-Castaway-
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#3 [主◆vzApYZDoz6]
「また夫婦で登校ですかー?w」
「仲いいなー、羨ましいw」

教室に入ると、いつも通り2人へ冷やかしの言葉が飛ばされる。
春になれば3年目に入る学校で、京介と藍の2人は公認のカップルになっていた。

京介「こいつが勝手に待ってたんだよ!」
藍「いつも一緒に行ってるんだし待ってたっていいじゃない!」
京介「うるせぇよ!」

「もうこいつらいじるのも飽きてきたなーw」
「毎回言うこと同じだもんなw」
「京介もいい加減素直になれよw」
京介「うるせぇよ!散れ」


2人を冷やかしていた数人が笑いながらそれぞれ席に戻る。
京介も決してその気が無いわけではないが、朝のこういった冷やかしも京介が素直になれない一因だろう。
それは授業中も同じで――

藍「今日も教科書持ってきてないんでしょ?見せてあげる」
京介「いいって!机ひっつけんなよ」
「また夫婦喧嘩ですかー?w」

すかさず野次が飛ぶ。
席替えしても毎回京介と藍は隣同士だ。

⏰:07/12/15 17:13 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#4 [主◆vzApYZDoz6]
-放課後-

藍「さっ、帰ろ京ちゃん」
京介「いいって一緒じゃなくても」
藍「でも家まで道一緒だし…」
「そうそう、一緒なんだし一緒帰れw」
京介「うるせぇ!もういいよ、帰るぞ」

藍は頷きながら、やはり早足で行く京介に付いていく。

藍の家は京介と同じマンションの、同じ階の、京介の向かいの部屋だ。
電車どころか家のドアを開ける時も同じなので、京介もふてくされながらも毎回一緒に学校に行き、一緒に家に帰っていた。

その2人の住み慣れたマンションの1階ので、京介が自宅の郵便受けを開けている時。

藍「ねぇ…あんなとこにドアなんかあったっけ?」

藍が階段の隣を指差して京介に言った。
京介が藍の指の先を見る。
このマンションはエレベーターが無く、階段が2部屋毎に部屋に挟まれてあるだけだ。
階段は集合住宅によくあるような、階毎に踊り場を挟んで折り返し昇るタイプ。京介のマンションは、1階の階段の始まりの横-地下があるならば、さらに降りる階段がある場所です。-が壁になっていて何もない。

藍はそこを指差していた。

⏰:07/12/15 17:36 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#5 [主◆vzApYZDoz6]

京介「あれ?あんなとこにドアなんかあったっけ?」
藍「それ今言ったから!…でもあんなとこにドアなんか無かったよね?」

京介「たぶん…無かったと思うけど」


2人ともドアを見つめながら、不思議そうに会話していた。

ドアは全体的に茶色で、ドアノブと思われる水平棒がついている。ノブを回すのではなく、下げて押し開けるタイプのドアだろう。
そのドアがある場所は、今日の朝までは間違いなく壁だった。

少しの間2人とも沈黙していたが、藍が唐突に口を開いた


藍「ねぇ、中に何があるか気にならない?」

⏰:07/12/15 18:11 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#6 [主◆vzApYZDoz6]
京介「まぁ気にはなるけど…明らかに怪しいだろアレ」

京介の言うことは最もだ。
ドアがある場所は階段裏のデッドスペースで、せいぜい物置程度の空間しか無いだろう。ましてや人が住んでいるなどあるはずもない。さらに、このドアは恐らく京介達が学校にいる間に突然現れたのだ。
怪しい事この上ない。


藍「分かってるよそんなの。だから中が気になるんじゃない!」
京介「いやまぁ…言いたいことは分かるけど」
藍「ほら京ちゃん、中見てみよ!ちょっと除くだけじゃん!」
京介「万が一人がいたらどーすんだ」


京介の心配もよそに、藍は京介の腕を引いてドアへ向かっていた。
京介も何だかんだで気になるので、そのまま引かれてドアへ向かう。
藍がドアノブに手をかけた。


藍「あっ、一応おじゃましますって言った方がいいかな?」
京介「心配せんでも人はいねぇだろうけど…まぁ、好きにすればいいんじゃね?」
藍「よーし、じゃあ…おじゃましまーす!!」


藍が勢いよくドアを開け中に入る。
京介も中に入った。


京介達が予想外の中の光景に驚きはしゃいでいる後ろで、ドアの蝶番がゆっくりと戻っていく。


やがてドアが完全に閉まり、ドアノブが水平の位置へ戻る。



カチッ、という音と共にドアノブが水平に戻った瞬間、ドアが光に包まれ、忽然と消え去った。

⏰:07/12/15 18:27 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#7 [主◆vzApYZDoz6]

