俺とコウの物語
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#3 []
友達っていいもんだって
お前に会うまでは
気付かなかったよ。
世界を敵にまわしても
お前がついてくれるなら
俺は何だってやってやるよ
俺とコウの物語
:07/06/27 03:31 :SH901iS :☆☆☆
#4 []
「志乃くん」
「…ん〜……」
「志乃くん朝ですよ」
「…もうちょっと…」
「だめです起きなさい」
バチンッというでかい音と頬に感じる鈍い痛み。
「いってぇ!!!」
:07/06/27 03:38 :SH901iS :☆☆☆
#5 []
「おはようございます」
「お前なぁ!!もうちょっとマシな起こし方でけへんのか!!」
「マシです」
「どこがやねん!殴るやつがあるかぁ?」
「殴ったつもりはありません」
俺の一日は
コウの張り手から始まる。
:07/06/27 03:41 :SH901iS :☆☆☆
#6 []
はじめまして!
ちゃうな、久しぶり!
柏木志乃です、まいど!
俺が鑑別から出てきて
時がたち、俺達は
高校三年生になった。
ただいまコウと同居中です
「志乃くんご飯を」
コウ?
相変わらずよ。
でもさ、最近コウの奴…
:07/06/27 03:43 :SH901iS :☆☆☆
#7 []
【第1章 百合江】
「志乃くん、ご飯早く作って下さい」
「今日はコウの番やけど」
「僕でいいんですか?」
「……いや、やっぱ俺が作るわ……」
「そうですか、早くして下さいね」
以前コウに飯を作ってもらった時、納豆やらオクラやら、恐ろしくネバネバなものしか出てこなかった事を思い出した。
:07/06/27 03:47 :SH901iS :☆☆☆
#8 []
朝飯を作るために台所へ行く俺をよそに
コウは涼しい顔でたばこを吸った。
「起きぬけのたばこは最高です」
ええい!
お前も居候ならちょっとは手伝おうとせんかい!
と、まぁ毎日こんな感じで一日が始まる。
:07/06/28 03:09 :SH901iS :☆☆☆
#9 []
「おっはよ〜!」
ガラッと元気よく教室の扉を開ける俺の後ろから
コウは眠気と戦いながらついてくる。
「…はよございます…」
「志乃おはよ!神谷くんもおはよう!」
「幸子おはよ!」
三年生になり、俺は念願の幸子と同じクラスになった
:07/06/28 03:44 :SH901iS :☆☆☆
#10 []
「幸子さんおはようございます。僕への挨拶はオマケみたく聞こえましたが」
間違いなくオマケじゃ!
幸子がなぜお前メインに挨拶しなアカンのや。
「そんな事ないよ〜!」
相変わらず幸子って
か わ い い !
:07/06/28 03:46 :SH901iS :☆☆☆
#11 []
「コウくんおはよ…」
俺たちの後ろから
遠慮がちにコウに挨拶をする女の声。
「あぁ、おはようございます百合江さん」
百合江とは
三年生になりコウに告白をしてきた女。
見た目は…何も言うまい。付き合ってるわけではないと思うけど
コウもまんざらじゃない様子だ。
:07/06/28 03:48 :SH901iS :☆☆☆
#12 []
「どうしたんですか?」
コウが百合江の顔を覗き込み、ニヤリと口角を上げた
「そんなに見つめてどうかされました?」
「あ…ううん…」
「返事、ですか?僕まだ返事してませんでしたね」
コウの言葉に
百合江は顔を真っ赤にして俯いた。
:07/07/02 04:17 :SH901iS :☆☆☆
#13 []
返事とは多分告白の返事のことだろう。
「聞きたいですか?」
「聞きたい!!」
「……志乃くんには聞いてません」
コウは横目で俺を睨んだ
なぜ志乃くんがいるんですかとでも言いたそうだ。
「だいたいなぜあなたがいるんですか」
言ったー!!
