―温―
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#501 [向日葵]
明るく笑って言ってるけど、その顔はとても悲しそうだった。
「そんな顔……しないで。」
香月さんの顔にそっと触れた。
「今は静流でも、香月さんを好きになれると思う。それまで、待ってくれない……?」
香月さんから悲しそうな雰囲気が少し消えて、頬にある私の手の上から私の手を重ねた。
「待つよ。だから早く来て?」
そう言いながら私の掌に唇を押し付けた。
:07/09/23 01:26
:SO903i
:NafT.peo
#502 [向日葵]
今日はそれで香月さんは「またメールする」と言って帰ってしまった。
湿気を含んだ風がまた吹く。
きっと好きになれる。
だってホラ……。
こんなにドキドキしてる。
でも本当は知ってた。
静流が触れた時に比べれば、負けてる。
それを、わざと気づかないフリをした。
空がおかしい……。
今晩、何かが起こるかもしれない。
:07/09/23 01:33
:SO903i
:NafT.peo
#503 [向日葵]
―――――……
そしてその予感は呆気なく的中してしまった。
それは晩御飯の時。
いつものにこにこ顔で源さんが言った。
「僕明日から出張に行って来ますね。」
ブハ―――――!!!!
お茶を飲もうとしていた私と静流はそれぞれ別の場所にお茶を噴射してしまった。
「いっ!一週間って!なんでだよ父さん!!」
「今度の研究がちょっと手間取ってねぇ。ちょっと研究所に籠ってくる。」
そんなあっさり……。
人生とは本当におかしい。
一番嫌なコンディションの時に一番最悪なシュチュエーションを用意してくれる。
:07/09/23 01:38
:SO903i
:NafT.peo
#504 [向日葵]
そして正に今その状態が作り上げられようとしているのだ。
「そんな急に……っ!」
「仲良くするんだよ?ケンカはいけないからね?」
ささーっとお皿を片付けると、明日準備をしに源さんは自分の部屋へと行ってしまった。
リビングに呆然とする悩める子羊が二名に緊張と言う名の狼が襲いかかる。
「なんてこった……。」
と言わずにはいられない。
ソロリと静流を見ると、静流も同じように私を見ていた。
:07/09/23 01:43
:SO903i
:NafT.peo
#505 [向日葵]
静流はフゥ……とため息をついた。
「じゃあ明日から一週間、紅葉は洗濯と掃除係な。」
「えー……。洗濯はいつもだけど掃除まで?」
「俺一日の半分は学校だもん。」
と少しふんぞり返って静流は言った。
私は「ハイハイ」と妥協してお皿を片付ける。
こんな微妙な雰囲気で、一週間大丈夫なのかな。
……ん?
私はいいとして、なんで静流までが態度がおかしいんだろう。
:07/09/23 01:48
:SO903i
:NafT.peo
#506 [向日葵]
私が怒ってるとでも思ってんのかしら?
それとも香月さんと何かあったのか?
********************
一週間……。
長い。
今の俺にしたら長すぎる……。
自分が嫌になる。
あのダブルデートで気持ちはっきりさせるつもりだったのに。
「男が……ウジウジ……。情けな。」
それもこれも、今日の香月の言葉のせいだ!
