―温―
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#201 [向日葵]
そういえば……と静流は思った。

自分はまだ、紅葉の笑顔を見た事がない。

自分を卑下した笑いは見た事あっても、心から笑った顔は見た事はなかった。

そう考えると、余計に胸がきしんで仕方なかった……。

今は本人が見つかるまで、心の中で謝るしか出来なかった……。

******************

今何時だろ。

空を見上げても雲が広がり星が見えない。

⏰:07/09/02 02:42 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#202 [向日葵]
かと言って先人の様に星で何時だとか分かる事は出来ないのだけどね。

でも大体夜9時くらいかな。

休む事も出来たし、再び歩こう。

そう思った時だった。

足に昼間と同様激痛が走る。
どうやら歩きすぎにより傷が開き、雨が染みてるみたいだ。

一旦立ったものの、また座りこんでしまう。
何故か無駄に息遣いが荒くなってしまう。

紅葉「いっ…………った……。」

⏰:07/09/02 02:46 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#203 [向日葵]
ハァハァと息を吐いた後、深呼吸をゆっくり何回かした。

大丈夫。
痛くない。痛くない。
気のせい。怪我なんてしてない。

暗示をかけながら立ち上がり、重心を足にかける。

はっきり言って痛くない訳がない。

でも今は出来るだけ遠くに行きたかった。
穴を抜け出して公園の入口へ向かう。

街灯が、虚しく私を照らした。

正に捨て猫ね……と自嘲した。

⏰:07/09/02 02:50 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#204 [向日葵]
街灯に照らされた足を見れば、うっすら包帯が赤みを帯びていた。

血が出ているらしい。

大丈夫。
まだ歩ける。大丈夫。

そう暗示して、歩くしかなかった。

人通りがなくなりつつあるおかげで人の目を気にせずにみっともなく歩けるのが幸いだ。

こんな醜態……晒したくもない……。

そう願っていたのに……。

「やっと見つけたーー。」

⏰:07/09/02 02:54 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#205 [向日葵]
ゆっくり振り向く。

数メートル後ろに立っていた人物に私は驚いた。

紅葉「香月……さん。」

香月「何してんの?プチ家出?」

相手を見ながら後退りした。でも相手はにじりにじり距離を縮めてくる。

香月「ねぇ。帰ろうよ。」

紅葉「……なんで、よ。」

香月さんはとうとうすぐそこまで来てしまっていた。
きっと逃げても今の状態じゃ捕まえられるのがオチだろう。

⏰:07/09/02 02:59 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#206 [向日葵]
香月「静流が心配してたよ?だから早く」

紅葉「嘘よ!」

心配?

自分から出て行けって言ったじゃない。

だから私は出て来た。

もう私はあの家にいてはいけないからって。
静流は私をただの邪魔なガキだと思ったからって。

私はめげずにまだ後退りをしている。

だけど私が逃げれないと知ってるのか、香月さんは捕まえようとはしない。

だだ足を進めるだけ。

⏰:07/09/02 03:02 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#207 [向日葵]
香月「何で嘘つかなきゃなんないの?俺や双葉ちゃんだって一緒に探してたんだよ?ここで嘘ついたって意味無いっしょ?」

何故か香月さんは怒っていた。
私はただ言う通りにしただけなのに……。

紅葉「じゃあ…………。っ……私、どうすればいい?」

これ以上醜態を晒してなるものかと涙と溢れてきそうな鳴咽を我慢する。

香月さんはいぶかしげな顔で私の次の言葉を待ってる様子だ。
私は深呼吸を一回だけして続きの言葉を頭の中で整理した。

⏰:07/09/02 03:07 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#208 [向日葵]
紅葉「静流は私が邪魔なの。消えて欲しいの!なのに心配なんてする筈が無い。また……。……またあの家に戻って、邪魔扱いされたら……。私はどうしたらいいのよ!」

いっぺんに言葉が溢れた。言いたい事を忘れないようにスラスラと。
おかげで少々息が切れてしまってハァハァと肩を揺らす。

そんな私を、香月さんは静かに見つめた。

すごく静かで、逆に怖いくらいで……。

それでも言いたい事言った私は、まだ後退りを止めなかった。

⏰:07/09/02 03:12 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#209 [向日葵]
そして香月さんが口を開いた。

香月「静流が……好きなんだね。……紅葉ちゃんは。」

――――好き?

