―温―
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#501 [向日葵]
明るく笑って言ってるけど、その顔はとても悲しそうだった。

「そんな顔……しないで。」

香月さんの顔にそっと触れた。

「今は静流でも、香月さんを好きになれると思う。それまで、待ってくれない……?」

香月さんから悲しそうな雰囲気が少し消えて、頬にある私の手の上から私の手を重ねた。

「待つよ。だから早く来て?」

そう言いながら私の掌に唇を押し付けた。

⏰:07/09/23 01:26 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#502 [向日葵]
今日はそれで香月さんは「またメールする」と言って帰ってしまった。

湿気を含んだ風がまた吹く。

きっと好きになれる。

だってホラ……。
こんなにドキドキしてる。

でも本当は知ってた。
静流が触れた時に比べれば、負けてる。
それを、わざと気づかないフリをした。

空がおかしい……。

今晩、何かが起こるかもしれない。

⏰:07/09/23 01:33 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#503 [向日葵]
―――――……

そしてその予感は呆気なく的中してしまった。

それは晩御飯の時。

いつものにこにこ顔で源さんが言った。

「僕明日から出張に行って来ますね。」

ブハ―――――!!!!

お茶を飲もうとしていた私と静流はそれぞれ別の場所にお茶を噴射してしまった。

「いっ!一週間って!なんでだよ父さん!!」

「今度の研究がちょっと手間取ってねぇ。ちょっと研究所に籠ってくる。」

そんなあっさり……。

人生とは本当におかしい。

一番嫌なコンディションの時に一番最悪なシュチュエーションを用意してくれる。

⏰:07/09/23 01:38 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#504 [向日葵]
そして正に今その状態が作り上げられようとしているのだ。

「そんな急に……っ!」

「仲良くするんだよ?ケンカはいけないからね?」

ささーっとお皿を片付けると、明日準備をしに源さんは自分の部屋へと行ってしまった。

リビングに呆然とする悩める子羊が二名に緊張と言う名の狼が襲いかかる。

「なんてこった……。」

と言わずにはいられない。

ソロリと静流を見ると、静流も同じように私を見ていた。

⏰:07/09/23 01:43 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#505 [向日葵]
静流はフゥ……とため息をついた。

「じゃあ明日から一週間、紅葉は洗濯と掃除係な。」

「えー……。洗濯はいつもだけど掃除まで?」

「俺一日の半分は学校だもん。」

と少しふんぞり返って静流は言った。
私は「ハイハイ」と妥協してお皿を片付ける。

こんな微妙な雰囲気で、一週間大丈夫なのかな。

……ん?
私はいいとして、なんで静流までが態度がおかしいんだろう。

⏰:07/09/23 01:48 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#506 [向日葵]
私が怒ってるとでも思ってんのかしら?
それとも香月さんと何かあったのか?

********************

一週間……。
長い。
今の俺にしたら長すぎる……。

自分が嫌になる。
あのダブルデートで気持ちはっきりさせるつもりだったのに。

「男が……ウジウジ……。情けな。」

それもこれも、今日の香月の言葉のせいだ!
俺は……。

一瞬、双葉の笑顔が脳裏をかすった。
そして……。

「静流。早くお皿持って来て。まとめて洗いたいから。」

⏰:07/09/23 01:53 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#507 [向日葵]
俺は紅葉をじっと見た。
そんな俺を不思議がって、眉を寄せてキッチンから見つめる紅葉。

……今度こそだ。
もう二度とは無い。
この一週間で、俺の気持ちを一つに絞る……。

********************

それぞれの思いを胸に、波乱の幕開けである一日目がやって来た。

「じゃあ行ってくるから。」

「気をつけてな。」

にこにこしながら手を振って、源さんは出張へと出かけて行った。

⏰:07/09/23 01:57 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#508 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/23 01:57 📱:SO903i 🆔:NafT.peo


#509 [向日葵]
パタンと閉めて出ていくと同時に私は動き始めた。
静流もそれに合わせて学校へ行く準備を始めた。

「今日は出来るだけ早く帰って来るな。」

「別にいつも通りでいいわよ。普段も変わんないでしょ。」

そう言いながら掃除機をかける準備と、ベランダへ通じる戸を空気替えの為に開けた。

良かった。今日は良い天気だ。

「……ま、戸締まり気をつけろよ。じゃな。」

そして静流も出て行った。

⏰:07/09/24 00:56 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#510 [向日葵]
こっそりベランダの入口辺りから背伸びして静流が行くのを覗く。

覗くと丁度門を出た所だった。
覗いてるってバレるのが嫌で、掃除機をまたかけ始めた。

「紅葉!」

え。

電源を切って、ベランダへ急いで出ると、門から数歩歩いた所で静流がこちらを向いていた。

「忘れ物ぉ?!」

すると静流は微笑みながら首を振った。

「いってきます。」

⏰:07/09/24 01:02 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#511 [向日葵]
―――トクン……。

それ言う為に……?

「行ってらっしゃい」なんて、静流には行った事がなくて、でも今、とても言いたい。

私は静流が見えそうな範囲まで手を上げてぎこちなく手を振った。
私の精一杯の「行ってらっしゃい」を表現する。

でも静流にはそれで十分だったのか、より一層にこぉっと笑って手を振り返した。
そして学校へと行ってしまった。

あぁどうしよう……。

口の筋肉が揺るんでしまうよ……。

⏰:07/09/24 01:07 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#512 [向日葵]
********************

生徒が友達に挨拶する声があちらこちらから聞こえる中、少し汗ばむオデコを手の甲で拭いながら俺は教室へ続く階段を上っていた。

「あ、静流!」

声をかけられた俺は上を見る。
でも逆光のせいで顔が見えない。手を少しかざすと顔が段々見えてきた。

「双葉。おはよう。」

「おはよ!最近どう?紅葉ちゃんとは。」

下りて来て俺の隣まで来た双葉は、また一緒に上りながら俺に話かける。

⏰:07/09/24 01:17 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#513 [向日葵]
「何も。普通だよ。」

と言って、少し早歩きで階段を上った。
それを双葉は、シャツの裾を引っ張って止めた。

グイッと引っ張られて、階段から落ちそうになった俺は手すりにつかまってなんとか堪えた。

「ちょ、双葉!」

「静流が冷たい。」

真剣な顔で双葉が言った。

冷たい?
そんな事ないのに。

でも弁解するのが、なんだかめんどくさかった。

⏰:07/09/24 01:21 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#514 [向日葵]
「気のせいだよ。」

それだけ言って、俺は双葉を置いて階段を上って行った。





残された双葉は静流の異変に不安を隠せなかった。

自分は何かしただろうか。
私の気持ちが重いの?

