黒蝶・蜜乙女
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#1 [向日葵]
:07/07/08 01:47 :SO903i :yldj4ZAU
#2 [向日葵]
ひらひらと舞う蝶達の中で、一際目を低くその漆黒の羽。
闇を表すその黒こそが見目麗しく、誰もが敬意をはらいたくなってしまうものなのだ。
そんな蝶達が求めるは、どれよりも美しく咲き誇った花の蜜……。
:07/07/08 01:51 :SO903i :yldj4ZAU
#3 [向日葵]
――――――――
小さな頃
夏だったと思われる季節に雲の巣にかかった1匹の蝶を見つけた。
お母さんに助けてと言ったが、仕方ないと言ってその場を離れてしまった。
私はどうしても離れることが出来なくて、体を傷付けないよう助けてあげた。
救われた蝶は解放された喜びに羽を大いに羽ばたかせ、青空へと旅立って行った。
その羽の色は、澄み渡る青とは似合わない、夜のような黒だった……。
:07/07/08 01:55 :SO903i :yldj4ZAU
#4 [向日葵]
―――――――
あれから10年。
「蜜ー。」
私は本山 蜜(もとやま みつ)。高1。
平凡を愛して10数年。
容姿普通。成績普通。やる気それなりのそこら辺にいる女子高生。
蜜「何、清。」
この子は西堂 清(さいとう きよ)。私の友達。
清「先生がプリント提出しれって。」
蜜「あ、そうだった。」
:07/07/08 02:01 :SO903i :yldj4ZAU
#5 [向日葵]
私は普通の日常を送る。
変化があることは大方避けたい。
面倒事に巻き込まれることはとりあえず御免したい。
それなのに奴は……。
清「ねぇアンタセツナ先輩と中いいよねぇ。」
蜜「馬鹿言わないで!!なんであんな……っ!」
そうセツナ…。奴こそ私から日常を奪い、非日常をプレゼントしてくれた奴だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
事を返せば2週間前。
:07/07/08 02:08 :SO903i :yldj4ZAU
#6 [向日葵]
蜜「ったく……なんで屋上まで…。」
同じ班の人が掃除中ふざけていたせいで早朝朝掃除。しかも私は一番上である屋上を1人で掃除しなければいけなかった。
蜜「先生も先生だ。罰ならふざけてた人達だけにやらせなさいよ。」
階段を上がりながらブツクサ呟いた。
そして空気抜けの為、入っては行けない屋上の戸を開けた。
―――ここからが悪夢の始まりなのだ。
涼しい風……なぁんて思ってる間はなかった。
:07/07/08 02:12 :SO903i :yldj4ZAU
#7 [向日葵]
だって目の前には、大きな黒い羽を広げた男の人が……。
それは綺麗な顔をしていて、羽と同じくらい黒い髪は風にふわりとなびいていた。
しかし、目が合った私は脳裏に走る予感に目を向けた。
―関わったら厄介だ―
蜜「しっつれーしましたぁー。」
戸を閉める瞬間。
ガッ!!
蜜「!!」
:07/07/08 02:15 :SO903i :yldj4ZAU
#8 [向日葵]
「俺のこの姿を見て失礼しましたですまないんだよお嬢さん……。」
その魅惑の声が私の体を絡めとる。
蜜「な、ななななんの事でございましょうか!」
厄介事は嫌だ厄介事は嫌だ厄介事は嫌だ厄介事は嫌だ!!!!
だってあり得ない!!
夢?!そんなファンタジーな事あっていいの?!だって羽だよ羽!!!!
ガチャン!
ついに男の人は戸を完全に開けて此方に来た。
羽はもうない。
よく見ればうちな制服を来ている。
:07/07/08 02:19 :SO903i :yldj4ZAU
#9 [向日葵]
バタ……ン
戸が音を立てて閉まった。
まるでそれは、私の行く道を阻むかの様に……。
チャプター1:黒羽の君
:07/07/08 02:47 :SO903i :yldj4ZAU
#10 [向日葵]
整った顔をしているその男の人はにじりにじり私に寄ってきて私を観察するかの様にジロジロ見た。
蜜「あ……んのぉ……。」
「へぇ……。」
男の人は顎に手を当てて面白そうに笑うと私の手を掴んだ。
蜜「な、何何何っ!!」
暴力反対!!私は平和を愛します!!
しかし予想とは違って、男の人は私の手首からまるで私の香りを吸い込む様に息を吸った。
:07/07/08 02:51 :SO903i :yldj4ZAU
#11 [向日葵]
蜜「え?!何?!え?!」
色々頭がパニックだ。
羽が生えた男の人見つけるわ
なんか知らないけど追い詰められるわ
しばらく息を吸い込んだ男の人は私をまたジッと見つめた。
『まぁなんとも整った顔でありますこと……。』
睫毛は長いし、髪はサラサラだし、鼻筋は通ってるし……。
しかもボタンが開いてるから首筋と鎖骨がチラリ。
はっは〜ん。なるほど。
色気作戦でさっきのこと忘れさせ様って?