:07/07/02 04:20 :SH901iS :☆☆☆
#14 []
「同じクラスやん!」
「そうですね」
コウは興味なさそうに大きくあくびをした。
こいつ…家帰ったらいじめてやる。
「百合江さん返事、しましょうか?」
「…やっ…まだいい…」
百合江はそれだけ言い、真っ赤な顔のままその場を去った。
:07/07/02 04:22 :SH901iS :☆☆☆
#15 []
「コウのこと好きとか物好きなやつもおるんやな」
百合江がいなくなった教室で、俺はコウの机の上に座りコウと向き合った。
「では世の中のほとんどの方が物好きですね」
教科書を机から取り出し、パラパラっと開きながらコウが言った。
:07/07/02 04:28 :SH901iS :☆☆☆
#16 []
「なんで?」
「言ったはずです。僕はモテます、と。誰かとは違って」
「誰かとはって誰?」
「……………」
コウは何も答えず教科書に目を向けたままだ。
「なぁ誰かって?」
しつこくつめ寄る俺を
コウはチラリと見、バカにした目付きでニッと笑った
「俺かい!!!」
:07/07/02 04:31 :SH901iS :☆☆☆
#17 []
「さぁ…どうでしょう」
「明らかに今俺やっていいたげな顔やったやん!だいたいなんや?世の中のほとんどが物好き!?はっ!ほんなら世の中のほとんどのやつがお前のこと好きっちゅーわけかい!そんなアホな事あるか!」
マシンガンみたいに俺はやたら長い台詞を感情込みで言ってやった。
「すみませんうるさいので黙ってて下さい」
回答になってねぇーー!!
:07/07/02 04:39 :SH901iS :☆☆☆
#18 []
「……ムカつく…」
「はい?」
「ムカつく」
「そうですか」
コウは鼻でフッと笑い
教科書をめくった。
「志乃くん席にちゃんとつきなさい」
「へいへい」
:07/07/03 14:32 :SH901iS :☆☆☆
#19 []
席につき、
俺は頬杖をつきながら教室を見渡した。
幸子がクラスの女子と楽しそうに笑っている。
かわい〜。幸子だけ輝いて見えるわ………
「…ん?」
なんだ?
俺は目を見開いた。
ある人物の動きが気になってしかたない。
:07/07/03 14:39 :SH901iS :☆☆☆
#20 []
あいつ…何しとるんや?
その人物は
なにやら願掛け人形らしきものを握りしめ
呪文みたいのを唱えている
「…こわっ!!」
そいつの目線の先は
コウだった。
そう、その人物とは百合江である。
コウが…やばい?
:07/07/03 14:43 :SH901iS :☆☆☆
#21 []
「はいはい席ついて〜」
担任が教室にきて、
まもなく1限目が始まった
授業中も俺は不審者(百合江)から目が離せなかった
チャイムがなり授業が終わると同時に
俺はコウの元に駆け寄った
「おい!コウ!」
:07/07/06 09:00 :SH901iS :☆☆☆
#22 []
コウは相変わらずのポーカーフェイスで
「なんですか」
と聞いてきた。
「百合江が…百合江がお前に呪いをかけとる!!」
「………はい?」
「へんな人形握りしめてお前に向かって呪いの呪文を唱えとんねん!」
俺の言葉にコウはちらっと百合江の方に目を向けた。
:07/07/06 09:03 :SH901iS :☆☆☆
#23 []
「ああ…あれは……」
コウはクスッと笑うと
再び教科書を手にとり
パラパラと開いた。
「なんやねん」
「あれは呪いではなく願掛けです。つまり僕と付き合いたい、と願掛けをしているのでしょう」
願 掛 け ?
「………キモい…」
:07/07/06 09:04 :SH901iS :☆☆☆
#24 []
「はい?何か言いましたか?」
「キモい!願掛けとかキモいわ!お前はキモいと思わへんのか?」
「……いえ別に」
コウはシャーペンをくるくる回しながら恐ろしい言葉を続けた。
「かわいらしいじゃないですか、願掛けまでしても僕の心を自分に向かせたい、と。その考えがとてもかわいらしいです」
:07/07/06 09:08 :SH901iS :☆☆☆
#25 []
か わ い い ?
今、こいつかわいいとか言ったか?
「かわいい…?願掛けで呪いをかける女がかわいいやて?」
「ですから呪いではありません」
「ほんならそのかわいい女と付き合うんか?」
「それはわかりません」
コウはまたも教科書に目を向けてしまった。
:07/07/06 09:12 :SH901iS :☆☆☆
#26 []
「でもさ〜コウくんよ〜」
教科書に目を向け、俺に話し掛けるなオーラを出しているコウにわざと声をかける。
「そろそろ付き合う、付き合わんハッキリさした方がえーんちゃうの?」
「なぜですか」
「だってほら、なんせコウくんモテますから?早めに返事しやんと他の子が告白しにくいやん?」
:07/07/07 01:16 :SH901iS :☆☆☆
#27 []
「…なるほど」
コウはたいして興味なさそうにシャーペンをくるくるまわしながら教科書と睨めっこしている。
こいつ…ムカピー!!