誰か好きな人が出来たの?

そう思って、心当たりの人物を頭に思い浮かべてみたけれど、どうしても一人しか出てこなかった。

「紅葉……ちゃん……?」

⏰:07/09/24 01:25 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#515 [向日葵]
でも彼女は今香月くんと付き合ってるのに……。





教室に着いて、携帯をマナーにするのを忘れていた事に気づき取り出すと、サブディスプレイにメールのマークがあった。

誰からだ?とパキンと携帯を開けると、紅葉からだった。

<アホ。お弁当忘れてる。>

「あ!」

どうりで鞄が軽いと……っ。

⏰:07/09/24 01:29 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#516 [向日葵]
早打ちでメールを返す。

<昼休みに間に合う様に届けてくんない?!>

送信。
返信はすぐに来た。

<いや。>

超短文。
そりゃ早い訳だ。

「……。」

香月とは……どんなメールしてんだろう。
そんな事を思ってると、本人のお出ましだ。

「おっはよーさん。」

「うす。まだコンタクト無いの?」

⏰:07/09/24 01:34 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#517 [向日葵]
香月は頷いた。
そして開けっぱにして机に置いてあった携帯に目をやる。

隠す必要もないが、さりげなくでも慌てながら携帯を隠した。

「メールしてんだ?」

「弁当忘れたって教えてくれただけだ。」

香月は俺の前の席。席に座ってから後ろを向いた。
俺はなんとか紅葉に頼みのメールを送る。

「で?どうなの?」

「何が?」

香月が不機嫌そうに返してきた。

⏰:07/09/24 01:47 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#518 [向日葵]
「紅葉は……香月に……メロメロ?」

「ブッ!!」

香月が派手に吹き出した。そっぽを向いて肩を揺らす。

ひとしきり笑ったところで、香月はまた俺の方を向いた。

「そんなんじゃないよ。紅葉は……他に好きな奴いるから。」

「え……。」

「ま、フラレても諦めねーけどな。」

そんな香月の顔は、悲しそうだった……。

⏰:07/09/24 01:51 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#519 [向日葵]
*********************

一仕事終えた私はフゥゥ……。と満足の息を吐きながらリビングのフローリングに寝そべった。

「あー疲れた。」

もう11時かぁ……。
午後から何しとこっかな。

ブー ブー

携帯がテーブルと擦れて変な音を立てた。

「また静流?」

お弁当お届けメールの件は私の勝ちで幕を下ろした。でももしかしたらリベンジで送ってきたのかも。

⏰:07/09/24 01:56 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#520 [向日葵]
でも私の予想は外れた。

「香月さん?」

<外見て!>

外?

ベランダの戸越しに外を見る。

「え?!」

私は急いで階段を降りた。途中こけそうになって冷や汗をかいたけど、とりあえず外へ出た。

ガチャン!

「何してんの?!」

そこにいたのは、紛れもなく香月さんだった。

⏰:07/09/24 02:04 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#521 [向日葵]
香月さんはニヒッと笑ってピースした手を前へ突き出した。

「あーその顔見たかったぁ!」

その顔とは、私のうろたえた顔だ。
だって今は学校の時間。
なのに何故?

「暇だったからさ。遊びに来た。」

「暇っ……て。学校あるじゃないっ。」

「サ・ボ・リ。」

茶目っ気たっぷりな目を光らせて香月さんは言った。

⏰:07/09/24 02:07 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#522 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/24 02:08 📱:SO903i 🆔:WTtaMCAA


#523 [向日葵]
「あがっちゃ駄目?」

可愛らしく首を傾けて聞いてくりその仕草に思わずドキッとしてしまった。

香月さんはじっと見つめてくる。

そんな見つめられたら……困るんですけど。

「いいですけど…ちゃんと学校には帰ってくださ…ヒャッ!!」

家に向かおうと香月さんに背中を向けたら、急に後ろから抱き締められた。
香月さんの頬が、こめかみ辺りに当たる。

「冗談。ここでいいよ。」

耳元で喋る香月さんの吐息が耳に入って、背筋がゾクゾクッとしてしまう。

⏰:07/09/25 01:11 📱:SO903i 🆔:FyVZvjz6


#524 [向日葵]
「ちょ、何っ……?」

「いいじゃん。彼氏なんだし。甘えさせて?」

胸がキュウッと鳴った。
意外に香月さんは美声だ。
頭の中が、おかしくなりそう……。

心臓が徐々に動きを早めた時、香月さんは腕の力を少し入れた。

「なんで黙ってんの?」

さっきより口と耳が近づいたのか、声がやけにダイレクトに響く。

私は無理矢理香月さんをひっぺがして距離をとった。

⏰:07/09/25 01:16 📱:SO903i 🆔:FyVZvjz6


#525 [向日葵]
顔が赤いのは言うまでもない。

「プッ。アハハハハハ!!紅葉かっわいー!!」

「っな!もう!!早く戻りなさいよ!!」

胸元を叩いて帰る様に促す。すると香月さんは「あ。」と何かを思い出した様に言った。

「あのさ、静流の弁当俺が持ってくわ。」

「え。本当?じゃあちょっと待ってて。」

**********************

香月の奴……どこ行ってんだ?

