―温―
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#322 [向日葵]
夕方から夜に近づいていく為か、雨雲のせいか、空は暗くなってきた。
リビングでは電気をつけてもないし、自然の光だけ。
と言っても、明るくないのは確かだけど。
雨の音が、家のシーンとした静けさを消してくれるからなんだかホッとする。
起き上がって、肩越しにチロリとテーブルを見る。
さっきと全く変わらない位置に、箱はあった。
これを見たら、静流はきっと申し訳なく思ってしまう。そして源さんは何故帰って来なかったのかと怒ってしまう。
:07/09/13 01:42
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#323 [向日葵]
私はゆっくりと立ち上がって、箱に近づいた。
そして開ける。
綺麗な赤いイチゴと、デコレーションされた生クリーム……。
手を出して、ケーキへダイブさせた。
掌で、ケーキを掴む。
グチョッと音を立てながら、ぐちゃぐちゃになったケーキを口へ運んだ。
甘ったるくて、まだ完全な体じゃない私の体はケーキを拒否していた。
……でも。
「――……っんぐ!」
:07/09/13 01:46
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#324 [向日葵]
吐くのを必死に堪えて私はケーキを飲み込んだ。
吐かない様に口元を押さえて、よろよろてキッチンまで行く。
コップに水をくんで、一気にケーキを流しこんだ。
そしてまた水をくむ。
これで、丸々一個ケーキを食べてやるつもり。
なんだか意地になってきた。
痛い……痛い……。
胸、凄く苦しい。
ケーキを口に含んでは、水を飲みを繰り返した。
でも一向にケーキは減らない。
:07/09/13 01:54
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#325 [向日葵]
「ん……っう、うっ……。」
吐きそうな声に、鳴咽が混じった。
ケーキが……しょっぱい。
「うぅ……っ。ズッ。うぇぇ……。」
顔が、生クリームと涙でぐしゃぐしゃになる。
それでも、ケーキを食べる手も涙も止むことは無かった。
どうしてこんなに泣かなきゃいけないの?
私知ってる。
泣いても何も変わらない事。
だってずっとそうだった。
:07/09/13 01:58
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#326 [向日葵]
泣いてもわめいても、止むことのなかった母さんの手。
だから私は、涙を流すのを止めた。
なのに……
ここへ来てから、温かさとか、好きな人への恋しさとか、色々知っちゃったから……。
また涙を流す事を思い出してしまった。
「う……っ。んぐんぐ……っ。はぁっ……。うぅぅっっ……。」
私は少し手を止めて、ケーキを掴んでいなかった方の手で目を拭った。
:07/09/13 02:02
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#327 [向日葵]
ケーキは綺麗に、そして皮肉にも、メッセージの「静流」の部分だけが残っていた。
―――――――……
「―――……?」
目を開けると、目を瞑ってた時と変わらなかった。
真っ暗。
雨なので月の光すらない。
どうやら知らずの間に寝ていたらしい。
手には生クリーム。
少し起きればケーキの残骸が見えた。
とりあえず今は食べる気になれないので手を洗った。
:07/09/13 02:07
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#328 [向日葵]
今何時だろう……。
目をこらすも暗くて見えない。
まぁ別にいいだろう。
朝になれば、少しは明るくなるだろうし……。
ベランダの戸を開けた。
湿気が体にまとわりつく。
今、私が前みたいに消えたら、それでも静流は探してくれるのかな……。
ねぇ静流。私、静流と両想いになる事望んでるけど望んでない。
それでも、私が貴方に好きと言ったら、貴方はどうする?
:07/09/13 02:11
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#329 [向日葵]
でもきっと……貴方は彼女がいるからと、断るんだろうね。
苦笑しながら、雨空を見上げた。
すると
キンコーン
私は目を見開く。
うそ……っ。もしかして……。
足が勝手に玄関へ走り出す。
静流……。
静流!
バン!!
「わ!びっくりしたぁ!!」
:07/09/13 02:15
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#330 [向日葵]
「香月……さん。」
そこには傘を畳みながら立っている香月さんがいた。
あまりの自分の体の反応に、笑えた。
「?何かおかしかった?」
「何しに来たの?……あぁ。馬鹿にしに?フラレてやんのー!って?」
イライラしながら叫んで私はリビングへと帰ろうとした。
しかし
香月さんに腕を掴まれてしまった。
:07/09/13 02:19
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#331 [向日葵]
私はそのまま固まる。
玄関のドアを開けたままなので雨の音が大きく聞こえる。
それに重なって、香月さんの声が聞こえた。
「泣いてるかな……って。心配だったんだ。」
息を飲んだ。
でも弱いとこ見られたくなくて、何もない風に振る舞いながら香月さんを振り返る。
「何で?誰の為に?何のメリットがあって?」
香月さんを馬鹿にするように嘲笑いながら言っても、香月さんに通用しなかった。
:07/09/13 02:23
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