「おい!お前次の授業席かわれや!」
俺はコウの隣の席のひ弱そうな男に無理矢理席をかわってもらった。
:07/07/07 01:17 :SH901iS :☆☆☆
#28 []
「…志乃くん一体あなたはなにを……」
コウはため息をつき
あからさまに嫌そうな顔で俺の顔を見た。
「コウの隣にきたかってんも〜ん!」
ニヤニヤしながら言った俺にコウはまたもやでかいため息をついた。
「本当にあなたはキモいですね」
:07/07/07 01:20 :SH901iS :☆☆☆
#29 []
やかましい
「やかましい」
「まぁいいですが僕も志乃くんがそばにいてうれしいです」
いかにも感情がこもってないとわかるくらいコウは棒読みで言った。
「やかましい」
「やかましいは口癖ですか」
今気付いたけどそーみたい。
:07/07/07 22:27 :SH901iS :☆☆☆
#30 []
二限目の授業中
俺はずっとコウにちょっかいを出していた。
「なぁ…おいコウ!」
「………………」
「コウちゃ〜ん!」
「………………」
「おい!コウさんよ!」
「柏木!!うるさいぞ!ワシの授業がつまらんなら出ていけ!!」
あらら。
追い出されちゃった。
:07/07/08 00:22 :SH901iS :☆☆☆
#31 []
教室を追い出され、やることのない俺は
ふと目の前にある図書室に足を踏み入れた。
「は〜…ちょっと寝るかな…」
机にうっ伏せた瞬間
携帯が電子音を発した。
「うおっ!やべーやべー俺バイブにしてへんかった…ん?メールか…」
:07/07/08 00:25 :SH901iS :☆☆☆
#32 []
メールを開くと
俺はすぐさまメールを開いたことを後悔した。
【受信 コウ
】
【あなたって人は授業中に話し掛けるなと何度言えばわかるんですかだいたいあなたとい人は…】
ずらーっと永遠に俺への文句が書かれている。
【、】や【。】が全くない
「読みにくっ!」
:07/07/08 00:28 :SH901iS :☆☆☆
#33 []
俺はコウに
【やかましい】
とだけ返信し、
はだしのゲンを読もうと図書室内を徘徊した。
「…ん?」
ある棚に並ぶ本を見て
俺は足をとめた。
「なんじゃこりゃ」
タイトルは
【気になる相手を振り向かせる願掛け人形の作り方】
:07/07/08 00:32 :SH901iS :☆☆☆
#34 []
願掛け人形…
これってさっき百合江が持ってたやつとそっくり…
まさか百合江もこれ見て…いや、まさかな…。
俺は裏表紙をめくり
貸出人のカードに目を向けた。
【小笠原百合江】
「やっぱり借りとるー!」
:07/07/08 00:34 :SH901iS :☆☆☆
#35 []
怪しいタイトルの本をぱらっとめくり、
俺はあるページで手を止めた。
「…そんな……」
俺の手から
本がバサッと落ちる。
「うそやろ………」
そのページには
【相手が振り向いてくれなかった場合、この人形は相手を苦しめる事も可能です】
と書かれていた。
:07/07/09 23:43 :SH901iS :☆☆☆
#36 []
【第二章 コウを守れ!】
「コウ!コウ!!」
教室の扉を開き、俺はクラスの注目を浴びているのも気にせずでかい声でコウを呼んだ。
「コウ!!!」
「柏木!出てけ言うたはずやろ!!」
「やかましい!それどころやないねん!おいコウ!」
:07/07/10 00:16 :SH901iS :☆☆☆
#37 []
「教師に向かってやかましいとはなんじゃ!柏木!こっちに来い!」
「そんなひまないゆーてるやろ!」
「えーからこい!」
「嫌や!だいたい眩しいねん先生のハゲ頭が!」
…………やべ……
うっかり言っちゃった…
俺の一言でクラスはシンと静まりかえり、
クラス中のやつらが俺と先生の顔を生ツバを飲みながら見ている。
:07/07/10 00:26 :SH901iS :☆☆☆
#38 []
俺の額からは
冷や汗がポタッと流れるのがわかる。
「……………」
先生は俯いたまま
後頭部をピカリと光らせる以外は微動だにしない。
……こ……こえぇ…
静まりかえる教室で
真っ先に沈黙を破ったのは
「先生、少し抜けます」
コウだった。
:07/07/10 00:32 :SH901iS :☆☆☆
#39 []
「あぁ、すみません。抜ける、という単語は今禁句でしたか?」
おい!!!