香月の姿が急になくなった。前の席がポカンと空いている。

⏰:07/09/25 01:21 📱:SO903i 🆔:FyVZvjz6


#526 [向日葵]
シャーペンを指先でクルクル回しながら、暇な授業が終るまであと30分だなぁ〜とかぼんやり考える。

ガラガラガラ

クラスの視線が一気にドアの方へ集まる。

「遅れてすんませぇ〜ん。」

あ、香月。

「入室届けは?」

と先生が言うと、素っ気無く「ん。」と教壇に置いてスタスタと俺の前の席まで来た。

「香月。どこ行ってたんだよ。」

「便所。」

長ぇよ。

⏰:07/09/25 01:26 📱:SO903i 🆔:FyVZvjz6


#527 [向日葵]
「クックック。……嘘嘘。また後で話すわ。」

意味あり気な言葉を残して、香月は残り少ない授業を受け始めた。

―――――…………

「静流、お前にプレゼントだ。」

そう言われて差し出されたのは、弁当だった。

「え?!何でお前……。」

「さっきまでお前んちにいたんだよ。」

「は?何しに?」

香月は一瞬キョトンとしてからニヤリと笑った。

⏰:07/09/25 01:30 📱:SO903i 🆔:FyVZvjz6


#528 [向日葵]
……まさか。

俺の表情を読んだのか、香月はにこりと笑った。

「お前が思ってる通りだよ。だから弁当届けてやったんだ。」

「そっ…………か……。」

何もしてないならと、何故かホッとした。

「紅葉可愛いかったんだぜ!俺が抱き締めたら顔真っ赤にしちゃってさ!」

顔……真っ赤に?
ってか抱き締めたって……。

ショックだった。
色んな意味で潔癖な紅葉が、誰かに抱き締められただなんて……。
聞きたくもなかった。

⏰:07/09/25 01:34 📱:SO903i 🆔:FyVZvjz6


#529 [向日葵]
しかも顔真っ赤にさせただなんて……。
俺は香月よりも長い間一緒にいるけど、そんな表情、見た事はない。

表現が下手で、少し照れたりするのはあるけど、異性としての反応は全く知らない。

紅葉は……本気で香月が……?







このくらいの意地悪は別にいいだろう。

静流がショックで黙ってしまったのを見ながら香月は思った。

⏰:07/09/25 01:37 📱:SO903i 🆔:FyVZvjz6


#530 [向日葵]
俺だって相当辛いんだからな。

好きな奴が、他に好きな奴いるのに気持ち押し止めてこちらに見る様を見てるんだ。

紅葉は確かに自分を好きになると努力はしてくれているだろうし、さっきの反応を見れば自分に可能性が無いわけではない。

……でも、やっぱり心は未だ……。

と、静流を見る。

未だ、コイツなんだもんなぁ……。

ついでにもうちょい意地悪してもいいだろうか。

「俺、紅葉とキスしたんだ。」

⏰:07/09/25 01:41 📱:SO903i 🆔:FyVZvjz6


#531 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/25 01:42 📱:SO903i 🆔:FyVZvjz6


#532 [向日葵]
…………は?

「ま、カレカノだし。当たり前だろ。」

「おま……ふざけっ!」

パシッ

香月は胸ぐらを掴もうとした俺の手を払い落とした。口元に笑みを浮かべたまま、冷たく俺を見てくる。

「なぁ。お前言ったよな。紅葉ちゃんには恋情を抱いちゃいない。って。覚えてんだろ?」

もちろん覚えてる。
俺の優先順位はいつでも双葉が一番だった。

……なのに。

⏰:07/09/26 01:22 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#533 [向日葵]
どうしてだろう。

いつの間にか、紅葉が一番になってて……どうしても側にいて、守ってやりたくて

誰にも……渡したくなくて……。

「ゴメン香月……。俺、紅葉が好きだ……。」

*********************

ブー ブー

「ん?」

ソファでのんびり寝転んでいた私は、テーブルで鳴っている携帯を見た。

メール?

その割りには長い事バイブが鳴っている。

⏰:07/09/26 01:33 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#534 [向日葵]
「電話……っか!」

勢いよく起き上がって、携帯を取る。

「あ、香月さんだ。」

またサボったとか……。はないか。
時計はすでに4時を指している。
学校ならもう終わってるだろう。

「もしもし。」

{ぃよっ。さっきはどうも。}

「こちらこそ、お弁当ありがとう。どうかした?」

そこで香月さんが黙ってしまった。
一瞬電話が途切れたのかとディスプレイを見てみたけど、通話中だったのでまた耳に当てる。

そして当てた途端香月さんは喋りだした。

⏰:07/09/26 01:49 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#535 [向日葵]
{嬉しいニュースだよ。}

そう言いながら香月さんの声のトーンは低い。

私は黙って続きを待った。

{静流が……。静流が、紅葉を好きだって。}








え?

「冗談……止めてよ。」

{冗談じゃない!!}

⏰:07/09/26 01:54 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#536 [向日葵]
目の前が真っ暗だ……。

そんな事あっちゃいけない。

私……私……双葉さんの幸せを取る事になっちゃう……っ!
そんな権利無いのに……っ!!

どうする?
もし今、静流が帰ってきて、私に告白したら……。

私の……私のせいだ……っ!!

いつの間にか、香月さんの声が耳に入らなくなった。ただ自分のせいだと頭を抱え、だからと言ってどうすることも出来なかった。

⏰:07/09/26 01:59 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#537 [向日葵]
【約束だからね……。】

熱を出した時の双葉さんが脳裏に浮かんだ。

――――――約束……。

ガチャ

「ただいまー。」

ハッ!

静流が帰って来た。
どうするの……私。
どうにか二人をくっつけないと……っ。

――何故?

もう一人の私の声が聞こえた。

何故?私は人の幸せを奪い取るほど偉い人間じゃない……っ!

⏰:07/09/26 02:06 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#538 [向日葵]
――イイジャナイ。十分苦シンダノヨ?奪イナサイヨ。アンタダッテ本当はソウシタインデショ?

―――っ!!
違う!!確かに……確かに二人を見るのは辛い!

でも、私は幸運にも大事にしてくれる人が見つかった。これ以上の幸せは求めてはいけない……っ。
こんな幸せ……許されない……。

正直……嬉しかったっ……。

静流も同じ気持ちだって。私が好きなんだって。

でも、私は自分の幸せと引き換えに他人の幸せを取ってしまった。

⏰:07/09/26 02:11 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#539 [向日葵]
【アンタなんか生まれてこなければ良かった。】

そう言い続けられた……。

そう。
……私なんか。

「紅葉?いるんなら返事しろよ。」

静流が微笑んでる。
優しく、いつもの静流に戻ってる。

あぁ……どうしよう。
その私を見る目が、愛しいのにとても憎い……っ。

どうして私なんか好きになってしまったの……?

