―温―
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#256 [向日葵]
これが、当たり前。
これが、普通。
私は二人に危害を与える事は出来ない。
……ううん。しない。
バレない様に立ち上がり、部屋へ向かった。
意外にも汗を沢山かいたせいか、少しだけ体が軽くなっていた。
布団に入って、ぐちゃぐちゃ考える前に寝る事に専念した。
でもすぐに寝つけるものでもなかった。
それでも目をギュッと瞑って、夢への扉を探した。
すると
カチャ……
:07/09/05 23:06 :SO903i :uTSNz6sY
#257 [向日葵]
部屋のドアが開いた。
静流?
それとも彼女さん?
「紅葉……?」
それは静流の声だった。
今私の格好は、静流に背を向ける形で寝ている。
ギシギシと私に近づく足音。
今は話す気分じゃなかったので私は寝たフリをした。
静流はそれに気づいてない。
小さく「よいしょ。」と聞こえたと思うと、静流が私の近くに座った。
:07/09/05 23:10 :SO903i :uTSNz6sY
#258 [向日葵]
何か用なのだろうか神経を研ぎ澄ませながら目を瞑り続けた。
次の瞬間、私は目を開きそうになった。
優しく、柔らかく、静流の手が私の頭を撫でている。
それだけで心臓が縮まる感じがしたし、キュウゥっと音が聞こえる気がした。
やめて……。そんな事、彼女がいる今、やらないで……。
手から逃れたくて、寝返りをうつフリをして静流から遠ざかっても、手はしばらくするとついて来てまた私の頭を撫でた。
:07/09/05 23:15 :SO903i :uTSNz6sY
#259 [向日葵]
静流……。
アンタは私をどう言う風に見てるの?
その問いに答えてくれる人なんていなかった。
コンコン
「静流?お粥作ったんだけど……寝ちゃってるみたいね。」
静かに話す彼女さん。
どうやら私に食事を作ってくれたらしい。
私は耳だけを二人に向ける。
「ありがとな。双葉も座りなよ。」
「うん。でも、良かった。大した事無さそうど。」
「ウン。」
:07/09/05 23:19 :SO903i :uTSNz6sY
#260 [向日葵]
少し床が軋み、服が擦れる音が聞こえる。
「……静流?どうかした?」
「ん?ちょっと抱きつきたくなって。」
「フフフ……変なの……。」
やめてよ。わざわざ私の寝てる近くでそんな事しないでよ……っ。
耳だけが、二人が何をしているか分かる手がかり。
その耳を塞ぎたくなった。
しばらく沈黙が続いていた。
何故だか分からなかったけど、次に聞こえてきたのは「チュッ」と言う何かを吸え様な音。
:07/09/05 23:24 :SO903i :uTSNz6sY
#261 [向日葵]
思わず目を開いた。
今後ろで、二人がキスをしている。
その真実が頭を鋭く突き抜けた。
熱のせいじゃないのになんだかクラクラした。
そして、涙が流れた。
知ってる。分かってる。
でも繰り返さないで。
――私が二人の仲を引き裂く権利なんてない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
長い地獄の時間が過ぎて、ようやく彼女さんが帰った。
静流が彼女さんを送り出すのに部屋を出たのを見計らって、私は一階に掛布団だけを持って降りた。
:07/09/05 23:28 :SO903i :uTSNz6sY
#262 [向日葵]
素直に静流の部屋で寝れる気がしなかった。
大体、この家は結構な広さがあるのに何故私は静流と一緒の部屋なのか不思議だった。
聞いてみたら源さんの研究した物でほとんどの部屋は埋め尽されているらしい。
私は見た事がなかったけど、いくつかのドアノブを捻ってみると鍵がかかっていた。
どうやら源さんが管理しているらしい。
仕方なく、何個かのドアノブを捻りまくった。
:07/09/05 23:32 :SO903i :uTSNz6sY
#263 [向日葵]
すると何個か目に……カチャっと開いた。
「……。」
そこは普通の部屋と最初は思った。
でも電気を点けると
「…えぇっ?!」
沢山のぬいぐるみ達が。
めちゃくちゃ大きいのから片手に乗るほどの小さいのまで。
唖然としていると、玄関のドアが開く音が聞こえたので中に入って思わず隠れてしまった。
見つかるのも時間の問題だけど、どうしても静流とは話す事が出来ない。
:07/09/05 23:37 :SO903i :uTSNz6sY
#264 [向日葵]
電気を消す前に、大きなクマのぬいぐるみに狙いを定めた。
出来るだけ陰に隠れてぬいぐるみに埋もれた。
布団をかぶって、クマに寄りかかる。
ってか何でこんなにぬいぐるみがあるんだろう。
「紅葉?!」
静流のパニクっている声が聞こえた。
もしかしたら外まで行っちゃうかな。
でもまぁいいや。
目を瞑ると、何故かすぐに眠れた。
:07/09/05 23:41 :SO903i :uTSNz6sY
#265 [向日葵]
―――
―――――……
「え?」
珍しい。
草原にいるよ私。
「こんにちは。」
後ろから声がしたので振り返ると、髪の長い大人の女性がいた。
とても綺麗。
「こ、こんにちは……。」
「貴方……紅葉ちゃん?」
え?
「何で知って……。」
:07/09/05 23:43 :SO903i :uTSNz6sY
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