もはやコウの言葉で
クラス中のやつらは顔面蒼白になった。
俺はゴクリとツバを飲みこみ、先生の出方を待つ。
「…………け……」
「すみません先生、聞こえませんでした。もう一度お願いします」
:07/07/10 00:41 :SH901iS :☆☆☆
#40 []
「二人共出ていけ!!」
顔をあげた先生の表情は
人間ではなかった。
霊を見慣れている俺ですら恐怖で奮えあがった。
「あ〜怖かった…」
教室から追い出され
俺とコウは屋上へ向かった
:07/07/10 01:25 :SH901iS :☆☆☆
#41 []
「志乃くんは本当にへたれ…もやしですね」
屋上についた途端コウはあぐらをかき、涼しい顔でポケットからたばこを取出し火をつけた
「やかましい。だいたいお前がいらん事ゆーたから先生あそこまで切れたんちゃうんけ!」
「僕は思った事を言ったまでです。それに最初にハゲと言ったのはあなたです」
:07/07/10 01:29 :SH901iS :☆☆☆
#42 []
「俺はええねん!」
「なぜですか」
「なぜでも!!」
コウはため息だか煙を吐いただけなのかわからないがフーッと息を漏らし
俺を見つめた。
「それで、一体何ですか?授業中に呼んでまで僕に言いたい事があるんでしょう?」
:07/07/10 01:32 :SH901iS :☆☆☆
#43 []
「ああ、そうそう!」
忘れてた。
「お前危ないねん!」
「…………はい?」
唐突すぎる俺の台詞に、
コウは怪訝をモロに出した顔つきで見た。
「百合江がお前を苦しめようとしとる!」
:07/07/20 01:35 :SH901iS :☆☆☆
#44 []
「……………」
「さっき俺図書室に行って見てもてん!」
「…何を」
「本を!」
「…まぁ図書室ですから本を見るでしょうね」
コウは興味ない、といったように空を見上げながら深くたばこを吸った。
「そこに…驚くなかれ…お前を苦しめる術が載っててん!!」
:07/07/20 01:38 :SH901iS :☆☆☆
#45 []
「…なんですかそれ」
「だーかーらー!百合江がさっきもってた呪いの人形が…」
「願掛け人形です」
ええい!どっちにしろ呪いに変わんねんから呪い人形でえーやん!
「それの本が図書室にあってん!!」
「知ってます」
………………はい?
:07/07/20 01:40 :SH901iS :☆☆☆
#46 []
「知ってますよ」
……………
知 っ て ま す ?
「なぜ」
「僕が教えた本ですから」
ぼ く が お し え た ほ ん で す か ら ?
「百合江さんが僕に告白した時に試しに僕が振り向くよう願掛けしてみて下さいと、僕が頼みましたので」
:07/07/20 01:43 :SH901iS :☆☆☆
#47 []
こいつは一体何を頼んでんねや!!
「お前は見たんか!?」
「何を」
「呪いの本を!」
「願掛けの本です」
ええい!
「願掛けの本見たんか!」
「…表紙だけは」
「内容は?」
「興味ありませんから」
ほんならなんで百合江に薦めてん!
:07/07/20 01:48 :SH901iS :☆☆☆
#48 []
「で、その本が何か」
「その本に、願掛けがきかんかった場合相手を苦しめることが可能て書いてあった!」
「………ほう」
またもやコウは興味なさげにゴロッと地面に寝そべった。
「お前が危ないねん!」
「そうですか」
:07/07/20 02:10 :SH901iS :☆☆☆
#49 []
「そうですかって…お前怖くないんか!?」
「怖いです」
全く怖くなさそうに
コウはたばこを地面に擦り目を閉じた。
「ですが志乃くんが助けてくれるんでしょう?」
「…誰を」
「僕を」
:07/07/20 02:13 :SH901iS :☆☆☆
#50 []
「誰が」
「あなたが」
「誰を」
「…僕を」
「誰が」
「あなたがです!志乃くんしつこいです」
逆切れ!?
てゆーかこの事態自分で引き起こしたんですよね?
:07/07/21 01:34 :SH901iS :☆☆☆
#51 []
「助けるって…どうやって?」
「知りません。ですが助けて下さい。僕怖いです」
絶対怖くないやろ!!
俺の冷たい視線をよそに
コウはわざとらしくぶるぶると震えてみせた。
「怖すぎて身体が震えます…」
わざとやろ!!