どうして……。
どうして……。

⏰:07/09/26 02:14 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#540 [向日葵]
―避―









私はどうしたらいい?

右にも左にも、もう道は無くなってしまった。

私がいけないのかな。
私が香月さんを好きにならず、静流をまだ好きでいるから……?

⏰:07/09/26 02:16 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#541 [向日葵]
カチャン

「あ……。」

スプーンを置く音で現実に戻った。

今は晩御飯を食べている最中。
静流は帰って来てから特に静流自身の気持ちを言わない。

その事にホッとした。

それならば双葉さんにはまだ何も言ってないという気がしたからだ。

「なぁ紅葉。」

―――ドキッ……。

「……私、お風呂用意してくる。」

と言って、その場を去ろうとしたけど失敗した。

⏰:07/09/26 02:21 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#542 [向日葵]
静流は椅子に座ったまま私の腕を掴んで私の足を止めた。

「話があるんだ。」

「あとでにして。私……っ。早く寝たいの。」

手を振り払って、逃げる様にお風呂場へ向かった。

間違いなく、あれは告白する気だったんだ。
きっとこの後も、言ってくるかもしれない。
実際私は「あとで」と答えてしまった。

お風呂場にへたりこんで浴槽に貯まるお湯を眺める。気泡が出来たかと思えば飛沫のせいですぐ割れた。

⏰:07/09/26 02:28 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#543 [向日葵]
静流も私が好きだと勘違いしていたと思ったらいい。この気泡みたいにそんな思いが嘘だったかのように無くなればいい。

だからお願い。
私を好きだなんて、絶対言わないで……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

階段を上がると、部屋のドアに静流はもたれていた。

その前を通ろうか迷った私は、通り過ぎる事を決意して早足に進んだ。

静流の前を少し通り過ぎた時だった。

「紅葉。」

⏰:07/09/26 02:31 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#544 [向日葵]
思わず足を止めてしまった。

「何……?」

恐る恐る、静流の方も見ないで尋ねた。

静流が私の後ろにドアから離れて立っているのが分かった。

「俺なんかしたの?」

「……。」

しばらく間を置いた後、私は首を横へ振った。
すると静流はため息を吐いて、一歩私に近づく。

「じゃあ何その態度…。地味に傷つくんだけど。」

⏰:07/09/26 02:35 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#545 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

⏰:07/09/26 02:35 📱:SO903i 🆔:Xn2WQSXM


#546 [向日葵]
私は小さく深呼吸した。

言葉が見つからない。
私の事好きなのかなんて聞けない。

もしかしたら香月さんの勘違いかもしれない。
「好き」の意味を間違えてるのかもしれない。

「好き」は「好き」でも、よく言うように、LoveじゃなくLikeの方なんじゃ……。

そうだ。
きっとそうだよ!

希望を取り戻した私は静流に向き直った。

「ちょっと、気分が優れないだけよ。気にしないで。」

⏰:07/09/27 13:20 📱:SO903i 🆔:mIbFwEuo


#547 [向日葵]
そう言うと、静流の顔が、緊張した顔からスッと力が抜けた表情になった。

それを見て、私もホッとした。
でも、安心したのも束の間だった。

急に静流が唇をキュッと閉めて、真剣な目をした。

それを不思議に見ていた私は、ぼんやりしていたせいで逃げる事を忘れた。

静流は私を抱き締めた。
それも、息が出来ないほど、強く……強く……。

抱き締められた瞬間、目を見開いて私は固まった。

静流の体温を、鼓動を感じる……。

⏰:07/09/27 13:35 📱:SO903i 🆔:mIbFwEuo


#548 [向日葵]
「静流……?」

「紅葉。俺さ。…………。お前が好きだ……。」

目が落ちてしまいそうなくらい、私は目を開いた。

聞いてはいけなかった。
どうして私さっき逃げなかったの……?

静流はゆっくりと私を離した。

「あの……返事は、ゆっくり考えてくれたらいいから。」

返事?
そんなの、考えるほどでもないわよ。

「いい。今言う。」

⏰:07/09/27 13:39 📱:SO903i 🆔:mIbFwEuo


#549 [向日葵]
静流を見ないで上手く吸えない息を無理矢理肺に入れる。

「答えは……NOよ。分かってんでしょ?私には、香月さんがいる。」

涙……お願いだから出ないでね。

否定の言葉を言う事に集中しなさい私。
じゃないと、溢れて出てしまいそうになる。

私も貴方が大好きだって……。

「静流は、きっと気持ちが麻痺してるの。私が、近くにいたせいね。もう一度、よく考え」

「考えたよっ!」

⏰:07/09/27 13:43 📱:SO903i 🆔:mIbFwEuo


#550 [向日葵]
次の瞬間、静流は私の肩を掴んでガクガク揺らした。

「なんでそんな冷たい事言うんだよ!人が精一杯の気持ちを……言ってんのに……っ。いいよ。断られるのは…分かってた……。でも、何でそんな、麻痺してるとか言うんだよっ!!」

静流は壁をものすごい音を立てて叩くと、自分の部屋へ戻ってしまった。

結局私は最後まで静流の目を見れずにいた。

「ゴメン……。静流……。」

パタタタタ

床に小さな水溜まりが出来た。

⏰:07/09/27 13:48 📱:SO903i 🆔:mIbFwEuo


#551 [向日葵]
足が、震える。

初めてだ。あんな悲しそうで、辛そうで、泣きそうな静流の声を聞いたのは……。

これでいい…。
これで…………。

「―――っゴ、ゴメン……っ!!ゴメンネ……っ静流……っ!!」

謝るしか出来ない。

ありがとう。
私なんかを好きになってくれて。
とても嬉しかった。
私も貴方が大好き。

でもね……どうしても自分が幸せになるのが許されない。

⏰:07/09/27 13:51 📱:SO903i 🆔:mIbFwEuo


#552 [向日葵]
静流はあんなにも温かい心をくれたのに……私は何も返せなくて。

ゴメンネ……ゴメンネ……。


ごめんなさい…………。

外では、雨が降り始めていた。

―――――……

朝起きると、薄手の布団がかけられてた。

当然、あの後だったから、静流の部屋にある自分の布団には行けず、ソファーで寝た。

目が重い……。いっぱい泣いたからかな。

⏰:07/09/27 13:55 📱:SO903i 🆔:mIbFwEuo


#553 [向日葵]
「あ゛ー……あ゛ー……。」

喉がかすれてる。
声が出しづらい。
体も……重い……。

喉を擦りながら、ゆっくりと体を起こした。

……これからどうしたらいいのかな……。

静流はまた微笑みかけてくれる?
また優しく頭を撫でてくれる?
また……名前を読んでくれる……?

