○ビー玉ラバーズ○
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#201 [向日葵]
と微笑ましく思ってると……
チクン…………
「?」
何だろう。
急に胸のどこかで小さな痛みが走った。
小さすぎて気づかないくらいの、ほんの少しの痛み。
胸に手を当ててみても、別に何のヘンテツもなかった。
「加寿?どうかした?」
「へ?ううん何も。それで?」
「もし彼女が出来たりしたら、加寿行き帰り寂しいんじゃないかなって。」
:07/10/29 01:00
:SO903i
:☆☆☆
#202 [向日葵]
寂しい……かぁ。
寂しいかもなぁ。
でもそれなら、ちゃんと「弟をよろしく」みたいな挨拶をして、誠にそれなりに大切にするように言ってあげないと。
誠が彼女と登下校かぁ……。
その映像を脳内に浮かべると、また……
チクン…チクン……
「いたっ!」
思わず声を出してしまった。
「加寿?どこが痛いの?」
:07/10/29 01:03
:SO903i
:☆☆☆
#203 [向日葵]
杏ちゃんは心配そうに私に寄ってきた。
私は胸を擦りながらまた頭はハテナで一杯になっていた。
病気なのかな、私……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「1次関数のグラフっていうのは―――――……。」
私は窓の外をぼんやりと眺めていた。
今日はいいお天気だから外で食べようって誠に言おうかなー……。
私達はいつも一緒にお昼を食べる。
と言うのも、誠がお昼は一緒に食べようと言ってきたのだ。
:07/10/29 01:07
:SO903i
:☆☆☆
#204 [向日葵]
私は別に嫌じゃないので、いいよと答えた。
まったく……まだまだ姉離れ出来ないんだから……。
と思いながらも、誠が可愛いくて仕方ないのでとても嬉しいのだ。
「あ。」
グラウンドで、中学生がサッカーしてる。
元気だね若者。さすが14歳……。
何だか心は既に老人化してしまっている私なのだった。
するとその中に見慣れた影が。
:07/10/29 01:11
:SO903i
:☆☆☆
#205 [向日葵]
「誠……。」
長袖ジャージを腕も足も捲り上げてボールを奪いあっている。
と思っていたら、スイッとボールを奪い、一気にシュート。
わぁ……うまーい……。
運動神経良いのは知ってたけど、ここまでとは……。
感心していると、急に誠はこちらを見た。
何故かいけない事をした気分になった私はドキッとする。
誠は微笑んで手を振っている。
ん?!それは私に?
いやいやいやそんな訳ないよねっ?
:07/10/29 01:15
:SO903i
:☆☆☆
#206 [向日葵]
――――

――――
今日はここまでにします
>>22に感想板があるんで、良ければ感想などお願いします


:07/10/29 01:17
:SO903i
:☆☆☆
#207 [向日葵]
私の教室は3階にあってグラウンドからはまぁまぁ離れている。
私から誠を見つける事は出来ても誠から私を見つけるのはきっと無理だ。
私は一旦黒板を見て、またゆっくりとグラウンドを見た。
すると誠はまだ私を見ていて手を振っていた。
先生の目を盗んで手を振り返すと、誠の手の振りが一層早まったので私だと確信を持てた。
しばらくして誠はまたサッカーをしに戻っていった。そんな姿を私は微笑ましく見守る。
:07/10/31 00:47
:SO903i
:☆☆☆
#208 [向日葵]
元気だなぁ……。
お姉ちゃんは誠が立派になって嬉しいよ……っ。
と、その時。
誠に可愛いらしい女の子が近づいてきた。
どうやら誠と喋ってるみたい。
その時見せた誠の笑顔は、完璧に“弟”ではなく、“男の子”だった……。
「……いつの間に……。」
そんな笑顔を見せる様になったんだろう。
また胸のどこかでチクリと音が鳴った……。
:07/10/31 00:51
:SO903i
:☆☆☆
#209 [向日葵]
―――――――――……
「加寿姉。飯。」
「あ、待ってて。すぐ行く。」
迎えに来た誠を待たせて、私はお昼の用意をした。
「へーっ。迎えに来ちゃうのかぁっ!」
「今日はたまたまだよ。いつもなら外で待ってるんだけど……。」
どうしたんだろ?
お弁当のサンドイッチとミルクティーを持って私は誠の元へと行った。
「どこで食べる?」
「中庭の木陰で食べよう!天気もいいし!」
そう言って私達は中庭へと向かった。
:07/10/31 00:57
:SO903i
:☆☆☆
#210 [向日葵]
中庭で食べる人は意外に少なく、食べているのは私達と遠くに少しだけ見える人達だけだった。
「いっただっきまーす!」
サンドイッチを1つ持ち、口に頬張る。
お腹が空いていたのでとてもおいしく食べていた。
あぁ……青空の下でおいしい物食べるって幸せだなぁ〜っ。
そこで私はあることに気づく。
さっきから誠が全く喋らないのだ。
ただ黙々とご飯を食べている。
:07/10/31 01:00
:SO903i
:☆☆☆
#211 [向日葵]
「誠?どうかした?」
「え……?いや……。」
私は瞬きを何回かして「そう?」と言った。
でも明らかに誠がおかしい気がする。それは長年付き合ってきた私の勘の様なものだ。
しばらく誠を見ていると、誠はお弁当箱に静かにお箸を置いた。
「あの……さ。……告白されたんだ。俺。」
「え?!嘘っ!!」
私はサンドイッチを食べる手を止めた。
「で?!返事したのっ?!」
:07/10/31 01:05
:SO903i
:☆☆☆
#212 [向日葵]
誠は眉を寄せてハァ……と悩ましげにため息を吐いた。中学生と思えないその仕草に色気さえ感じた。
「もちろん断った。」
「え―――!!!!断っちゃったの?!誠彼女いらないの?!」
「欲しいよ。でも……好きな人が、いるから……。」
へー!誠好きな人いるんだぁ!と私は目を輝かしていた。
すると急に誠が真剣な顔をして、私を見た。
そのせいで、私達は沈黙した。
:07/10/31 01:09
:SO903i
:☆☆☆
#213 [向日葵]
「……分からない?俺加寿姉が好きなんだけど……。」
「……え……。」
ザァァァ……
風が一瞬激しく通り過ぎた。私の伸ばした少し茶色い髪の毛が顔にかかる。
「小さい頃からずっと……。加寿姉全然気づいてないから今が丁度いいと思」
「ちょちょちょっと待って。」
誠が私を?