:07/07/21 03:08 :SH901iS :☆☆☆
#52 []
「まぁ、とりあえずその本持ってきて下さい」
「…俺が?」
「あなた以外誰が」
「おまえ」
「…僕はどこに置いてあるかわかりませんので」
お前がお勧めした本ちゃいますの?
「何してるんですか早くして下さい」
:07/07/21 03:10 :SH901iS :☆☆☆
#53 []
コウに急かされ、俺はしぶしぶ図書室へ向かった。
図書室へつくと
もう休み時間になっていたらしくちらほらと生徒が集まっていた。
えー…っと…
どこやったかな〜…。
例の本がある棚付近に近づくと、一人の女子生徒が立っていた。
:07/07/21 03:12 :SH901iS :☆☆☆
#54 []
「…あっ……!」
あの姿は…
「百合江…!!」
俺の言葉に、百合江は驚いたようにビクッとし
手にとっていた本を落とした。
「その本…!!」
まさしくそれは…!!
【気になる相手を振り向かせる願掛け人形の作り方】
:07/07/21 03:16 :SH901iS :☆☆☆
#55 []
「百合江それ…」
俺が話し終わる前に
百合江は例の本を拾い、
足早に図書室を出て行ってしまった。
また借りるん?
って…おい!!!
「百合江!!待てや!」
コウが…コウがほんまに危ないかもしれない。
:07/07/21 03:19 :SH901iS :☆☆☆
#56 []
図書室を出た百合江を必死に追い掛けたが、百合江が女子トイレに逃げ込んだため、俺はあきらめてコウの待つ屋上へと向かった。
「あなたは女性の足にも追い付けないのですか」
屋上へつくと、またも涼しい顔でたばこを吸っているコウが俺を見下したように言った。
:07/07/21 03:22 :SH901iS :☆☆☆
#57 []
「女子トイレに逃げられたからしゃーないやん」
「言いわけですね」
「言いわけちゃうし!」
「まぁ、それで良かったかもしれませんね。普通に追い掛けても追い付けなかったならば恥でしょう」
普通に追い掛けたら追い付けるわい!!
俺どんなけコウになめられてんの?
:07/07/21 03:25 :SH901iS :☆☆☆
#58 []
「ところで志乃くん、今日のご飯は何ですか」
「は」
「ですから今日の…」
「知らん!つーか、今そんなん重要ちゃうやろ!」
「重要です」
お前が苦しめられんよーに頑張っとる俺馬鹿みたいじゃね?
:07/07/24 02:27 :SH901iS :☆☆☆
#59 []
「お前が怖いゆーから俺必死であの本探してんのに」
「探してないでしょう」
「探してるわい!」
「今手元にないのですから探してないのと一緒です」
「…………」
「ほら、何も反論できないでしょう?」
ほんなら自分で探せや!
:07/07/24 02:29 :SH901iS :☆☆☆
#60 []
俺とコウがギャーギャー言い合いをしていると
俺達の背後に
恐ろしい影が近づいてきた
「柏木!神谷ぁ!!」
でかい声に驚き、
俺達は飛び上がった。
「せ…先生……」
そう、恐ろしい影の正体はハゲ…いや、
あの先生だった。
:07/08/12 02:51 :SH901iS :☆☆☆
#61 []
授業崩壊(してないよな?)及びサボりの現行犯で
俺達は署(職員室)まで連行された。
「だいたいお前らは〜…」
ぐだぐだと長い説教。
コウなんて隣で真剣な顔をしながら寝ている。
こいつの特技は目を開けたまま眠れることだ。
そんな豆知識いらねーか?
:07/08/12 02:54 :SH901iS :☆☆☆
#62 []
現にコウの鼻からいびきらしき音が一定のリズムで繰り出されている。
真面目な顔で目をキラキラさせながらいびきをかくもんやから恐ろしく不気味だ。こいつを今日から
不気味ちゃんと名付ける。
まぁコウが不気味なのは今に始まったことじゃないが。
:07/08/12 02:56 :SH901iS :☆☆☆
#63 []
俺がそうこう頭の中で考えを巡らせながら
ふと先生の机の上に目を向けた。
「あっ…先生その本…」
「ん?ああ、これか。小笠原が授業中にずっと読んでたからな、取り上げたわ」
まさしくそれは…
「気になる相手を振り向かせる願掛け人形の作り方。こんな馬鹿げた本よく読むわな〜」
:07/08/12 02:59 :SH901iS :☆☆☆
#64 []
「せっ…先生!!その本俺に貸して下さい!!」
「え……?」
「お願いします!!一生のお願いです!!!」
俺はよほど必死な形相をしていただろう。
先生はまるで不審者を見る目付きで俺を見つめた。
「お前…この本を借りるために一生の願いを使い果たしてえーんか…それでえーんか…?」
:07/08/12 03:04 :SH901iS :☆☆☆
#65 []
「いいんです!お願いします!!!」
俺は目の前にあの本があるという興奮状態で土下座をする勢いだった。
「わかったわかった!ほら、貸したるからもう教室戻れ」
先生は恐る恐る本を差し出し俺達を職員室から追い出した。
:07/08/12 03:07 :SH901iS :☆☆☆
#66 []
「は〜よく寝ました」
職員室を出るなり
コウが大きく伸びをしながら言った。
やっぱり寝てたんかい!