膝を抱えて、その膝に、顔を押しつける。

どうして私は……あんな形で静流に出会ってしまったんだろう。

⏰:07/09/27 17:31 📱:SO903i 🆔:mIbFwEuo


#554 [向日葵]
普通に出会っていれば、静流の胸に迷わず飛び込んでいけるのに……。

【あんたなんか生まれてこなければ良かった。】

【約束だからね……。】

「……フフ…。ハハハハ……。」

どうやら、私は邪魔者になるのが運命らしい。


*******************

「どういう……こと?」

双葉は顔が真っ白になってた。
それもその筈だった。

⏰:07/09/27 17:34 📱:SO903i 🆔:mIbFwEuo


#555 [向日葵]
「言った通りだ。……ゴメン双葉。別れよう。」

しばらくしてから双葉の目からは大粒の涙がこぼれ始めた。

「やだ……やだやだやだ!どうして?!私…っ何かしたの……っ?」

「してないよ。全部俺が悪い……。俺、紅葉が好きなんだ。」

双葉は涙を流しながら固まった。
白い肌が余計に白くなって行く……。

「……分かった。」

そう言うと双葉は自分の教室へ帰ってしまった。

⏰:07/09/28 00:45 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#556 [向日葵]
足取りがフラフラしている。
大丈夫だろうか……。

ゴメン双葉。
双葉はすっげぇいい奴だし、傷つけたくなんてなかった……。
それでも、自分の気持ちに嘘はつけなくて……。限界なんだ。

俺も教室へ帰った。
すると香月が入口付近に腕を組んで立っていた。

「へぇ……。やっと本気出すんだ。」

大して面白いことなんて無いのに香月は笑っている。

「香月……俺、紅葉に言ったから。好きだって……。」

⏰:07/09/28 00:49 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#557 [向日葵]
「へー。」

香月との今日の会話はこれで終わりだった。

香月との仲が、日に日に悪くなっていってる事が痛いほど分かる。

それも全部、俺のせいだって……分かってるけど……。

家に帰ると紅葉の姿がなかった。
ベランダに出る戸にカーテンがかかってる。
多分外にいるんだろう。

テーブルを見ると小さな字で書かれたメモがあった。

<一人でご飯食べて。私はいらない。>

⏰:07/09/28 15:01 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#558 [向日葵]
一度、ベランダの方を見た。

そして料理を作って、シンとする中で食べる。
結構辛いものだ……。

どうしてこうなったんだろう……。

*********************

そんな風にしながら日は過ぎていった。

足りない頭で私は考えた事がある。

静流が学校へ行ってる間、私は働いてる源さんへ電話をした。

プルルルルル

{もしもし。}

「源さん。紅葉です。」

⏰:07/09/28 15:06 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#559 [向日葵]
「……お願いがあります。」

―――――……

ガチャン

静流が帰ってきた音が聞こえた。

大丈夫。落ち着け。
いつも通りだ。

リビングに来るかと思いきや、静流は部屋へ行ってしまった。

「フ……フゥ―……。」

緊張しすぎだ。

ソファーに座っていた私はずるずると寝転んだ。

⏰:07/09/28 15:09 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#560 [向日葵]
今日は……絶対顔見せよう。
大丈夫。静流ならきっとまたいつも通りでいてくれる。

頭の中でずっと「大丈夫」と唱え続けた。

「あ、いたんだ。」

思わず飛び起きた。

着替えていたらしい静流は、いつの間にか部屋から出ていて上から覗いていた。

「ご飯……食べるか!」

気まずそうに笑い、静流はキッチンへと行った。

私は少しホッとする。
良かった。笑いかけてもらって。
冷たくされるんじゃないかと心配した。

⏰:07/09/28 15:14 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#561 [向日葵]
久々に二人で食べるご飯はとても美味しく感じた。

静流は私に「食べれるか?」とか「大分平気になって良かったな。」と温かい眼差しで言った。

私はウンと答えるしか出来なかったけど、静流には多分伝わっているだろう。

そんな時だった……。

ピンポーン

二人で顔を見合わせた。

「誰だろう。」

私は使ってたフォークを置いて階段を降り、玄関を開けた。

⏰:07/09/28 15:18 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#562 [向日葵]
「双葉さん……。」

「こんばんわ。」

いつもの明るく愛想のいい挨拶をしてくれた。
でもなんだか様子が変だ。

「えと、静流呼んで」

「貴方に話があるの。」

静流がいるだろうと思う所らへんの天井を見た顔を下に下げ、双葉さんを見た。
見て驚いた。
少しの間で、双葉の顔は洗った後みたいに濡れていた。それは涙のせいだ。

「紅葉ちゃんは……ズルイ……。」

⏰:07/09/28 15:22 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#563 [向日葵]
涙でしゃがれた声でそう言われた。
そして瞬時に分かった。
双葉さんは、静流に別れを告げられたんだと。

「こんな近くにいちゃったら……っ誰だってその子を見ちゃうよ!貴方が捨てられてるのを発見してから静流の言葉に貴方の名前が無い日はなかった!!」

―――ズキン

私……ズルイんだ……。

「ひどいよ…っ!!静流が大好きなのに……紅葉ちゃんが横取りするなんて……そんなのひどいよ!!」

「やめろ!!」

⏰:07/09/28 15:26 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#564 [向日葵]
騒ぎで降りてきた静流が後ろで怒鳴った。