そんな……私は誠はずっと弟みたいにしか思ってなくて……。
:07/10/31 01:12
:SO903i
:☆☆☆
#214 [向日葵]
「せ、誠。勘違いしてない?きっと私がお姉ちゃんずっとやって来たようなもんだから、その……兄弟愛みたいなのと勘違いしてるんじゃないっ?」
私がそう言うと、誠は目を見開いて驚いた。
そして瞬時に怒りが映し出されていった。
私はこんなに怒りを露にした誠を見て少しゾクッと怖くなった。
「勘違いってなんだよ……。」
ギリギリ聞こえるか聞こえないかの声で誠は呟くと、私の手首を掴んで木に私を押し付けた。
:07/10/31 01:16
:SO903i
:☆☆☆
#215 [向日葵]
「ヤッ!!誠……っ!!」
「なぁ加寿姉。俺はいつまで弟扱いな訳?兄弟でもないのにさ!」
手首を掴んでいる手に更に力が入った。
痛さで私は少し顔を歪める。
手を動かそうとしても全然ビクともしない。
いつの間にこんなに力が強くなったの……?
ついこの間までは私の方が強かったのに……っ。
「離して……誠っ!」
「ねぇ加寿姉……!俺は男として見れないの……っ?」
「離してよ誠!!」
「俺を見ろよ!!」
:07/10/31 01:21
:SO903i
:☆☆☆
#216 [向日葵]
誠が叫んだと思うと、誠の唇が荒々しく私の唇に重なった。
何が起こったか判断するまでに数秒かかった。
分かった時には、息が出来なくなっていた。
それと同時に誠は離れた。
近くで見つめられて、その眼光にドキッとした。
私を真っ直ぐ見ている。
それはまるで誠の想いと同じだ。
誠は黙ったままお弁当を片付けると、その場を静かに去って行った。
私はそのまま腰が抜けたのか立てない。
胸に手をやると、まだドキドキいってる。
:07/10/31 01:25
:SO903i
:☆☆☆
#217 [向日葵]
それは息切れのせいじゃない。
「……知ってたよ。」
誠がもう弟じゃない事ぐらい。
だってずっと近くで見てきたもの。
いつの間にか同じくらいにまで伸びた身長も、低くなってしまった声も、骨張ってきたその手すら……。
「全部……知ってたもん。」
誠が男の子に近づくにつれ、誠が誠じゃなくなるんじゃないかって私は思った。
だからワザと、弟扱いしてきたんだ……。
:07/10/31 01:29
:SO903i
:☆☆☆
#218 [向日葵]
胸に当てていた手を、今度は唇に当てた。
「唇が…………。」
熱い……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
委員会が終わって、仕事をしていたら6時になっていた。
外はほぼ真っ暗だ。
「ハァ……。」
誠きっと帰っちゃったよなぁー……。
私ヒドイ事言っちゃったし……って言うか気まずいし……。
窓にもたれながらあれこれ考えていると見回りの先生がやってきた。
:07/10/31 01:32
:SO903i
:☆☆☆
#219 [向日葵]
「ん?まだいたのか?暗いから早よ帰れー。」
「あ、ハイ。さようならー。」
下駄箱まで降りて、直ぐに私は家へと向かった。
早く誠に謝ろう。
それで今の気持ちちゃんと伝えなくちゃ。
きっと……誠なら分かってくれる筈だから……。
早歩きから駆け足に。
私は早く早くと気持ちを急がせながら足を進めた。
「あ!近道近道!」
私は少し細い道を通る事にした。
この道は家まで最短距離になる。
:07/10/31 01:39
:SO903i
:☆☆☆
#220 [向日葵]
コツ……
後ろでそんな音が聞こえた。
思わず立ち止まる。
……ん?
でも音が聞こえなくなった。
気のせいと思い、ゆっくりとまた歩き出した。
すると……
コツ……コツ……
え……。
早歩きになると後ろも早歩きに。
段々迫ってくる靴音。
コツコツコツコツ……。
:07/10/31 01:42
:SO903i
:☆☆☆
#221 [向日葵]
あ、もしかして誠?!
と後ろを向いた。
それが大きな間違いだった。
後ろには全く知らない男の人。深く帽子を被って暗くて目元は見えにくいが、口元が見える。
そしてその口元が、ニヤァ……と歪んだ。
「……ひっ!!」
背筋を駆け抜ける悪寒。
そして凍りついてしまった足。
男の人はニヤニヤしながら私に寄ってくる。
:07/10/31 01:45
:SO903i
:☆☆☆
#222 [向日葵]
「怖がらなくていいんだよ?これから楽しいことするんだからねぇ……?」
「ィ……イヤ……っ。」
痴漢らしきその人は動けない私を無理矢理引っ張ってどこかへ連れて行こうとした。
「ヤダ……ッ!!」
助けて……っ。
誠……っ!!