香月「好きだから、嫌われたくないんでしょ?好きだから……側にいたいんでしょ?」

――初めて、静流と彼女とのベッドシーンまがいを見た時、気持ち悪いって感情と、静流に触らないでって感情があった……。

私はその感情の意味が分からなかった。

静流の言う通り、あれは当たり前の行為だから私が触らないでって言うのはおかしいんだもん。

⏰:07/09/02 03:17 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#210 [向日葵]
彼女が自分から静流にキスした時、心臓が痛かった。

静流に背を向けてしまったのは、静流を見たらまた怒って、傷つけてしまいそうだったから……。

――嫉妬――

そっかぁ……。
私は静流に嫉妬してたんだ……。

そして嫉妬してたのは、静流が

紅葉「す……き……。」

私は既に足を止めて呆然と立ち尽くしていた。

そんな私に微笑んで、香月さんは携帯を取り出した。

⏰:07/09/02 03:21 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#211 [向日葵]
*******************

雨の中、静流の携帯が鳴り響いた。

発信者は香月だった。

走り続けていたために乱れた呼吸を静流は整えながら電話に出た。

静流「ハァ……何?香月。」

香月{紅葉ちゃん。いたよ。}

静流は目を見開く。

携帯を持ちながらあちらこちらにうろうろとする。

静流「ど、どこ、どこに?!」

香月{桜田公園の所。早く来いよ。}

ブツッ。

⏰:07/09/02 03:27 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#212 [向日葵]
先に切ったのは静流の方だ。

桜田公園は確か真っ直ぐ行った所にある。
結構遠くまで紅葉は行ったらしい。

静流はまた走り出した。

****************

香月さんは携帯を切ってから、少し遠くにいる私の元まで歩いてきた。

静流が好きと言う事に驚いてる私はただ何も出来ずにぼーっと立っているだけだった。

香月「大丈夫?」

香月さんの声でやっと我に返った。

⏰:07/09/02 03:31 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#213 [向日葵]
紅葉「香月さん。ごめんなさい。……静流には、よろしく言って。」

私は香月さんに背を向けたけど、今度ばかりは腕を捕まれた。

紅葉「お願いだから……っ離して…………っ!」

香月「静流に君を渡すまでは絶対に離さない。」

無駄だ。
きっと静流はまた私をいらなくなる。
邪魔になる。

可愛い気もなく、ただ無愛想で生意気なガキの人形。
またゴミ箱へ。
そしてゴミ捨て場へ。

⏰:07/09/02 03:35 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#214 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/02 03:36 📱:SO903i 🆔:T7pfKsTk


#215 [向日葵]
紅葉「私ならもういいの。邪魔扱いされるのは慣れてる。だからどこかに行ったらいいんだか!」

いくら叫んでも、香月さんの手の力は緩まなかった。

早くしないと静流が来てしまう。

もう嫌だ。
あんな冷めた目で見られるくらいなら……このままどこか遠くに行った方がマシだ……!

静流が好きと気づいたなら尚更。

心が静流を求める前に早く消えないと。

⏰:07/09/03 01:51 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#216 [向日葵]
香月「静流が何か言ったなら本心なんかじゃない。」

紅葉「そんなの分かんない!きっと本心だから出て行けって言えたのよ!」

「本心じゃない。」

息を飲んだ。

時間切れだ。
もう手遅れ。
香月さんも手を離してくれない。

私はこのまま引き渡されるんだ……。

香月さん越しに香月さんの後ろを見れば、そこには傘をさしてる香月さんとは違って、ずぶ濡れの静流が立っていた。

⏰:07/09/03 01:55 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#217 [向日葵]
静流「香月。ありがとう。」

