darkness;FROM OZ
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#2 [OZ]
【Twins】
………………………
SIDE:由宇(ユウ)
僕は気宇(キウ)のことが嫌いだ。
気宇っていうのば僕の弟。
顔や体付きはそっくりだし、勉強や運動も同じくらいできる。
だけど、
気宇は馬鹿なんだ。
本当に馬鹿なんだよ。
勉強が僕と同じくらいっていうのは認めるけど……
そういうことじゃなくて、とにかく頭がおかしい。
:07/07/17 20:46
:N700i
:☆☆☆
#3 [OZ]
時々思うんだ。
気宇は僕を真似て作ったコピーなんじゃないかって。
体とかは僕そっくりにうまくできたけど、性格までは真似できなかったんだ。
だから、他人の言うことを聞くことしかできない。
お父さんたちは、
気宇のことを“素直”とか“純粋”ってことばに当てはめているけれど、僕に言わせればただのポンコツ。
お父さんとお母さんは悲しむことになるよ。
そのうち気宇のことを馬鹿って認めなくちゃいけなくなるからね……。
:07/07/17 20:52
:N700i
:☆☆☆
#4 [OZ]
時間の問題だよ。
けど、僕はお父さんたちのことが好きだから、気宇のせいで悲しませたくない。
お父さんたちは僕さえいてくれれば幸せなんだよ。
だってそうでしょ?
気宇は失敗作なんだし。
いつまでも一緒に住んでいる必要はないんだ。
……僕は決めたよ。
気宇を隠しちゃおう。
:07/07/17 20:56
:N700i
:☆☆☆
#5 [OZ]
気宇を隠すということを実行したのは、僕らが八歳になった時だった。
僕と気宇は自分の部屋で遊んでいた。
「なぁ、気宇?」
「なぁに?由宇」
気宇はクスクスと笑い声をあげた。
弟はいつも笑っている。
馬鹿な証拠だ。
僕は怒りを無理矢理沈み込め、気宇そっくりな笑顔を浮かべた。
「おもしろい遊びを思いついたんだ」
気宇が顔を輝かせた。
:07/07/17 21:52
:N700i
:☆☆☆
#6 [OZ]
「あのね、
隠れん坊するんだ」
僕がそう言うと、気宇は露光に不満そうな顔をした。
「それ、やったことある」
僕は厳粛にうなずいた。
「僕が考えた隠れん坊は、いつものよりずっと楽しんだよ」
気宇は疑うように首をひねった。
「どうやるの?」
「まず、気宇が押し入れの中に隠れるんだ」
:07/07/17 21:58
:N700i
:☆☆☆
#7 [OZ]
僕がそう言うと、気宇はすぐさま押し入れに入っていった。
僕らの家の押し入れは、上の段と下の段にわかれている昔ながらのものだ。
かなりの広さのある押し入れだったが、お母さんはそこはじめじめしていると言って、めったに使おうとはしなかった。
「それで?」
気宇はにっこりとして僕を眺める。
僕は深呼吸をした。
大丈夫。
気宇は馬鹿だ。
:07/07/17 22:06
:N700i
:☆☆☆
#8 [OZ]
「……そしたら誰にも見つからないようにするんだ。
誰にもだよ。
僕が考えた隠れん坊は永遠に続くんだ。
……押し入れから出てって言うまで。
お父さんとかお母さんにも見つかったらダメだよ。
僕の前以外で声を出さないで……。
絶対に出ちゃいけない。
わかった?」
“わかったよ”
気宇はそう言った。
僕はその言葉を聞くと、部屋から飛び出した。
:07/07/17 22:12
:N700i
:☆☆☆
#9 [OZ]
玄関に向かい、急いで自分の靴を履き、気宇の靴は手で持った。
リビングに居るはずの母親に、
「これから気宇と遊んでくる!」
と大声で叫び、外に出る。
そして、近くを流れる川まで走った。
前日に雨が降ったため、水嵩が多く、流れもはやいように見えた。
よし……。
僕は川に靴を投げ込んだ。
:07/07/17 22:17
:N700i
:☆☆☆
#10 [OZ]
気宇の靴が水にさらわれていく。
あっという間に見えなくなってしまった。
僕はしばらく辺りを歩き回ったあと、川の水を少しだけ自分の服にかけた。
それがすむと、全速力で家まで帰り、玄関のドアを勢い良く開ける。
「お母さん、お母さん!」
僕はあらん限りの声で叫んだ。
お母さんは僕の声に驚き、転がるようにして玄関に現われた。
:07/07/17 22:23
:N700i
:☆☆☆
#11 [OZ]
「由宇……?どうかしたの?何かあったの?」
お母さんは心配そうに僕を撫でた。
僕は必死でお母さんに訴えかける
……ふりをする。
「お母さん!