「おや…?志乃くんその本……」
「先生が持っててん」
「なぜ」
「百合江から取り上げたんやってさ」
「………ほう」
:07/08/12 03:08 :SH901iS :☆☆☆
#67 []
俺はさっそくコウを救うべく本をパラパラ開いた。
「……………何これ」
「どうかされましたか?」
「これ………」
俺は唖然としながら
コウにあるページを指して見せた。
「あぁ、そうですよ」
:07/08/12 03:10 :SH901iS :☆☆☆
#68 []
しれっとしながらコウが言った。
そのページには
【この人形はあくまでも気休めなので相手に害を与える事は不可能です。前ページに゛苦しめる事も可能です゛と書かれていますが冗談です☆しかし信じるものは救われる。相手を振り向かせたいと願い、信じれば叶うかもしれませんね☆】
:07/08/12 03:14 :SH901iS :☆☆☆
#69 []
「…これは一体……」
「ですから、冗談です」
「って事は………」
「たかが人形ですし苦しめるなんて不可能だと誰でもわかる事でしょう?」
馬鹿にしたようにコウは笑いながら俺に背を向け歩き出した。
「………………」
:07/08/12 03:16 :SH901iS :☆☆☆
#70 []
「お前…知ってたんか…」
「はい。一度目を通しましたから」
「興味ないから読んでへんゆーてたやん!」
「それは冗談ですよ」
冗談つーかただの嘘やん!
「ほんならなんで言わんかってん!」
:07/08/12 03:17 :SH901iS :☆☆☆
#71 []
「志乃くんが僕のためにどれだけ必死になるか見たかったので。それにしても」
コウは俺に振り返りニヤッと笑った。
「あなたは本当に僕の事が大好きなんですね」
「………コウ……」
「なんですか?」
《バキッ!!!》
その後先生の鞄に願掛け人形がついていた事は言うまでもない。
「これ生徒の間で流行ってるみたいなんですよ」
:07/08/12 03:20 :SH901iS :☆☆☆
#72 []
【第三章 カイ】
「あ〜だり〜」
季節は梅雨。
こう雨ばっかじゃやる気もでないよな。
「志乃くんの生気のない顔を見てると嫌な気分になります」
「だってこうもジメジメしてると…って何やて!?」
「嫌な気分になります」
《バキッ!!》
:07/08/14 14:12 :SH901iS :☆☆☆
#73 []
朝っぱらから
俺とコウが教室でギャーギャー言い合っていると
廊下で女子グループと話していた幸子が遠慮がちに近づいてきた。
「よぉ幸子!」
「ねぇ…ちょっと神谷くんに聞きたい事あるんやけど……」
「なんですか?」
幸子の顔が少し曇っているような…一体なんや?
:07/08/14 14:14 :SH901iS :☆☆☆
#74 []
「さっき麻衣と話してたんやけどな…」
麻衣…。こいつは確か二年のときにコウにラブレターを渡した女だ。
(きみを送る参照)
その麻衣が何や?
「神谷くんって彼女いるんや?」
……………は?
「えっ!?お前彼女できたん!?」
:07/08/14 14:18 :SH901iS :☆☆☆
#75 []
「…いえ、いませんけど」
「そりゃそーやろな、おらんよな、あーびっくりした!幸子冗談言うなや〜」
大袈裟に笑う俺をコウはギロッと横目で睨んできた。
「そーやんな、やっぱり彼女おらんよね…?」
やっぱりて…幸子ちゃん、きみも結構きついね。
:07/08/14 14:21 :SH901iS :☆☆☆
#76 []
さりげなく馬鹿にされたコウは俺と幸子にチッと舌打ちをし、
「作ろうと思えばできますが作ろうと思ってませんので」
と言った。
「はいはい。」
「志乃くんムカつきますね。で、幸子さんなぜ急にそんな事を?」
イライラを隠しきれない口調でコウが幸子に言った。
:07/08/14 14:23 :SH901iS :☆☆☆
#77 []
「う…ん。麻衣が先週の日曜日にミナミで神谷くんが女の子と腕組んで歩いてたの見たらしいから…でも人違いやね」
先週の日曜日…?