俺は……。
一瞬、双葉の笑顔が脳裏をかすった。
そして……。
「静流。早くお皿持って来て。まとめて洗いたいから。」
:07/09/23 01:53
:SO903i
:NafT.peo
#507 [向日葵]
俺は紅葉をじっと見た。
そんな俺を不思議がって、眉を寄せてキッチンから見つめる紅葉。
……今度こそだ。
もう二度とは無い。
この一週間で、俺の気持ちを一つに絞る……。
********************
それぞれの思いを胸に、波乱の幕開けである一日目がやって来た。
「じゃあ行ってくるから。」
「気をつけてな。」
にこにこしながら手を振って、源さんは出張へと出かけて行った。
:07/09/23 01:57
:SO903i
:NafT.peo
#508 [向日葵]
――――

――――
今日はここまでにします

:07/09/23 01:57
:SO903i
:NafT.peo
#509 [向日葵]
パタンと閉めて出ていくと同時に私は動き始めた。
静流もそれに合わせて学校へ行く準備を始めた。
「今日は出来るだけ早く帰って来るな。」
「別にいつも通りでいいわよ。普段も変わんないでしょ。」
そう言いながら掃除機をかける準備と、ベランダへ通じる戸を空気替えの為に開けた。
良かった。今日は良い天気だ。
「……ま、戸締まり気をつけろよ。じゃな。」
そして静流も出て行った。
:07/09/24 00:56
:SO903i
:WTtaMCAA
#510 [向日葵]
こっそりベランダの入口辺りから背伸びして静流が行くのを覗く。
覗くと丁度門を出た所だった。
覗いてるってバレるのが嫌で、掃除機をまたかけ始めた。
「紅葉!」
え。
電源を切って、ベランダへ急いで出ると、門から数歩歩いた所で静流がこちらを向いていた。
「忘れ物ぉ?!」
すると静流は微笑みながら首を振った。
「いってきます。」
:07/09/24 01:02
:SO903i
:WTtaMCAA
#511 [向日葵]
―――トクン……。
それ言う為に……?
「行ってらっしゃい」なんて、静流には行った事がなくて、でも今、とても言いたい。
私は静流が見えそうな範囲まで手を上げてぎこちなく手を振った。
私の精一杯の「行ってらっしゃい」を表現する。
でも静流にはそれで十分だったのか、より一層にこぉっと笑って手を振り返した。
そして学校へと行ってしまった。
あぁどうしよう……。
口の筋肉が揺るんでしまうよ……。
:07/09/24 01:07
:SO903i
:WTtaMCAA
#512 [向日葵]
********************
生徒が友達に挨拶する声があちらこちらから聞こえる中、少し汗ばむオデコを手の甲で拭いながら俺は教室へ続く階段を上っていた。
「あ、静流!」
声をかけられた俺は上を見る。
でも逆光のせいで顔が見えない。手を少しかざすと顔が段々見えてきた。
「双葉。おはよう。」
「おはよ!最近どう?紅葉ちゃんとは。」
下りて来て俺の隣まで来た双葉は、また一緒に上りながら俺に話かける。
:07/09/24 01:17
:SO903i
:WTtaMCAA
#513 [向日葵]
「何も。普通だよ。」
と言って、少し早歩きで階段を上った。
それを双葉は、シャツの裾を引っ張って止めた。
グイッと引っ張られて、階段から落ちそうになった俺は手すりにつかまってなんとか堪えた。
「ちょ、双葉!」
「静流が冷たい。」
真剣な顔で双葉が言った。
冷たい?
そんな事ないのに。
でも弁解するのが、なんだかめんどくさかった。
:07/09/24 01:21
:SO903i
:WTtaMCAA
#514 [向日葵]
「気のせいだよ。」
それだけ言って、俺は双葉を置いて階段を上って行った。
残された双葉は静流の異変に不安を隠せなかった。
自分は何かしただろうか。
私の気持ちが重いの?
誰か好きな人が出来たの?