ガスッ
「グッ!!」
「!」
:07/10/31 18:50
:SO903i
:☆☆☆
#223 [向日葵]
急に痴漢は頭を押さえながらよたよたと走って行った。
何が起こったかいま一つ分からなかった私は呆然とへたっていた。
そして目の前の人物に気づく。
「加寿姉!大丈夫か?!」
「せ……っ。」
誠だ。
誠が助けてくれたんだ……。
「どーしてここ……に。」
「下駄箱にいるって言ったのに加寿姉が……ってか何で先に帰ってんだよ!俺痴漢出るっつったじゃんよ!!」
:07/10/31 18:53
:SO903i
:☆☆☆
#224 [向日葵]
私はビクッと体を震わした。
「ゴ……ゴメン……。」
「ハァ……いいよ。さ、帰ろ。」
誠が手を差し出してくれたので、私はその手を握り、立とうとしたら、その前に涙が出てしまった。
「怖かっ……。」
助かった安心感から涙がポロポロ流れる。
早く泣き止まないと誠が困ってしまうのに。
でも誠は予想と違って私の前に座ると、頭を撫でてくれた。
:07/10/31 18:57
:SO903i
:☆☆☆
#225 [向日葵]
「よしよし。怒鳴ってゴメンナ。怖かったな……。」
どちらが年上か分からない。でも今はその撫でてくれる手に、ただただ救われた。
ねぇ誠……。
私分かったよ。
私は……誠が……。
:07/10/31 18:59
:SO903i
:☆☆☆
#226 [向日葵]
――――

――――
中途半端な終わり方してしまいましたが「弟」終わりです


一旦キリますんで感想良ければこちらに下さい

>>22に感想板があります

:07/10/31 19:05
:SO903i
:☆☆☆
#227 [向日葵]
ビー玉6*ありがとう*
今朝……すごい事が分かった。
なのに私はこんなにも冷静。
まだまだ熱い夏休みのある日。私の彼氏が、18と言う若さで死んだ……。
私は今相馬家と彼の名字がかかれた看板の前にいた。
:07/10/31 21:53
:SO903i
:☆☆☆
#228 [向日葵]
「薫(かおる)?行かないの?」
友達の実砂(みさ)が私に話しかけた。
私は空を見上げた。
だって……死に方があまりにも過ぎるんだもの……。
私、彼は相馬伊月(そうまいつき)は、かなりの女好きだった。
同学年の女子といつも楽しそうにつるむのを見る度、いつ浮気するのかと気が気で無かった。
そんな彼だけど、意外に浮気はしなかった。
口癖は「薫以外はどうでもいいんだから。」だった。
:07/10/31 21:58
:SO903i
:☆☆☆
#229 [向日葵]
それを信用したのが馬鹿だったのか、彼は浮気の最中に死んだらしい。
噂によれば、デート中に車が浮気相手の女に突っ込むのを助けたと言う正に英雄のように死んでいった。
「実砂。私は行くべき……?」
「……うん。行こうよ。」
私は頷いて足を進めて行った。
葬式場にはたくさんの人がいた。
私は周りの人に頭を下げながら奥へと進んで行った。
そして奥へ入った途端……
「ごめんなさい……!!あたしのせいです!!」
:07/10/31 22:02
:SO903i
:☆☆☆
#230 [向日葵]
見ると伊月が寝ている……いや、横たわっている布団に女の子がうずくまって、泣いていた。
「貴方のせいじゃないですよ……大切な人を守れたんならあの子も本望よ……。」
女の子を慰めるように、伊月と思われるお母さんはそう言った。
本命がここにいるとも知らず……。
いや、本命はあちらかもしれない。
私はいつからか浮気相手になっていたのかもしれない……。
「実砂……。私帰るよ。」
「え……薫……っ。」
:07/10/31 22:13
:SO903i
:☆☆☆
#231 [向日葵]
スタスタ歩く私を実砂は追いかけてきて、慌てて私を止めた。
「薫!お線香あげるだけでもしよっ?言いたい事あるの分かるけど……。」
「なんで?裏切られたのに私が惜別する訳ないじゃない。」
結局はそう言う事だったのだ。
私だけが騙されて、真実を聞けないまま勝手にいなくなられた。
涙は出なかった。
ううん。出したくなかった。出る訳もなかった。
私が泣く意味なんて、どこにも無いのだから。
:07/11/01 00:52
:SO903i
:☆☆☆
#232 [向日葵]
「じゃあね薫。」
「ウン。またメールするよ。」
実砂と別れて、私は家へ向かった。
着いてから、まるでそこら辺に遊びに行ってたように「ただいま」と言い、部屋に戻った。
着ていた制服を次の始業式の為にハンガーに綺麗にかけた。
そしてお葬式だからと思い、置いていった携帯を持ってベッドに仰向けにダイブ。
開けば2人で撮った写メの待ち受け。
しばらく黙ってみていた私は、伊月に関係あるアドレス、番号、写真を全部消した。
:07/11/01 00:56
:SO903i
:☆☆☆
#233 [向日葵]
伊月なんて人は、いなかったかのように…………。
暑い夏が始まった。
蝉はうるさい。
でも空は綺麗。
何もこんな天気の良い日にお葬式なんて…………。
「バイバイ。」
私は伊月に別れを告げた。
青い空に、入道雲が見えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
その夜。夢を見た。
いや、夢かどうかも分からない。
もしかしたら現実?
:07/11/01 00:59
:SO903i
:☆☆☆
#234 [向日葵]
そこは私の部屋。
時は夜。丁度寝ている時間だ。
ベッドでいつも通り寝ていた私は、なんとなく意識が起きた。
時計を見ればまだ1時。
「薫……。」
少し視線を横にすると、そこには伊月がいた。
私が病気に伏せっているみたいに、すぐそこに座って頭を撫でている。
でも撫でられている感触は全く無い。
「い……つき……。」
……。違う違う。そうじゃない。アンタはもういないし、ここに来るのも間違ってる。
:07/11/01 01:03
:SO903i
:☆☆☆
#235 [向日葵]
未練があるの?
それなら、大事に出来なかった、あのアンタの元で泣いてたあの彼女の元に行きなさいよ。
「出ていけ。」
それだけ言うと、私の意識は彼方へ行って、気づけば朝だった。
首元に手をやってコキコキ骨を鳴らす。
結構……リアルだったなぁ……。
でも所詮夢は夢だ。
もう出てこないだろう。
ぼーっとしていると携帯が鳴った。
実砂からだ。
:07/11/01 01:07
:SO903i
:☆☆☆
#236 [向日葵]
「薫。お葬式行こう?今日は通夜だけど一目相馬君に会ってたほうがいいと思うよ?」
「いいから。もう伊月の話なんかしないで。行きたいなら実砂1人で行きなよ。」
「……知らないよ。後悔しても……。」
後悔?
なんで私が後悔なんてしなくちゃいけないの。
後悔する事なんて無い。
私は裏切られたと思う事で頭が支配されていた。
伊月の“い”の字も見たくないし聞きたくない。
もう知らない。
:07/11/01 01:11
:SO903i
:☆☆☆
#237 [向日葵]
そして次の日。
生身の伊月に会う事は出来なくなった。
伊月が火葬場へ向かったねだ。
今頃煙になって、入道雲に紛れてるのかなって、ベッドに寝転びながら空を見上げて思った。
本当のバイバイだ。
でもやっぱり私は泣かなかった。
冷たいかな。
冷たいよね。
なら聞くよ。
もし貴方の恋人が、こんな死に方をしたら、貴方達はどう思うの?