香月「おう。じゃあまたな。」

私の手を引っ張って静流に近づけた後、香月さんは自分の家に向かって雨の中に姿を消した。

沈黙が流れる。

耳をつんざく雨の音とは別に、ドクドク言う私の鼓動が耳の奥で聞こえた。

早く……足動かさないと……。
私、また静流にとって邪魔な存在になる。

静流の顔がまともに見れなかった。
自分の足元ばかり。
足のサイズが一回りも二回りも大きい静流の足も見える。

⏰:07/09/03 02:00 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#218 [向日葵]
静流「足……。」

静流の声に体が震えた。
同時に胸の奥がキンと痛んだ。

静流「血……出てる。痛い?」

声が出ない。
香月さんとは平気で話せたのに。
口を開いても、いつの間にか中はカラカラに乾いていた。

ぎしぎしする首をなんとか縦に振って、痛いと肯定。
静流は小さな声で「そっか…。」と呟いた。
そして再び沈黙が訪れる。

⏰:07/09/03 02:04 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#219 [向日葵]
先に口火を切ったのは私だ。

なんとか口内を湿らせて言葉を紡ぐ。

紅葉「帰って……。」

未だ足元を見つめた私でも分かるくらい静流の視線が痛い。

紅葉「大丈夫。じ……さつしようだなんて考えない……し。どこかで……暮らすから。」

嘘。
本当はすぐにでもこの身を絶ってまた空にある極楽へ行こうと考えてた。

でも決して人が来ない所。そうすれば誰にも迷惑はかけない。
体はやがて……土に還る。

⏰:07/09/03 02:09 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#220 [向日葵]
でも嘘をつかないと、きっと私が邪魔だとしても静流は私を離してはくれない。
だから嘘をついた。

静流は何も言わない。
ただ私を睨んでるか、見つめてるか。
もしかしたらさっさと行けって思ってるかもしれない。

それなら話は早いよね。

私が足をゆっくり半歩引いた時だった。

グイッ!!

紅葉「――――っっ!!」

静流は、私を抱き締めた。

⏰:07/09/03 02:12 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#221 [向日葵]
紅葉「静流……。違う……。」

相手が違うでしょ?

そうするのは彼女よ。
私じゃない。
貴方が愛して止まない彼女よ。

邪魔者に……することじゃない。

私は静流の胸を押し返す。でも静流はビクともしない。
寧ろ少し力が増した気がする。

お願いだからやめて……。静流。
静流。

紅葉「静流…っ!離して……っ。」

⏰:07/09/03 02:15 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#222 [向日葵]
静流は黙ったまま私を抱き締めている。

紅葉「どうしてよ…っ。出て行けって言ったじゃない!なのになんで……こんな濡れ……っ。」

言葉が続かなかった。
視界が滲む。
鳴咽で喉が詰まる。
息の仕方が分からなくなる。

紅葉「も……いいから。私なら、もう……いいから……。」

涙か雨だか分からない滴が頬を伝う。
そこで静流がようやく口を開いた。

静流「言ったじゃん……。」

⏰:07/09/03 02:20 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#223 [向日葵]
かすれる声で私は「何を?」と聞いた。
静流は私を離して肩に手を置くと、顔の間近くで私を見つめた。

瞳に吸い込まれそうになる。

静流「見つかるまで探す……って。」

目を見開いた瞬間、何粒もの涙が落ちて行くのが分かった。

静流「あんな事言ってごめん。本心じゃない。それは信じて?俺は……紅葉が大切だよ。」

微笑む静流が見える。
痛い……。心臓が痛い……。

⏰:07/09/03 02:24 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#224 [向日葵]
何故なら早足で脈を打ってるから。
そんな必要どこにもないのに。