そう思って、心当たりの人物を頭に思い浮かべてみたけれど、どうしても一人しか出てこなかった。
「紅葉……ちゃん……?」
:07/09/24 01:25
:SO903i
:WTtaMCAA
#515 [向日葵]
でも彼女は今香月くんと付き合ってるのに……。
教室に着いて、携帯をマナーにするのを忘れていた事に気づき取り出すと、サブディスプレイにメールのマークがあった。
誰からだ?とパキンと携帯を開けると、紅葉からだった。
<アホ。お弁当忘れてる。>
「あ!」
どうりで鞄が軽いと……っ。
:07/09/24 01:29
:SO903i
:WTtaMCAA
#516 [向日葵]
早打ちでメールを返す。
<昼休みに間に合う様に届けてくんない?!>
送信。
返信はすぐに来た。
<いや。>
超短文。
そりゃ早い訳だ。
「……。」
香月とは……どんなメールしてんだろう。
そんな事を思ってると、本人のお出ましだ。
「おっはよーさん。」
「うす。まだコンタクト無いの?」
:07/09/24 01:34
:SO903i
:WTtaMCAA
#517 [向日葵]
香月は頷いた。
そして開けっぱにして机に置いてあった携帯に目をやる。
隠す必要もないが、さりげなくでも慌てながら携帯を隠した。
「メールしてんだ?」
「弁当忘れたって教えてくれただけだ。」
香月は俺の前の席。席に座ってから後ろを向いた。
俺はなんとか紅葉に頼みのメールを送る。
「で?どうなの?」
「何が?」
香月が不機嫌そうに返してきた。
:07/09/24 01:47
:SO903i
:WTtaMCAA
#518 [向日葵]
「紅葉は……香月に……メロメロ?」
「ブッ!!」
香月が派手に吹き出した。そっぽを向いて肩を揺らす。
ひとしきり笑ったところで、香月はまた俺の方を向いた。
「そんなんじゃないよ。紅葉は……他に好きな奴いるから。」
「え……。」
「ま、フラレても諦めねーけどな。」
そんな香月の顔は、悲しそうだった……。
:07/09/24 01:51
:SO903i
:WTtaMCAA
#519 [向日葵]
*********************
一仕事終えた私はフゥゥ……。と満足の息を吐きながらリビングのフローリングに寝そべった。
「あー疲れた。」
もう11時かぁ……。
午後から何しとこっかな。
ブー ブー
携帯がテーブルと擦れて変な音を立てた。
「また静流?」
お弁当お届けメールの件は私の勝ちで幕を下ろした。でももしかしたらリベンジで送ってきたのかも。
:07/09/24 01:56
:SO903i
:WTtaMCAA
#520 [向日葵]
でも私の予想は外れた。
「香月さん?」
<外見て!>
外?
ベランダの戸越しに外を見る。
「え?!」
私は急いで階段を降りた。途中こけそうになって冷や汗をかいたけど、とりあえず外へ出た。
ガチャン!
「何してんの?!」
そこにいたのは、紛れもなく香月さんだった。
:07/09/24 02:04
:SO903i
:WTtaMCAA
#521 [向日葵]
香月さんはニヒッと笑ってピースした手を前へ突き出した。
「あーその顔見たかったぁ!」
その顔とは、私のうろたえた顔だ。
だって今は学校の時間。
なのに何故?
「暇だったからさ。遊びに来た。」
「暇っ……て。学校あるじゃないっ。」
「サ・ボ・リ。」
茶目っ気たっぷりな目を光らせて香月さんは言った。
:07/09/24 02:07
:SO903i
:WTtaMCAA
#522 [向日葵]
――――

――――
今日はここまでにします

:07/09/24 02:08
:SO903i
:WTtaMCAA
#523 [向日葵]
「あがっちゃ駄目?」
可愛らしく首を傾けて聞いてくりその仕草に思わずドキッとしてしまった。
香月さんはじっと見つめてくる。
そんな見つめられたら……困るんですけど。
「いいですけど…ちゃんと学校には帰ってくださ…ヒャッ!!」
家に向かおうと香月さんに背中を向けたら、急に後ろから抱き締められた。
香月さんの頬が、こめかみ辺りに当たる。
「冗談。ここでいいよ。」
耳元で喋る香月さんの吐息が耳に入って、背筋がゾクゾクッとしてしまう。
:07/09/25 01:11
:SO903i
:FyVZvjz6
#524 [向日葵]
「ちょ、何っ……?」
「いいじゃん。彼氏なんだし。甘えさせて?」
胸がキュウッと鳴った。
意外に香月さんは美声だ。
頭の中が、おかしくなりそう……。
心臓が徐々に動きを早めた時、香月さんは腕の力を少し入れた。
「なんで黙ってんの?」
さっきより口と耳が近づいたのか、声がやけにダイレクトに響く。
私は無理矢理香月さんをひっぺがして距離をとった。
:07/09/25 01:16
:SO903i
:FyVZvjz6
#525 [向日葵]
顔が赤いのは言うまでもない。
「プッ。アハハハハハ!!紅葉かっわいー!!」
「っな!もう!!早く戻りなさいよ!!」
胸元を叩いて帰る様に促す。すると香月さんは「あ。」と何かを思い出した様に言った。
「あのさ、静流の弁当俺が持ってくわ。」
「え。本当?じゃあちょっと待ってて。」
**********************
香月の奴……どこ行ってんだ?