:07/11/01 01:15
:SO903i
:☆☆☆
#238 [向日葵]
―――――――……
その晩の事だった。
やっぱり夢か現実かわからない場所に私はいた。
そしてまた同じくシチュエーション。
伊月は私の頭を撫でている。
悲しそうな顔をしながら。
哀れみでそんな顔をしてるの?だったらいらないから。いちいち私の夢の中まで来ないでよ。
目を瞑って、彼方へ行く瞬間、伊月が私のおでこに唇を触れた。
それは頭を撫でているのと同じ様に感触なんかなかったけど、でも何故か分かった。
:07/11/01 01:19
:SO903i
:☆☆☆
#239 [向日葵]
「ゴメンナ……。」
確かにあれは、伊月の声だった。
目が覚めるとなんだか体がダルかった。
体をあちこちに伸ばしてスッキリさせようとしても、体の芯が重い……。
そう感じながら、私はおでこに指先を当てる。
どうしてそんな事するんだろうか。
私なんてどうでもいいんじゃないの?
私に飽きたから浮気したんでしょ?
なら何故毎晩現れるのよ……っ。
訳が分からない……。
:07/11/01 01:23
:SO903i
:☆☆☆
#240 [向日葵]
その日は珍しく雨だった。体がダルいのはそのせいかもしれない。
今日は私んちで宿題をやる日。実砂が雨の中やって来た。
傘はさしてるものの風が強いせいか実砂はあちこち濡れていた。
「タオルいる?」
「あ、ゴメン。ありがとう。」
拭きながら私の部屋に入り座る。
音楽でもかけよっかと、コンポから音を流す。
この曲いいよねーと喋りながら勉強の用意。
:07/11/01 01:28
:SO903i
:☆☆☆
#241 [向日葵]
実は勉強する気なんかなかったりする。
実際に友達と勉強するのははかどらないし。
でも私達はこれでも一応受験生。
行きたい大学の合格圏内にはいるけど油断してはいけないと親からの叱咤。
こんな口実をつけない限り遊ぶなんて出来ないのだ。
「自由登校になったらバイトする?」
実砂が言った。
「私はやらないな。家でゴロゴロしときたい。」
「ハハ!薫らしい!きっと……。ハッ……。……。」
:07/11/01 01:32
:SO903i
:☆☆☆
#242 [向日葵]
その続きなら安易に想像出来る。
実砂は伊月の事を言いたいのだ。実砂はいい子だから、気を遣ってくれているらしい。
「いいよ。もう気にしてないから。私そう言うの苦手だし。」
「う……うん。」
沈んでしまった実砂に、私からワザと伊月の話題を出した。
「そういえばね、この頃毎晩夢に伊月が出てくんの。」
「現実とかじゃなくて?」
「私霊感なんかないもの。見える筈ないでしょ。」
:07/11/01 01:36
:SO903i
:☆☆☆
#243 [向日葵]
実砂は少し黙って、真剣な目で私を見つめた。
「ねぇ薫。私やっぱりおかしいと思う。相馬君はきっと薫を裏切るような人じゃないよ。薫達見てたら分かる。あの人、そんな人じゃない。」
私は見つめ返しながら何も言わなかった。
しばらくして息を吐いた。
「今更何弁護しても遅いよ。それは本当かもしれないじゃない。私や実砂が見てる伊月が伊月じゃないんだし。」
実砂は少しうつ向いて悲しそうな顔をして黙ってしまった。
その顔には「どうしてそんな事言うの?」と書いてある。
:07/11/01 01:42
:SO903i
:☆☆☆
#244 [向日葵]
私は苦笑いして実砂の頭を撫でやった。
「私はこんなだけど、実砂は私みたいになったら彼氏を信じてあげな……。」
すると
キンコーン
今は母さんはいない。
私が出なきゃならないんだった。
少しダルめに階段を降りて、玄関に辿り着いた。
「ハーイ?」
ガチャっとドアを開けると、何だか見覚えのある人が立っていた。
:07/11/01 01:45
:SO903i
:☆☆☆
#245 [向日葵]
女の子は丁度私くらいの歳だった。
私の顔を見るなりなんだか脅えたような、悲しそうな顔をして私を見た。
「あ……あの……。」
「……?……―――!!」
この声……っ!!
あの人だ……。泣き叫んでうずくまっていた人……。
「こんにちわ……。田中知(たなかさと)と言います。」
「はぁ……。何のご用で。」
人間が出来てない私は、彼女に気づくなり対応を雑にした。
:07/11/01 01:49
:SO903i
:☆☆☆
#246 [向日葵]
――――

――――
今日はここまでにします
>>22に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします


:07/11/01 01:51
:SO903i
:☆☆☆
#247 [向日葵]
「相馬伊月君の事で、お話があります。」
ああやっぱり。
予想通りと言うかなんと言うか……。
「知ってますから。貴方とデート中にかばって死んだんですよね。なんで話す事はありません。どうぞお帰り下さい。」
ドアを閉めようと、ドアノブを握った。
「違うんですっ。」
その言葉に私の動作は停止した。
違う?一体何が違うと言うんだろうか。
:07/11/01 18:58
:SO903i
:☆☆☆
#248 [向日葵]
田中さんを見ると、彼女は目に涙を溜め始めていた。
でも流れないように必死に我慢してる様子だった。
「ごめんなさい……。全部私が悪いんです……。」
「……?」
―――――――
――――――――……
・・・・・・・・事故当日
「伊月お願い待って!」
「しつこいって。もういいだろ?」
私は、伊月の元カノでした。どうしても彼が忘れられなくて、あの日、思いきって彼に会いに行ったんです。
:07/11/01 19:02
:SO903i
:☆☆☆
#249 [向日葵]
でも彼は何度も言いした。
「彼女以外はどうでもいいから。」
私は悔しくなってムキになり、車が結構多い道路へと飛びだしました。
「話すらしてくれないなら、私車にひかれて死ぬから。」
ただの脅しでした。
彼が話をしてくれると言うのならすぐに戻ろうと思って。
「分かったから……。話ならするから。早く戻れ。」
やっと許可を得た私は彼の元へ戻ろうと1歩踏み出した時でした。
:07/11/01 19:10
:SO903i
:☆☆☆
#250 [向日葵]
ファァァァ……ン!!
