俺とコウの物語
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#302 []
【第七章 右目】

「あちぃ〜…」

うだるような暑さ。
季節は夏。

コウとの悪夢の伊豆旅行から早一年がたとうとしている。

「暑い暑い何度も言わないで下さい。暑いのはわかってます。暑い暑いとそう暑いと何度も言われると余計暑くなります。」

暑い暑いて、こいつも何回ゆーねん!

⏰:08/02/02 04:06 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#303 []
「ときに神谷くん。」

教科書に目を向けるコウを俺は机にへばりついたまま呼んだ。

「なんでしょうか柏木くん。」

横目で嫌そうな顔をしながらコウが答える。

「今年はあの別荘、いかへんのか?」

⏰:08/02/02 04:10 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#304 []
俺の言葉にコウは驚いたように目を真ん丸にし、教科書を閉じた。

「…ほう。」

俺をまじまじと見、ニヤリと意地悪く笑う。

「伊豆に行きたい、と?」

⏰:08/02/02 04:13 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#305 []
「いや、お前とやなくて…」

俺の返答にコウはまたも教科書を開きムスッとした。

「では誰と?」

「さ…」

「幸子さんとですか?」

「当たりっ!頼む!あの別荘貸してくれへん!?俺どーしても…」

「却下します。」

⏰:08/02/02 04:15 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#306 []
「なんでやねん!!」

「あなたの童貞を捨てるためだけのために、あの貴重な別荘は貸せません。それに、昨年のような被害に合ったらどうするんですか」

「昨年の被害て?」

「忘れたとは言わせませんよ?あなたの髪の毛の事です。」

…忘れさせて。

⏰:08/02/02 04:22 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#307 []
「まぁ…条件をのむならば貸して差し上げないこともありません。」

「条件て…?」

嫌な予感がする。
多分的中するだろう。が、俺はどんな条件でも聞かなければ…。

俺の顔を見て、コウがにっこりと悪魔の微笑みをした。

やはり嫌な予感が的中。

⏰:08/02/02 04:25 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#308 []
 
「お〜!幸子!こっちこっち!」

夏休みに入り、伊豆への旅行の日がやってきた。

「ごめん、待った?」

幸子は真っ白なワンピースに、赤い花がついた麦わら帽子を押さえながら俺たちの元へ走ってきた。

か わ い い !

「いや、余裕!荷物持ったるわ!」

⏰:08/02/02 04:40 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#309 []
幸子の手荷物を持ち、俺は改札口へ向かった。

見ぬふりをしよう。
気付かないふりをしよう。さりげなく、さりげなく…

「志乃くん待ちなさい。まだ揃ってませんよ。」

改札口へ向かう俺の腕を掴み、コウがにっこり微笑んだ。

気付かれたか…。

⏰:08/02/02 04:44 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#310 []
「ねぇ、ほんまにあたし大丈夫?初対面やし仲良くなれるんかなぁ…」

小さな声で幸子が言った。

「まぁ、別に無理して仲良くする必要もないで。」

てか、できれば仲良くしないでくれ。

「あ、到着されたようですね。姫菜さん、こちらです。」

…来ちゃったか…。

そう、覚えている方はいるだろうか?
コウの条件とは旅行に姫菜を誘う事、だった。

⏰:08/02/02 04:48 📱:P904i 🆔:☆☆☆


#311 []
「姫菜さん、今日もお美しいですね」

………………

「姫菜さん、おしるこ飲みます?」

…………………

「姫菜さん、暑くないですか?」

…………………

「姫菜さん、」

「姫菜さん、」

「姫菜さん、」

ええい!!!

⏰:08/02/03 01:17 📱:P904i 🆔:☆☆☆


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