私はずっと双葉さんを見たまま体を動かす事も出来ず、固まっていた。

「紅葉のせいじゃない。俺が悪いんだ。双葉を好きでいてやらなかった俺が……。だから、紅葉を責めるのはよせ。」

双葉さんの見開かれた目からは涙が次から次へと流れていった。
そして急にきびすを返して走り去って行ってしまった。

「静流……追ってあげて……。」

「なんで。」

⏰:07/09/28 15:31 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#565 [向日葵]
背中を向いたまま、開かれたドアの向こうを見ながら静流に言った。

「どうして別れたの。」

「……言っただろ。……前に」

「よく考えてみてよっ!!私がここにいなかったら、静流はいつまでも双葉さんと仲良くいたのよ?!私の……私のせいで、別れたりしないでよ!」

「だから違うって言ってんだろっ!!」

大声を出した静流に私はビクッとした。
静流は戸を閉めて私を階段近くまで引っ張った。

⏰:07/09/28 15:36 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#566 [向日葵]
大きな両手で私の顔を包むと、静流は上を向かせた。

「どうして、お前は自分ばかり責めるんだよ。そこまで…自分を傷つけなくていいんだ。」

静流の切ない目が潤んで、とても綺麗に感じた。
私はそれに目が離せなくなる。

「人を好きになるのは誰のせいでもない。だから、頼むから……。俺の気持ち分かってくれよ。」

そう言いながら辛そうに目を瞑り、私のおでこと静流のおでことをコツンと当てた。

⏰:07/09/28 15:42 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#567 [向日葵]
分かる。
好きって気持ちは、ホントどうしようもなくて、押し止めてしまうのが苦しい。

だから言葉が溢れていくんだと思う。

「好き。」

…………と。

静流が目を開けた。

「今……なんて?」

「好き。私は静流が好き。でもね……また違うの。貴方の好きと、私の好きは……。」

静流は一瞬輝かせた目を戻して私の続きを待った。

⏰:07/09/28 15:46 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#568 [向日葵]
「ありがとう。こんな私を好きになってくれて。おやすみなさい。」

私は静流の手を顔から離して横を通り過ぎ、階段を上がって行った。

「紅葉。」

進める足をピタッと止める。下を向くと、さっきのまま静流が私に話しかけている。

「これからも……お前が俺を好きになることは……俺を恋愛対象として見ることは……ないのか?」

あるよ。あるじゃない。
現在進行系で貴方が大好きなの。

――横取りするなんて……っ!

私が双葉さんの立場でも多分そう思う。
私はズルイ。

⏰:07/09/28 15:52 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#569 [向日葵]
静流に大事にされて、優しくされて……。
彼女立場とすれば目の上のタンコブに違いない。

大好きな人の心が、自分に向いてないことは、なんて悲しいんだろう。

「……。ない。」

それだけ言って、私は階段を登って行った。

―――――……

やっと源さんが帰ってくる日。
あれからも態度は変わらない私達。
しかしうっすらと作られてしまった壁。
きっと元に戻る事はない。でもそれでいい。

⏰:07/09/28 15:57 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#570 [向日葵]
源さんは夕方頃にボサボサな頭を更にボサボサにさせて帰ってきた。

「ただいま!仲良く留守番してた?」

「そんな年じゃないっつーの。」

そんな温かい親子を少し微笑みながら見ていた私は、心の中で思った。

――いよいよだ……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

夜。
良かった事に今日は満月が綺麗に出るほど天気のいい空だ。

ベランダで体育座りをしながら眩しい月を見上げる。

⏰:07/09/28 16:01 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#571 [向日葵]
時間を見れば、夜中の1時。そろそろ静流も寝静まった頃だろう。

リビングを横切り、部屋をそろっと開ける。
予想通り、静流は寝ていた。

暑いのか、布団をあまり被らないで壁側を向いて寝ている。
この方が好都合。
予め用意していた旅行用カバンを持ちながらカチャリとドアを閉めた。

急いで置いてある自分の服、下着をカバンに摘める。

ここまですれば、私が何をするかお分かりだろう。

⏰:07/09/28 16:06 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#572 [向日葵]
そう。

あれは源さんに電話した時だった。

―――――
――――――――……

{旅?}

「そう。一人旅。出来るだけ遠くに行ってみたいの。」

このまま私がいてしまうとダメな気がした私はそう言った。
しばらくの間、静流とも香月さんとも離れて、香月さんはともかく静流にもう一度考えてもらいたかった。

本当に私が好きかどうか……。

⏰:07/09/28 16:10 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#573 [向日葵]
{……。僕の知り合いに、旅館を経営してる人がいるんだ。その人のトコへ行ったらどうかな。}

「じゃあ……そうする。あと、静流には言わないでくれる?」

{?どうして?}

静流が自分のせいだって思って引き止めてしまいそうだから……。なんて言えない。
第一源さんは私達のそんな事情を知らない。

「「子供のくせにまだ早い!」っとか言いそうだから。」

と冗談で返すと、源さんは「確かに。」大笑いした。

⏰:07/09/28 16:16 📱:SO903i 🆔:IaBHbH2A


#574 [向日葵]
もしかしたら源さんは何か感じとってたかもしれない。
でも何も言わず、ただ私の言う事をウンウンと言って聞いてくれた。

私は朝一の新幹線で源さんの知り合いとやらの旅館へ行く事になった。
駅までは一人で行くと源さんに伝えた。

源さんは「じゃあ駅までの地図を当日渡すね」と言って仕事が忙しくなったのかじゃあと言ってから電話を切った。

――――
―――――……

そして今に至る。
私は朝になるまで寝ないつもり。

⏰:07/10/02 23:13 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#575 [向日葵]
その代わりに静流の寝顔をしっかり見ておくの。
次に会う時までの少しの支え。

きっと会いたくなる時があると思う。
でも我慢しないと。

すぐ帰ってしまっては静流の気持ちが変わってないかもしれない。

本心は、変わってほしくなんかないけど……ね。

私はベッドに歩み寄ってストンと座った。
静流は熟睡して寝息をたてている。

そんな静流の顔を、そっと撫でてみた。

⏰:07/10/02 23:17 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#576 [向日葵]
男の子だって言うのに、すごく肌が綺麗なのかスベスベしてる。

私は静流の頬を何度も指先で往復した。
胸が……苦しい……。

パシッ!