気宇が川に落ちたかもしれないんだ!」
お母さんは固まった。
一気に顔が青ざめる。
「……嘘でしょう?」
「たぶん、本当だよ!
僕、一瞬だけど見たんだ!
気宇の靴が流されていくのを!」
:07/07/17 22:28
:N700i
:☆☆☆
#12 [OZ]
お母さんは小さな悲鳴をあげた。
おろおろとしてしまい、今にも泣きだしそうだ。
僕はうんざりして、心の中でため息を吐く。
「……警察に電話してみた方がいいんじゃない?」
僕がそう言って、ようやくお母さんは受話器を手に持った。
それからあとの事は、瞬く間に過ぎ去っていった。
:07/07/17 22:33
:N700i
:☆☆☆
#13 [OZ]
自分のしたことがバレるのではないかと心配したが、そのようなことは、ちっともなかった。
僕が放り投げた気宇の靴は、警察の手によって発見された。
気宇自体は発見されることはなかったが(あたり前だ。気宇は押し入れの中に居るんだから)、死亡したということになった。
お父さんたちはたくさん泣いたけれど、それは一時的なことだ。
後々、気宇を隠した僕に感謝するんじゃないかな?
僕はほくそ笑んだ。
:07/07/17 22:38
:N700i
:☆☆☆
#14 [OZ]
気宇を押し入れに隠してから八年が経過した。
僕は高校生となった。
気宇は押し入れの中で16歳の誕生日を迎えた。
そして、僕と気宇は相変わらずかなり似ていた。
もちろんそれは外見だけの話ではあるが。
僕は気宇のことを気遣って、色々配慮してやった。
食物は気宇が僕より痩せてしまわないように、きっちり与えた。
お風呂は両親がいないときを狙って、シャワーを浴びさせた。
:07/07/18 19:28
:N700i
:☆☆☆
#15 [OZ]
トイレは両親がいるときでも普通に行かせた。
だって僕らは似てるから。
両親にトイレに行く気宇の姿を見られたってなんの問題もない。
気宇は死んだと思われているのだもの。
両親はあれが僕であることを疑わない。
一つ気を付けなければいけないのは、気宇が押し入れから出たときは僕が隠れていなければいけないということ。
:07/07/18 19:32
:N700i
:☆☆☆
#16 [OZ]
そうそう、同じ服を着なくちゃいけないってことも忘れたらダメだ。
そうじゃないと大変なことになってしまうからね。
それだけは
絶対に避けたい。
散歩も同様な手口で行わせた。
色が白すぎたり、太ってしまったりしたら、今の作戦でトイレに行けなくなってしまう。
そんなことになったら、気宇は押し入れで排泄しなきゃいけない……。
それか僕の部屋で……。
:07/07/18 19:39
:N700i
:☆☆☆
#17 [ふぅ]
あげます(≧∀≦)

頑張って☆
:07/07/18 21:14
:SH903iTV
:xKkAQZ/E
#18 [OZ]
ふぅさん
あげてくださって
ありがとうございます
頑張ります(・∀・)
:07/07/18 22:27
:N700i
:☆☆☆
#19 [OZ]
……これ以上は考えないことにする。
とにかく、僕らはそっくりでなきゃいけないんだ。
「……由宇?
