【CARTAIN CALL】美しい村の醜い男
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#41 [オッズ]
僕はジェラルドの強きな態度に、なかば感動してきていた。

僕なんてさっきから足の震えがとまらないのに。

ジャクリーンは銃をテーブルのうえに置いた。

幸い僕らを撃つつもりではないらしい。

ジェラルドは獲物を狙う豹のように、目を爛々と光らせている。

⏰:07/06/14 22:11 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#42 [オッズ]
ジャクリーンは僕を無視してジェラルドに話し掛けた。

「ねぇ、ジェラルド?
この銃が欲しいと思わないかい?」

いやらしいしゃがれた声が静かな部屋に響く。

「くれるのか?」

ジェラルドはすでに銃を取ろうと手を伸ばしていた。

「もちろん。
ただ……条件があるね」

ジェラルドの手がピタリと動きを止める。

⏰:07/06/14 22:14 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#43 [オッズ]
「条件……?」

ジャクリーンは大げさに手を振った。

「なぁに、大したことじゃないんだよ。
さっきも言ったとおり、私の頼みを聞いてくれるだけでいいんだ……。
どうだい?」

「やる」

ジェラルドは考える様子もなく速答した。

ジャクリーンは満足そうにほほ笑み、今度は僕の方に向き直った。

⏰:07/06/14 22:18 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#44 [オッズ]
まさか……!

「僕は頼みなんて聞かないから!」

ジャクリーンが聞く前に、僕はそう叫んだ。

怪しいばあさんの頼みなんて、最上級に怪しいじゃないか。

そんなのをやすやすと引き受けるなんて、頭のいかれたやつだけだ。

例えば、僕の隣に座っている天使の顔をしたようなやつとかね。

ジャクリーンは小さく舌打ちをした。

⏰:07/06/14 22:21 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#45 [オッズ]
僕は聞こえないふりをして黙り込んだ。

ジャクリーンはしばらく僕を罵っていたが、ついにはあきらめ、作戦を変えることにしたようだ。

「ジェラルド、この銃がちゃんと使えるものか確かめてみたくないかい?」

そういって僕をチラリと横目で見る。

僕の手は汗で湿ってきた。

「あぁ……」

ジェラルドは無表情で答えた。

⏰:07/06/14 22:25 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#46 [オッズ]
ジャクリーンが勿体ぶった仕草で、銃をジェラルドに渡した。

僕は息を呑む。

「……僕を撃つ気?」

上ずった声。

ジェラルドは馬鹿にしたように笑うと、銃を僕に突き付けた。

銃は僕の眉間の辺りにしっかりと固定される。


ウソだろ……?

⏰:07/06/15 20:56 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#47 [オッズ]
いくらなんでも僕を撃つなんてありえないだろ?

しかし、無常にもジェラルドは引き金に指をかけ、今にも鉛の玉を発射させようとしている。

僕は泣きたくなった。

こんなのってひどすぎる……。
選択肢なんてないってわけか。

僕は消え入りそうな声でつぶやいた。

「……頼みを聞いてやる」

ジャクリーンは意地の悪い笑みを浮かべ、『感謝するよ』と言った。

⏰:07/06/15 22:22 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#48 [オッズ]
ジェラルドは『意気地なし』と僕をけなした後、銃を放り投げてジャクリーンに返した。

そのまま銃を持って逃走することも可能だったのに、ジェラルドはそうしなかった。
きっとジェラルドは、気味の悪いばあさんの頼みを聞いてやろうと張り切っているのだ。

彼はそんじょそこらの危険なことにはあきあきしていたのだろう。

そういう意味では、ジャクリーンの“頼み”は十分にジェラルドを満足させてやったはずだ。

だけど、僕は満足どころか今までに味わったことのない、後味の悪い思いをするはめになる。

⏰:07/06/15 22:28 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#49 [オッズ]
「さぁさぁ。さっそく頼みを聞いてもらうとしようか……」

僕はドキリとした。

一体、何を頼まれるんだろうか?

命に危険はないのか?