だって静流の“大切”は、家族としてで、異性としてじゃないから。

でも、そんな言葉を言ってくれる静流が……
温かい微笑みをくれる静流が……私は大好きなんだ。

紅葉「邪魔…っじゃ、な、い……っ?」

しゃっくりと一緒に言葉を発するせいで子供みたいな泣き方になってしまう。

静流は微笑みをより一層深くする。

⏰:07/09/03 02:28 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#225 [向日葵]
頭を撫でてくれると、また私を抱き締めてくれた。

静流「邪魔なんか思った事もないよ。」

静流の息遣いが耳元で聞こえる。

私は目を瞑って安心感に身を委ねた。

紅葉「ほ……と?」

静流「本当……。」

気持ちがこもってる。
大丈夫。
静流は私を邪魔なんて思ってない。

静流「足痛い?」

また静流が聞いた。
私はゆっくり頷いた。

⏰:07/09/03 02:33 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#226 [向日葵]
「じゃあ。」と、静流は私を抱きかかえた。

静流「家に帰ろっか。」

赤ちゃんの様に抱かれた私は、静流の胸元をギュッと掴んだ。
首に腕を回すことはしてはいけないと思ったから。

静流は歩いてる間私が安心するように背中をポンポンとまるで赤ちゃんを寝かすみたいに叩いた。

それでも私は胸が詰まってただその一定のリズムに耳をすませていた。

しばらく歩いた頃だった。小さな声で静流が「あ。」っと言った。

⏰:07/09/03 02:39 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#227 [向日葵]
視線の先にはあの人……彼女さんがいた。
どうやら私が見つかったのをまだ知らないらしい。
そこら辺をうろうろ見ている。

紅葉「静流。下ろして。」

静流「え。でも……。」

紅葉「いいから。」

私を抱いてる姿を見てしまったら、また彼女は嫉妬してしまう。
二人の仲を引き裂くつもりなんてこれっぽっちもない。
だから私は先手を打った。
紅葉「あ、あの……!」

声をかけると、彼女はこちらを向いた。

⏰:07/09/03 02:42 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#228 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/03 02:43 📱:SO903i 🆔:WQXhAmnc


#229 [向日葵]
双葉「あ……っ!紅葉ちゃ…。良かった、いたんだ。」

心配してくれる彼女を見てなんだか眩しくて、今まで避けて続けた自分がなんか情けなくてまともに顔を見る事が出来なかった。
視線が泳いでしまう。

紅葉「すいませんでした……。」

それだけ言って私は家に入った。

*****************

紅葉が家に入ってしまった後、静流と双葉は門前に立って喋った。

双葉はずぶ濡れの静流に自分がさしていた傘に入れてやる。

⏰:07/09/04 00:37 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#230 [向日葵]
静流「いいよ。めう意味ないし。」

双葉「クスッ。そうだけど。今日はあったかくして寝てよ?明日風邪で休んだら承知しないんだから。」

静流「ウン。ありがとう……。」

二人の世界に入りつつある。
もう少しで唇を触れる雰囲気になりそうなのに、何かが静流を止めた。

それになんとなく気づいた双葉は話題を変えた。

双葉「あの子の事、大切にするのもいいけど自分も大切にしなよ?」

⏰:07/09/04 00:42 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#231 [向日葵]
静流「双葉も大切にする。」

そう言って双葉のおでこに唇を軽く触れた。

静流はやっぱり唇にするのを何故かためらった。

それでも双葉は満足だった。
最後にもう一度「温かくして寝るように」と双葉から念を押されて二人は別れた。
静流は双葉の姿が見えなくなってから家に入った。

****************

紅葉「ただいまー……。」

小さな声で言いながら二階へ上がると、すぐに私に近づく足音が聞こえた。

源「紅葉ちゃん!」

⏰:07/09/04 00:48 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#232 [向日葵]
源さんは私を見つけるなり、抱きついた。

避ける間もなく私はされるがままに抱き締められた。少し天パ気味の髪の毛が顔にかかってこそばい。

気づけば源さんの私を抱き締める手が震えている事が分かった。

源「良かった……。無事で……。」

まるでどこかに誘拐されてたみたいに源さんはそう言った。

優しい人達……。
私なんかの為にそこまで心配することないのに……。

⏰:07/09/04 00:54 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#233 [向日葵]
すると後ろからも足音が。もちろん静流だ。