:07/07/08 02:56 :SO903i :yldj4ZAU
#12 [向日葵]
そんなの羽が生えてたなんて言っても誰も信じないし、言わないから私を平凡人生の道へ戻してくださぁぁぁぁい!!!!
しかし願い叶わず、男の人が発したのはまた訳が分からない言葉だった。
「アンタ……“蜜乙女”か……。」
はい?
蜜「確かに私の名は蜜ですけど……。」
「プッ!“蜜乙女”で蜜のは皮肉なもんだなぁっ!!」
なんか笑い出したよオイ。
:07/07/08 03:00 :SO903i :yldj4ZAU
#13 [向日葵]
蜜「アハハハ。帰ってもいいですか。」
「自己紹介がなくて失礼。俺はセツナだ。」
古めかしいお辞儀をするとまた私に迫ってきた。
蜜「だ、だからなんなんですかぁっ!!」
トン
ついに背後は壁。
綺麗な人に変人多しと言うが……。
この人は変だ!!!!
セツナ「“蜜乙女”。いや蜜。」
蜜「ひゃっ、ひゃい。」
:07/07/08 03:09 :SO903i :yldj4ZAU
#14 [向日葵]
すると、セツナとか言う人は右手を壁に、左手を私の短い髪に触れ一束持つと、自分の口へと運んだ。
セツナ「よろしく。
花嫁殿。」
・・・・間・・・
蜜「……えーと、頭大丈夫ですか?」
セツナはフッと笑って私の手を取った。
セツナ「どうやら俺の“蜜乙女”は頭が弱いらしいなぁ。」
:07/07/08 03:14 :SO903i :yldj4ZAU
#15 [向日葵]
アハハハハ。
喧嘩売ってんのかこの野郎☆
それ以前にさっきから“蜜乙女”って言うけどなんなのよ……。
掴まれた手をいきなり引っ張られた。
セツナ「おいで。話してあげるよ。」
蜜「いいです!掃除中です!離してください!」
頼むからそんな意味の分かんないことに巻き込まないでぇぇ!!
セツナ「ハァ…頭が弱い上に強情ときたか。仕方ない。失礼。」
と言ってくれたからやっと解放してくれるんだと思ったら
ガバァ!!
世界がひっくり返った。
:07/07/08 03:18 :SO903i :yldj4ZAU
#16 [向日葵]
まるで荷物の様に私は担がれていた。
そしてまた戸を開け屋上へと行く。
蜜「ぶわっ!!はな、離して下さい!!」
するとストンと地上へ降ろしてくれた。
とりあえず一息。
スーッ ハーッ
深呼吸して考えることはただ1つ。
逃げるべし。
セツナ「逃げようったってそうはいかないぞ。」
セツナは私の頭に手をかざすと何かを落とす様に指を擦らせた。
:07/07/08 03:22 :SO903i :yldj4ZAU
#17 [向日葵]
すると……
ビリビリ
蜜「きっ…!な、……こ……。」
まるで全身に電気が流れているみたい。
痺れて体が動かない。
セツナ「鱗粉(りんぶん)だ。どうも話を聞く態度では無いみたいなんでなぁ……。手荒な真似はしたくなかったが……。さて。話を聞いて頂けるかな?“蜜乙女”よ。」
もうどうでもいい。
明日の朝になったら全て忘れてやる。
今はとりあえずこの痺を解いて欲しい。
:07/07/08 03:27 :SO903i :yldj4ZAU
#18 [向日葵]
蜜「聞き……す……。」
セツナ「ん?何て?」
人差し指で私の顎をクイッと上へ向かす。
蜜「聞き…ま……す。」
セツナ「いい子だね。」
パチンと指を鳴らすと一気に痺が解けて私は床にガクッと崩れた。
蜜「なんて事……っ。」
セツナ「自業自得だろ?」
ムカムカして話を早くする様に促した。
そして話された内容は正に漫画みたいなあり得ない話。
:07/07/08 03:31 :SO903i :yldj4ZAU
#19 [向日葵]
セツナは黒蝶族と言う貴族の頂点の者。
今は人間世界で研修中。
彼等が求めるは自分に見合った“蜜乙女”を探すこと。
さてここで“蜜乙女”とはなんだけど……言わばさっきセツナが言った通り花嫁と言うことであって……
だからって
蜜「私にどうしろと……。」
セツナ「子孫繁栄に決まってんだろ。」
蜜「は?!それだけ?!」
わたしゃ子造り道具?!ばっかじゃないの?!?!
:07/07/08 03:36 :SO903i :yldj4ZAU
#20 [向日葵]
蜜「そんな事言われてはいそうですかって言うこと聞くとでもっ」
セツナ「蜜乙女と俺達は必ず惹かれ合う運命にある。俺達も同じさ……。お前のその香りが……。」
と言いながら私の首筋に指先をスッと滑らす。
セツナ「そそられる。」
クスッと妖しげな笑みを浮かべてセツナは言った。
なんだか私は恥ずかしくなって顔を赤くした。
蜜「私は惹かれない!!そんな義務みたいな感情なんて嫌い!!!!」
:07/07/08 03:40 :SO903i :yldj4ZAU
#21 [向日葵]
セツナ「じゃあ義務的じゃなくしてやるよ。」
蜜「はぁ?!」
腕を引っ張られ、もう1つの手は腰に巻き付け私を引き寄せた。
蜜「な…!―――!!!!」
次の瞬間。私はキスをしていた。
初めてなのにこんな意味分かんない人と……っ!
