―温―
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#361 [向日葵]
私は首を傾けて膝にフッつぶした。
静流の方は見ないようにして。
「紅葉。ごめんって。」
「そんな安っぽく謝らないで。」
機嫌をとるだけの言葉なんていらない。
でもだからって謝って欲しい訳でもない。
静流に、思い知らしてやりたい。
さっきの行動が、私をどれだけ傷つけたか。
「じゃあ……どうやったら、許してくれる?」
そこで頭を上げて静流を見た。
:07/09/14 11:42 :SO903i :Bf6JTbxA
#362 [向日葵]
静流はぎこちなく微笑む。
でもそんなの今の私にはイラつきの対象の他何でもなかった。
「言った筈よ。私に当分触れないでって。心の中まで触れてくんなって事。……いい?」
静流は傷ついた顔をして私を見つめる。
「紅葉、あの……。」
伸ばしてきた手をまた私は払うんじゃなく叩き落とした。
「日本語が通じるなら早くあっちへ行って。」
静流はゆっくりと立ち上がってベランダを後にした。
:07/09/14 11:49 :SO903i :Bf6JTbxA
#363 [向日葵]
もういい。
私は何なの?
どうしてこんな扱いを?
これは罰?
幸せになろうとしている神様からの罰なの?
……ならば、私は受けるしかないのかもしれない。
少し身動きすると、クシャッと何か紙のような音がした。
ポケットに何か入ってる。
探ると小さな紙切れ。
「香月さんの……。」
そう。あのケー番が書かれた紙。
:07/09/16 01:34 :SO903i :2t8n8oBQ
#364 [向日葵]
お風呂に入った後、洗濯しちゃう服から抜き取って今の服のポケットに入れたのを忘れていた。
そういえば、いつの間にか香月さんがいなくなってる。
少し助けて貰ったのに、お礼言えなかった。
「…………。」
私は立ち上がって、リビングへ入った。
リビングにある電話の子機を持って、下へ降りようと階段へ向かった。
リビングだともし静流が来たら嫌だからだ。
「えっと……090の……。」
:07/09/16 01:39 :SO903i :2t8n8oBQ
#365 [向日葵]
ボタンを押しながら階下へ向かおうとすると、後ろで部屋のドアが開いた。
「紅葉?……あの、どうかした?」
「……。6739と。」
無視してボタンを押し終える。
耳に当てるとプルルルと呼び出し音が鳴っていた。
ガチャ
{ハイ。}
「もしもし。紅葉です。香月さん。」
*******************
「もしもし。紅葉です。香月さん。」
俺は耳を疑った。
:07/09/16 01:44 :SO903i :2t8n8oBQ
#366 [向日葵]
なんで香月の番号を紅葉が?
俺には目もくれず、下へ降りて行く紅葉。
階段を降りる際にチラリと見えた小さな紙。
きっとあれに書いてあるんだろう。
「マジか……。」
一旦ドアを閉めて部屋に入り、ドアにもたれて唖然とした。
香月は……紅葉に本気?
もしかして昨日、二人の間に何かあったとか?
「……あれ?」
無意識に握られた拳を見て、俺は頭に?を浮かべた。
:07/09/16 01:48 :SO903i :2t8n8oBQ
#367 [向日葵]
「なんで俺……。」
怒ってんの……?
掌をグーパーするのを繰り返して、手の力を抜く。
別に紅葉に恋人が出来たって……何らか関係無いじゃないのか?
なんで俺
「こんな胸……痛いんだろ。」
自分の胸に手を当てて、胸が痛まるのが治まるのを待つ。
[なら誰がいいんだよ。]
香月に抱きつかれた時、香月から聞かれた事だった。
:07/09/16 01:53 :SO903i :2t8n8oBQ
#368 [向日葵]
俺なんであの時
―――――紅葉の顔が…………?
********************
私は一番下の階段に座って香月さんと話していた。
香月さんにお礼を言ったら「気にすんな。」と帰ってきた。
{それより、ちゃんと覚えててね?}
「何を?」
{俺が君の恋人になりたいって事。}
返事に困った。
恋だの愛だのそんなもの知らなくて初めての私は上手く返す事が出来ない。
:07/09/16 01:58 :SO903i :2t8n8oBQ
#369 [向日葵]
しばらく沈黙でいると、受話器越しにクスクスと笑い声が聞こえた。
{クスクス。ごめん。困らせた。じゃあまたね。}
それだけ言って、香月さんとの電話は終わった。
好きと言われるのは正直悪い気はしない。
……でも。
この先、叶わない気持ちだと分かってても……やっぱり欲しいのは、一番好きな人がいい……。
上に上がって、静流の部屋の前で立ち止まる。
ドアを見つめながら思った。
:07/09/16 02:02 :SO903i :2t8n8oBQ
#370 [向日葵]
私が……香月さんと付き合えば、静流の事を忘れる事が出来るのかもしれないな……。
そうしたら、神様は許してくれるかな。
私も幸せになっていいって、認めてくれるかな……。
その時。
ガチャ
「!」
「!」
静流の部屋のドアが開いた。お互いに驚いて、見つめ合ったまま時間が流れた。
:07/09/16 02:09 :SO903i :2t8n8oBQ
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