何か……何か居るよ」
押し入れの中から、気宇のくぐもった声が聞こえてきた。
「……何かって?」
僕は憤りを感じながらも、一応答えてやる。
「わからない……。
けど何か動いてるよ!」
:07/07/18 22:50
:N700i
:☆☆☆
#20 [悠紀]
まじ面白いです

続きがすごく気になります

頑張って下さい尸"

:07/07/18 22:52
:P901i
:☆☆☆
#21 [OZ]
悠紀さん
面白いって言って
いただけてうれしいです

更新
遅いと思いますが
頑張ります(´`)
:07/07/19 06:18
:N700i
:☆☆☆
#22 [OZ]
気宇は最近、しょっちゅうこういう話をするようになった。
長い間、
押し入れで暮らし、僕以外とまともに関わらなくなった気宇にとって僕は神のような存在であった。
それに、もともと気宇は僕の言うことをよく聞いた。
だから、僕が押し入れに隠れ続けろと命令すれば、その通りにする。
しかし、気宇は押し入れから出たがっていた。
こういう意味のわからない話をして、押し入れから出してもらうつもりでいるのだ。
:07/07/19 07:56
:N700i
:☆☆☆
#23 [OZ]
「嘘をつくな。
さあ、黙って昼寝でもしたらどうだい?」
気宇は切なそうな声で、うめいた。
それからしばらくの間、気宇は“何か居る”と呟き続けた。
まったく……。
気宇は体は成長したものの、中身は八歳の時と何ら変わっていないじゃないか。
押し入れから出たいのであれば、もっとましな言い訳をしてほしいものだ。
まあ、そこから出す気はないのだけれど。
:07/07/19 19:29
:N700i
:☆☆☆
#24 [OZ]
気宇が押し入れから出られるのは、両親が死んだときか、それか……
彼自身が死んだときだ。
それまでは何があっても出さない。
絶対に。
………………………
「ねぇねぇ、由宇の部屋に行きたいんだけど」
理央はにっこり笑ってそう言った。
:07/07/19 19:34
:N700i
:☆☆☆
#25 [OZ]
僕がちょうどリビングに通そうとしたときに、突然理央が言いだした。
ギクッとして理央の顔をまじまじと眺める。
理央は美しい笑みを顔に貼りつけ、甘えるような声を出した。
「いーじゃん!
私、由宇の部屋見てみたいんだもん。
ちょっとだけ!ね……?」
普段は理央に可愛らしくお願いされたら、即座に言うことを聞いてしまうのだが、こればかりはそうもいかない。
:07/07/19 19:40
:N700i
:☆☆☆
#26 [OZ]
「けど……部屋汚いんだ。
それに親もいないんだから、リビングだってかまわないだろう?」
理央の眉間に皺がよった。
大きな目がキュッと細くなる。
……僕と理央は付き合って二ヵ月になる。
僕は理央が大好きだ。
なぜなら、
彼女がとても綺麗な外見を持っているからだ。
:07/07/19 19:44
:N700i
:☆☆☆
#27 [OZ]
真っ白い肌。
真っ黒い長い髪。
真っ赤で豊かな唇。
日本人形のような少女であったが、それでいてどこか西洋風の妖艶さも兼ね備えているのだ。
僕はいつも彼女に見入ってしまう。
そばに置いておいて、いつまでも眺めていたいくらいだ。
だから、僕の部屋に入れることは避けたいのだ。
もし気宇が声を出してしまったら?
考えただけでも恐ろしい。
:07/07/19 19:50
:N700i
:☆☆☆
#28 [OZ]
しかし、僕の部屋に案内しなかったらしないでかなりまずいことになる。
理央はすでに機嫌をそこねている。
これ以上拒否していたら、帰ると言いだしそうだ。
それだけならまだいいが、別れるなんてことになったら……。
あの綺麗な顔を間近で見れなくなってしまう。
……仕方ない。
「わかった。
僕の部屋に案内するよ」
:07/07/19 19:53
:N700i
:☆☆☆
#29 [OZ]
僕の部屋は二階。
階段をあがる度に、胸の鼓動が速くなる。
変な汗までかいてきてしまった。
部屋の前に立つ。
ひんやりとしたドアノブに手をかけ、ゆっくりとまわした。
部屋に入ってすぐに横目で押し入れを確かめた。
大丈夫。
ぴったりとしまっている。
:07/07/19 20:56
:N700i
:☆☆☆
#30 [OZ]
理央は、乱暴に学生鞄を置くと、キョロキョロと部屋中を見回した。
「なぁ、理央。
何にもないだろ?つまんないからリビングに戻ってテレビでも見ないか?」
僕は大声でそう言った。
気宇に理央の存在を知らせるためだ。
理央はあんなにも僕の部屋に行きたがっていたくせに、あっさりとリビングに戻ることを承諾した。
僕は理央の背中を押すようにして、とっととリビングに向かわせた。
:07/07/19 21:02
:N700i
:☆☆☆
#31 [OZ]
それから後は何の問題もなく、理央は僕の家から帰っていった。
そして、理央が再び家に来たときのことだった。
僕は理央を家に残して、近所のコンビニに買い物に行った。
数十分後、帰ってきてみると理央の姿は跡形もなく消えていた。
鞄も靴も無くなっていた。
不可解な
手紙を残して―――…。
:07/07/19 21:08
:N700i
:☆☆☆
#32 [OZ]
手紙には
「用事が出来たから
先に帰るね。理央」
と、書かれていた。
読んだ瞬間、僕は漠然とした違和感を感じた。
何度も読み返すが、違和感の理由はさっぱりわからない。
得体の知れない不安を感じる。
ただの置き手紙が、異様なまがまがしいものに思えて仕方がない。
理央は家かどこかに帰っただけじゃないか……。
そう思いながらも、僕は理央の携帯に電話をかけていた。
理央に電話するのは初めてかもしれない。
:07/07/21 21:17
:N700i
:☆☆☆
#33 [OZ]
僕らは普通の恋人同士がするようなことは、一切していなかった。
ずいぶん長い間携帯を握り締めていたが、理央の声をきくことはできなかった。
翌日、理央は学校に姿を見せなかった。
先生はただの風邪だと言っていたが、僕にはどうにも信じられなかった。
「……由宇?」
:07/07/21 21:21
:N700i
:☆☆☆
#34 [OZ]
押し入れ越しに気宇が話し掛けてくる。
陽気で幼稚な弟の声に、イライラさせられる。
そもそも、彼はなぜ押し入れから出てこないのか?
