僕はヒステリックにそう言った。

二度と家に帰れないなんてごめんだ。

ミロはわけがわからないと言う顔をしていた。

僕らがジャクリーンに無理矢理ここに連れてこられたのを知らないからだろう。

僕の話を聞いて、ジェラルドはミロを殺すのをやめるかと思ったが、そうではなかった。

彼の目は殺気でみなぎっている。

⏰:07/07/04 21:36 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#147 [オッズ]
「俺はかまわねぇ……」

ジェラルドは以前から人を殺したくてうずうずしていたんだろう。

いつも普通じゃない目をしていた。

そこら変にいる悪なんかとは違う。

もっと恐ろしい何かを隠し持っていた。

「ジェラルド……!」

どうしよう?

⏰:07/07/05 17:14 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#148 [オッズ]
どうすればジェラルドを止められるんだ?!

ミロの顔は汗でテカテカと光っている。

ジェラルド――…

……そうだ!

僕は、ジャクリーンがジェラルドにした約束を思い出した。

「やっぱりそいつを殺すべきじゃないと思うけど?」

僕の声は不安でうわずっていた。

果たして、ジェラルドは食い付いてくれるだろうか?

⏰:07/07/05 17:19 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#149 [オッズ]
「ジャクリーンから……銃をもらえなくなるぞ。
人なんていつでも殺せるけど、ここにいたら銃は手に入らないかもしれないし……」

祈るような目でジェラルドを見つめる。

「……しょーがねぇな」

ジェラルドは渋々ではあったが、ミロを離した。

その途端、ミロのおぞましい高笑いが響き渡った。

僕とジェラルドはぞっとした。

⏰:07/07/05 20:20 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#150 [オッズ]
次の瞬間、ミロは物凄い勢いでジェラルドに飛び掛かった。

あの体であんなに素早く動けるとは驚きだ。

さっきとは逆に、今度はジェラルドに包丁が突き付けられる。

「……クソッ」

ジェラルドは舌打ちをした。

「おい、ハンス。
こうなることは想定内だったんだろうなぁ?」

⏰:07/07/05 20:24 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#151 [オッズ]
僕は怖ず怖ずと首を振った。

少し考えればこうなることはわかったはずなのに。

このままじゃ二人とも殺される……。

「……ごめん」

僕はその場に座り込んだ。

ジェラルドは思いっきり悪態をつく。

「喧嘩はおよしなさい。
ジェラルド君……君の美しい体を切り裂けるなんて光栄だ……」

⏰:07/07/05 20:30 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#152 [オッズ]
巨大な包丁がギラギラと輝き、ジェラルドに迫る。

“やめろ!”

僕が叫ぼうとしたときだった。

「やめてっ!!」

甲高い叫び声がした。

もちろん僕の声ではない。

ミロの口元がほころんだ。

「おや……、ようこそいらっしゃい。
我が友キキよ……」

⏰:07/07/05 20:41 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#153 [オッズ]
キキは息を切らせ、肩を震わせながらドアのところに立っていた。

「私は……あなたの友達なんかじゃないわ」

キキは冷たく言い放った。

僕は複雑な表情でキキを眺める。

キキは僕の視線に気付くと申し訳なさそうにした。

「ハンス!
ごめんなさい。私、昼間は安全だと思ってたの……」

僕はポカーンとした。

キキは何を言ってるの?

ミロの仲間じゃないのか?

⏰:07/07/05 20:50 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#154 [オッズ]
キキはミロの方に向き直った。

「ジェラを離して」

厳しい口調だ。

キキの顔は不安と怒りが入り交じり、今にも泣きだしそうになっている。

「……ダメです」

ミロは細い目を限界までぱっちりと開いた。

キキは唇を噛み締めた。

僕は混乱のなか、美しい彼女がどうするつもりなのかをうかがった。

⏰:07/07/05 20:55 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#155 [オッズ]
わずかな間、沈黙が続く。

そして、ついにキキが意を決したらしく、口を開いた。

「……だったら、
私がジェラの代わりになるわ―――…」

僕は固まった。

ジェラルドも呆然とキキを見つめている。

頭の整理がつかないうちにミロが話を進めた。

「……わかりました。
それでしたら、ジェラルド君を離しましょう」

満面の笑みだ。

⏰:07/07/05 20:59 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#156 [オッズ]
キキは慎重にうなずく。

「あともう一つ……条件があるの」

「なんでしょう?」

ミロはそう言いながら、ジェラルドを僕の隣の檻に閉じ込めた。

「あなたが
醜くしてしまった町の人たちを元に戻して」

いくらなんでもその条件はのまないだろうと思った。

しかし、ミロは簡単に“わかった”と、返事をした。

「私を殺す前に元に戻して。いますぐに、ここで」

⏰:07/07/05 21:06 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#157 [オッズ]
ミロがパチンと指をならした。