猛スピードで車が突っ込んで来たんです……。
―――――
――――――……
私は目を見開いたまま、彼女を見つめた。
「もし勘違いなさっているならば、彼の元に手を合わせに行ってあげてください。本当に……すいませ」
「帰ってください。」
自分でもびっくりするぐらい静かな声だった。
「気が、済まないのなら、好きなだけ殴っても……っ。」
:07/11/01 19:14
:SO903i
:☆☆☆
#251 [向日葵]
「殴って伊月が帰って来るならしたたか貴方を殴ってる!!」
彼女はびくっとしていた。
私は玄関の床をずっと見ていた。
そうでもしないと本当に彼女を殴ってしまいそうだから。
「薫?どうしたの……?」
私の声で異変に気づいた実砂が上から降りて来た。
でも私はその声すら聞こえない。
「ど……うぞ。帰ってください……。」
間を開けて、田中さんは一礼すると走って帰って行った。
:07/11/01 19:20
:SO903i
:☆☆☆
#252 [向日葵]
なんでよ……どうして今更そんな真実告げてくるのよ……。
どうして……
どうして……っ。
「薫……。」
「ゴメン実砂……。1人に……させて……。」
フラフラしながら私は部屋に行った。
その後ろで実砂はついてきて、荷物を取ると「バイバイ」と小さな声で言った。
私はベッドに横たわった。ただ天井を見上げる。
伊月……。
何で一言も言ってくれなかったの?
:07/11/01 20:22
:SO903i
:☆☆☆
#253 [向日葵]
言ってくれたら、私助けたのに。助けれたかもしれないのに。
今……伊月と笑ってるかもしれないのに……。
[後悔してもしらないよ。]
実砂の言葉を思い出した。
呆気なく煙となってしまった伊月。最後に見た生身の伊月は一般的によく言われる、ただ眠ってるようにしか見えなかった。
触れれば良かった……。
冷たくなっていたとしても、その笑顔が見れなくても……最後に触れるのが、私なら……。
:07/11/01 20:26
:SO903i
:☆☆☆
#254 [向日葵]
今、思っても、伊月に触れれる事は、もう…………ない。
「……ひっ……ゴメ……。」
伊月、ごめんなさい。
いつも言ってくれてたのに。結局私は伊月を信じてなかったんだ。
信じて欲しかったよね……伊月。
伊月……伊月……。
名前を呼んでも、もう返事してくれないんだね……っ。
「伊月ぃ……っ!」
もう一度……声を聞かせて……っ!
:07/11/01 20:30
:SO903i
:☆☆☆
#255 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「……ん……。」
目を開けると部屋は暗くなっていた。
いつの間にか晴れた空からは月明かりが差し込んでいる。
今何時だ……?
携帯を見ると、12時を差していた。
今日はもうこのまま寝てしまおう。
明日の朝にお風呂入ればいいや。
カタ……
「ん……?」
:07/11/01 20:33
:SO903i
:☆☆☆
#256 [向日葵]
携帯から目を離して顔を上げると、なんだか姿が見えた。
「――――!」
伊月だった。
私はまた夢を見ているんだろうか。
……いや、今は分かる。前も、前の前も、あれは夢じゃなかったんだ……。
伊月は私にスー……と近寄ると、いつものように頭を撫でた。
幽霊が出て怖い筈なのに、私は全然怖く無かった。
涙がまた出てくる。
「伊月……ゴメンネ……っ。」
:07/11/01 20:38
:SO903i
:☆☆☆
#257 [向日葵]
伊月はただ優しく柔らかく微笑んでいた。
「ゴメンネ……何も出来なくて……っ!」
伊月の透けている手が、頬に伸びる。
おそらく涙を拭こうとしてくれているんだろう。
でも、当たり前かの様に、涙を拭く事はおろか、頬に触れるなんて事は出来ないのだ。
その事実に、伊月は悲しそうに顔を歪めた。
私は包む様にしている伊月の手の上から手を置いた。
そして頑張って微笑んだ。
:07/11/01 20:42
:SO903i
:☆☆☆
#258 [向日葵]
「空で……見ててね……私の事……。」
伊月はまた微笑むと、私の唇に触れた。
目を閉じて、その感触を確かる。
次に目を開けた時には、伊月の姿はもうなかった……。
―――――――――……
数日後。
私は実砂と一緒に伊月の家にお線香をあげに行った。
遺影の伊月を見て、その笑顔に少し胸が軋んだけど、「空で元気でね。」と手を合わせて伊月宅を出た。
:07/11/01 20:47
:SO903i
:☆☆☆
#259 [向日葵]
―――――

―――――
今日はここまでにします
>>22に感想板がありますんで良ければ感想お願いします

:07/11/01 22:33
:SO903i
:☆☆☆
#260 [向日葵]
帰り道、偶然通りかかったのは伊月の事故現場だった。
事故があった近くのガードレールには花やジュースがお供えしてあった。
「伊月……。」
伊月……痛くなかった?苦しくなかった?つらくなかった?
寂しく……なかった?
その時、フワッと温かい風が私を包んだ。
伊月が「大丈夫だよ。」って言ってるみたいだった。
:07/11/02 15:03
:SO903i
:☆☆☆
#261 [向日葵]
その風がなんだか優しく感じて、突然胸がいっぱいになって、堪えきれずに涙が頬を流れていった。
「薫……。」
夏休み。
私は人を愛していました。
この先も愛する事を忘れず、伊月の分まで生きて行く事を誓います……。
ありがとう……。
伊月……。
:07/11/02 15:06
:SO903i
:☆☆☆
#262 [向日葵]
ビー玉7*温かい雪*
ウチの学校は雪がよく降る地域にあって、冬になればそれはそれは沢山の雪が辺りを覆い尽くしていた。
そんな俺の学校には、最近こんな事を皆で言い合う。
“雪女を怒らすな吹雪になるぞ”
:07/11/02 15:10
:SO903i
:☆☆☆
#263 [向日葵]
かと言って、本当に雪女がこの学校にいる訳じゃない。
雪女とはあだ名のようで本名。
呼ばれているのは、先日転校してきた橘 雪女(たちばなゆきめ)の事である。
――――――……
「うっす燈立!」
「おいーっす!今日もクソさみぃーなぁ!」
俺の名前は日下 燈立(くさかひりゅう)。ついこの間17歳になりました!イッエーイ!!
寒いながらも俺は雪が大好きだ。雪合戦とかかまくらとか作っててワクワクするしっ!
:07/11/02 15:20
:SO903i
:☆☆☆
#264 [向日葵]
「放課後雪合戦する奴手ぇあっげて――!」
と勢いよく手を上げた時だった。
バシッ!