簡単に逃げ出せるっていうのに。
一体どこまで馬鹿なんだ?
僕は気宇に返事を返さずに部屋を出た。
もう一度、理央に電話してみよう……。
:07/07/22 07:17
:N700i
:☆☆☆
#35 [OZ]
理央が行方不明であることが知らされたのは、彼女が学校に来なくなって3日経ったときだった。
理央はふらりと居なくなることが多かったため、今回もそうであるのじゃないかと思われていた。
しかし、3日も音信不通のまま帰ってこないのはおかしいということにったらしくい。
何人かのクラスメイトが僕に慰めの言葉をかけた。
僕らが付き合っていたのはみんな知っていたし、そうとうひどい顔をしていたからだろう。
先生に理央について聞かれたが、何も知らないと答えた。
:07/07/22 07:24
:N700i
:☆☆☆
#36 [OZ]
僕はどうしてこんなに不安で怯えているのだろう?
確かに理央のことは気に入っていたし、たぶん理央と最後に接触したのは僕だろう。
だけど、
普段ならそんなこと気にしないんじゃないか?
どうしたのだろうか?程度にしか考えない。
不審には思うかもしれないが、ここまで過敏に気にしないはずだ。
何か……。
何か得体の知れぬものが、潜んでいる。
そうに違いない。
:07/07/22 07:29
:N700i
:☆☆☆
#37 [OZ]
家に帰ると、理央の置き手紙を読み返した。
やはり何か変だ。
わかりかけてきているのに……答えが出てこない。
僕が机に頬杖をついていると、妙な匂いがすることに気付いた。
「気宇」
ややしばらくして、慌てたような気宇の声が返ってきた。
「……何?由宇……」
:07/07/22 07:33
:N700i
:☆☆☆
#38 [OZ]
「変な匂いがする……。
気宇、お前押し入れの中で何かしてないだろうな?」
匂いはなんとも形容しがたかった。
わずかではあるのだが、何かが腐ったような……。
僕は気宇が押し入れの中で排泄してしまったのではないかと考えた。
気宇は弱々しく答えた。
「……してない」
僕は苦笑いをして、再び手紙と睨めっこを始める。
:07/07/22 07:37
:N700i
:☆☆☆
#39 [OZ]
いくら気宇が馬鹿だからといって、さすがにそんなことはしないか。
次の日は休日で、僕は一日中部屋に居た。
妙な匂いは強くなってきている気がする。
飽き飽きしながらも、理央の手紙を眺め続けた。
あと少しで何かが掴めそうなのに。
手紙には、独特な形をした文字たちが並んでいる。
:07/07/22 07:42
:N700i
:☆☆☆
#40 [OZ]
理央の字は大きくてまるっこい。
それなのにどこか尖っていて……。
お世辞にもうまいとは言えないし、殊更理央は何かを書くのが嫌いで、いつも乱暴で噛み付かれそうな字になっている。
僕はそんな理央をよく笑っていたものだった。
「……ん?」
あれ……?