ジャクリーンは立ち上がった。
つられて僕らも立ち上がる。

僕は恐怖でまともに呼吸もできなくなっていた。

ジャクリーンはふところから蓋のされた試験管のようなものを取り出した。

⏰:07/06/15 22:31 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#50 [オッズ]
二つある。
試験管の中には赤みがかった紫色の液体がほんのちょっぴり入っている。

「お飲み」

ジャクリーンは無理矢理試験管を僕らに押しつけた。

さすがのジェラルドも疑わしげにおばあさんを睨んだが、意を決したように蓋を開け、飲み干した。

ジェラルドは一瞬顔をしかめたが、次の瞬間にはバタリと床に倒れた。

僕は声をあげることすら忘れていた。

⏰:07/06/15 22:36 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#51 [オッズ]
やっぱり……。

ジャクリーンは僕らを騙したんだ!

頼みなんて言っていたが、本当は僕らを殺そうとしていた。

「……騙したなっ!この魔女め!
ジェラルドが……。ジェラルドをよくも殺したな」

正直、ジェラルドはこの世から去るべき人間だと思っていたが、こうあっさりと床に倒れられると悲しい。

床に眠るジェラルドは息を呑むほど美しく、そのせいで余計に物悲しかった。

⏰:07/06/15 22:40 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#52 [オッズ]
ジャクリーンは目を見開いた。

「馬鹿なことを言うんじゃない!
いいから速くお飲み!」

僕は首を横に振った。

涙が頬を濡らしている。

ジャクリーンは観念したようにため息を吐いた。

「何を勘違いしているのかわからないが、ジェラルドなら生きている。
いいからさっさとしてくれないかい?」

生きている……?

僕はジェラルドを見なおした。

⏰:07/06/15 22:44 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#53 [オッズ]
確かに胸の辺りが上下に動いている。

僕はようやく液体を飲む決心をした。

なぜならジャクリーンが先程の銃をちらつかせはじめたからだ。

試験管の蓋を開ける。

僕は息を止めた。

そして中身のものを一気に飲み干す。

ひどい吐き気を感じたが、すぐに何が何だかわからなくなり、僕はジェラルドの隣に倒れた―――。

⏰:07/06/15 22:48 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#54 [オッズ]
―――――――――…

腹に痛みを感じて僕は目覚めた。

てっきり薬のせいで痛みを感じるのかと思ったが、ジェラルドが僕の腹を蹴り飛ばしたからだった。

「……ん?」

僕は目を擦りながら起き上がる。

頭がボーッとしていて気分が悪い。

ジェラルドが僕の頭を思いっきり殴った。

「痛っ!」

⏰:07/06/16 11:17 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#55 [オッズ]
「いつまでもボーッとしてんじゃねぇ!
まわりを見てみろ。それにこの臭いはなんだ?」

ジェラルドは忌々しそうに顔をしかめた。

彼の言うとおり、変な臭いがあたりに充満していた。

頭がちゃんと働くようになるにつれ、臭いはどんどん強烈になっていく。

僕も顔をしかめ、急いで鼻を摘んだ。

なんともいえない濃厚な生臭さ……。

この臭いを嗅ぎ続けたら、気がおかしくなりそうだ。

⏰:07/06/16 11:22 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#56 [オッズ]
必死で臭いから鼻を守りつつ、辺りを見回す。

僕達がいるのは小さな広場みたいなところで、まわりには民家が建っている。

変わったデザインの洋風な家々。

一見、特におかしな点はなかった。

「……変わったデザインの家だね」

僕はジェラルドに向かってそう言った。

⏰:07/06/16 15:19 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#57 [ふぅ]
>>1-100

⏰:07/06/16 17:09 📱:SH903iTV 🆔:xkPU0VwQ


#58 [オッズ]

ふぅさん
アンカありがとお
ございます(*゚ー゚)

⏰:07/06/16 22:21 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#59 [オッズ]
ジェラルドは僕を哀れむような目で見た。

暴力をふられるくらい、嫌な気分になった。

「お前ってマジで馬鹿だな。びっくりするぜ。
俺はデザインのことを聞きたいわけじゃない」

僕は首をひねった。

ジェラルドに馬鹿なんて言われる筋合いはない。

だけど、デザイン以外なにも思い浮かばない。

馬鹿と言われても仕方ないのかも……。

⏰:07/06/16 22:27 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#60 [オッズ]
「見てみろよ」

ジェラルドは一軒の家を指した。

僕は家をしっかりと観察するが、やっぱりダメだ。

デザインのことしか考えられない。

「全然人の気配がない。
庭なんて荒れ放題だし。
まわりの家も全部そうだ。
それに……ドアの近くの壁のところにある染みは血みたいだ」

⏰:07/06/16 22:31 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#61 [オッズ]
僕は息を呑んだ。

