―温―
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#276 [向日葵]
でも、静流はいっこうに降ろしてくれない。
「し、しず……る……?」
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自分でもおかしかった。
何でこんなに心臓がバクバクするほど紅葉を心配してるのかとか。
何かを振りきる為に双葉を抱き締めたとか。
紅葉をこのままずって抱き締めていたいだとか。
そんな感情おかしい筈なのに。
俺には双葉がいるのに。
:07/09/06 14:12 :SO903i :jlgEr3Lg
#277 [向日葵]
俺は紅葉に気づかれないように頬のガーゼの上から唇を触れた。
この行動もおかしい事ぐらい気づいてる。
それでも紅葉に触れたくて、どこか心の端で紅葉が大切だと叫んでる。
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「静流……。ねぇ……?」
静流は抱き締めたまま固まってる。
肩にある静流の指先に力が入っていくのが分かった。
どうしちゃったんだろ……。
:07/09/06 14:19 :SO903i :jlgEr3Lg
#278 [向日葵]
顔があんまり見えないけど、なんだか静流が傷ついてる気がした。
片手が上手く動かないけど、伸ばして静流の頭を撫でた。
気づけば初めてだった。
私から静流に触れるのは。
髪の毛が凄くサラサラだ。
「大丈夫……?」
静流はされるがままに私をまだ抱き締めたままでいる。うんともすんとも言わない。
ようやく離れたと思い、手を頭から離した。
また目が合う。
:07/09/06 14:24 :SO903i :jlgEr3Lg
#279 [向日葵]
私は自意識過剰かもしれない。
その目は何かを考えてて、だけど熱くて私を心から大切に思ってる感じがした。
きっとそれは私が静流を好きだから、良いように捕えてるんだ。
本当は「早く降りろ」って思ってるかもしれない。
必死に熱い視線と称するものから逃れて、私は体を動かした。
「降ろしてくれて構わないから。」
そう言って降りようとした。
:07/09/06 14:32 :SO903i :jlgEr3Lg
#280 [向日葵]
でも静流の腕は力を入れたままだった。
「いいから。じっとしてろ。」
そう言うと、やっとこの部屋から出てくれた。
「お、重いでしょっ?!だから、歩くわよ……。」
「病人は病人らしくされるがままになってろ。」
少し怒ってるような口調の静流に私は黙った。
リビングに行って、ソファーへ座らせてくれた。
静流はキッチンへ行って何かゴソゴソやっていた。
何分かしてから手に何かを持ってやって来た。
:07/09/06 14:42 :SO903i :jlgEr3Lg
#281 [向日葵]
「ほら、すり林檎。蜂蜜入りだから体にいいぞ。」
器にすった林檎をいれて静流は私の隣に座った。
器と静流を交互に見る。
いま食べる気分じゃないんだけどなぁ……。
「食べなきゃいけない……?」
静流はハァと息を吐くと、少しすくって私の口に近づけた。
「アーン。」
「は?」
「口開けろっつってんの。」
:07/09/08 00:25 :SO903i :qrBbq8eE
#282 [向日葵]
アーンって!
何だそりゃ!!
一向に私は口を閉ざしたまま。
なんだかまた熱が出てきそう。
毎日やってる事だけど、アーンとか言われたら自分が今まで普通に食べさせてもらっていた事が恥ずかしくなってきた。
「い、いらないから。」
下を向いて口に入らない様にした。
するとソファー前にあるテーブルに静流が器を静かに置いた。
諦めたのかと思った瞬間、体がピクリと震えた。
:07/09/08 00:28 :SO903i :qrBbq8eE
#283 [向日葵]
顎にするりと静流の指先が触れたのだ。
そして軽く掴むと、上を向かせて唇の間にスプーンをいれた。
思わず味を確かめずすぐに飲んでしまう。
それほど動揺していた。
まるで何かいけない事をしている気分さえした。
「な、……何…よ。」
「食べる練習だ。じゃないといつまでも林檎ばっかりじゃ駄目だろ?」
そう言うと静流はいつもみたいに膝に私を乗せる。
また静流の体が密着した。
:07/09/08 00:32 :SO903i :qrBbq8eE
#284 [向日葵]
ドキドキ ドキドキ
心臓がうるさい。
静流はまた私の口にすり林檎を流しこむ。
今度はちゃんと味わえた。
「な、美味いだろ?」
微笑みながら、口端についた林檎をとる。
少しだけ指が唇を撫でた。
私は思わず困った顔になってしまった。
しかも顔の体温は上昇。
こんなの、静流にバレちゃう……っ?
:07/09/08 00:36 :SO903i :qrBbq8eE
#285 [向日葵]
痛みに堪えるのも忍耐が必要だけど
静流の一挙一動に堪えるのも苦難のわざだった……。
これから、二つの事に、堪え抜いていけるのか心配だった……。
:07/09/08 00:38 :SO903i :qrBbq8eE
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