すると、どこからともなく布を引きずる無数な音が聞こえてきた。

そして、数分の間に部屋は切り裂かれた町の人々でいっぱいになった。

僕は息を呑んだ。

初めて切り裂かれた人たちを見た。

体中が紫や赤黒い色をしており、継ぎ接ぎだらけで縫い目からはぬるぬるとしたものがはみ出ている。

顔がまったく顔らしくないものや、体の一部がなくなっているものもいた。

⏰:07/07/05 21:10 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#158 [オッズ]
性別はさっぱりわからず、腐敗臭がひどい。

服の代わりにボロ布を体に巻き付けている。

僕は気分が更に悪くなった。

切り裂かれた人がこんなにひどい姿をしていたなんて……。

「いきますよ」

ミロはそう呟くと、懐から小瓶をとりだした。

その中には液体が並々と入っている。

⏰:07/07/05 21:14 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#159 [オッズ]
ジャクリーンに飲まされたものが頭を過る。

ミロは小瓶の蓋を開け、液体を人々に振り掛けた。

振り掛けながら呪文のようなものを唱える。

その途端、醜かった人たちが変わった。

もう醜くくなどなかった。

皆美しい、本来の姿に戻ったのだ。

僕は呆気にとられた。

⏰:07/07/05 21:18 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#160 [オッズ]
こんなことが世の中にはあるのだ。

町の人たちは戸惑い、その場に立ち尽くしていた。

よく見ると、彼らは槍のような武器を手にしている。

「さぁ、あなたの望みは叶えました。
中央の台にお乗りなさい」

キキは町の人たちを眺めて涙をこぼした。

「わかった……」

ゆっくりとした足取りで、キキは部屋の真ん中にある台の上まで歩いた。

⏰:07/07/05 21:23 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#161 [オッズ]
「キキ!」

僕とジェラルドは同時に叫んだ。

キキはほほ笑み、手を振った。

「あなたたちに出会えて本当によかった。
私は死ぬけど、町の人たちは元に戻るわ!
幸せよ……。
ジェラルド、そしてハンス……ありがとう。
あなたたちは立派な救世主だったわ……」

僕の目から涙がとめどなく流れた。

ジェラルドもうなだれている。

ミロはキキの言葉を聞いてせせら笑った。

⏰:07/07/05 21:28 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#162 [オッズ]
「自分は死ぬというのに幸せなんて馬鹿らしい!
私は、お前のそういうところが大嫌いだ!虫酸がはしる!」

キキは……僕らを裏切っていなかったのだ。

僕はミロの言ったことをまんまと信じてしまった。

キキはあんなに親切だったというのに……。

結局僕らはキキを助けることなどできないのだ。

それどころか、僕らのせいでキキは命を縮める。

僕は檻にしがみ付き、必死で揺らした。

⏰:07/07/05 21:33 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#163 [オッズ]
キキ―――…!!!

僕は意味のわからぬことを口走り、絶叫した。

ジェラルドは僕の横にそっと立ち、震える声で“ありがとう”と呟いた。



そこから先はスローモーションのようだった。

忘れたくても忘れられない光景……。

ミロが巨大な包丁を振りかざし、キキの腕を切り落とす。

⏰:07/07/05 21:37 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#164 [オッズ]
キキの顔は苦痛で歪んだが、唇を噛み締め、声をあげないようにしているのが見えた。

ミロは急所をはずしてキキを痛め付けていく。

僕の顔にまで血しぶきが飛んでくる。

ついにキキは耐えられなくなり、耳をつんざくような悲鳴をあげた。

それが永遠に続くように思われたが、悲鳴は段々と小さくなり、聞こえなくなった。

台の上には、肉の塊が横たわっている。

真っ赤な血のなかに見える青い髪がだけが、その肉がキキであると語っていた。

⏰:07/07/05 21:45 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#165 [オッズ]
ミロはそれを見て、狂ったように笑いだした。

僕は憎悪で気がおかしくなりそうだった。

その時、ミロの笑い声が不意に止まった。

そして、僕の顔に何か飛んできた。


血だった―――…。


虹色の髪をした女の子が、もっていた槍でミロを突き刺していたのだ。

⏰:07/07/05 21:51 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#166 [オッズ]
ダコタだ、と、思った。

キキが一度だけ口にした妹のこと。

僕は彼女のように、ダコタは美しいのだろうかと想像した。

実際に見るダコタは、可愛らしかった。

しかし、顔は憎しみで歪み、キキに感じたような美しさは感じられなかった。

それは他の町人も同じだった。

ダコタの行動を見た人たちは、次々と槍でミロを刺していく。

⏰:07/07/05 21:57 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#167 [オッズ]
ミロはうめきもがいた。

槍はミロの体を貫通し、無数の穴をあけていく。



部屋は
血潮で真っ赤だった。


僕はキキの肉片たちを眺めた。

憎しみに突き動かされた町の人たちよりも、みんなの幸せを喜び、肉片になっていったキキの方がよほど美しいと思った。

⏰:07/07/05 22:01 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#168 [オッズ]
――――――――――…