「人違いですね、僕はその日は志乃くんと一緒でしたから」
その日に限らずいつも一緒ですけどね!!
「そーやね。変な事言ってごめんね」
:07/08/14 14:26 :SH901iS :☆☆☆
#78 []
軽くコウに謝って、幸子は教室を出て女子グループのかたまりに戻って行った。
「お前にそっくりな奴でもおるんかな〜」
「…………さぁ」
「ま、世の中には三人似た奴がおるゆーけど。まさかドッペルゲンガーとか?」
「まさか」
コウは軽く鼻で笑い自分の席に戻って行った。
:07/08/14 14:29 :SH901iS :☆☆☆
#79 []
コウに似たやつか…
「う〜ん………」
う〜ん……
う〜ん…
見てみたい!!
「今日ミナミ行こうや!」
コウの元へ駆け寄り
俺は満面の笑みで言った。
「…なぜ……と聞かなくてもわかりますが…」
「そーゆー事!後でな」
ルンルンな俺に対して
コウの表情が曇っていた事に俺は気付かなかった。
:07/08/15 02:52 :SH901iS :☆☆☆
#80 []
「こん中からコウ似の奴見つけるなんて無理くね?」
放課後俺達はコウ似を探すべくミナミに出た。
「無理でしょうね」
人込みをキョロキョロする俺に、半ばめんどくさそうに呆れた顔でコウが言った
「でも見てみたくね?」
:07/08/15 03:16 :SH901iS :☆☆☆
#81 []
「僕に似た方を見てどうするんですか」
「見たいだけ!興味あるやろ?お前似の奴もお前に似て不気味ちゃんなんかな〜」
「…なんですか不気味ちゃんて」
「お前のあだ名!」
「…………ほぅ」
:07/08/15 03:18 :SH901iS :☆☆☆
#82 []
「おらんな〜…あっ!」
「いましたか?」
「いや…あの子かわえ〜」
「……あなたは一体何を探しに来たんですか」
「わりーわりー」
デレデレする俺を見て
コウはため息をついた。
「無駄ですよ、こう人が多くては見つけるなんて至難の技です」
:07/08/15 03:29 :SH901iS :☆☆☆
#83 []
帰りましょう、と言い
コウはスタスタと歩き出した。
「おい待てや…コウ!」
俺の静止も聞かずにコウは早足で歩き続ける。
「コ〜ウ!!うわっ…と…すんません!」
コウだけを視界に入れていた俺は対向してきた人に気付かずぶつかってしまった
:07/08/15 03:34 :SH901iS :☆☆☆
#84 []
「すんません…」
ぶつかった人に謝り
前を見ると
俺の視界からコウが消えてしまった。
あれ〜
コウどこ行ったんや?
歩くん早過ぎやねんアイツ…。
イライラしながら
俺は帰ろうと歩きだした
その時だった。
:07/08/15 03:36 :SH901iS :☆☆☆
#85 []
「コウ!!」
前方に消えたはずのコウがまた現れた。
「コウ!お前歩くん早過ぎやねんて…おい!」
「……………」
「おいコウ!!」
なかなか振り返らないコウの肩を掴み、俺は自分の方へ引き寄せた。
「はぁ?なんやねん」
…………………え?
:07/08/15 03:39 :SH901iS :☆☆☆
#86 []
な ん や ね ん ?
コウの口から関西弁がでてきた…?
「…コウ……?」
「お前誰やねん離せや」
…意味がわからない。
俺が肩を掴んでいるのは
紛れも無くコウそのもの。
だが、俺に肩を掴まれている男は嫌悪感をモロに顔に出し、俺を睨みつけている
「離せて。お前日本語通じへんのか」
:07/08/15 03:43 :SH901iS :☆☆☆
#87 []
離せて。お前日本語通じへんのか
離せて。お前日本語通じへんのか…
離せて。お前日本語通じへんのか………
コウの言葉が俺の能内で繰り返される。
「おい!手ぇ離せて言うてるのが聞こえへんのか!」
怒鳴るようにコウ(?)が俺の手を払いのけた。
:07/08/16 01:42 :SH901iS :☆☆☆
#88 []
コウ(?)は、俺を睨みながらチッと舌打ちすると、無言で歩き出してしまった。
…………?