源さんは私の後ろに静流が立つのを確認すると、私を解放して右手を軽く掲げた。

パシッ

小さな乾いた音がした。
源さんは弱く静流の頬を叩いたのだった。
私はそれをただ呆然と見ていた。

この人も殴る事なんてあるんだ……。

静流は黙ってうつ向いてる。

源「君もお母さんがいないなら分かるでしょ。家族に出て行けなんて絶対言っちゃいけないよ。」

⏰:07/09/04 01:00 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#234 [向日葵]
静流は下を向いたままコクンと頷いた。
すると静流の濡れた頭を源さんはクシャクシャと撫でた。

お咎めは終わりらしい。

源「さぁ二人共。お風呂に入って温めておいで。」

――――――……

お風呂に入った後、私はリビングのベランダ近くに座っていた。

梅雨真っ只中に入った空は、灰色のままだ。

でもそんなのとは裏腹に、私の心は少しだけ晴れ晴れとしていた。

⏰:07/09/04 01:04 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#235 [向日葵]
何故ならモヤモヤした正体が分かったからだ。

私は静流の事が、異性として好きみたい。
イライラした感情は嫉妬。脈打つ心臓は好意の印。

何故か冷静に判断出来る。
その理由はきっと、この想いが通じる事は無いからだ。

静流「紅葉?」

消えていた電気を点けられた。急で少し目がショボショボする。

静流「なぁにしてんの?」

隣にあぐらをかいて座る静流。お風呂あがりだから熱気が少し漂ってくる。

⏰:07/09/04 01:12 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#236 [向日葵]
紅葉「別に。……何も。」

体育座りをして顎を膝に乗っける。
なんだか少し寒い。

紅葉「静流。明日早いんでしょ?早く寝なさいよ。」

静流は「んー。」と唸って私を見た。
それにつられて私も静流を見てしまった。

静流「紅葉が寝るなら寝るよ。」

……意味が分からない。
さっさと寝ればいいのに。

静流「……?くれ……は?」

⏰:07/09/04 01:18 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#237 [向日葵]
いつの間にか、私の頭は静流の腕に寄りかかっていた。

お風呂あがりの腕は温かくて、とても心地いい。

心地……い……。

ズルッ!

静流「紅葉?!おいっ!」

静流が呼んでる。
うるさいから早く返事しないと。ずっと呼び続けちゃう。

静流「紅葉!」

目、開けられない。
ごめん静流。今は返事出来ない。

⏰:07/09/04 01:25 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#238 [向日葵]
なんか頭の芯がフラフラするの。

世界が揺れて、私が座ってるのかすら分からない。

しっかりしなきゃ。
静流がまた私につきっきりになってしまう。
また彼女より私になってしまう。

私は二人の仲を引き裂こうなんて考えてないの。

理不尽に嫉妬をしてしまうかもしれないけど、それでも考えてない。

私には、幸せを壊す権利なんてないんだから……。

⏰:07/09/04 01:32 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#239 [向日葵]
―堪―









静流「紅葉!」

後ろで怒鳴り声が聞こえる。頭に響くんだからもっと小さい声で呼びなさいよ。
足元がフワフワする。
世界が斜めに見える。

現在の私の体温。38.6℃。

⏰:07/09/04 01:37 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#240 [向日葵]
しっかりしろ。私の体。

壁に手をつきながらソファーまでたどり着く。
そしてそこで座って息を肺が空になるまで吐いた。

紅葉「静流…学校、あるんでしょ?早く行きなさいよ。」

静流は私の前まで来ると膝立ちをして私と目線を合わせる。

あぁ……。静流が二人いる……。

二人の静流は手を上げると私のおでこにその大きな掌を当てた。

⏰:07/09/04 01:42 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#241 [向日葵]
静流「今日は父さんも朝から仕事だし、俺今日休んでお前のか」