ジェラルドの言っていることはもっともだ。

人が長年住んでいないかのように、家々は不気味な静寂に包まれている。

壁の赤黒い染みも血のように見えるし。

なんの血であったとしても恐ろしい。

「あのババァは俺たちに何をやったんだ?
ここはどこなんだ?
夢じゃないんだよな?」

ジェラルドは呟いた。

⏰:07/06/16 22:36 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#62 [オッズ]
僕は何も答えることができなかった。

僕だって何もわかない。

やっぱりジャクリーンの頼みなんて聞こうとするべきじゃなかったんだ。

そもそも頼みがなんであるかもわからない。

僕がうなだれていると、ジェラルドが背後にある茂みを見つめた。

「……誰だ」

⏰:07/06/16 22:40 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#63 [オッズ]
僕は慌ててジェラルドが見つめている方を睨んだ。

すると茂みがごそごそと動き、人影が見えた。

僕は腰が抜けるんじゃないかというほど驚いた。

ジェラルドは鋭い目付きで人影を眺めている。

「……あ、あの」

透き通った女の人の声。

茂みから出てきた人影は、今まで見たこともないような美しい女の子だった。

⏰:07/06/18 22:25 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#64 [オッズ]
僕とジェラルドは一気に肩の力が抜けた。

綺麗な子だな……。

女の子は僕らよりも少し年上くらいに見えた。

肌は皮膚の中にラメが入っているんじゃないかと疑うほど、キラキラと白く輝いている。

すらっと背が高く、浮かんでいるのかと錯覚してしまいそうになるくらい、美のこなし方が優雅だ。

そして、何より驚いたのが髪。

頭の天辺は藍色で、毛先にいくほど水色っぽい色になっていく。

僕はうっとりと見惚れた。

⏰:07/06/18 22:34 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#65 [オッズ]
ジェラルドも、僕には絶対に見せそうもない気取った笑みを浮かべている。
町の女の子なら、いちころだったろう。

しかし、藍色の髪の女の子はそれどころではないようだ。

何かに怯えた顔をしている。

「ここわ危ないわ!
速くしないとミロが……死刑執行人が来ちゃう!」

女の子は切羽詰まったような口調でそう言い、茂みの中に飛び込んでいった。

「ついてきて!」

茂みの奥から女の子の声が聞こえてくる。

⏰:07/06/18 22:39 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#66 [オッズ]
僕が女の子を追って駆け出すと、しぶしぶジェラルドも付いてきた。

走るのが得意な僕だったが、茂みの奥は鬱蒼とした草木ばかりで、すぐに足を取られてしまう。

ジェラルドは難なく、女の子に負けない軽やかな足取りで進んでいく。

しばらく走るとようやく森を抜け、小さな家の前に着いた。

女の子は安心した表情で、僕とジェラルドを家のなかに入れた。

⏰:07/06/19 22:12 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#67 [オッズ]
「ここは私の家なの。
私の名前はキキよ」

女の子は微笑んだ。

髪と同じ藍色の瞳が僕らに問い掛けるように向けられている。

「ジェラルドだ」

ジェラルドは堂々と自慢げに名乗った。

僕はおどおどしてしまい、ジェラルドように格好よく言うことができなかった。

まあ、いつものことなのだが。

「ハンス……」

キキは、ジェラルドにも僕にも同様に笑いかけてくれた。

⏰:07/06/19 22:17 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#68 [オッズ]
茂みの奥から現れた時とは全く違い、キキは生き生きとしていてより一層美しかった。

「ジェラにハンスね!」

キキはそう言いながら踊りだした。

ジェラルドのことをジェラと呼べるのは彼女だけなんじゃないかと思った。

僕はいつまでもキキが踊っている姿を見ていたかったが、ジェラルドはそうでもないらしい。

「おい、キキ」

「なあに?」

ジェラルドの不躾な質問も気にしていないようだ。

⏰:07/06/19 22:22 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#69 [オッズ]
「さっき言ってたミロって誰だ?
死刑執行人とも言ってただろう?
それに、何故さっきの民家には人がいなかったんだ?
ひどい匂いもしやがった」