香月の姿が急になくなった。前の席がポカンと空いている。
:07/09/25 01:21
:SO903i
:FyVZvjz6
#526 [向日葵]
シャーペンを指先でクルクル回しながら、暇な授業が終るまであと30分だなぁ〜とかぼんやり考える。
ガラガラガラ
クラスの視線が一気にドアの方へ集まる。
「遅れてすんませぇ〜ん。」
あ、香月。
「入室届けは?」
と先生が言うと、素っ気無く「ん。」と教壇に置いてスタスタと俺の前の席まで来た。
「香月。どこ行ってたんだよ。」
「便所。」
長ぇよ。
:07/09/25 01:26
:SO903i
:FyVZvjz6
#527 [向日葵]
「クックック。……嘘嘘。また後で話すわ。」
意味あり気な言葉を残して、香月は残り少ない授業を受け始めた。
―――――…………
「静流、お前にプレゼントだ。」
そう言われて差し出されたのは、弁当だった。
「え?!何でお前……。」
「さっきまでお前んちにいたんだよ。」
「は?何しに?」
香月は一瞬キョトンとしてからニヤリと笑った。
:07/09/25 01:30
:SO903i
:FyVZvjz6
#528 [向日葵]
……まさか。
俺の表情を読んだのか、香月はにこりと笑った。
「お前が思ってる通りだよ。だから弁当届けてやったんだ。」
「そっ…………か……。」
何もしてないならと、何故かホッとした。
「紅葉可愛いかったんだぜ!俺が抱き締めたら顔真っ赤にしちゃってさ!」
顔……真っ赤に?
ってか抱き締めたって……。
ショックだった。
色んな意味で潔癖な紅葉が、誰かに抱き締められただなんて……。
聞きたくもなかった。
:07/09/25 01:34
:SO903i
:FyVZvjz6
#529 [向日葵]
しかも顔真っ赤にさせただなんて……。
俺は香月よりも長い間一緒にいるけど、そんな表情、見た事はない。
表現が下手で、少し照れたりするのはあるけど、異性としての反応は全く知らない。
紅葉は……本気で香月が……?
このくらいの意地悪は別にいいだろう。
静流がショックで黙ってしまったのを見ながら香月は思った。
:07/09/25 01:37
:SO903i
:FyVZvjz6
#530 [向日葵]
俺だって相当辛いんだからな。
好きな奴が、他に好きな奴いるのに気持ち押し止めてこちらに見る様を見てるんだ。
紅葉は確かに自分を好きになると努力はしてくれているだろうし、さっきの反応を見れば自分に可能性が無いわけではない。
……でも、やっぱり心は未だ……。
と、静流を見る。
未だ、コイツなんだもんなぁ……。
ついでにもうちょい意地悪してもいいだろうか。
「俺、紅葉とキスしたんだ。」
:07/09/25 01:41
:SO903i
:FyVZvjz6
#531 [向日葵]
――――

――――
今日はここまでにします

:07/09/25 01:42
:SO903i
:FyVZvjz6
#532 [向日葵]
…………は?
「ま、カレカノだし。当たり前だろ。」
「おま……ふざけっ!」
パシッ
香月は胸ぐらを掴もうとした俺の手を払い落とした。口元に笑みを浮かべたまま、冷たく俺を見てくる。
「なぁ。お前言ったよな。紅葉ちゃんには恋情を抱いちゃいない。って。覚えてんだろ?」
もちろん覚えてる。
俺の優先順位はいつでも双葉が一番だった。
……なのに。
:07/09/26 01:22
:SO903i
:Xn2WQSXM
#533 [向日葵]
どうしてだろう。
いつの間にか、紅葉が一番になってて……どうしても側にいて、守ってやりたくて
誰にも……渡したくなくて……。
「ゴメン香月……。俺、紅葉が好きだ……。」
*********************
ブー ブー
「ん?」
ソファでのんびり寝転んでいた私は、テーブルで鳴っている携帯を見た。
メール?