そうだ。
理央は何かを書くのが
嫌いだったんだ……。
唐突に違和感の理由が結び付いていく。
:07/07/22 09:48
:N700i
:☆☆☆
#41 [OZ]
授業中もノートを取らないことが多かった。
それなのに理央は、わざわざ置き手紙を書いた。
理央はそんなことをするような子ではなかったはずじゃないか?
手紙など書くような子ではない。
なのに……
僕の手には理央からの手紙がある。
それに手紙の最後に「理央」と書かれているが、理央は「りお」と平仮名で名前を書くことが主だったんじゃなかったか?
:07/07/22 09:55
:N700i
:☆☆☆
#42 [OZ]
……その通りだ。
僕の手から手紙がスルリと落ちた。
これは理央からの手紙……ではない……?
わからない。
もし理央からじゃなかったとしたら、一体誰が?
あの時……
僕は一人でコンビニに行った。
両親はいなかったから、家には理央だけだった。
:07/07/22 10:00
:N700i
:☆☆☆
#43 [OZ]
ということは、家に誰か侵入し、理央をさらっていった?
手紙は理央の筆跡を真似たものか?
いいや、そんなことは考えにくい。
理央が書かされたということもあるが……、
誰かに脅されていたとしたら、もっと汚い字になるのではないだろうか。
……まてよ。
僕は押し入れを凝視した。
:07/07/22 10:05
:N700i
:☆☆☆
#44 [OZ]
この家に居たのは理央だけではない。
気宇だってこの家に居たじゃないか。
「気宇!」
僕は興奮気味に気宇に呼び掛けた。
「……なぁに?
由宇の楽しそうな声、久しぶりに聞いた!」
気宇の嬉しそうな声が押し入れの中に響く。
「気宇!押し入れをちょっと開けていいぞ!
だから真剣に僕の質問に答えて。いいね?」
:07/07/22 10:09
:N700i
:☆☆☆
#45 [OZ]
僕がそう言うと、押し入れが顔の大きさほど開いた。
ひょっこりと、笑顔を浮かべた失敗作のもう一人の僕が顔をのぞかせる。
「真剣に、真剣に」
気宇は歌うように繰り返した。
「なぁ、4日前に何か変なことはなかったか?」
気宇がもしかしたら変な声や音を聞いていたかもしれない。
しかし、気宇は眉間にしわをよせ、首を傾げた。
:07/07/22 10:33
:N700i
:☆☆☆
#46 [OZ]
「4日前?」
気宇には曜日の感覚というものがあまりなかった。
「……いいや、なんでもない」
僕はうなだれた。
せっかく、何かつかめるかと思ったのに。
期待した僕が馬鹿だった。
どうせ理央はリビングに居たんだ。
だから、理央がこの家に来ていること自体、気宇は知らないかもしれない。
:07/07/22 10:38
:N700i
:☆☆☆
#47 [OZ]
「気宇、
とっとと顔を引っ込めろ」
僕は押し入れに背を向け、落ちていた理央の手紙を拾い上げた。
やっぱりこの手紙は理央が書いたんだ。
そして、理央は明日にでも帰ってくる。
一人旅がしたかったと言いながら。
そう願うしかない。
「……待ってよ、由宇」
僕は苛立ち、気宇を怒鳴り付けようと振り返った。
「うるさ……」
:07/07/22 10:43
:N700i
:☆☆☆
#48 [OZ]
僕は騒然とした。
押し入れから顔を出す気宇の顔は、いつもの気宇のものではなかった。
悪戯に歪んだ口元、爛々と輝く瞳を細め、僕を嘲笑っているかのようだ。
「……気宇?」
「4日前だっけ?
僕、ちゃんと覚えているよ……」
「え?」
のどがカラカラに渇き、胃が痛む。
コイツは誰なんだ?
:07/07/22 10:49
:N700i
:☆☆☆
#49 [OZ]
「綺麗な子……。
暗闇みたいな髪に、雪みたいな肌。
それに血みたいな唇。
理央さん……」
気宇のぞっとするような美しい笑顔。
僕は動くどころか、呼吸するのもままならないような状態だった。
「まさか……」
気宇は軽やかな動きで押し入れから出てきた。
僕の目の前に立つ。
そして、手紙を指差した。
:07/07/22 11:03
:N700i
:☆☆☆
#50 [OZ]
「それ、僕が書いたんだ」
なんだって……?
自分の耳が信じられなかった。
気宇が?