何かに当たってしまった。「ん?」と思っていると、手を上げようとしていた奴らが一気に青ざめた。
「痛い……。」
静かに非難の声が聞こえたので、俺は右を見た。
そこに立っていたのは、紛れもなくあの橘雪女だった。
橘は当たったであろう自分の腕を、白くて細い指先でさすっていた。
:07/11/02 15:25
:SO903i
:☆☆☆
#265 [向日葵]
男友達は俺をささーっと連れ戻した。
「アハハハ!ゴメンネ橘さん!」
「コイツにはよーっく注意しとくから!」
橘は切長の目で俺達を見ると、興味が無くなったみたいに突然ふいって自分の席まで歩いていってしまった。
「ふー……アイツ気味わりぃよなぁ……。」
「また今日も吹雪になるとこだったぜぇ……。」
「……そっかなぁ……。」
俺は別に橘の事を気味悪いとか、怒らせたら吹雪になるとか、気にしていなかった。
:07/11/02 15:30
:SO903i
:☆☆☆
#266 [向日葵]
「燈立は呑気だからな……。でもマジヒヤヒヤするから少しは気をつけれぇ。」
「あーハイハイ。」
俺は橘を見た。
存在感があるようで無い彼女は、もともと髪の毛の色素が薄いらしく、茶色と言うよりも少しグレーが混ざっている。
そして腰ぐらいまである長い髪は綺麗なサラサラストレートだ。
小柄で儚げ。
だから余計に“雪女”扱いされるんだろうな……。
俺はそれに、哀れみさを感じた。
:07/11/02 15:33
:SO903i
:☆☆☆
#267 [向日葵]
―――――

―――――
キリます
>>22に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

:07/11/02 15:36
:SO903i
:☆☆☆
#268 [向日葵]
―――――……
「やっべー!カバンー!」
雪合戦をしていたのはいいものの、カバンを持って来るのを忘れていて3階の教室まで戻るハメになってしまった。
外も暗くなってきたし、早く帰んないと母ちゃんが恐い……。
この前も9時とかに帰ったらゲンコツくらったもんなぁ……。多分母ちゃんのゲンコツが世界一痛ぇよ……。
「ん……?」
教室近くまで来ると、まだ電気がついていた。
:07/11/03 14:59
:SO903i
:☆☆☆
#269 [向日葵]
誰かいるのか……?
戸を開けると、窓側に誰か寝ていた。
あの姿は……。
そろーっと近づくと、気づいた。
橘雪女だ。
これだけ近くで見るのは初めてだ。
見れば見るほど
「綺麗だなー……橘って……。」
まつ毛長いなぁー。
肌も透き通りそうなぐらい綺麗……。
ほっぺ柔らかそうだなぁ。
ぼんやり思いながら指先でそっと顔に触れた。
:07/11/03 15:08
:SO903i
:☆☆☆
#270 [向日葵]
パチッ
「おわぁっ!」
いきなり橘が目を開けたので、驚いた俺は思いっきり飛び退いた。
橘はまだ眠いのか目をショボショボさせながら手で擦っている。
「ゴメン!別に俺、何もしてないからね!」
「別に何とも思ってないわよ。」
そう言いながら橘は帰る支度をしている。
橘の雰囲気に似てる少し水色が入った白いマフラーを巻くと、カバンを持って席を立った。
:07/11/03 15:13
:SO903i
:☆☆☆
#271 [向日葵]
「あ、ねぇっちょっと待って!1人で帰るの?」
「そうだけど?」
そうだけどって……。
こんな暗い中、ずっと1人で帰ってたのか?
「なら一緒に帰ろう?送るから!」
俺は急いでカバンを取りに向かった。
「……余計な事しない方がいいと思うわよ。」
教室に彼女の澄んだ声が小さく響く。
橘を見ると、ドアの方を見たままだった。
:07/11/03 15:17
:SO903i
:☆☆☆
#272 [向日葵]
「貴方も知ってるんでしょ?私が怒ると吹雪になるって。もし帰りに貴方が私を怒らせて吹雪いてしまったら」
「吹雪になんかならないよ。」
橘は少しびっくりしたのか、目を見開いて俺を見た。
「俺知ってるよ?吹雪なった日って、その日の天気予報大抵天気悪い事伝えてるもん。だから俺、信じてないけど?」
橘は黙ったまま俺を見つめて、しばらくするとマフラーを口元まで上げて呟いた。
「貴方……変な人。」
:07/11/03 15:22
:SO903i
:☆☆☆
#273 [向日葵]
その白い頬が、うっすら赤くなっているのに俺は気づいた。
どうやら彼女は感情表現が苦手らしい。
それがなんだか可愛く感じた。
「さ、帰ろっかっ。」
俺も上着とマフラーを巻いて、帰る準備をした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「さっみぃーなぁー。」
橘と歩きながら、雪で濡れている道を歩いた。
「ねぇねぇ。雪女って事はやっぱり生まれはここら辺なの?」
:07/11/03 15:27
:SO903i
:☆☆☆
#274 [向日葵]
「もっと北の方。ここよりも寒いわ。」
「そっかー。綺麗な名前だよな。」
そう言うと橘は無言になった。
そしてまたマフラーで口元を隠す。
照れた時に口元を隠すのが彼女の癖らしい。
それに気づいた俺はうっすら微笑んだ。
すると橘がマフラー越しに呟いた。
「貴方だって綺麗な名前じゃない。」
「俺?どこが?」
「燈立。名前の中に火が入ってる。とっても……あったかそう。」
:07/11/03 15:33
:SO903i
:☆☆☆
#275 [向日葵]
目を細めて少し笑う彼女に、俺はドキッとした。
自分の名前を誉められた事は初めてだったし、何より橘の笑顔を見るのも初めてだった。
「じゃあ俺達の名前足して2で割ったら丁度いいかもね!」
「そうかもね。」
ハァーっと、白い指先に息をかけた。
今思えば橘はこの寒いのに手袋をしていない。
「寒い?」
「少しね。」
俺は口元にある彼女の手を握る。
:07/11/03 15:37
:SO903i
:☆☆☆
#276 [向日葵]
俺の行動に彼女は目が点になった。
じっと俺の顔を見る。
「俺手袋してるし。この方があったかいでしょ?」
今度は橘の行動よりも、顔が赤くなる方が早かった。
白い肌だから余計に赤いのが分かる。
「やっぱり貴方変だわ……。」
橘にとって、“変”って意味は照れ隠しの1つで、本当は“ありがとう”って言いたいのかもしれない。
そう思うと、また俺は微笑んだ。
:07/11/03 15:42
