―温―
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#331 [向日葵]
私はそのまま固まる。
玄関のドアを開けたままなので雨の音が大きく聞こえる。
それに重なって、香月さんの声が聞こえた。
「泣いてるかな……って。心配だったんだ。」
息を飲んだ。
でも弱いとこ見られたくなくて、何もない風に振る舞いながら香月さんを振り返る。
「何で?誰の為に?何のメリットがあって?」
香月さんを馬鹿にするように嘲笑いながら言っても、香月さんに通用しなかった。
:07/09/13 02:23 :SO903i :i0NKXNbs
#332 [向日葵]
それどころか、怒った様な、悲しそうな顔をして私を自分の近くまで引っ張った。
そして指先で目元をなぞる。
思わずビクッとして目を軽く見開いた。
「じゃあなんで目、赤いの?」
「――――!!」
言葉を考えてる余裕なんかなかった。
言い返すにふさわしい言葉が見当たらなかった。
それに、今の状況……。
「……っ。」
:07/09/13 02:28 :SO903i :i0NKXNbs
#333 [向日葵]
香月さんは自分の胸元に私ね顔を押し付け、抱き締めた。
私は何が怒ってるのか全然分からなくって、息が止まった。
「言ったでしょ。胸貸すって。」
それだけ言うと、更に私をキツク抱き締めた。
昼間の様なふざけた抱き締め方じゃない。
好きな人が傷つかないように、優しく、愛しく……。
私が……ずっと求めていたもの……。
:07/09/13 02:32 :SO903i :i0NKXNbs
#334 [向日葵]
――――
――――
今日はここまでにします
:07/09/13 02:33 :SO903i :i0NKXNbs
#335 [向日葵]
―拭―
香月さんの体温は暖かくて、すごく安心した。
確かに、私が欲しかった物をくれた。
でも欲しいのは、香月さんからじゃないの……。
玄関を見れば、既に九時を回っていた。
:07/09/14 02:10 :SO903i :Bf6JTbxA
#336 [向日葵]
大分寝てたんだと抱き締められたままぼんやり思った。
香月さんの腕の力が緩む事はない。
ただ黙って、まるで傷ついてる私を優しく消毒してくれているみたいに包んでくれてる。
別に嫌だとかそんな事は不思議と思わなかった。
でもただ、ドキドキと胸の鼓動は聞こえなかった。
あの静流に抱き締められたみたいに……。
「ねぇ。何してたの?」
ようやく口を開いた香月さんが私に聞いた。
:07/09/14 02:14 :SO903i :Bf6JTbxA
#337 [向日葵]
少し距離をとって私は香月さんを見上げた。
「……それより。玄関のドア、閉めて。」
「あ。」っと言い、香月さんは私から完璧に離れてドアを閉めた。
ガチャン
「で。何してたの?」
いつもよりも穏やかな笑みで私に聞いてくる。
その時ばかりは少し空気が違う事に戸惑って、リビングがある上を見上げた。
「……。ケーキ貪ってた。とりあえず上がって。」
:07/09/14 02:18 :SO903i :Bf6JTbxA
#338 [向日葵]
私は先に階段を上った。
その後ろから少し距離を開けて香月さんが来ている。
リビングに来ても明かりはつけなかった。
すると香月さんがまるで自分家であるように慣れた手つきでテーブルだけを照らす部分照明を点けた。
照らされた先には、ケーキの残骸。
あと少し……食べきらないと。
「ここまで、君が全部?」
私は無言で頷いてキッチンでさっきの様に水をくんで戻ってきた。
:07/09/14 02:23 :SO903i :Bf6JTbxA
#339 [向日葵]
私はまた手で掴んでケーキを食べ始めた。
正直胸やけがしてて気分悪い。
でも早く食べて、ケーキの箱をどこか知らない場所に捨てて、私はお風呂に入って甘ったるい匂いを消す作業をしなくちゃいけない。
さっきより更に込み上げる嘔吐感と戦いながら黙々と食べては飲みを繰り返した。
「ねぇ。ちょっと何やってんの?」
それを唖然と見ながら香月さんが言った。
私はそれを無視してケーキを貪る。
:07/09/14 02:33 :SO903i :Bf6JTbxA
#340 [向日葵]
流石に私の頭がイってしまったと感じたのか、香月さんはケーキを掴む私の手を掴んで止めた。
「ケーキを見たら、静流が後悔する。どうして自分は帰って来なかったんだろう。せっかくケーキを買って待っててくれてたのに……。って。」
水を一口飲む。
味に飽きてきた。でも食べなくちゃ。
「そこまで自分苦しめる必要なんか無いだろう?!」
掴まれている手をただなんとなく見ながら私は答えた。
:07/09/14 02:40 :SO903i :Bf6JTbxA
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