「っ!!」

寝てる静流が私の手を掴んだ。
寝てるのに素早い動きだったので私の心臓がバクバクと急に動き出した。

「……れ……。」

「れ?」

何の事か分からない私に教えてくれるように静流はもう一度寝言を言った。

⏰:07/10/02 23:21 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#577 [向日葵]
「く…れ、は……。」

「――っ。」

私の……夢を見てるの?

掴まれた手は、離される気配がない。

静流……私は、どこにも行かない。
また、貴方の前に現れる。それがいつかは分からない。
でも必ず、また来るから……。

ありがとう。

私に優しくしてくれて……好きになってくれて……。

ありがとう……。

⏰:07/10/02 23:24 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#578 [向日葵]
私は唇を、静流のおでこに当てた。

シャンプーの匂いが、鼻をかすめた。

―――――
――――――……

午前4時。

もっと見ていたかった。
静流の、綺麗なその顔。
でももう時間……。

タイムオーバー。

いつまでも掴まれたままだった手を、ゆっくりと外して行った。

「……バイバイ……。」

荷物を持って、私は静流の部屋を静かに出て行った。

⏰:07/10/02 23:28 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#579 [向日葵]
下へ行くと、玄関に源さんがいた。

「静流君に、本当に言わなくていいの?」

私は頷いた。

「朝まで寝かしといてあげたいから。心配しないようにだけ言っておいて。」

「そっか……。あ、ハイ地図。」

渡された地図に目を落とす。
結構時間がかかりそうだ。

地図から目を離し、源さんを少し見てから頭を下げた。

⏰:07/10/02 23:31 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#580 [向日葵]
「わがままを……聞いてくれて、ありがとうございました。」

すると源さんは、悲しそうな微笑みを浮かべて頭を撫でてくれた。

「いつでも帰ってきてね。君は僕達の家族なんだから。」

家族……。
最初から源さんや静流は前から私がいたみたいに扱ってくれた。

それをとてもありがたく思う。

「行ってきます。」

私は源さんの方は向かずに戸を閉めた。

⏰:07/10/02 23:35 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#581 [向日葵]
門を出て数歩歩いてからまた家を眺めた。

驚くほどの家のでかさ。

いつも自分が愛用していたベランダ。
いつも明るかったリビング。
水やりしていた花壇。


そして……あそこは静流の部屋……。


じって見つめる。
もしかしたら静流が止めにくるかななんて馬鹿な事を思いながら。
そんな事をしたら意味が無くなるのに。

どうしてだろう。

永遠の別れじゃない筈なのに、もう二度と会えない気がする。

⏰:07/10/02 23:39 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#582 [向日葵]
でも、それでもいい……静流さえ幸せになってくれれば、それでいい。

そして私は歩き出した。

6月の早朝はなんだか湿っぽい。

遠くで新聞配達の音が聞こえる。

私のジャリジャリと言う歩く音が聞こえる。

その途端、胸が一杯になった。
涙がボロボロ流れ始める。

「―――っう……っ。ふうぅ……っっ!」

歩くのが何だかもどかしくて、私は走り出した。

⏰:07/10/02 23:43 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#583 [向日葵]
「ハッ!ハァッ!!……んくっ……っ。」

泣いてるせいで、呼吸困難になりそう。
でも走り続けた。

幸せに憧れた。
幸せになりたかった。
もっと一緒にいたかった。
もっと一緒にいてほしかった。

でも私はそれほどの人間でもなく、自分が幸せに敏感なだけに人の幸せを奪うのはどうしても出来なかった。

ずっと頭の中で、そう唱えてた。

【俺は紅葉が好きだ。】

⏰:07/10/02 23:47 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#584 [向日葵]
朝日が見え始め、その光を全身に目一杯浴びる。

静流。
私も好き。大好き。

ゴメンネ。
答えてあげられなくて。

静流……静流……。

「っうあぁぁ!!……ひっ!ハァッハァッ!!」

またね……って、言えない気がする。

だから


さようなら。

⏰:07/10/02 23:50 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#585 [向日葵]
―会―











朝だ……。起きなきゃいけない。

今日も学校だ。

俺はぼんやりしながら体を起こした。

ふと、右手を見てみる。
何か感触が残ってるような。

⏰:07/10/02 23:53 📱:SO903i 🆔:P1FKxZVI


#586 [向日葵]
それが何かなんて、検討もつかない。

そのまま視線を滑らすと、紅葉の布団に紅葉がいない。

彼女は確かにいつも早起きなのだが、起きたような布団の形はしていなかった。
敷いてそのままと言う感じだ。

もしかしたらまたソファーで寝てしまっているのかもしれない。

確認の為、俺は部屋を出た。

リビングに向かうと、シーンと静寂に包まれていた。

⏰:07/10/03 00:00 📱:SO903i 🆔:RMOaFhzI


#587 [向日葵]
寝息のような音すら聞こえない。
でもとりあえず呼んでみる。

「紅葉ー?」

もちろん返事などなかった。

ソファーに一歩一歩近づいて行く。

何故だろう。

心臓が高鳴っていくのがわかる。
胸騒ぎと言ったらいいのだろうか。

予感は的中。

……紅葉が

いない……。

⏰:07/10/03 00:07 📱:SO903i 🆔:RMOaFhzI


#588 [向日葵]
「……れは……?」

よたよたと後退して行き、ザッ!っと体を翻して父さんの部屋へ向かった。

階段をこけそうなくらい早く降りて、廊下を大股で走って行く。

ドンドンドンドン!!

俺は父さんの部屋のドアを思いっきり叩いた。

「父さん!父さん!大変だ!!」

俺がこれだけ混乱してるって言うのに、父さんはゆっくりとドアを開けた。

「父さん……っ?!大変だってば……っ!」

⏰:07/10/03 00:17 📱:SO903i 🆔:RMOaFhzI


#589 [向日葵]
父さんは何故か無表情だった。
そこで俺は分かった。

「知ってんの……?紅葉いないこと……。」

父さんはゆっくりと頷いた。

俺は訳がわからなかった。何故?何故出ていく必要があったんだ?
俺のせい?
俺が好きだとか言ったから?

パニック状態になった俺の表情を読み取った父さんが言った。

「大丈夫。一人旅に出かけただけだから。」

「一人……旅?」

⏰:07/10/04 00:58 📱:SO903i 🆔:InOsgAz6


#590 [向日葵]
「旅がしたかったんだって。心配しなくても、いつか帰ってくるから。」

いつか?