紅葉「馬鹿言わないで……っ。」

言葉を遮った。
言うと思った。

そんな事絶対いけない。
私の為に時間を使っては……彼女を傷つけてはいけない。

紅葉「寝てろって言うなら寝てるから。……早く、学校に行って。」

⏰:07/09/04 01:46 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#242 [向日葵]
静流は何か言いたそうにしてる。
でも私は出来るだけ目を開いて、静流を真っ直ぐ見た。

紅葉「私は寝る。静流は学校へ行く。両方の要望を聞いた条件よ。ね。」

静流はハァ……と息を吐くと、私を抱き上げた。
部屋へ連れて行くらしい。

勝手に寝るからほっといてくれればいいのに。
でも、結構体がヤバめなので実の所はとても楽だった。

⏰:07/09/04 01:51 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#243 [向日葵]
ゆっくり私を寝かすと、厚目の布団を私にかけてくれた。

そして微笑みながら私の頭を優しく撫でてくれる。

静流「じゃ、行って来るな。」

私は黙って静流を見る。

静流が三人に増えた……。三人の静流は部屋を出ていく。
階段を降りて、家のドアがパタンと静かに閉まった。

シーンと家が静まりかえる。

⏰:07/09/04 02:00 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#244 [向日葵]
ようやく息を我慢することなく出来る。

静流に心配かけまいと、本当は走った後みたいに息があがっていたけれど通常の呼吸をしようとなんとかやってのけた。

部屋に自分の息しか聞こえない。

最悪だ。ここ何年かのせいで虚弱体質になってる。
せめてもっと食事出来れば……。

相変わらず少量だけど食べれるレパートリーは増えつつあった。

⏰:07/09/04 02:04 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#245 [向日葵]
これも辛抱強く静流が付き合ってくれてるおかげだ。

そんな事をつらつら考えてると、私は眠りに落ちた。

―――――――……

痛い……。

知ってるこの夢。

母さんが見える。
笑ってる。冷酷な顔で。

何か言ってる。

「邪魔。アンタ邪魔。何で生まれたのよ。」

⏰:07/09/04 02:08 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#246 [向日葵]
あぁ……。

私また殴られてるんだ。
でも知ってる。
これは夢。
痛いけど、痛くない。

だから好きなだけ殴りなさいよ。

すると母さんは殴るのを止めた。
そのかわりまだ冷酷な顔で私を嘲笑ってる。

「アンタは本当に邪魔ね。」

知ってる。何回も言われたもの。

⏰:07/09/04 02:10 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#247 [向日葵]
「人の幸せを安々と奪うのが好きね。」

母さんの後ろに、一つの影が現れる。

あの人……彼女さんだ……。

虚ろな目をした彼女さんは、口だけしか笑ってない奇妙な笑い方をした。

双葉「静流は私のなのよ……。貴方、横取りする気……?」

―――ドクン

⏰:07/09/04 02:14 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#248 [向日葵]
違うと言いたいのに声が出ない。

そんなつもりはない。

ごめんなさい。
静流を好きになったのは確か。
でも決して引き裂こうだなんて事は……!

「嘘ばっかり。本当は思ってるんでしょ?」

母さんの声じゃないみたいに勘高い声で笑う。

違う。思ってない。
絶対!絶対に……っ!

もしそうなら、私はこの家を出る!
全ての原因が私ならば……っ!

⏰:07/09/04 02:18 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#249 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/04 02:19 📱:SO903i 🆔:GkaoQpe.


#250 [向日葵]
「約束だからね……。」

――――――――……

「!」

眠りから覚めた私はあり得ない程の汗をかいていた。
気持ち悪いけど体がダルいから服を着替えたくても起きる元気が全くない。

『約束だからね……。』

まだ耳にこびりついている彼女さんの言葉……。
私は夢の中で約束を交した。

所詮夢の中だと、切り捨てる事が何故か出来なかった。

⏰:07/09/05 22:41 📱:SO903i 🆔:uTSNz6sY


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