-Castaway-
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#119 [◆vzApYZDoz6]
ウィニーは止まっていた。いや、止まっているように見えた。よく見ると、少しずつだが爪がハルキンに近付いている。1秒に1mmぐらいの、途方もなく遅いスピードで。
ハルキン「俺の周囲の空間を目一杯まで引き伸ばした。…苦労したぞ、光は1秒で地球を7周半回るんだからな」
ウィニーも、後ろのガリアスも無言で、表情も何一つ変えずに止まっている。
ハルキン「ま、お前らが光速移動する前には既に、ナメック星に行けるぐらいまで引き伸ばしてたんだ。こちらの姿は見えていても、声なんざ届いていないだろうな。…ラスカ!」
ラスカ「了解!でもナメック星って何さ?」
:07/12/25 13:17 :P903i :NYrpWQ/k
#120 [◆vzApYZDoz6]
ラスカが疑問を持ちながらも、自分のに周囲に少し余裕を持たせて結界を張る。ハルキンが引き伸ばした空間をそのままにして、空間転移で結界に入った。
ハルキン「例の手続きで地球に行った時、漫画とかいうやつで見たんだ…さて、と」
ハルキンが再び空間転移を使う。
未だに微動だにしないドラゴンの背中のガリアスが消え、ハルキンのすぐ隣に現れた。
ガリアス「なにっ…!?」
ハルキン「よしよし、やっぱりガリアスが離れても光速移動したままだな」
何が起きたか分からず周囲を見回しているガリアスを尻目に、ハルキンが今度はウィニーとドラゴンに向けて空間圧縮を使った。
:07/12/25 13:26 :P903i :NYrpWQ/k
#121 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「さて、さっきの続きだ。ブラックホールにより破壊・吸収された微粒子は、強力な重力により再び粒子と反粒子として対生成される」
空間圧縮によりウィニーとドラゴンがみるみる縮んでいく。ついには見えない程までになったが、ハルキンはまだ圧縮を続けた。
ハルキン「対生成された粒子と反粒子は、再びぶつかり合い対消滅する。しかし、重力によってずれた時間軸のせいで、たまに粒子か反粒子のどっちかがブラックホールの地平面を飛び出してしまうんだ」
ハルキンが何かを確認し、引き伸ばした空間だけを元に戻した時、突然周囲に異変が起きた。
周囲のコンテナや段ボールが、ウィニーとドラゴンがいた場所に次々と飛び込み消えていく。
:07/12/25 13:41 :P903i :NYrpWQ/k
#122 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「ウィニーのブラックホールの完成だな。ラスカ、建物にも結界は張ったよな?」
ラスカ「勿論」
ラスカが即座に返事をした。
光速移動する物体の質量は、尋常ではないほどに増加する。小さな陽子でも光速移動させ電流を流せばブラックホールになる程、質量の増加率は高い。
ハルキン「光速移動で既に重力が発生しているドラゴンを、限界まで圧縮したんだ。まぁ、当然ああなるわな」
ガリアスは、ブラックホールと化したウィニーを、正確にはウィニーがいた空間を黙って見ていた。
:07/12/25 13:49 :P903i :NYrpWQ/k
#123 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「さて…まだ続くぞ。そうしてブラックホールを飛び出した粒子は、熱放射で光って見える。これをホーキング輻射と言う」
ガリアスは、視認できない程小さなブラックホールに、物が飛び込んでいくのを見続ける中で、一瞬だけブラックホールが光った気がした。
ハルキン「この輻射によってエネルギー、つまり質量を失うと、取り込んだ質量によって拡大するブラックホールは質量を失う事になる」
やがてブラックホールの光はどんどん増えていき、まるで星が輝いているかのように目映く煌めく。
:07/12/25 14:01 :P903i :NYrpWQ/k
#124 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「質量が減ればこの輻射はさらに強く働き、輻射は強度を増す」
ブラックホールの光はどんどん膨れ上がり、今にもはち切れそうに小刻みに震えだした。
ハルキン「そうなると加速度的に質量とエネルギーを失っていき、最終的には…爆発的にエネルギーを消費し消滅する。―――」
ブラックホールは、目が眩むほどの光と耳鳴りが鳴るほどの爆音を放ち…
ハルキン「―――ゲスの最後にはお似合いだろ」
…ハルキンが軽蔑の視線を向ける中、花火のように散っていった。
:07/12/25 14:18 :P903i :NYrpWQ/k
#125 [◆vzApYZDoz6]
爆音が止み、光が消え、静寂が戻ってくる。ラスカが自分の周囲と建造物に張っていた結界を解いた。
ハルキン「じゃ、先を急ぐか」
ガリアス「ちょっと待てよ」
ガリアスが走り出そうとしていたハルキンとラスカに後ろから声をかけた。
ガリアス「なぜ俺は生かされたんだ?納得がいかねぇな」
ハルキン「お前は既に敵じゃない」
ガリアス「……でも、俺は戦わないと駄目なんだ」
ガリアスが構えを取る。ハルキンはゆっくりと溜め息をつき、顎で入口を差した。
ハルキン「見てみろよ」
ガリアスが入口を見ると、そこには人が立っていた。
ガリアス「……母さん…?」
:07/12/26 11:33 :P903i :iPwdxIVQ
#126 [◆vzApYZDoz6]
-要塞内部・京介とラスダンの場合-
ハルキンがウィニーと対峙していた頃、京介とラスダンは地下牢にいた。2人が入った扉は、入ってすぐに地下に下りる階段があったからだ。
京介「何でこんなところに牢屋が有るんだろ」
ラスダン「捕まってる人は…いないみたいだけど」
2人はゆっくりと歩いていた。
辺りは1階よりもさらに薄暗く、横幅3mぐらいの狭い通路の天井に、5mおきぐらいに小さな電球があるだけ。
両脇には鉄格子が延々と真っ直ぐ続いており、だいたい3m間隔で壁に仕切られている。広さからして1つの牢に1人だけのようだが、辺りが暗いので牢の奥の方が視認できない。
:07/12/26 11:54 :P903i :iPwdxIVQ
#127 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「うーん、もしかしたらここに藍ちゃんが捕まってるんじゃ…とか思ったけど」
京介「違うみたいだな。…誰もいないし、戻った方がいいんじゃね?」
2人が歩みを止める。
確かにそこは埃が積もってるし、鉄格子は赤錆だらけ。長い間使われていない感じがした。
ラスダン「そうだね…戻ろうか」
元来た道を戻ろうと2人が踵を返した時、背後から小さな声がした。
?「…そこに、誰かいるの…?」
京介とラスダンが同時に振り返る。
通路に人は居なかった。となると、声の主がいる場所は1つしかない。
京介「…今の、牢屋からだよな?」
2人は顔を見合わせ、牢に人がいないか確認しながら声の元へ向かった。
:07/12/26 12:10 :P903i :iPwdxIVQ
#128 [◆vzApYZDoz6]
京介「あっ、人がいる!」
2人が両脇の牢を一つ一つ確認していく中で京介が声を上げた。ラスダンが京介側の牢を見ると、確かに人が2人いる。
どちらも中年ぐらいの女性。精神的な疲労からだろうか、弱っている感じは無いが少し痩せていた。
囚われの女性が京介とラスダンを確認し口を開く。
女性「あなた方は…?」
京介「俺は京介って言うんだ」
ラスダン「僕はラスダンと言います。ここに囚われている仲間を助けに来ました。…お2方は?なぜここに囚われているのですか…?」
:07/12/27 14:05 :P903i :IeTfHkfs
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