-Castaway-
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#115 [◆vzApYZDoz6]
ガリアス「本当に退く気はないのか?あんたがこのままあのドアに帰るなら、俺は追うつもりはない」

ガリアスが入口の扉を指差して言う。ハルキンは扉には目もくれず言葉を返した。

ハルキン「悪いが俺達にはスティーブの散歩よりも先に、藍を取り返すという目的があるんでな」
ガリアス「……残念だよ」

⏰:07/12/25 12:10 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#116 [◆vzApYZDoz6]
ガリアスらの姿が忽然と消え去る。風切り音と共に、ウィニーの声が響いた。

ウィニー『ははは、大人しく逃げればよかったものを!あんたなら、光速移動する物体は質量が増加する事は知ってるだろう?全体重をかけて押し潰してやるよ!!』

再び声が消え、風切り音が響き渡る。
ハルキンは宙を見上げた。その表情は、前回の戦いと同じく余裕に満ちている。

前回と同じような表情で、前回と似たような言葉を口にした。

ハルキン「…さて、君はブラックホールというものを知ってるかね?」

⏰:07/12/25 12:21 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#117 [◆vzApYZDoz6]
ラスカが『ブラックホール』という単語に過敏に反応した。驚いた表情で視線をハルキンに向ける。
ハルキンは宙を見上げているが、言わんとする事はラスカに伝わっていた。

ラスカ「ったく…どうなっても知らないよ!」

ラスカが自身の周りを纏っていた結界を解く。それをハルキンが横目で確認し、満足そうに唇の端を上げた。

ハルキン「ブラックホールってのは、太陽の何倍もあるような大質量の恒星が寿命を終え、超新星爆発と呼ばれる熱放出の後、自重力により星が圧縮されてできる」

⏰:07/12/25 12:48 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#118 [◆vzApYZDoz6]
ウィニー「ははは、ここで光さえも飲み込むブラックホールを作ろうってか!?大質量の星もないのに!?」
ハルキン「ブラックホールは飲み込んでいるのではなく、物質を微粒子レベルで破壊し自身に取り込んでいるんだ」
ウィニー「うるせぇから死ねよ!!」

ウィニーを乗せたドラゴンが突如現れた。
現れた場所はハルキンのすぐ後ろ。ドラゴンが爪を前に出し、ハルキンを今まさに千切らんとしている。
だが、ドラゴンの爪はハルキンに届かなかった。

ハルキン「『押し潰す』といっておきながら後ろからか…ゲスはどこまでいってもゲスだな」

⏰:07/12/25 13:00 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#119 [◆vzApYZDoz6]
ウィニーは止まっていた。いや、止まっているように見えた。よく見ると、少しずつだが爪がハルキンに近付いている。1秒に1mmぐらいの、途方もなく遅いスピードで。

ハルキン「俺の周囲の空間を目一杯まで引き伸ばした。…苦労したぞ、光は1秒で地球を7周半回るんだからな」

ウィニーも、後ろのガリアスも無言で、表情も何一つ変えずに止まっている。

ハルキン「ま、お前らが光速移動する前には既に、ナメック星に行けるぐらいまで引き伸ばしてたんだ。こちらの姿は見えていても、声なんざ届いていないだろうな。…ラスカ!」
ラスカ「了解!でもナメック星って何さ?」

⏰:07/12/25 13:17 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#120 [◆vzApYZDoz6]
ラスカが疑問を持ちながらも、自分のに周囲に少し余裕を持たせて結界を張る。ハルキンが引き伸ばした空間をそのままにして、空間転移で結界に入った。

ハルキン「例の手続きで地球に行った時、漫画とかいうやつで見たんだ…さて、と」

ハルキンが再び空間転移を使う。
未だに微動だにしないドラゴンの背中のガリアスが消え、ハルキンのすぐ隣に現れた。

ガリアス「なにっ…!?」
ハルキン「よしよし、やっぱりガリアスが離れても光速移動したままだな」

何が起きたか分からず周囲を見回しているガリアスを尻目に、ハルキンが今度はウィニーとドラゴンに向けて空間圧縮を使った。

⏰:07/12/25 13:26 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#121 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「さて、さっきの続きだ。ブラックホールにより破壊・吸収された微粒子は、強力な重力により再び粒子と反粒子として対生成される」

空間圧縮によりウィニーとドラゴンがみるみる縮んでいく。ついには見えない程までになったが、ハルキンはまだ圧縮を続けた。

ハルキン「対生成された粒子と反粒子は、再びぶつかり合い対消滅する。しかし、重力によってずれた時間軸のせいで、たまに粒子か反粒子のどっちかがブラックホールの地平面を飛び出してしまうんだ」

ハルキンが何かを確認し、引き伸ばした空間だけを元に戻した時、突然周囲に異変が起きた。
周囲のコンテナや段ボールが、ウィニーとドラゴンがいた場所に次々と飛び込み消えていく。

⏰:07/12/25 13:41 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#122 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「ウィニーのブラックホールの完成だな。ラスカ、建物にも結界は張ったよな?」
ラスカ「勿論」

ラスカが即座に返事をした。

光速移動する物体の質量は、尋常ではないほどに増加する。小さな陽子でも光速移動させ電流を流せばブラックホールになる程、質量の増加率は高い。

ハルキン「光速移動で既に重力が発生しているドラゴンを、限界まで圧縮したんだ。まぁ、当然ああなるわな」

ガリアスは、ブラックホールと化したウィニーを、正確にはウィニーがいた空間を黙って見ていた。

⏰:07/12/25 13:49 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#123 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「さて…まだ続くぞ。そうしてブラックホールを飛び出した粒子は、熱放射で光って見える。これをホーキング輻射と言う」

ガリアスは、視認できない程小さなブラックホールに、物が飛び込んでいくのを見続ける中で、一瞬だけブラックホールが光った気がした。

ハルキン「この輻射によってエネルギー、つまり質量を失うと、取り込んだ質量によって拡大するブラックホールは質量を失う事になる」

やがてブラックホールの光はどんどん増えていき、まるで星が輝いているかのように目映く煌めく。

⏰:07/12/25 14:01 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#124 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「質量が減ればこの輻射はさらに強く働き、輻射は強度を増す」

ブラックホールの光はどんどん膨れ上がり、今にもはち切れそうに小刻みに震えだした。

ハルキン「そうなると加速度的に質量とエネルギーを失っていき、最終的には…爆発的にエネルギーを消費し消滅する。―――」

ブラックホールは、目が眩むほどの光と耳鳴りが鳴るほどの爆音を放ち…

ハルキン「―――ゲスの最後にはお似合いだろ」

…ハルキンが軽蔑の視線を向ける中、花火のように散っていった。

⏰:07/12/25 14:18 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


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