僕は気を失った。

次に目が覚めたとき、僕はジャクリーンの家の床に転がっていた。

隣には今起きた様子のジェラルドがいる。

ジェラルドの体には点々と血の染みがついていた。

ジャクリーンが僕らの前に立ち、疲れたような笑みを見せた。

⏰:07/07/05 22:05 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#169 [オッズ]
「キキはあの町でとても重要な存在だった。
キキこそが優しさの源だったのさ。
憎しみなんてものはキキの前ではありえなかった。
だが、彼女が死んだ今、あの町の人間たちに憎しみがうまれた。
もう、やつらは私らと同じ普通の人間になっちまったのさ」

ジャクリーンはそれだけ言うと、ジェラルドに銃を渡した。

ジェラルドは銃を受け取り、無言のままそれを眺めていた。


ジェラルドの目には涙が光っていた―――…。

⏰:07/07/05 22:12 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#170 [オッズ]

【CARTAIN CALL】美しい村の醜い男わ
これで終わりです
読んでくださっていた方、
感想くれた方、
本当にありがとお
ございました(o´ω`)

⏰:07/07/05 22:14 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#171 [エ]
お疲れ様ですわっイイ

次もこのような非現実的なものを楽しみにしてますっエイイ

⏰:07/07/06 01:35 📱:W44K 🆔:zPpL.Ufc


#172 [小説案内人]
オッズさんお疲れ様ですやっぱり最高出来たらこれの続編を見てみたいです。

⏰:07/07/06 02:34 📱:N703iD 🆔:☆☆☆


#173 [オッズ]

>>171さん
すいません
絵文字が見えません

読んでくださって
本当に
ありがとおございました

かきもしてくれて
とっても嬉しいです(・∀・)

はいまた書きたいと
思ってます
話が思いつくまで、
恋愛系のものを書こうと
思います(o´ω`)

⏰:07/07/06 20:29 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#174 [オッズ]

小説案内人さん
今まで読んでくださって
ありがとおございました

かきしてくれて
すごく励みになりました

最高なんて言っていただけて
光栄です(´;ω;`)

またこういう話を思いついたら
ハンスとジェラを
登場させたいと思います

⏰:07/07/06 20:32 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#175 []
>>1-100
>>100-200

⏰:07/07/06 20:53 📱:SH904i 🆔:xQL4qma6


#176 [オッズ]

さん
アンカありがとお
ございます(*´∪`*)

⏰:07/07/06 22:21 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#177 []
失礼しますフ
<<1ー40
<<41ー80
<<81ー120
<<121ー160
<<161ー200

⏰:07/07/08 12:45 📱:W43H 🆔:BrBxje26


#178 []
失敗ホホホ
>>1ー40
>>41ー80
>>81ー120
>>121ー160
>>161ー200

⏰:07/07/08 12:47 📱:W43H 🆔:BrBxje26


#179 []
何度もすみませんKKK
>>1-40
>>41-80
>>81-120
>>121-160
>>161-200

⏰:07/07/08 12:50 📱:W43H 🆔:BrBxje26


#180 [オッズ]

>>177-179さん
大丈夫ですよ
アンカありがとお
ございます(*・∀・)

⏰:07/07/08 16:36 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#181 [我輩は匿名である]
おもしろかったですっ

次回作期待してますっ(*^・ω・)ノ

⏰:07/07/08 18:23 📱:N902i 🆔:☆☆☆


#182 [オッズ]

匿名さん
読んでくれて
ありがとおございます

おもしろいって
言っていただけて
すごく嬉しいです(*ノωノ)

また新しいの
書きはじめました
この小説とわちょっと
タイプが違うんですが
よかったら
読んでください(w>∪<w)
bbs1.ryne.jp/r.php/novel-f/4942/

⏰:07/07/08 19:18 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#183 [我輩は匿名である]
あげーる

⏰:07/09/21 18:05 📱:P902i 🆔:☆☆☆


#184 [オッズ]

>>183
あげてくれて
ありがとうございます

⏰:07/09/24 18:49 📱:SH703i 🆔:☆☆☆


#185 [我輩は匿名である]
久しぶりにあげ☆

⏰:08/04/12 23:09 📱:F705i 🆔:☆☆☆


#186 [オッズ]

>>185匿名さん

あげてくださって
ありがとうございます

⏰:08/04/28 23:21 📱:SH703i 🆔:☆☆☆


#187 [りな]
あげ

⏰:09/09/22 02:41 📱:F08A3 🆔:☆☆☆


#188 [みぃ]
>>1-200
おもしろかった∩^ω^∩

⏰:09/09/23 09:15 📱:SH05A3 🆔:☆☆☆


#189 []

⏰:10/08/01 14:40 📱:F08A3 🆔:☆☆☆


#190 [我輩は匿名である]
あげ

⏰:11/02/19 22:28 📱:F08A3 🆔:☆☆☆


#191 [○○&◆.x/9qDRof2]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/10/18 20:03 📱:Android 🆔:h3l12Mig


#192 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-30

⏰:22/10/18 20:04 📱:Android 🆔:h3l12Mig


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