蜜「嫌っ!!」
ドンッ!!
突き飛ばしたけど、セツナは2歩くらいしか下がらなかった。
そしておかしそうにクククッと笑う。
:07/07/08 03:44 :SO903i :yldj4ZAU
#22 [向日葵]
セツナ「流石俺の蜜乙女。味は極上だなぁ…。」
下唇をペロッと舐める。
私は更に恥ずかしくなる。
蜜「頭……おかし…っ。絶対貴方なんて忘れてやる!!」
セツナ「好きなだけ忘れる努力をしたらいいさ。でも俺は何度もお前の前に現れる。分かるか?お前の香りが俺を呼んでるんだ。」
あったまに来た。
蜜「大っっっ嫌い!!!!」
バタン!!
背後でセツナは高らかに笑っている。
:07/07/08 03:49 :SO903i :yldj4ZAU
#23 [向日葵]
帰ってきて……
私の日常……っ帰ってきてぇぇぇぇぇ!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・
と言うわけで現在に至る。
ってかセツナって18だって!!2個も年上!!どおりで老けてると……
「オイ。」
その声にゆーっくり後ろを振り向く。
あ゛―――やっぱり……。
蜜「セツナさん……。」
セツナ「呼び捨てで構わんと言ってるだろ。」
:07/07/08 03:53 :SO903i :yldj4ZAU
#24 [向日葵]
セツナは学校でも有名な美男子で、振り返らない人はいない。
そんな人が私と話してて大丈夫だろうか(私が)
蜜「ここに来たってことは……」
あの時間だ……。
セツナ「屋上行くぞ。」
すでに嬉しくもない日課が続いている。
それもまるで変態の様な……。
時間とは……食事タイムだ……。
バタン
屋上の戸が閉まる。
:07/07/08 03:59 :SO903i :yldj4ZAU
#25 [向日葵]
早く済ませて帰りたいのにセツナは中々事を始めようとはしない。
転がって青空を見上げて日向ぼっこをしている。
私はうんざりする。
こんな事なんで……。
と、急に腕を引っ張られて私も転ぶハメになる。
あぁ食べる気になったんだ。
それでもこんな事慣れない。無意味に心臓が跳ねる。
こんな事=キスして私から蜜を吸いとること。
セツナの頭が私の上に被さる。
:07/07/08 04:04 :SO903i :yldj4ZAU
#26 [向日葵]
セツナ「クスクス。いつも不機嫌そうだな。」
蜜「誰もこんなの喜び…んむっ……。」
急に食べられた。
私は只の餌。
なのに……頭がくらくらする。
唇を離されて私は目を開けた。
まだ近くにセツナが綺麗な顔でそこにいる。
セツナ「今日も美味いな。」
蜜「あー…それはどうも……。」
するとまたセツナが近づいてきて私を挟むようにして包んだ。
:07/07/08 04:08 :SO903i :yldj4ZAU
#27 [向日葵]
蜜「な、どいて下さいよ!」
セツナ「なぁ蜜よ。本気でお前は自分が食事と子孫繁栄の為だけだと思っているのか?」
はぁ?当たり前じゃない。
こんな毎日毎日望んでもないのにキスされて、恋人だと思ってるって言う方が頭どうかしてるよ!
……ちょっと待て私。
私……恋人だと思って欲しいの?
…………んなわけないないないない!!!!
セツナ「オイ。」
蜜「ぅあいっ!!もちろんっ!!」
:07/07/08 04:13 :SO903i :yldj4ZAU
#28 [向日葵]
するとセツナは私の瞼に唇を触れた。
蜜「っ!」
セツナ「つくづくお前は馬鹿だ。そんな訳ないだろう。」
そして今度は抱き締められた。
蜜「ありますよ!実際貴方は私が蜜乙女だからこんな事してるだけであって私はどうでもいいんじゃないですか!!」
セツナは何も言わず力をギュッっいれる。
魅惑的な匂いが私の鼻を通る。
平凡を拐って今度は私の思考まで拐ってしまう気?
:07/07/08 04:18 :SO903i :yldj4ZAU
#29 [向日葵]
私はそこまで馬鹿じゃないんだから!
蜜「いい加減退いて下さい。帰りますから。」
セツナ「好きだ。」
私は固まってしまった。
好き?冗談じゃない。
どうせ私をいい気分にさせて蜜を根こそぎ取りたいだけでしょ?
さぞかし蜂蜜が沢山になるんでしょうね。
蜜「退いて。」
セツナ「好きだ。」
蜜「離して……。」
セツナ「好きなんだ。」
:07/07/08 04:22 :SO903i :yldj4ZAU
#30 [向日葵]
:07/07/08 04:23 :SO903i :yldj4ZAU
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