藍「すごーい…」
京介「何だここ?」


2人が出た場所は階段裏のデッドスペースなどではなかった。
回りはどこを見渡しても草原が広がるばかりで生き物も見当たらず、建物はおろか、木の1本すら生えていない。水平線の彼方に山が広がっているだけで、まるでモンゴルの大草原を彷彿とさせた。


京介「ドアの向こうは不思議の草原でした。」
藍「あははっ、それ『千と千尋の神隠し』じゃん!…でも何だろうねここ」
京介「てゆうかあのドアってマンション裏にあったはずじゃ…―――げっ!」


京介はドアを見ようと振り返り驚愕した。


京介「ドアが…ドアが無くなってる!」


京介は、今しがた自分が出てきた場所をまさぐったが、空を切るばかりだ。

⏰:07/12/15 18:47 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#8 [主◆vzApYZDoz6]

京介「どうやって帰るんだよ…なぁ藍、これからどう―――あれ?」

さっきまで隣にいた藍がいない。
京介は焦って辺りを見回すと、藍が50m程先で佇んでいた。
京介はほっとして胸を撫で下ろし、駆け足で近付いた。

京介「どうしたんだ?」

藍「あ、京ちゃん、あれさっきのドアじゃない?」

京介「えっ?…あっ、ホントだ」

藍が指差してた先を見ると、10mぐらい先だろうか、確かにここに来たときにくぐったのと同じようなドアが見える。

⏰:07/12/15 18:56 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#9 [主◆vzApYZDoz6]
京介「よし、ならさっさと帰るぞ」

藍「えっ、どうせならもっと探検してみようよ!」

京介「探検してみようよって、回り何もねぇじゃん…」

藍「だからあっちの山まで…」

京介「遠いわ!これ以上わけわからん事になる前に帰るぞ」

ほら、と藍の腕を引っ張る。
藍は少しふてくされながら渋々ついていった。

⏰:07/12/15 19:01 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#10 [主◆vzApYZDoz6]
さっきと同じドアを、今度は京介が開く。

京介「あれ…また変なとこに出たぞ?」


そこはマンションの階段だった。が、明らかに外の風景が自宅のマンションとは違う。
辺りは夜のようで、マンションを出るとレンガの道が左右に伸びており、脇には該当の光が点々と続いている。向かいや隣にもレンガ造りのマンションや家が並んでいる。その町並みはロンドンの市街のようだが、人は全く見当たらず、あまりに閑散としている。

藍「なんか怖いね…」

京介「まぁ…とりあえずまたドアが無いか探してみようぜ。離れんなよ」

やはりドアが消え失せて壁になっている場所を一瞥しながら、藍の手を引いて外に出る。

京介達がレンガ道の真ん中に出ると後ろで、瓦を割ったような大きな音が響いた。

京介「なんだ!?」


見ると、男が立っていた。

⏰:07/12/15 19:38 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#11 [主◆vzApYZDoz6]
男はスキンヘッドで、黒いジャケットに黒いカッターを着ていた。肌も褐色で、周囲の薄暗さも相まって景色に溶け込んでいた。
男の足元を見ると、まるで上空からボーリングの球を落としたかのように、レンガが抉れ捲り上がっていた。

京介「何だよお前…?」

後ろの藍を右腕で制しながら言う。

?「やはり来たか…悪いが、死んでもらおう」

京介「はっ?」

男は既に右腕をふりかぶっていた。

⏰:07/12/15 19:58 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#12 [主◆vzApYZDoz6]
京介「危ない!!」

京介は藍を抱え右に飛ぶ。

間一髪。
男の右腕は、つい半瞬前まで京介達がいた場所の地面にめり込んでいた。

男が腕を引き抜き、京介達の方へ向き直る。
男の右腕は、左腕の3倍はあろうかというぐらいに膨れ上がっていた。
京介はすぐに立ち上がり、藍を抱え起こす。

藍「ありがとう…でも何あの人!?」

京介「分からねぇけど、とにかく逃げるぞ!!」

京介は藍の腕を引っ張り走り出した。
男もそれを確認し、体をかがめた。

?「逃げるのはいい事だが…遅いな」

一気に飛び出す。
一瞬で京介達を飛び越えた。

京介「げっ」

?「無駄な足掻きはするんじゃない」

男は再度右腕を打ち出す。
京介は走っていて急に止まったため体勢が不安定だった。

京介「やべ…!」

その時、京介の前に見慣れた人物が現れた。

⏰:07/12/15 21:19 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


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