僕はふと気付いた。

「この辺りはあまり匂いがしないね」

キキは踊るのをやめ、目を伏せた。

とても悲しそうな顔をしている。

「あなたたちって旅人かなにか?この町のこと、何も知らないのね……」

⏰:07/06/19 22:26 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#70 [オッズ]
僕とジェラルドは黙ったまま頷いた。

「さっき、あなたたちを見つけられて本当によかったわ。
何も知らない旅人が時々この町に迷い込むのよね。
だから私、見回りをしているのよ」

茂みで会ったときのように、キキは不安そうにしていた。

「何のために?」

ジェラルドは容赦なかった。

キキの体がぶるぶると震えだす。

⏰:07/06/19 22:31 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#71 [オッズ]
「守るためよ。
ミロに……殺されないように……」

キキの声はひどく擦れていた。

僕はキキの声の調子から、それが真実であって深刻な問題であると理解できたが、いきなり『殺される』と言われてもピンとこなかった。

ジェラルドも訝しげに首を傾げている。

「殺されるのよ……。
さっきの家の人々はみんな殺されたか、仲間にされてしまった。
臭いのは死体の匂いだと思う……」

⏰:07/06/19 22:36 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#72 [ふぅ]
>>1-100

あげ

⏰:07/06/20 06:26 📱:SH903iTV 🆔:mxquRokw


#73 [オッズ]

ふぅさん
いつもいつも
あげてくださって
本当にありがとおございます
すごく嬉しいです(´;ω;`)

⏰:07/06/20 17:54 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#74 [オッズ]
それを聞いただけで吐きそうになった。

「それ、どういうこと?」

やっとの思いで僕はそう言った。

まさか、あの気分の悪くなる匂いが死体のものだなんて……。

そんなのありえるのか?

でも、キキが嘘をついているようには見えない。

僕は家の壁に血のようなものが付着していたのを思い出した。

「詳しく話せ」

⏰:07/06/20 17:59 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#75 [オッズ]
ジェラルドの口調はわずかではあるが、弱々しくなっていた。

キキも吐きそうな顔をしている。

「話すわ……。
ある日、突然この町の外れにミロっていう男が引っ越してきたの」

ミロ……。

そいつがどんなやつなのかさっぱりわからないのに、僕は思わず身震いをした。

「それで?」

⏰:07/06/20 18:02 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#76 [オッズ]
ジェラルドが先を促す。

キキは続きを話しだした。

「ミロは変わった男だったわ。
いつも何かに怯えているみたいだったし。
町の人たちはみんな優しい人たちばっかりだから……ミロと仲良くしようとしたの。
最初はなかなかうまくいかなかった。
だけど、あるとき彼はパーティを開くと言ってきたのよ」

「パーティ?」

キキはうなずいた。

⏰:07/06/20 18:06 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#77 [オッズ]
「そう、町の人を全員招待したの。
みんな喜んだわ。
多くの人が嬉しそうにパーティに向かった。
でも……」

キキはそこで啜り泣いた。

僕もジェラルドも口を挟まずに、キキが泣き止み、続きを話しだすのを待った。

キキは震えながら、辛そうに声を出す。

「みんな……」

⏰:07/06/20 18:10 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#78 [オッズ]
「殺されたの?!」

僕は我慢できずにそう聞いた。

ジェラルドが責めるような視線で僕を見つめる。

キキは寂しげに、口元を歪めた。

「殺されてない。
だけど、みんなミロに切り刻まれたわ……」

キキの目から大粒の涙が零れた。

⏰:07/06/20 19:07 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#79 [オッズ]
切り刻まれた……?

なのに殺されてない?

まったく矛盾してるじゃないか。

キキは涙を拭いて、肩をすくめた。

「ミロは不思議な力を持ってるの。
彼の包丁で体を切り裂かれても死ぬことはない。
彼の針で切り裂かれた体を縫い合わされたら、今まで通り動くことができる」

⏰:07/06/20 19:34 📱:N700i 🆔:☆☆☆


#80 [オッズ]
僕もジェラルドも唖然とした。

そもそもジャクリーンに奇妙な薬を飲まされてから、変なことばかりだ。

ここは本当にどこなんだろう……。

夢であってほしい。

だけど、苦心するキキの顔はあまりにもリアルだ。

ジャクリーンは僕らに何をさせたかったんだ?

ジャクリーンの頼みごと……。

⏰:07/06/20 19:42 📱:N700i 🆔:☆☆☆


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