その割りには長い事バイブが鳴っている。
:07/09/26 01:33
:SO903i
:Xn2WQSXM
#534 [向日葵]
「電話……っか!」
勢いよく起き上がって、携帯を取る。
「あ、香月さんだ。」
またサボったとか……。はないか。
時計はすでに4時を指している。
学校ならもう終わってるだろう。
「もしもし。」
{ぃよっ。さっきはどうも。}
「こちらこそ、お弁当ありがとう。どうかした?」
そこで香月さんが黙ってしまった。
一瞬電話が途切れたのかとディスプレイを見てみたけど、通話中だったのでまた耳に当てる。
そして当てた途端香月さんは喋りだした。
:07/09/26 01:49
:SO903i
:Xn2WQSXM
#535 [向日葵]
{嬉しいニュースだよ。}
そう言いながら香月さんの声のトーンは低い。
私は黙って続きを待った。
{静流が……。静流が、紅葉を好きだって。}
え?
「冗談……止めてよ。」
{冗談じゃない!!}
:07/09/26 01:54
:SO903i
:Xn2WQSXM
#536 [向日葵]
目の前が真っ暗だ……。
そんな事あっちゃいけない。
私……私……双葉さんの幸せを取る事になっちゃう……っ!
そんな権利無いのに……っ!!
どうする?
もし今、静流が帰ってきて、私に告白したら……。
私の……私のせいだ……っ!!
いつの間にか、香月さんの声が耳に入らなくなった。ただ自分のせいだと頭を抱え、だからと言ってどうすることも出来なかった。
:07/09/26 01:59
:SO903i
:Xn2WQSXM
#537 [向日葵]
【約束だからね……。】
熱を出した時の双葉さんが脳裏に浮かんだ。
――――――約束……。
ガチャ
「ただいまー。」
ハッ!
静流が帰って来た。
どうするの……私。
どうにか二人をくっつけないと……っ。
――何故?
もう一人の私の声が聞こえた。
何故?私は人の幸せを奪い取るほど偉い人間じゃない……っ!
:07/09/26 02:06
:SO903i
:Xn2WQSXM
#538 [向日葵]
――イイジャナイ。十分苦シンダノヨ?奪イナサイヨ。アンタダッテ本当はソウシタインデショ?
―――っ!!
違う!!確かに……確かに二人を見るのは辛い!
でも、私は幸運にも大事にしてくれる人が見つかった。これ以上の幸せは求めてはいけない……っ。
こんな幸せ……許されない……。
正直……嬉しかったっ……。
静流も同じ気持ちだって。私が好きなんだって。
でも、私は自分の幸せと引き換えに他人の幸せを取ってしまった。
:07/09/26 02:11
:SO903i
:Xn2WQSXM
#539 [向日葵]
【アンタなんか生まれてこなければ良かった。】
そう言い続けられた……。
そう。
……私なんか。
「紅葉?いるんなら返事しろよ。」
静流が微笑んでる。
優しく、いつもの静流に戻ってる。
あぁ……どうしよう。
その私を見る目が、愛しいのにとても憎い……っ。
どうして私なんか好きになってしまったの……?
どうして……。
どうして……。
:07/09/26 02:14
:SO903i
:Xn2WQSXM
#540 [向日葵]
―避―
私はどうしたらいい?
右にも左にも、もう道は無くなってしまった。
私がいけないのかな。
私が香月さんを好きにならず、静流をまだ好きでいるから……?