どうなってる?
もしかして今のがコウのそっくりさんか?
いやいや、似過ぎやろ!
その場にボー然と立ち尽くす俺に
「志乃くん何してるんですか」
と、聞き慣れた低い声が聞こえた。
:07/08/16 01:52 :SH901iS :☆☆☆
#89 []
声の主を見ると
心配そうにコウが立っていた。
「何ボーっとしてるんですか」
「お前…今……」
「はい?」
目の前にいるコウは
紛れも無くいつものコウだ
「今…今見たか!?」
:07/08/16 01:54 :SH901iS :☆☆☆
#90 []
「なにをです?」
「今お前のそっくりさんおってん!!」
興奮状態の俺は
たった今の出来事を鼻息まじりに話した。
コウは俺が鼻息を荒くするたびに怪訝な表情をしたが、黙ってフムフムと相槌をうちながら聞いていた。
:07/08/16 01:57 :SH901iS :☆☆☆
#91 []
黙っておとなしく聞いていたコウだが、俺の
「コウが関西弁話してるみたいで気味悪かった」
という言葉にムッとしたのかコウは
「僕も関西弁くらい話せますで」
という、なんとも不気味な関西弁を使ってみせた。
やはりコウは不気味ちゃんだという収穫しか、この日はなく終わった。
:07/08/16 02:40 :SH901iS :☆☆☆
#92 []
《時間です》
《起きて下さい》
《時間です》
「…おはよ……」
「おはようございます」
翌日俺は
コウの携帯の目覚まし音のコウボイスで
いつも通りの朝を迎えた。
「今日もすがすがしい朝ですね。ラジオ体操したい気分です」
:07/08/17 03:00 :SH901iS :☆☆☆
#93 []
「……したら?」
「志乃くんも一緒にするならば」
「……嫌じゃ」
なぜ高校三年生にもなってラジオ体操なんぞしなアカンねや。
しかもむさ苦しい男二人で
「つれない人ですね、あなたは」
:07/08/17 03:02 :SH901iS :☆☆☆
#94 []
今日は日曜日。
俺は今日もコウを連れて
コウ似を捜すべくミナミに繰り出す予定だ。
「ラジオ体操よりもはよ準備して行こうや」
「…どこにですか」
「ミナミやん!昨日もゆーたやろ!?」
「なぜ……とは聞かなくてもわかりますが…」
:07/08/17 03:03 :SH901iS :☆☆☆
#95 []
「わかるならはよして」
「志乃くんだってまだ準備してないでしょう」
眠そうにあくびをしながらたばこに火をつけコウが言った。
「俺はえーねん!だいたいなんの誰のためにミナミ行く思ってんねん」
「誰のために?」
「俺のため。ほら、早く」
:07/08/17 03:06 :SH901iS :☆☆☆
#96 []
ブツブツと文句を言いながらもコウはたばこの火を消し着替えだした。
こいつ俺のこと大好きなんやな〜。
コウの準備も終わったところで、俺たちはミナミへと繰り出した。
「昨日はこの辺で会ったから、しばらくここで待ってみよーや」
:07/08/17 03:08 :SH901iS :☆☆☆
#97 []
しばらく待っていると
突然コウがジュースを飲みたいと駄々をこねだしたので、俺はしぶしぶジュースを買いに自販機まで行った
コウの好きな
おしるこの缶がなかったため、俺のこのみで
おーい、お茶を買った。
緑茶すきなのよ、俺。
:07/08/17 03:12 :SH901iS :☆☆☆
#98 []
元来た場所へ戻ると
何やらコウのそばに一人の女の子が近付くのが見えた。
逆ナンか?
なかなかかわいらしい子やん!
しばらく様子を見ようと、俺はコウのもとへ一歩近付いた。
すると………
:07/08/17 03:15 :SH901iS :☆☆☆
#99 []
《ばちーーん!!》
物凄いでかい音と共に
コウが張り手をくらわされている光景が目にとびこんできた。
「最っ低!!」
女の子は大きな声で一言だけコウに言い放ち、人混みに消えてしまった。
:07/08/17 03:17 :SH901iS :☆☆☆
#100 []
「おいっ…」
慌ててコウに駆け寄る。
コウはびっくりしたのか
殴られた頬を押さえ放心しているようだ。
「おい!コウ大丈夫か」
俺の声にハッとしたのか
コウは俺の手にもたれた缶を見た。
「コウ?おーい」
「…………お茶」
:07/08/17 03:20 :SH901iS :☆☆☆
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