:SO903i
:☆☆☆
#277 [向日葵]
何分か歩くと
「ここまで来たらすぐだから。どうも。」
「そっか。手袋いる?」
橘は首を振った。
繋いでいた手を離してしまうのがなんだか寂しかった。繋いでいる手を俺はただじっと見つめる。
「……。離してもらってもいいかしら……?」
「ハッ!あ、ゴメン!!じゃあまた明日な!」
「ウン。じゃあ。」
そう言ってサラサラの紙をフワッとなびかせて彼女は帰って行ってしまった。
:07/11/03 16:15
:SO903i
:☆☆☆
#278 [向日葵]
やっぱり“雪女説”は嘘だったんだ。そりゃ本当だったら驚いてしまうけど、世界って広いからなぁ。
「橘かぁ……。」
意外と不器用でそんでもって優しい子みたいだな……。勘違いされてるのが可哀想なくらい……。
しばらく俺は橘と別れた場所で橘についてを考えてから家へ帰った。
帰ると7時半を回っていて、やっぱり母ちゃんにはゲンコツをくらったけど、痛かった反面、橘にこの話したら笑ってくれるかなとか考えていた。
:07/11/03 16:22
:SO903i
:☆☆☆
#279 [向日葵]
―次の日―
今日はいい天気だけど相変わらず寒くはあった。
この状態で上履きを履くのは少し辛い。足が冷えるからだ。
自分のクラスの所までいると、後ろから肩を叩かれた。
「おっはよ!燈立っ!」
「おはよ棗(なつめ)。」
棗は同じクラスの女の子。元気が良くて俺とは仲良くしてくれてる。
「ねねね。昨日あの雪女と帰ったって本当?」
「え?何で知ってんの?」
「見た子がいるみたいよ。来る時に何人か噂してた。」
:07/11/03 16:29
:SO903i
:☆☆☆
#280 [向日葵]
「ふーん。」
噂なんて気にしない。
今回の橘の件でよく分かった。
噂にもデタラメな噂があって、本人に関わってみなくちゃ分からない事もあるものだ。
「ふーんて。まさかアンタ橘さんが好きになったの?!」
「な!な、棗に、そんな事関係無いでしょ!」
橘を?!だって昨日の今日だぞ?!まっさかぁー!!
「雪女は男を虜にするからねー。燈立は馬鹿だからすぐ引っかかりそー……。」
:07/11/03 16:39
:SO903i
:☆☆☆
#281 [向日葵]
俺は少しムッとしながら棗に言った。
「ってかさっきから雪女雪女って!“ゆきおんな”じゃなくて“ゆきめ”だからっ!!」
すると棗はプクッとほっぺを膨らませた。
「ハイハイ!分かりましたーだっ!燈立なんか凍死しちゃえ―――っ!!」
と言って先に行ってしまった。
ったく棗の奴、なんなんだ?
階段を上がりながら俺は棗に言われた事をグルグル考えいた。
:07/11/03 16:44
:SO903i
:☆☆☆
#282 [向日葵]
――――――

――――――
キリます
>>22に感想板がありますんで良ければ感想お願いします


:07/11/03 16:45
:SO903i
:☆☆☆
#283 [向日葵]
:07/11/03 17:40
:SO903i
:☆☆☆
#284 [向日葵]
確かに昨日橘と初めてちゃんと話して、橘を知った事は大きい。
案外照れ屋だとか、笑ったら可愛いとか。
でもだからってさ――!!いきなりそんな好きとか……ねぇ?!
考えて頭がパニックのまま俺は教室のドアを開けた。
「燈立ちぃーっす!」
「ちぃーっす。」
いつものメンバーが俺に寄ってきた。
「なぁ燈立。今度クラス全員で遊ばねぇ?」
「クラス全員?」
:07/11/04 01:59
:SO903i
:☆☆☆
#285 [向日葵]
仲間の奴らが更に俺に詰め寄る。
「だって俺らもう17だぜ?なのにクラスの大半が彼女無し。それって悲しくね?実際このクラスの女子って結構可愛い子いるじゃん?だから親睦会ってのは上辺。裏は合コンて事。」
あー皆彼女が欲しい年頃なのね。なんとまぁ切実。
「いいんじゃない?カラオケとかボーリングとかさ。」
ガラガラガラ
あ。
「橘っ!」
:07/11/04 02:04
:SO903i
:☆☆☆
#286 [向日葵]
橘が来たので俺が橘の元へ行くと、クラスの皆が一斉に「え?!」って言った。
声をかけられた橘も少し驚いてるのか、数歩進んでから足を止めた。
「おはよっ!」
「……おはよう…。」
今日も手袋をしていない。指先が寒さのせいで赤くそして白くなっていた。
「昨日は大丈夫だった?」
「はぁ……。大丈夫だったわよ。」
「そっか。良かった!」
にこっと笑うと、橘はうつ向いた。知ってる。次に顔を上げた時は
:07/11/04 02:10
:SO903i
:☆☆☆
#287 [向日葵]
「心配なんて……いいのよ。」
ほら真っ赤。照れてる。
俺はなんだか嬉しくなってまたにこっと笑った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
親睦会もとい合コンは土曜日の模試の後でと決まった。
一旦皆着替えて駅前のカラオケに行くらしい。
「なぁ燈立!今日校庭でかまくら作らねぇ?!」
「かまくら?つく……っ。ご、ゴメン!今日は用事があるから無理だわ!」
:07/11/04 02:14
:SO903i
:☆☆☆
#288 [向日葵]
「なんだよー。んじゃ今日は帰るかー。」
俺はやる事があるんだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
掃除を終えて、教室に戻った。
外から見ると電気がやっぱりついてる。
ニマァッとして、俺はドアを開けた。
「たっちば……なぁ……?」
そこには、昨日と同じ場所にいる橘と棗がいた。
棗は俺が入って来るとハッとして急いでカバンを持った。
:07/11/04 02:18
:SO903i
:☆☆☆
#289 [向日葵]
まだ怒ってるのか、棗は黙って俺の隣をすり抜けて行ってしまった。
頭にはてなを浮かべながら橘の方を見ると、橘がじっと俺の方を見ていた。
「な……なに……?」
「……。いや、早くドアを閉めてくれないかなと。教室の暖が逃げちゃうから。」
あ……なるほど。
後ろ手にドアを閉めて、橘の前の席に座りに行く。
橘は一連の動作をただ黙って見ていた。
「へへっ。寒いな。」
:07/11/04 02:22
:SO903i
:☆☆☆
#290 [向日葵]
すると橘は薄く笑った。
その笑顔に心臓が跳ねる。
ア……アレ……?