「だって……これは理央の……字だ」
気宇はほほ笑みながらうなずいた。
「あのね、初めて理央さんが家に来たとき、
鞄をこの部屋に置いていったでしょ?」
僕は小さく「あっ」とうめいた。
はやく理央を部屋から追い出したくて、鞄を置きっぱなしにしてしまった。
:07/07/22 11:08
:N700i
:☆☆☆
#51 [OZ]
「鞄の中からテストを見つけたんだ!
それを真似した」
テスト……。
ああ、そうか。
だから「理央」と漢字でかかれていたのか。
テストはちゃんと名前を書かなければいけないから。
手に変な汗をかいてきた。
「……僕ね、
寂しかったんだ。
それでね、もし一緒に隠れてくれる子が居てくれたらって」
「隠れる……?
じゃあ、理央は……」
:07/07/22 11:13
:N700i
:☆☆☆
#52 [OZ]
「押し入れに居るよ」
僕は気宇を押し退けると、押し入れを覗き込んだ。
薄闇の中、理央は壁に背をつけ座っていた。
顔はボコボコに膨れ上がり、赤黒く固まった血がたくさんこびり付いている。
目の位置が変わっていた。
口にはご飯のようなものが詰め込まれている。
「どうして……」
僕は泣いていた。
お気に入りだった理央は、僕の分身に台無しにされてしまったのだ。
:07/07/22 11:18
:N700i
:☆☆☆
#53 [OZ]
「煩かったんだよ。
あのままじゃ、
お母さんたちに見つかっちゃうでしょう?」
気宇は淡々と言った。
馬鹿だと思っていた気宇は、まんまと僕を出し抜いて理央を奪った。
丁寧にあんな手紙まで書いて……。
僕はそっと理央に触れた。
肌が以上にやわらかい。
異臭は理央のものだったのか。
「理央さんは綺麗だから好きだった。
僕のそばに置いておきたかったんだ。
けどね、由宇……」
:07/07/22 11:23
:N700i
:☆☆☆
#54 [悠紀]
感想板は作らないんですか???
:07/07/22 11:27
:P901i
:☆☆☆
#55 [OZ]
僕は押し入れから出て、気宇を見上げた。
気宇の手には、どこからもってきたのか、金槌が握られていた。
「僕が一番好きなのは由宇なんだよ。
由宇が一番綺麗だし、頭がいいんだ。
僕には由宇だけいればいい。
いつも一緒にいよう?
押し入れからこっそり由宇を眺めるだけなんて嫌だよ……。
一緒に隠れよう?」
気宇は僕の手を握った。
冷たい手。
僕は無言のまま、振り下ろされてくる金槌を眺めた。
:07/07/22 11:29
:N700i
:☆☆☆
#56 [OZ]
悠紀さん
感想くれる人が
特にいないと思っていたので
作ってなかったんですけど
作ったほうが
いいですかね(´・ω・`)?
:07/07/22 11:35
:N700i
:☆☆☆
#57 [悠紀]
ぜひ作って下さい

この小説めっちゃ面白いからたくさん感想書かれますよ!!
感想板作ったほうが、こちらも読みやすくなると思いますし

:07/07/22 11:39
:P901i
:☆☆☆
#58 [OZ]
……………………
「由宇ー!
どうしたの?夕ご飯できたわよー。
居るんでしょ?」
母親がどたどたと音をたてながら階段を登る。
勢い良く由宇の部屋のドアを開けたはいいが、中には誰も居なかった。
「……由宇?」
なんなのこの匂いは?
母親は思った。
由宇の部屋からは、
何かが腐ったような匂いがしていた。
そんなに強い匂いではないが、嫌な気分になる。
:07/07/22 11:41
:N700i
:☆☆☆
#59 [OZ]
窓を開けていると、押し入れから笑い声のようなものが聞こえてきた。
「由宇なの……?」
母親は戸惑いながらも
押し入れを開けた。
鼻をつくような匂いがあふれ出る。
押し入れの中には、由宇がちょこんと座っていた。
母親は彼の名を呼ぼうとしたが、思い止まった。
少年の右目の下にほくろがあったからだ。
:07/07/22 11:47
:N700i
:☆☆☆
#60 [OZ]
由宇は目の下にほくろなど無い。
彼は由宇ではなかった。
ずっと前に死んだはずの男の子……
気宇。
少年はつぶやいた。
「見つかっちゃった……」
:07/07/22 11:51
:N700i
:☆☆☆
#61 [OZ]
END。
:07/07/22 11:51
:N700i
:☆☆☆
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