:07/09/26 02:16
:SO903i
:Xn2WQSXM
#541 [向日葵]
カチャン
「あ……。」
スプーンを置く音で現実に戻った。
今は晩御飯を食べている最中。
静流は帰って来てから特に静流自身の気持ちを言わない。
その事にホッとした。
それならば双葉さんにはまだ何も言ってないという気がしたからだ。
「なぁ紅葉。」
―――ドキッ……。
「……私、お風呂用意してくる。」
と言って、その場を去ろうとしたけど失敗した。
:07/09/26 02:21
:SO903i
:Xn2WQSXM
#542 [向日葵]
静流は椅子に座ったまま私の腕を掴んで私の足を止めた。
「話があるんだ。」
「あとでにして。私……っ。早く寝たいの。」
手を振り払って、逃げる様にお風呂場へ向かった。
間違いなく、あれは告白する気だったんだ。
きっとこの後も、言ってくるかもしれない。
実際私は「あとで」と答えてしまった。
お風呂場にへたりこんで浴槽に貯まるお湯を眺める。気泡が出来たかと思えば飛沫のせいですぐ割れた。
:07/09/26 02:28
:SO903i
:Xn2WQSXM
#543 [向日葵]
静流も私が好きだと勘違いしていたと思ったらいい。この気泡みたいにそんな思いが嘘だったかのように無くなればいい。
だからお願い。
私を好きだなんて、絶対言わないで……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
階段を上がると、部屋のドアに静流はもたれていた。
その前を通ろうか迷った私は、通り過ぎる事を決意して早足に進んだ。
静流の前を少し通り過ぎた時だった。
「紅葉。」
:07/09/26 02:31
:SO903i
:Xn2WQSXM
#544 [向日葵]
思わず足を止めてしまった。
「何……?」
恐る恐る、静流の方も見ないで尋ねた。
静流が私の後ろにドアから離れて立っているのが分かった。
「俺なんかしたの?」
「……。」
しばらく間を置いた後、私は首を横へ振った。
すると静流はため息を吐いて、一歩私に近づく。
「じゃあ何その態度…。地味に傷つくんだけど。」
:07/09/26 02:35
:SO903i
:Xn2WQSXM
#545 [向日葵]
――――

――――
今日はここまでにします

:07/09/26 02:35
:SO903i
:Xn2WQSXM
#546 [向日葵]
私は小さく深呼吸した。
言葉が見つからない。
私の事好きなのかなんて聞けない。
もしかしたら香月さんの勘違いかもしれない。
「好き」の意味を間違えてるのかもしれない。
「好き」は「好き」でも、よく言うように、LoveじゃなくLikeの方なんじゃ……。
そうだ。
きっとそうだよ!
希望を取り戻した私は静流に向き直った。
「ちょっと、気分が優れないだけよ。気にしないで。」
:07/09/27 13:20
:SO903i
:mIbFwEuo
#547 [向日葵]
そう言うと、静流の顔が、緊張した顔からスッと力が抜けた表情になった。
それを見て、私もホッとした。
でも、安心したのも束の間だった。
急に静流が唇をキュッと閉めて、真剣な目をした。
それを不思議に見ていた私は、ぼんやりしていたせいで逃げる事を忘れた。
静流は私を抱き締めた。
それも、息が出来ないほど、強く……強く……。
抱き締められた瞬間、目を見開いて私は固まった。
静流の体温を、鼓動を感じる……。
:07/09/27 13:35
:SO903i
:mIbFwEuo
#548 [向日葵]
「静流……?」
「紅葉。俺さ。…………。お前が好きだ……。」
目が落ちてしまいそうなくらい、私は目を開いた。
聞いてはいけなかった。
どうして私さっき逃げなかったの……?
静流はゆっくりと私を離した。
「あの……返事は、ゆっくり考えてくれたらいいから。」
返事?
そんなの、考えるほどでもないわよ。
「いい。今言う。」
:07/09/27 13:39
:SO903i
:mIbFwEuo
#549 [向日葵]
静流を見ないで上手く吸えない息を無理矢理肺に入れる。
「答えは……NOよ。分かってんでしょ?私には、香月さんがいる。」
涙……お願いだから出ないでね。
否定の言葉を言う事に集中しなさい私。
じゃないと、溢れて出てしまいそうになる。
私も貴方が大好きだって……。
「静流は、きっと気持ちが麻痺してるの。私が、近くにいたせいね。もう一度、よく考え」
「考えたよっ!」
:07/09/27 13:43
:SO903i
:mIbFwEuo
#550 [向日葵]
次の瞬間、静流は私の肩を掴んでガクガク揺らした。
「なんでそんな冷たい事言うんだよ!人が精一杯の気持ちを……言ってんのに……っ。いいよ。断られるのは…分かってた……。でも、何でそんな、麻痺してるとか言うんだよっ!!」
静流は壁をものすごい音を立てて叩くと、自分の部屋へ戻ってしまった。
結局私は最後まで静流の目を見れずにいた。
「ゴメン……。静流……。」
パタタタタ
床に小さな水溜まりが出来た。
:07/09/27 13:48
:SO903i
:mIbFwEuo
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