―温―
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#570 [向日葵]
源さんは夕方頃にボサボサな頭を更にボサボサにさせて帰ってきた。

「ただいま!仲良く留守番してた?」

「そんな年じゃないっつーの。」

そんな温かい親子を少し微笑みながら見ていた私は、心の中で思った。

――いよいよだ……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜。
良かった事に今日は満月が綺麗に出るほど天気のいい空だ。

ベランダで体育座りをしながら眩しい月を見上げる。

⏰:07/09/28 16:01 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#571 [向日葵]
時間を見れば、夜中の1時。そろそろ静流も寝静まった頃だろう。

リビングを横切り、部屋をそろっと開ける。
予想通り、静流は寝ていた。

暑いのか、布団をあまり被らないで壁側を向いて寝ている。
この方が好都合。
予め用意していた旅行用カバンを持ちながらカチャリとドアを閉めた。

急いで置いてある自分の服、下着をカバンに摘める。

ここまですれば、私が何をするかお分かりだろう。

⏰:07/09/28 16:06 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#572 [向日葵]
そう。

あれは源さんに電話した時だった。

―――――
――――――――……

{旅?}

「そう。一人旅。出来るだけ遠くに行ってみたいの。」

このまま私がいてしまうとダメな気がした私はそう言った。
しばらくの間、静流とも香月さんとも離れて、香月さんはともかく静流にもう一度考えてもらいたかった。

本当に私が好きかどうか……。

⏰:07/09/28 16:10 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#573 [向日葵]
{……。僕の知り合いに、旅館を経営してる人がいるんだ。その人のトコへ行ったらどうかな。}

「じゃあ……そうする。あと、静流には言わないでくれる?」

{?どうして?}

静流が自分のせいだって思って引き止めてしまいそうだから……。なんて言えない。
第一源さんは私達のそんな事情を知らない。

「「子供のくせにまだ早い!」っとか言いそうだから。」

と冗談で返すと、源さんは「確かに。」大笑いした。

⏰:07/09/28 16:16 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#574 [向日葵]
もしかしたら源さんは何か感じとってたかもしれない。
でも何も言わず、ただ私の言う事をウンウンと言って聞いてくれた。

私は朝一の新幹線で源さんの知り合いとやらの旅館へ行く事になった。
駅までは一人で行くと源さんに伝えた。

源さんは「じゃあ駅までの地図を当日渡すね」と言って仕事が忙しくなったのかじゃあと言ってから電話を切った。

――――
―――――……

そして今に至る。
私は朝になるまで寝ないつもり。

⏰:07/10/02 23:13 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#575 [向日葵]
その代わりに静流の寝顔をしっかり見ておくの。
次に会う時までの少しの支え。

きっと会いたくなる時があると思う。
でも我慢しないと。

すぐ帰ってしまっては静流の気持ちが変わってないかもしれない。

本心は、変わってほしくなんかないけど……ね。

私はベッドに歩み寄ってストンと座った。
静流は熟睡して寝息をたてている。

そんな静流の顔を、そっと撫でてみた。

⏰:07/10/02 23:17 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#576 [向日葵]
男の子だって言うのに、すごく肌が綺麗なのかスベスベしてる。

私は静流の頬を何度も指先で往復した。
胸が……苦しい……。

パシッ!

「っ!!」

寝てる静流が私の手を掴んだ。
寝てるのに素早い動きだったので私の心臓がバクバクと急に動き出した。

「……れ……。」

「れ?」

何の事か分からない私に教えてくれるように静流はもう一度寝言を言った。

⏰:07/10/02 23:21 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#577 [向日葵]
「く…れ、は……。」

「――っ。」

私の……夢を見てるの?

掴まれた手は、離される気配がない。

静流……私は、どこにも行かない。
また、貴方の前に現れる。それがいつかは分からない。
でも必ず、また来るから……。

ありがとう。

私に優しくしてくれて……好きになってくれて……。

ありがとう……。

⏰:07/10/02 23:24 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#578 [向日葵]
私は唇を、静流のおでこに当てた。

シャンプーの匂いが、鼻をかすめた。

―――――
――――――……

午前4時。

もっと見ていたかった。
静流の、綺麗なその顔。
でももう時間……。

タイムオーバー。

いつまでも掴まれたままだった手を、ゆっくりと外して行った。

「……バイバイ……。」

荷物を持って、私は静流の部屋を静かに出て行った。

⏰:07/10/02 23:28 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#579 [向日葵]
下へ行くと、玄関に源さんがいた。

「静流君に、本当に言わなくていいの?」

私は頷いた。

「朝まで寝かしといてあげたいから。心配しないようにだけ言っておいて。」

「そっか……。あ、ハイ地図。」

渡された地図に目を落とす。
結構時間がかかりそうだ。

地図から目を離し、源さんを少し見てから頭を下げた。

⏰:07/10/02 23:31 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


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