「いつかって……いつ?」

父さんは静かに微笑んで言った。

「いつか……だよ。」

つまり決まってない。

明日帰ってくるかもしれないし、1週間後に帰ってくるかもしれない。

それが、もし、何年も先だったら……?

俺は急いで階段を駆け上がり、携帯を手にした。
リダイアルで紅葉の番号を出し、電話をかけた。

⏰:07/10/04 01:02 📱:SO903i 🆔:InOsgAz6


#591 [向日葵]
コールが鳴り続ける。
紅葉が出る気配が全くない。

プツッ

「!紅葉!今どこに」

{おかけになった電話は、電波の届かない所か、電源が入ってない為……}

携帯アナウンスに失望して、最後まで聞かないまま電話を切った。

どうして、こうなってしまったんだろう……。


*********************

段々と、景色が田舎になってきた。
見る限り、山、田んぼ、山田んぼ……。
緑一色しかない不思議な世界。

⏰:07/10/04 01:06 📱:SO903i 🆔:InOsgAz6


#592 [向日葵]
ぼんやりと、初めて行く場所に向かっていた。

私は途中自販機で買ったミネラルウォーターを一口飲み、しばらく寝ることにした。

なんだか……目が重い気さえした。

*********************

「紅葉が消えた?!」

今朝の出来事を香月に伝えた。
驚いている事から香月にも知らされていなかったらしい。

「何で消えるんだよ!意味分かんねぇぞ?!」

⏰:07/10/04 01:10 📱:SO903i 🆔:InOsgAz6


#593 [向日葵]
「俺だって分かんねぇよ!!」

俺の荒けげた声に、クラスメイト何人かが振り向く。
香月は少しびっくりしていて目を見開いている。

「どこに行ったかとか……聞いてないのか?」

香月の言葉に、俺はうなだれて首を振った。
父さんからはただ一人旅だとしか聞かない。
何故俺には内緒だとか、何故行ってしまったとか、聞きたいのは俺の方だった。

「携帯にも繋がらないんだ……。メールも返ってこねぇし……。」

⏰:07/10/05 14:59 📱:SO903i 🆔:Xf33hPuo


#594 [向日葵]
「おじさん、行き先知ってるんじゃないのか?」

「さぁ……。」

「「さぁ」っじゃねぇよ!イジイジしてる暇あるんだったら少しは行動して見ろよ!!」

……?
なんで俺が?
いや、行動するのには何も抵抗は無い。
寧ろ動きたくてウズウズしてるくらいだ。

「お前、何で俺の応援してんの?」

問いた時、香月はフゥ……と息を吐いた。

「お前ら、両想いだって知らなかったのか?」

⏰:07/10/05 15:04 📱:SO903i 🆔:Xf33hPuo


#595 [向日葵]
頭の機能が、停止した。

真っ白になって、視界も何を見てるかなんて分からなかった。

紅葉が……?
だって俺が前、好きになる確率がないかと聞いた時、アイツは

[ない。]

……って……。

なら……どうして?

「ついでプラス、嫌味でお前にある事を教えてやろう。」

香月の声がしたのをきっかけに、俺は現実へ戻ってきた。

⏰:07/10/05 15:08 📱:SO903i 🆔:Xf33hPuo


#596 [向日葵]
「お前の誕生日の時、紅葉はケーキを買ってきててなぁ。」

腕組みしながら喋る香月に俺は小さく「え?」と返した。

「帰ってきてケーキを見つけたお前が気をつかわないように紅葉は一人で食べたんだ。」

「一人?」

「一人。」ともう一度言って香月は黙った。
俺の様子を見ているらしい。

一方の俺は呆然としていた。

⏰:07/10/05 15:12 📱:SO903i 🆔:Xf33hPuo


#597 [向日葵]
食べれないのに……一人で、全部……。

「さらに、ついでのついでだ。」

「まだ、あるの?」

「あぁ。俺はお前と違って相談役もしてたからなぁ?」

それを聞いてグッと歯を食い縛った。
よく考えてみれば、自分は紅葉に何をやってあげたんだろうか。

「今思い出した事だ。紅葉はな、お前が自分を好きになってしまったら出ていくって言ってた。丁度そのケーキの件の時だ。」

⏰:07/10/05 15:18 📱:SO903i 🆔:Xf33hPuo


#598 [向日葵]
血の気が引いていくのが分かる。
まさか自分が原因だったなんて。

でも何故俺は紅葉を好きになっちゃならなかったんだ……?
紅葉も俺を好きなら、それでいいんじゃないのか?

「紅葉はな。」

「ん?」

「優しすぎてんだよ。」

脳裏に紅葉の痛々しい笑顔が蘇る。
今なら、あの笑顔の意味が分かる気がした。

「自分のせいで、双葉ちゃんが悲しい思いをするのが嫌だったんだろうな。」

⏰:07/10/05 15:22 📱:SO903i 🆔:Xf33hPuo


#599 [向日葵]
「だってそうだろ?」と香月は続けた。

「考えてもみろよ。あの子は捨てられたんだ。しかも自分が邪魔だと親に言われたんだろ?だから、邪魔者にならない様にいつも我慢してたんだよ。」

[私は不要じゃない!]

紅葉を拾って来た時、紅葉が叫んでいた。

「……俺……。」

その時からかもしれない。
紅葉が好きだったの。

放っておけなくて、危なっかしくて……でもどこか愛しくて……。

⏰:07/10/05 15:27 📱:SO903i 🆔:Xf33hPuo


#600 [向日葵]
「お前は、よく紅葉を見てんのな……。」

いかに、今まで自分は自分の事しか考えていないかよく分かった。

香月に妬いて出ていけといったり、変な態度をとってケンカしたり、勝手に殴ったり……。
自分はどれだけ紅葉を傷つけたんだろう。

あの痛々しい笑顔以来、紅葉の心から笑った顔は…………見てない……。

ゴンッ!!

頭に激痛。
急な事に目の前にはチカチカ星が飛んでる気がした。

⏰:07/10/05 15:31 📱:SO903i 🆔:Xf33hPuo


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