橘は無言でポケットからカイロを出すと、机の上に置いてる俺の手の甲にそれを置いた。
とても暖かい。
「あ、ありがとう。カイロあったんだ。」
「本当は昨日もあったの。でも帰る時にはひんやりしちゃっててね。」
昨日遅くまでいたもんなー……ってそうじゃない!
俺にはやる事があるんだ!
:07/11/04 02:26
:SO903i
:☆☆☆
#291 [向日葵]
「橘もさ、今度の親睦会行かねぇ?!」
橘は言わなきゃ来なさそう。だから俺は言った。
橘には是非来て欲しい。それで皆に橘の良さを知って欲しい!
沈黙が流れて、少し目を伏せてから橘が言った。
「誘ってくれてありがとう。……でも私、学校でする事あるから。ごめんなさい。」
「そうなの?!なら俺も手伝うよ!」
「中心の貴方がいなかったら友達が寂しがるわよ?それに……私にそんなに気を遣わなくて、いいから。」
:07/11/04 02:32
:SO903i
:☆☆☆
#292 [向日葵]
―――ズキン
何故だろう。
とても優しい顔をして、言葉も柔らかなのに……それはまるで「ほっとけ」と言われてるみたいで……。
「そ……っかぁ……。ウン。分かった。」
なんだか……悲しかった。
「じゃあさ、今から一緒に帰って?それならいいでしょ?」
「えぇ……まぁ。じゃあ。帰る?」
「うん!」
俺、橘の良さを知ってもらいたいなんて……嘘だ。
:07/11/04 02:36
:SO903i
:☆☆☆
#293 [向日葵]
本当は橘がどんな服着るかとか、どんな歌歌うのかとか楽しい橘と俺の時間を想像してたんだ。
「ハァー……さむ……。」
また昨日みたいに彼女は指先に息を吐き暖めようとする。
俺はそれを見て、何も言わずに手を握った。
橘は驚き、そして照れて、黙ってうつ向いた。
帰り道、俺達は何も言わずに帰った。
でもその無言の道のりは心地悪いものではなかった。
昨日の別れるトコに来て「じゃあ。」とだけ言葉を交した。
:07/11/04 02:41
:SO903i
:☆☆☆
#294 [向日葵]
橘の後ろ姿を見ながら俺は分かった。
俺は……橘が好きだ。
――――――――……
―土曜日―
「……。はい終わりー。後ろから集めてー。」
ダルい模試が終わり、俺は体一杯背伸びした。
あ゙――――終わったど―――!
「さって!燈立!行こうぜぇっ!」
「え、お、おう。」
ちらっと橘を見た。
橘ははしゃいでる皆をよそに、静かに机にカバンを置いたままどこかへ行ってしまった。
:07/11/04 02:44
:SO903i
:☆☆☆
#295 [向日葵]
橘にしたら、俺なんてどうでもいいのか……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
着替えて駅前に集合した俺達はカラオケへと行った。結構人数はいて、大部屋を借りなければならなかった。
「燈っ立!」
隣に棗がやって来た。
「おう。何?」
「何か元気なくない?」
「別に?」
誤魔化しながらメロンソーダーをグビッと飲み、うた本をペラペラめくる。
:07/11/04 02:48
:SO903i
:☆☆☆
#296 [向日葵]
するとマイクを持ってる奴が言った。
「そーいえば。やっぱり雪女来なかったな!」
クラスの皆がアハハハハと笑う。
果たして何がそんなにおかしいのやら……。
「来られても空気悪くなるってー!」
「怒らせて帰り道吹雪いたら嫌だしなぁ!」
「来たらマジKYだよなー!アハハハハ!」
バリンッ
皆の笑いが止まった。
俺は自分で知らない内に手に力を入れていてグラスを割ってしまっていた。
でもそんな事が大事なんじゃない。
:07/11/04 02:53
:SO903i
:☆☆☆
#297 [向日葵]
「お前ら……最低だな……。」
それだけ言って、俺は脱いでた上着を持って部屋を出た。
「ハァハァ……待って燈立!」
エレベーターに続く道で、後ろから棗が声をかけた。
「ゴメン!」
「別に、棗が謝る事じゃないだろ。」
「違うの!……私なの……橘さんに、カラオケ来るなって言ったの。」
俺は口パクで「え。」と言った。
だって橘は用があるから行けないって……。
:07/11/04 02:56
:SO903i
:☆☆☆
#298 [向日葵]
「私……燈立が好きっ。だから橘さん来たら、燈立絶対橘さんとずっと一緒にいると思って……。ゴメン!」
あの時……あの言葉……。
[私に気を遣わなくていいから。]
全部、棗の為に……。
俺はゆっくり棗に近寄って、頭を撫でた。
「ありがとう。ゴメン……。」
エレベーターに乗って、降りた後ひたすら走った。
学校まで。
:07/11/04 03:02
:SO903i
:☆☆☆
#299 [向日葵]
橘の1つ1つの仕草や言葉が、俺はすごく好きで、それはまだほんの一部分だろうけど、これからもっともっと見てみたい……。
「はぁ……着いた……。」
学校に着いたのはいいものの、これからまだ3階まで上がらなければならない。そう思うと、まだ道のりは長い……。
ふと顔を上げると……
「……あ。」
俺の教室の電気がついていた。
いる……橘はまだいる。
:07/11/04 03:06
:SO903i
:☆☆☆
#300 [向日葵]
急いで3階まで向かう。
「ハァハァ……ッハァッ!」
橘。
俺もっと橘に近付きたい。
近付いても……
ガラッ!
いいかな?
ドアを開けると、橘が帰ろうと立ち上がった所らしかった。
「ハァ……ハァ……。」
「え?日下君?」
不思議がってる橘をよそに、俺はドンドン橘に向かって行った。
:07/11/04 03:10
:SO903i
:☆☆☆
#301 [向日葵]
息が整うのを急かすように何度も深呼吸した。
何回目かにやっと落ち着いてきた。
「大丈夫?座る?」
「ううん。いい。」
教室に静寂がやって来る。俺達はただ見つめ合ったままだ。
橘までの距離はあと3歩。
「俺橘が好きだ。」
橘はただ瞬きをしていた。俺の言葉に動じていないかのように。
でも俺はそんなの気にせず続ける。
「ついこの間喋っただけで何言ってんだって思うかもだけど……。……でも、いくら考えてもやっぱり橘が好きなんだ。」
:07/11/04 03:15
:SO903i
:☆☆☆
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