-Castaway-
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#116 [◆vzApYZDoz6]
ガリアスらの姿が忽然と消え去る。風切り音と共に、ウィニーの声が響いた。

ウィニー『ははは、大人しく逃げればよかったものを!あんたなら、光速移動する物体は質量が増加する事は知ってるだろう?全体重をかけて押し潰してやるよ!!』

再び声が消え、風切り音が響き渡る。
ハルキンは宙を見上げた。その表情は、前回の戦いと同じく余裕に満ちている。

前回と同じような表情で、前回と似たような言葉を口にした。

ハルキン「…さて、君はブラックホールというものを知ってるかね?」

⏰:07/12/25 12:21 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#117 [◆vzApYZDoz6]
ラスカが『ブラックホール』という単語に過敏に反応した。驚いた表情で視線をハルキンに向ける。
ハルキンは宙を見上げているが、言わんとする事はラスカに伝わっていた。

ラスカ「ったく…どうなっても知らないよ!」

ラスカが自身の周りを纏っていた結界を解く。それをハルキンが横目で確認し、満足そうに唇の端を上げた。

ハルキン「ブラックホールってのは、太陽の何倍もあるような大質量の恒星が寿命を終え、超新星爆発と呼ばれる熱放出の後、自重力により星が圧縮されてできる」

⏰:07/12/25 12:48 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#118 [◆vzApYZDoz6]
ウィニー「ははは、ここで光さえも飲み込むブラックホールを作ろうってか!?大質量の星もないのに!?」
ハルキン「ブラックホールは飲み込んでいるのではなく、物質を微粒子レベルで破壊し自身に取り込んでいるんだ」
ウィニー「うるせぇから死ねよ!!」

ウィニーを乗せたドラゴンが突如現れた。
現れた場所はハルキンのすぐ後ろ。ドラゴンが爪を前に出し、ハルキンを今まさに千切らんとしている。
だが、ドラゴンの爪はハルキンに届かなかった。

ハルキン「『押し潰す』といっておきながら後ろからか…ゲスはどこまでいってもゲスだな」

⏰:07/12/25 13:00 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#119 [◆vzApYZDoz6]
ウィニーは止まっていた。いや、止まっているように見えた。よく見ると、少しずつだが爪がハルキンに近付いている。1秒に1mmぐらいの、途方もなく遅いスピードで。

ハルキン「俺の周囲の空間を目一杯まで引き伸ばした。…苦労したぞ、光は1秒で地球を7周半回るんだからな」

ウィニーも、後ろのガリアスも無言で、表情も何一つ変えずに止まっている。

ハルキン「ま、お前らが光速移動する前には既に、ナメック星に行けるぐらいまで引き伸ばしてたんだ。こちらの姿は見えていても、声なんざ届いていないだろうな。…ラスカ!」
ラスカ「了解!でもナメック星って何さ?」

⏰:07/12/25 13:17 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#120 [◆vzApYZDoz6]
ラスカが疑問を持ちながらも、自分のに周囲に少し余裕を持たせて結界を張る。ハルキンが引き伸ばした空間をそのままにして、空間転移で結界に入った。

ハルキン「例の手続きで地球に行った時、漫画とかいうやつで見たんだ…さて、と」

ハルキンが再び空間転移を使う。
未だに微動だにしないドラゴンの背中のガリアスが消え、ハルキンのすぐ隣に現れた。

ガリアス「なにっ…!?」
ハルキン「よしよし、やっぱりガリアスが離れても光速移動したままだな」

何が起きたか分からず周囲を見回しているガリアスを尻目に、ハルキンが今度はウィニーとドラゴンに向けて空間圧縮を使った。

⏰:07/12/25 13:26 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#121 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「さて、さっきの続きだ。ブラックホールにより破壊・吸収された微粒子は、強力な重力により再び粒子と反粒子として対生成される」

空間圧縮によりウィニーとドラゴンがみるみる縮んでいく。ついには見えない程までになったが、ハルキンはまだ圧縮を続けた。

ハルキン「対生成された粒子と反粒子は、再びぶつかり合い対消滅する。しかし、重力によってずれた時間軸のせいで、たまに粒子か反粒子のどっちかがブラックホールの地平面を飛び出してしまうんだ」

ハルキンが何かを確認し、引き伸ばした空間だけを元に戻した時、突然周囲に異変が起きた。
周囲のコンテナや段ボールが、ウィニーとドラゴンがいた場所に次々と飛び込み消えていく。

⏰:07/12/25 13:41 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#122 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「ウィニーのブラックホールの完成だな。ラスカ、建物にも結界は張ったよな?」
ラスカ「勿論」

ラスカが即座に返事をした。

光速移動する物体の質量は、尋常ではないほどに増加する。小さな陽子でも光速移動させ電流を流せばブラックホールになる程、質量の増加率は高い。

ハルキン「光速移動で既に重力が発生しているドラゴンを、限界まで圧縮したんだ。まぁ、当然ああなるわな」

ガリアスは、ブラックホールと化したウィニーを、正確にはウィニーがいた空間を黙って見ていた。

⏰:07/12/25 13:49 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#123 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「さて…まだ続くぞ。そうしてブラックホールを飛び出した粒子は、熱放射で光って見える。これをホーキング輻射と言う」

ガリアスは、視認できない程小さなブラックホールに、物が飛び込んでいくのを見続ける中で、一瞬だけブラックホールが光った気がした。

ハルキン「この輻射によってエネルギー、つまり質量を失うと、取り込んだ質量によって拡大するブラックホールは質量を失う事になる」

やがてブラックホールの光はどんどん増えていき、まるで星が輝いているかのように目映く煌めく。

⏰:07/12/25 14:01 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#124 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「質量が減ればこの輻射はさらに強く働き、輻射は強度を増す」

ブラックホールの光はどんどん膨れ上がり、今にもはち切れそうに小刻みに震えだした。

ハルキン「そうなると加速度的に質量とエネルギーを失っていき、最終的には…爆発的にエネルギーを消費し消滅する。―――」

ブラックホールは、目が眩むほどの光と耳鳴りが鳴るほどの爆音を放ち…

ハルキン「―――ゲスの最後にはお似合いだろ」

…ハルキンが軽蔑の視線を向ける中、花火のように散っていった。

⏰:07/12/25 14:18 📱:P903i 🆔:NYrpWQ/k


#125 [◆vzApYZDoz6]
爆音が止み、光が消え、静寂が戻ってくる。ラスカが自分の周囲と建造物に張っていた結界を解いた。

ハルキン「じゃ、先を急ぐか」
ガリアス「ちょっと待てよ」

ガリアスが走り出そうとしていたハルキンとラスカに後ろから声をかけた。

ガリアス「なぜ俺は生かされたんだ?納得がいかねぇな」
ハルキン「お前は既に敵じゃない」
ガリアス「……でも、俺は戦わないと駄目なんだ」

ガリアスが構えを取る。ハルキンはゆっくりと溜め息をつき、顎で入口を差した。

ハルキン「見てみろよ」

ガリアスが入口を見ると、そこには人が立っていた。

ガリアス「……母さん…?」

⏰:07/12/26 11:33 📱:P903i 🆔:iPwdxIVQ


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